(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を保持する保持手段と、レーザー光線を集光する集光器を備えると共にレーザー光線を発振するレーザー発振器を備えたレーザー照射手段と、該保持手段と該レーザー照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を少なくとも含み構成されたレーザー加工装置において、該集光器が集光する集光点の光軸方向の位置を検出する集光点位置検出方法であって、
該レーザー発振器が発振したレーザー光線の半径方向に延在しレーザー光線の一部を回折するスリット部と集光点を形成するレーザー光線の一部を通過させる集光点形成部とを有するマスクを準備するマスク準備工程と、
レーザー光線が照射された領域に照射痕が形成される基板を準備する基板準備工程と、
該保持手段に該基板を保持させる基板保持工程と、
該保持手段に保持された該基板に対して該集光器を光軸方向に移動しながらレーザー光線を照射して複数の照射痕を該基板に形成する照射痕形成工程と、
該基板に形成された複数の照射痕から適正な形状の照射痕を検出し、適正な照射痕を形成した集光点の位置を正確な集光点の位置として検出する集光点位置検出工程と、を少なくとも含み、
該照射痕形成工程において、
該集光器に予め設定された集光点を該基板の上面に位置づけてレーザー光線を照射すると、該マスクに形成された該スリット部に至った一部のレーザー光線は該スリット部を軸として半円柱状に回折し該集光器によって該スリット部の長手方向が集光され短手方向は集光されずに該スリット部に直交する線状の照射痕を形成し、該マスクに形成された集光点形成部に至った一部のレーザー光線は該集光器によって集光され円形の照射痕を形成し、
該集光器に予め設定された集光点から該集光器を正の光軸方向、負の光軸方向に移動して照射痕を複数形成すると該円形の照射痕の一方の端から他方の端に該線状の照射痕がコマ送り的に移動して複数の照射痕が形成され、
該集光点位置検出工程において、該線状の照射痕が該円形の照射痕を二等分する照射痕を適正な形状の照射痕として検出する集光点位置検出方法。
該レーザー加工装置は、該保持手段に保持された被加工物の上面に該集光器に予め設定された集光点の位置を示すレチクルを投影して、該集光器に予め設定された集光点を被加工物の上面に位置づける集光器位置づけ手段を含み、
該集光点位置検出工程において、検出された該集光器の正確な集光点の位置と該レチクルが示す集光点の位置との差を求めて補正値とする請求項1記載の集光点位置検出方法。
該基板準備工程において準備する基板は、プレートの上面に錫膜が被覆されている錫膜プレート、またはプレートの上面にチタン膜が被覆され更に錫膜が被覆された2層プレートである請求項1記載の集光点位置検出方法。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画されたウエーハは、レーザー加工装置によって個々のデバイスに分割され、携帯電話、パソコン、通信機器等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置には、ウエーハを保持する保持手段を備え、保持手段に保持されたウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインの内部に位置づけてレーザー光線をウエーハに照射し、分割予定ラインに沿って分割の起点となる改質層を形成してウエーハを個々のデバイスに分割できるレーザー加工装置が存在する(たとえば特許文献1参照。)。
【0004】
また、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を分割予定ラインに位置づけて照射し、アブレーションによって分割予定ラインに沿って分割溝を形成するレーザー加工装置も存在する(たとえば特許文献2参照。)。
【0005】
さらに、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線を分割予定ラインに位置づけて照射し、表面から裏面に至る細孔と細孔を囲繞する非晶質とからなるシールドトンネルを分割予定ラインに沿って形成するレーザー加工装置も存在し枚挙にいとまがない(たとえば特許文献3参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして、特に分割予定ラインに沿って分割の起点となる改質層を形成するレーザー加工装置においては次のような問題がある。
(1)集光器によって集光される集光点はウエーハの内部に適正に位置づけられなければならず、集光器によって集光される集光点の位置は集光器の光軸と同軸にレチクルを導きウエーハの上面に投影する位置と一致するように調整されていて、レチクルがウエーハの上面に鮮明に投影された時に集光器によって集光される集光点の位置がウエーハの上面に位置づけられたとしているが、実際はレチクルの投影位置と集光器によって集光される集光点の位置とに数μm程度の狂いがある。
(2)前記した狂いを調整するために、レチクルを基準として集光器の集光点をダミーウエーハの内部に位置づけてレーザー光線を照射してウエーハの内部に改質層を形成し、その後改質層が形成された領域を分割して改質層を露出させウエーハの上面から改質層までの長さを実測してレチクルを基準とした場合の集光点の位置の狂いを検出し補正値としているが、実測には相当の時間がかかり生産性が悪い。
【0008】
上記した問題は、アブレーションによって分割溝を形成するレーザー加工装置、およびシールドトンネルを形成するレーザー加工装置においても生じうる。
【0009】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、集光器の集光点の光軸方向位置を正確かつ容易に検出できる集光点位置検出用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下の集光点位置検出方法である。すなわち、被加工物を保持する保持手段と、レーザー光線を集光する集光器を備えると共にレーザー光線を発振するレーザー発振器を備えたレーザー照射手段と、該保持手段と該レーザー照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を少なくとも含み構成されたレーザー加工装置において、該集光器が集光する集光点の光軸方向の位置を検出する集光点位置検出方法であって、該レーザー発振器が発振したレーザー光線の半径方向に延在しレーザー光線の一部を回折するスリット部と集光点を形成するレーザー光線の一部を通過させる集光点形成部とを有するマスクを準備するマスク準備工程と、レーザー光線が照射された領域に照射痕が形成される基板を準備する基板準備工程と、該保持手段に該基板を保持させる基板保持工程と、該保持手段に保持された該基板に対して該集光器を光軸方向に移動しながらレーザー光線を照射して複数の照射痕を該基板に形成する照射痕形成工程と、該基板に形成された複数の照射痕から適正な形状の照射痕を検出し、適正な照射痕を形成した集光点の位置を正確な集光点の位置として検出する集光点位置検出工程と、を少なくとも含み、該照射痕形成工程において、該集光器に予め設定された集光点を該基板の上面に位置づけてレーザー光線を照射すると、該マスクに形成された該スリット部に至った一部のレーザー光線は該スリット部を軸として半円柱状に回折し該集光器によって該スリット部の長手方向が集光され短手方向は集光されずに該スリット部に直交する線状の照射痕を形成し、該マスクに形成された集光点形成部に至った一部のレーザー光線は該集光器によって集光され円形の照射痕を形成し、該集光器に予め設定された集光点から該集光器を正の光軸方向、負の光軸方向に移動して照射痕を複数形成すると該円形の照射痕の一方の端から他方の端に該線状の照射痕がコマ送り的に移動して複数の照射痕が形成され、該集光点位置検出工程において、該線状の照射痕が該円形の照射痕を二等分する照射痕を適正な形状の照射痕として検出する集光点位置検出方法である。
【0011】
好ましくは、該レーザー加工装置は、該保持手段に保持された被加工物の上面に該集光器に予め設定された集光点の位置を示すレチクルを投影して、該集光器に予め設定された集光点を被加工物の上面に位置づける集光器位置づけ手段を含み、該集光点位置検出工程において、検出された該集光器の正確な集光点の位置と該レチクルが示す集光点の位置との差を求めて補正値とする。該基板準備工程において準備する基板は、プレートの上面に錫膜が被覆されている錫膜プレート、またはプレートの上面にチタン膜が被覆され更に錫膜が被覆された2層プレートであるのが好適である。該照射痕形成工程において、該集光器を光軸方向に移動するピッチは0.5〜1.0μmであるのが好都合である。
【発明の効果】
【0012】
本発明が提供する集光点位置検出方法は、被加工物を保持する保持手段と、レーザー光線を集光する集光器を備えると共にレーザー光線を発振するレーザー発振器を備えたレーザー照射手段と、該保持手段と該レーザー照射手段とを相対的に加工送りする送り手段と、を少なくとも含み構成されたレーザー加工装置において、該集光器が集光する集光点の光軸方向の位置を検出する集光点位置検出方法であって、該レーザー発振器が発振したレーザー光線の半径方向に延在しレーザー光線の一部を回折するスリット部と集光点を形成するレーザー光線の一部を通過させる集光点形成部とを有するマスクを準備するマスク準備工程と、レーザー光線が照射された領域に照射痕が形成される基板を準備する基板準備工程と、該保持手段に該基板を保持させる基板保持工程と、該保持手段に保持された該基板に対して該集光器を光軸方向に移動しながらレーザー光線を照射して複数の照射痕を該基板に形成する照射痕形成工程と、該基板に形成された複数の照射痕から適正な形状の照射痕を検出し、適正な照射痕を形成した集光点の位置を正確な集光点の位置として検出する集光点位置検出工程と、を少なくとも含み、該照射痕形成工程において、該集光器に予め設定された集光点を該基板の上面に位置づけてレーザー光線を照射すると、該マスクに形成された該スリット部に至った一部のレーザー光線は該スリット部を軸として半円柱状に回折し該集光器によって該スリット部の長手方向が集光され短手方向は集光されずに該スリット部に直交する線状の照射痕を形成し、該マスクに形成された集光点形成部に至った一部のレーザー光線は該集光器によって集光され円形の照射痕を形成し、該集光器に予め設定された集光点から該集光器を正の光軸方向、負の光軸方向に移動して照射痕を複数形成すると該円形の照射痕の一方の端から他方の端に該線状の照射痕がコマ送り的に移動して複数の照射痕が形成され、該集光点位置検出工程において、該線状の照射痕が該円形の照射痕を二等分する照射痕を適正な形状の照射痕として検出するように構成されているので、集光器の集光点の光軸方向位置を正確かつ容易に検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の集光点位置検出方法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1に示すレーザー加工装置2は、基台4と、被加工物を保持する保持手段6と、保持手段6に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー照射手段8と、保持手段6とレーザー照射手段8とを相対的に移動させる送り手段10と、保持手段6に保持された被加工物を撮像する撮像手段12と、撮像手段12によって撮像された画像等を表示する表示手段14とを備える。
【0016】
図1に示すとおり、保持手段6は、X方向において移動自在に基台4に搭載された矩形状のX方向可動板16と、Y方向において移動自在にX方向可動板16に搭載された矩形状のY方向可動板18と、Y方向可動板18の上面に固定された円筒状の支柱20と、支柱20の上端に固定された矩形状のカバー板22とを含む。カバー板22にはY方向に延びる長穴22aが形成され、長穴22aを通って上方に延びる円形状のチャックテーブル24が支柱20の上端に回転自在に搭載されている。チャックテーブル24の上面には、多孔質材料から形成され実質上水平に延在する円形状の吸着チャック26が配置され、吸着チャック26は流路によって吸引手段(図示していない。)に接続されている。そして、チャックテーブル24においては、吸引手段によって吸着チャック26の上面に吸引力を生成することにより、吸着チャック26の上面に載置された被加工物を吸着して保持することができる。また、チャックテーブル24の周縁には、周方向に間隔をおいて複数個のクランプ28が配置されている。なお、X方向は
図1に矢印Xで示す方向であり、Y方向は
図1に矢印Yで示す方向であってX方向に直交する方向である。X方向及びY方向が規定する平面は実質上水平である。
【0017】
図1及び
図2を参照して説明する。レーザー照射手段8は、基台4の上面から上方に延び次いで実質上水平に延びる枠体30(
図1参照。)と、枠体30に内蔵されたレーザー発振器32(
図2参照。)と、枠体30の先端下面に装着された集光器34(
図1及び
図2参照。)と、レーザー発振器32と集光器34との間の光路に配置されたマスク36(
図2参照。)とを含む。レーザー発振器32は、所定波長(たとえば1342nm)のパルスレーザー光線LBを発振するように構成されている。集光器34は、レーザー発振器32が発振したパルスレーザー光線LBを集光し、保持手段6のチャックテーブル24に保持された被加工物にパルスレーザー光線LBを照射するための集光レンズ(図示していない。)を有する。矩形状のガラス基板から形成され得るマスク36は、枠体30に着脱自在に装着されており、図示の実施形態では
図2においてマスク36の光軸方向における正面図を示すとおり、レーザー発振器32が発振したパルスレーザー光線LBの半径方向に延在しパルスレーザー光線LBの一部を回折するスリット部38と、集光点を形成するパルスレーザー光線LBの一部を通過させる環状の集光点形成部40とを有し、集光点形成部40の内周縁にスリット部38が連結されている。マスク36におけるスリット部38及び集光点形成部40以外の部分にはパルスレーザー光線LBを遮断する遮光膜36aが被覆されている。スリット部38の幅(パルスレーザー光線LBの半径方向と直交する方向の長さ)は、たとえば40μm程度でよい。図示の実施形態におけるスリット部38は、パルスレーザー光線LBの半径方向の長さが集光点形成部40の内径よりも短く、たとえば集光点形成部40の内径の半分程度に形成されている。集光点形成部40の内径は3〜4mm程度でよく、集光点形成部40の外径は6mm程度でよい。すなわち、集光点形成部40の外径は、レーザー発振器32が発振した(図示の実施形態ではアッテネーター42を通過した)パルスレーザー光線LBの直径(たとえばφ7mm程度)より僅かに小さく設定されている。また、図示の実施形態では、レーザー発振器32が発振したパルスレーザー光線LBの出力を調整するアッテネーター42がレーザー発振器32とマスク36との間に配置されていると共に、マスク36を通過したパルスレーザー光線LBを反射して集光器34に導くミラー44がマスク36と集光器34との間に配置されている。
【0018】
図示の実施形態では
図2に示すとおり、レーザー照射手段8は、保持手段6のチャックテーブル24に保持された被加工物の上面に、集光器34に予め設定された集光点の位置を示すレチクルを投影して、集光器34に予め設定された集光点を被加工物の上面に位置づける集光器位置づけ手段46を含む。集光器位置づけ手段46は、白色光源48と、白色光源48の光を反射して集光器34に導くダイクロイックミラー50と、集光器34から照射された白色光源48の光が被加工物で反射した戻り光を撮像するカメラ52と、集光器34を昇降させる昇降手段54と、集光器34の上下方向位置を検出する検出手段56とを備える。ダイクロイックミラー50は、白色光源48の光(たとえば400nm〜800nmの波長)を反射して集光器34に導くと共に、白色光源48の光の波長以外の波長を有する光を透過するようになっている。したがって、レーザー発振器32が発振するパルスレーザー光線LBは、白色光源48の光の波長以外の波長(たとえば1342nm)に設定されることにより、ダイクロイックミラー50を透過して集光器34に入射する。カメラ52は表示手段14に電気的に接続され、カメラ52で撮像した画像の信号は表示手段14に出力される。昇降手段54は、上下方向に延びるボールねじ58と、ボールねじ58の片端部に連結されたモータ60とを有する。ボールねじ58のナット部62は集光器34の外面に固定されている。そして昇降手段54は、ボールねじ58によりモータ60の回転運動を直線運動に変換して集光器34に伝達し、上下方向に延びる案内レール(図示していない。)に沿って集光器34を昇降させる。検出手段56は、上下方向に沿って配置されたスケール64と、昇降手段54のボールねじ58のナット部62に装着された読み取りヘッド66とを有する。集光器34に装着されていてもよい読み取りヘッド66は、たとえば0.1μmごとに1パルスのパルス信号を出力し、出力されたパルス信号をコンピュータ(図示していない。)で計数することにより集光器34の上下方向位置が検出される。なお、昇降手段54のモータ60がパルスモータである場合は、昇降手段54のモータ60に出力される駆動パルス信号を計数することにより、集光器34の上下方向位置を検出することもできる。また、昇降手段54のモータ60がサーボモータである場合は、昇降手段54のモータ60の回転数を検出するロータリーエンコーダ(図示していない。)が出力するパルス信号を計数することにより、集光器34の上下方向位置を検出することもできる。
【0019】
図2を参照して集光器位置づけ手段46についての説明を続けると、白色光源48とダイクロイックミラー50との間には、集光レンズ68と、レチクル70と、コリメートレンズ72と、ハーフミラー74とが白色光源48側から順に配置されている。白色光源48の光は集光レンズ68で集光されレチクル70に入射する。図示の実施形態におけるレチクル70は、
図2においてレチクル70の断面図を示すとおり、集光レンズ68で集光された白色光源48の光を通過させる十字形状部70aが形成され、十字形状部70a以外の部分には白色光源48の光を遮断する遮光膜70bが被覆されている。レチクル70の十字形状部70aを通過した白色光源48の光は、コリメートレンズ72で平行光に変換された後、ハーフミラー74に入射する。ハーフミラー74は、入射した光の半分を透過させると共に入射した光の半分を反射して光路を変換するようになっている。ハーフミラー74に入射した白色光源48の光の半分は、ハーフミラー74を透過してダイクロイックミラー50に導かれ、次いでダイクロイックミラー50で反射して集光器34の光軸と同軸の光路に導かれ集光器34に入射する。集光器34に入射した白色光源48の光は集光器34で集光されて被加工物に照射されるところ、白色光源48の光はレチクル70の十字形状部70aを通過しているため、レチクル70の十字形状部70aの形状と同じ形状のパターン76が被加工物に投影される。被加工物に照射された白色光源48の光は被加工物で反射して集光器34を通過し、次いでダイクロイックミラー50で反射してハーフミラー74に導かれ、さらにハーフミラー74で反射してカメラ52に導かれる。これによって被加工物に投影されたパターン76がカメラ52で撮像され、カメラ52で撮像されたパターン76が表示手段14に表示される。そして、昇降手段54で集光器34が適宜昇降され、表示手段14に表示されるパターン76が鮮明になったとき(すなわち、被加工物の上面にパターン76が鮮明に投影されたとき)、集光器34に予め設定された集光点が被加工物の上面に位置づけられたことになる。このように集光器位置づけ手段46においては、保持手段6のチャックテーブル24に保持された被加工物の上面に、集光器34に予め設定された集光点の位置を示すレチクル70の十字形状部70aのパターン76を投影して、集光器34に予め設定された集光点を被加工物の上面に位置づけることができるようになっている。
【0020】
図1を参照して説明する。送り手段10は、レーザー照射手段8に対して保持手段6をX方向に加工送りする加工送り手段78と、レーザー照射手段8に対して保持手段6をY方向に割り出し送りする割り出し送り手段80と、支柱20に対してチャックテーブル24を回転させる回転手段(図示していない。)とを含む。加工送り手段78は、基台4上においてX方向に延びるボールねじ82と、ボールねじ82の片端部に連結されたモータ84とを有する。ボールねじ82のナット部(図示していない。)は、X方向可動板16の下面に固定されている。そして加工送り手段78は、ボールねじ82によりモータ84の回転運動を直線運動に変換してX方向可動板16に伝達し、基台4上の案内レール4aに沿ってX方向可動板16をX方向に進退させ、これによって集光器34に対してチャックテーブル24をX方向に加工送りする。割り出し送り手段80は、X方向可動板16上においてY方向に延びるボールねじ86と、ボールねじ86の片端部に連結されたモータ88とを有する。ボールねじ86のナット部(図示していない。)は、Y方向可動板18の下面に固定されている。そして割り出し送り手段80は、ボールねじ86によりモータ88の回転運動を直線運動に変換してY方向可動板18に伝達し、X方向可動板16上の案内レール16aに沿ってY方向可動板18をY方向に進退させ、これによって集光器34に対してチャックテーブル24をY方向に割り出し送りする。回転手段は、支柱20に内蔵されたモータ(図示していない。)を有し、上下方向に延びる軸線を中心として支柱20に対してチャックテーブル24を回転させる。
【0021】
被加工物の被加工領域を検出すると共にレーザー照射手段8の集光器34と被加工物との位置合わせを行うための画像を撮像する撮像手段12は、
図1に示すとおり、集光器34とX方向に間隔をおいて枠体30の先端下面に付設されている。また、撮像手段12で撮像された画像と、集光器位置づけ手段46のカメラ52で撮像された画像とを選択的に表示する表示手段14は、枠体30の先端上面に搭載されている。
【0022】
上述したレーザー加工装置2の集光器34が集光する集光点の光軸方向の位置を検出する際は、まず、レーザー発振器32が発振したパルスレーザー光線LBの半径方向に延在しパルスレーザー光線LBの一部を回折するスリット部とパルスレーザー光線LBの一部を集光し集光点を形成する集光点形成部とから構成されるマスクを準備するマスク準備工程を実施する。マスク準備工程において準備するマスクは上述のマスク36でよく、あるいは液晶から構成される空間光位相変調器(たとえば、浜松ホトニクス株式会社製のLCOS−SLM)であってもよい。そして、準備したマスクをレーザー発振器32と集光器34との間(図示の実施形態ではアッテネーター42とミラー44との間)のパルスレーザー光線LBの光路に配置する。
【0023】
また、レーザー光線が照射された領域に照射痕が形成される基板を準備する基板準備工程を実施する。基板準備工程は、マスク準備工程の前、マスク準備工程の後、又はマスク準備工程と並行して実施してもよい。基板準備工程において準備する基板は、たとえば
図3(a)及び
図3(b)に示すとおり、厚さ2mm程度の円形ガラス板から構成され得るプレート90の上面にチタン(Ti)膜92が被覆され更にチタン膜92の上面に錫(Sn)膜94が被覆された2層プレート96であるのが好適である。チタン膜92及び錫膜94の厚さは、それぞれ50nm程度でよい。2層プレート96の錫膜94側にレーザー光線が照射されると、レーザー光線が照射された領域の錫膜94が溶融して照射痕が形成される。また、チタン膜92の上面に錫膜94が被覆されていると、レーザー光線の照射により錫膜92が溶融して照射痕が形成された際にチタン膜92が露出し、照射痕周囲の錫膜92と露出したチタン膜92との適度なコントラストにより比較的容易に照射痕が検出され得る。図示の実施形態では、周縁が環状フレーム98に固定された粘着テープ100に2層プレート96の下面が貼り付けられている。なお、基板準備工程において準備する基板は、厚さ2mm程度の円形ガラス板から構成され得るプレートの上面に、厚さが50nm程度の錫膜が被覆されている錫膜プレートでもよい。
【0024】
基板準備工程を実施した後、保持手段6に基板を保持させる基板保持工程を実施する。図示の実施形態における基板保持工程では、まず、2層プレート96の上面(錫膜94側)を上に向けてチャックテーブル24の上面に2層プレート96を載せる。次いで、吸着チャック26に接続された吸引手段を作動させて吸着チャック26の上面に吸引力を生成し、2層プレート96の下面をチャックテーブル24に吸着させる。また、環状フレーム98の外周縁部を複数のクランプ28で固定する。このようにして保持手段6に2層プレート96を保持させる。
【0025】
基板保持工程を実施した後、保持手段6に保持された基板に対して集光器34を光軸方向に移動しながらレーザー光線を照射して複数の照射痕を基板に形成する照射痕形成工程を実施する。照射痕形成工程では、まず、送り手段10によってチャックテーブル24を移動させ、集光器34の下方に2層プレート96を位置づける。次いで、集光器位置づけ手段46によって集光器34に予め設定された集光点を2層プレート96の上面に位置づける。次いで、集光器34に予め設定された集光点を2層プレート96の上面に位置づけた状態から、光軸方向片側に適宜の距離だけ集光器34を昇降手段54で移動させる。次いで、集光器34に対してチャックテーブル24を適宜の加工送り速度で加工送り手段78によってX方向に加工送りしながら、集光器34から2層プレート96にパルスレーザー光線LBを照射して、2層プレート96の上面に複数の照射痕をX方向に間隔をおいて形成する照射痕形成加工を行う。照射痕形成加工においてレーザー発振器32から発振されたパルスレーザー光線LBは、2層プレート96に照射痕を形成し得る程度の適宜の出力にアッテネーター42で調整され、次いでマスク36を通過し、次いでミラー44で反射して光路が変換され、次いでダイクロイックミラー50を透過した後、集光器34で集光されて2層プレート96に照射される。ここで、マスク36を通過したパルスレーザー光線LBについて詳述すると、まず、マスク36に形成された環状の集光点形成部40に至った一部のパルスレーザー光線LBについては、集光器34によって集光されるので、2層プレート96に照射された際に円形の照射痕102(
図5参照。)を形成する。他方、マスク36に形成されたスリット部38に至った一部のパルスレーザー光線LBについては、
図4(a)及び
図4(b)に示すとおり、円形波となりスリット部38の長手方向Lを軸として半円柱状に回折する。このため、スリット部38を通過した一部のパルスレーザー光線LBは、スリット部38の短手方向Sにおいては円形波となって拡散するので集光器34によって集光されない一方、スリット部38の長手方向Lにおいてはスリット部38の影響を受けない(円形波とならず拡散しない)ので集光器34によって集光される。したがって、スリット部38を通過した一部のパルスレーザーLBは、2層プレート96に照射された際にスリット部38の長手方向Lに直交する方向(すなわちスリット部38の短手方向S)に延びる線状の照射痕104(
図5参照。)を形成する。
【0026】
照射痕形成工程において最初の照射痕形成加工を行った後、集光器34に対してチャックテーブル24を割り出し送り手段80によってY方向片側に割り出し送りすると共に、集光器34を光軸方向他側に移動させる。そして、Y方向片側への割り出し送り及び集光器34の光軸方向他側への移動と、照射痕形成加工とを交互に繰り返すことにより、適宜のピッチで集光器34を光軸方向他側へ移動させた複数の条件での円形の照射痕102及び線状の照射痕104をY方向に間隔をおいて2層プレート96の上面に形成する。照射痕形成工程は、たとえば以下の加工条件で実施することができる。
パルスレーザー光線の波長 :1342nm
繰り返し周波数 :60kHz
平均出力 :0.1〜0.3W
加工送り速度 :600mm/s
【0027】
照射痕形成工程において最初の照射痕形成加工を行う際は、集光器34に予め設定された集光点と集光器34によって集光される正確な集光点との間に生じ得る狂いが数μm程度であるから、集光器34に予め設定された集光点を2層プレート96の上面に位置づけた状態から集光器34を光軸方向片側に上記狂いよりも若干大きい所定距離(たとえば10μm)だけ移動させればよい。また、最初の照射痕形成加工を行った後に集光器34を光軸方向他側に移動させる際は、0.5〜1.0μmのピッチで上記所定距離の2倍程度の距離(たとえば20μm)だけ移動させればよい。
【0028】
照射痕形成工程においては、集光器34に予め設定された集光点から集光器34を正の光軸方向、負の光軸方向に移動して照射痕を複数形成すると円形の照射痕102の一方の端から他方の端に線状の照射痕104がコマ送り的に移動して複数の照射痕が形成される。すなわち、
図5を参照して、集光器34によって集光される集光点と、円形の照射痕102及び線状の照射痕104との関係について説明する。
図5には、集光器34に予め設定された集光点を2層プレート96の上面に位置づけた状態から集光器34を負の光軸方向(
図2において「−」で示す方向)に10μmだけ移動させて最初の照射痕形成加工を行った場合と、最初の照射痕形成加工を行った状態からチャックテーブル24をY方向に1.0mmだけ割り出し送りすると共に集光器34を正の光軸方向(
図2において「+」で示す方向)に1.0μmだけ移動させて照射痕形成加工を行った場合との双方の場合において示されている。そして、X方向に繰り返し周波数60kHz、加工送り速度600mm/sで移動すると、X方向に10μmの間隔をもって2層プレート96に円形の照射痕102及び線状の照射痕104が形成されることが示されている。さらに、
図5には、最初の照射痕形成加工を行った状態からチャックテーブル24をY方向に1.0mmずつ割り出し送りすると共に、集光器34を正の光軸方向に1.0μmずつ移動させながら照射痕形成加工を行って2層プレート96に形成した円形の照射痕102及び線状の照射痕104のうち、X方向の任意の位置においてY方向に沿って見た円形の照射痕102及び線状の照射痕104が示されている。円形の照射痕102は、集光点におけるエネルギーが比較的高い中心部分に形成され、かつ集光点におけるエネルギーが比較的低い周縁部分では形成されないことから、円形の照射痕102の中心は集光点の中心と整合しており、かつ円形の照射痕102の直径は集光点の直径よりも小さい。しかしながら、集光点が2層プレート96の上面に位置づけられた場合と、集光点が2層プレート96の上面よりも若干上方又は若干下方に位置づけられた場合とで、円形の照射痕102の直径はほとんど変化しないため、円形の照射痕102のみを形成しただけでは、集光点が2層プレート96の上面に位置づけられているか否かを判別することは困難である。他方、線状の照射痕104は、パルスレーザー光線LBの半径方向における長さが集光点形成部40の内径よりも短いスリット部38を通過しているため、集光点が2層プレート96の上面に位置づけられた場合には円形の照射痕102の中心(すなわち、集光点の中心)を通る位置に形成される一方、集光点が2層プレート96の上面に位置づけられていない場合には円形の照射痕102の中心から離れた位置に形成され、集光点が2層プレート96の上面から離れるに従って円形の照射痕102の中心と線状の照射痕104との距離が増大する。たとえば
図5に示すとおり、集光器位置づけ手段46によって集光器34に予め設定された集光点が2層プレート96の上面に位置づけられたときの集光器34の上下方向位置を基準として、集光器34を負の光軸方向に4μm移動させたときに2層プレート96に形成された線状の照射痕104は円形の照射痕102の中心を通っており、したがって、集光器34に予め設定された集光点から負の光軸方向に4μmの位置が集光器34によって集光される集光点の正確な位置である。そして、
図5を参照することによって理解されるとおり、集光器34によって集光される集光点の正確な位置が2層プレート96の上面よりも上方に位置づけられた場合には、線状の照射痕104が円形の照射痕102の中心から片側(
図5においては右側)に離れた位置に形成され、集光器34によって集光される集光点の正確な位置が2層プレート96の上面よりも下方に位置づけられた場合には、線状の照射痕104が円形の照射痕102の中心から他側(
図5においては左側)に離れた位置に形成される。また、集光点が2層プレート96の上面から離れるに従って円形の照射痕102の中心と線状の照射痕104との距離が増大する。このように照射痕形成工程を実施すると、
図5に示すとおり、円形の照射痕102の一方の端から他方の端に線状の照射痕104がコマ送り的に移動して複数の照射痕が形成される。
【0029】
照射痕形成工程を実施した後、基板に形成された複数の照射痕から適正な形状の照射痕を検出し、適正な照射痕を形成した集光点の位置を正確な集光点の位置として検出する集光点位置検出工程を実施する。上述のとおり、集光点が2層プレート96の上面に位置づけられた場合に線状の照射痕104が円形の照射痕102の中心を通るので、集光点位置検出工程においては、線状の照射痕104が円形の照射痕102を二等分する照射痕を適正な形状の照射痕として検出する。図示の実施形態では
図5に示すとおり、集光器34に予め設定された集光点から負の光軸方向に4μmの位置において、線状の照射痕104が円形の照射痕102を二等分しているので、この位置を正確な集光点の光軸方向位置として検出する。以上のとおり、図示の実施形態では集光器34によって集光される集光点の光軸方向位置を正確かつ容易に検出できる。なお、レーザー加工装置2を用いてレーザー加工を行う際は、検出された集光器34の正確な集光点の位置とレチクル70の十字形状部70aのパターン76を基板の上面に投影して得られた集光点の位置との差(図示の実施形態では4μm)を求めて補正値として用いることで、集光器34によって集光される集光点をレーザー加工に応じた適正な位置に位置づけることができる。