(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記有機層が、発光性ドーパントを含有する発光層であって、一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物をホスト材料として含有することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
発光性ドーパントが、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体であることを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、有機層及び陰極が積層されてなる有機電界発光素子において、該有機層の少なくとも1層に、(i)一般式(1)で表される化合物と、(ii)一般式(2)で表される化合物を含む。なお、一般式(1)及び一般式(2)の化合物は、それぞれ1種であってもよく、両者又は一方が2種以上の化合物からなってもよい。これらの化合物は混合物として有機層中に存在する。一般式(1)で表される化合物の割合は、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の合計に対し、30wt%以上であることが望ましい。より好ましくは35〜95wt%であり、更に好ましくは40〜90wt%である。
【0018】
一般式(1)において、Rはそれぞれ独立して、水素、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30のカルバゾリル基以外の芳香族複素環基、これらの芳香族環(これら置換若しくは未置換の芳香族炭化水素基又は置換若しくは未置換の芳香族複素環基の芳香族環を意味する。)が2〜6つ連結してなる置換若しくは未置換の連結芳香族基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、又はフルオロ基であり、好ましくは置換若しくは未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜4つ連結して構成される置換若しくは未置換の連結芳香族基である。なお、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状であってもよい。ここで、カルバゾリル基を除く場合のカルバゾリル基は、カルバゾール環を含有する基であると解される。
【0019】
R’は、芳香族複素環基がカルバゾリル基を含み得る他は、上記Rと同様な意味を有する。
【0020】
一般式(1)においてR及びR’が、未置換の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、又は連結芳香族基である場合の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン等の芳香族炭化水素化合物、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、カルバゾール、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール等の芳香族複素環化合物、又はこれら芳香族化合物の芳香族環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基が挙げられる。但し、Rの場合はカルバゾールであることはない。
【0021】
なお、芳香族環が複数連結された連結芳香族基である場合、連結される数は2〜6であり、好ましくは2〜4であり、連結される芳香族環は同一であっても異なっていても良い。
【0022】
連結芳香族基の具体例としては、例えばビフェニル、ターフェニル、ビピリジン、ビピリミジン、ビトリアジン、ターピリジン、フェニルターフェニル、ビナフタレン、フェニルピリジン、ジフェニルピリジン、フェニルピリミジン、ジフェニルピリミジン、フェニルトリアジン、ジフェニルトリアジン、フェニルナフタレン、ジフェニルナフタレン、カルバゾリルベンゼン、ビスカルバゾリルベンゼン、ビスカルバゾリルトリアジン、ジベンゾフラニルベンゼン、ビスジベンゾフラニルベンゼン、ジベンゾチオフェニルベンゼン、ビスジベンゾチオフェニルベンゼン等の芳香族化合物から水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0023】
これら芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、又は連結芳香族基が置換基を有する場合の置換基は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数7〜38のアラルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数2〜40のジアルキルアミノ基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基、炭素数14〜76のジアラルキルアミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、又はトシル基であり、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数12〜30のジアリールアミノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基、フルオロ基、又はトシル基である。なお、アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状であってもよい。
【0024】
上記置換基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等のアルキル基、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルイコシル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル等のアラルキル基、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、デセニル、イコセニル等のアルケニル基、エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル、デシニル、イコシニル等のアルキニル基、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチニルアミノ、ジデシルアミノ、ジイコシルアミノ等のジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ、ジピレニルアミノ等のジアリールアミノ基、ジフェニルメチルアミノ、ジフェニルエチルアミノ、フェニルメチルフェニルエチルアミノ、ジナフチルメチルアミノ、ジアントラニルメチルアミノ、ジフェナンスレニルメチルアミノ等のジアラルキルアミノ基、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ベンゾイル等のアシル基、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デカニロキシ等のアルコキシ基、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、ペントキシカルボニルオキシ等のアルコキシカルボニルオキシ基、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル等のアルキルスルホキシ基、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、トシル基等が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等の炭素数1〜12のアルキル基、フェニルメチル、フェニルエチル、ナフチルメチル、アントラニルメチル、フェナンスレニルメチル、ピレニルメチル等の炭素数7〜20のアラルキル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノニロキシ、デカニロキシ等の炭素数1〜10のアルコキシ基、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ等の炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を2つ有するジアリールアミノ基、シアノ基、フルオロ基、トシル基が挙げられる。
【0025】
なお、本明細書でいう連結芳香族基は、単環又は縮合環構造の芳香族化合物の芳香族環(芳香族炭化水素環、芳香族複素環、又は両者をいう。)が複数連結された基である。芳香族環が連結するとは、芳香族基の芳香環が直接結合で結合して連結することを意味する。芳香族環が置換の芳香族環である場合、置換基が芳香族環であることはない。
連結芳香族基は直鎖状であっても分岐状であってもよく、連結する芳香族環は同一であっても異なっていてもよく、芳香族炭化水素環と芳香族複素環の一方又は両方を有してもよく、置換基を有してもよい。
【0026】
本明細書において、炭素数の計算は置換基の炭素数を含まないと理解される。しかし、置換基の炭素数を含む総炭素数が、上記炭素数の範囲にあることが好ましいと言える。連結芳香族基の炭素数は、連結する芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が有する炭素数の合計と理解される。
【0027】
連結芳香族基が1価の基である場合、例えば下記で示すような連結様式が挙げられる。
【化3】
【0028】
連結芳香族基が2価の基である場合、例えば下記で示すような連結様式が挙げられる。3価以上の基である場合は、上記から理解される。
【0030】
式(4)〜(9)中、Ar
11〜Ar
16、Ar
21〜Ar
26は置換または未置換の芳香族環(芳香族基)を示し、芳香族環の環構成原子が直接結合で結合する。また、結合手は芳香族環の環構成原子から出る。芳香族環(芳香族基)は芳香族炭化水素基、または芳香族複素環基を意味し、1価以上の基であることができる。
【0031】
式(4)〜(9)では、結合手はAr
11、Ar
21、又はAr
23から出ているが、それ以外の芳香族環から出ることも可能である。また、2価以上の基である場合、1つの芳香族環から2以上の結合手が出てもよい。
【0032】
一般式(1)において、R及びR’が、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数12〜44のジアリールアミノ基である場合の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等のアルキル基、ジフェニルアミノ、ナフチルフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、ジアントラニルアミノ、ジフェナンスレニルアミノ等のジアリールアミノ基が挙げられる。
【0033】
一般式(1)において、X
1〜X
3は独立に、N、C−R’又はC−を示し、C−H、N又はC−であることが好ましい。
ここで、C−はカルバゾール環又は隣接環(mが2以上の場合)との連結部位を表し、R’は前記説明と同様である。
【0034】
一般式(1)において、mは繰り返し数を示し、1〜6の整数であり、1〜3の整数であることが好ましい。なお、m個のX含有環は、同一でも異なってもよい。
また、X含有環とカルバゾール環、又は複数のX含有環の連結位置は特に限定されるものではないが、m位又はp位であることが好ましい。
【0035】
一般式(1)表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
【0037】
次に、一般式(2)で表される化合物(カルボラン化合物)について、説明する。環Aは式(a1)又は式(b1)で表されるC
2B
10H
10の2価のカルボラン基を示し、分子内の複数の環Aは同一であっても異なっていてもよいが、好ましくは全部の環Aが式(a1)で表されるカルボラン基である。
また、2価のカルボラン基が有する2つの結合手はCから生じても、Bから生じてもよいが、L
1、L
2と結合する結合手はCから生じることが好ましい。
【0038】
nは繰り返し数であり、0〜2の整数を表し、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
qは置換数であり、1〜4の整数を表し、好ましくは、1〜2の整数であり、より好ましくは1である。
【0039】
L
1は、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜6つ連結して構成される置換若しくは未置換の連結芳香族基である。好ましくは置換若しくは未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜4つ連結して構成される置換若しくは未置換の連結芳香族基である。
【0040】
L
2は、単結合、又はq+1価の基である。このq+1価の基は、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族複素環基、又はこれら置換若しくは未置換の芳香族環が2〜6つ連結して構成されるq+1価の連結芳香族基である。好ましくは単結合、置換若しくは未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜4つ連結して構成される置換若しくは未置換の連結芳香族基である。但し、q=1かつn=1の場合は、単結合、芳香族複素環基、又は少なくとも1つの芳香族複素環基を含む連結芳香族基である。
【0041】
L
3は独立に、単結合、又は2価の基である。この2価の基は、置換若しくは未置換の炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜30の芳香族複素環基、又はこれら置換若しくは未置換の芳香族環が2〜6つ連結して構成される連結芳香族基である。好ましくは単結合、置換若しくは未置換の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、置換若しくは未置換の炭素数3〜17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2〜4つ連結して構成される置換若しくは未置換の連結芳香族基である。
【0042】
一般式(2)において、L
1、L
2、L
3が芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、又はこれら芳香族環が2〜6つ連結して構成される連結芳香族基である場合の具体例としては、前記一般式(1)のR及びR’で説明したものと同様である。但し、q=1かつn=1の場合は、L
2は単結合、芳香族複素環基、又は少なくとも1つの芳香族複素環基を含む連結芳香族基である。
n=0の場合は、L
1とL
2が同一であること、又はL
1とL
2の環Aと結合する芳香族環が同一であることが好ましい。ここで、環Aと結合する芳香族環が同一であるとは、L
1がAr
1-Ar
2-で表され、L
2が-Ar
3-Ar
4-で表される場合、環Aと直接結合するAr
2とAr
4が同一であることを意味する。ここで、Ar
1〜Ar
4は置換基を有してもよい芳香族環である。また、n=0の場合、L
1=L
2-(H)qであることが好ましい。
【0043】
前記一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0044】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0045】
本発明の有機EL素子は、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物の混合物を、有機EL素子の少なくとも1つの有機層に含有する。上記混合物は、電荷輸送性に優れることから、何れの有機層に使用しても構わないが、発光層、電子輸送層、及び正孔阻止層に含むことが好ましく、特に発光層に含むことが好ましい。
【0046】
発光層に使用する場合、上記混合物を発光性ドーパント材料として使用しても良いが、発光性ドーパント材料として他の燐光発光ドーパント材料、蛍光発光ドーパント材料又は熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料を使用し、上記混合物をホスト材料として使用することが好ましい。特に、燐光発光ドーパント材料として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体であることが好ましい態様である。
【0047】
少なくとも2つの化合物は、素子を作成する前に混合して1つの蒸着源を用いて蒸着しても構わないし、複数の蒸着源を用いた共蒸着等の操作により素子を作成する時点で混合しても構わない。
【0048】
また、上記少なくとも2つの化合物は、蒸着源を使用したドライプロセスを用いずに、スピンコートやインクジェット等のウエットプロセスを用いて基板等に製膜して使用しても構わない。
【0049】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造は何ら図示のものに限定されるものではない。
【0050】
(1)有機EL素子の構成
図1は一般的な有機EL素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は電子注入層、8は陰極を各々示す。本発明の有機EL素子では、陽極、発光層、電子輸送層及び陰極を必須の層として有するが、必要により他の層を設けてもよい。他の層とは、例えば正孔注入輸送層や電子阻止層及び正孔阻止層が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか又は両者を意味する。
【0051】
(2)基板
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの平滑で透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0052】
(3)陽極
基板1上には陽極2が設けられるが、陽極は正孔輸送層への正孔注入の役割を果たすものである。この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物、インジウム及び/又は亜鉛の酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、あるいは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などの場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散し、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。更に、導電性高分子の場合は電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる。陽極は異なる物質で積層して形成することも可能である。陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常、60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましく、この場合、厚みは、通常、5〜1000nm、好ましくは10〜500nm程度である。不透明でよい場合には、陽極は基板と同一でもよい。また、更には上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0053】
(4)正孔輸送層
陽極2の上に正孔輸送層4が設けられる。両者の間には、正孔注入層3を設けることもできる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層5に接するために発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子には更に耐熱性が要求される。従って、Tgとして85℃以上の値を有する材料が望ましい。
【0054】
正孔輸送材料としては、一般式(1)及び一般式(2)の混合物を使用しても良いし、従来この層に用いられている公知の化合物を用いることができる。公知の化合物としては、例えば、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン、4,4',4"−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物、トリフェニルアミンの四量体からなる芳香族アミン化合物、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて、各々、混合して用いてもよい。
また、上記の化合物以外に、正孔輸送層の材料として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン等の高分子材料が挙げられる。
【0055】
正孔輸送層を塗布法で形成する場合は、正孔輸送材料を1種又は2種以上と、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤とを添加し、溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極上に塗布し、乾燥して正孔輸送層を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、50重量%以下が好ましい。
【0056】
真空蒸着法で形成する場合は、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10
−4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向き合って置かれた、陽極が形成された基板上に正孔輸送層を形成させる。正孔輸送層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは 5〜100nmである。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
【0057】
(5)正孔注入層
正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔輸送層4と陽極2との間に正孔注入層3を挿入することも行われている。正孔注入層を挿入することで、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。正孔注入層に用いられる材料に要求される条件としては、陽極とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定、すなわち、ガラス転移温度が高く、ガラス転移温度としては100℃以上が要求される。更に、イオン化ポテンシャルが低く陽極からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
【0058】
この目的のために、一般式(1)及び一般式(2)の混合物を使用しても良いし、これまでに公知の銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)やヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(HAT)などのP型有機物を単独で用いてもよいし、必要に応じて、混合して用いてもよい。正孔注入層の場合も、正孔輸送層と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、更に、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。以上の様にして形成される正孔注入層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは5〜100nmである。
【0059】
(6)発光層
正孔輸送層4の上に発光層5が設けられる。発光層は、単一の発光層から形成されていてもよいし、複数の発光層を直接接するように積層して構成されていてもよい。発光層は、ホスト材料と発光性ドーパントとして構成され、発光性ドーパントとしては、蛍光発光材料、遅延蛍光発光材料及び燐光発光材料の場合がある。一般式(1)及び一般式(2)の化合物の混合物を発光性ドーパントとして使用しても構わないが、ホスト材料として使用することが好ましい。
【0060】
蛍光発光有機EL素子の場合、 ホスト材料に添加する蛍光性発光材料としては、ペリレン、ルブレンなどの縮合環誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン660、DCM1、ペリノン、クマリン誘導体、ピロメテン(ジアザインダセン)誘導体、シアニン色素などが使用できる。
【0061】
遅延蛍光発光有機EL素子の場合、発光層における遅延蛍光発光材料としては、例えば、カルボラン誘導体、スズ錯体、インドロカルバゾール誘導体、銅錯体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。具体的には、以下の非特許文献、特許文献に記載されている化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0062】
1)Adv. Mater. 2009, 21, 4802-4806
2)Appl. Phys. Lett. 98, 083302 (2011)
3)特開2011−213643号公報
4)J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 14706-14709。
【0063】
遅延発光材料の具体的な例を示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0065】
前記遅延蛍光発光材料を遅延蛍光発光ドーパントとして使用し、ホスト材料を含む場合、遅延蛍光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.01〜10%の範囲にあることがよい。
【0066】
燐光発光有機EL素子の場合、燐光性発光性ドーパントとしては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金などから選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。具体的には以下の特許公報に記載されている化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されない。
【0067】
WO2009−073245号公報、WO2009−046266号公報、WO2007−095118号公報、WO2008−156879号公報、WO2008−140657号公報、US2008−261076号公報、特表2008−542203号公報、WO2008−054584号公報、特表2008−505925号公報、特表2007−522126号公報、特表2004−506305号公報、特表2006−513278号公報、特表2006−50596号公報、WO2006−046980号公報、WO2005−113704号公報、US2005−260449号公報、US2005−2260448号公報、US2005−214576号公報、WO2005−076380号公報等。
【0068】
好ましい燐光発光ドーパントとしては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)3等の錯体類、Ir(bt)2・acac3等の錯体類、PtOEt3等の錯体類が挙げられる。これらの錯体類の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されない。
【0070】
前記燐光発光ドーパントが発光層中に含有される量は、2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲にあることがよい。
【0071】
発光層の膜厚については特に制限はないが、通常、1〜300nm、好ましくは5〜100nmであり、正孔輸送層と同様の方法にて薄膜形成される。
【0072】
−阻止層−
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子若しくは正孔)及び/又は励起子の発光層外への拡散を阻止することができる。電子阻止層は、発光層及び正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層及び電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層又は正孔阻止層は、一つの層で電荷(電子若しくは正孔)阻止層及び励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0073】
−正孔阻止層−
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
【0074】
正孔阻止層の材料としては、一般式(1)及び一般式(2)の混合物を用いることが好ましく、後述する電子輸送層の材料も使用できる。本発明に関わる正孔阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0075】
−電子阻止層−
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0076】
電子阻止層の材料としては、一般式(1)及び一般式(2)の混合物を用いることが好ましく、後述する正孔輸送層の材料も使用できる。本発明に係る電子阻止層の膜厚は好ましくは3〜100nmであり、より好ましくは5〜30nmである。
【0077】
−励起子阻止層−
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接してこの層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接してこの層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。
【0078】
励起子阻止層の材料としては、一般式(1)及び一般式(2)の混合物を用いることが好ましく、一般的に使用される任意の材料を用いることもできる。
【0079】
使用できる公知の励起子阻止層用材料としては例えば、1,3−ジカルバゾリルベンゼン(mCP)や、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)(BAlq)が挙げられる。
【0080】
(7)電子輸送層
素子の発光効率を更に向上させることを目的として、発光層5と陰極8の間に、電子輸送層6が設けられる。電子輸送層としては、陰極からスムーズに電子を注入できる電子輸送性材料が好ましく、一般式(1)及び一般式(2)の混合物を使用しても良いし、一般的に使用される任意の材料を用いることができる。このような条件を満たす電子輸送材料としては、Alq
3などの金属錯体、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン、キノキサリン化合物、フェナントロリン誘導体、2−t−ブチル−9,10−N,N'−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0081】
電子輸送層の膜厚は、通常、1〜300nm、好ましくは5〜100nmである。電子輸送層は、正孔輸送層と同様にして塗布法あるいは真空蒸着法により発光層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
【0082】
(8)陰極
陰極8は、電子輸送層6に電子を注入する役割を果たす。陰極として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。低仕事関数金属からなる陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
更に、電子注入層7として、陰極8と電子輸送層6の間にLiF、MgF
2、Li
2O等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも素子の効率を向上させる有効な方法である。
【0083】
なお、
図1とは逆の構造、すなわち、基板1上に陰極8、電子注入層7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機EL素子を設けることも可能である。この場合も、必要により層を追加したり、省略したりすることが可能である。
【0084】
本発明の有機EL素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれでもあることができる。本発明の有機EL素子によれば、少なくとも1つの有機層に本発明の2つの化合物を使用すること、特に発光層の混合ホスト材料として使用することで、低い電圧であっても発光効率が高くかつ駆動安定性においても大きく改善された素子が得られ、フルカラーあるいはマルチカラーのパネルへの応用において優れた性能を発揮できる。
【0085】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を越えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。なお、第一ホストおよび化合物Aは一般式(1)で表される化合物を意味し、第二ホストおよび化合物Bは一般式(2)で表される化合物を意味する。
【実施例】
【0086】
実施例1
膜厚70nmの酸化インジウムスズ(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度2.0×10
−5Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層として、銅フタロシアニン(CuPC)を30nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層として4,4−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)を15nmの厚さに形成した。次に発光層として、第一ホストとして化合物1−2を、第二ホストとして化合物2−1を、発光層ゲストとして青色燐光材料であるイリジウム錯体[イリジウム(III)ビス(4,6−ジ−フルオロフェニル)−ピリジネート−N,C2']ピコリネート](FIrpic)とを異なる蒸着源から、共蒸着し、30nm の厚さに発光層を形成した。この時、第一ホストと第二ホストとFIrpicの蒸着速度比(wt比)は、47:47:6であった。次に、電子輸送層としてAlq
3を25nm厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1.0nm厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてアルミニウム(Al)を70nm厚さに形成した。得られた有機EL素子は、
図1に示す有機EL素子において、陰極と電子輸送層の間に、電子注入層が追加された層構成を有する。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長475nmの発光スペクトルが観測され、FIrpicからの発光が得られていることがわかった。表1に作製した有機EL素子の特性を示す。
【0087】
実施例2〜21
実施例1において、発光層の第一ホストとして表1に記載した化合物を用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した(実施例2〜7)。
また、発光層の第二ホストとして化合物2−18、2−29を用いた以外は実施例1〜7と同様にして有機EL素子を作製した(実施例8〜21)。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長475nmの発光スペクトルが観測され、FIrpicからの発光が得られていることがわかった。表1に作製した有機EL素子の特性を示す。
【0088】
比較例1〜10
実施例1において、発光層ホストとして表1に記載した化合物を単独で用いた以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例1における第1ホストと第2ホストの合計と同じ量とし、ゲスト量は同様とした。得られた有機EL素子に電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長475nmの発光スペクトルが観測され、FIrpicからの発光が得られていることがわかった。表2に作製した有機EL素子の特性を示す。
【0089】
表1、2において、輝度、電圧、及び発光効率は、駆動電流2.5mA/cm
2時での値であり、輝度半減時間は、初期輝度1000cd/m
2のときの値である。化合物No.は上記化学式に付した番号である。
【0090】
【表1】
【表2】
【0091】
表1と表2を比較すると、実施例1〜21は、輝度及び寿命特性が向上し、良好な特性を示すことが分かる。
【0092】
実施例22
膜厚150nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10
−4Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層としてCuPcを20nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPBを20nmの厚さに形成した。次に発光層として、第一ホストとして化合物1−2を、第二ホストとして化合物2−1を、発光層ゲストとしてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(PPy)
3)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに形成した。この時、第一ホストと第二ホストとIr(PPy)
3の蒸着速度比は、47:47:6であった。次に、正孔阻止層としてアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノラート(BAlq)を10nmの厚さに形成した。次に、電子輸送層としてAlq
3を40nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてLiFを0.5nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてAlを100nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表3に作製した有機EL素子の特性(輝度、電圧、外部量子効率及び輝度半減時間)を示す。
【0093】
実施例23〜42
実施例22において、発光層の第一ホストとして表3に記載した化合物を用いた以外は実施例22と同様にして有機EL素子を作製した(実施例23〜28)。
また、発光層の第二ホストとして化合物2−18、2−29を用いた以外は実施例22〜28と同様にして有機EL素子を作製した(実施例29〜42)。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表3に作製した有機EL素子の特性を示す。
【0094】
比較例11〜20
実施例22において、発光層ホストとして表3に記載した化合物を単独で用いた以外は実施例22と同様にして有機EL素子を作製した。なお、ホスト量は、実施例22における第1ホストと第2ホストの合計と同じ量とし、ゲスト量は同様とした。得られた有機EL素子に電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長517nmの発光スペクトルが観測され、Ir(PPy)
3からの発光が得られていることがわかった。表4に作製した有機EL素子の特性を示す。
【0095】
表3、4において、輝度、電圧、及び発光効率は、駆動電流20mA/cm
2時での値であり、輝度半減時間は、初期輝度1000cd/m
2のときの値である。
【0096】
【表3】
【表4】
【0097】
表3と表4を比較すると、実施例22〜42は、輝度及び寿命特性が向上し、良好な特性を示すことが分かる。
【0098】
実施例43
膜厚70nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度2.0×10
−5Paで積層させた。まず、ITO上に正孔注入層として、CuPCを30nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層としてNPDを15nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層上に、発光層のホスト材料としてのmCBPとドーパントとしてのFIrpicとを異なる蒸着源から、共蒸着し、30nmの厚さに発光層を形成した。FIrpicの濃度は20wt%であった。次に、発光層上に正孔阻止層として化合物1−8(化合物A)と化合物2−1(化合物B)をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、5nmの厚さに形成した。この時、化合物1−8と化合物2−1の蒸着速度比は、50:50であった。次に電子輸送層としてAlq
3を20nm厚さに形成した。更に、電子輸送層上に、電子注入層としてLiFを1.0nm厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、電極としてAlを70nm厚さに形成した。
得られた有機EL素子は、
図1に示す有機EL素子において、陰極と電子輸送層の間に電子注入層、及び発光層と電子輸送層の間に、正孔阻止層が追加された層構成を有する。得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長475nmの発光スペクトルが観測され、FIrpicからの発光が得られていることがわかった。表3に作製した有機EL素子の特性を示す。
【0099】
実施例44〜48
実施例43において、正孔阻止層の化合物Bとして化合物2−1に代えて化合物2−18、2−29を用いた以外は実施例43と同様にして有機EL素子を作製した(実施例44〜45)。
また、正孔阻止層の化合物Aとして化合物1−8に代えて化合物1−15を用いた以外は実施例43〜45と同様にして有機EL素子を作製した(実施例46〜48)。
得られた有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子からも極大波長475nmの発光スペクトルが観測され、FIrpicからの発光が得られていることがわかった。表5に作製した有機EL素子の特性を示す。
【0100】
比較例21
実施例43における電子輸送層としてのAlq
3の膜厚を25nmとし、正孔阻止層を設けないこと以外は、実施例43と同様にして有機EL素子を作成した。
【0101】
表5において、輝度、電圧、及び発光効率は、駆動電流2.5mA/cm
2時での値であり、輝度半減時間は、初期輝度1000cd/m
2のときの値である。
【0102】
【表5】
【0103】
表5より、2種類の化合物を正孔阻止層に用いた実施例43〜48は、正孔阻止材料を用いない比較例21に比べ、良好な特性を示していることが分かる。