(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所望の拡散角度範囲内の拡散光の強度が、正面方向の輝度値で規格化した拡散特性の角度に対する拡散プロファイルにおいて、最大値の半分の強度になる半値角度より内側を見たときに、前記拡散特性の傾きの絶対値が最初に0.02[a.u./deg]以下になる角度又は前記拡散特性の傾きの絶対値が最初に極小点となる角度のいずれか広い方の角度よりも内側の角度範囲において、前記拡散特性の傾きの絶対値の最大値が0.08[a.u./deg]以下で、かつ、前記拡散特性の傾きの絶対値の平均値が0.04[a.u./deg]以下となる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の拡散板。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態1]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
(拡散板の形状)
図1は、本実施の形態に係る拡散板1の主面S1に垂直な断面の断面プロファイルを示す図である。
図1に示すように、拡散板1は、基板の主面S1に複数のマイクロレンズ2が配列された光拡散板である。複数のマイクロレンズ2は主面S1上に格子状に配列されている。
図1の縦軸は、基板の主面S1の高さを0として、レンズ形状の主面S1からの高さを示している。
図1の横軸は、主面S1に平行な方向の位置を示している。なお、複数のマイクロレンズ2により構成されるマイクロレンズアレイの光軸は主面S1に垂直な方向を向いている。
【0025】
図1に示すように、複数のマイクロレンズ2の主面S1に垂直な断面の形状は、互いに異なっているとともに、対称軸を有しない。複数のマイクロレンズ2のそれぞれの断面における表面形状は曲線のみから構成される。複数のマイクロレンズ2の頂点は、それぞれ主面S1に垂直な方向の位置が異なっている。
【0026】
また、
図2に約450μm×480μmの単位領域のマイクロレンズアレイを示す。この単位領域を基板の主面S1上に敷き詰めることにより拡散板1を形成する。
図2の縦軸及び横軸は主面S1上の座標を表しており、主面S1からの高さを色の違いで表している。
図2中で色が黒に近いほど主面S1に近く、白に近いほど主面S1からの高さが大きくなっている。
図2に示すように、複数のマイクロレンズ2を主面S1上に格子状に配置することが好ましい。
【0027】
図2では、複数のマイクロレンズ2は矩形格子状に配置されているが、格子状の配置は矩形格子に限定されるものではなく、正方格子、正三角格子、斜方格子、平行体格子などを用いてもよい。複数のマイクロレンズ2の底面の形状は、正方形又は長方形のような矩形に限定されるものではなく、四角形、六角形、その他の多角形としてもよい。複数のマイクロレンズ2は主面S1上に周期的に配列されていることが好ましい。
【0028】
図3は、拡散板1の製造方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る拡散板1の製造方法は、所望の光拡散特性を発現するマイクロレンズアレイを設計する工程(ST100)と、そのマイクロレンズアレイの金型を作製する工程(ST200)と、金型を用いて樹脂にマイクロレンズアレイの形状を転写する工程(ST300)と、を備える。
以下、各工程を順に説明する。
【0029】
(マイクロレンズアレイ設計工程)
図4を用いて、本実施の形態の拡散板1の設計におけるマイクロレンズアレイ設計工程(ST100)について説明する。本実施の形態では、基準マイクロレンズ3の形状(
図5)と、基準マイクロレンズ3に位相差を与える位相変調形状4(
図6)と、に分けて設計する。
【0030】
まず、拡散板1に用いる材料の光学物性(特に屈折率)及び使用波長、並びに必要な拡散特性の仕様を決定する(ST110)。
【0031】
次に、基準マイクロレンズ3の形状設計を行う(ST120)。基準マイクロレンズ3の形状は、球面でも非球面でもよく、求める拡散特性の仕様を満たす形状であれば良い。拡散板1の設計に使用する基準マイクロレンズ3の種類はいくつでも良いが、必要な特性を満たす範囲でより少ない種類で設定することが好ましい。ここで、
図5に、基準マイクロレンズ3の形状例として、4種類の曲率を持った球面レンズが配列されたマイクロレンズアレイの断面プロファイルを示す。
【0032】
拡散板1では、複数のマイクロレンズ2が最密に充填されている方が良いので、基準マイクロレンズ3の底面は正方形、長方形又は正六角形などの最密充填ができる形状が好ましい。しかし、拡散板1の光学特性に異方性を持たせたい場合などはこの限りではなく、基準マイクロレンズ3の底面の形状及び縦横比を任意に設定しても良い。
【0033】
次に、基準マイクロレンズ3の配置を決定する(ST130)。具体的には、主面S1上の単位領域における基準マイクロレンズ3の配置パターンやピッチを決定する。
図5に示すように、複数の形状の異なるマイクロレンズを使用してもよい。また、
図2に示すように、基準マイクロレンズ3を主面S1上に格子状に配置することが好ましい。
【0034】
単位領域を周期的に繰り返すことにより必要とされるパターン領域を埋めることができる。単位領域をより大きい面積とし、さらに、複数種類の単位領域をランダムに配置することにより、輝度ムラや色ムラを効果的に軽減させることができる。また、このような単位領域を繰り返すことにより、加工に要するデータ量を抑制できるので、データ作成の負荷を低減させる効果も得られる。もちろん、加工機側で大容量データを扱うのに支障がなければ、マイクロレンズアレイ全面のデータを一括で準備してもよい。
【0035】
ここで、本実施の形態に係る拡散板1では、マイクロレンズ2のピッチと、マイクロレンズ2として設定されたレンズ特性のばらつきの程度が重要である。そのため、次の条件を満たすようにレンズ形状とピッチの設計をするのが好ましい。ピッチが概ね200μmを超える場合には、拡散板として使用する際にパターンが視認できてしまう。このため、ピッチPはP≦200μmで設定するのが好ましい。
【0036】
また、複数の曲率を持ったマイクロレンズ2の特性を表すパラメータとして、各々のマイクロレンズ2の正面方向の相対輝度の標準偏差Skを定義する。拡散板1の正面方向の相対正面輝度のばらつき(標準偏差)は、0.005≦Skとすることが望ましい。さらに、ピッチPの二乗とマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skを乗算したものがP×P×Sk≦400[μm
2]の範囲内にあることが望ましい。また、拡散板1の外観不良(粒々感)の観点からはこのP×P×Skの値が小さいほうが好ましい。輝度ムラなど他の光学特性が許容される範囲で、このP×P×Skの値を小さくすることが好ましい。
【0037】
ここで、マイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差Skの算出にあたっては、算出に用いる微細構造体群の面積が重要であり、人間の目の分解能の下限近傍とするのが適当である。したがって、微細構造体群の面積としては0.01mm
2(100μm四方)〜0.36mm
2(600μm四方)の範囲内から選択するのが好ましく、0.04mm
2(200μm四方)〜0.25mm
2(500μm四方)の範囲内から選択するのがより好ましい。
【0038】
ピッチPと正面方向の相対正面輝度の標準偏差Skとを一定の範囲内に抑えるようにマイクロレンズ2の形状を設計することにより、外観品位の良好な拡散板を得ることができる。
【0039】
ただし、ここでマイクロレンズアレイの特性として相対正面輝度の標準偏差をパラメータ例に挙げたが、必ずしも正面方向の輝度のみに限定するものではなく、必要とされる視野角範囲内に相当する角度であればよい。
【0040】
また、輝度という観点から特性を定義しているが、光線追跡の考えによれば、これはマイクロレンズ2のそれぞれにおける特定の斜面角度の面積の標準偏差と同義である。例えば正面方向の相対輝度に寄与するマイクロレンズ2の斜面角度を0〜0.5度とし、マイクロレンズ2のそれぞれについてその面積を算出したものでも良く、使いやすいものを選択すればよい。この面積は設計値から算出するだけでなく、拡散板1からレーザ顕微鏡などを用いて面積として算出しても良い。
【0041】
〔従来技術との比較〕
拡散板1として用いられるマイクロレンズアレイには、さまざまな形態が考えられる。
【0042】
例えば、均一なマイクロレンズが繰り返し配置されたマイクロレンズアレイからなる拡散板において、レーザ光源やLED光源を照射して透過光を観察すると、ピッチに応じた回折スポットが生じるため、光を均一に拡散することができず、拡散板として十分に機能しているとは言い難い。
【0043】
また、例えば、2種類の曲率半径の異なるマイクロレンズを交互に並べたマイクロレンズアレイでは、均一なマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイに比べて回折スポットは軽減されるものの、まだ回折スポットが生じるため、拡散板としては十分に機能しているとは言い難い。
【0044】
そこで、特許文献4では、回折による回折スポットや拡散ムラを低減するために嵩上げ部を設けたレンズにしたり、複数の曲率半径を有するレンズをランダムに配置したりしている。回折スポットを消すために導入したこれらの設計により、透過光は巨視的に見ると均一な拡散特性を有するが、その拡散光を目視するといわゆる粒々感を強く感じてしまう。
【0045】
例えば、特許文献4の
図40に記載されたマイクロレンズアレイの設計データ(曲率半径)を用いて比較の計算を行う。特許文献4の
図40によると、マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズは、底面の直径が100μmの球面マイクロレンズであり、球面の曲率半径は約100〜250μmの範囲の一様分布となっている。
【0046】
正面輝度ばらつきの計算にあたって、レンズ31個を仮定する(曲率半径100μm、105μm、110μm・・・245μm、250μm)。これから、相対正面輝度の標準偏差Skを計算すると、Sk=0.26となる。これより、P×P×Sk=100×100×0.26=2600[μm
2]となる。特許文献4の
図40に記載されたマイクロレンズアレイの設計データは、本実施の形態において好ましい設計範囲を超えていることが分かる。
【0047】
輝度ムラや回折による影響を軽減するためには、複数の曲率半径を持ったマイクロレンズを並べたり、マイクロレンズをランダムに配置したりするなど、マイクロレンズアレイの均一性を崩す設計が必要になる。拡散板やスクリーンとして用いる場合には、マイクロレンズアレイに不均一性を取り入れつつ、外観品位を良好にするためにはその不均一性をある範囲に抑えなければならない、ということである。
【0048】
図4に戻って、拡散板1の設計におけるマイクロレンズアレイ設計工程(ST100)についての説明を続ける。ST130の次に、位相差を与える位相変調形状4の設計を行う(ST140)。本実施の形態の拡散板1において、位相差は、マイクロレンズ2を透過した光又はマイクロレンズ2により反射された光の光路長の差を波長で規格化して表される。複数のマイクロレンズ2にそれぞれ位相差を与えるために、基準マイクロレンズ3の形状とは別に位相変調形状4を定義する。位相変調形状4は、例えば平均ピッチ、高低差、などに基づいて生成することができ、いくつかの正弦波を組み合わせて生成してもよい。
【0049】
本実施の形態では、設定した位相差の範囲内で、複数のマイクロレンズ2に一様乱数を用いてランダムに位相差を設定する。まず、複数のマイクロレンズ2のそれぞれついて1つの数値で表される位相差を設定する。この状態では、それぞれのマイクロレンズ2の境界では位相差が不連続な状態である。そのため、マイクロレンズアレイを構成する複数のマイクロレンズ2全体の位相差を平均化処理することによって、位相差が連続的に変化する三次元曲面の位相変調形状4を生成する。位相変調形状4の形状例を
図6に示す。
【0050】
次に、複数のマイクロレンズ2の形状を生成する(ST150)。最終的に形成されるマイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズ2の形状は、位相変調形状4と複数の基準マイクロレンズ3の形状とを合成した形状となる。つまり、
図6に示すような位相変調形状4と、
図5に示すような複数の基準マイクロレンズ3の形状を足し合わせることにより、
図1に示すようなマイクロレンズアレイ形状を生成する。
【0051】
ここで、
図5に示す複数の基準マイクロレンズ3の形状は、対称軸を有するマイクロレンズである。それに対して、
図6の位相変調形状4は、対称軸を持たない、連続的に変化する三次元曲面である。それゆえに、
図1に示すような、複数の基準マイクロレンズ3と位相変調形状4とを合算したマイクロレンズアレイの主面S1に垂直な断面では、複数のマイクロレンズ2の断面形状はそれぞれ対称軸を持たない、非対称な形状になっている。
【0052】
つまり、複数のマイクロレンズ2の断面はそれぞれ異なり、それぞれが非対称な断面からなっていることを特徴とする。ただし、確率的には偶然同じレンズが存在しうるため、複数のマイクロレンズ2の中に同一のマイクロレンズが存在することを否定するものではない。また、意図的に同じレンズを配置することも否定しない。同一のマイクロレンズは数個であれば特に大きな問題は生じない。しかし、例えば、マイクロレンズアレイ中の複数のマイクロレンズ2全体の個数の10%を越えるような個数だけ、同一のレンズを配置すると、輝度ムラなどの特性に影響が出るため好ましくない。
【0053】
複数のマイクロレンズ2が非対称な断面を有するマイクロレンズアレイを用いた拡散板1の光学特性は、スカラー理論に基づいた波動光学計算から求めることができる。最適な位相変調形状4とマイクロレンズアレイの設計には膨大な組み合わせがあるため、コンピュータによって最適な組み合わせを探索することが好ましい。
【0054】
(複数のマイクロレンズの位相差)
マイクロレンズアレイを用いた透過型拡散板について具体的に説明する。まず、
図6に示すように、位相変調形状4は連続的に形状が変化していることが特徴である。位相変調形状4の主面S1からの高低差が、複数のマイクロレンズ2にそれぞれ与えられる位相差となる。
【0055】
本実施の形態の拡散板1では、それぞれのマイクロレンズ2に位相差を生じさせることにより、回折を原因として発生する輝度ムラや色ムラの改善を図っている。拡散板1は透過型の拡散板であり、複数のマイクロレンズ2は凸レンズである場合について考える。複数のマイクロレンズ2の位相差は、位相変調形状4と基準マイクロレンズ3の形状とを合算したものであり、複数のマイクロレンズ2の頂点の最大高低差をΔH[μm]とする。ここで、最大高低差ΔHに対応する位相差は、マイクロレンズアレイを構成する材料の屈折率をn、使用する光源の波長λ[nm]とすると、1000×ΔH×(n−1)/λと表される。
【0056】
輝度ムラや色ムラの改善効果を生じさせるには、複数のマイクロレンズ2の位相差は0.2以上に設定する必要があり、0.5以上とすることがさらに好ましい。ここで、光源が複数の波長からなる場合は、使用する波長の中で最も長い波長で代表して計算すれば良い。
【0057】
すなわち、複数のマイクロレンズ2の凸部の頂点の主面S1からの最大高さと最小高さとの差(最大高低差)をΔH[μm]、マイクロレンズ2の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]とするとき、
0.2≦ΔH×(n−1)×1000/λ
の関係を満たすことが好ましく、
0.5≦ΔH×(n−1)×1000/λ
とすることがさらに好ましい。
【0058】
ここまでは透過型の凸レンズを例として説明したが、拡散板1は透過型の拡散板であり、複数のマイクロレンズ2は凹レンズである場合について考える。透過型の凹レンズの場合はΔHの代わりに、複数のマイクロレンズ2の凹面の主面S1からの最大深さと最小深さとの差ΔD[μm]と置き換えて考えれば良い。
【0059】
すなわち、複数のマイクロレンズ2の凹面の頂点の主面S1からの最大深さと最小深さとの差をΔD[μm]、マイクロレンズ2の屈折率をn、入射光の波長をλ[nm]としたとき、
0.2≦ΔD×(n−1)×1000/λ
の関係を満たすことが好ましく、
0.5≦ΔD×(n−1)×1000/λ
とすることがさらに好ましい。
【0060】
拡散板1は反射型拡散板であり、複数のマイクロレンズ2は凸レンズである場合について考える。なお、反射型拡散板の場合は、表面に形成されている拡散パターンは光を透過しないので厳密に言えばレンズではないが、レンズ状の凹凸形状についても本明細書中では「マイクロレンズ」と称して説明を行う。
【0061】
複数のマイクロレンズ2の凸部の頂点の高さに分布を持ったマイクロレンズアレイの表面で入射光が反射されることにより光路差が生じて、複数のマイクロレンズ2それぞれの間に位相差が発生する。このときの複数のマイクロレンズ2の凸部の頂点の主面S1からの最大高さと最小高さとの差ΔHに対応する位相差は、1000×2ΔH/λと表される。
【0062】
輝度ムラや色ムラの改善効果を生じさせるには、透過型の場合と同様に、位相差は0.2以上に設定する必要があり、0.5以上とすることがさらに好ましい。
【0063】
すなわち、複数のマイクロレンズ2の凸面の頂点の主面S1からの最大高さと最小高さとの差をΔH[μm]、入射光の波長をλ[nm]としたとき、
0.1≦ΔH×1000/λ
の関係を満たすことが好ましく、
0.25≦ΔH×1000/λ
とすることがさらに好ましい。
【0064】
拡散板1は反射型拡散板であり、複数のマイクロレンズ2が凹レンズである場合について考える。反射型で凹レンズを用いる場合は、ΔHの代わりに、複数のマイクロレンズ2の凹部の主面S1からの最大深さと最小深さとの差ΔDと置き換えて考えれば良い点も、透過型で凹レンズを用いる場合と同様である。
【0065】
複数のマイクロレンズ2の凹面の頂点の主面S1からの最大深さと最小深さの差をΔD[μm]、入射光の波長をλ[nm]としたとき、
0.1≦ΔD×1000/λ
の関係を満たすことが好ましく、
0.25≦ΔD×1000/λ
とすることがさらに好ましい。
【0066】
マイクロレンズアレイにおける最大高低差ΔHの設定方法については、マイクロレンズアレイのパターン領域全域で設定しても良いし、ある単位領域の中で最大高低差ΔHを定めてそれを周期的又はランダムに繰り返しても良い。
【0067】
設計データからマイクロレンズアレイを加工する方法は、機械加工、マスクを用いたフォトリソグラフィ、マスクレスリソグラフィ、エッチング、レーザアブレーションなど多くの加工方法を用いることができる。これらの技術を用いて金型を製造し、金型を用いて樹脂を成形することにより、マイクロレンズアレイからなる拡散板1を製造する。金型を直接反射型の拡散板として使っても良い。拡散板1の成形方法は、ロールトゥロール成形、熱プレス成形、紫外線硬化性樹脂を用いた成形、射出成形など数多くの成形方法の中から適宜選択すれば良い。反射型の拡散板として用いる場合は、マイクロレンズアレイの曲率を有するレンズ面にAlなどの反射膜を成膜して用いれば良い。
【0068】
(金型製造工程及び成形工程)
以下、レーザ走査型のマスクレスリソグラフィと電鋳により金型を作製する金型作製工程(ST200)と、その金型と紫外線硬化性樹脂を用いた成形により拡散板1を成形する樹脂成形工程(ST300)と、について
図3及び
図7を参照しながらより詳細に説明する。
【0069】
マスクレスリソグラフィは、基板上にフォトレジストを塗布するレジスト塗布工程(ST210)と、微細パターンをフォトレジストに露光する露光工程(ST220)と、露光後のフォトレジストを現像して微細パターンを有する原盤を得る現像工程(ST230)と、からなる。
【0070】
まず、レジスト塗布工程(ST210)では、基板上にポジ型のフォトレジストを塗布する。フォトレジストの塗布膜の膜厚は、形成したい微細パターンの高さ以上の厚さであれば良い。塗布膜に対しては70℃〜110℃のベーキング処理を施すことが好ましい。
【0071】
次に、露光工程(ST220)では、塗布工程で塗布されたフォトレジストに対してレーザビームを走査しながら照射することにより、フォトレジストを露光する。レーザビームの波長はフォトレジストの種類に応じて選定すればよく、例えば351nm、364nm、458nm、488nm(Ar
+レーザの発振波長)、351nm、406nm、413nm(Kr
+レーザの発振波長)、352nm、442nm(He−Cdレーザの発振波長)、355nm、473nm(半導体励起固体レーザのパルス発振波長)、375nm、405nm、445nm、488nm(半導体レーザ)などを選択することができる。
【0072】
マイクロレンズ2の露光工程(ST220)では、レーザパワーをマイクロレンズ2形状とレジスト感度から決まる値に変調させながら、レジスト上にレーザビームを走査させる。対物レンズで集光することにより、レーザ光にレジスト上で焦点を結ばせている。レジスト上でのレーザスポットは、一般的に有限の直径を有するガウス分布である。そのため、レーザパワーを階段状に変化させてもレジストに露光される光量分布は階段状にはならずに、一定の傾斜を持つ光量分布となる。レーザ露光のこのような性質を利用することにより、滑らかな斜面形状を造形できる。
【0073】
一のマイクロレンズ2とそれに隣接するマイクロレンズ2との位相差(主面S1からのレンズ高さの差に相当する)を大きくするためには、露光工程において隣接するマイクロレンズ2に照射されるレーザパワーの差を大きくすれば良い。しかし、レーザパワーの差を大きくし過ぎると、隣接するマイクロレンズ2の境界付近のレンズ形状が、設計値からはずれる領域が増える。したがって、光学設計結果と同じ拡散角度分布を得るためには、隣接するマイクロレンズ2の間の高さの差を一定の範囲内に収めることが好ましい。
【0074】
本実施の形態ではマイクロレンズアレイの最大高低差ΔHは、位相変調形状4の最大高低差と、複数の基準マイクロレンズ3それぞれの形状差に起因する高低差とを合算したものとなる。前述した波長で規格化した位相差を1と設定すれば、複数のマイクロレンズ2の間の位相差の平均は0.5となる。これにより、拡散板1上の複数のマイクロレンズ2が平均的に1/2波長の位相差を持つことになるため、回折光を抑えられるので好ましい。
【0075】
次に、現像工程(ST230)では、露光後のフォトレジストを現像する。フォトレジストの現像は種々の公知の方法により実施することができる。使用できる現像液の制限は特になく、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等のアルカリ現像液を用いることができる。また、現像工程(ST230)では露光量に応じてフォトレジストが除去され、フォトレジストの微細パターン形状が形成される。例えば、露光工程(ST220)において、ポジレジストを用いて、凹レンズの形状に応じたレーザパワーで露光した場合、フォトレジストに凹レンズ形状が形成されたマイクロレンズ2の原盤が得られることになる。
【0076】
次に、電鋳工程(ST240)では、マスクレスリソグラフィでの露光工程及び現像工程により形成された微細パターンを有するフォトレジスト表面に、ニッケル金属の蒸着等により金属膜を形成することにより金型を作製する。
【0077】
電鋳工程(ST240)では、まず、微細パターンを有するフォトレジスト表面にニッケル金属の蒸着等により導電化処理を施す。次に、電鋳により、ニッケル蒸着膜表面にニッケルを板状に所望の厚みまで堆積させる。
【0078】
次に、剥離工程(ST250)では、電鋳工程(ST240)で形成したニッケル板をフォトレジスト原盤から剥離すると、フォトレジスト上の凹レンズ形状が反転転写された凸レンズ形状が形成された金型(スタンパ)が得られる。凹レンズ形状が必要な場合はもう一度電鋳工程を行えばよい。
【0079】
次に、樹脂成形工程(ST300)では、金型製造工程(ST200)により形成されたスタンパを用いて樹脂を成形する。
【0080】
より具体的には、まず、スタンパの表面に、例えば光硬化樹脂を適量塗布する。次に、光硬化樹脂の上に基材を被せる。具体的には、ハンドローラで基材を光硬化樹脂に押し付けつつ、余分な光硬化樹脂を掻き出しながら、基材を光硬化樹脂の上に被せていく。次に、基材側から紫外光を照射し、光硬化樹脂を硬化させる。なお、基材には、紫外光等の光を透過可能な材質が用いられている。次に、基材をスタンパから剥離する。スタンパから剥離された基材上には、光硬化樹脂の層が形成されている。そして、光硬化樹脂の層には、スタンパの構造が反転して転写されている。
【0081】
マイクロレンズアレイを反射型の拡散板1として用いる場合は、例えばマイクロレンズアレイが形成された部材の表面にアルミニウム反射膜を真空蒸着させ、入射光をアルミニウム面により反射させれば良い。また、マイクロレンズアレイが基板の片面のみに形成された部材の場合に、基板の平面側から入光させ、アルミニウム反射膜を成膜したマイクロレンズアレイ面で反射させる構成にしてもよい。
【0082】
一方、反射膜の形成されていないマイクロレンズアレイ面から光が入射して、反射膜を形成した平面側で光を反射させる構成も拡散板1として利用できる。さらに、両面にマイクロレンズアレイを成形した基板で、入射側の反射膜の膜厚を調整してハーフミラーとし、裏面側の膜厚は反射率をほぼ100%とするように調整した構成にすることにより、表裏両面の二つのマイクロレンズアレイによる拡散板とすることも可能である。また、必要に応じて、アルミニウム反射膜を保護するために保護層をコートしても良い。
【0083】
本発明に係る拡散板1では、複数のマイクロレンズ2にそれぞれ位相差を与えており、その位相差を与える位相変調形状4を連続的な形状にすることにより、複数のマイクロレンズ2は基板の主面S1に垂直な断面において、一般的なレンズのような回転対称軸や、トロイダルレンズのような対称軸を持たず、非対称な断面を有する。
【0084】
非対称な断面を有する複数のマイクロレンズ2から構成されるマイクロレンズアレイは、隣接するマイクロレンズ2間が滑らかに接続されている。隣接するマイクロレンズ2間の接続部分の散乱光を少なくすることにより、拡散板1の外観品位を向上させることができる。また、複数のマイクロレンズ2にそれぞれ位相差が与えられているので、マイクロレンズ2のピッチが数百μm以下に狭まったときに、回折及び干渉による輝度ムラや色ムラを低減させることができる。これにより、輝度ムラや色ムラの少ない光学特性と、良好な外観品位を両立させた拡散板を提供することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本実施の形態に係る拡散板1の実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0086】
本実施例の拡散板1では前述の通り、主面S1上の複数のマイクロレンズ2からなるマイクロレンズアレイを、位相変調形状4と複数の基準マイクロレンズ3とに分けて設計を行った。
【0087】
位相変調形状4は、マイクロレンズアレイ全体で設定した。位相変調形状4において、位相差を与えるための主面S1からの最大高低差はΔH=1.5μmとした。主面S1上において、複数のマイクロレンズ2のそれぞれの位置に対応する一様な乱数を発生させて、位相差を与えるための嵩上げ高さ(嵩上げ部)を設定した。しかし、複数のマイクロレンズ2ごとに異なる嵩上げ高さを設定しただけでは、隣接するマイクロレンズ2の間での位相差は不連続になってしまう。そのため、複数のマイクロレンズ2それぞれに設定した嵩上げ高さを移動平均処理することにより、連続する位相変調形状4を生成した。設計した位相変調形状4の一部を抜き出したものを
図6に示す。
【0088】
次に、基準マイクロレンズ3の形状について説明をする。基準マイクロレンズ3のレンズ形状は、一般的な回転対称形状を用いてもよく、その場合基準マイクロレンズ3の断面は、下記の式(1)で表される。ここで、Cは曲率[1/μm]であり、Kは円錐係数、rは中心軸からの距離、zは中心軸とレンズ面との交点を基準としたサグ量である。曲率Cは、曲率半径Rを用いて、C=1/Rと表される。
【0089】
【数1】
【0090】
本実施例の拡散板1で用いた基準マイクロレンズ3の断面形状は、下記の式(2)で表される。ここでは、基準マイクロレンズ3は、長方形の底面を有するトロイダルレンズであり、X方向及びY方向にそれぞれ曲率が定義されている。ここで、レンズの中心軸を原点として、r
xは中心軸からのX方向の距離、r
yは中心軸からのY方向の距離であり、C
xはX方向(XZ平面)の曲率[1/μm]であり、C
yはY方向の曲率[1/μm]であり、(XZ平面)のK
xはX方向(XZ平面)の円錐係数、K
yはY方向(YZ平面)の円錐係数である。
【0091】
【数2】
【0092】
本実施例に係る拡散板1では、複数のマイクロレンズ2のピッチはPx=30μm、Py=32μmで固定した。複数の基準マイクロレンズ3は、X方向には4種類の曲率半径を有し、Y方向には3種類の曲率半径を有する。本実施例に係る拡散板1では、X方向及びY方向の曲率半径を組み合わせた合計12種類の基準マイクロレンズ3を、一様乱数を用いてランダムに選択して主面S1上に配置した。
【0093】
基準マイクロレンズ3において、X方向の曲率半径R
x[μm]は、球面レンズ(K
x=0)として、曲率半径R
x[μm]=62.8、64.0、61.9、63.9とした。Y方向の曲率半径R
y[μm]は、非球面レンズ(K
y=−0.45)として、曲率半径R
y[μm]=29.0、31.5、28.0とした。また、全ての基準マイクロレンズ3は、最も低い部分の高さを基準高さとする。
【0094】
本実施例に係る拡散板1のマイクロレンズアレイの特性として、光線追跡の考え方を用いて簡易的に、複数のマイクロレンズ2の相対正面輝度の標準偏差(Sk)を以下の通り定義する。
【0095】
レンズ形状Zは、X,Y方向それぞれの断面形状の和となるので、数式(2)と同様に、下記の数式(3)の通り表される。
Z(rx,ry)=Zx(rx)+Zy(ry) ・・・(3)
【0096】
ここで、ある1つのマイクロレンズ2に着目すると、X方向の断面形状Zxと斜面傾きdZx/dxは、下記の数式(4)及び(5)と表される。
Zx(rx)=−Cx×rx^2/(1+sqrt(1−(Kx+1)×Cx^2×rx^2) ・・・(4)
dZx(rx)/dx=−Cx×rx/sqrt(1−(Kx+1)×Cx^2×rx^2) ・・・(5)
【0097】
ここで、正面方向に寄与する斜面角度θ[deg]の値を定義し、その傾きをAxとすると、傾きAxは次のように表すことができる。
Ax=tanθ=dZx(rx)/dx ・・・(6)
【0098】
次に、X方向断面で斜面角度θdegの位置Rxは、数式(5)及び(6)より、rx=Rxとして、下記数式(7)で表される。
Rx=Ax/(Cx×sqrt(1+Ax^2×(1+Kx)) ・・・(7)
【0099】
同様にRyを計算し、斜面角度が0〜θdegまでの面積Sが下記の数式(8)で計算できる。
S=Rx×Ry ・・・(8)
【0100】
ここで、光線追跡の考え方によれば、面積Sは輝度と比例関係にあるため、レンズの正面輝度Iは、I=αSとなる(αは任意の係数)。
【0101】
ここで、マイクロレンズアレイ設計で扱う1〜n個の各レンズの正面輝度をI
1〜I
nとすると、I
nの平均値Avg(I
1〜I
n)を用いて、各レンズにおいて平均正面輝度に対する相対正面輝度i
n[%]が、下記数式(9)で計算できる。
i
n=I
n/Avg(I
1〜I
n) ・・・(9)
【0102】
各レンズの相対正面輝度i
nから、マイクロレンズアレイにおける相対正面輝度の標準偏差Skが、下記数式(10)で定義される。
Sk=stdev(i
1〜i
n) ・・・(10)
【0103】
本実施例では、正面方向輝度に寄与するレンズ斜面角度としてθ=0.5[度]とした。計算領域約0.23μm
2(480μm四方、レンズ数:16×15=240個;Px=30μm、Py=32μm)における前述の光学設計ではSk=0.051となる。これより、P×P×Sk=30×32×0.051≒49[μm
2]となる。
【0104】
マイクロレンズアレイの複数のマイクロレンズ2の形状は、位相変調形状4と複数の基準マイクロレンズ3の形状とを足し合わせたものとなる。ここで、マイクロレンズアレイを構成する複数のマイクロレンズ2の形状は、複数の対称軸を持つ基準マイクロレンズ3と、対称軸や対称点を持たない位相変調形状4を重ね合わせた形状である。このため、マイクロレンズアレイを構成する複数のマイクロレンズ2はそれぞれ非対称な断面を持つことになる。
【0105】
上述の内容に基づき拡散板1表面の約60mm×80mmのマイクロレンズアレイ領域の全体を設計した(ST100)。この設計データを用い、前述の金型作製工程(ST200)を経て、凸レンズを複数有するマイクロレンズアレイ形状が形成されたスタンパを得た。
図8に、このスタンパのレンズ形状の共焦点レーザ顕微鏡による観察像を示す。
図8では、位相差が設けられた複数の凸レンズ形状が形成されていることが確認できる。
【0106】
次に、
図8に示すスタンパを用いて、光硬化樹脂を用いた成形を行った。基材として厚さ0.3mmのポリカーボネートフィルムを用い、屈折率1.52のアクリル系光硬化樹脂をスタンパと基材の間に流し込んで成形を行うことにより、拡散板1を作製した。
【0107】
図9A〜
図9Cは、成形により得られた本実施例に係る拡散板1に、LED光源を用いたプロジェクタにより白画像を投影し、透過光を凹面鏡にて反射させた像を再度ガラス面で反射させて、デジタルカメラにより撮像した結果である。
図9Aは本実施例に係る拡散板1に画像を投影した結果である。
【0108】
図9Bは比較例1に係る拡散板に画像を投影した結果である。比較例1に係る拡散板は、本実施例と同様の設計手法を用いて設計された。比較例1に係る拡散板は、X方向ピッチ30μm、球面レンズ(K
x=0)として曲率半径R
x[μm]は52.9、58.5、69.8、77.4とし、Y方向はピッチ32μm、非球面レンズ(K
y=−0.45)として曲率半径R
y[μm]は28.2、31.2、34.6とした。マイクロレンズアレイの相対正面輝度の標準偏差はSk=0.178、P×P×Sk≒171[μm
2]であった。
【0109】
図9Cは比較例2に係る拡散板に画像を投影した結果である。比較例2に係る拡散板は、本実施例と同様の設計手法を用いて設計された。比較例2に係る拡散板は、X方向ピッチ60μm、球面レンズ(K
x=0)として曲率半径R
x[μm]は135.3、170.8、162.5、136.2とし、Y方向はピッチ60μm、非球面レンズ(K
y=−0.45)として曲率半径R
y[μm]は58.5、57.9、65.8とした。マイクロレンズアレイの相対正面輝度の標準偏差はSk=0.131、P×P×Sk≒472[μm
2](総レンズ個数64個での計算値)であった。
【0110】
上述の結果より、P×P×Skが小さい方が画像の粒々感が弱く、良好な画質である。その一方、400[μm
2]を超える場合は粒々感が強く高い外観品位を求める拡散板やスクリーンには使用できない。
【0111】
〔均一な拡散特性の条件追加〕
拡散特性の計測は、輝度計(トプコンテクノハウス社製BM−7)、ゴニオステージ、及び白色LED平行光源(Opto Engineering社製LTCL23)を用いて行った。
【0112】
まず、ゴニオステージ上に光源を設置し、輝度計をそこから500mm離れた位置に対向させる。そして、拡散板を光源から10mm離れた位置に設置し、拡散特性(各角度における輝度値)を計測する。光源の光は、拡散板のパターン面に対して垂直に入射させた。また輝度計の測定角を0.2度とし、ゴニオステージを1度刻みで動かし必要な角度範囲内で測定を行う。今回は±30度の範囲で測定した。
【0113】
図10に本実施例に係る拡散板1の拡散特性の測定結果を示す。
図10において、H方向は拡散板1の水平方向、V方向は拡散板1の垂直方向を表す。ここで、半値全角の広いH方向のプロファイルを選択し、正面輝度の値を用いて規格化し、そこから、規格化されたH方向のプロファイルの傾きの絶対値を計算したものを、
図11に示す。
【0114】
次に、
図11に示された正面方向の輝度値で規格化した拡散特性で、プロファイルの両側からそれぞれ見て、拡散特性の傾きの絶対値が最大になる角度より内側の角度で、最初に拡散特性の傾きの絶対値が最初に0.02[a.u./deg]以下になる角度又は拡散特性の傾きの絶対値が0に近づく極小点となる角度の内側の範囲において、拡散特性の傾きの絶対値の最大値及び平均値を計算する。本実施例では、拡散特性の傾きの絶対値の最大値は0.026[a.u./deg]、拡散特性の傾きの絶対値の当該範囲内での平均値は0.0010[a.u./deg]であった。これより十分拡散特性は均一であり、なおかつ外観品位として粒々感も向上していることが分かる。
【0115】
〔従来技術との比較例〕
次に従来技術の拡散特性の均一性についても計測した。まず、レンズ底面が正六角形で、レンズ幅20μm(最長対角は23μm)、レンズ断面が球面形状を持ち、その曲率半径が約20μmであるマイクロレンズが最密に充填(レンズ間のスペースが無い)されたマイクロレンズアレイを持つ、スタンパを製造した。
【0116】
そのスタンパを用いて成形された拡散板の拡散特性を計測したものを
図12に示す。均一なマイクロレンズアレイでは前述の相対正面輝度の標準偏差Skは0である。しかし、同一のマイクロレンズが繰り返されたマイクロレンズアレイでは、回折スポットにより拡散特性に大きなムラが生じることが分かる。このため同一のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイでは輝度ムラが大きく拡散板としては用いることが難しい。
【0117】
次に、特許文献4に示された、マイクロレンズに嵩上げ部を設けたマイクロレンズアレイを持つスタンパを製造した。マイクロレンズ形状や配列は
図12に示すものと同じとした。嵩上げ部により嵩上げされたマイクロレンズアレイであるため、このマイクロレンズアレイも各々のマイクロレンズの標準偏差Skは0である。
【0118】
本スタンパから製造した拡散板の拡散特性を
図13に示す。
図12の同一のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイに比べて、回折スポットによる輝度ムラが抑制されている。しかし、拡散特性の均一性については、拡散特性の傾きの絶対値の平均値は0.042[a.u./deg]、拡散特性の傾きの最大値は0.084[a.u./deg]であり、均一ではなく輝度ムラが大きく拡散板としては用いることができない。
【0119】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、拡散板1上に配列されているマイクロレンズ2は、透過型のレンズに限られるものではない。反射型の拡散板1の主面S1上にはマイクロレンズ2と同様の凹凸形状を有する光拡散パターンが、マイクロレンズ2と同様に格子状に形成されていてもよい。
【0120】
また、拡散板1上には、複数のマイクロレンズ2の代わりにレンズ機能を有する複数の微細構造体が配置されていてもよい。レンズ機能を有する微細構造体とは、例えば、サブ波長の微細構造により屈折率分布を形成することにより、光を屈折するものであってもよい。
【0121】
この出願は、2015年3月12日に出願された日本出願特願2015−049208を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。