【文献】
Investigative Ophthalmology and Visual Science,2006年,Vol.47, No.6,p.2686-2692
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
【0018】
1.プロレニン遺伝子またはプロレニン受容体遺伝子の発現抑制用核酸分子
(1)発現抑制配列および相補配列
本発明の核酸分子は、前述のように、プロレニン遺伝子またはプロレニン受容体遺伝子の発現を抑制する一本鎖核酸分子であって、下記配列番号1から5で表されるプロレニン遺伝子の一部に相補的な配列および下記配列番号6から11で表されるプロレニン受容体遺伝子の一部に相補的な配列から選ばれるいずれかのヌクレオチド配列中、連続する少なくとも18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列(「rヌクレオチド配列」という)を含む、プロレニン遺伝子またはプロレニン受容体遺伝子の発現抑制配列を含むことを特徴とする。
(配列番号1) 5'- UGAUGUUGUCGAAGAUAGGGG -3'
(配列番号2) 5'- UUGAUAUAGUGGAAAUUCCCU -3'
(配列番号3) 5'- UGAUAUAGUGGAAAUUCCCUU -3'
(配列番号4) 5'- UAGAACUUUCGGAUGAAGGUG -3'
(配列番号5) 5'- AUCAAACUCUGUGUAGAACUU -3'
(配列番号6) 5'- UUCCAUUUCGGAAAACAACAG -3'
(配列番号7) 5'- AAUUUCCAUUUCGGAAAACAA -3'
(配列番号8) 5'- UUAUAUGCAAGGUUAUAGGGA -3'
(配列番号9) 5'- UAUAUGCAAGGUUAUAGGGAC -3'
(配列番号10) 5'- AAAAGGAACUGCAUUCUCCAA -3'
(配列番号11) 5'- UUAGUAUCCAUAUUAGCCCAU -3'
【0019】
前記発現抑制配列は、例えば、前記rヌクレオチド配列のみからなる配列でもよいし、rヌクレオチド配列を含む配列でもよい。前記発現抑制配列がrヌクレオチド配列を含む配列である場合、rヌクレオチド配列の5’末端及び/又は3’末端に1以上のヌクレオチドが付加されるが、この場合、発現抑制配列全体として、標的となるプロレニン遺伝子又はプロレニン受容体遺伝子に対して相補的である(ここで「相補的」とは、後述の相補配列の定義に準ずる)。一方、後述する、本発明の核酸分子中の発現抑制配列を含む領域(X又はXc)内の発現抑制配列以外のヌクレオチド(配列)は、標的遺伝子に対して相補的であることを要しない。
【0020】
前記発現抑制配列の長さは、特に制限されず、例えば、18〜32ヌクレオチド長であり、好ましくは19〜30ヌクレオチド長であり、より好ましくは19、20、21ヌクレオチド長である。本発明において、例えば、塩基数の数値範囲は、その範囲に属する正の整数を全て開示するものであり、例えば、「1〜4塩基」との記載は、「1、2、3、4塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0021】
本発明の一本鎖核酸分子は、さらに、前記発現抑制配列とアニーリング可能な相補配列を有する。
【0022】
前記相補配列は、標的細胞内の生理的条件下で前記発現抑制配列とアニーリング可能であれば、必ずしも完全相補的でなくてもよい。即ち、前記相補配列は、前記発現抑制配列と、オーバーラップする領域において100%の相補性を有する配列でもよいし、例えば、90%〜100%、93%〜100%、95%〜100%、98%〜100%、99%〜100%等の相補性を有する配列であってもよい。
【0023】
前記発現抑制配列が配列番号n(n=1-11)で表されるヌクレオチド配列中のrヌクレオチド配列を含む場合、前記相補配列は、下記配列番号n+11で表されるヌクレオチド配列中の、rヌクレオチド配列に対して相補的な配列(「sヌクレオチド配列」という)を含む。
(配列番号12) 5'- CCUAUCUUCGACAACAUCAUC -3'
(配列番号13) 5'- GGAAUUUCCACUAUAUCAACC -3'
(配列番号14) 5'- GGGAAUUUCCACUAUAUCAAC -3'
(配列番号15) 5'- CCUUCAUCCGAAAGUUCUACA -3'
(配列番号16) 5'- GUUCUACACAGAGUUUGAUCG -3'
(配列番号17) 5'- GUUGUUUUCCGAAAUGGAAAU -3'
(配列番号18) 5'- GUUUUCCGAAAUGGAAAUUGG -3'
(配列番号19) 5'- CCUAUAACCUUGCAUAUAAGU -3'
(配列番号20) 5'- CCCUAUAACCUUGCAUAUAAG -3'
(配列番号21) 5'- GGAGAAUGCAGUUCCUUUUAG -3'
(配列番号22) 5'- GGGCUAAUAUGGAUACUAAAA -3'
【0024】
前記相補配列は、例えば、前記sヌクレオチド配列からなる配列でもよいし、前記sヌクレオチド配列を含む配列でもよい。
【0025】
前記相補配列の長さは、特に制限されず、例えば、18〜32ヌクレオチド長であり、好ましくは19〜30ヌクレオチド長であり、より好ましくは19、20、21ヌクレオチド長である。
【0026】
前記発現抑制配列と前記相補配列はそれぞれ、例えば、リボヌクレオチド残基のみからなるRNA分子でもよいし、リボヌクレオチド残基の他に、デオキシリボヌクレオチド残基を含むRNA分子でもよい。ウラシル(U)残基がデオキシリボヌクレオチド残基で置換される場合、dT又はdUのいずれで置換されてもよい。
【0027】
(2)一本鎖核酸分子
本発明の核酸分子は、前記発現抑制配列を含む領域と、前記相補配列を含む領域とが、リンカー領域を介して間接的に連結している。前記発現抑制配列を含む領域と前記相補配列を含む領域との連結順序は、特に制限されず、例えば、前記発現抑制配列の5'末端側と、前記相補配列の3'末端側とがリンカー領域を介して連結してもよく、あるいは、前記発現抑制配列の3'末端側と前記相補配列の5'末端側とがリンカー領域を介して連結してもよい。好ましくは前者である。
【0028】
前記リンカー領域は、例えば、ヌクレオチド残基から構成されてもよいし、非ヌクレオチド残基から構成されてもよい。あるいは、ヌクレオチド残基および非ヌクレオチド残基の両方から構成されてもよい。好ましくは、前記リンカー領域は非ヌクレオチド残基から構成されている。
【0029】
以下に、本発明の一本鎖核酸分子の具体例を例示するが、本発明は、これには制限されない。
(ヘアピン型一本鎖核酸分子)
好ましい一実施態様において、本発明の一本鎖核酸分子は、5'側領域および3'側領域が、互いにアニーリングして二本鎖構造(ステム構造)を形成する分子である。これは、shRNA(small hairpin RNAまたはshort hairpin RNA)の形態とも言える。shRNAは、ヘアピン構造をとっており、一般的に、一つのステム領域と一つのループ領域とを有する。
【0030】
本形態の核酸分子は、領域(X)、リンカー領域(Lx)および領域(Xc)のみからなり、相補的な構造を有する前記領域(X)と前記領域(Xc)とが、前記リンカー領域(Lx)を介して連結された構造をとる。具体的には、前記領域(X)および前記領域(Xc)のうち、一方が、前記発現抑制配列を含み、他方が、前記相補配列を含むため、分子内アニーリングにより、前記領域(X)と前記領域(Xc)との間でステム構造を形成でき、前記リンカー領域(Lx)がループ構造となる。
【0031】
前記核酸分子は、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)および前記領域(X)を、5'側から3'側にかけて、この順序で有してもよいし、3'側から5'側にかけて、この順序で有してもよい。好ましくは前者である。前記発現抑制配列は、前記領域(X)と前記領域(Xc)のいずれに配置してもよいが、前記相補配列の下流側、すなわち、前記相補配列よりも3'側に配置することが好ましい。従って、前記核酸分子が、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)および前記領域(X)を、5'側から3'側にかけて、この順序で有する場合、前記発現抑制配列は前記領域(X)内に配置されることが好ましい。
【0032】
本形態の核酸分子の一例を、
図1の模式図に示す。
図1(A)は、各領域の順序の概略を示す模式図であり、
図1(B)は、前記核酸分子が、前記分子内において二重鎖を形成している状態を示す模式図である。
図1(B)に示すように、前記核酸分子は、前記領域(Xc)と前記領域(X)との間で、二重鎖が形成され、前記Lx領域が、その長さに応じてループ構造をとる。
図1は、あくまでも、前記領域の連結順序および二重鎖を形成する各領域の位置関係を示すものであり、例えば、各領域の長さ、前記リンカー領域(Lx)の形状等は、これに制限されない。
【0033】
前記核酸分子において、前記領域(Xc)および前記領域(X)のヌクレオチド数は、特に制限されない。以下に各領域の長さを例示するが、本発明は、これには制限されない。
【0034】
前記領域(X)のヌクレオチド数の下限は、例えば、19ヌクレオチドであり、好ましくは20塩基である。その上限は、例えば、50ヌクレオチドであり、好ましくは30ヌクレオチドであり、より好ましくは25ヌクレオチドである。前記領域(X)のヌクレオチド数の具体例は、例えば、19〜50ヌクレオチドであり、好ましくは、19〜30ヌクレオチド、より好ましくは19〜25ヌクレオチドである。
【0035】
前記領域(Xc)のヌクレオチド数の下限は、例えば、19ヌクレオチドであり、好ましくは20ヌクレオチドである。その上限は、例えば、50ヌクレオチドであり、好ましくは30ヌクレオチドであり、より好ましくは25ヌクレオチドである。前記領域(Xc)のヌクレオチド数の具体例は、例えば、19〜50ヌクレオチドであり、好ましくは、19〜30ヌクレオチド、より好ましくは19〜25ヌクレオチドである。
【0036】
前記発現抑制配列を含む領域(XまたはXc)は、前記発現抑制配列のみから構成されてもよいし、前記発現抑制配列を含んでもよい。前記発現抑制配列のヌクレオチド数は、前述のとおりである。前記発現抑制配列を含む領域は、前記発現抑制配列の5’側および/または3’側に、さらに付加配列を有してもよい。付加配列は、前記リンカー領域(Lx)側に付加することが好ましい。前述のとおり、本発明の核酸分子が、前記領域(Xc)、前記リンカー領域(Lx)および前記領域(X)を、5'側から3'側にかけて、この順序で有する場合、前記発現抑制配列は前記領域(X)内に配置されることが好ましいので、その場合、付加配列は前記発現抑制配列の5’側に付加される。前記付加配列のヌクレオチド数は、例えば、1〜31ヌクレオチドであり、好ましくは、1〜21ヌクレオチドであり、より好ましくは、1〜11ヌクレオチドであり、特に好ましくは、1、2、3、4、5又は6ヌクレオチドである。
前記発現抑制配列を含む領域(X又はXcの一方)が前記リンカー領域(Lx)側に付加配列を有する場合、前記相補配列を含む領域(X又はXcの他方)も、前記リンカー領域(Lx)側に該付加配列と相補的な配列を含む。
【0037】
前記領域(X)のヌクレオチド数(X)と前記領域(Xc)のヌクレオチド数(Xc)との関係は、例えば、下記(1)または(2)の条件を満たし、前者の場合、具体的には、例えば、下記(4)の条件を満たす。例えば、
図1(B)に模式的に示される核酸分子は、下記(1)の条件を満たすものである。
X>Xc ・・・(1)
X−Xc=1〜10、好ましくは1、2または3、
より好ましくは1または2 ・・・(4)
X=Xc ・・・(2)
【0038】
前記リンカー領域(Lx)は、それ自体の領域内部において、自己アニーリングを生じない構造であることが好ましい。
【0039】
前記リンカー領域(Lx)が、前述のようにヌクレオチド残基を含む場合、その長さは、特に制限されない。前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記領域(X)と前記領域(Xc)とが二重鎖を形成可能な長さであることが好ましい。前記リンカー領域(Lx)のヌクレオチド数は、その下限が、例えば、1塩基であり、好ましくは2塩基であり、より好ましくは3塩基であり、その上限が、例えば、100塩基であり、好ましくは80塩基であり、より好ましくは50塩基である。
【0040】
前記核酸分子の全長は、特に制限されない。前記核酸分子において、前記ヌクレオチド数の合計(全長のヌクレオチド数)は、前記リンカー領域(Lx)がヌクレオチド残基を含む場合、下限が、例えば、38ヌクレオチドであり、好ましくは42ヌクレオチドであり、より好ましくは50ヌクレオチドであり、さらに好ましくは51ヌクレオチドであり、特に好ましくは52ヌクレオチドである。その上限は、例えば、300ヌクレオチドであり、好ましくは200ヌクレオチドであり、より好ましくは150ヌクレオチドであり、さらに好ましくは100ヌクレオチドであり、特に好ましくは80ヌクレオチドである。
前記核酸分子において、前記リンカー領域(Lx)を除くヌクレオチド数の合計は、下限が、例えば、36ヌクレオチドであり、好ましくは38ヌクレオチドである。その上限は、例えば、100ヌクレオチドであり、好ましくは80ヌクレオチドであり、より好ましくは60ヌクレオチドであり、さらに好ましくは50ヌクレオチドである。全長のヌクレオチド数の具体例は、例えば、36〜100ヌクレオチド、好ましくは38〜80ヌクレオチド、より好ましくは42〜60ヌクレオチド、さらに好ましくは42〜50ヌクレオチドである。
【0041】
より好ましい実施態様において、本発明の一本鎖核酸分子は、非ヌクレオチド構造の前記リンカー領域(Lx)を有する。
【0042】
前記非ヌクレオチド構造は、特に制限されず、例えば、ポリアルキレングリコール、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコールがあげられる。
【0043】
前記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環を構成する炭素が、1個以上、置換されたピロリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、C-2の炭素以外の炭素原子であることが好ましい。前記炭素は、例えば、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。前記ピロリジン骨格は、例えば、ピロリジンの5員環内に、例えば、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。前記ピロリジン骨格において、ピロリジンの5員環を構成する炭素および窒素は、例えば、水素が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。前記リンカー領域(Lx)は、前記領域(X)および前記領域(Xc)と、例えば、前記ピロリジン骨格のいずれの基を介して結合してもよく、好ましくは、前記5員環のいずれか1個の炭素原子と窒素であり、好ましくは、前記5員環の2位の炭素(C-2)と窒素である。前記ピロリジン骨格としては、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられる。前記プロリン骨格およびプロリノール骨格等は、例えば、生体内物質およびその還元体であるため、安全性にも優れる。
【0044】
前記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環を構成する炭素が、1個以上、置換されたピペリジン誘導体の骨格でもよく、置換される場合、例えば、C-2の炭素以外の炭素原子であることが好ましい。前記炭素は、例えば、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。前記ピペリジン骨格は、例えば、ピペリジンの6員環内に、例えば、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。前記ピペリジン骨格において、ピペリジンの6員環を構成する炭素および窒素は、例えば、水素基が結合してもよいし、後述するような置換基が結合してもよい。前記リンカー領域(Lx)は、前記領域(X)および前記領域(Xc)と、例えば、前記ピペリジン骨格のいずれの基を介して結合してもよく、好ましくは、前記6員環のいずれか1個の炭素原子と窒素であり、より好ましくは、前記6員環の2位の炭素(C-2)と窒素である。
【0045】
前記リンカー領域は、例えば、前記非ヌクレオチド構造からなる非ヌクレオチド残基のみを含んでもよいし、前記非ヌクレオチド構造からなる非ヌクレオチド残基と、ヌクレオチド残基とを含んでもよい。
【0046】
前記リンカー領域は、例えば、下記式(I)で表わされる。
【0048】
前記式(I)中、例えば、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、H
2、O、SまたはNHであり;
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2、NH、OまたはSであり;
R
3は、環A上のC-3、C-4、C-5またはC-6に結合する水素原子または置換基であり、
L
1は、n個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
a、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、SH、もしくはSR
aで置換されても置換されていなくてもよく、または、
L
1は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
1が、NH、OまたはSの場合、Y
1に結合するL
1の原子は炭素であり、OR
1に結合するL
1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
L
2は、m個の原子からなるアルキレン鎖であり、ここで、アルキレン炭素原子上の水素原子は、OH、OR
c、NH
2、NHR
c、NR
cR
d、SHもしくはSR
cで置換されても置換れていなくてもよく、または、
L
2は、前記アルキレン鎖の一つ以上の炭素原子が、酸素原子で置換されたポリエーテル鎖であり、
ただし、Y
2が、NH、OまたはSの場合、Y
2に結合するL
2の原子は炭素であり、OR
2に結合するL
2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接せず;
R
a、R
b、R
cおよびR
dは、それぞれ独立して、置換基または保護基であり;
lは、1または2であり;
mは、0〜30の範囲の整数であり;
nは、0〜30の範囲の整数であり;
環Aは、前記環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素、硫黄で置換されてもよく、
前記環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよく、
前記領域(Xc)および前記領域(X)は、それぞれ、-OR
1-または-OR
2-を介して、前記リンカー領域(Lx)に結合し、
ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記構造(I)である。
【0049】
前記式(I)中、X
1およびX
2は、例えば、それぞれ独立して、H
2、O、SまたはNHである。前記式(I)中において、X
1がH
2であるとは、X
1が、X
1の結合する炭素原子とともに、CH
2(メチレン基)を形成することを意味する。X
2についても同様である。
【0050】
前記式(I)中、Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、単結合、CH
2、NH、OまたはSである。
【0051】
前記式(I)中、環Aにおいて、lは、1または2である。l=1の場合、環Aは、5員環であり、例えば、前記ピロリジン骨格である。前記ピロリジン骨格は、例えば、プロリン骨格、プロリノール骨格等があげられ、これらの二価の構造が例示できる。l=2の場合、環Aは、6員環であり、例えば、前記ピペリジン骨格である。環Aは、環A上のC-2以外の1個の炭素原子が、窒素、酸素または硫黄で置換されてもよい。また、環Aは、環A内に、炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含んでもよい。環Aは、例えば、L型およびD型のいずれでもよい。
【0052】
前記式(I)中、R
3は、環A上のC-3、C-4、C-5またはC-6に結合する水素原子または置換基である。R
3が前記置換基の場合、置換基R
3は、1でも複数でも、存在しなくてもよく、複数の場合、同一でも異なってもよい。
【0053】
置換基R
3は、例えば、ハロゲン、OH、OR
4、NH
2、NHR
4、NR
4R
5、SH、SR
4またはオキソ基(=O)等である。
【0054】
R
4およびR
5は、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基であり、同一でも異なってもよい。前記置換基は、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、シリル、シリルオキシアルキル等があげられる。以下、同様である。置換基R
3は、これらの列挙する置換基でもよい。
【0055】
前記保護基は、例えば、反応性の高い官能基を不活性に変換する官能基であり、公知の保護基等があげられる。前記保護基は、例えば、文献(J. F. W. McOmie, 「Protecting Groups in Organic Chemistry」 Prenum Press, London and New York,1973)の記載を援用できる。前記保護基は、特に制限されず、例えば、tert-ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、ビス(2-アセトキシエチルオキシ)メチル基(ACE)、トリイソプロピルシリルオキシメチル基(TOM)、1-(2-シアノエトキシ)エチル基(CEE)、2-シアノエトキシメチル基(CEM)およびトリルスルフォニルエトキシメチル基(TEM)、ジメトキシトリチル基(DMTr)等があげられる。R
3がOR
4の場合、前記保護基は、特に制限されず、例えば、TBDMS基、ACE基、TOM基、CEE基、CEM基およびTEM基等があげられる。以下、同様である。
【0056】
前記式(I)中、L
1は、n個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR
a、NH
2、NHR
a、NR
aR
b、SH、もしくはSR
aで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、L
1は、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。前記ポリエーテル鎖は、例えば、ポリエチレングリコールである。なお、Y
1が、NH、OまたはSの場合、Y
1に結合するL
1の原子は炭素であり、OR
1に結合するL
1の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、Y
1がOの場合、その酸素原子とL
1の酸素原子は隣接せず、OR
1の酸素原子とL
1の酸素原子は隣接しない。
【0057】
前記式(I)中、L
2は、m個の原子からなるアルキレン鎖である。前記アルキレン炭素原子上の水素原子は、例えば、OH、OR
c、NH
2、NHR
c、NR
cR
d、SHもしくはSR
cで置換されてもよいし、置換されていなくてもよい。または、L
2は、前記アルキレン鎖の1つ以上の炭素原子が酸素原子で置換されたポリエーテル鎖でもよい。なお、Y
2が、NH、OまたはSの場合、Y
2に結合するL
2の原子は炭素であり、OR
2に結合するL
2の原子は炭素であり、酸素原子同士は隣接しない。つまり、例えば、Y
2がOの場合、その酸素原子とL
2の酸素原子は隣接せず、OR
2の酸素原子とL
2の酸素原子は隣接しない。
【0058】
L
1のnおよびL
2のmは、特に制限されず、それぞれ、下限は、例えば、0であり、上限も、特に制限されない。nおよびmは、例えば、前記リンカー領域(Lx)の所望の長さに応じて、適宜設定できる。nおよびmは、例えば、製造コストおよび収率等の点から、それぞれ、0〜30が好ましく、より好ましくは0〜20であり、さらに好ましくは0〜15である。nとmは、同じでもよいし(n=m)、異なってもよい。n+mは、例えば、0〜30であり、好ましくは0〜20であり、より好ましくは0〜15である。
【0059】
R
a、R
b、R
cおよびR
dは、例えば、それぞれ独立して、置換基または保護基である。前記置換基および前記保護基は、例えば、前述と同様である。
【0060】
前記式(I)において、水素原子は、例えば、それぞれ独立して、Cl、Br、FおよびI等のハロゲンに置換されてもよい。
【0061】
前記領域(Xc)および前記領域(X)は、前記リンカー領域(Lx)に、それぞれ-OR
1-または-OR
2-を介して結合する。ここで、R
1およびR
2は、存在しても存在しなくてもよい。R
1およびR
2が存在する場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、ヌクレオチド残基または前記式(I)の構造である。R
1および/またはR
2が前記ヌクレオチド残基の場合、前記リンカー領域(Lx)は、例えば、ヌクレオチド残基R
1および/またはR
2を除く前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基と、前記ヌクレオチド残基とから形成される。R
1および/またはR
2が前記式(I)の構造の場合、前記リンカー領域(Lx)は、例えば、前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基が、2つ以上連結された構造となる。前記式(I)の構造は、例えば、1個、2個、3個または4個含んでもよい。このように、前記構造を複数含む場合、前記(I)の構造は、直接連結されていることが好ましい。他方、R
1およびR
2が存在しない場合、前記リンカー領域(Lx)前記式(I)の構造からなる前記非ヌクレオチド残基のみから形成される。
【0062】
前記領域(Xc)および前記領域(X)と、前記-OR
1-および-OR
2-との結合の組合せは、特に制限されず、例えば、以下のいずれかの条件があげられる。
条件(1)
前記領域(Xc)は、-OR
2-を介して、前記領域(X)は、-OR
1-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
条件(2)
前記領域(Xc)は、-OR
1-を介して、前記領域(X)は、-OR
2-を介して、前記式(I)の構造と結合する。
【0063】
前記式(I)の構造は、例えば、下記式(I-1)〜式(I-9)が例示でき、下記式において、nおよびmは、前記式(I)と同じである。下記式において、qは、0〜10の整数である。
【0065】
前記式(I-1)〜(I-9)において、n、mおよびqは、特に制限されず、前述のとおりである。具体例として、前記式(I-1)において、n=8、前記(I-2)において、n=3、前記式(I-3)において、n=4または8、前記(I-4)において、n=7または8、前記式(I-5)において、n=3およびm=4、前記(I-6)において、n=8およびm=4、n=5およびm=4、前記式(I-7)において、n=8およびm=4、前記(I-8)において、n=5およびm=4、n=8およびm=4、前記式(I-9)において、q=1およびm=4があげられる。前記式(I-4)の一例(n=8)を、下記式(I-4a)に、前記式(I-6)の一例(n=5、m=4)を、下記式(I-6a)に示す。
【0067】
特に好ましい実施態様において、本発明の核酸分子は、以下のいずれかの構造式を有する。
(
配列番号65-Lx-配列番号23)
5’- CCUAUCUUCGACAACAUCAUCCC-Lx-GGGAUGAUGUUGUCGAAGAUAGGGG -3’
(
配列番号66-Lx-配列番号24)
5’- GGAAUUUCCACUAUAUCAACCCC-Lx-GGGGUUGAUAUAGUGGAAAUUCCCU -3’
(
配列番号67-Lx-配列番号25)
5’- GGGAAUUUCCACUAUAUCAACCC-Lx-GGGUUGAUAUAGUGGAAAUUCCCUU -3’
(
配列番号68-Lx-配列番号26)
5’- CCUUCAUCCGAAAGUUCUACACC-Lx-GGUGUAGAACUUUCGGAUGAAGGUG -3’
(
配列番号69-Lx-配列番号27)
5’- GUUCUACACAGAGUUUGAUCGCC-Lx-GGCGAUCAAACUCUGUGUAGAACUU -3’
(
配列番号70-Lx-配列番号28)
5’- GUUGUUUUCCGAAAUGGAAAUCC-Lx-GGAUUUCCAUUUCGGAAAACAACAG -3’
(
配列番号71-Lx-配列番号29)
5’- GUUUUCCGAAAUGGAAAUUGGCC-Lx-GGCCAAUUUCCAUUUCGGAAAACAA -3’
(
配列番号72-Lx-配列番号30)
5’- CCUAUAACCUUGCAUAUAAGUCC-Lx-GGACUUAUAUGCAAGGUUAUAGGGA -3’
(
配列番号73-Lx-配列番号31)
5’- CCCUAUAACCUUGCAUAUAAGCC-Lx-GGCUUAUAUGCAAGGUUAUAGGGAC -3’
(
配列番号74-Lx-配列番号32)
5’- GGAGAAUGCAGUUCCUUUUAGCC-Lx-GGCUAAAAGGAACUGCAUUCUCCAA -3’
(
配列番号75-Lx-配列番号33)
5’- GGGCUAAUAUGGAUACUAAAACC-Lx-GGUUUUAGUAUCCAUAUUAGCCCAU -3’
(式中、Lxは前記いずれかのリンカー領域を表す。好ましくは、Lxは上記式(I)で表わされる構造を有し、より好ましくは、上記式(I-1)〜(I-9)のいずれかで表わされる構造を有し、さらに好ましくは、上記式(I-4a)又は(I-6a)で表わされる構造を有し、特に好ましくは、上記式(I-6a)で表わされる構造を有する。)
中でも、
配列番号72-Lx-配列番号30
、配列番号73-Lx-配列番号31、並びに配列番号74-Lx-配列番号32が特に好ましい。
【0068】
本発明の核酸分子の構成単位は、特に制限されず、例えば、ヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。前記ヌクレオチド残基は、例えば、修飾されていない非修飾ヌクレオチド残基および修飾された修飾ヌクレオチド残基があげられる。本発明の核酸分子は、例えば、前記修飾ヌクレオチド残基を含むことによって、ヌクレアーゼ耐性を向上し、安定性を向上可能である。また、本発明の核酸分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基の他に、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよい。
【0069】
本発明の核酸分子において、前記リンカー以外の領域の構成単位は、それぞれ、前記ヌクレオチド残基が好ましい。前記各領域は、例えば、下記(1)〜(3)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
【0070】
本発明の核酸分子において、前記リンカー領域の構成単位は、特に制限されず、例えば、前記ヌクレオチド残基および前記非ヌクレオチド残基があげられる。前記リンカー領域は、例えば、前記ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記非ヌクレオチド残基のみから構成されてもよいし、前記ヌクレオチド残基と前記非ヌクレオチド残基から構成されてもよい。前記リンカー領域は、例えば、下記(1)〜(7)の残基で構成される。
(1)非修飾ヌクレオチド残基
(2)修飾ヌクレオチド残基
(3)非修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
(4)非ヌクレオチド残基
(5)非ヌクレオチド残基および非修飾ヌクレオチド残基
(6)非ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
(7)非ヌクレオチド残基、非修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基
【0071】
本発明の核酸分子は、前記ヌクレオチド残基のみから構成される分子、前記ヌクレオチド残基の他に前記非ヌクレオチド残基を含む分子等があげられる。本発明の核酸分子において、前記ヌクレオチド残基は、前述のように、例えば、前記非修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記修飾ヌクレオチド残基のみでもよいし、前記非修飾ヌクレオチド残基および前記修飾ヌクレオチド残基の両方でもよい。前記核酸分子が、前記非修飾ヌクレオチド残基と前記修飾ヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。本発明の核酸分子が、前記非ヌクレオチド残基を含む場合、前記非ヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜8個、1〜6個、1〜4個、1、2または3個である。
【0072】
前記核酸分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記修飾リボヌクレオチド残基を含む場合、前記修飾リボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。前記非修飾リボヌクレオチド残基に対する前記修飾リボヌクレオチド残基は、例えば、リボース残基がデオキシリボース残基に置換された前記デオキシリボヌクレオチド残基でもよい。前記核酸分子が、例えば、前記非修飾リボヌクレオチド残基の他に前記デオキシリボヌクレオチド残基を含む場合、前記デオキシリボヌクレオチド残基の個数は、特に制限されず、例えば、「1もしくは数個」であり、具体的には、例えば、1〜5個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは1または2個である。
【0073】
本発明の核酸分子は、例えば、標識物質を含み、前記標識物質で標識化されてもよい。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体等があげられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。前記同位体は、例えば、安定同位体および放射性同位体があげられ、好ましくは安定同位体である。前記安定同位体は、例えば、被ばくの危険性が少なく、専用の施設も不要であることから取り扱い性に優れ、また、コストも低減できる。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、
2H、
13C、
15N、
17O、
18O、
33S、
34Sおよび
36Sがあげられる。
【0074】
2.一本鎖核酸分子を構成するヌクレオチド残基
前記ヌクレオチド残基は、例えば、構成要素として、糖、塩基およびリン酸を含む。前記ヌクレオチド残基は、前述のように、例えば、リボヌクレオチド残基およびデオキシリボヌクレオチド残基があげられる。前記リボヌクレオチド残基は、例えば、糖としてリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびウラシル(U)を有し、前記デオキシリボース残基は、例えば、糖としてデオキシリボース残基を有し、塩基として、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)およびチミン(T)を有する。
【0075】
前記ヌクレオチド残基は、未修飾ヌクレオチド残基および修飾ヌクレオチド残基があげられる。前記未修飾ヌクレオチド残基は、前記各構成要素が、例えば、天然に存在するものと同一または実質的に同一であり、好ましくは、人体において天然に存在するものと同一または実質的に同一である。
【0076】
前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチド残基を修飾したヌクレオチド残基である。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記未修飾ヌクレオチド残基の構成要素のいずれが修飾されてもよい。本発明において、「修飾」は、例えば、前記構成要素の置換、付加および/または欠失、前記構成要素における原子および/または官能基の置換、付加および/または欠失であり、「改変」ということができる。前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、天然に存在するヌクレオチド残基、人工的に修飾したヌクレオチド残基等があげられる。前記天然由来の修飾ヌクレオチド残基は、例えば、リンバックら(Limbach et al.、1994、Summary:the modified nucleosides of RNA、Nucleic Acids Res.22:2183〜2196)を参照できる。また、前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、前記ヌクレオチドの代替物の残基でもよい。
【0077】
前記ヌクレオチド残基の修飾は、例えば、リボース−リン酸骨格(以下、リボリン酸骨格)の修飾があげられる。
【0078】
前記リボリン酸骨格において、例えば、リボース残基を修飾できる。前記リボース残基は、例えば、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水酸基を、水素またはフルオロ等のハロゲンに置換できる。前記2’位炭素の水酸基を水素に置換することで、リボース残基をデオキシリボースに置換できる。前記リボース残基は、例えば、立体異性体に置換でき、例えば、アラビノース残基に置換してもよい。
【0079】
前記リボリン酸骨格は、例えば、非リボース残基および/または非リン酸を有する非リボリン酸骨格に置換してもよい。前記非リボリン酸骨格は、例えば、前記リボリン酸骨格の非荷電体があげられる。前記非リボリン酸骨格に置換された、前記ヌクレオチドの代替物は、例えば、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン等があげられる。前記代替物は、この他に、例えば、人工核酸モノマー残基があげられる。具体例として、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2’-O,4’-C-Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられ、好ましくはPNAである。
【0080】
前記リボリン酸骨格において、例えば、リン酸基を修飾できる。前記リボリン酸骨格において、糖残基に最も隣接するリン酸基は、αリン酸基と呼ばれる。前記αリン酸基は、負に荷電し、その電荷は、糖残基に非結合の2つの酸素原子にわたって、均一に分布している。前記αリン酸基における4つの酸素原子のうち、ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と非結合である2つの酸素原子は、以下、「非結合(non-linking)酸素」ともいう。他方、前記ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と結合している2つの酸素原子は、以下、「結合(linking)酸素」という。前記αリン酸基は、例えば、非荷電となる修飾、または、前記非結合酸素における電荷分布が非対称型となる修飾を行うことが好ましい。
【0081】
前記リン酸基は、例えば、前記非結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、Se(セレン)、B(ホウ素)、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)およびOR(Rは、アルキル基またはアリール基)のいずれかの原子で置換でき、好ましくは、Sで置換される。前記非結合酸素は、例えば、両方が置換されていることが好ましく、より好ましくは、両方がSで置換される。前記修飾リン酸基は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネート、およびホスホトリエステル等があげられ、中でも、前記2つの非結合酸素が両方ともSで置換されているホスホロジチオエートが好ましい。
【0082】
前記リン酸基は、例えば、前記結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、C(炭素)およびN(窒素)のいずれかの原子で置換でき、前記修飾リン酸基は、例えば、Nで置換した架橋ホスホロアミデート、Sで置換した架橋ホスホロチオエート、およびCで置換した架橋メチレンホスホネート等があげられる。前記結合酸素の置換は、例えば、本発明の核酸分子の5’末端ヌクレオチド残基および3’末端ヌクレオチド残基の少なくとも一方において行うことが好ましく、5'側の場合、Cによる置換が好ましく、3’側の場合、Nによる置換が好ましい。
【0083】
前記リン酸基は、例えば、前記リン非含有のリンカーに置換してもよい。前記リンカーは、例えば、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノ等を含み、好ましくは、メチレンカルボニルアミノ基およびメチレンメチルイミノ基を含む。
【0084】
本発明の核酸分子は、例えば、3’末端および5’末端の少なくとも一方のヌクレオチド残基が修飾されてもよい。前記修飾は、例えば、3’末端および5’末端のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。前記修飾は、例えば、前述のとおりであり、好ましくは、末端のリン酸基に行うことが好ましい。前記リン酸基は、例えば、全体を修飾してもよいし、前記リン酸基における1つ以上の原子を修飾してもよい。前者の場合、例えば、リン酸基全体の置換でもよいし、欠失でもよい。
【0085】
前記末端のヌクレオチド残基の修飾は、例えば、他の分子の付加があげられる。前記他の分子は、例えば、前述のような標識物質、保護基等の機能性分子があげられる。前記保護基は、例えば、S(硫黄)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、エステル含有基等があげられる。前記標識物質等の機能性分子は、例えば、本発明の核酸分子の検出等に利用できる。
【0086】
前記他の分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基のリン酸基に付加してもよいし、スペーサーを介して、前記リン酸基または前記糖残基に付加してもよい。前記スペーサーの末端原子は、例えば、前記リン酸基の前記結合酸素、または、糖残基のO、N、SもしくはCに、付加または置換できる。前記糖残基の結合部位は、例えば、3’位のCもしくは5’位のC、またはこれらに結合する原子が好ましい。前記スペーサーは、例えば、前記PNA等のヌクレオチド代替物の末端原子に、付加または置換することもできる。
【0087】
前記スペーサーは、特に制限されず、例えば、-(CH
2)
n-、-(CH
2)
nN-、-(CH
2)
nO-、-(CH
2)
nS-、O(CH
2CH
2O)
nCH
2CH
2OH、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、およびモルホリノ等、ならびに、ビオチン試薬およびフルオレセイン試薬等を含んでもよい。前記式において、nは、正の整数であり、n=3または6が好ましい。
【0088】
前記末端に付加する分子は、これらの他に、例えば、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、またはフェノキサジン)およびペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]
2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu
3+複合体)等があげられる。
【0089】
本発明の核酸分子は、前記5’末端が、例えば、リン酸基またはリン酸基アナログで修飾されてもよい。前記リン酸基は、例えば、5’一リン酸((HO)
2(O)P-O-5’)、5’二リン酸((HO)
2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’三リン酸((HO)
2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化、7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’−アデノシンキャップ(Appp)、任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’一チオリン酸(ホスホロチオエート:(HO)
2(S)P-O-5’)、5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート:(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオール酸((HO)
2(O)P-S-5’)、硫黄置換の一リン酸、二リン酸および三リン酸(例えば、5’-α-チオ三リン酸、5’-γ-チオ三リン酸等)、5’-ホスホルアミデート((HO)
2(O)P-NH-5’、(HO)(NH
2)(O)P-O-5’)、5’−アルキルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)
2(O)P-5’-CH
2、Rはアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル等))、5’-アルキルエーテルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、Rはアルキルエーテル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル等))等があげられる。
【0090】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0091】
前記塩基は、例えば、アデニンおよびグアニン等のプリン塩基、シトシン、ウラシルおよびチミン等のピリミジン塩基があげられる。前記塩基は、この他に、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌバラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、ツベルシジン(tubercidine)等があげられる。前記塩基は、例えば、2-アミノアデニン、6-メチル化プリン等のアルキル誘導体;2-プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5-ハロウラシルおよび5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン;6-アゾウラシル、6-アゾシトシンおよび6-アゾチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル;8-ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化および他の8-置換プリン;5-トリフルオロメチル化および他の5-置換ピリミジン;7-メチルグアニン;5-置換ピリミジン;6-アザピリミジン;N-2、N-6、およびO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む);5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3-デアザ−5-アザシトシン;2-アミノプリン;5-アルキルウラシル;7-アルキルグアニン;5-アルキルシトシン;7-デアザアデニン;N6,N6-ジメチルアデニン;2,6-ジアミノプリン;5-アミノ−アリル−ウラシル;N3-メチルウラシル;置換1,2,4-トリアゾール;2-ピリジノン;5-ニトロインドール;3-ニトロピロール;5-メトキシウラシル;ウラシル−5-オキシ酢酸;5-メトキシカルボニルメチルウラシル;5-メチル-2-チオウラシル;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル;5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル;3-メチルシトシン;5-メチルシトシン;N4-アセチルシトシン;2-チオシトシン;N6-メチルアデニン;N6-イソペンチルアデニン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン;N-メチルグアニン;O-アルキル化塩基等があげられる。また、プリンおよびピリミジンは、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、およびイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
【0092】
前記修飾ヌクレオチド残基は、これらの他に、例えば、塩基を欠失する残基、すなわち、無塩基のリボリン酸骨格を含んでもよい。また、前記修飾ヌクレオチド残基は、例えば、米国仮出願第60/465,665号(出願日:2003年4月25日)、および国際出願第PCT/US04/07070号(出願日:2004年3月8日)に記載される残基が使用でき、本発明は、これらの文献を援用できる。
【0093】
3.本発明の核酸分子の合成方法
本発明の核酸分子の合成方法は、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。前記合成方法は、例えば、遺伝子工学的手法による合成法、化学合成法等があげられる。遺伝子工学的手法は、例えば、インビトロ転写合成法、ベクターを用いる方法、PCRカセットによる方法があげられる。前記ベクターは、特に制限されず、プラスミド等の非ウイルスベクター、ウイルスベクター等があげられる。前記化学合成法は、特に制限されず、例えば、ホスホロアミダイト法およびH-ホスホネート法等があげられる。前記化学合成法は、例えば、市販の自動核酸合成機を使用可能である。前記化学合成法は、一般に、アミダイトが使用される。前記アミダイトは、特に制限されず、市販のアミダイトとして、例えば、RNA Phosphoramidites(2’-O-TBDMSi、商品名、三千里製薬)、ACEアミダイトおよびTOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト等があげられる。
【0094】
4.発現ベクター
本発明の核酸分子が、非修飾リボヌクレオチド残基のみで構成される場合、該核酸分子の前駆体として、該核酸分子を発現可能な状態でコードするベクター(本発明の発現ベクター)の形態で提供することもできる。本発明の発現ベクターは、前記本発明の核酸分子をコードするDNAを標的細胞内で機能的なプロモーターの制御下に含むことを特徴とする。本発明の発現ベクターは、前記DNAと機能的に連結されたプロモーターを含むことが特徴であり、その他の構成は、何ら制限されない。前記DNAを挿入するベクターは、特に制限されず、例えば、一般的なベクターが使用でき、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクター等があげられる。前記非ウイルスベクターは、例えば、プラスミドベクターがあげられる。該発現ベクターを、自体公知の遺伝子導入法を用いて、標的細胞(前記プロレニン遺伝子およびプロレニン受容体遺伝子を有する細胞)に導入することにより、該細胞内でのプロレニン遺伝子またはプロレニン受容体遺伝子の発現を抑制することができる。
【0095】
5.発現抑制剤
本発明の発現抑制剤は、プロレニン遺伝子またはプロレニン受容体遺伝子の発現を抑制する製剤であって、前記本発明の核酸分子を有効成分とすることを特徴とする。
【0096】
本発明の発現抑制剤は、例えば、前記プロレニン遺伝子およびプロレニン受容体遺伝子が存在する対象に、前記核酸分子を単独で、あるいは薬理学上許容される担体とともに投与する工程を含む。前記投与工程は、例えば、前記投与対象に前記核酸分子を接触させることにより行われる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト哺乳類等の非ヒト動物の、細胞、組織または器官があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。
【0097】
6.眼科疾患の治療剤
プロレニン-プロレニン受容体は、組織RAS活性化とRAS非依存的な細胞内シグナル活性化という異なる2つの作用(包括して「受容体結合プロレニン系(RAPS)」という)を通じて、眼組織における炎症・血管新生に深く関与している。従って、本発明の核酸分子を有効成分とする医薬は、RAPSを抑制することにより、RAPSが関与する眼科疾患(例えば、糖尿病網膜症、ぶどう膜炎、加齢黄斑変性等)の治療に有効である。また、本発明の核酸分子を有効成分とする医薬は、糖尿病網膜症、ぶどう膜炎、加齢黄斑変性、緑内障の治療に有効である。ここで「治療」とは、疾患の予防及び発症遅延、疾患の改善、並びに予後の改善の包含する意味で用いる。
【0098】
本発明の医薬は、有効量の本発明の核酸分子を単独で用いてもよいし、任意の担体、例えば医薬上許容される担体とともに、医薬組成物として製剤化することもできる。
【0099】
医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル等の滑剤、クエン酸、メントール等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリド等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、ベースワックス等が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0100】
本発明の核酸分子の標的細胞内への導入を促進するために、本発明の医薬は更に核酸導入用試薬を含むことができる。該核酸導入用試薬としては、アテロコラーゲン;リポソーム;ナノパーティクル;リポフェクチン、リプフェクタミン(lipofectamine)、DOGS(トランスフェクタム)、DOPE、DOTAP、DDAB、DHDEAB、HDEAB、ポリブレン、あるいはポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質等を用いることが出来る。
【0101】
好ましい一実施態様において、本発明の医薬は、本発明の核酸分子がリポソームに封入されてなる医薬組成物であり得る。リポソームは、1以上の脂質二重層により包囲された内相を有する微細閉鎖小胞であり、通常は水溶性物質を内相に、脂溶性物質を脂質二重層内に保持することができる。本明細書において「封入」という場合には、本発明の核酸分子はリポソーム内相に保持されてもよいし、脂質二重層内に保持されてもよい。本発明に用いられるリポソームは単層膜であっても多層膜であってもよく、また、粒子径は、例えば10〜1000nm、好ましくは50〜300nmの範囲で適宜選択できる。標的組織への送達性を考慮すると、粒子径は、例えば200nm以下、好ましくは100nm以下であり得る。
【0102】
核酸のような水溶性化合物のリポソームへの封入法としては、リピドフィルム法(ボルテックス法)、逆相蒸発法、界面活性剤除去法、凍結融解法、リモートローディング法等が挙げられるが、これらに限定されず、任意の公知の方法を適宜選択することができる。
【0103】
本発明の医薬は、哺乳動物に対して眼局所投与することが可能であるが、特に点眼投与するのが望ましい。
【0104】
眼局所投与に好適な製剤としては、点眼剤(水性点眼剤、非水性点眼剤、懸濁性点眼剤、乳濁性点眼剤等)、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤等が挙げられる。本発明の剤が点眼剤である場合には、適宜基剤を用いることができる。点眼剤に用いられる基剤としては、リン酸緩衝液、ハンクス緩衝液、生理食塩水、灌流液、人工涙液などが挙げられる。
【0105】
本発明の医薬が眼局所投与用製剤の場合、例えば緩衝剤、等張化剤、溶解補助剤、防腐剤、粘性基剤、キレート剤、清涼化剤、pH調整剤、抗酸化剤などを適宜選択して添加することができる。
緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、アミノ酸などが挙げられる。
等張化剤としては、ソルビトール、グルコース、マンニトールなどの糖類、グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、塩化ナトリウムなどの塩類、ホウ酸などが挙げられる。
溶解補助剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(例えば、ポリソルベート80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、チロキサポール、プルロニックなどの非イオン性界面活性剤、グリセリン、マクロゴールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムなどの第四級アンモニウム塩類、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、ソルビン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、チメロサール(商品名)、クロロブタノール、デヒドロ酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
粘性基剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース類などが挙げられる。
キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
清涼化剤としては、l−メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油などが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸またはその塩(ホウ砂)、塩酸、クエン酸またはその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム等)、リン酸またはその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム等)、酢酸またはその塩(酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等)、酒石酸またはその塩(酒石酸ナトリウム等)等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、濃縮混合トコフェロール等が挙げられる。
【0106】
本発明の医薬組成物中の本発明の核酸分子の含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.1ないし100重量%である。
本発明の医薬組成物がリポソーム製剤の場合、リポソーム構成成分に対する本発明の核酸分子のモル比は、通常1/100,000〜1/10,000である。また、リポソーム製剤中に含有される本発明の核酸分子を封入したリポソームの量は、リポソーム粒子が凝集しない程度で、かつ十分な薬効を発揮し得る量であれば特に制限はなく、通常10〜100mMである。
【0107】
本発明の医薬の投与量は、投与の目的、投与方法、眼表面疾患の種類、大きさ、投与対象者の状況(性別、年齢、体重など)によって異なるが、成人に点眼投与する場合、通常、本発明の核酸の1回投与量として通常0.01〜1000μg、好ましくは0.05〜100μg、より好ましくは0.1〜50μgを、1日1回ないし10回、好ましくは5〜10回投与することが望ましい。
【0108】
以下、実施例等により、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0109】
(実施例1)HCC1954細胞における一本鎖核酸分子によるプロレニン遺伝子またはプロレニン受容体遺伝子発現抑制効果
(1)一本鎖核酸分子の合成
以下に示す一本鎖核酸分子を、ホスホロアミダイト法に基づき、ABI3900核酸合成機(商品名、アプライドバイオシステムズ)により合成した。前記合成には、RNAアミダイトとして、EMMアミダイト(国際公開第2013/027843号)を用いた(以下、同様)。前記アミダイトの脱保護は、定法に従った。合成した一本鎖核酸分子は、HPLCによる精製後、それぞれ凍結乾燥した。
【0110】
一本鎖核酸分子として、前記配列番号1から5で表わされるプロレニン遺伝子発現抑制配列を有する一本鎖核酸分子(PH-0001-h-p、PH-0002-h-p、PH-0003-h-p、PH-0004-h-p、PH-0005-h-p)、および前記配列番号6から11で表わされるプロレニン受容体遺伝子発現抑制配列を有する一本鎖核酸分子(PH-0001-hmr-pr、PH-0002-hmr-pr、PH-0001-hm-pr、PH-0002-hm-pr、PH-0003-hm-pr、PH-0001-h-pr)を、それぞれ上記のように合成した。各一本鎖核酸分子において、Lxは、リンカー領域Lxであり、L-プロリンジアミドアミダイトを用いて下記構造式とした。各配列において、下線部は、ヒトプロレニン遺伝子またはプロレニン受容体遺伝子発現抑制配列である。
PH-0001-h-p(
配列番号65-Lx-配列番号23)
5'- CCUAUCUUCGACAACAUCAUCCC-Lx-GGGA
UGAUGUUGUCGAAGAUAGGGG-3'
PH-0002-h-p(
配列番号66-Lx-配列番号24)
5'- GGAAUUUCCACUAUAUCAACCCC-Lx-GGGG
UUGAUAUAGUGGAAAUUCCCU-3'
PH-0003-h-p(
配列番号67-Lx-配列番号25)
5'- GGGAAUUUCCACUAUAUCAACCC-Lx-GGGU
UGAUAUAGUGGAAAUUCCCUU-3'
PH-0004-h-p(
配列番号68-Lx-配列番号26)
5'- CCUUCAUCCGAAAGUUCUACACC-Lx-GGUG
UAGAACUUUCGGAUGAAGGUG-3'
PH-0005-h-p(
配列番号69-Lx-配列番号27)
5'- GUUCUACACAGAGUUUGAUCGCC-Lx-GGCG
AUCAAACUCUGUGUAGAACUU-3'
PH-0001-hmr-pr(
配列番号70-Lx-配列番号28)
5'- GUUGUUUUCCGAAAUGGAAAUCC-Lx-GGAU
UUCCAUUUCGGAAAACAACAG-3'
PH-0002-hmr-pr(
配列番号71-Lx-配列番号29)
5'- GUUUUCCGAAAUGGAAAUUGGCC-Lx-GGCC
AAUUUCCAUUUCGGAAAACAA-3'
PH-0001-hm-pr(
配列番号72-Lx-配列番号30)
5'- CCUAUAACCUUGCAUAUAAGUCC-Lx-GGAC
UUAUAUGCAAGGUUAUAGGGA-3'
PH-0002-hm-pr(
配列番号73-Lx-配列番号31)
5'- CCCUAUAACCUUGCAUAUAAGCC-Lx-GGCU
UAUAUGCAAGGUUAUAGGGAC-3'
PH-0003-hm-pr(
配列番号74-Lx-配列番号32)
5'- GGAGAAUGCAGUUCCUUUUAGCC-Lx-GGCU
AAAAGGAACUGCAUUCUCCAA-3'
PH-0001-h-pr(
配列番号75-Lx-配列番号33)
5'- GGGCUAAUAUGGAUACUAAAACC-Lx-GGUU
UUAGUAUCCAUAUUAGCCCAU-3'
【0111】
【化6】
【0112】
(2)プロレニン遺伝子およびプロレニン受容体遺伝子の発現量の測定
前記各一本鎖核酸分子を、20μmol/Lとなるように、注射用蒸留水(大塚製薬)に溶解した。
【0113】
細胞は、HCC1954細胞(ATCC)を使用した。培地は、10%FBSを含むRPMI-1640(Invitrogen)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0114】
まず、細胞を24穴プレートに、1×10
4細胞/400μL培地/ウェルとなるように播種し、24時間培養した。その後、前記一本鎖核酸分子をトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX(Invitrogen)を用い、前記トランスフェクション試薬の添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。具体的には、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定し、トランスフェクションを行った。下記組成において、(A)は、前記トランスフェクション試薬、(B)は、Opti-MEM(Invitrogen)、(C)は、20μmol/Lの前記一本鎖核酸分子溶液である。なお、前記ウェルにおいて、前記一本鎖核酸分子の最終濃度は、10nmol/Lとした。
【0115】
【表1】
【0116】
トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、ISOGENII(ニッポンジーン)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。次に、TranscriptionFirst Strand cDNA Synthesis Kit(Roche)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、プロレニン遺伝子の発現量、プロレニン受容体遺伝子の発現量および内部標準であるGAPDH遺伝子の発現量を測定した。前記プロレニン遺伝子の発現量およびプロレニン受容体遺伝子の発現量は、前記GAPDH遺伝子の発現量により補正した。
【0117】
前記PCRは、試薬としてLightCycler480 SYBR Green I Master(Roche)、機器としてLightCycler480(Roche)を用いた(以下、同様)。前記プロレニン遺伝子、プロレニン受容体遺伝子およびGAPDH遺伝子の増幅には、それぞれ、以下のプライマーセットを使用した。
プロレニン遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号34) 5'- GCTTTCTCAGCCAGGACATC -3'
(配列番号35) 5'- TGGGAGATGATGTTGTCGAA -3'
プロレニン受容体遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号36) 5'- TCGTACCCTTTGGAGAATGC -3'
(配列番号37) 5'- GAGCCAACTGCAAAACAACA -3'
GAPDH遺伝子用プライマーセット
(配列番号38) 5'- GGAGAAGGCTGGGGCTCATTTGC -3'
(配列番号39) 5'- TGGCCAGGGGTGCTAAGCAGTTG -3'
【0118】
なお、コントロールとして、トランスフェクションにおいて、前記一本鎖核酸分子溶液(C)を未添加とし、前記(A)と前記(B)とを合計100μL添加した以外は、同様にして処理した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(mock)。
【0119】
補正後のプロレニン遺伝子の発現量およびプロレニン受容体遺伝子の発現量について、コントロール(mock)の細胞における発現量を1として、各一本鎖核酸分子を導入した細胞での発現量の相対値を求めた。
【0120】
(3)結果
プロレニン遺伝子発現量の測定結果を
図2、プロレニン受容体遺伝子発現量の測定結果を
図3に示す。本発明の一本鎖核酸分子は、強い遺伝子発現抑制活性を示した。
【0121】
(実施例2)プロレニン受容体遺伝子の発現抑制効果
ヒト、マウスおよびラットプロレニン受容体遺伝子の発現抑制配列を有する
、配列番号70及び配列番号28
、並びに配列番号71及び配列番号29で表される一本鎖核酸分子と、ヒトおよびマウスプロレニン受容体遺伝子の発現抑制配列を有する
、配列番号72及び配列番号30
、配列番号73及び配列番号31、並びに配列番号74及び配列番号32で表される一本鎖核酸分子について、ヒト、マウスおよびラット由来培養細胞におけるプロレニン受容体遺伝子の発現抑制効果を確認した。
【0122】
(1)プロレニン受容体遺伝子の発現量の測定
細胞は、ヒト由来hTERT-RPE細胞(ATCC)、マウス由来Neuro-2a細胞(ECACC)、ラットRat-1細胞(ATCC)を使用した。培地は各々、10%FBSを含むDMEM/F12、E-MEM、DMEM培地(和光純薬)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0123】
まず、細胞を96穴プレートに、1×10
4細胞/80μL培地/ウェルとなるように播種し、24時間培養した。その後、前記一本鎖核酸分子をトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX(Invitrogen)を用い、前記トランスフェクション試薬の添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。具体的には、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定し、トランスフェクションを行った。下記組成において、(A)は、前記トランスフェクション試薬、(B)は、Opti-MEM(Invitrogen)、(C)は、20μmol/Lの前記一本鎖核酸分子溶液である。なお、前記ウェルにおいて、前記一本鎖核酸分子の最終濃度は、0.5nmol/Lとした。
【0124】
【表2】
【0125】
トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、SuperPrep Cell Lysis & RT(東洋紡)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、プロレニン受容体遺伝子の発現量および内部標準であるHPRT1遺伝子の発現量を測定した。前記プロレニン受容体遺伝子の発現量は、前記HPRT1遺伝子の発現量により補正した。
【0126】
前記PCRは、試薬としてGoTaq qPCR Master Mix(Promega)、機器としてStepOne Plus(Life Techonologies)を用いた。プロレニン受容体遺伝子およびHPRT1遺伝子の増幅には、それぞれ、以下のプライマーセットを使用した。
ヒトプロレニン受容体遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号40) 5'- AGGCAGTGTCATTTCGTACC -3'
(配列番号41) 5'- GCCTTCCCTACCATATACACTC -3'
ヒトHPRT1遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号42) 5'- ACCCCACGAAGTGTTGGATA -3'
(配列番号43) 5'- AAGCAGATGGCCACAGAACT -3'
マウスプロレニン受容体遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号44) 5'- TGGTCGTTCTCCTGTTCTTTC -3'
(配列番号45) 5'- ACCCTGGCGATCTTAATATGC -3'
マウスHPRT1遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号46) 5'- CAAACTTTGCTTTCCCTGGT -3'
(配列番号47) 5'- CAAGGGCATATCCAACAACA -3'
ラットプロレニン受容体遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号48) 5'- TGTGGGCAACCTATTCCACC -3'
(配列番号49) 5'- AGCTGACGCAATGTGACTGA -3'
ラットHPRT1遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号50) 5'- GCAGACTTTGCTTTCCTTGG -3'
(配列番号51) 5'- TCCACTTTCGCTGATGACAC -3'
【0127】
なお、コントロールとして、トランスフェクションにおいて、前記一本鎖核酸分子溶液(C)を未添加とし、前記(A)と前記(B)とを合計20μL添加した以外は、同様にして処理した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(mock)。
【0128】
補正後のプロレニン遺伝子の発現量について、コントロール(mock)の細胞における発現量を1として、各一本鎖核酸分子を導入した細胞での発現量の相対値を求めた。
【0129】
(2)結果
ヒトプロレニン受容体遺伝子発現量の測定結果を
図4、マウスプロレニン受容体遺伝子の発現量の結果を
図5、ラットプロレニン受容体遺伝子発現量の測定結果を
図6に示す。各細胞において、本発明の一本鎖核酸分子はいずれも強い遺伝子発現抑制効果を示した。
【0130】
(実施例3)プロレニン遺伝子の発現抑制効果
ヒトプロレニン遺伝子の発現抑制配列を有する
、配列番号65及び配列番号23
、配列番号66及び配列番号24、配列番号67及び配列番号25、配列番号68及び配列番号26、並びに配列番号69及び配列番号27で表される一本鎖核酸分子について、ヒト由来培養細胞におけるプロレニン遺伝子の発現抑制効果を確認した。
【0131】
(1)プロレニン遺伝子の発現量の測定
細胞は、ヒト由来hTERT-RPE細胞(ATCC)を使用した。培地は、10%FBSを含むDMEM/F12を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0132】
まず、細胞を24穴プレートに、2×10
4細胞/400μL培地/ウェルとなるように播種し、24時間培養した。その後、前記一本鎖核酸分子をトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX(Invitrogen)を用い、前記トランスフェクション試薬の添付プロトコールに従って、トランスフェクションした。具体的には、前記ウェルあたりの組成を以下のように設定し、トランスフェクションを行った。下記組成において、(A)は、前記トランスフェクション試薬、(B)は、Opti-MEM(Invitrogen)、(C)は、20μmol/Lの前記一本鎖核酸分子溶液である。なお、前記ウェルにおいて、前記一本鎖核酸分子の最終濃度は、0.5nmol/Lとした。
【0133】
【表3】
【0134】
トランスフェクション後、前記ウェル中の細胞を24時間培養した後、ISOGENII(ニッポンジーン)を用い、添付のプロトコールに従って、RNAを回収した。次に、GoScript Reverse Transcriptase Kit(Promega)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、プロレニン遺伝子の発現量および内部標準であるHPRT1遺伝子の発現量を測定した。前記プロレニン遺伝子の発現量は、前記HPRT1遺伝子の発現量により補正した。
【0135】
前記PCRは、試薬としてGoTaq qPCR Master Mix(Promega)およびTHUNDERBIRD Probe qPCR Mix(東洋紡)、機器としてStepOne Plus(Life Techonologies)を用いた。前記プロレニン遺伝子発現量の測定にはTaqman Assay(Life Techonologies)を使用し、HPRT1遺伝子の増幅には以下のプライマーセットを使用した。
ヒトHPRT1遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号42) 5’- ACCCCACGAAGTGTTGGATA -3’
(配列番号43) 5’- AAGCAGATGGCCACAGAACT -3’
【0136】
なお、コントロールとして、トランスフェクションにおいて、前記一本鎖核酸分子溶液(C)を未添加とし、前記(A)と前記(B)とを合計100μL添加した以外は、同様にして処理した細胞についても、遺伝子発現量を測定した(mock)。
【0137】
補正後のプロレニン遺伝子の発現量について、コントロール(mock)の細胞における発現量を1として、各一本鎖核酸分子を導入した細胞での発現量の相対値を求めた。
【0138】
(2)結果
結果を
図7に示す。本発明の一本鎖核酸分子は、いずれも強い遺伝子発現抑制効果を示した。
【0139】
(実施例4)エンドトキシン誘発ぶどう膜炎発症モデルマウスにおける炎症抑制効果
ヒトおよびマウスプロレニン受容体遺伝子の発現抑制配列を有する
、配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子、PH-0001-hm-prについて、LPS誘発ぶどう膜炎発症モデルマウスにおける炎症抑制効果を確認した。
【0140】
(1)エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルマウスへの一本鎖核酸分子の投与
前記一本鎖核酸分子を30、100、300μMとなるようにPBSに溶解した。溶解後、各濃度の一本鎖核酸分子溶液1μLを、33ゲージ注射針を用いてペントバルビタール麻酔下のマウス硝子体内に投与した。ネガティブコントロールとして、同量のPBSを用いた。各投与群において、6匹の雄マウス(C57BL/6J、6-8週齢)を使用した。一本鎖核酸分子投与24時間後、100μLのPBSに溶解したLPS(0.2mg)を腹腔内投与した。
【0141】
(2)炎症性サイトカイン遺伝子発現量の測定
LPS投与6時間後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、網膜を摘出し、TRIzol(Life technologies)を用い、添付のプロトコールに従いRNAを回収した。次に、GoScript Reverse Transcriptase Kit(Promega)を用い、添付のプロトコールに従って、前記RNAからcDNAを合成した。そして、以下に示すように、合成した前記cDNAを鋳型としてPCRを行い、CCL2/MCP-1、ICAM-1、IL-6、TNF-α遺伝子の発現量および内部標準であるGapdh遺伝子の発現量を測定した。前記各遺伝子の発現量は、前記Gapdh遺伝子の発現量により補正した。
【0142】
前記PCRは、試薬としてGoTaq qPCR Master Mix(Promega)、機器としてStepOne Plus(Life Techonologies)を用いた。各遺伝子のPCRには以下のプライマーセットを使用した。
マウスCCL2/MCP-1遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号52) 5’- TTGGCTCAGCCAGATGCA -3’
(配列番号53) 5’- CCTACTCATTGGGATCATCTTGC -3’
マウスICAM-1遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号54) 5’- CCTGTTTCCTGGCTCTGAAG -3’
(配列番号55) 5’- GTCTGCTGAGACCCCTCTTG -3’
マウスIL-6遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号56) 5’- CACAGAGGATACCACTCCCAACA -3’
(配列番号57) 5’- TCCACGATTTCCCAGAGAAACA -3’
マウスTNFα遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号58) 5’- GGTGCCTATGTCTCAGCCTCTT -3’
(配列番号59) 5’- CGATCACCCCGAAGTTCAGTA -3’
マウスGapdh遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号60) 5’- AGGTCGGTGTGAACGGATTTG -3’
(配列番号61) 5’- TGTAGACCATGTAGTTGAGGTCA -3
【0143】
補正後の各遺伝子の発現量について、ネガティブコントロール群(PBS投与群)における発現量を1として、各投与群での発現量の相対値を求めた。
(3)結果
結果を
図8に示す。各群において、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子、PH-0001-hm-prは炎症性サイトカイン遺伝子発現に対して抑制効果を示した。すなわち、本発明の一本鎖核酸分子は、プロレニン受容体遺伝子発現の抑制を介して、ぶどう膜炎における炎症の発症を抑制することが示唆される。
【0144】
(実施例5)ヌクレアーゼ耐性およびプロレニン受容体タンパク質の発現抑制効果
ヒトおよびマウスプロレニン受容体遺伝子の発現抑制配列を有する
、配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子について、ヌクレアーゼ耐性を確認した。また、ヒト由来培養細胞におけるプロレニン受容体タンパク質の発現抑制効果をイムノブロット分析により確認した。
【0145】
(1)ヌクレアーゼ耐性
0.5ユニットのミクロコッカスヌクレアーゼ(タカラバイオ)の存在下で、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子を37℃でインキュベートした。反応開始5、15、および30分後に反応溶液にEDTA溶液を加えて反応を停止させ、15% TBEゲルを用いて電気泳動を行い、ゲルをSYBR safe(Life Technologies)で染色した。コントロールとして、センス鎖が配列番号19で表される塩基配列、アンチセンス鎖が配列番号8で表される塩基配列である、二本鎖核酸分子((P)RR-siRNA)を用いた。
【0146】
(2)プロレニン受容体タンパク質の発現抑制効果
細胞は、ヒト網膜色素上皮細胞(RPE、hTERT-RPE1)(ATCC)を使用した。培地は10%FBS(Life Technologies)を含むDMEM/F12(和光純薬)を使用した。培養条件は、37℃、5%CO
2下とした。
【0147】
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子(1nM)をトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMAX Reagent (Life Technologies)を用い、添付のプロトコールに従って、トランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を24時間培養した。培養開始3、6、12、18および24時間後に細胞を回収した。イムノブロット分析は、以下のように行った。プロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ)を含むSDSバッファーに回収した細胞を溶解し、10%ゲルを用いてSDS-PAGEでタンパク質を分離し、PVDF膜(メルクミリポア)に転写した。5%スキムミルクを含むTBSに膜を浸してブロッキングし、一次抗体と反応させた。一次抗体として、抗プロレニン受容体抗体(シグマアルドリッチ)、および抗βアクチン抗体(医学生物学研究所)を用いた。化学発光検出用の二次抗体として、抗マウスまたは抗ウサギIgG抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を用いた。シグナルの検出には、enhanced chemoluminescence(Western Lightning Ultra)を用いた。コントロールとして、以下の構造式を有する一本鎖核酸分子(Control-PshRNA)を用いた。式中Lxは、前記式(I-6a)で表わされる構造を有する。
(
配列番号76-Lx-配列番号62)
5’- UACUAUUCGACACGCGAAGUUCC-Lx-GGAACUUCGCGUGUCGAAUAGUAUU -3’
【0148】
(3)結果
ヌクレアーゼ耐性の結果を
図9A、イムノブロット分析によるプロレニン受容体タンパク質の発現抑制効果の結果を
図9Bに示す。コントロール((P)RR-siRNA)は、ミクロコッカスヌクレアーゼによって5分後に完全に分解されたが、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子((P)RR-PshRNA)は、30分後でも分解されず、ヌクレアーゼ耐性を示した(
図9 A)。また、イムノブロット分析の結果より、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子((P)RR-PshRNA)がプロレニン受容体タンパク質の発現を抑制することが示された(
図9 B)。
【0149】
(実施例6)エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルマウスにおける急性炎症抑制効果
ヒトおよびマウスプロレニン受容体遺伝子の発現抑制配列を有する
、配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子について、急性炎症抑制効果を確認した。急性炎症モデルマウスとしてLPS誘発ぶどう膜炎発症モデルマウスを用い、網膜血管に接着した白血球数および視神経乳頭に隣接する硝子体腔に浸潤した白血球数を測定した。また、当該一本鎖核酸分子が細胞応答を抑制する分子メカニズムを調べるために、炎症性サイトカイン遺伝子の発現量を測定した。さらに、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルマウスでは、ユビキチン プロテアソーム系の活性化に起因して炎症性シグナルがロドプシンの分解を引き起こし、それにより視細胞外節が短くなることから、視細胞外節の長さの測定およびロドプシンのイムノブロット分析を行い、当該一本鎖核酸分子による視細胞の保護効果を調べた。
【0150】
(1)エンドトキシン誘発ぶどう膜炎モデルマウスへの一本鎖核酸分子の投与
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子を100μMとなるようにPBSに溶解した。溶解後、一本鎖核酸分子溶液1μLを、33ゲージ注射針を用いてペントバルビタール麻酔下のマウス(C57BL/6J、6-8週齢)(CLEA Japan)の硝子体内に投与した。コントロールとして、PBSまたは100μMとなるようにPBSに溶解したControl-PshRNA(
配列番号76及び配列番号62)を同量用いた。投与24時間後、100μLのPBSに溶解した大腸菌由来のLPS(Sigma-Aldrich)(0.2mg)を、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子またはControl-PshRNAを投与したマウスの腹腔内に投与した。得られた硝子体を用いて、LPS投与6時間後に炎症性サイトカイン遺伝子の発現量の測定、LPS投与24時間後に網膜に接着した白血球および硝子体に浸潤した白血球の定量、ならびに視細胞外節の長さの測定およびロドプシンのイムノブロット分析を行った。
【0151】
(2)リアルタイム定量PCRによる炎症性サイトカイン遺伝子発現量の測定
LPS投与6時間後、マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、網膜を摘出した。文献(Kanda, A., Noda, K., Saito, W. & Ishida, S. (Pro)renin receptor is associated with angiogenic activity in proliferative diabetic retinopathy. Diabetologia 55, 3104-3113, 2012)に記載の方法により、SuperPrep Cell Lysis & RT Kit for qPCR (TOYOBO)を用いて細胞から、TRIzol (Life Technologies)およびGoScrip Reverse Transcriptase (Promega)を用いて網膜組織から、トータルRNAを分離し、オリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行ってcDNAを合成した。合成した前記cDNAを鋳型としてリアルタイム定量PCRを行い、IL-6、CCL2/MCP-1、ICAM-1、およびTNF-α遺伝子の発現量を測定した。これらの遺伝子は、急性および慢性炎症モデルのいずれにも共通して関与することが知られている代表的な遺伝子である。また、プロレニン受容体遺伝子、および内部標準であるGapdh遺伝子の発現量を同様に測定した。前記各遺伝子の発現量は、前記Gapdh遺伝子の発現量により補正した。前記リアルタイム定量PCRは、試薬としてGoTaq qPCR Master Mix (Promega)、機器としてStepOne plus System (Life Technologies)を用いた。IL-6、CCL2/MCP-1、ICAM-1、TNF-α、およびGapdh遺伝子のPCRには、実施例4で用いたプライマーセットと同じプライマーセットを用いた。プロレニン受容体遺伝子のPCRには、以下のプライマーセットを使用した。
プロレニン遺伝子用PCRプライマーセット
(配列番号63) 5'- CTGGTGGCGGGTGCTTTAG -3'
(配列番号64) 5'- GCTACGTCTGGGATTCGATCT -3'
【0152】
(3)網膜に接着した白血球の定量
文献(Kanda, A., Noda, K., Oike, Y. & Ishida, S. Angiopoietin-like protein 2 mediates endotoxin-induced acute inflammation in the eye. Lab Invest 92, 1553-1563, 2012)に記載の方法により、perfusion-labeling with fluorescein isothiocyanate (FITC)-coupled concanavalin A lectin(Con A; Vector Laboratories)を用い、網膜血管系および接着性白血球を撮影した。具体的には、LPS投与24時間後、麻酔下のマウスの胸腔を開き、左心室にカニューレを導入した。赤血球および非接着性白血球を除去するためにPBSを注入した後、FITC-conjugated Con Aをかん流させた。眼球を摘出後、網膜のフラットマウント標本を作製した。フラットマウント標本を蛍光顕微鏡(BZ-9000、キーエンス)下で可視化し、網膜あたりのCon A染色された接着性白血球の総数を数えた。
【0153】
(4)硝子体に浸潤した白血球の定量
文献(Kanda, A., Noda, K., Oike, Y. & Ishida, S. Angiopoietin-like protein 2 mediates endotoxin-induced acute inflammation in the eye. Lab Invest 92, 1553-1563, 2012)に記載の方法により、硝子体腔に浸潤した白血球の数を調べた。具体的には、通常の方法により、網膜組織を固定してパラフィンに包埋した。厚さ5μmの切片を100μm間隔で3枚作製した。真ん中の切片は、視神経を通過するように作製した。全ての切片をHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色し、硝子体腔内の細胞数を数えた。
【0154】
(5)視細胞外節の長さの測定およびロドプシンのイムノブロット分析
視細胞外節の長さの測定は、以下のように行った。4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃でマウスの眼球を固定後、パラフィンに包埋し、切片を作製した。切片をHE染色し、網膜後部の4点で視細胞外節の長さを測定した。視神経の両端の2点は、200 μmおよび500 μm離れていた。正常なマウス(Control)における視細胞外節の長さを1として、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子またはControl-PshRNAを投与したエンドトキシン誘発ぶどう膜炎マウスにおける視細胞外節の長さの相対値を求めた。
ロドプシンのイムノブロット分析は、プロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ)を含むSDSバッファーに網膜組織を溶解した点、ならびに一次抗体として抗ロドプシン抗体(メルクミリポア)、および抗βアクチン抗体(医学生物学研究所)を用いた点を除き、実施例5と同様の方法により行った。
【0155】
(6)結果
網膜に接着した白血球の顕微鏡写真を
図10 A-Dに示す(AおよびBはコントロールを投与、CおよびDは
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子を投与)。矢印は、炎症を起こした網膜血管系に接着した白血球を示す。スケールバーは100μmである。網膜に接着した白血球の定量の結果を
図10 Eに示す。
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子は、エンドトキシン誘発ぶどう膜炎の網膜における白血球接着を抑制した(
図10 A-E)。
硝子体に浸潤した白血球の顕微鏡写真を
図10 FおよびGに示す(Fはコントロールを投与、Gは
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子を投与)。矢印は、浸潤した白血球を示す。スケールバーは30μmである。硝子体に浸潤した白血球の定量の結果を
図10 Hに示す。視神経乳頭の前方への白血球浸潤は、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子の投与により減少した(
図10 F-H)。
炎症性サイトカイン遺伝子の発現量の測定結果を
図11に示す。IL-6、CCL2/MCP-1、ICAM-1、およびTNF-α遺伝子発現量は、PBSまたはコントロール(Control-PshRNA)を投与したエンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)マウスにおける発現量の方が、未投与の正常なマウス(Control)における発現量よりも高かった(
図11 A-D)。また、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子((P)RR-PshRNA)を投与したエンドトキシン誘発ぶどう膜炎マウスにおいては、これらの炎症性サイトカインおよびプロレニン受容体((P)RR/Atp6ap2)の発現が有意に減少した(
図11 A-E)。
視細胞外節の長さの測定およびロドプシンのイムノブロット分析の結果を
図12に示す(RPEは網膜色素上皮、OSは外節、ISは内節、ONLは外顆粒層、INLは内顆粒層である)。
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子((P)RR-PshRNA)を投与したエンドトキシン誘発ぶどう膜炎(EIU)マウスにおいて、視細胞外節の長さの短縮が抑制され(
図12 A-D)、ロドプシンの減少が抑制された(
図12 E)。
【0156】
(実施例7)ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病モデルマウスにおける慢性炎症抑制効果
近年、糖尿病網膜症は炎症性疾患と考えられている。したがって、ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病モデルマウスを用い、
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子について、慢性炎症抑制効果を確認した。炎症性サイトカイン遺伝子発現量の測定、および網膜血管に接着した白血球の定量を行った。
【0157】
(1)ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病モデルマウスへの一本鎖核酸分子の投与
クエン酸溶液に溶解したストレプトゾトシン(Sigma)(60 mg/kg体重)を腹腔内注射により、4日間連続してマウス(C57BL/6J、6-8週齢)(CLEA Japan)に投与した。ストレプトゾトシン投与後7日目の血漿グルコース濃度が250 mg/dlを超えたマウスを糖尿病とみなし、以後の実験に用いた。ストレプトゾトシン投与2か月後、100μMとなるようにPBSに溶解した
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子の溶液1μLを、33ゲージ注射針を用いてペントバルビタール麻酔下のマウス硝子体内に投与した。コントロールとして、PBSまたは100μMとなるようにPBSに溶解したControl-PshRNA(
配列番号76及び配列番号62)を同量用いた。投与24時間後に炎症性サイトカイン遺伝子の発現量を測定した。また、投与48時間後に網膜に接着した白血球の定量を行った。
【0158】
(2)リアルタイム定量PCRによる炎症性サイトカイン遺伝子発現量の測定
実施例6と同様の方法により、IL-6、CCL2/MCP-1、ICAM-1、TNF-α、およびGapdh遺伝子の発現量を測定した。
【0159】
(3)網膜に接着した白血球の定量
実施例6と同様の方法により、網膜に接着した白血球の定量を行った。
【0160】
(4)結果
網膜に接着した白血球の顕微鏡写真および白血球の定量の結果を
図13 A-Dに示す(AおよびBはコントロールを投与、CおよびDは
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子を投与)。スケールバーは100μmである。網膜に接着した白血球の定量の結果を
図13 Eに示す。
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子の投与により、白血球数が有意に減少した(
図13 A-E)。
炎症性サイトカイン遺伝子の発現量の測定結果を
図13 F-Iに示す(Controlは、PBSまたは核酸を未投与の正常なマウスにおける発現量を示す)。
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子((P)RR-PshRNA)を投与した糖尿病マウスにおけるIL-6、CCL2/MCP-1、ICAM-1、およびTNF-α遺伝子の発現は、PBSまたはコントロール(Control-PshRNA)を投与した糖尿病マウスにおける発現と比べて有意に抑制された。
【0161】
(実施例8)レーザー誘発CNVモデルマウスにおける血管新生抑制効果
ヒトおよびマウスプロレニン受容体遺伝子の発現抑制配列を有する
、配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子について、レーザー誘発CNVモデルマウスにおける血管新生抑制効果を確認した。
【0162】
(1)レーザー誘発CNV(脈絡膜血管新生)モデルマウスへの一本鎖核酸分子の投与
C57BL/6Jマウス(オス、6-8週齢)(CLEA Japan)の腹腔内にペントバルビタール(0.05mg/g体重)を注射して麻酔し、5%の塩酸フェニレフリンおよび5%トロピカミドを用いて瞳孔を拡張した。レーザー光凝固術は、ND:YAG 532-mn laser(Novus Spectra; Lumenis)を用いて、コンタクトレンズとしてのカバーグラスを用いたスリットランプデリバリーシステムにより行った。各眼に、視神経を囲む4つのレーザースポット照射を行い(180 mW、75 μm、100 ms)、CNV(脈絡膜血管新生)モデルマウスを作製した。レーザー光凝固術後すぐに、100μMとなるようにPBSに溶解した一本鎖核酸分子溶液1μLを、33ゲージ注射針を用いて硝子体内に投与した。コントロールとして、PBSまたは100μMとなるようにPBSに溶解したControl-PshRNA(
配列番号76及び配列番号62)を同量用いた。レーザー傷害の際に気泡が出現したことにより、ブルッフ膜の破裂を確認した。硝子体出血、網膜出血、網膜化出血している眼は、本試験から除外した。
【0163】
(2)レーザー誘発CNVの定量
レーザー光凝固術7日後に麻酔の過剰投与によりマウスを安楽死させ、眼球を摘出して4%パラホルムアルデヒドで1時間固定した。前眼部と神経網膜を除去後、放射状に4箇所を切開して、網膜色素上皮-脈絡膜の複合体を平坦にして脈絡膜フラットマウントを作製した。5%ヤギ血清、および1%トリトンX-100を含むPBSに脈絡膜フラットマウントを浸して室温で1時間インキュベートした後、蛍光標識したイソレクチン-B4とともに4℃で一晩インキュベートした。蛍光顕微鏡(Biorevo, Keyence)で脈絡膜フラットマウントを観察し、microscope software (BZ-II analyzer)を用いてCNVの面積を測定した。
【0164】
(3)結果
CNVの面積の測定結果を
図14A、CNVの顕微鏡写真を
図14B-Dに示す。
配列番号72及び配列番号30で表される一本鎖核酸分子((P)RR-PshRNA)を投与した網膜におけるCNV面積は、PBSまたはコントロール(Control-PshRNA)と比べて有意に小さかった。
【0165】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0166】
ここで述べられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。