特許第6882721号(P6882721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

特許6882721高分岐高分子及び金属微粒子を含む無電解めっき下地剤
<>
  • 特許6882721-高分岐高分子及び金属微粒子を含む無電解めっき下地剤 図000017
  • 特許6882721-高分岐高分子及び金属微粒子を含む無電解めっき下地剤 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6882721
(24)【登録日】2021年5月11日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】高分岐高分子及び金属微粒子を含む無電解めっき下地剤
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/28 20060101AFI20210524BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20210524BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20210524BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20210524BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210524BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20210524BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C23C18/28
   C08L101/02
   G03F7/027 511
   G03F7/031
   G03F7/004 501
   G03F7/075 501
   G03F7/40 521
【請求項の数】16
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2018-504520(P2018-504520)
(86)(22)【出願日】2017年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2017009042
(87)【国際公開番号】WO2017154919
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2020年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-45544(P2016-45544)
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 圭介
【審査官】 西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/141216(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/141215(WO,A1)
【文献】 特表2015−515639(JP,A)
【文献】 特表2010−530441(JP,A)
【文献】 特開2006−121112(JP,A)
【文献】 特開2015−166084(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/158949(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/035897(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/017625(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/042215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/28
C08L 101/02
G03F 7/004
G03F 7/027
G03F 7/031
G03F 7/075
G03F 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に無電解めっき処理により金属めっき膜を形成するための下地剤であって、
(a)アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が1,000〜5,000,000であるハイパーブランチポリマー、
(b)金属微粒子、
(c)分子内に1個以上の末端が重合性不飽和結合である側鎖を有し、オキシアルキレン基を全繰り返し単位の100モルあたり15〜50モル有し且つ重量平均分子量が10,000〜100,000である高分子化合物、
(d)光重合開始剤、
(e)アミノ基を有する化合物、及び
(f)多官能チオール
を含む感光性下地剤。
【請求項2】
前記(c)高分子化合物が、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、請求項1に記載の感光性下地剤。
【請求項3】
前記(c)高分子化合物のオキシアルキレン基がポリ(オキシアルキレン)基である、請求項1又は請求項2に記載の感光性下地剤。
【請求項4】
前記(c)高分子化合物が、さらに、重量平均分子量が20,000〜50,000の化合物である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の感光性下地剤。
【請求項5】
前記(f)多官能チオールが4官能チオールである、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の感光性下地剤。
【請求項6】
前記(e)アミノ基を有する化合物がアミノ基を有するアルコキシシラン化合物である、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の感光性下地剤。
【請求項7】
前記(a)ハイパーブランチポリマーが、式[1]で表されるハイパーブランチポリマーである、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の感光性下地剤。
【化1】





(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至20の直鎖状、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基、炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基又は−(CHCHO)(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは2乃至100の整数を表す。)を表す(該アルキル基及びアリールアルキル基は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシ基又はシアノ基で置換されていてもよい。)か、R乃至Rのうちの2つの基が一緒になって、直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表すか、又はR乃至Rはそれらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、Xは陰イオンを表し、nは繰り返し単位構造の数であって、5乃至100,000の整数を表し、Aは式[2]で表される構造を表す。)
【化2】






(式中、Aはエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y乃至Yはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基又はシアノ基を表す。)
【請求項8】
前記(a)ハイパーブランチポリマーが、式[3]で表されるハイパーブランチポリマーである、請求項7に記載の感光性下地剤。
【化3】





(式中、R乃至R及びnは前記と同じ意味を表す。)
【請求項9】
前記(b)金属微粒子が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも一種の金属の微粒子である、請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載の感光性下地剤。
【請求項10】
前記(b)金属微粒子が、パラジウム微粒子である、請求項9に記載の感光性下地剤。
【請求項11】
前記(b)金属微粒子が、1〜100nmの平均粒径を有する微粒子である、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の感光性下地剤。
【請求項12】
フォトリソグラフィーによりパターン形成が可能である、請求項1乃至請求項11のうち何れか一項に記載の感光性下地剤。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の感光性下地剤からなる、フォトリソグラフィーによるパターン化層である、無電解めっき下地層。
【請求項14】
請求項13に記載の無電解めっき下地層上に形成された無電解めっき層からなる、金属めっき膜。
【請求項15】
基材と、該基材上に形成された請求項13に記載の無電解めっき下地層と、該無電解めっき下地層上に形成された請求項14に記載の金属めっき膜とを具備する、金属被膜基材。
【請求項16】
下記A工程乃至C工程を含む、金属被膜基材の製造方法。
A工程:請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の感光性下地剤を基材上に塗布し、下地層を具備する工程
B工程:フォトリソグラフィーにより所望のパターンの下地層を形成する工程
C工程:パターニングされた下地層を具備した基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイパーブランチポリマー、金属微粒子、重合性化合物及び光重合開始剤を含む感光性下地剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、ウェアラブル端末などのデバイスの小型化に伴い、パターンの高密度化や、透過率や視認性が高い配線を透明基板上に形成するために、微細配線パターンを容易に形成する手法が求められている。
【0003】
微細配線を形成する手段の一つに、フォトリソグラフィーにより無電解めっき触媒をパターニングした後、無電解めっきを施す方法が開示されている(特許文献1)。具体的には、無電解めっきの触媒となる金属錯体、金属イオン又は金属コロイドなどを感光性樹脂に混合した材料が用いられ、フォトマスクを介したUV露光、現像により、格子状などの任意のパターンの下地を形成し、これに無電解めっきを施すことにより導電性パターンを得る方法が開示されている。
【0004】
また、無電解めっき下地剤として、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマー及びPd微粒子を含む組成物を使用することで、塗布後活性化工程を経ずに直接無電解めっき液へ浸漬させるだけで無電解めっきが形成される例が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−170421号公報
【特許文献2】国際公開第2012/141215号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、金属コロイドの安定化剤として、PVPなどの保護コロイドやドデシルベンゼンスルホン酸等の界面活性剤などが用いられるが、保護コロイドの分解や金属コロイドの凝集などによるワニスの安定性が懸念されるだけでなく、プロセスにおいては、現像時に触媒の洗浄が困難である場合が多い。また、無電解めっきの際に、目的部分以外にもめっきが析出することも問題となる。さらに、水溶性のレジストや金属安定剤を用いるため、パターンのにじみ、線太りなどのパターン形状の保持が問題となる。該特許文献では、得られた透明導電膜の透過率と抵抗値について議論されるのみであり、得られたパターンの線幅(形状)については詳細に言及されていない。
【0007】
また液晶表示素子等に使用する透明電極には、画像の視認性が要求される。しかし、無電解めっきにより金属配線を形成した場合、形成された金属被膜が金属光沢を有し、それが外部光を反射するため、金属配線が目立たず画像視認性の高い明瞭な表示装置を製造することが難しいという問題がある。そのため、無電解めっきにより透明電極を形成する技術にあっては、形成した金属めっき被膜の裏面(透明基材面)における黒色化による金属光沢の抑制が求められる。
【0008】
そこで本発明はこうした課題に着目し、環境に配慮し、少ない工程数で簡便に処理でき、かつフォトリソグラフィーにより容易に幅数μmといった微細な配線を形成可能な、無電解めっきの前処理工程として用いられる新たな無電解めっき下地剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子、そしてここに特定の重合性化合物と光重合開始剤並びにアミノ基を有する化合物及び多官能チオールとを組み合わせて感光性下地剤を得、これを基材上に塗布して得られる層が、フォトリソグラフィーによりパターニング可能であり、パターン化された無電解金属めっきの下地層を得られること、該下地層がめっき性に優れ、金属めっき膜と被めっき基材との密着性の向上に有用な層となることを見出した。さらに、該パターン化された無電解金属めっきの下地層をガラス等の透明基材上に形成し、その上に金属めっき被膜を形成した際、めっき被膜形成部分の裏面が黒色を呈することを見出した。特に、上記感光剤下地剤において、アミノ基を有する化合物とチオール化合物の配合により、金属微粒子の分散性や反応性を向上できるとともに、高感度なパターニングが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、第1観点として、基材上に無電解めっき処理により金属めっき膜を形成するための下地剤であって、
(a)アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が1,000〜5,000,000であるハイパーブランチポリマー、
(b)金属微粒子、
(c)分子内に1個以上の末端が重合性不飽和結合である側鎖を有し、オキシアルキレン基を全繰り返し単位の100モルあたり15〜50モル有し且つ重量平均分子量が10,000〜100,000である高分子化合物、
(d)光重合開始剤、
(e)アミノ基を有する化合物、及び
(f)多官能チオール
を含む感光性下地剤に関する。
第2観点として、前記(c)高分子化合物が、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である、第1観点に記載の感光性下地剤に関する。
第3観点として、前記(c)高分子化合物のオキシアルキレン基がポリ(オキシアルキレン)基である、第1観点又は第2観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤に関する。
第4観点として、前記(c)高分子化合物の重量平均分子量が20,000〜50,000である、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一つに記載の感光性下地剤に関する。
第5観点として、前記(f)多官能チオールが4官能チオールである、第1観点乃至第4観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤に関する。
第6観点として、前記(e)アミノ基を有する化合物がアミノ基を有するアルコキシシラン化合物である、第1観点乃至第5観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤に関する。
第7観点として、前記(a)ハイパーブランチポリマーが、式[1]で表されるハイパーブランチポリマーである、第1観点乃至第6観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤に関する。
【化1】





(式中、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至20の直鎖状、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基、炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基又は−(CHCHO)(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは2乃至100の整数を表す。)を表す(該アルキル基及びアリールアルキル基は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシ基又はシアノ基で置換されていてもよい。)か、R乃至Rのうちの2つの基が一緒になって、直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表すか、又はR乃至Rはそれらが結合する窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、Xは陰イオンを表し、nは繰り返し単位構造の数であって、5乃至100,000の整数を表し、Aは式[2]で表される構造を表す。)
【化2】





(式中、Aはエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y乃至Yはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基又はシアノ基を表す。)
第8観点として、前記(a)ハイパーブランチポリマーが、式[3]で表されるハイパーブランチポリマーである、第7観点に記載の感光性下地剤に関する。
【化3】





(式中、R乃至R及びnは前記と同じ意味を表す。)
第9観点として、前記(b)金属微粒子が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも一種の金属の微粒子である、第1観点乃至第8観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤に関する。
第10観点として、前記(b)金属微粒子が、パラジウム微粒子である、第9観点に記載の感光性下地剤に関する。
第11観点として、前記(b)金属微粒子が、1〜100nmの平均粒径を有する微粒子である、第1観点乃至第10観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤に関する。
第12観点として、フォトリソグラフィーによりパターン形成が可能である、第1観点乃至第11観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤に関する。
第13観点として、第1観点乃至第12観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤からなる、フォトリソグラフィーによるパターン化層である、無電解めっき下地層に関する。
第14観点として、第13観点に記載の無電解めっき下地層上に形成された無電解めっき層からなる、金属めっき膜に関する。
第15観点として、基材と、該基材上に形成された第13観点に記載の無電解めっき下地層と、該無電解めっき下地層上に形成された第14観点に記載の金属めっき膜とを具備する、金属被膜基材に関する。
第16観点として、下記A工程乃至C工程を含む、金属被膜基材の製造方法に関する。
A工程:第1観点乃至第12観点のうち何れか一つに記載の感光性下地剤を基材上に塗布し、下地層を具備する工程、
B工程:フォトリソグラフィーにより所望のパターンの下地層を形成する工程、
C工程:パターニングされた下地層を具備した基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成する工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性下地剤は、基材上に塗布し、マスクを介してフォトリソグラフィーを実施することで容易にパターン化された無電解金属めっきの下地層を形成することができる。
また、本発明の感光性下地剤は、従来、金属めっき膜との密着性を高めるために基材上に形成されていたプライマー層を形成せずとも、基材との密着性に優れる下地層を形成することができる。さらに、本発明の感光性下地剤は、μmオーダーのパターン化されためっき下地層を形成することができ、各種配線技術にも好適に使用することができる。
特に本発明の感光性下地剤は、パラジウム等の金属微粒子に配位結合してアンミン錯体を形成し得るアミノ基を有する化合物の配合により、下地剤中の金属微粒子の分散安定性を向上でき、さらに、同時に添加した多官能チオールが架橋剤としてだけでなく連鎖移動剤としての役割をも担うことで、フォトリソグラフィー時に高感度で優れた現像性を有するパターン化された無電解金属めっきの下地層を形成することができる。
また本発明の感光性下地剤から形成された無電解金属めっきの下地層は、無電解めっき浴に浸漬するだけで、容易に金属めっき膜を形成でき、基材と下地層、そして金属めっき膜とを備える金属被膜基材を容易に得ることができる。
そして上記金属めっき膜は、下層の下地層との密着性に優れる。
すなわち、本発明の感光性下地剤を用いて基材上に下地層を形成することにより、いわば基材との密着性に優れた金属めっき膜を形成することができる。
さらに、本発明の上記感光性下地剤上に金属めっき膜を形成した際、その裏面は黒色を呈するため、これらをガラス基板等の透明基材上に形成した際に、画像視認性の高い透明電極としての使用を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、製造例1で製造した塩素原子を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−Cl)のH NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、製造例2で製造したジメチルオクチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−N(Me)OctCl)の13C NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[下地剤]
<(a)ハイパーブランチポリマー>
本発明の感光性下地剤に用いられる(a)ハイパーブランチポリマーは、アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が1,000〜5,000,000であるポリマーであり、具体的には下記式[1]で表されるハイパーブランチポリマーが挙げられる。
【化4】





前記式[1]中、Rは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
また、R乃至Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキル基、炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基、又は−(CHCHO)(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは2乃至100の任意の整数を表す。)を表す。上記アルキル基及びアリールアルキル基は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシ基又はシアノ基で置換されていてもよい。また、R乃至Rのうちの2つの基が一緒になって、直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表すか、又はR乃至R並びにそれらが結合する窒素原子が一緒になって環を形成してもよい。
またXは陰イオンを表し、nは繰り返し単位構造の数であって、5乃至100,000の整数を表す。
【0014】
上記R乃至Rにおける炭素原子数1乃至20の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等が挙げられ、下地剤が無電解めっき液に溶出しにくい点で、炭素原子数8以上の基が好ましく、特にn−オクチル基が好ましい。枝分かれ状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環構造を有する基等が挙げられる。
またR乃至Rにおける炭素原子数7乃至20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
さらに、R乃至Rのうちの2つの基が一緒になった直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。枝分かれ状のアルキレン基としては、メチルエチレン基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基等が挙げられる。環状のアルキレン基としては、炭素原子数3乃至30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。これらアルキレン基は基中に窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいてもよい。
そして、式[1]で表される構造でR乃至R並びにそれらと結合する窒素原子が一緒になって形成する環は、環中に窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいてもよく、例えばピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、ビピリジル環等が挙げられる。
これらR乃至Rの組合せとしては、例えば、[メチル基、メチル基、メチル基]、[メチル基、メチル基、エチル基]、[メチル基、メチル基、n−ブチル基]、[メチル基、メチル基、n−ヘキシル基]、[メチル基、メチル基、n−オクチル基]、[メチル基、メチル基、n−デシル基]、[メチル基、メチル基、n−ドデシル基]、[メチル基、メチル基、n−テトラデシル基]、[メチル基、メチル基、n−ヘキサデシル基]、[メチル基、メチル基、n−オクタデシル基]、[エチル基、エチル基、エチル基]、[n−ブチル基、n−ブチル基、n−ブチル基]、[n−ヘキシル基、n−ヘキシル基、n−ヘキシル基]、[n−オクチル基、n−オクチル基、n−オクチル基]等が挙げられ、中でも[メチル基、メチル基、n−オクチル基]、[n−オクチル基、n−オクチル基、n−オクチル基]の組合せが好ましい。
またXの陰イオンとして好ましくはハロゲン原子、PF、BF又はパーフルオロアルカンスルホナートが挙げられる。
【0015】
上記式[1]中、Aは下記式[2]で表される構造を表す。
【化5】





上記式[2]中、Aはエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表す。
乃至Yは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基又はシアノ基を表す。
【0016】
上記Aのアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖状アルキレン基、メチルエチレン基、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基等の枝分かれ状アルキレン基が挙げられる。また環状アルキレン基としては、炭素原子数3乃至30の単環式、多環式及び架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。例えば、下記に脂環式脂肪族基のうち、脂環式部分の構造例(a)乃至(s)を示す。
【化6】





【0017】
また上記式[2]中のY乃至Yの炭素原子数1乃至20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素原子数1乃至20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。Y乃至Yとしては、水素原子又は炭素原子数1乃至20のアルキル基が好ましい。
【0018】
好ましくは、本発明に用いられるハイパーブランチポリマーとしては、下記式[3]で表されるハイパーブランチポリマーが挙げられる。
【化7】






前記式[3]中、R、R乃至R及びnは上記と同じ意味を表す。
【0019】
本発明で用いる上記アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは、例えば、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーにアミン化合物を反応させることによって得ることができる。
なお、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーは、国際公開第2008/029688号パンフレットの記載に従い、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーより製造することができる。該ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは、市販品を用いることができ、日産化学工業(株)製のハイパーテック(登録商標)HPS−200等を好適に使用可能である。
【0020】
本反応で使用できるアミン化合物は、第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン等のアラルキルアミン;アニリン、p−n−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−オクチルアニリン、p−n−デシルアニリン、p−n−ドデシルアニリン、p−n−テトラデシルアニリンなどのアニリン類、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミンなどのナフチルアミン類、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセンなどのアミノアントラセン類、1−アミノアントラキノンなどのアミノアントラキノン類、4−アミノビフェニル、2−アミノビフェニルなどのアミノビフェニル類、2−アミノフルオレン、1−アミノ−9−フルオレノン、4−アミノ−9−フルオレノンなどのアミノフルオレン類、5−アミノインダンなどのアミノインダン類、5−アミノイソキノリンなどのアミノイソキノリン類、9−アミノフェナントレンなどのアミノフェナントレン類等の芳香族アミンが挙げられる。更に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,2−エチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,3−プロピレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,4−ブチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,5−ペンタメチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N−(2−メトキシエチル)アミン、N−(2−エトキシエチル)アミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0021】
第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、エチルメチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−n−ペンチルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル−n−ブチルアミン、エチル−n−ペンチルアミン、メチル−n−オクチルアミン、メチル−n−デシルアミン、メチル−n−ドデシルアミン、メチル−n−テトラデシルアミン、メチル−n−ヘキサデシルアミン、メチル−n−オクタデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル−n−オクチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン等の脂肪族アミン;ジシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ジベンジルアミン等のアラルキルアミン;ジフェニルアミン等の芳香族アミン;フタルイミド、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。更に、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、ビス(2−プロポキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0022】
第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジメチル−n−ヘキシルアミン、ジメチル−n−オクチルアミン、ジメチル−n−デシルアミン、ジエチル−n−デシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン、ジメチル−n−テトラデシルアミン、ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、ジメチル−n−オクタデシルアミン、ジメチル−n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、1−メチルイミダゾール、4,4’−ビピリジル、4−メチル−4,4’−ビピリジル等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。
【0023】
これらの反応で使用できるアミン化合物の使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーのハロゲン原子1モルに対して0.1〜20モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、より好ましくは1〜5モル当量であればよい。
【0024】
分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物との反応は、水又は有機溶媒中で、塩基の存在下又は非存在下で行なうことができる。使用する溶媒は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物を溶解可能なものが好ましい。さらに、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物を溶解可能であるが、分子末端にアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶解しない溶媒であれば、単離が容易となりさらに好適である。
本反応で使用できる溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであればよく、水;イソプロパノール等のアルコール類;酢酸等の有機酸類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類が使用できる。これらの溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーの質量に対して0.2〜1,000倍質量、好ましくは1〜500倍質量、より好ましくは5〜100倍質量、最も好ましくは5〜50倍質量の溶媒を使用することが好ましい。
【0025】
好適な塩基としては一般に、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物(例えば酸化リチウム、酸化カルシウム)、アルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム)、アルカリ金属アミド(例えばナトリウムアミド)、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム)等の無機化合物、並びにアルカリ金属アルキル、アルキルマグネシウムハロゲン化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、ジメトキシマグネシウム等の有機金属化合物が使用される。特に好ましいのは、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムである。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーのハロゲン原子1モルに対して0.2〜10モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、最も好ましくは1〜5モル当量の塩基を使用することが好ましい。
【0026】
この反応では反応開始前に反応系内の酸素を十分に除去することが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性気体で系内を置換するとよい。反応条件としては、反応時間は0.01〜100時間、反応温度は0〜300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間が0.1〜72時間で、反応温度が20〜150℃である。
【0027】
第三級アミンを用いた場合、塩基の存在/非存在に関わらず、式[1]で表されるハイパーブランチポリマーを得ることができる。
塩基の非存在下で、第一級アミン又は第二級アミン化合物と分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーを反応させた場合、それぞれに対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化されたアンモニウム基末端のハイパーブランチポリマーが得られる。また、塩基を用いて反応を行った場合においても、有機溶媒中で塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等の酸の水溶液と混合することにより、対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化されたアンモニウム基末端のハイパーブランチポリマーが得られる。
【0028】
前記ハイパーブランチポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが1,000〜5,000,000であり、より好ましくは2,000〜200,000であり、最も好ましくは3,000〜100,000である。また、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0〜7.0であり、好ましくは1.1〜6.0であり、より好ましくは1.2〜5.0である。
【0029】
<(b)金属微粒子>
本発明の感光性下地剤に用いられる(b)金属微粒子としては特に限定されず、金属種としては鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)並びにこれらの合金が挙げられ、これらの金属の1種類でもよいし2種以上の併用でも構わない。中でも好ましい金属微粒子としてはパラジウム微粒子が挙げられる。なお、金属微粒子として、前記金属の酸化物を用いてもよい。
【0030】
前記金属微粒子は、例えば金属塩の水溶液を高圧水銀灯により光照射する方法や、該水溶液に還元作用を有する化合物(所謂還元剤)を添加する方法等により、金属イオンを還元することによって得られる。例えば、上記ハイパーブランチポリマーを溶解した溶液に金属塩の水溶液を添加してこれに紫外線を照射する、又は、該ハイパーブランチポリマー溶液に金属塩の水溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することにより、ハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体を形成させながら、ハイパーブランチポリマー及び金属微粒子を含む下地剤を調製することができる。
【0031】
前記金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化スズ、塩化第一白金、塩化白金酸、Pt(dba)[dba=ジベンジリデンアセトン]、Pt(cod)[cod=1,5−シクロオクタジエン]、Pt(CH(cod)、塩化パラジウム、酢酸パラジウム(Pd(OC(=O)CH)、硝酸パラジウム、Pd(dba)・CHCl、Pd(dba)、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、Ru(cod)(cot)[cot=シクロオクタトリエン]、塩化イリジウム、酢酸イリジウム、Ni(cod)等が挙げられる。
前記還元剤としては、特に限定されるものではなく、種々の還元剤を用いることができ、得られる下地剤に含有させる金属種等により還元剤を選択することが好ましい。用いることができる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;ヒドラジン化合物;クエン酸及びその塩;コハク酸及びその塩;アスコルビン酸及びその塩;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の第三級アミン類;ヒドロキシルアミン;トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエトキシホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)等のホスフィン類などが挙げられる。
【0032】
前記金属微粒子の平均粒径は1〜100nmが好ましい。該金属微粒子の平均粒径を100nm以下とすることで、表面積の減少が少なく十分な触媒活性が得られる。平均粒径としては、75nm以下が更に好ましく、1〜30nmが特に好ましい。
【0033】
本発明の感光性下地剤における上記(a)ハイパーブランチポリマーの添加量は、上記(b)金属微粒子100質量部に対して50〜2,000質量部が好ましい。50質量部以上とすることで、上記金属微粒子を十分に分散させることができ、また2,000質量部以下とすることで、有機物含有量の増加に因る物性等の不具合を抑制することができる。より好ましくは、100〜1,000質量部である。
【0034】
<(c)末端が重合性不飽和結合である側鎖を有する高分子化合物>
本発明の感光性下地剤に用いられる(c)成分は、分子内に1個以上の末端が重合性不飽和結合である側鎖を有し、オキシアルキレン基を全繰り返し単位の100モルあたり15〜50モル有し且つ重量平均分子量が10,000〜100,000である重合性高分子化合物である。
このような末端が重合性不飽和結合である側鎖を有する高分子化合物としては、好ましくは分子内の2個以上の側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子化合物が挙げられ、中でも好ましくは分子内の3個以上の側鎖に(メタ)アクリロイル基を有し且つオキシアルキレン基を有する高分子化合物が挙げられる。
上記オキシアルキレン基としては、炭素原子数2乃至4のオキシアルキレン基が好ましく、中でもオキシエチレン基[−OCHCH−]又はオキシプロピレン基[−OCHC(CH)H−]が好ましい。オキシアルキレン基は複数個が連結したポリ(オキシアルキレン)基であってもよく、その場合、一種のオキシアルキレン基を単独で有していてもよく、或いは二種以上を組み合わせて有していてもよい。複数種のオキシアルキレン基を有する場合、それらの結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0035】
上記高分子化合物としては、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系、各種(メタ)アクリレート系等の(メタ)アクリロイル基を1個以上含有する高分子化合物、特に前記(メタ)アクリロイル基を3個以上含有する多官能高分子化合物等が挙げられる。
これら重合性高分子化合物の中でも、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し且つオキシアルキレン基を側鎖に有する化合物が好ましい。
【0036】
(c)成分の高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜100,000であり、より好ましくは20,000〜50,000である。分子量が10,000未満であると、本発明の効果を奏さない。一方、分子量が100,000を超えて過大であると、組成物に溶解しない場合がある。
【0037】
(c)成分の高分子化合物としては、2つ以上の側鎖に重合性不飽和二重結合を有するポリエチレンオキサイド変性ポリマーが好ましい。その際の変性率としては、15%〜50%が好ましく、20%〜40%がさらに好ましい。変性率が15%未満であると、現像液への溶解性が低下するために、現像性が低下する場合がある。変性率が50%を超えて過大であると、現像時、パターンが流れる場合がある。
そのような(c)成分である化合物としては、例えば、大成ファインケミカル株式会社製の8KX−078H等のEO変性アクリルポリマーが挙げられる。
【0038】
本発明の感光性下地剤における(c)重合性化合物の添加量は、後述する前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体(又は前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子の合計質量)100質量部に対して、10〜10,000質量部が好ましい。より好ましくは100〜2,000質量部である。(c)重合性化合物の添加量が上記10質量部未満であると、後述するフォトリソグラフィーによるめっき下地層のパターン形成が困難になり、また10,000質量部を超えて添加した場合、該下地剤により形成した下地層の上に金属めっき被膜が形成しない虞がある。
【0039】
<(d)光重合開始剤>
本発明の感光性下地剤に用いられる(d)光重合開始剤としては、公知のものが使用することが可能であり、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート類、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノスルフィド類、チオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されているものが挙げられる。
市販されている光ラジカル重合開始剤としては、例えば、IRGACURE(登録商標)184、同369、同500、同651、同784、同819、同907、同1000、同1300、同1700、同1800、同1850、同2959、同CGI1700、同CGI1750、同CGI1850、同CG24−61、同TPO、Darocur(登録商標)1116、同1173、同OXE 01[以上、BASFジャパン(株)製]、ESACURE KIP150、同KIP65LT、同KIP100F、同KT37、同KT55、同KTO46、同KIP75[以上、ランベルティ社製]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら重合開始剤は複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
本発明の感光性下地剤における(d)重合開始剤の添加量は、前記(c)重合性化合物に対して、例えば0.1〜100質量%であり、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0041】
<(e)アミノ基を有する化合物>
本発明の感光性下地剤に用いられる(e)アミノ基を有する化合物としては、公知のものが使用することが可能であり、例えば、アルキルアミン類、ヒドロキシアルキルアミン類等の脂肪族アミン類、環状置換基を有するアミン類、芳香族アミン(アリールアミン)類、そしてアミノ基を有するアルコキシシラン化合物等が挙げられる。これらアミノ基を有する化合物の中でもアミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好ましい。
また、めっき下地剤の保存安定性を向上させる観点から、アミン化合物のアミノ基はケトン類により保護(アルキリデン基による保護)されていることが好ましく、本発明において、当該アミノ基がアルキリデン基により保護されたアミン化合物もアミン化合物も(e)成分に含まれる。なお、(e)成分としてこのアルキリデン基により保護されたアミン化合物を用いる場合、後述する下地剤の溶媒としては、前記アルキリデン基による保護を外すこととなるアルコール溶媒ではなく、ケトン類、エーテル類、エステル類の溶媒を用いることが好ましい。
本発明では、アミノ基を含有する化合物を感光性下地剤に配合することにより、金属微粒子、詳細には後述する金属微粒子とアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーよりなる複合体の下地剤中の分散安定性向上の効果が得られ、また微細なめっきパターン形成に寄与する。
【0042】
上記アルキルアミン類としては、エチルアミン(CHCHNH)、プロピルアミン(CH(CHNH)、ブチルアミン(CH(CHNH)、ペンチルアミン(CH(CHNH)、ヘキシルアミン(CH(CHNH)、ヘプチルアミン(CH(CHNH)、オクチルアミン(CH(CHNH)、ノニルアミン(CH(CHNH)、デシルアミン(CH(CHNH)、ウンデシルアミン(CH(CH10NH)、ドデシルアミン(CH(CH11NH)、トリデシルアミン(CH(CH12NH)、テトラデシルアミン(CH(CH13NH)、ペンタデシルアミン(CH(CH14NH)、ヘキサデシルアミン(CH(CH15NH)、ヘプタデシルアミン(CH(CH16NH)、オクタデシルアミン(CH(CH17NH)、ノナデシルアミン(CH(CH18NH)、イコシルアミン(CH(CH19NH)、及びこれらの構造異性体等の第一級アミン類;N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン等の第二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類が挙げられる。
【0043】
上記ヒドロキシアルキルアミン類(アルカノールアミン類)としては、メタノールアミン(OHCHNH)、エタノールアミン(OH(CHNH)、プロパノールアミン(OH(CHNH)、ブタノールアミン(OH(CHNH)、ペンタノールアミン(OH(CHNH)、ヘキサノールアミン(OH(CHNH)、ヘプタノールアミン(OH(CHNH)、オクタノールアミン(OH(CHNH)、ノナノールアミン(OH(CHNH)、デカノールアミン(OH(CH10NH)、ウンデカノールアミン(OH(CH11NH)、ドデカノールアミン(OH(CH12NH)、トリデカノールアミン(OH(CH13NH)、テトラデカノールアミン(OH(CH14NH)、ペンタデカノールアミン(OH(CH15NH)、ヘキサデカノールアミン(OH(CH16NH)、ヘプタデカノールアミン(OH(CH17NH)、オクタデカノールアミン(OH(CH18NH)、ノナデカノールアミン(OH(CH19NH)、エイコサデカノールアミン(OH(CH20NH)等の第一級アミン類;N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン等の第二級アミン類などが挙げられる。
【0044】
またその他の脂肪族アミン類としては、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミン等のアルコキシアルキルアミンが挙げられる。
【0045】
環状置換基を有するアミン類の例としては、式R11−R12−NHで表されるアミン化合物が好ましい。
上記式中、R11は炭素原子数3乃至10、好ましくは炭素原子数3乃至12の一価の環状基であり、脂環式基、芳香族基、並びにそれらの組み合わせのいずれであってもよい。これらの環状基は任意の置換基、例えば炭素原子1乃至10のアルキル基等で置換されていてもよい。R12は単結合又は炭素原子数1乃至17、好ましくは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表す。
【0046】
本発明において、式R11−R12−NHで表されるアミン化合物の好ましい具体例としては、下記の式(A−1)乃至(A−10)で表される化合物などが挙げられる。
【化8】





【0047】
芳香族アミン類(アリールアミン類)の具体例として、アニリン、N−メチルアニリン、o−,m−,又はp−アニシジン、o−,m−,又はp−トルイジン、o−,m−,又はp−クロロアニリン、o−,m−,又はp−ブロモアニリン、o−,m−,又はp−ヨードアニリンなどが挙げられる。
【0048】
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物の具体例としてはN,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,2−エタンジアミン、N,N’−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−1,2−エタンジアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,2−エタンジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−1,2−エタンジアミン、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、トリメトキシ[3−(メチルアミノ)]プロピルシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン等の化合物が挙げられる。
【0049】
また上記に具体例を挙げたアルキルアミン類、ヒドロキシアルキルアミン類、その他の脂肪族アミン類、環状置換基を有するアミン類、芳香族アミン(アリールアミン)類、アルコキシシリル基を有するアミン化合物において、アミノ基が、例えばメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン類により、アルキリデン基保護されたアミノ化合物が挙げられる。
本発明の感光性下地剤における(e)アミノ基を有する化合物の含有量は、後述する前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体(又は前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子の合計質量)100質量部に対して1質量部〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは5質量部〜50質量部であり、特に10質量部〜15質量部である。
(e)アミノ基を有する化合物の含有量が上記数値範囲より過少である場合、後述する前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体やさらには後述する(f)多官能チオールの分散性・溶解性安定化効果が得られず、また上記範囲を大きく超えて添加した場合(例えば上記複合体の10質量倍量など)、めっき被膜に外観不良を起こすことがある。
【0050】
<(f)多官能チオール>
本発明の感光性下地剤に用いられる(f)成分である多官能チオールとしては、2個以上のメルカプト基を有する化合物である限り特に限定されるものではないが、例えば、置換基として2個以上のメルカプト基を有する炭化水素類、またその他の多官能の化合物として、多価アルコールのメルカプトカルボン酸エステル、例えば多価アルコールのポリ(メルカプトアセテート)類、多価アルコールのポリ(3−メルカプトプロピオネート)類、多価アルコールのポリ(2−メルカプトプロピオネート)類、多価アルコールのポリ(3−メルカプトブチレート)類、多価アルコールのポリ(3−メルカプトイソブチレート)類、等を挙げることができる。
本発明の感光性下地剤において、多官能チオールは、架橋剤としてだけでなく連鎖移動剤としての役割をも担い、フォトリソグラフィー時に高感度で優れた現像性の実現に寄与するといえる。
【0051】
上記置換基として2個以上のメルカプト基を有する炭化水素類の具体例としては、ヘキサン−1,6−ジチオール、デカン−1,10−ジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
【0052】
また他の2官能の化合物としては、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、プロピレングリコールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)等を挙げることができる。
【0053】
3官能の化合物としては、グリセリントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、グリセリントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、等を挙げることができる。
【0054】
4官能の化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトイソブチレート)、等を挙げることができる。
【0055】
6官能の化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)等を挙げることができる。
【0056】
これらの多官能チオールの中でも、感光性下地剤の現像性の向上の観点から、4官能のチオール化合物を用いることが好ましい。
本発明において、(f)多官能チオールは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0057】
本発明の感光性下地剤における(f)多官能チオールの配合量は、後述する前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体(又は前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子の合計質量)の総質量に対して0.01質量%〜200質量%であることが好ましく、0.05質量%〜50質量%であることが望ましい。配合比率が上記範囲以下であると所望の効果が得られず、一方、上記範囲を超えて添加すると、感光性下地剤の安定性、臭気、感度、解像性、現像性、密着性、めっきの析出性等が悪化する虞がある。
【0058】
<感光性下地剤>
本発明の感光性下地剤は、前記(a)アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー、(b)金属微粒子、(c)重合性化合物、(d)光重合開始剤、(e)アミノ基を有する化合物、及び(f)多官能チオールを含み、所望により、さらにはその他成分を含むものであり、このとき、前記ハイパーブランチポリマーと前記金属微粒子が複合体を形成していることが好ましい。
ここで複合体とは、前記ハイパーブランチポリマーの末端のアンモニウム基の作用により、金属微粒子に接触又は近接した状態で両者が共存し、粒子状の形態を為すものであり、言い換えると、前記ハイパーブランチポリマーのアンモニウム基が金属微粒子に付着又は配位した構造を有する複合体であると表現される。
従って、本発明における「複合体」には、上述のように金属微粒子とハイパーブランチポリマーが結合して一つの複合体を形成しているものだけでなく、金属微粒子とハイパーブランチポリマーが結合部分を形成することなく、夫々独立して存在しているものも含まれていてもよい。
【0059】
アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体の形成は、ハイパーブランチポリマーと金属微粒子を含む下地剤の調製時に同時に実施され、その方法としては、低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子を製造した後にハイパーブランチポリマーにより配位子を交換する方法や、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーの溶液中で、金属イオンを直接還元することにより複合体を形成する方法がある。例えば、上記ハイパーブランチポリマーを溶解した溶液に金属塩の水溶液を添加してこれに紫外線を照射する、又は、該ハイパーブランチポリマー溶液に金属塩の水溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することによっても複合体を形成できる。
【0060】
配位子交換法において、原料となる低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子は、Jounal of Organometallic Chemistry 1996,520,143−162等に記載の方法で製造することができる。得られた金属微粒子の反応混合溶液に、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶解し、室温(およそ25℃)又は加熱撹拌することにより目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
使用する溶媒としては、金属微粒子とアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーとを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属微粒子の反応混合液と、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは、室温(およそ25℃)乃至60℃の範囲である。
なお、配位子交換法において、アミン系分散剤(低級アンモニウム配位子)以外にホスフィン系分散剤(ホスフィン配位子)を用いることによっても、あらかじめ金属微粒子をある程度安定化することができる。
【0061】
直接還元方法としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類で還元させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、アルコール類、ハロゲン化炭化水素類、環状エーテル類が上げられ、より好ましくは、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
還元反応の温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは、室温(およそ25℃)乃至60℃の範囲である。
【0062】
他の直接還元方法としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、水素ガス雰囲気下で反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や、ヘキサカルボニルクロム[Cr(CO)]、ペンタカルボニル鉄[Fe(CO)]、オクタカルボニルジコバルト[Co(CO)]、テトラカルボニルニッケル[Ni(CO)]等の金属カルボニル錯体が使用できる。また金属オレフィン錯体や金属ホスフィン錯体、金属窒素錯体等の0価の金属錯体も使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、プロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができる。
【0063】
また、直接還元方法として、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、熱分解反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や金属カルボニル錯体やその他の0価の金属錯体、酸化銀等の金属酸化物が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくはトルエンが挙げられる。
金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは溶媒の沸点近傍、例えばトルエンの場合は110℃(加熱還流)である。
【0064】
こうして得られるアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体は、再沈殿等の精製処理を経て、粉末などの固形物の形態とすることができる。
【0065】
本発明の感光性下地剤は、前記(a)アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと(b)金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)と前記(c)重合性化合物と前記(d)光重合開始剤、(e)アミノ基を有する化合物、及び(f)多官能チオール、さらには所望によりその他成分とを含むものであって、該感光性下地剤は後述する[無電解めっき下地層]の形成時に用いるワニスの形態であってもよい。
【0066】
<その他添加剤>
本発明の感光性下地剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、さらに界面活性剤、各種表面調整剤等の添加剤や、増感剤、重合禁止剤、重合開始剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0067】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンノニオン系界面活性剤;エフトップ(登録商標)EF−301、同EF−303、同EF−352[以上、三菱マテリアル電子化成(株)製]、メガファック(登録商標)F−171、同F−173、同R−08、同R−30[以上、DIC(株)製]、Novec(登録商標)FC−430、同FC−431[以上、住友スリーエム(株)製]、アサヒガード(登録商標)AG−710[旭硝子(株)製]、サーフロン(登録商標)S−382[AGCセイミケミカル(株)製]等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0068】
また、上記表面調整剤としては、信越シリコーン(登録商標)KP−341[信越化学工業(株)製]等のシリコーン系レベリング剤;BYK(登録商標)−302、同307、同322、同323、同330、同333、同370、同375、同378[以上、ビックケミー・ジャパン(株)製]等のシリコーン系表面調整剤などが挙げられる。
【0069】
これら添加剤は一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。添加剤の使用量は、前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体100質量部に対して、0.001〜50質量部が好ましく、0.005〜10質量部がより好ましく、0.01〜5質量部がより一層好ましい。
【0070】
[無電解めっき下地層]
上述の本発明の感光性下地剤は、基材上に塗布して薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィーすることにより、パターン形成された無電解めっき下地層を形成することができる。当該下地層も本発明の対象である。
【0071】
前記基材としては特に限定されないが、非導電性基材又は導電性基材を好ましく使用できる。
非導電性基材としては、例えばガラス、セラミック等;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、PEN(ポリエチレンナフタラート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂等;紙などが挙げられる。これらはシート又はフィルム等の形態にて好適に使用され、この場合の厚さについては特に限定されない。
また導電性基材としては、例えばITO(スズドープ酸化インジウム)や、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、また各種ステンレス鋼、アルミニウム並びにジュラルミン等のアルミニウム合金、鉄並びに鉄合金、銅並びに真鍮、燐青銅、白銅及びベリリウム銅等の銅合金、ニッケル並びにニッケル合金、そして、銀並びに洋銀等の銀合金などの金属等が挙げられる。
さらに上記非導電性基材上にこれらの導電性基材で薄膜が形成された基材も使用可能である。
また、上記基材は、三次元成形体であってもよい。
【0072】
上記アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子、重合性化合物、光重合開始剤、アミノ基を有する化合物及び多官能チオールを含有する感光性下地剤より無電解めっき下地層を形成する具体的な方法としては、まず前記アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)と、重合性化合物、光重合開始剤、アミノ基を有する化合物及び多官能チオールとを適当な溶媒に溶解又は分散させてワニスの形態とし、該ワニスを、金属めっき被膜を形成する基材上にスピンコート法;ブレードコート法;ディップコート法;ロールコート法;バーコート法;ダイコート法;スプレーコート法;インクジェット法;ファウンテンペンナノリソグラフィー(FPN)、ディップペンナノリソグラフィー(DPN)などのペンリソグラフィー;活版印刷、フレキソ印刷、樹脂凸版印刷、コンタクトプリンティング、マイクロコンタクトプリンティング(μCP)、ナノインプリンティングリソグラフィー(NIL)、ナノトランスファープリンティング(nTP)などの凸版印刷法;グラビア印刷、エングレービングなどの凹版印刷法;平版印刷法;スクリーン印刷、謄写版などの孔版印刷法;オフセット印刷法等によって塗布し、その後、溶媒を蒸発・乾燥させることにより、薄層を形成する。
これらの塗布方法の中でもスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ペンリソグラフィー、コンタクトプリンティング、μCP、NIL及びnTPが好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。スプレーコート法を用いる場合には、極少量のワニスで均一性の高い塗布を行うことができ、工業的に非常に有利となる。インクジェット法、ペンリソグラフィー、コンタクトプリンティング、μCP、NIL、nTPを用いる場合には、例えば配線などの微細パターンを効率的に形成(描画)することができ、工業的に非常に有利となる。
【0073】
またここで用いられる溶媒としては、上記複合体(アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子)、重合性化合物、光重合開始剤、アミノ基を有する化合物及び多官能チオールを溶解又は分散するものであれば特に限定されないが、たとえば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のグリコールエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシドなどが使用できる。これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。さらに、ワニスの粘度を調整する目的で、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類を添加してもよい。
また上記溶媒に溶解又は分散させる濃度は任意であるが、ワニス中の固形分濃度は0.005〜90質量%であり、好ましくは0.01〜80質量%である。ここで、固形分とは、ワニス中の溶剤を除いた成分のことである。
【0074】
溶媒の乾燥法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する下地層を得ることが可能である。焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うことが好ましい。
【0075】
上述の如く得られた薄膜は、その後、所定のパターンを有するマスクを介して、露光量10〜3,000mJ/cm程度で露光し、次に現像液を用いて現像することで、露光部が洗い出されることにより、パターン化された無電解めっき下地層が得られる。
【0076】
前記露光には、例えば水銀ランプ等の紫外線、遠紫外線、電子線、もしくはX線等が用いられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV−LED等が使用できる。
【0077】
また現像方法としては特に制限はなく、液盛り法、パドル法、ディッピング法、スプレー法、揺動浸漬法等の公知の方法により行うことができる。現像温度は20〜50℃の間が好ましく、現像時間は、例えば10秒〜10分間である。
【0078】
前記現像液としては、有機溶剤、水又はアルカリ性水溶液などを用いることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエーテルエステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類などが挙げられる。
またアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン等の水酸化第四級アンモニウムの水溶液;エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン、モルホリン等のアミン水溶液などが挙げられる。
これら現像液は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合してもよい。混合溶液としては、例えば、PGME/PGMEA混合溶液(質量比7:3)等が好適に使用できる。
これらの現像液には、現像性を調整するために、水;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が加えられていてもよい。さらに、未露光部の除去性を高めるために、界面活性剤などが加えられていてもよい。
また、上記現像液は市販品を好適に使用でき、例えば、OK73シンナー[東京応化工業(株)]等が挙げられる。
【0079】
現像後、水あるいは一般有機溶剤による洗浄を、例えば20〜90秒程度実施することが好ましい。その後、圧縮空気若しくは圧縮窒素を用いて又はスピニングにより風乾することで基材上の水分を除去する。必要に応じてホットプレート又はオーブンなどを用いて加熱乾燥し、パターニングされた無電解めっき下地層を得る。
【0080】
[無電解めっき処理、金属めっき膜、金属被膜基材]
上記のようにして得られた基材上に形成された無電解めっき下地層を無電解めっきすることにより、無電解めっき下地層の上に金属めっき膜が形成される。こうして得られる金属めっき膜、並びに、基材上に無電解めっき下地層、金属めっき膜の順にて具備する金属被膜基材も本発明の対象である。
無電解めっき処理(工程)は特に限定されず、一般的に知られている何れの無電解めっき処理にて行うことができ、例えば、従来一般に知られている無電解めっき液を用い、該めっき液(浴)に基材上に形成された無電解めっき下地層を浸漬する方法が一般的である。
【0081】
前記無電解めっき液は、主として金属イオン(金属塩)、錯化剤、還元剤を主に含有し、その他用途に合わせてpH調整剤、pH緩衝剤、反応促進剤(第二錯化剤)、安定剤、界面活性剤(めっき膜への光沢付与用途、被処理面の濡れ性改善用途など)などが適宜含まれてなる。
ここで無電解めっきにより形成される金属めっき膜に用いられる金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、銀、スズ、白金、金及びそれらの合金が挙げられ、目的に応じて適宜選択される。
また上記錯化剤、還元剤についても金属イオンに応じて適宜選択すればよい。
また無電解めっき液は市販のめっき液を使用してもよく、例えばメルテックス(株)製の無電解ニッケルめっき薬品(メルプレート(登録商標)NIシリーズ)、無電解銅めっき薬品(メルプレート(登録商標)CUシリーズ);奥野製薬工業(株)製の無電解ニッケルめっき液(ICPニコロン(登録商標)シリーズ、トップピエナ650)、無電解銅めっき液(OPC−700無電解銅M−K、ATSアドカッパーIW、同CT、OPCカッパー(登録商標)AFシリーズ、同HFS、同NCA)、無電解スズめっき液(サブスターSN−5)、無電解金めっき液(フラッシュゴールド330、セルフゴールドOTK−IT)、無電解銀めっき液(ムデンシルバー);小島化学薬品(株)製の無電解パラジウムめっき液(パレットII)、無電解金めっき液(ディップGシリーズ、NCゴールドシリーズ);佐々木化学薬品(株)製の無電解銀めっき液(エスダイヤAG−40);日本カニゼン(株)製の無電解ニッケルめっき液(カニゼン(登録商標)シリーズ、シューマー(登録商標)シリーズ、シューマー(登録商標)カニブラック(登録商標)シリーズ)、無電解パラジウムめっき液(S−KPD);ダウケミカル社製の無電解銅めっき液(キューポジット(登録商標)カッパーミックスシリーズ、サーキュポジット(登録商標)シリーズ)、無電解パラジウムめっき液(パラマース(登録商標)シリーズ)、無電解ニッケルめっき液(デュラポジット(登録商標)シリーズ)、無電解金めっき液(オーロレクトロレス(登録商標)シリーズ)、無電解スズめっき液(ティンポジット(登録商標)シリーズ)、上村工業(株)製の無電解銅めっき液(スルカップ(登録商標)ELC−SP、同PSY、同PCY、同PGT、同PSR、同PEA)、アトテックジャパン(株)製の無電解銅めっき液(プリントガント(登録商標)PVE)等を好適に用いることができる。
【0082】
上記無電解めっき工程は、めっき浴の温度、pH、浸漬時間、金属イオン濃度、撹拌の有無や撹拌速度、空気・酸素の供給の有無や供給速度等を調節することにより、金属被膜の形成速度や膜厚を制御することができる。
【0083】
このようにして、本発明の感光性下地剤を用いて得られた下地層上に金属めっき膜を形成した本発明の金属被膜基材は、基材として透明基材を使用した場合、めっき被膜を形成した側とは反対側の面から透明基材を観察した際に見える面が黒色を呈するものとすることができる。
従って、フォトリソグラフィーによりパターニングされた下地層上に金属めっき膜を施すことにより、パターン化されためっき被膜形成部分の裏面が黒色である金属被膜基材を得られることから、該基材を画像視認性の高い透明電極として使用することが可能となる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。実施例において、試料の物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。
【0085】
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF−804L + 同KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)、RI
(2)H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−L400
溶媒:CDCl
基準ピーク:テトラメチルシラン(0.00ppm)
(3)13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
緩和試薬:トリスアセチルアセトナートクロム(Cr(acac)
基準ピーク:CDCl(77.0ppm)
(4)ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)
装置:(株)島津製作所製 ICPM−8500
(5)TEM(透過型電子顕微鏡)画像
装置:(株)日立ハイテクノロジーズ製 H−8000
(6)パターン露光(マスクアライナ)
装置:ズースマイクロテック社製 MA6
(7)現像
装置:アクテス京三(株)製 小型現像装置ADE−3000S
(8)デジタルマイクロスコープ画像
装置:(株)キーエンス製 VHX−2000
【0086】
また使用した略号は以下のとおりである。
HPS:ハイパーブランチポリスチレン[日産化学工業(株)製 ハイパーテック(登録商標)HPS−200]
8KX−078:アクリル変性ポリマー[大成ファインケミカル社製アクリット(登録商標)8KX−078]
8KX−078HC:アクリル変性エチレンオキサイドポリマー(分子量35,000)[大成ファインケミカル社製アクリット(登録商標)8KX−078HC]
8KX−078H:アクリル変性ポリマー[大成ファインケミカル社製アクリット(登録商標)8KX−078H]
8KX−128A:アクリル変性ポリマー[大成ファインケミカル社製アクリット(登録商標)8KX−128A]
OXE−01:1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](光重合開始剤)[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)OXE 01]
IPA:イソプロパノール
IPE:ジイソプロピルエーテル
n−PrOH:n−プロパノール
MIBK:メチルイソブチルケトン
KBM−903:3−アミノプロピルトリメトキシシラン[信越化学工業株式会社製 信越シリコーン(登録商標)KBM−903]
カレンズMT PE1:ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)[昭和電工株式会社製 カレンズMT(登録商標)PE1)
【0087】
[製造例1]HPS−Clの製造
【化9】





500mLの反応フラスコに、塩化スルフリル[キシダ化学(株)製]27g及びクロロホルム50gを仕込み、撹拌して均一に溶解させた。この溶液を窒素気流下0℃まで冷却した。
別の300mLの反応フラスコに、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーHPS15g及びクロロホルム150gを仕込み、窒素気流下均一になるまで撹拌した。
前述の0℃に冷却されている塩化スルフリル/クロロホルム溶液中に、窒素気流下、HPS/クロロホルム溶液が仕込まれた前記300mLの反応フラスコから、送液ポンプを用いて、該溶液を反応液の温度が−5〜5℃となるように60分間かけて加えた。添加終了後、反応液の温度を−5〜5℃に保持しながら6時間撹拌した。
さらにこの反応液へ、シクロヘキセン[東京化成工業(株)製]16gをクロロホルム50gに溶かした溶液を、反応液の温度が−5〜5℃となるように加えた。添加終了後、この反応液をIPA1,200gに添加してポリマーを沈殿させた。この沈殿をろ取して得られた白色粉末をクロロホルム100gに溶解し、これをIPA500gに添加してポリマーを再沈殿させた。この沈殿物を減圧ろ過し、真空乾燥して、塩素原子を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−Cl)8.5gを白色粉末として得た(収率99%)。
得られたHPS−ClのH NMRスペクトルを図1に示す。ジチオカルバメート基由来のピーク(4.0ppm、3.7ppm)が消失していることから、得られたHPS−Clは、HPS分子末端のジチオカルバメート基がほぼ全て塩素原子に置換されていることが明らかとなった。また、得られたHPS−ClのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは14,000、分散度Mw/Mnは2.9であった。
【0088】
[製造例2]HPS−N(Me)OctClの製造
【化10】





冷却器を設置した100mLの反応フラスコに、製造例1で製造したHPS−Cl4.6g(30mmol)及びクロロホルム15gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、ジメチルオクチルアミン[花王(株)製 ファーミン(登録商標)DM0898]5.0g(31.5mmol)をクロロホルム7.5gに溶解させた溶液を加え、さらにIPA7.5gを加えた。この混合物を、窒素雰囲気下65℃で40時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣を、クロロホルム60gに溶解し、この溶液をIPE290gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、ジメチルオクチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−N(Me)OctCl)9.3gを白色粉末として得た。
得られたHPS−N(Me)OctClの13C NMRスペクトルを図2に示す。ベンゼン環のピークと、オクチル基末端のメチル基のピークから、得られたHPS−N(Me)OctClは、HPS−Cl分子末端の塩素原子がほぼ定量的にアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。また、HPS−ClのMw(14,000)及びアンモニウム基導入率(100%)から算出されるHPS−N(Me)OctClの重量平均分子量Mwは28,000となった。
【0089】
[製造例3]HBP−Pd−1の製造
冷却器を設置した100mLの反応フラスコに、酢酸パラジウム[川研ファインケミカル(株)製]4.2g及びクロロホルム40gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、製造例2で製造したHPS−N(Me)OctCl8.0gをクロロホルム100gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この滴下ロート内を、クロロホルム20g及びエタノール40gを使用して前記反応フラスコへ洗い込んだ。この混合物を、窒素雰囲気下60℃で8時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、この溶液をIPE/ヘキサン溶液(質量比10:1)2,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−N(Me)OctCl])8.9gを黒色粉末として得た(HBP−Pd−1)。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−N(Me)OctCl](HBP−Pd−1)のPd含有量は20質量%であった。また、TEM(透過型電子顕微鏡)画像から、そのPd粒子径はおよそ2〜4nmであった。
【0090】
[製造例4]HBP−Pd−2の製造
冷却器を設置した100mLの反応フラスコに、酢酸パラジウム[川研ファインケミカル(株)製]2.1g及びクロロホルム20gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、製造例2で製造したHPS−N(Me)OctCl9.0gをクロロホルム120gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この滴下ロート内を、クロロホルム20g及びエタノール40gを使用して前記反応フラスコへ洗い込んだ。この混合物を、窒素雰囲気下60℃で8時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、この溶液をIPE/ヘキサン溶液(質量比10:1)2,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、50℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−N(Me)OctCl])9.3gを黒色粉末として得た(HBP−Pd−2)。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−N(Me)OctCl](HBP−Pd−2)のPd含有量は10質量%であった。また、TEM(透過型電子顕微鏡)画像から、そのPd粒子径はおよそ2〜4nmであった。
【0091】
[参考例1]無電解ニッケルめっき液の調製
2Lのビーカーに、カニゼン(登録商標)ブルーシューマー[日本カニゼン(株)製]40mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を200mLとした。この溶液を撹拌し無電解ニッケルめっき液とした。
【0092】
[実施例1]
[感光性下地剤の調製]
Pd触媒として製造例3で製造したHBP−Pd−1 8質量部、アミノ基を有する化合物としてKBM−903 1質量部、重合性高分子化合物として表1に記載した8KX−078H 86質量部、多官能チオール(RSHとも称する)としてカレンズMT PE1 0.45質量部、重合開始剤としてOXE−01 4.54質量部、及び溶媒としてn−PrOHとMIBKを8:1で混合し非溶媒成分(混合物中の溶媒を除く全成分)濃度5質量%の無電解めっき用の感光性下地剤を調製した。なお、各成分を均一に混合しやすいように、n−PrOH:MIBK=8:1の一部で予め各成分をそれぞれ溶解させたものを混合した。
なお、上記で使用したHBP−Pd−1は以下の手順にて事前にアミノ基を有する化合物と混合してアンミン錯体を形成させ、これを感光性下地剤の他の成分と混合した。
<アンミン錯体形成>
上記製造例3で製造したHBP−Pd−1 500mgをn−PrOH:MIBK=8:1に溶解し(溶液1)、溶液総量を5gとした後、30分間ミックスローターで攪拌した。
一方、アミノ基を有する化合物としてKBM−903 1.25gをn−PrOH:MIBK=8:1に溶解し(溶液2)、この溶液総量を5gとし、ミックスローターで攪拌した。さらにこの溶液2をn−PrOH:MIBK=8:1にて10倍希釈した。
溶液1(HBP−PD−1)に希釈した溶液2(アミノ基含有化合物)を1g添加し、さらにn−PrOH:MIBK=8:1を加えて、総量を10gとした。
本手順により得られたHBP−PD−1 5.625質量%溶液を160mg用いた。
【0093】
[塗布]
上記感光性下地剤2.5mLを、液厚25μmのバーを用い、バーコーターでPETフィルム(東洋紡(株)製、A4100)の裏面(易接着未処理面)に塗布した。この基材を2分静置後、80℃のオーブンで5分間乾燥し、基材上全面に下地層を具備した基材を得た。
【0094】
[パターニング(露光及び現像)]
得られた下地層を、3μm、5μm、7μm、9μm幅のパターンが描かれたフォトマスクを設置したマスクアライナで、空気雰囲気下、照度11.6mW/cmのi線を露光量600mJ/cmとなるように照射し露光した。
露光した基材を、シャワーノズルを設置した現像装置を使用して現像した。現像は、基材を300rpmで回転させながら、水で60秒間洗浄した後、回転数を1,500rpmに上げて水を振り切ることで基材上にパターニングされた無電解めっき下地層を具備した基材を得た。
【0095】
[無電解めっき]
得られた基材を、80℃に加熱した参考例1で調製した無電解ニッケルめっき液中に2分間浸漬した。その後、取り出した基材を水洗し、100℃のホットプレートで3分間乾燥することでめっき基材を得た。
【0096】
[比較例1乃至3]
重合性高分子化合物を表1に記載したものに変更した以外は実施例1と同様に操作した。
実施例1ならびに比較例1乃至3から得られた各めっき基材を、以下の基準に基づき評価した。
【0097】
<現像性評価基準>
○ 現像された
△ 部分的に現像された
× 現像されない
<めっき形成状態評価基準>
○ マスクパターンどおりに下地層のパターンが得られ下地層パターン部にめっきが析出(パターン化されためっき被膜が形成)
× パターン化されためっき被膜が形成されない
結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
また、上記実施例1及び比較例1乃至比較例3の無電解めっき下地剤を使用して得られた各めっき基材上の金属めっき膜について、透明な基材の裏側から観察しためっき被膜形成部分の黒色化状態を、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表2に示す。
【0100】
<裏面黒色化評価基準>
A:十分に黒色化されている
B:褐色にみえる
C:効果がみられない
【0101】
さらに、めっき基材として、PETフィルム(東洋紡(株)製、A4100)の表面(易接着処理面)およびPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、HB3)の易接着処理面を用い、実施例1及び比較例1乃至比較例3の無電解めっき下地剤を使用して上記と同様の手法で各めっき基材上に金属めっき膜を作成した。得られた金属めっき膜部分に、幅18mmのセロテープ(登録商標)[ニチバン(株)製 CT−18S]を貼り、手の指で強く擦りつけてしっかり密着させた後、密着させたセロテープ(登録商標)を一気に剥がし、金属めっき膜の状態を以下の基準に従って目視で評価した。結果を表2に併せて示す。
【0102】
<基材密着性の評価基準>
○:金属めっき膜の剥離が確認できず基材上に密着
△:部分的に金属めっき膜が剥離
×:大部分(およそ5割以上)の金属めっき膜が剥離しセロテープ(登録商標)に付着

【表2】
【0103】
表1に示すように、上記感光性下地剤を用いて下地層を形成し、これをマスクを介して露光後、現像することにより得られたパターン化された無電解めっき下地層上にめっき膜を形成する場合において、親水部を持たない重合性高分子化合物を含む下地剤を用いた場合、現像されず、めっきが析出しなかった(比較例1)。また、親水部を10%有する重合性高分子化合物を含む下地剤を用いた場合、部分的に現像されるが、ほぼ全面がめっきされる結果となった(比較例2)。さらに親水部を30%有する重合性高分子化合物を含む下地剤を用いた場合であっても、該化合物が低分子量である場合は太線部分でめっきが析出し、細線パターン部でめっきは析出しなかった(比較例3)。
これに対し、高分子量でかつ親水部を30%有する重合性高分子化合物を含む本発明の感光性下地剤を用いた場合では細線部へのめっきが確認された(実施例1)。
以上の結果より、本発明の感光性下地剤は、フォトリソグラフィーによりパターン化されためっき下地層を形成可能であり、微細な金属めっき膜を得る上で有利であることが明らかとなった。
また、表2に示すように、本発明の感光性下地剤を使用して得られる金属めっき膜は基材との密着性に優れるとともに、金属めっき膜の裏面は十分な黒色を呈するため、これらをガラス基板等の透明基材上に形成した際に、画像視認性の高い透明電極としての使用が期待できる。
図1
図2