特許第6883939号(P6883939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6883939
(24)【登録日】2021年5月13日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】光電式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20210531BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20210531BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   G01D5/347 110U
   G02B5/00 Z
   G02B13/00
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-180529(P2015-180529)
(22)【出願日】2015年9月14日
(65)【公開番号】特開2017-58132(P2017-58132A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月7日
【審判番号】不服2020-11116(P2020-11116/J1)
【審判請求日】2020年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 林季
【合議体】
【審判長】 岡田 吉美
【審判官】 中塚 直樹
【審判官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−59055(JP,A)
【文献】 特開昭57−116215(JP,A)
【文献】 特開2005−106827(JP,A)
【文献】 特開2006−284563(JP,A)
【文献】 特開2011−202957(JP,A)
【文献】 特開昭62−232611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目盛格子を有するスケールと、
前記スケールに光を照射する発光部と、
前記スケールの前記目盛格子の像を検出する受光部と、
前記スケールと前記受光部との間に設けられ、前記目盛格子の像を前記受光部に結像させるテレセントリック光学部と、
を備え、
前記テレセントリック光学部は、
前記スケール側に配置される第1光学要素と、
前記第1光学要素よりも前記受光部側に配置され、前記第1光学要素との間に間隔を開けて配置される第2光学要素と、
前記第1光学要素の前記第2光学要素側の面、および第2光学要素の前記第1光学要素側の面の少なくとも一方に設けられたアパーチャと、を有することを特徴とする光電式エンコーダ。
【請求項2】
前記目盛格子はラインアンドスペースパターンであることを特徴とする請求項1記載の光電式エンコーダ。
【請求項3】
前記アパーチャは、遮光部と、透光部と、を有する請求項1または2に記載の光電式エンコーダ。
【請求項4】
前記アパーチャは、光散乱部と、透光部と、を有する請求項1または2に記載の光電式エンコーダ。
【請求項5】
前記アパーチャは、
前記第1光学要素の前記第2光学要素側の面に設けられる第1アパーチャ部と、
前記第2光学要素の前記第1光学要素側の面に設けられた第2アパーチャ部と、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光電式エンコーダ。
【請求項6】
前記アパーチャは、前記スケールの前記目盛格子で生じる回折光のうち3次回折角以上の角度を持つ光線の通過を制限することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光電式エンコーダ。
【請求項7】
前記第1光学要素および前記第2光学要素は、一方向のみに曲率を持つレンズであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の光電式エンコーダ。
【請求項8】
前記第1光学要素および前記第2光学要素は、複数の光学面を任意のピッチで平面内に並べたレンズアレイであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の光電式エンコーダ。
【請求項9】
前記受光部で検出した前記像に基づく電気信号から位置を検出する信号を出力する演算部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の光電式エンコーダ。
【請求項10】
前記受光部で検出した前記像に基づく電気信号から二相正弦波信号を出力する演算部をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の光電式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレセントリックレンズを用いた光電式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メインスケールと受光素子との間に、第1のレンズとその焦点位置に配置されたアパーチャおよび第2のレンズが挿入された両側テレセントリック光学系を持つ光電式エンコーダが開示されている。この光電式エンコーダでは、信号検出効率を改善するとともに、組立許容範囲を拡大して、調整工数を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005/090923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光電式エンコーダにおいては、レンズとアパーチャとが別個の部品のため、レンズとアパーチャとの光軸合わせが難しいとともに、アパーチャとそれを保持する空間とをレンズ間に確保する必要がある。このため、光学系の軸合わせや小型化が困難である。
【0005】
本発明は、光学系の部品点数の増加を抑制しつつ高精度で光軸を合わせることができる光電式エンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の光電式エンコーダは、目盛格子を有するスケールと、スケールに光を照射する発光部と、スケールの目盛格子の像を検出する受光部と、スケールと受光部との間に設けられ、目盛格子の像を受光部に結像させるテレセントリック光学部と、を備え、テレセントリック光学部は、スケール側に配置される第1光学要素と、第1光学要素よりも受光部側に配置され、第1光学要素との間に間隔を開けて配置される第2光学要素と、第1光学要素の第2光学要素側の面、および第2光学要素の第1光学要素側の面の少なくとも一方に設けられたアパーチャと、を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、アパーチャが第1光学要素および第2光学要素の少なくとも一方に設けられているため、アパーチャを別部品にして光軸合わせする必要がなくなる。すなわち、第1光学要素と第2光学要素との光軸合わせを行えばアパーチャの光軸合わせも完了することになる。
【0008】
本発明の光電子エンコーダにおいて、目盛格子はラインアンドスペースパターンであってもよい。これにより、ラインアンドスペースパターンで生じる回折光の一部である不要光の通過を制限し、受光部において精度よく信号を得ることができる。
【0009】
本発明の光電式エンコーダにおいて、アパーチャは、遮光部と、透光部と、を有していてもよい。また、アパーチャは、光散乱部と、透光部と、を有していてもよい。これにより、テレセントリック光学部において、遮光部または光散乱部で不要な光の透過を抑制することができる。
【0010】
本発明の光電式エンコーダにおいて、アパーチャは、第1光学要素の第2光学要素側の面に設けられる第1アパーチャ部と、第2光学要素の第1光学要素側の面に設けられた第2アパーチャ部と、を有していてもよい。これにより、アパーチャにおいて不要な光の透過を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の光電式エンコーダにおいて、アパーチャは、スケールの目盛格子で生じる回折光のうち3次回折角以上の角度を持つ光線の通過を制限するようにしてもよい。これにより、受光部では、像の光強度分布の高調波歪が抑制され精度よく正弦波を得ることができる。
【0012】
本発明の光電式エンコーダにおいて、第1光学要素および第2光学要素は、一方向のみに曲率を持つレンズであってもよい。また、第1光学要素および第2光学要素は、複数の光学面を任意のピッチで平面内に並べたレンズアレイであってもよい。
【0013】
本発明の光電式エンコーダにおいて、受光部で検出した像に基づく電気信号から位置を検出する信号を出力する演算部をさらに備えていてもよい。これにより、受光部で検出した電気信号から精度よく位置検出のための信号を演算することができる。
【0014】
本発明の光電式エンコーダにおいて、受光部で検出した像に基づく電気信号から二相正弦波信号を出力する演算部をさらに備えていてもよい。これにより、スケールの目盛格子のピッチよりも短いピッチで位置検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る光電式エンコーダを例示する構成図である。
図2】目盛格子で生じる回折光の模式図である。
図3図1に示す構成と光学的に等価な構成図である。
図4】第2実施形態に係る光電式エンコーダを例示する構成図である。
図5】第3実施形態に係る光電式エンコーダを例示する構成図である。
図6】(a)〜(c)は、第4実施形態に係る光電子エンコーダを例示する構成図である。
図7】(a)および(b)は、第5実施形態に係る光電子エンコーダを例示する模式図である。
図8】(a)および(b)は、第6実施形態に係る光電子エンコーダを例示する模式図である。
図9】第6実施形態に係る光電式エンコーダの結像について説明する模式図である。
図10】適用例を示す模式図である。
図11】適用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る光電式エンコーダを例示する構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る光電式エンコーダは、発光部である照明系1と、スケール2と、結像光学系4と、受光部である受光素子8とを備える。照明系1は、平行光線でスケール2を照明する光を照射する。スケール2には、ラインアンドスペースパターンの目盛格子3が設けられる。
【0018】
結像光学系4は、テレセントリック光学部であり、スケール2と受光素子8との間に設けられる。結像光学系4は、目盛格子3の像7を受光素子8に結像させる。受光素子8は像7に応じた電気信号を出力する。本実施形態では、図示しない演算回路が設けられる。演算回路は、受光素子8で変換した電気信号から位置を検出する信号を出力する。例えば、演算回路は、受光素子8で変換した電気信号に基づく二相正弦波信号を出力する。
【0019】
本実施形態において、結像光学系4は、1倍の像倍率を有するダブルテレセントリック光学系になっている。結像光学系4の全体としては、光軸の周りに回転対称となっているとともに、全視野の光線が集中する位置10に対して線対称な光学系となっている。
【0020】
結像光学系4は、2個の光学要素である第1レンズ5Aおよび第2レンズ5Bと、第1レンズ5Aと第2レンズ5Bとの間に設けられるアパーチャ13を有する。第1レンズ5Aおよび第2レンズ5Bのそれぞれは、テレセントリックレンズである。第1レンズ5Aおよび第2レンズ5Bは互いに同一形状であることが好ましい。
【0021】
アパーチャ13は、第1レンズ5Aの第2レンズ5B側の面51に設けられる第1アパーチャ13Aと、第2レンズ5Bの第1レンズ5A側の面52に設けられる第2アパーチャ13Bとを有する。第1アパーチャ13Aおよび第2アパーチャ13Bのそれぞれは、遮光部と透光部とを有する。透光部は光軸を中心とした所定の範囲で設けられ、遮光部は透光部の周囲に設けられる。遮光部としては、例えばクロム(Cr)の薄膜や、墨などの吸光度が大きな遮光性の塗膜が用いられる。
【0022】
第1アパーチャ13Aおよび第2アパーチャ13Bよりなるアパーチャ13によって、スケール2の目盛格子3で生じる回折光のうち3次回折角以上の角度を持つ光線の通過を遮光部で遮ることができる。一方、3次回折角未満の角度を持つ光線は、透光部を介して透過することができる。
【0023】
このような構成によれば、照明系1からスケール2に照射された光によってスケール2の目盛格子3で生じる回折光のうち、3次以上の回折光をアパーチャ13で遮へいする特性を保ったまま、別部品としてのアパーチャが不要となり、構成要素の削減を図ることができる。また、第1レンズ5Aと第2レンズ5Bとの光軸合わせを行うだけでアパーチャ13の光軸合わせが完了し、組み立てが容易となる。
【0024】
ここで、アパーチャ13の開口寸法の好ましい条件について説明する。
アパーチャ13(第1アパーチャ13Aおよび第2アパーチャ13B)の開口寸法についての好ましい条件として、ラインアンドスペースパターンの目盛格子3(周期p)で生じる回折光のうち、0次(透過)および1次回折光を透過させ、かつ3次以上の回折光を制限するような大きさであることが挙げられる。図2は、目盛格子3で生じる回折光の模式図である。図1に示す光路は、図2に示す0次、1次、3次の回折光の光路である。アパーチャ13は、3次回折角以上の角度を持つ光線の通過を制限している。
【0025】
光電式エンコーダにおいては、目盛格子3の像7が受光素子8で検出される。受光素子8には、90度の位置位相差を与えたフォトダイオードアレイが設けられる。このフォトダイオードアレイの信号を基にして最終的に二相正弦波信号が得られる。
【0026】
目盛格子3の透過直後の光強度分布断面16が周期pの矩形波状であっても、0次および1次回折光のみが結像に寄与することにより、像7の光強度分布断面17は周期pの正弦波状となる。これにより、最終的に得られる二相正弦波信号の高調波歪の発生が抑制される。
【0027】
なお、矩形波状の光強度変調をもたらすような目盛格子3によって生じる回折光の強度は、1次、3次、5次、…の奇数次の成分が支配的であり、偶数次の回折強度は無視できるほど小さいと仮定し、これ以降で偶数次の回折光の影響は考慮していないものとする。
【0028】
図3は、図1に示す構成と光学的に等価な構成図である。
図3では、図1に示す第1アパーチャ13Aおよび第2アパーチャ13Bを、それぞれ第1アパーチャ11Aおよび第2アパーチャ11Bに置き換えている。それぞれの第1アパーチャ11Aおよび第2アパーチャ11Bは、位置10に対して対称的な位置に配置されており、これらによって1つのアパーチャとして機能する。
【0029】
第1アパーチャ11Aおよび第2アパーチャ11Bの位置、並びに開口寸法は、視野領域全体(視野端9B〜視野中央9A〜視野端9C)に渡って1次回折光を通過し、かつ不要な3次以上の回折光を遮へいする条件を満たすように設定されていればよい。
【0030】
なお、図3において、第1アパーチャ11Aと第2アパーチャ11Bを位置10から遠ざけられる限界の位置は、視野中央9Aより発した3次回折光と、視野端9B、9Cより発した1次回折光が交差する面12Aおよび面12Bの位置であり、その時に必要なアパーチャの寸法は前記3次回折光と1次回折光の交差する点の光軸からの距離で与えられる。
【0031】
このような本実施形態によれば、開口寸法を好ましい条件に設定したアパーチャ13について、別部品にして光軸合わせする必要がなくなる。したがって、第1レンズ5Aと第2レンズ5Bとの光軸合わせを行えばアパーチャ13の光軸合わせも完了することになる。また、アパーチャ13が設けられた同一形状の第1レンズ5Aおよび第2レンズ5Bを用意すればよいため、アパーチャ13を別部品にする場合に比べて部品点数の削減を図ることができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態に係る光電式エンコーダを例示する構成図である。
図4に示すように、本実施形態に係る光電式エンコーダは、アパーチャ13として遮光部の代わりに光拡散部を備えている。その他の構成は第1実施形態に係る光電式エンコーダと同様である。
【0033】
すなわち、結像光学系4には第1レンズ14Aおよび第2レンズ14Bが設けられる。第1レンズ14Aの第2レンズ14B側の面51には第1アパーチャ15Aが設けられ、第2レンズ14Bの第1レンズ14A側の面52には第2アパーチャ15Bが設けられる。第1アパーチャ15Aおよび第2アパーチャ15Bのそれぞれは、光拡散部と透光部とを有する。透光部は光軸を中心とした所定の範囲で設けられ、光拡散部は透光部の周囲に設けられる。光拡散部は、それぞれの面51および52の所定領域を表面処理して粗面化した部分である。
【0034】
第1アパーチャ15Aおよび第2アパーチャ15Bのそれぞれに光拡散部を設けることで、スケール2の目盛格子3で生じる回折光のうち3次回折角以上の角度を持つ光線の通過を光拡散部で拡散させることができる。一方、3次回折角未満の角度を持つ光線は、透光部を介して透過することができる。
【0035】
このような本実施形態によれば、第1レンズ14Aおよび第2レンズ14Bの面51おおび52に粗面化処理を施すだけで、第1アパーチャ15Aおよび第2アパーチャ15Bを構成することができる。
【0036】
〔第3実施形態〕
図5は、第3実施形態に係る光電式エンコーダを例示する構成図である。
図5に示すように、本実施形態に係る光電式エンコーダは、第1レンズ14Aおよび第2レンズ14Bの各1つを1組のレンズユニットLUとして、2組のレンズユニットLUが設けられている。図5に示す例では、第2実施形態に係る第1レンズ14Aおよび第2レンズ14Bを用いているが、第1実施形態に係る第1レンズ5Aおよび第2レンズ5BをレンズユニットLUとしてもよい。また、これらのレンズユニットLUを組み合わせてもよい。また、レンズユニットLUは3組以上設けられていてもよい。このように、複数組のレンズユニットLUが設けられていても、第1実施形態および第2実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0037】
〔第4実施形態〕
図6(a)〜(c)は、第4実施形態に係る光電式エンコーダを例示する模式図である。図6(a)は上面構成図、図6(b)は側面構成図、図6(c)は斜視図である。
本実施形態で適用される結像光学系4は、第1シリンドリカルレンズ24Aおよび第2シリンドリカルレンズ24Bを有する。その他の構成は第2実施形態に係る光電子エンコーダと同様である。
【0038】
第1シリンドリカルレンズ24Aおよび第2シリンドリカルレンズ24Bとしては、一方向のみに曲率をもつ光学面を有する。光学面は、例えば球面シリンドリカルレンズ面や、高次多項式で表される形状をもつ非球面シリンドリカルレンズ面である。
【0039】
本実施形態によれば、レンズ母線方向の解像力は無くなるが、その代わりに母線方向への部品の光軸合わせが不要となり、組立が比較的容易になる。この場合でも、第2実施形体の効果と同様な効果を得ることができる。
【0040】
〔第5実施形態〕
図7(a)および(b)は、第5実施形態に係る光電子エンコーダを例示する模式図である。図7(a)は上面構成図、図7(b)は斜視図である。
本実施形態で適用される結像光学系4は、第1レンズアレイ44Aおよび第2レンズアレイ44Bを有する。第1レンズアレイ44Aおよび第2レンズアレイ44Bとしては、第1実施形態、第2実施形態および第4実施形態における光学要素をレンズアレイ(複数の光学面を任意のピッチで平面内に並べたレンズ)にしたものである。
【0041】
一例として、図7(a)および(b)には、第1レンズアレイ44Aおよび第2レンズアレイ44Bのそれぞれの光学面として、第2実施形態に係る光拡散部を備えた第1レンズ14Aおよび第2レンズ14Bの光学面を用いた構成が示される。
【0042】
本実施形態では、レンズアレイでない結像光学系4に比べて小径・短焦点距離のレンズを並べたレンズアレイに置き換えられており、結像光学系4の全体として、結像光学系の有効視野を保ったまま、光学系の全長を短くすることができる。これにより、光学系全体の小型化に有利な効果を得られるとともに、第1実施形態、第2実施形態および第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
〔第6実施形態〕
図8(a)および(b)は、第6実施形態に係る光電子エンコーダを例示する模式図である。図8(a)は上面構成図、図8(b)は斜視図である。
図9は、第6実施形態に係る光電式エンコーダの結像について説明する模式図である。
本実施形態に適用される結像光学系4は、2組のレンズアレイユニットLAUを有する。それぞれのレンズアレイユニットLAUにおいては、第3実施形態で適用されるレンズユニットLUの第1レンズ14Aおよび第2レンズ14Bの代わりに、第1シリンドリカルレンズアレイ44Aおよび第2シリンドリカルレンズアレイ44Bが用いられる。
【0044】
本実施形態では、図9に示すように、1組目のレンズアレイユニットLAUのレンズピッチに従って目盛格子3の像S1〜S12の倒立中間像6が形成される。さらに、この倒立中間像6が1組目と同一ピッチの2組目のレンズアレイユニットLAUによって結像されて正立像(像7)となる。この構成は、レンズアレイユニットLAUのレンズピッチに関係なく、最終的な像の位置および方向が、元の目盛の位置および方向と等しくなるという好ましい特性を持つ。さらに、本実施形態においても他の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0045】
なお、レンズアレイユニットLAUで適用される第1シリンドリカルレンズアレイ44Aおよび第2シリンドリカルレンズアレイ44Bは、光拡散部ではなく遮蔽部を設けたシリンドリカルレンズアレイであってもよい。
【0046】
〔適用例〕
図10および図11は、適用例を示す模式図である。
図10および図11には、リニアスケール100に本実施形態に係る光電式エンコーダを適用した例が示される。図10に示すように、リニアスケール100は、検出ユニット110と、スケール2と、を備える。スケール2は、測定基準線MLに沿って配置される複数の目盛格子3を備える。目盛格子3にはラインアンドスペースパターンが用いられる。検出ユニット110には制御部130が接続される。リニアスケール100では、検出ユニット110とスケール2との測定基準線MLに沿った相対的な位置関係を検出する。検出ユニット110で取り込んだ信号は制御部130に送られ、検出ユニット110の測定基準線MLに対する位置の演算が行われる。
【0047】
図11には、検出ユニット110の構成が示される。検出ユニット110には、本実施形態に係る光電式エンコーダが設けられる。リニアスケール100では、照明系1から出射した光の目盛格子3での回折光を結像光学系4を介して受光素子8で受光し、受光量変化を検出することで変位量の測定を行う。
【0048】
このようなリニアスケール100の検出ユニット110の光学系として本実施形態に係る結像光学系4を用いることで、検出ユニット110の光学系の構成を簡素化できるとともに、良好なテレセントリシティによって精度の高い測定を行うことが可能になる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、部品点数の増加を抑制しつつ高精度で光軸を合わせることができる光電式エンコーダを提供することが可能になる。
【0050】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、上記においては第1レンズ5A、14Aの面51に第1アパーチャ13A、15Aを設け、第2レンズ5B、14Bの面52に第2アパーチャ13B、15Bを設ける例を示したが、第1アパーチャ13A、15Aおよび第2アパーチャ13B、15Bは少なくとも一方が設けられていればよい。また、本実施形態では、照明系1から照射され、スケール2で透過した回折光の像7を受光素子8で検出する構成を例示したが、照明系1から照射されたスケール2で反射した回折光の像を受光素子8で検出する構成でもよい。また、スケールの目盛格子としては、ラインアンドスペースパターン以外のパターン(例えば、ランダム符号系列に従って配置されたABSパターン)であってもよい。さらに、光学要素としてレンズ(第1レンズ5A、14A、第2レンズ5B、14B)を例示したが、光学要素はミラーなどの反射光学系が含まれていてもよい。また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、リニアスケールのほか、画像測定装置などの他の測定装置、顕微鏡などの光学装置の光学系として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1…照明系
2…スケール
3…目盛格子
4…結像光学系
5A…第1レンズ
5B…第2レンズ
6…倒立中間像
7…像
8…受光素子
9A…視野中央
9B…視野端
9C…視野端
11A…第1アパーチャ
11B…第2アパーチャ
12A…面
12B…面
13…アパーチャ
13A…第1アパーチャ
13B…第2アパーチャ
14A…第1レンズ
14B…第2レンズ
15A…第1アパーチャ
15B…第2アパーチャ
16…光強度分布断面
17…光強度分布断面
24A…第1シリンドリカルレンズ
24B…第2シリンドリカルレンズ
34A…第1レンズアレイ
34B…第2レンズアレイ
44A…第1シリンドリカルレンズアレイ
44B…第2シリンドリカルレンズアレイ
51…面
52…面
100…リニアスケール
110…検出ユニット
130…制御部
LU…レンズユニット
LAU…レンズアレイユニット
ML…測定基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11