(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接合方法を接合装置によって実行させるように、当該接合装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体であって、
前記接合装置は、
下面に第1の基板を真空引きして吸着保持する第1の保持部と、
前記第1の保持部の下方に設けられ、上面に第2の基板を真空引きして吸着保持する第2の保持部と、
前記第1の保持部と前記第2の保持部を相対的に回転させる回転機構と、
前記第1の保持部と前記第2の保持部を相対的に水平方向に移動させる移動機構と、
前記回転機構によって回転する前記第1の保持部又は前記第2の保持部に設けられ、当該第1の保持部又は第2の保持部の位置を測定する位置測定部と、を有し、
前記位置測定部は、第1の位置測定部、第2の位置測定部及び第3の位置測定部を含み、
前記第1の位置測定部と前記第2の位置測定部の間隔と、前記第1の位置測定部と前記第3の位置測定部の間隔は等しく、
前記接合方法は、
前記位置測定部を用いて、前記第1の保持部又は前記第2の保持部の位置を測定する測定工程と、
前記測定工程における測定結果に基づいて、前記回転機構と前記移動機構を制御し、前記第1の保持部と前記第2の保持部の相対的な位置を調節する位置調節工程と、を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
<1.接合システムの構成>
先ず、本実施の形態にかかる接合システムの構成について説明する。
図1は、接合システム1の構成の概略を示す平面図である。
図2は、接合システム1の内部構成の概略を示す側面図である。
【0018】
接合システム1では、
図3に示すように例えば2枚の基板としてのウェハW
U、W
Lを接合する。以下、上側に配置されるウェハを、第1の基板としての「上ウェハW
U」といい、下側に配置されるウェハを、第2の基板としての「下ウェハW
L」という。また、上ウェハW
Uが接合される接合面を「表面W
U1」といい、当該表面W
U1と反対側の面を「裏面W
U2」という。同様に、下ウェハW
Lが接合される接合面を「表面W
L1」といい、当該表面W
L1と反対側の面を「裏面W
L2」という。そして、接合システム1では、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lを接合して、重合基板としての重合ウェハW
Tを形成する。
【0019】
接合システム1は、
図1に示すように例えば外部との間で複数のウェハW
U、W
L、複数の重合ウェハW
Tをそれぞれ収容可能なカセットC
U、C
L、C
Tが搬入出される搬入出ステーション2と、ウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tに対して所定の処理を施す各種処理装置を備えた処理ステーション3とを一体に接続した構成を有している。
【0020】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。カセット載置台10には、複数、例えば4つのカセット載置板11が設けられている。カセット載置板11は、水平方向のX方向(
図1中の上下方向)に一列に並べて配置されている。これらのカセット載置板11には、接合システム1の外部に対してカセットC
U、C
L、C
Tを搬入出する際に、カセットC
U、C
L、C
Tを載置することができる。このように、搬入出ステーション2は、複数の上ウェハW
U、複数の下ウェハW
L、複数の重合ウェハW
Tを保有可能に構成されている。なお、カセット載置板11の個数は、本実施の形態に限定されず、任意に設定することができる。また、カセットの1つを異常ウェハの回収用として用いてもよい。すなわち、種々の要因で上ウェハW
Uと下ウェハW
Lとの接合に異常が生じたウェハをあるカセットに個別に収容して、他の正常な重合ウェハW
Tと分離することができるようにしてもよい。本実施の形態においては、複数のカセットC
Tのうち、1つのカセットC
Tを異常ウェハの回収用として用い、他のカセットC
Tを正常な重合ウェハW
Tの収容用として用いている。
【0021】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10に隣接してウェハ搬送部20が設けられている。ウェハ搬送部20には、X方向に延伸する搬送路21上を移動自在なウェハ搬送装置22が設けられている。ウェハ搬送装置22は、鉛直方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板11上のカセットC
U、C
L、C
Tと、後述する処理ステーション3の第3の処理ブロックG3のトランジション装置50、51との間でウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tを搬送できる。
【0022】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数例えば3つの処理ブロックG1、G2、G3が設けられている。例えば処理ステーション3の正面側(
図1のX方向負方向側)には、第1の処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(
図1のX方向正方向側)には、第2の処理ブロックG2が設けられている。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1のY方向負方向側)には、第3の処理ブロックG3が設けられている。
【0023】
例えば第1の処理ブロックG1には、ウェハW
U、W
Lの表面W
U1、W
L1を改質する表面改質装置30が配置されている。表面改質装置30では、例えば減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガス又は窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオン又は窒素イオンがウェハW
U、W
Lの表面W
U1、W
L1に照射されて、表面W
U1、W
L1がプラズマ処理され、改質される。
【0024】
例えば第2の処理ブロックG2には、例えば純水によってウェハW
U、W
Lの表面W
U1、W
L1を親水化すると共に当該表面W
U1、W
L1を洗浄する表面親水化装置40、ウェハW
U、W
Lを接合する接合装置41が、搬入出ステーション2側からこの順で水平方向のY方向に並べて配置されている。なお、接合装置41の構成については後述する。
【0025】
表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持されたウェハW
U、W
Lを回転させながら、当該ウェハW
U、W
L上に純水を供給する。そうすると、供給された純水はウェハW
U、W
Lの表面W
U1、W
L1上を拡散し、表面W
U1、W
L1が親水化される。
【0026】
例えば第3の処理ブロックG3には、
図2に示すようにウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tのトランジション装置50、51が下から順に2段に設けられている。
【0027】
図1に示すように第1の処理ブロックG1〜第3の処理ブロックG3に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域60が形成されている。ウェハ搬送領域60には、例えばウェハ搬送装置61が配置されている。
【0028】
ウェハ搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向(Y方向、X方向)及び鉛直軸周りに移動自在な搬送アーム61aを有している。ウェハ搬送装置61は、ウェハ搬送領域60内を移動し、周囲の第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2及び第3の処理ブロックG3内の所定の装置にウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tを搬送できる。
【0029】
以上の接合システム1には、
図1に示すように制御部70が設けられている。制御部70は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、接合システム1におけるウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、接合システム1における後述のウェハ接合処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部70にインストールされたものであってもよい。
【0030】
<2.接合装置の構成>
次に、上述した接合装置41の構成について説明する。
【0031】
<2−1.接合装置の全体構成>
接合装置41は、
図4に示すように内部を密閉可能な処理容器100を有している。処理容器100のウェハ搬送領域60側の側面には、ウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。
【0032】
処理容器100の内部は、内壁103によって、搬送領域T1と処理領域T2に区画されている。上述した搬入出口101は、搬送領域T1における処理容器100の側面に形成されている。また、内壁103にも、ウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tの搬入出口104が形成されている。
【0033】
搬送領域T1のY方向正方向側には、ウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tを一時的に載置するためのトランジション110が設けられている。トランジション110は、例えば2段に形成され、ウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tのいずれか2つを同時に載置することができる。
【0034】
搬送領域T1には、ウェハ搬送機構111が設けられている。ウェハ搬送機構111は、
図4及び
図5に示すように例えば鉛直方向、水平方向(X方向、Y方向)及び鉛直軸周りに移動自在な搬送アーム111aを有している。そして、ウェハ搬送機構111は、搬送領域T1内、又は搬送領域T1と処理領域T2との間でウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tを搬送できる。
【0035】
搬送領域T1のY方向負方向側には、ウェハW
U、W
Lの水平方向の向きを調節する位置調節機構120が設けられている。位置調節機構120は、ウェハW
U、W
Lを保持して回転させる保持部(図示せず)を備えた基台121と、ウェハW
U、W
Lのノッチ部の位置を検出する検出部122と、を有している。そして、位置調節機構120では、基台121に保持されたウェハW
U、W
Lを回転させながら検出部122でウェハW
U、W
Lのノッチ部の位置を検出することで、当該ノッチ部の位置を調節してウェハW
U、W
Lの水平方向の向きを調節している。なお、基台121においてウェハW
U、W
Lを保持する構造は特に限定されるものではなく、例えばピンチャック構造やスピンチャック構造など、種々の構造が用いられる。
【0036】
また、搬送領域T1には、上ウェハW
Uの表裏面を反転させる反転機構130が設けられている。反転機構130は、上ウェハW
Uを保持する保持アーム131を有している。保持アーム131は、水平方向(X方向)に延伸している。また保持アーム131には、上ウェハW
Uを保持する保持部材132が例えば4箇所に設けられている。
【0037】
保持アーム131は、例えばモータなどを備えた駆動部133に支持されている。この駆動部133によって、保持アーム131は水平軸周りに回動自在である。また保持アーム131は、駆動部133を中心に回動自在であると共に、水平方向(X方向)に移動自在である。駆動部133の下方には、例えばモータなどを備えた他の駆動部(図示せず)が設けられている。この他の駆動部によって、駆動部133は鉛直方向に延伸する支持柱134に沿って鉛直方向に移動できる。このように駆動部133によって、保持部材132に保持された上ウェハW
Uは、水平軸周りに回動できると共に鉛直方向及び水平方向に移動できる。また、保持部材132に保持された上ウェハW
Uは、駆動部133を中心に回動して、位置調節機構120から後述する上チャック140との間を移動できる。
【0038】
処理領域T2には、上ウェハW
Uを下面で吸着保持する第1の保持部としての上チャック140と、下ウェハW
Lを上面で載置して吸着保持する第2の保持部としての下チャック141とが設けられている。下チャック141は、上チャック140の下方に設けられ、上チャック140と対向配置可能に構成されている。すなわち、上チャック140に保持された上ウェハW
Uと下チャック141に保持された下ウェハW
Lは対向して配置可能となっている。
【0039】
上チャック140は、当該上チャック140の上方に設けられた上チャック回転部150に保持されている。上チャック回転部150は、後述するように上チャック140を鉛直軸回りに回転させるように構成されている。また、上チャック回転部150は、処理容器100の天井面に設けられている。
【0040】
上チャック回転部150には、下チャック141に保持された下ウェハW
Lの表面W
L1を撮像する上部撮像部151が設けられている。すなわち、上部撮像部151は上チャック140に隣接して設けられている。上部撮像部151には、例えばCCDカメラが用いられる。
【0041】
下チャック141は、当該下チャック141の下方に設けられた下チャックステージ160に支持されている。下チャックステージ160には、上チャック140に保持された上ウェハW
Uの表面W
U1を撮像する下部撮像部161が設けられている。すなわち、下部撮像部161は下チャック141に隣接して設けられている。下部撮像部161には、例えばCCDカメラが用いられる。
【0042】
下チャックステージ160は、当該下チャックステージ160の下方に設けられた第1の下チャック移動部162に支持され、さらに第1の下チャック移動部162は、支持台163に支持されている。第1の下チャック移動部162は、後述するように下チャック141を水平方向(X方向)に移動させるように構成されている。また、第1の下チャック移動部162は、下チャック141を鉛直方向に移動自在に構成されている。
【0043】
支持台163は、当該支持台163の下面側に設けられ、水平方向(X方向)に延伸する一対のレール164、164に取り付けられている。そして、支持台163は、第1の下チャック移動部162によりレール164に沿って移動自在に構成されている。なお、第1の下チャック移動部162は、例えばレール164に沿って設けられたリニアモータ(図示せず)によって移動する。
【0044】
一対のレール164、164は、第2の下チャック移動部165に配設されている。第2の下チャック移動部165は、当該第2の下チャック移動部165の下面側に設けられ、水平方向(Y方向)に延伸する一対のレール166、166に取り付けられている。そして、第2の下チャック移動部165は、レール166に沿って移動自在に構成され、すなわち下チャック141を水平方向(Y方向)に移動させるように構成されている。第2の下チャック移動部165は、例えばレール166に沿って設けられたリニアモータ(図示せず)によって移動する。一対のレール166、166は、処理容器100の底面に設けられた載置台167上に配設されている。
【0045】
なお、本実施の形態においては、第1の下チャック移動部162と第2の下チャック移動部165が、本発明の移動機構を構成している。
【0046】
<2−2.上チャックと上チャック回転部の構成>
次に、接合装置41の上チャック140と上チャック回転部150の詳細な構成について説明する。
【0047】
上チャック140には、
図6に示すようにピンチャック方式が採用されている。上チャック140は、平面視において上ウェハW
Uの径以上の径を有する本体部170を有している。本体部170の下面には、上ウェハW
Uの裏面W
U2に接触する複数のピン171が設けられている。また、本体部170の下面の外周部には、ピン171と同じ高さを有し、上ウェハW
Uの裏面W
U2の外周部を支持する外側リブ172が設けられている。外側リブ172は、複数のピン171の外側に環状に設けられている。
【0048】
また、本体部170の下面には、外側リブ172の内側において、ピン171と同じ高さを有し、上ウェハW
Uの裏面W
U2を支持する内側リブ173が設けられている。内側リブ173は、外側リブ172と同心円状に環状に設けられている。そして、外側リブ172の内側の領域174(以下、吸引領域174という場合がある。)は、内側リブ173の内側の第1の吸引領域174aと、内側リブ173の外側の第2の吸引領域174bとに区画されている。
【0049】
本体部170の下面には、第1の吸引領域174aにおいて、上ウェハW
Uを真空引きするための第1の吸引口175aが形成されている。第1の吸引口175aは、例えば第1の吸引領域174aにおいて4箇所に形成されている。第1の吸引口175aには、本体部170の内部に設けられた第1の吸引管176aが接続されている。さらに第1の吸引管176aには、第1の真空ポンプ177aが接続されている。
【0050】
また、本体部170の下面には、第2の吸引領域174bにおいて、上ウェハW
Uを真空引きするための第2の吸引口175bが形成されている。第2の吸引口175bは、例えば第2の吸引領域174bにおいて2箇所に形成されている。第2の吸引口175bには、本体部170の内部に設けられた第2の吸引管176bが接続されている。さらに第2の吸引管176bには、第2の真空ポンプ177bが接続されている。
【0051】
そして、上ウェハW
U、本体部170及び外側リブ172に囲まれて形成された吸引領域174a、174bをそれぞれ吸引口175a、175bから真空引きし、吸引領域174a、174bを減圧する。このとき、吸引領域174a、174bの外部の雰囲気が大気圧であるため、上ウェハW
Uは減圧された分だけ大気圧によって吸引領域174a、174b側に押され、上チャック140に上ウェハW
Uが吸着保持される。また、上チャック140は、第1の吸引領域174aと第2の吸引領域174b毎に上ウェハW
Uを真空引き可能に構成されている。
【0052】
かかる場合、外側リブ172が上ウェハW
Uの裏面W
U2の外周部を支持するので、上ウェハW
Uはその外周部まで適切に真空引きされる。このため、上チャック140に上ウェハW
Uの全面が吸着保持され、当該上ウェハW
Uの平面度を小さくして、上ウェハW
Uを平坦にすることができる。
【0053】
しかも、複数のピン171の高さが均一なので、上チャック140の下面の平面度をさらに小さくすることができる。このように上チャック140の下面を平坦にして(下面の平面度を小さくして)、上チャック140に保持された上ウェハW
Uの鉛直方向の歪みを抑制することができる。
【0054】
また、上ウェハW
Uの裏面W
U2は複数のピン171に支持されているので、上チャック140による上ウェハW
Uの真空引きを解除する際、当該上ウェハW
Uが上チャック140から剥がれ易くなる。
【0055】
上チャック140において、本体部170の中心部には、当該本体部170を厚み方向に貫通する貫通孔178が形成されている。この本体部170の中心部は、上チャック140に吸着保持される上ウェハW
Uの中心部に対応している。そして貫通孔178には、後述する押動部材190におけるアクチュエータ部191の先端部が挿通するようになっている。
【0056】
上チャック回転部150は、
図6及び
図7に示すように上チャック140の本体部170の上面に設けられ、当該上チャック140を保持する上チャックステージ180を備えている。上チャックステージ180は、上面が開口し、中空の円筒形状を有し、さらに平面視において本体部170と略同一形状を有している。上チャックステージ180の外周面には、当該上チャックステージ180を支持し、処理容器100の天井面に取り付けられる支持部材181が設けられている。上チャックステージ180の外側面と支持部材181の内周面には、若干の隙間が形成されている。
【0057】
上チャックステージ180の内部であって底面には、上ウェハW
Uの中心部を押圧する押動部材190がさらに設けられている。押動部材190は、アクチュエータ部191とシリンダ部192とを有している。
【0058】
アクチュエータ部191は、電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向に一定の圧力を発生させるもので、圧力の作用点の位置によらず当該圧力を一定に発生させることができる。そして、電空レギュレータからの空気によって、アクチュエータ部191は、上ウェハW
Uの中心部と当接して当該上ウェハW
Uの中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部191の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔178を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
【0059】
アクチュエータ部191は、シリンダ部192に支持されている。シリンダ部192は、例えばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部191を鉛直方向に移動させることができる。
【0060】
以上のように押動部材190は、アクチュエータ部191によって押圧荷重の制御をし、シリンダ部192によってアクチュエータ部191の移動の制御をしている。そして、押動部材190は、後述するウェハW
U、W
Lの接合時に、上ウェハW
Uの中心部と下ウェハW
Lの中心部とを当接させて押圧することができる。
【0061】
支持部材181には、
図7に示すように上チャックステージ180(及び上チャック140)を回転させる回転機構200が設けられている。回転機構200は、上チャックステージ180の外周面に接触し、例えばモータなどを内蔵した駆動部によって上チャックステージ180を回転させることができる。
【0062】
また、支持部材181には、上チャックステージ180を固定する固定部210が設けられている。固定部210は、上チャックステージ180の外周面において等間隔に4箇所に設けられている。各固定部210は、上チャックステージ180の外周面に向かってエアを吹き、これにより上チャックステージ180をセンタリングし、さらに当該上チャックステージ180を固定する。
【0063】
また、支持部材181には、上チャックステージ180の位置、すなわち上チャック140の位置を測定する、位置測定部としてのリニアスケール221〜223が設けられている。リニアスケール221〜223は、それぞれ上チャックステージ180の外周面に設けられたスケール221a〜223aと、スケールを読み取る検出ヘッド221b〜223bとを有している。なお、リニアスケール221〜223による上チャック140の位置測定方法には、公知の方法が用いられる。
【0064】
3つのリニアスケール221〜223のうち、第1のリニアスケール221は、上チャックステージ180の中心線上において回転機構200に対向して設けられている。また、第2のリニアスケール222と第3のリニアスケール223は、それぞれ第1のリニアスケール221とのなす中心角が90度となる位置に設けられ、上チャックステージ180の中心線上において互いに対向して設けられている。すなわち、第1のリニアスケール221と第2のリニアスケール222の間隔と、第1のリニアスケール221と第3のリニアスケール223の間隔は等しい。
【0065】
なお、本実施の形態では位置測定部としてリニアスケールを用いたが、上チャック140の位置を測定するものであれば、これに限定されない。例えば位置測定部として、変位計を用いてもよい。
【0066】
<2−3.上チャックの位置調節>
第1のリニアスケール221はサーボアンプ(図示せず)に接続され、さらにサーボアンプは制御部70に接続されている。すなわち、第1のリニアスケール221はサーボ制御(フルクローズ制御)に用いられ、当該第1のリニアスケール221の測定結果は、後述するように上チャック140の鉛直軸回りの回転方向(θ方向)の位置を調節するために用いられる。
【0067】
また、第2のリニアスケール222と第3のリニアスケール223は、それぞれ制御部70に接続されている。3つのリニアスケール221〜223の測定結果は、後述するように上チャック140の水平方向(X方向及びY方向)の位置を調節するために用いられると共に、場合によっては上チャック140の回転方向(θ方向)の位置を調節するために用いられる。具体的には、これら上チャック140の位置を調節するため、3つのリニアスケール221〜223の測定結果から、下チャック141に対する上チャック140の偏心量(ずれ量)を算出する。
【0068】
ここで、上述した上チャック140の偏心量の算出方法について説明する。
図8は、上チャック140の偏心量を算出する際の各寸法を示す説明図である。
図8中、符号140aは偏心していない、すなわち正しい位置の上チャック140の中心点であり、140bは偏心した上チャック140の中心点を示している。3つのリニアスケール221〜223の測定結果L1〜L3は、それぞれ下記式(1)〜(3)で表される。なお、リニアスケール221〜223の測定結果L1〜L3は、時計回りでカウントアップしたエンコーダ値(絶対値)である。
L1=y+Rθ ・・・(1)
L2=−x+Rθ ・・・(2)
L3=x+Rθ ・・・(3)
但し、
L1:第1のリニアスケール221のエンコーダ値
L2:第2のリニアスケール222のエンコーダ値
L3:第3のリニアスケール223のエンコーダ値
x:下チャック141に対する上チャック140のX方向偏心量
y:下チャック141に対する上チャック140のY方向偏心量
θ:下チャック141に対する上チャック140の回転方向偏心量(回転量)
R:上チャック140の半径
【0069】
上記(1)〜(3)をそれぞれx、y、θについて整理すると、下記式(4)〜(6)が導出される。
x=(L3−L2)/2 ・・・(4)
y=L1−(L3+L2)/2 ・・・(5)
θ=(L3+L2)/2R ・・・(6)
【0070】
<2−4.下チャックの構成>
次に、接合装置41の下チャック141の詳細な構成について説明する。
【0071】
下チャック141には、
図6に示すように上チャック140と同様にピンチャック方式が採用されている。下チャック141は、平面視において下ウェハW
Lの径以上の径を有する本体部230を有している。本体部230の上面には、下ウェハW
Lの裏面W
L2に接触する複数のピン231が設けられている。また、本体部230の上面の外周部には、ピン231と同じ高さを有し、下ウェハW
Lの裏面W
L2の外周部を支持する外側リブ232が設けられている。外側リブ232は、複数のピン231の外側に環状に設けられている。
【0072】
また、本体部230の上面には、外側リブ232の内側において、ピン231と同じ高さを有し、下ウェハW
Lの裏面W
L2を支持する内側リブ233が設けられている。内側リブ233は、外側リブ232と同心円状に環状に設けられている。そして、外側リブ232の内側の領域234(以下、吸引領域234という場合がある。)は、内側リブ233の内側の第1の吸引領域234aと、内側リブ233の外側の第2の吸引領域234bとに区画されている。
【0073】
本体部230の上面には、第1の吸引領域234aにおいて、下ウェハW
Lを真空引きするための第1の吸引口235aが形成されている。第1の吸引口235aは、例えば第1の吸引領域234aにおいて1箇所に形成されている。第1の吸引口235aには、本体部230の内部に設けられた第1の吸引管236aが接続されている。さらに第1の吸引管236aには、第1の真空ポンプ237aが接続されている。
【0074】
また、本体部230の上面には、第2の吸引領域234bにおいて、下ウェハW
Lを真空引きするための第2の吸引口235bが形成されている。第2の吸引口235bは、例えば第2の吸引領域234bにおいて2箇所に形成されている。第2の吸引口235bには、本体部230の内部に設けられた第2の吸引管236bが接続されている。さらに第2の吸引管236bには、第2の真空ポンプ237bが接続されている。
【0075】
そして、下ウェハW
L、本体部230及び外側リブ232に囲まれて形成された吸引領域234a、234bをそれぞれ吸引口235a、235bから真空引きし、吸引領域234a、234bを減圧する。このとき、吸引領域234a、234bの外部の雰囲気が大気圧であるため、下ウェハW
Lは減圧された分だけ大気圧によって吸引領域234a、234b側に押され、下チャック141に下ウェハW
Lが吸着保持される。また、下チャック141は、第1の吸引領域234aと第2の吸引領域234b毎に下ウェハW
Lを真空引き可能に構成されている。
【0076】
かかる場合、外側リブ232が下ウェハW
Lの裏面W
L2の外周部を支持するので、下ウェハW
Lはその外周部まで適切に真空引きされる。このため、下チャック141に下ウェハW
Lの全面が吸着保持され、当該下ウェハW
Lの平面度を小さくして、下ウェハW
Lを平坦にすることができる。
【0077】
しかも、複数のピン231の高さが均一なので、下チャック141の上面の平面度をさらに小さくすることができる。このように下チャック141の上面を平坦にして(上面の平坦度を小さくして)、下チャック141に保持された下ウェハW
Lの鉛直方向の歪みを抑制することができる。
【0078】
また、下ウェハW
Lの裏面W
L2は複数のピン231に支持されているので下チャック141による下ウェハW
Lの真空引きを解除する際、当該下ウェハW
Lが下チャック141から剥がれ易くなる。
【0079】
下チャック141において、本体部230の中心部付近には、当該本体部230を厚み方向に貫通する貫通孔(図示せず)が例えば3箇所に形成されている。そして貫通孔には、第1の下チャック移動部162の下方に設けられた昇降ピンが挿通するようになっている。
【0080】
本体部230の外周部には、ウェハW
U、W
L、重合ウェハW
Tが下チャック141から飛び出したり、滑落するのを防止するガイド部材(図示せず)が設けられている。ガイド部材は、本体部230の外周部に複数個所、例えば4箇所に等間隔に設けられている。
【0081】
なお、接合装置41における各部の動作は、上述した制御部70によって制御される。
【0082】
<3.接合処理方法>
次に、以上のように構成された接合システム1を用いて行われるウェハW
U、W
Lの接合処理方法について説明する。
図9は、かかるウェハ接合処理の主な工程の例を示すフローチャートである。
【0083】
先ず、複数枚の上ウェハW
Uを収容したカセットC
U、複数枚の下ウェハW
Lを収容したカセットC
L、及び空のカセットC
Tが、搬入出ステーション2の所定のカセット載置板11に載置される。その後、ウェハ搬送装置22によりカセットC
U内の上ウェハW
Uが取り出され、処理ステーション3の第3の処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
【0084】
次に上ウェハW
Uは、ウェハ搬送装置61によって第1の処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガス又は窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオン又は窒素イオンが上ウェハW
Uの表面W
U1に照射されて、当該表面W
U1がプラズマ処理される。そして、上ウェハW
Uの表面W
U1が改質される(
図9の工程S1)。
【0085】
次に上ウェハW
Uは、ウェハ搬送装置61によって第2の処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW
Uを回転させながら、当該上ウェハW
U上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW
Uの表面W
U1上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW
Uの表面W
U1に水酸基(シラノール基)が付着して当該表面W
U1が親水化される。また、当該純水によって、上ウェハW
Uの表面W
U1が洗浄される(
図9の工程S2)。
【0086】
次に上ウェハW
Uは、ウェハ搬送装置61によって第2の処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW
Uは、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、上ウェハW
Uの水平方向の向きが調節される(
図9の工程S3)。
【0087】
その後、位置調節機構120から反転機構130の保持アーム131に上ウェハW
Uが受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム131を反転させることにより、上ウェハW
Uの表裏面が反転される(
図9の工程S4)。すなわち、上ウェハW
Uの表面W
U1が下方に向けられる。
【0088】
その後、反転機構130の保持アーム131が、駆動部133を中心に回動して上チャック140の下方に移動する。そして、反転機構130から上チャック140に上ウェハW
Uが受け渡される。上ウェハW
Uは、上チャック140にその裏面W
U2が吸着保持される(
図9の工程S5)。具体的には、真空ポンプ177a、177bを作動させ、吸引領域174a、174bにおいて吸引口175a、175bを介して上ウェハW
Uを真空引きし、上ウェハW
Uが上チャック140に吸着保持される。
【0089】
上ウェハW
Uに上述した工程S1〜S5の処理が行われている間、当該上ウェハW
Uに続いて下ウェハW
Lの処理が行われる。先ず、ウェハ搬送装置22によりカセットC
L内の下ウェハW
Lが取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
【0090】
次に下ウェハW
Lは、ウェハ搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW
Lの表面W
L1が改質される(
図9の工程S6)。なお、工程S6における下ウェハW
Lの表面W
L1の改質は、上述した工程S1と同様である。
【0091】
その後、下ウェハW
Lは、ウェハ搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW
Lの表面W
L1が親水化される共に当該表面W
L1が洗浄される(
図9の工程S7)。なお、工程S7における下ウェハW
Lの表面W
L1の親水化及び洗浄は、上述した工程S2と同様である。
【0092】
その後、下ウェハW
Lは、ウェハ搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW
Lは、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、下ウェハW
Lの水平方向の向きが調節される(
図9の工程S8)。
【0093】
その後、下ウェハW
Lは、ウェハ搬送機構111によって下チャック141に搬送され、下チャック141にその裏面W
L2が吸着保持される(
図9の工程S9)。具体的には、真空ポンプ237a、237bを作動させ、吸引領域234a、234bにおいて吸引口235a、235bを介して下ウェハW
Lを真空引きし、下ウェハW
Lが下チャック141に吸着保持される。
【0094】
次に、上チャック140に保持された上ウェハW
Uと下チャック141に保持された下ウェハW
Lの位置調節を行う。
【0095】
先ず、上部撮像部151と下部撮像部161を用いて、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lの回転方向位置(水平方向の向き)の初期調節を行う。具体的には、第1の下チャック移動部162と第2の下チャック移動部165によって下チャック141を水平方向(X方向及びY方向)に移動させ、上部撮像部151を用いて、下ウェハW
Lの表面W
L1上の予め定められた基準点(例えば外周部の2点)を順次撮像する。同時に、下部撮像部161を用いて、上ウェハW
Uの表面W
U1上の予め定められた基準点(例えば外周部の2点)を順次撮像する。撮像された画像は、制御部70に出力される。制御部70では、上部撮像部151で撮像された画像と下部撮像部161で撮像された画像に基づいて、上ウェハW
Uの基準点と下ウェハW
Lの基準点がそれぞれ合致するような位置、すなわち上ウェハW
Uと下ウェハW
Lの向きが合致するような位置に、回転機構200によって上チャック140を回転させる。そして、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lの回転方向位置が初期調節される(
図9の工程S10)。
【0096】
ここで、上部撮像部151と下部撮像部161を用いた位置調節は、この工程S10のみで行われ、後述するように後続の工程S11、S12における位置調節はリニアスケール221〜223を用いて行われる。特に工程S11では、第1のリニアスケール221を用いて上チャック140の回転方向位置が調節されるが、この第1のリニアスケール221では、上チャック140に保持された上ウェハW
Uと下チャック141に保持された下ウェハW
Lの回転方向の初期状態を把握することはできない。そこで、上述した工程S10において、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lの回転方向位置が初期調節される。
【0097】
工程S10の後、第1のリニアスケール221を用いて、上チャック140の位置を測定する。第1のリニアスケール221の測定結果、すなわち第1のリニアスケール221のエンコーダ値L1は制御部70に出力される。制御部70では、この第1のリニアスケール221のエンコーダ値L1に基づいて、下チャック141に対する上チャック140の回転方向偏心量θが所定の閾値内、例えば±0.2[μrad]になるように、上チャック140の回転方向の補正量を算出し、回転機構200を制御する。そして、回転機構200によって上チャック140が補正量分だけ回転することで、下チャック141に対する上チャック140の回転方向位置が調節される(
図9の工程S11)。
【0098】
工程S11では、回転機構200から最も遠い位置にある第1のリニアスケール221を用いている。例えば上チャック140と下チャック141が回転方向にずれている場合、例えば第2のリニアスケール222のエンコーダ値L2や第3のリニアスケール223のエンコーダ値L3に比べて、第1のリニアスケール221のエンコーダ値L1には、そのずれの影響が大きく表れる。したがって、上チャック140の回転方向位置をより適切に調節することができる。
【0099】
また、工程S11では、回転機構200によって上チャック140を回転させる際、固定部210によって上チャックステージ180をセンタリングする。
【0100】
なお、工程S11では、上チャック140の回転方向偏心量θがゼロになるように、回転機構200を制御しても、もちろんよい。また、第1のリニアスケール221による測定の結果、第1のリニアスケール221のエンコーダ値L1が所定の閾値内に入っている場合には、回転機構200によって上チャック140を回転させる必要はない。
【0101】
以上の工程S11では、回転機構200によって上チャック140を回転させる際、
図8に示したように上チャック140の中心点(回転軸)が140aから140bに水平方向にずれる場合がある。例えば回転機構200の制御精度が低い場合、上チャック140の中心点は水平方向にずれる。また、上チャック140は4つの固定部210からのエアによってセンタリングされているが、これら固定部210からのエアバランスによっては、上チャック140の中心点は水平方向にずれる。
【0102】
そこで、次に上チャック140の水平方向位置を調節する。具体的には、先ず、3つのリニアスケール221〜223を用いて、上チャック140の位置を測定する。3つのリニアスケール221〜223の測定結果、すなわち3つのリニアスケール221〜223のエンコーダ値L1〜L3は制御部70に出力される。制御部70では、これらリニアスケール221〜223のエンコーダ値L1〜L3に基づいて、下記式(4)〜(6)から、下チャック141に対する上チャック140のX方向偏心量x、上チャック140のY方向偏心量y、上チャック140の回転方向偏心量θをそれぞれ算出する。
x=(L3−L2)/2 ・・・(4)
y=L1−(L3+L2)/2 ・・・(5)
θ=(L3+L2)/2R ・・・(6)
【0103】
さらに制御部70では、これら上チャック140のX方向偏心量x、上チャック140のY方向偏心量yが所定の閾値内、例えば1μmになるように、上チャック140の水平方向(X方向及びY方向)の補正量を算出し、第1の下チャック移動部162と第2の下チャック移動部165を制御する。そして、第1の下チャック移動部162と第2の下チャック移動部165によって上チャック140が水平方向(X方向及びY方向)に補正量分だけ移動することで、下チャック141に対する上チャック140の水平方向位置が調節される(
図9の工程S12)。
【0104】
工程S12では、第1のリニアスケール221と第2のリニアスケール222の間隔と、第1のリニアスケール221と第3のリニアスケール223の間隔は等しいので、上記(4)〜(6)のように簡易的な式を用いることができる。ここで、例えばこれら間隔が異なる場合、上チャック140の偏心量を算出する式が複雑になり、その制御も煩雑になる。したがって、本実施の形態では、簡易な制御で上チャック140の水平方向位置を調節することができる。
【0105】
なお、工程S12では、上チャック140のX方向偏心量x及びY方向偏心量yがそれぞれゼロになるように、第1の下チャック移動部162と第2の下チャック移動部165を制御しても、もちろんよい。また、3つのリニアスケール221〜223による測定の結果、リニアスケール221〜223のエンコーダ値L1〜L3がそれぞれ所定の閾値内に入っている場合には、第1の下チャック移動部162と第2の下チャック移動部165によって上チャック140を水平宝庫に移動させる必要はない。
【0106】
なお、本実施の形態の工程S12では、上チャック140の水平方向位置を調節したが、例えば上記式(6)で算出される上チャック140の回転方向偏心量θが所定の閾値内、例えば±0.2[μrad]にない場合、上チャック140の回転方向位置をさらに調節してもよい。具体的には、制御部70において、上チャック140の回転方向偏心量θに基づき、上チャック140の回転方向の補正量を算出する。そして、回転機構200によって上チャック140が補正量分だけ回転することで、下チャック141に対する上チャック140の回転方向位置が調節される。
【0107】
以上の工程S10〜S12を行うことで、上チャック140と下チャック141の位置調節が行われ、当該上チャック140に保持された上ウェハW
Uと下チャック141に保持された下ウェハW
Lの回転方向位置及び水平方向位置が調節される。
【0108】
その後、第1の下チャック移動部162によって下チャック141を鉛直上方に移動させて、上チャック140と下チャック141の鉛直方向位置の調節を行い、当該上チャック140に保持された上ウェハW
Uと下チャック141に保持された下ウェハW
Lとの鉛直方向位置の調節を行う(
図9の工程S13)。そして、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lが所定の位置に対向配置される。
【0109】
次に、上チャック140に保持された上ウェハW
Uと下チャック141に保持された下ウェハW
Lの接合処理が行われる。
【0110】
先ず、
図10に示すように押動部材190のシリンダ部192によってアクチュエータ部191を下降させる。そうすると、このアクチュエータ部191の下降に伴い、上ウェハW
Uの中心部が押圧されて下降する。このとき、電空レギュレータから供給される空気によって、アクチュエータ部191には、所定の押圧荷重がかけられる。そして、押動部材190によって、上ウェハW
Uの中心部と下ウェハW
Lの中心部を当接させて押圧する(
図9の工程S14)。このとき、第1の真空ポンプ177aの作動を停止して、第1の吸引領域174aにおける第1の吸引口175aからの上ウェハW
Uの真空引きを停止すると共に、第2の真空ポンプ177bは作動させたままにし、第2の吸引領域174bを第2の吸引口175bから真空引きする。そして、押動部材190で上ウェハW
Uの中心部を押圧する際にも、上チャック140によって上ウェハW
Uの外周部を保持することができる。
【0111】
そうすると、押圧された上ウェハW
Uの中心部と下ウェハW
Lの中心部との間で接合が開始する(
図10中の太線部)。すなわち、上ウェハW
Uの表面W
U1と下ウェハW
Lの表面W
L1はそれぞれ工程S1、S6において改質されているため、先ず、表面W
U1、W
L1間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該表面W
U1、W
L1同士が接合される。さらに、上ウェハW
Uの表面W
U1と下ウェハW
Lの表面W
L1はそれぞれ工程S2、S7において親水化されているため、表面W
U1、W
L1間の親水基が水素結合し(分子間力)、表面W
U1、W
L1同士が強固に接合される。
【0112】
その後、押動部材190によって上ウェハW
Uの中心部と下ウェハW
Lの中心部を押圧した状態で第2の真空ポンプ177bの作動を停止して、第2の吸引領域174bにおける第2の吸引口175bからの上ウェハW
Uの真空引きを停止する。そうすると、上ウェハW
Uが下ウェハW
L上に落下する。そして上ウェハW
Uが下ウェハW
L上に順次落下して当接し、上述した表面W
U1、W
L1間のファンデルワールス力と水素結合による接合が順次拡がる。こうして、上ウェハW
Uの表面W
U1と下ウェハW
Lの表面W
L1が全面で当接し、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lが接合される(
図9の工程S15)。
【0113】
この工程S15において、上ウェハW
Uの裏面W
U2は複数のピン171に支持されているので、上チャック140による上ウェハW
Uの真空引きを解除した際、当該上ウェハW
Uが上チャック140から剥がれ易くなっている。このため、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lの接合の拡がり(ボンディングウェーブ)が真円状になり、上ウェハW
Uと下ウェハW
Lが適切に接合される。
【0114】
その後、押動部材190のアクチュエータ部191を上チャック140まで上昇させる。また、真空ポンプ237a、237bの作動を停止し、吸引領域234における下ウェハW
Lの真空引きを停止して、下チャック141による下ウェハW
Lの吸着保持を停止する。このとき、下ウェハW
Lの裏面W
L2は複数のピン231に支持されているので、下チャック141による下ウェハW
Lの真空引きを解除した際、当該下ウェハW
Lが下チャック141から剥がれ易くなっている。
【0115】
上ウェハW
Uと下ウェハW
Lが接合された重合ウェハW
Tは、ウェハ搬送装置61によってトランジション装置51に搬送され、その後搬入出ステーション2のウェハ搬送装置22によって所定のカセット載置板11のカセットC
Tに搬送される。こうして、一連のウェハW
U、W
Lの接合処理が終了する。
【0116】
以上の実施の形態によれば、工程S11において、第1のリニアスケール221の測定結果を用いて、下チャック141に対する上チャック140の回転方向位置を調節する。この際、回転機構200から最も遠い位置にある第1のリニアスケール221を用いることで、他のリニアスケール222、223を用いるよりも、上チャック140と下チャック141が回転方向にずれを適切に把握することができ、当該上チャック140の回転方向位置を適切に調節することができる。
【0117】
さらに工程S12において、3つのリニアスケール221〜223の測定結果を用いて、下チャック141に対する上チャック140の水平方向位置を調節する。したがって、工程S11において上チャック140の回転方向位置を調節する際に、当該上チャック140の水平方向位置がずれたとしても、工程S12において、上チャック140の水平方向位置を補正して適切に調節することができる。
【0118】
また、この工程S12において、上チャック140の回転方向偏心量θが所定の閾値内にない場合には、上チャック140の回転方向位置を適切に調節することができる。
【0119】
以上のように工程S11、S12において、上チャック140と下チャック141の相対的な位置を適切に調節することができるので、当該上チャック140に保持された上ウェハW
Uと下チャック141に保持された下ウェハW
Lの接合処理を適切に行うことができる。
【0120】
ここで、従来、工程S10において上部撮像部151と下部撮像部161を用いて上ウェハW
Uと下ウェハW
Lの位置調節をした後、さらに位置調節を行う場合には、再度上部撮像部151と下部撮像部161を用いており、位置調節に時間がかかっていた。これに対して、本実施の形態では、工程S11、S12でリニアスケール221〜223を用いて位置調節を行っているので、短時間で位置調節を行うことができる。したがって、ウェハ接合処理のスループットを向上させることができる。
【0121】
また、本実施の形態の接合システム1は、表面改質装置30、表面親水化装置40、及び接合装置41を備えているので、一のシステム内でウェハW
U、W
Lの接合を効率よく行うことができる。したがって、ウェハ接合処理のスループットをさらに向上させることができる。
【0122】
<4.他の実施の形態>
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
【0123】
以上の実施の形態の接合装置41では、第2のリニアスケール222と第3のリニアスケール223は、それぞれ第1のリニアスケール221とのなす中心角が90度となる位置に設けられ、上チャックステージ180の中心線上において互いに対向して設けられていたが、これら第2のリニアスケール222と第3のリニアスケール223の配置はこれに限定されない。第2のリニアスケール222と第3のリニアスケール223は、第1のリニアスケール221と第2のリニアスケール222の間隔と、第1のリニアスケール221と第3のリニアスケール223の間隔は等しくなるように設けられればよく、それぞれ第1のリニアスケール221とのなす中心角が90度と異なる角度、例えば45度等となる位置に設けられていてもよい。このように中心角が90度以外であっても上述した間隔が等しければ、上記式(4)〜(6)のように簡易的な式を用いて上チャック140の偏心量を算出することができ、簡易な制御で上チャック140の位置調節を行うことができる。
【0124】
また、以上の実施の形態の接合装置41では、上チャック140が回転可能に構成されていたが、下チャック141を回転可能に構成してもよい。かかる場合、3つのリニアスケール221〜223は、下チャック141に設けられる。また、上チャック140と下チャック141の両方を回転可能に構成してもよく、かかる場合、3つのリニアスケール221〜223は、上チャック140又は下チャック141のいずれかに設けられる。
【0125】
また、以上の実施の形態の接合装置41では、下チャック141が水平方向に移動可能に構成されていたが、上チャック140を水平方向に移動可能に構成してもよいし、あるいは上チャック140と下チャック141の両方を水平方向に移動可能に構成してもよい。同様に下チャック141が鉛直方向に移動可能に構成されていたが、上チャック140を鉛直方向に移動可能に構成してもよいし、あるいは上チャック140と下チャック141の両方を鉛直方向に移動可能に構成してもよい。
【0126】
また、以上の実施の形態の接合システム1において、接合装置41でウェハW
U、W
Lを接合した後、さらに接合された重合ウェハW
Tを所定の温度で加熱(アニール処理)してもよい。重合ウェハW
Tにかかる加熱処理を行うことで、接合界面をより強固に結合させることができる。
【0127】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。