特許第6883449号(P6883449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6883449-電磁波シールド材 図000023
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883449
(24)【登録日】2021年5月12日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】電磁波シールド材
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20210531BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20210531BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20210531BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   H05K9/00 W
   B32B15/08 E
   B29C51/10
   B29C51/14
【請求項の数】8
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-47792(P2017-47792)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-152466(P2018-152466A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸一郎
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/004664(WO,A1)
【文献】 特開2016−192427(JP,A)
【文献】 特開2012−186222(JP,A)
【文献】 特開平07−290449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0071676(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B29C 49/00−51/46
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一枚の金属箔及び少なくとも二層の樹脂層が密着積層した多層構造を有する電磁波シールド材であって、
各金属箔はその両面が樹脂層と密着積層されており、
各金属箔は、隣接する二層の樹脂層のそれぞれと、下記の関係を満たす電磁波シールド材。
0.02≦VM/VM’<1
M:金属箔と樹脂層との合計体積に対する金属箔の体積率
M’:(σR−σR’)/(σM+σR−σR’
σM:金属箔に引張応力を与えたときの破断時の金属箔の真応力(MPa)
σR:樹脂層に引張応力を与えたときの破断時の樹脂層の真応力(MPa)
σR’:金属箔破断時の対数歪みと同じ対数歪みを樹脂層に与えたときの樹脂層の真応力(MPa)
【請求項2】
各金属箔は、隣接する二層の樹脂層と、それぞれ下記の関係を満たす請求項1に記載の電磁波シールド材。
0.2≦VM/VM’≦0.6
【請求項3】
電磁波シールド材を構成する各金属箔の厚さが4〜100μmである請求項1又は2に記載の電磁波シールド材。
【請求項4】
電磁波シールド材を構成する各樹脂層の厚さが4〜250μmである請求項1〜3の何れか一項に記載の電磁波シールド材。
【請求項5】
電磁波シールド材を構成する金属箔及び樹脂層は接着剤層を介さないで熱圧着によって密着積層されている請求項1〜4の何れか一項に記載の電磁波シールド材。
【請求項6】
金属箔の合計厚さは100μm以下であり、且つ、樹脂層の合計厚さは500μm以下である請求項1〜5の何れか一項に記載の電磁波シールド材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の電磁波シールド材を成形することを含む電磁波シールド成形品の製造方法。
【請求項8】
成形が圧空成形により行われる請求項7に記載の電磁波シールド成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波シールド材に関する。とりわけ、本発明は電気・電子機器の被覆材又は外装材に適用可能な電磁波シールド材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題に対する関心が全世界的に高まっており、電気自動車やハイブリッド自動車といった二次電池を搭載した環境配慮型自動車の普及が進展している。これらの自動車においては、搭載した二次電池から発生する直流電流をインバータを介して交流電流に変換した後、必要な電力を交流モータに供給し、駆動力を得る方式を採用するものが多い。インバータのスイッチング動作等に起因して電磁波が発生する。電磁波は車載の音響機器や無線機器等の受信障害となることから、インバータ或いはインバータと共にバッテリーやモータ等を金属製ケース内に収容して、電磁波シールドするという対策が行われてきた(特開2003−285002号公報)。1MHz以下の低周波の電磁界、とりわけ500kHz以下の低周波電磁界をシールドするために透磁率の高い金属が電磁波シールド材として用いられてきた。
【0003】
また、自動車に限らず、通信機器、ディスプレイ及び医療機器を含め多くの電気・電子機器から電磁波が放射される。電磁波は精密機器の誤作動を引き起こす可能性があり、更には、人体に対する影響も懸念される。このため、電磁波シールド材を用いて電磁波の影響を軽減する各種の技術が開発されてきた。例えば、銅箔と樹脂フィルムとを積層してなる銅箔複合体が電磁波シールド材として用いられている(特開平7−290449号公報)。銅箔は電磁波シールド性を有し、樹脂フィルムは銅箔の補強のために積層される。また、絶縁材料からなる中間層の内側と外側にそれぞれ金属層を積層した電磁波シールド構造も知られている(特許第4602680号公報)。また、金属箔及び樹脂層を交互に積層することで電磁波シールド特性、軽量特性、及び成形性に優れた電磁波シールド効果を得る技術も知られている(特開2017−5214号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−285002号公報
【特許文献2】特開平7−290449号公報
【特許文献3】特許第4602680号公報
【特許文献4】特開2017−5214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気・電子機器は各種形状を有しており、これらを電磁波シールド材で無駄なく覆うためには電磁波シールド材を種々の形状に成形することが求められる。従来は、プレス成形した金属板を用いることが多かったが、プレス成形性を確保するためには金属板の厚さを大きくする必要がある。また、金属板により十分なシールド特性を得ようとすると厚い金属板が必要である。自動車においては燃費向上の観点から軽量化が大きな課題となっているため、金属板は薄いほうが望ましい。
【0006】
また、金属板を複雑な形状に成形するためには複数回のプレス加工が必要になり、複数のプレス金型が必要である。プレス加工用の金型には精度が必要なため、作製にコストがかかる。従ってデザイン変更のたびに多大なコストがかかるという問題もある。このため、電磁波シールド材を低コストで成形できる技術が望まれる。
【0007】
一方、低コストで樹脂などを成形する工法として圧空成形がある。圧空成形では金型が片方だけで済むため、金型同士のクリアランスを考慮する必要がなく、比較的低コストで金型を作製できる。また、1度の成形で複雑な形状に加工できるため複数の金型を作製する必要がない。また、圧空成形では薄い材料も加工することができ、金属板を薄くすることもできる。しかし、金属板は一般に薄くなるほど延性が低下するため、単純に薄くするだけでは成形加工性に劣る。一方、厚くしてしまうと強度が高くなってしまい、圧縮空気で成形することができなくなってしまう。
【0008】
先行技術文献中にも電磁波シールド材の成形加工性を高めることを目的とした技術は開示されているが、未だ改善の余地は残されている。本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、成形加工性を改善した電磁波シールド材を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
金属箔単体に引張応力が加わると、全体が均一に変形せず、局所的に変形する。この局所的な変形に応力が集中し、破断してしまうため、延性が高くない。一方、樹脂層は全体が均一に変形しやすいため、金属箔よりも延性が高い。金属箔と樹脂層を密着積層すると、樹脂層が金属箔をサポートするため、金属箔も均一に変形するようになり、延性が向上し、成形加工時の破断が抑制される。特に、金属箔及び樹脂層にそれぞれ引張応力を与えたときの破断時の応力同士が所定の関係を満たすことで、金属箔の延性が有意に向上する。金属箔の両面を樹脂層によりサポートすることで、金属箔の片面だけを樹脂層によりサポートするよりも延性は更に向上する。
【0010】
従って、本発明は一側面において、
少なくとも一枚の金属箔及び少なくとも二層の樹脂層が密着積層した多層構造を有する電磁波シールド材であって、
各金属箔はその両面が樹脂層と密着積層されており、
各金属箔は、隣接する二層の樹脂層のそれぞれと、下記の関係を満たす電磁波シールド材。
0.02≦VM/VM’≦1.2
M:金属箔と樹脂層との合計体積に対する金属箔の体積率
M’:(σR−σR’)/(σM+σR−σR’
σM:金属箔に引張応力を与えたときの破断時の金属箔の真応力(MPa)
σR:樹脂層に引張応力を与えたときの破断時の樹脂層の真応力(MPa)
σR’:金属箔破断時の対数歪みと同じ対数歪みを樹脂層に与えたときの樹脂層の真応力(MPa)
【0011】
本発明に係る電磁波シールド材の一実施形態においては、各金属箔は、隣接する二層の樹脂層と、それぞれ下記の関係を満たす。
0.2≦VM/VM’≦0.6
【0012】
本発明に係る電磁波シールド材の別の一実施形態においては、電磁波シールド材を構成する各金属箔の厚さが4〜100μmである。
【0013】
本発明に係る電磁波シールド材の更に別の一実施形態においては、電磁波シールド材を構成する各樹脂層の厚さが4〜250μmである。
【0014】
本発明に係る電磁波シールド材の更に別の一実施形態においては、電磁波シールド材を構成する金属箔及び樹脂層は接着剤層を介さないで熱圧着によって密着積層されている。
【0015】
本発明に係る電磁波シールド材の更に別の一実施形態においては、金属箔の合計厚さは100μm以下であり、且つ、樹脂層の合計厚さは500μm以下である。
【0016】
本発明は別の一側面において、本発明に係る電磁波シールド材を成形することを含む電磁波シールド成形品の製造方法である。
【0017】
本発明に係る電磁波シールド成形品の製造方法の一実施形態においては、成形が圧空成形により行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電磁波シールド材は成形加工性に優れている。つまり、成形加工時に破断しにくい。そのため、電気・電子機器の複雑な外形に追随して電磁波シールド材を成形可能であり、電気・電子機器の省スペース化に貢献することができる。特に、本発明に係る電磁波シールド材は圧空成形に適しており、圧空成形により電磁波シールド材を成形することで電気・電子機器の低コスト化に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】樹脂層と金属箔の真応力と対数歪みの関係を模式的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(金属箔)
本発明に係る電磁波シールド材に使用する金属箔の材料としては特に制限はないが、交流磁界や交流電界に対するシールド特性を高める観点からは、導電性に優れた金属材料とすることが好ましい。具体的には、導電率が1.0×106S/m(20℃の値。以下同じ。)以上の金属によって形成することが好ましく、金属の導電率が10.0×106S/m以上であるとより好ましく、30.0×106S/m以上であると更により好ましく、50.0×106S/m以上であると最も好ましい。このような金属としては、導電率が約9.9×106S/mの鉄、導電率が約14.5×106S/mのニッケル、導電率が約39.6×106S/mのアルミニウム、導電率が約58.0×106S/mの銅、及び導電率が約61.4×106S/mの銀が挙げられる。導電率とコストの双方を考慮すると、アルミニウム又は銅を採用することが実用性上好ましい。本発明に係るシールド材に使用する金属箔はすべて同一の金属であってもよいし、層毎に異なる金属を使用してもよい。また、上述した金属を含有する合金を使用することもできる。
【0021】
金属箔表面には接着促進、耐環境性、耐熱及び防錆などを目的とした各種の表面処理層が形成されていてもよい。例えば、金属面が最外層となる場合に必要とされる耐環境性、耐熱性を高めることを目的として、Auめっき、Agめっき、Snめっき、Niめっき、Znめっき、Sn合金めっき(Sn−Ag、Sn−Ni、Sn−Cuなど)、クロメート処理などを施すことができる。これらの処理を組み合わせてもよい。コストの観点からSnめっきあるいはSn合金めっきが好ましい。また、金属箔と樹脂層との密着性を高めることを目的として、クロメート処理、粗化処理、Niめっきなどを施すことができる。これらの処理を組み合わせてもよい。粗化処理が密着性を得られやすく好ましい。また、直流磁界に対するシールド効果を高めることを目的として、比透磁率の高い金属層を設けることができる。比透磁率の高い金属層としてはFe−Ni合金めっき、Niめっきなどが挙げられる。
【0022】
銅箔を使用する場合、シールド性能が向上することから、純度が高いものが好ましく、純度は好ましくは99.5質量%以上、より好ましくは99.8質量%以上である。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔、メタライズによる銅箔等を用いることができるが、屈曲性及び成形加工性に優れた圧延銅箔が好ましい。銅箔中に合金元素を添加して銅合金箔とする場合、これらの元素と不可避的不純物との合計含有量が0.5質量%未満とすることが好ましい。特に、銅箔中に、Sn、Mn、Cr、Zn、Zr、Mg、Ni、Si、及びAgの群から選ばれる少なくとも1種以上を合計で200〜2000質量ppm含有すると、同じ厚さの純銅箔より伸びが向上するので好ましい。
【0023】
本発明に係るシールド材に使用する金属箔の厚さは、一枚当たり4μm以上であることが好ましい。4μm未満だと取り扱いが難しいのに加えて、金属箔の延性が著しく低下し、シールド材の成形加工性が不十分となる場合がある。また、一枚当たりの箔の厚さが4μm未満だと優れた電磁波シールド効果を得るために多数の金属箔を積層する必要が出てくるため、製造コストが上昇するという問題も生じる。このような観点から、金属箔の厚さは一枚当たり10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更により好ましく、20μm以上であることが更により好ましく、25μm以上であることが更により好ましく、30μm以上であることが更により好ましい。一方で、一枚当たりの箔の厚さが100μmを超えると強度が高くなりすぎて圧空成形が難しくなることから、箔の厚さは一枚当たり100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることが更により好ましく、40μm以下であることが更により好ましい。
【0024】
電磁波シールド材に使用する金属箔は一枚でもよいが、成形加工性及びシールド性能を高める観点からは、シールド材を構成する金属箔を樹脂層を介して複数枚積層することが好ましく、金属箔の合計厚さを薄くしながらも優れた電磁波シールド特性を確保する観点からは、金属箔を樹脂層を介して三枚以上積層することがより好ましい。金属箔を樹脂層を介して三枚以上積層することで、金属箔の合計厚さが同じだとしても金属箔が単層の場合や金属箔を樹脂層を介して二枚積層する場合に比べて、シールド効果が顕著に向上する。金属箔同士を直接重ねても、金属箔の合計厚さが増えることでシールド効果が向上するものの、顕著な向上効果は得られない。つまり、シールド材を構成する金属箔を樹脂層を介して複数枚積層すると、同一の電磁波シールド効果を得るのに必要な金属箔の合計厚さを薄くすることができるので、電磁波シールド材の軽量化と電磁波シールド効果の両立を図ることが可能となる。
【0025】
これは、金属箔間に樹脂層が存在することで電磁波の反射回数が増えて、電磁波が減衰されることによると考えられる。但し、金属箔の積層枚数は多い方が電磁波シールド特性は向上するものの、積層枚数を多くすると積層工程が増えるので製造コストの増大を招き、また、シールド向上効果も飽和する傾向にあるため、シールド材を構成する金属箔は五枚以下であるのが好ましく、四枚以下であるのがより好ましい。
【0026】
従って、本発明に係るシールド材の一実施形態においては、金属箔の合計厚さを100μm以下とすることができ、80μm以下とすることもでき、80μm以下とすることもでき、60μm以下とすることもでき、40μm以下とすることもできる。また、本発明に係るシールド材の一実施形態においては、金属箔の合計厚さを4μm以上とすることができ、8μm以上とすることもでき、12μm以上とすることもでき、16μm以上とすることもできる。
【0027】
(樹脂層)
一般的に、樹脂層は金属箔と比較して延性が高い。このため、各金属箔の両面を樹脂層によりサポートすることにより、金属箔の延性が顕著に向上し、シールド材の成形加工性が有意に向上する。金属箔同士を直接重ねても成形加工性の向上効果を得ることはできない。
【0028】
樹脂層としては、金属箔とのインピーダンスの差が大きいものの方が、優れた電磁波シールド効果を得る上では好ましい。大きなインピーダンスの差を生じさせるには、樹脂層の比誘電率が小さいことが必要であり、具体的には10(20℃の値。以下同じ。)以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることが更により好ましい。比誘電率は原理的には1.0より小さくなることはない。一般的に手に入る材料では低くても2.0程度であり、これ以上低くして1.0に近づけてもシールド効果の上昇は限られている一方、材料自体が特殊なものになり高価となる。コストと効果の兼ね合いを考えると、比誘電率は2.0以上であることが好ましく、2.2以上であることがより好ましい。
【0029】
樹脂層を構成する材料としては加工性の観点から合成樹脂が好ましい。また、樹脂層を構成する材料としてはフィルム状の材料を使用することができる。樹脂層には炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維などの繊維強化材を混入させることも可能である。合成樹脂としては、入手のしやすさや加工性の観点から、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)及びPBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリアセタール、フッ素樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレンブタジエンゴム等が挙げられ、これらの中でも加工性、コストの理由によりPET、PEN、ポリアミド、ポリイミドが好ましい。合成樹脂はウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系などのエラストマーとすることもできる。これらの中では熱圧着による金属箔との接着が容易なポリイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタンなどを好適に用いることができる。本発明に係るシールド材に使用する樹脂層はすべて同一の樹脂材料で構成されもよいし、層毎に異なる樹脂材料を使用してもよい。
【0030】
樹脂層表面には金属箔との密着性促進などを目的とした各種の表面処理が行われてもよい。例えば、樹脂フィルムの金属箔との貼り合わせ面にプライマーコートやコロナ処理を行うことで金属箔との密着性を高めることができる。
【0031】
樹脂層の厚さは特に制限されないが、金属箔の延性向上効果を高めるという観点からは、樹脂層の合計厚さは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることが更により好ましく、80μm以上であることが更により好ましく、100μm以上であることが更により好ましい。但し、樹脂層の合計厚さは、過度に大きいと強度が高くなりすぎて圧空成形が難しくなることから、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることが更により好ましい。
【0032】
また、金属箔の延性向上効果を高めるという観点からは、樹脂層の一層当たりの厚さは4μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更により好ましく、20μm以上であることが更により好ましく、40μm以上であることが更により好ましく、80μm以上であることが更により好ましく、100μm以上であることが更により好ましい。但し、樹脂層の一層当たりの厚さは、過度に大きいと強度が高くなりすぎて圧空成形が難しくなることから、250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0033】
樹脂層と金属箔を密着積層する方法としては、熱圧着、超音波接合、接着剤による接合、金属箔上に溶融した樹脂を塗布、硬化させてフィルムを形成する方法等が挙げられる。これらの中では、接着強度の安定性から熱圧着が好ましい。熱圧着は樹脂層と金属箔の双方の融点以下に加熱した上で圧力を加えて双方を密着させ、塑性変形を起こさせて接合させる方法である。但し、本発明においては後述するような樹脂層の融点を超える温度に加熱する場合も熱圧着として捉える。超音波振動を加えながら熱圧着させるサーモニックボンディングを採用することも好適である。接着剤を介して密着積層することも可能であるが、接着剤は後述するように樹脂フィルムに比べて強度が低い。このため、樹脂層を積層することによる金属箔の延性向上効果を阻害しないように適切に接着剤の厚みや引張弾性率を選定する必要がある。このため、熱圧着が簡便であり延性向上効果も得やすいので好ましい。但し、PETのように熱圧着が困難な樹脂材料も存在するため、その場合は接着剤を使用することが好ましい。
【0034】
熱圧着の際、樹脂層と金属箔の密着性を高める観点から、樹脂層の融点を30℃下回る温度以上に加熱することが好ましく、樹脂層の融点を20℃下回る温度以上に加熱することがより好ましく、樹脂層の融点を10℃下回る温度以上に加熱することが更により好ましい。但し、必要以上に加熱すると樹脂層が溶融して圧力で押し出されて厚さの均一性や物性が損なわれることから、熱圧着の際の加熱は樹脂層の融点を20℃上回る温度以下とすることが好ましく、樹脂層の融点を10℃上回る温度以下とすることがより好ましく、樹脂層の融点以下とすることが更により好ましい。また、熱圧着の際の圧力は、樹脂層と金属箔の密着性を高める観点から、0.05MPa以上とすることが好ましく、0.1MPa以上とすることがより好ましく、0.15MPa以上とすることが更により好ましい。但し、必要以上に加圧しても密着力は向上しないだけでなく、樹脂層が変形して厚さの均一性が損なわれることから、熱圧着の際の圧力は60MPa以下とすることが好ましく、45MPa以下とすることがより好ましく、30MPa以下とすることが更により好ましい。
【0035】
接着剤は一般的に樹脂フィルムと比較して強度が低い。従って接着剤層が厚すぎる場合、樹脂層を積層することによる金属箔の延性向上を阻害する傾向にある。一方、接着剤層が薄すぎると金属箔と樹脂フィルムの界面全体に接着剤を塗布するのが難しく、未接着部ができてしまう。そこで、接着剤層の厚さは1μm以上20μm以下が好ましく、1.5μm以上15μm以下がより好ましく、2μm以上10μm以下が更により好ましい。
【0036】
樹脂層を積層することによる金属箔の延性向上を阻害しないために、接着剤層の強度を高めることもできるが、強度を高めすぎると接着剤層の延性が低下する傾向にあり、逆に延性向上を阻害する。一方、接着剤層が柔らかくなりすぎると、上述の厚さ範囲においても延性向上を阻害してしまう。接着剤層の引張弾性率は1MPa〜1500MPaが好ましく、3MPa〜1000MPaがより好ましく、5MPa〜800MPaがさらに好ましい。本発明において、接着剤層の引張弾性率は接着剤を容易に剥離できる、フィルムなどの基材の上に測定対象となる接着剤を塗布、乾燥し、硬化させた後、基材から剥がし取って得た接着剤膜に対して、JIS K7161−1:2014に準拠して測定する。
【0037】
(電磁波シールド材)
電磁波シールド材(単に「シールド材」ともいう。)は一枚、好ましくは二枚以上、より好ましくは三枚以上の金属箔が樹脂層を介して密着積層された構造とすることができる。このとき、各金属箔はその両面が樹脂層と密着積層されるような構造とすることが金属箔の延性を向上させてシールド材の成形加工性を高める上で望ましい。つまり、金属箔がシールド材の最外層を形成する態様や、シールド材の内層で複数の金属箔が樹脂層を介することなく積層された箇所がある態様よりも、積層体の両最外層が樹脂層で構成され、樹脂層と金属箔が交互に一層ずつ積層された構成が好ましい。
【0038】
電磁波シールド材の積層構造の例としては、以下が挙げられる。
(1)樹脂層/金属箔/樹脂層
(2)樹脂層/金属箔/樹脂層/金属箔/樹脂層
(3)樹脂層/金属箔/樹脂層/金属箔/樹脂層/金属箔/樹脂層
【0039】
ここで、本発明においては、一層の「樹脂層」には金属箔を介することなく複数の樹脂層を積層して構成したものが含まれることとする。つまり、本発明においては、金属箔を介することなく積層された複数の樹脂層は一層の樹脂層として捉える。また、本発明においては接着剤層も樹脂層として捉える。
【0040】
従って、例えば電磁波シールド材が以下の(4)に示す積層構造を有する場合は、「樹脂フィルム/接着剤層」の積層体を一層の「樹脂層」として捉え、(4’)に示す積層構造を有するものとして後述するVM/VM’の範囲を満たすか否かが隣り合う金属箔との関係で判断される。
(4)(樹脂フィルム/接着剤層)/金属箔/(接着剤層/樹脂フィルム層)
(4’)樹脂層/金属箔/樹脂層
【0041】
同様に、電磁波シールド材が以下の(5)に示す積層構造を有する場合は、「樹脂フィルム/接着剤層」の積層体及び「接着剤層/樹脂フィルム/接着剤層」の積層体をそれぞれ一層の「樹脂層」として捉え、(5’)に示す積層構造を有するものとして後述するVM/VM’の範囲を満たすか否かが隣り合う金属箔との関係で判断される。
(5)(樹脂フィルム/接着剤層)/金属箔/(接着剤層/樹脂フィルム層/接着剤層)/金属箔/(接着剤層/樹脂フィルム)
(5’)樹脂層/金属箔/樹脂層/金属箔/樹脂層
【0042】
シールド材の成形加工性を高める観点からは、各金属箔は、隣接する二層の樹脂層のそれぞれと、下記の関係を満たすことが望ましい。
0.02≦VM/VM’≦1.2
M:金属箔と樹脂層との合計体積に対する金属箔の体積率
M’:(σR−σR’)/(σM+σR−σR’
σM:金属箔に引張応力を与えたときの破断時の金属箔の応力(MPa)
σR:樹脂層に引張応力を与えたときの破断時の樹脂層の応力(MPa)
σR’:金属箔破断時の歪み(εM)と同じ歪みを樹脂層に与えたときの樹脂層の応力(MPa)
【0043】
本明細書において、断りがない限り、「応力」は「真応力」、「ひずみ(歪み)」は「対数ひずみ」を指す。
【0044】
“各金属箔は、これに隣接する二層の樹脂層のそれぞれと、下記の関係を満たす”というのは、例えば、樹脂層1/金属箔1/樹脂層2の構成であれば、樹脂層1/金属箔1と金属箔1/樹脂層2のそれぞれでVM/VM’を計算し、どちらも0.02≦VM/VM’≦1.2を満たすことを意味する。樹脂層が樹脂フィルムと接着剤層の積層体で構成されている場合には樹脂フィルムと接着剤層の積層体についてのσR及びσR’に基づき、VM/VM’を算出する。
【0045】
金属箔のσM及びεMはシールド材を構成する金属箔と同一の金属箔単体に対してJIS K7127:1999に準拠して、幅12.7mm×長さ150mmの試験片を作製し、25℃の温度下で引張速度50mm/minで試験片の長手方向に引張試験を行うことにより求める。シールド材を構成する金属箔が表面処理を受けたものである場合は当該表面処理を行った後の金属箔に対して測定する。
各樹脂層のσR及びσR’はシールド材を構成する樹脂層と同一の樹脂層単体に対してJIS K7127:1999に準拠して、幅12.7mm×長さ150mmの試験片を作製し、25℃の温度下で引張速度50mm/minで試験片の長手方向に引張試験を行うことにより求める。樹脂層が表面処理を受けたものである場合は当該表面処理を行った後の樹脂層に対してσR及びσR’を測定する。また、樹脂層が接着剤層を含む場合には、硬化後の接着剤層が積層された状態で樹脂層のσR及びσR’を測定する。
【0046】
図1は樹脂層と金属箔の応力と歪みの関係を模式的に示したグラフである。複合則によると、1枚の金属箔と1層の樹脂層を貼り合わせた積層体に対して引張力を与えたとき、金属箔破断時の歪み(εM)を与えたときの積層体の応力は、σM×VM+σR’×(1−VM)で表され、積層体中の樹脂層が破断せずに金属箔を支えられる積層体の最大応力はσR×(1−VM)で表される。
【0047】
σR×(1−VM)がσM×VM+σR’×(1−VM)よりも小さい場合に積層体に歪みを与えると、樹脂層は積層体中の金属箔が破断する前、又は金属箔の破断と同時に破断するため、積層体の破断時の歪みが金属箔の歪みに等しくなるため、金属箔の延性は向上しない。逆に、σR×(1−VM)がσM×VM+σR’×(1−VM)よりも大きい場合、積層体に歪みを与えると、金属箔単体に引張力を与えたときであれば金属箔の破断が生じる歪みにおいても樹脂層は破断せず、伸び続ける。この際、金属箔が樹脂層に密着積層されていると、金属箔も破断せず樹脂層と一緒に伸び続けることができる。このメカニズムに従い、金属箔の延性が向上する。
【0048】
σR×(1−VM)=σM×VM+σR’×(1−VM)となるときのVMをVM’とすると、VM’は次式のように表すことができる。
M’=(σR−σR’)/(σM+σR−σR’
本発明者は、上記の式に基づき1枚の金属箔と1層の樹脂層が張り合わされた積層体についてVM及びVM’を算出し、延性との関係を調査したところ、VMがVM’と比較して小さくなるほど金属箔の延性が向上することがわかった。特に金属箔と金属箔の両面に積層されている二層の樹脂層のそれぞれと、VM/VM’≦1.2を満たすときに積層体の成形加工性が向上し、VM/VM’≦0.9を満たすときに積層体の成形加工性が更に向上し、VM/VM’≦0.6を満たすときに積層体の成形加工性がより一層向上する。但し、VM/VM’が小さすぎるとフィルムが厚すぎる、または強度が高すぎるため、圧縮空気成形では十分に成形しきれなくなることから、0.02≦VM/VM’であることが好ましく、0.1≦VM/VM’であることがより好ましく、0.2≦VM/VM’であることが更により好ましい。
【0049】
本発明に係る電磁波シールド材の一実施形態においては、電磁波シールド材の全体厚さを50〜500μmとすることができ、400μm以下とすることもでき、300μm以下とすることもでき、250μm以下とすることもできる。
【0050】
本発明に係る電磁波シールド材の一実施形態によれば、1MHzにおいて25dB以上の磁界シールド特性(受信側でどれだけ信号が減衰したか)をもつことができ、好ましくは30dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、より好ましくは40dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、更により好ましくは50dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、更により好ましくは60dB以上の磁界シールド特性をもつことができ、例えば36〜90dBの磁界シールド特性をもつことができる。また、100MHzにおいて40dB以上の電界シールド特性をもつことができ、好ましくは60dB以上の電界シールド特性をもつことができ、更により好ましくは80dB以上の電界シールド効果をもつことができる。本発明においては、磁界シールド特性はKEC法によって測定することとする。KEC法とは、関西電子工業振興センターにおける「電磁波シールド特性測定法」を指す。
【0051】
本発明に係る電磁波シールド材は、特に電気・電子機器(例えば、インバータ、通信機、共振器、電子管・放電ランプ、電気加熱機器、電動機、発電機、電子部品、印刷回路、医療機器等)から放出される電磁波を遮断する用途に適用可能である。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらは本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0053】
(1.金属箔の準備)
金属箔として以下の材料を準備した。導電率はJIS C2525:1999のダブルブリッジ法で測定した。
Cu:圧延銅箔(20℃での導電率:58.0×106S/m、厚さ:表1参照)、実施例17のみ電解銅箔(20℃での導電率:58.0×106S/m、厚さ:表1参照)
*圧延銅箔については、添加元素を添加していない純銅箔と、Agを0.2wt%程度添加してσMを低下させた銅合金箔を使用した。なお、微量添加のため、導電率にはほとんど変化はない。
Al:アルミ箔(20℃での導電率:39.6×106S/m、厚さ:表1参照)
*アルミ箔は、厚みの大きなアルミニウム素材を圧延することにより製造した。最終圧延の加工度でσMを変化させた。σMは加工度を高くすることで大きくすることができ、加工度を低くすることで小さくすることができる。
Ni:ニッケル箔(市販品、20℃での導電率:14.5×106S/m、厚さ:表1参照)
Fe:鉄箔(市販品、20℃での導電率:9.9×106S/m、厚さ:表1参照)
SUS:ステンレス箔(市販品、20℃での導電率:1.4×106S/m、厚さ:表1参照)
【0054】
<表面処理>
以下の条件で金属箔の両面に試験番号に応じて表1に記載の条件に従って表面処理を行った。表中、「−」とあるのは表面処理を行わなかったことを意味する。
粗化処理:粗化処理液(Cu:10〜25g/L、H2SO4:20〜100g/L、温度25〜35℃)を用い、電流密度30〜70A/dm2、電解時間1〜5秒で電解処理を行った。その後、Ni−Coめっき液(Coイオン濃度:5〜15g/L、Niイオン濃度:5〜15g/L)を用い、温度30〜50℃、電流密度:1〜4A/dm2でNi−Coめっきを行った。
シラン処理:エポキシシラン処理液(エポキシシラン:0.1〜2wt%水溶液)に浸漬処理した。
クロメート処理:クロメート浴(K2Cr27:0.5〜5g/L、温度50〜60℃)を用い、電流密度0.5〜2A/dm2で電解処理した。
Niめっき+クロメート処理:Niめっき浴(Niイオン濃度:15〜25g/Lのワット浴)を用い、めっき液温度30〜50℃、電流密度1〜4A/dm2でNiめっきを行った後、上記と同様にクロメート処理を行った。
【0055】
これらの金属箔について、引張応力を与えたときの破断時の金属箔の応力(σM:MPa)及びそのときの歪み(εM)を先述した方法により島津製作所製型式AGS−Xの引張試験装置を用いて測定した。結果を表3〜5に示す。
【0056】
(2.樹脂層の準備)
樹脂フィルムとして以下の材料を準備した。何れも市販品である。比誘電率はJIS C 2151:2006に記載のB法により測定した。
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(20℃での比誘電率:3.0〜3.5、融点:220℃、厚さ:表1参照)
*PETについては、複数メーカの種々のグレードのPETフィルムを使用することで、σRを変化させた。σRは延伸条件を変化させる、又は、異なる分子構造のモノマーを複数種類配合させることなどにより変化させることが可能である。例えば2軸延伸時の延伸度を高くすると結晶化度が大きくなってσRを大きくすることができ、延伸度が低くなると結晶化度が小さくなって、σRを小さくすることができる。また、同じ延伸度でも結晶化しにくいモノマーを配合すると結晶化度が小さくなるので、σRを小さくすることができる。
PI:ポリイミドフィルム(20℃での比誘電率:3.5、融点:なし、厚さ:表1参照)
PA:ポリアミドフィルム(20℃での比誘電率:6.0、融点:300℃、厚さ:表1参照)
また、接着剤として以下のイソシアネート硬化型のポリウレタン系接着剤を準備した。
接着剤:主剤:RU−80、硬化剤:H−5(いずれもロックペイント社製)
接着剤の硬化後の引張弾性率を先述した方法により島津製作所社製精密型万能試験装置AGS−Xを用いて測定したところ、600MPaであった。
【0057】
PETは接着剤を使用して金属箔と密着積層させた。この場合、先述した定義に従い、一層の樹脂層はPETと接着剤層の積層体により構成される。このため、樹脂層にPETを使用する場合は、PETの両面に金属箔を積層するか、又はPETの片面に金属箔を積層するかに応じて、PETの両面又は片面に接着剤層を金属箔との接着条件と同じ条件で塗布及び硬化した積層体に対して、引張応力を与えたときの破断時の応力(σR:MPa)及び金属箔破断時の歪み(εM)と同じ歪みを与えたときの応力(σR’:MPa)を先述した方法により島津製作所製型式AGS−Xの引張試験装置を用いて測定した。結果を表3〜5に示す。
【0058】
PI及びPAは接着剤を使用することなく金属箔と密着積層させた。このため、樹脂層にPI又はPAを使用する場合は、樹脂フィルム単体に対して、引張応力を与えたときの破断時の破断時の応力(σR:MPa)及び金属箔破断時の歪み(εM)と同じ歪みを与えたときの応力(σR’:MPa)を先述した方法により測定した。
【0059】
(3.電磁波シールド材の作製)
上記の金属箔及び樹脂フィルムを用いて、表1に記載の積層構造の各種電磁波シールド材を作製した。金属箔及び樹脂フィルムについて、貼り合わせ面の面積は同じとし、互いにはみ出さないように積層した。樹脂層にPETを使用した例ではPETの貼合面に、接着剤をバーコーター(第一理化株式会社製)で塗布した。接着剤層の厚さは接着剤の固形分濃度とバーコーターの番手により調整した。次に80℃で1分間乾燥させて余分な溶剤を揮発させ、金属箔を張り合わせた後、硬化反応を促進するため40℃で7日間保持して金属箔と樹脂層を密着積層した。PIを使用した例では接着剤を使用することなく圧力4MPaで330℃×0.5時間で熱圧着することにより金属箔と樹脂層を密着積層した。PAを使用した例では接着剤を使用することなく圧力6MPaで300℃×0.5時間で熱圧着することにより金属箔と樹脂層を密着積層した。
【0060】
得られた各電磁波シールド材について、積層構造に応じて、各金属箔に隣接する二層の樹脂層のそれぞれと、VM及びVM’を求め、VM/VM’を算出した。実施例1を例にしてVM/VM’を説明する。実施例1はPET/Cu/PET(=R1/M1/R2)の積層構造を有している。R1とM1についてのM1の体積率VM11とM1とR2についてのM1の体積率VM12は、貼り合わせ面の面積が同一なので、それぞれR1とM1、M1とR2の厚さから以下のように算出される。
R1とM1についてのM1の体積率VM11=M1の厚さ/(R1の厚さ+M1の厚さ)
M1とR2についてのM1の体積率VM12=M1の厚さ/(M1の厚さ+R2の厚さ)
R1とM1についてのVM’をVM’11とすると、VM’11=(σR1−σR’11)/(σM1+σR1−σR’11)で表される。
σM1:M1に引張応力を与えたときのM1破断時の応力
σR1:R1に引張応力を与えたときのR1破断時の応力
σR’11:R1にM1破断時の歪み(εM1)と同じ歪みを与えたときの応力
M1とR2についてのVM’をVM’12とすると、VM’12=(σR2−σR’12)/(σM1+σR2−σR’12)で表される。
σM1:M1に引張応力を与えたときのM1破断時の応力
σR2:R2に引張応力を与えたときのR2破断時の応力
σR’12:R2にM1破断時の歪み(εM1)と同じ歪みを与えたときの応力
以上の計算によって、R1とM1についてのVM11/VM’11、M1とR2についてのVM12/VM’12をそれぞれ算出した。
他の実施例及び比較例についても同様の方法で隣接し合う樹脂層と金属箔の間のVM/VM’を算出した。結果を表2及び6に示す。
【0061】
(4.成形試験)
90mm×90mmのシート状の電磁波シールド材の各試験品に対して、圧空成形試験機(北口精機社製、特注品)により、直径30mmの半球を作る金型にて、金型温度25℃の条件で成形試験を行った。圧縮空気圧力は3MPa(絶対圧)としたが、3MPaでは試験品が破断してしまう場合には圧縮空気圧力を3MPaよりも低下させて成形を行ない、破断が生じない最大の圧縮空気圧力で成形を行った。成形品は、半球の外周面側が表1の「積層構造」の欄に示す最も右側の材料となるように製造した。
圧空成形後、試験片を取り出して成形深さを測定した。また、金属箔及び樹脂層の破断の有無を確認した。破断の有無は、成形品の最外層のみならず、X線CT(東芝ITコントロールシステム製マイクロCTスキャナ、TOSCANER32251μhd、管電流120μA、管電圧80kV)により内部も観察することにより確認した。
圧縮空気圧力が3MPa以下の範囲で、金属箔及び樹脂層の何れの破断も発生することなく成形できた最大深さを、その試験片の最大成形深さとした。最大成形深さが4mmを下回るものを成形性×、4mm以上6mm未満のものを○、6mm以上のものを◎とした。結果を表7に示す。
【0062】
(シールド効果の測定)
実施例1、2、4、5、24及び25の電磁波シールド材については、シールド効果評価装置(テクノサイエンスジャパン社 型式TSES−KEC)に設置して、25℃の条件下で、KEC法により100MHzにおける電界シールド効果を評価した。また、実施例24及び25の電磁波シールド材については、同じシールド効果評価装置にて、25℃の条件下で、KEC法により1MHzにおける磁界シールド効果を評価した。結果を表7に示す。
【0063】
【表1-1】
【0064】
【表1-2】
【0065】
【表1-3】
【0066】
【表2-1】
【0067】
【表2-2】
【0068】
【表2-3】
【0069】
【表3-1】
【0070】
【表3-2】
【0071】
【表3-3】
【0072】
【表4-1】
【0073】
【表4-2】
【0074】
【表4-3】
【0075】
【表5-1】
【0076】
【表5-2】
【0077】
【表5-3】
【0078】
【表6-1】
【0079】
【表6-2】
【0080】
【表6-3】
【0081】
【表7-1】
【0082】
【表7-2】
【0083】
【表7-3】
【0084】
(5.考察)
実施例1〜27(但し、実施例12は参考例)に係る電磁波シールド材は、隣り合う金属箔と樹脂層の関係が良好(0.02≦VM/VM’≦1.2)であったため、成形加工性が優れていた。
また、隣り合う金属箔と樹脂層の関係は、好ましい範囲(0.1≦VM/VM’≦0.9)に設定することで成形加工性が向上し、より好ましい範囲(0.2≦VM/VM’≦0.6)に設定することで成形加工性が更に向上したことが分かる。
比較例1〜3は金属箔を一枚しか使用していないことで成形加工性が実施例に比べて悪かった。
比較例4、7及び8は、隣り合う金属箔と樹脂層の関係は良好(0.02≦VM/VM’≦1.2)であったものの、シールド材を構成する金属箔の中に両面が樹脂層によってサポートされていなかったものが存在したために成形加工性が実施例に比べて悪かった。
比較例5、6、9及び10は隣り合う金属箔と樹脂層の関係が不適切であったため、成形加工性が実施例に比べて悪かった。
図1