(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885089
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】分離材を用いた測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/72 20060101AFI20210531BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20210531BHJP
G01N 30/00 20060101ALI20210531BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20210531BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
G01N33/72 A
G01N33/48 D
G01N30/00 A
G01N30/88 Q
B01J20/281 R
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-22508(P2017-22508)
(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公開番号】特開2018-128394(P2018-128394A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2020年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植松 原一
【審査官】
草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−114197(JP,A)
【文献】
特開平08−160048(JP,A)
【文献】
グリコヘモグロビン A1c キット チェッカート HbA1c,体外診断用医薬品添付文書,2012年12月,pp.1-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
B01J 20/281
G01N 30/00
G01N 30/88
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液と溶離液との混合液に対して前記血液中のヘモグロビンの全成分量を求め、
次いで前記混合液と、前記ヘモグロビン中のヘモグロビンA1cと特異的に結合する乾燥状態のm−アミノフェニルボロン酸を固定化したアフィニティ分離材とを接触させた後に、前記アフィニティ分離材を沈殿させた上澄み液中の前記ヘモグロビンの成分量を求め、
前記ヘモグロビンの全成分量から、上澄み液中の前記ヘモグロビンの成分量を減ずることにより前記ヘモグロビンA1cの成分量を求め、
前記ヘモグロビンの全成分量に対する、前記ヘモグロビンA1cの成分量の比を求める方法。
【請求項2】
前記アフィニティ分離材の粒径が1μmから500μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶離液が、前記アフィニティ分離材のボロネートアニオンとヘモグロビンA1cの1,2−シスジオールとが結合できる塩基性緩衝液である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘモグロビンの成分量の測定方法が吸光度測定であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分離材を用いた測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中のヘモグロビンは、α鎖N末端のアミノ酸のバリンのアミノ基とグルコースのアルデヒド基の間の非酵素的な反応によりグルコースと結合する。この結合の第一段階は、可逆的なシッフ塩基反応であるが、さらにアマドリ転移反応を経て不可逆的なケトアミンを形成する。このようにして生成するヘモグロビンとグルコースの結合物は、ヘモグロビンA1c(以下、HbA1c又はA1cと記載する場合もある)として知られている。ヘモグロビンの血液中での寿命は約3ヵ月であり、その間グルコースと結合して生成するHbA1cが徐々に蓄積するが、その一方で寿命が尽きたHbA1cは逐次分解されていく。すなわち、ある時点で血液中に存在しているHbA1cの濃度は、その時点からヘモグロビンの寿命のおよそ半分の1〜2ヵ月程遡った過去の血液中のグルコース濃度、すなわち血糖濃度を平均的に反映するものである。このような特徴を有するHbA1cは、一般的な糖尿病の指標である血糖濃度等のように一時的な変動が無く過去の血糖状態を正確に把握できる。
【0003】
HbA1cの測定方法としては、高速液体クロマトグラフィ法、免疫学的方法、酵素法などが知られている。免疫学的方法は、ラテックスを用いた免疫反応を利用してHbA1cを測定する方法である。前処理が必要ではあるが、生化学自動分析装置で測定可能な試薬もあり、大量処理に向いている(特許文献1参照)。酵素法は、酵素により、HbA1cの糖化ジペプチドを切り出し、それをオキシダーゼ、ペルオキシダーゼによる発色へ導き測定する方法である。生化学自動分析装置で測定可能であり、大量処理に向いている(特許文献2参照)。
【0004】
高速液体クロマトグラフィ法はカラムによりHbA1cを分離してその面積比率から定量を行うものである。大量処理には向かないとされてきたが、近年分析時間が大幅に短縮され、現在のところ採用施設も多く実質的な標準的測定方法である。高速液体クロマトグラフィ法は、分離モードによりイオン交換モード法とアフィニティモード法に大別される。イオン交換モード法はHbA1cの電荷の違いにより分離する方法(特許文献3、4参照)、アフィニティモード法は、ホウ酸がHbA1cのシスジオール結合にアフィニティ結合する性質を利用した方法(特許文献5参照)である。
【0005】
しかしながら、これらの方法は専用機器もしくは準専用機器が必要であり、他の分析と併用できる汎用機器に対応していないといった問題がある。それに対して、汎用機器である分光光度計にて測定可能な測定方法として、乾燥分離材と溶離液を用いてHbA1cを分離材に結合させ濾別した濾液の吸光度を測定してHbA0成分を求め、次いで異なる溶離液を用いてHbA1cを分離材から解離させることによりHbA1cを溶出させ濾別した濾液の吸光度を測定してHbA1c成分を求める技術が開示されているが(特許文献6参照)、この方法では濾過操作が必須であることから操作が煩雑であり、さらに濾過材、複数のセル、複数の溶離液が必要であることから、より簡便な測定方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−251789号公報
【特許文献2】特開2010−187604号公報
【特許文献3】特開2012−215470号公報
【特許文献4】特許3505906号公報
【特許文献5】特開2002−139481号公報
【特許文献6】特開2015−114197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、小スケールにも適用しうる測定方法であり、かつ定量性にも優れるため測定方法に適用でき、その結果、グリコヘモグロビン(A1c)の定量をも可能とすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は以下の通りである。
[1]試料と溶離液との混合液に対して前記試料中の測定対象の全成分量を求め、
次いで前記混合液と、前記測定対象中の特定成分と特異的に結合する乾燥状態の分離材とを接触させた後に上澄み液中の前記測定対象の成分量を求め、
前記測定対象の全成分量から、上澄み液中の前記測定対象の成分量を減ずることにより前記特定成分の成分量を求め、
前記測定対象の全成分量に対する、前記特定成分の成分量の比を求める方法。
[2]前記試料が血液であり、
前記測定対象がヘモグロビンであり、
前記特定成分がヘモグロビンA1cである、[1]に記載の方法。
[3]前記分離材が、m−アミノフェニルボロン酸を固定化したアフィニティ分離材であり、その粒径が1μmから200μmである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記溶離液が、前記分離材のボロネートアニオンとヘモグロビンA1cの1,2−シスジオールとが結合できる塩基性緩衝液である、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]成分量の測定方法が吸光度測定であることを特徴とする、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の測定方法は、小スケールにも適用しうるものであり、かつ定量性にも優れるため、試料中の成分の量比を求める方法にも適用できる。その結果、試料中のグリコヘモグロビン(A1c)等の量比を測定することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、試試料と溶離液との混合液に対して前記試料中の測定対象の全成分量を求め、次いで前記混合液と、前記測定対象中の特定成分と特異的に結合する乾燥状態の分離材とを接触させた後に上澄み液中の前記測定対象の成分量を求め、前記測定対象の全成分量から、上澄み液中の前記測定対象の成分量を減ずることにより前記特定成分の成分量を求め、前記測定対象の全成分量に対する、前記特定成分の成分量の比を求めることを特徴とする。
【0012】
本発明の方法では、乾燥状態の分離材を使用することで、分離材を湿潤する溶液による濃度変動を抑制することが可能となる。これにより、分画された成分の定量分析を正確に行うことが可能となる。
【0013】
本発明において、試料と溶離液との混合液に乾燥状態の分離材を接触させる際に、混合液を分散又は攪拌してもよい。効率よくできる方式であればよく、特に分散又は撹拌方式を限定するものではないが、例えばボルテックス、振盪、プロペラ、スターラー等を使用した方式を挙げることができる。
【0014】
本発明において上澄み液中の測定対象の成分量を求める際に分離材の沈降を行ってもよい。沈降方式は、分離材を含む溶液を分離材と溶液に効率よく分離できる方式であれば良く、特に沈降方式を限定するものではないが、例えば自然沈降、凝集沈降、遠心沈降等を挙げることができる。
【0015】
本発明において上澄み液中の測定対象の成分量を求める際に分離材の集磁を行ってもよい。集磁方式は、分離材を含む溶液を分離材と溶液に効率よく分離できる方式であれば良く、特に集磁方式を限定するものではない。
【0016】
本発明で集磁にて分離材を集約する場合には、分離材として磁性微粒子を用いることができる。磁性微粒子は、ガラス、金属、セラミックス等の無機物であってもよく、また高分子ポリマー等の有機物であってもよい。それらの微粒子表面、微粒子内部もしくは微粒子表面と内部の両方に磁性体を含むものであるが、材質が金属製の微粒子の場合、それ自体が磁性体であってもよい。
【0017】
本発明で集磁にて用いられる磁石は特に限定はなく、アルニコ磁石、KS鋼、MK鋼、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等の永久磁石でもよく、電磁石でもよい。
【0018】
本発明で使用する分離材は、測定対象中の特定成分を溶離液により結合するものであれば特に限定はない。ここで結合とは、化学的結合でもよく、また吸着であってもよい。例えば特定成分がA1cの場合、分離材はm−アミノフェニルボロン酸を固定化したものが好ましい。
【0019】
また本発明で用いられる分離材は、粒子状が好ましく、その粒径には特に限定はないが、沈降又は集磁が簡便な機構または用手法で容易に、また短時間で行えるよう、粒径が1μm〜500μmが好ましく、2μm〜200μmがさらに好ましい。
【0020】
本発明に使用する分離材は、乾燥状態で用いることが必要である。そのため、例えば、事前に湿潤状態又はスラリー状態の分離材を吸引濾過し、分離材量の3倍程度の純水を用いて洗浄した後、可能な限り純水を除去する。このような分離材を、シリカゲル等の乾燥剤を入れたデシケータ中で、水分を除去した後、本発明の分離材として使用することができる。
【0021】
図1は、本発明で使用される乾燥ゲルについて説明した図である。これは、その一例であるが、東ソー(株)製Borate 5PW、膨潤状態で20mLのスラリーゲルを前述の処理を実施した場合である。図の横軸が経過時間、縦軸がゲルの重量を示している。このように30時間までは急激に水分量が減少し約50時間で乾燥状態となる。本発明では前記状態になった乾燥ゲルを使用することが望ましい。乾燥が不十分な状態で使用すると、その水分量の変動により測定結果にばらつきをもたらす原因となる。
【0022】
本発明において、試料には特に限定はないが、例えば血液等をあげることができ、このとき測定対象としてヘモグロビン、分離材に結合する特定成分としてA1cを挙げることができる。
【0023】
本発明で使用する溶血液は、血球の細胞膜を破壊する組成であれば良く、組成、濃度、pH等を限定するものではない。
【0024】
本発明で使用する溶離液については、測定対象中の特定成分を溶離液により分離材に結合するものであれば特に限定はない。ここで結合とは、化学的結合でもよく、また吸着であってもよい。例えば特定成分がA1cの場合、分離材として上述のm−アミノフェニルボロン酸を固定化したものを用いた場合は、溶離液は分離材のボロネートアニオンとA1cの1,2−シスジオールが結合できる塩基性緩衝液であればよく、組成、濃度、pH等を限定するものではない。溶離液の一例として、100mmol/L グリシン+150mmol/L 硫酸ナトリウム(pH9.2)をあげることができる。
【0025】
本発明では、このような方法で測定対象中の成分から特定成分を分離し、全成分の量の総和に対する、特定成分の量の比を求めることができる。このとき、成分量の測定法については特に限定はないが、例えば吸光度により測定することができる。
【0026】
以下に、前記の方式を血液中に含まれるA1cを分離し測定に適応するプロトコールを説明する。プロトコールは一例として、以下の概ね6ステップから構成される。なお、
図2は本発明の方法でのA1c測定法の実際の手順を示したフロー図である。
(I)検体溶血工程(検体容量:V
s、溶血液容量:V
d)
(II)溶離液添加工程(容量:V
11)
(III)ヘモグロビン全成分の吸光度測定工程(A
a)
(IV)アフィニティ分離材との反応工程(分離材重量:G)
(V)アフィニティ分離材の沈降又は集磁工程
(VI)ヘモグロビン全成分−A1c成分の吸光度測定工程(A
b)
【0027】
事前に十分に乾燥させたアフィニティ分離材を秤量する(分離材重量:G)。
容器Aに検体(容量:V
s)と溶血液(容量:V
d)を添加し、攪拌により検体を溶血させる(I)。
溶離液(容量:V
11)が入った容器Bに前記検体と溶血液の混合液を添加し攪拌する(II)。
前記検体溶液(容量:V
12)をセルに投入し、溶液の吸光度(A
a)を測定する(III)。
前記検体溶液の入ったセルに分離材を全量移送し、攪拌してA1c相当成分を分離材に結合させる(IV)。
沈降又は集磁の少なくとも一つの操作を行う(V)。
以上の操作によりヘモグロビン全成分−A1c成分が上澄み液に分画される。上澄み液の吸光度(A
b)を測定する(VI)。
【0028】
ヘモグロビン全成分の吸光度(A
a)とヘモグロビン全成分−A1c成分の吸光度(A
b)から、下記式1によりA1c相当成分の比率を求めA1c比率(%)を算出する。
【0029】
A1c比率(%)=[(A
a−A
b)/A
a]×100 (式1)
吸光度を測定する波長は、ヘモグロビン成分を特異的に検出できる波長であり、溶離液に対して吸収ができるだけ無い波長であれば良く、特に限定するものではない。一般的には405〜420nm程度が使用可能であるが、415nmが好適である。
【0030】
吸光度を測定する方法は、目的とする測定精度で決めれば良く特に限定するものではない。
図3は吸光度測定方法の例を幾つか示したものである。
図3aは、シングルビームにより簡易測定を行う例である。測定精度を必要としない場合や、検体の濃度が比較的高く溶離液のバックグラウンドの影響が少ない場合などは、この方法で測定を行ってもよい。
【0031】
図3bはデュアルビーム分光光度計により測定を行う例である。ヘモグロビン全成分の吸光度(A
a)、ヘモグロビン全成分−A1c成分の吸光度(A
b)の吸光度を測定する波長(一例、415nm)であっても、溶離液の吸収が僅かに存在するため、この影響を補正することが可能な方法で、精度良く測定を行うことができる。ヘモグロビン全成分の吸光度(A
a)と、ヘモグロビン全成分−A1c成分の吸光度(A
b)を測定する際はリファレンスとして溶離液(吸光度:A
r)を使用することで、溶離液の吸光度を補正することができる。検体の濃度が低い場合などには適した方法である。
【0032】
図3cは2つの波長により測定を行う例である。ヘモグロビン成分に対して吸収がある波長を第1波長とし、ヘモグロビン成分に対して吸収がなく、溶離液にのみ前記第1波長と同程度の吸収がある波長を第2波長とし、2つの波長で同時に測定を行い、第1波長の吸光度から第2波長の吸光度を差し引くことで、溶離液の吸収の影響を補正することが可能な方法である。一例として、第1波長として415nm、第2波長として440nm又は450nmを使用することで、溶離液の吸収の影響を補正することができる。
【0033】
図3dは、フローインジェクション法による測定を行う例である。この方法は、溶液の流れに測定試料を導入し、吸光度測定する方法であり、効率よく吸光度測定を行うことが可能な方法である。
【0034】
何れの例でも、試料を測定するセルには、専用のセルを使用しても良いが、本発明の操作で使用するセルに直接光を照射して測定することも可能であり、操作をより簡便に行うことができる。この場合、セルには可視光透過石英ガラスもしくは可視光透過樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン樹脂等)のものを使用することができる。
【0035】
溶血液および溶離液の使用容量は、処理する試料の量によって最適化すればよく、限定されるものではない。一例として、試料1.25μLとした場合、溶血液660μL、容器Bに添加する溶離液450μL(V
11)、容器Cに投入する検体溶液1.0mL(V
12)、乾燥アフィニティ分離材30mg、で処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明で使用される乾燥ゲルについて示した図である。横軸が経過時間(H)、縦軸がゲルの重量(g)を示している。
【
図2】本発明の方法でのA1c測定法の実際の手順を示したフロー図である。
【
図3】吸光度測定法の一例を示した図である。図aは簡易測定法、図bはデュアルビーム分光光度計による測定、図cは2波長測定法、図dはフローインジェクションによる測定方法を示している。
【
図4】実施例1での、本発明の方法でのA1c測定法の実際の手順を示した図である。
【
図5】第2波長として440nmとした本発明の方法で相関性試験の結果を示した図である。
【
図6】第2波長として450nmとした本発明の方法で相関性試験の結果を示した図である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
【0038】
(実施例1)
検体は全血、およびキャリブレータ(基準値:5.86%、10.97% 東ソー(株)製)、溶血液は、グリコヘモグロビン分析計HLC−723GHbV東ソー(株)製)専用溶血液をそれぞれ使用した。A1c分離の溶離液としては、下記の組成のものを調整し使用した。
溶離液:酢酸アンモニウム 150mmol/L、塩化マグネシウム 50nmoL/L、0.5%アジ化ナトリウム、pH8.7
分離材は、メタクリレートポリマーを基材とし、m−アミノフェニルボロン酸を固定化した充てん剤(TSKgel Boronate−5PW(東ソー(株)製)を使用した。前記分離材スラリーを吸引濾過して水分を除去した後、シリカゲル存在下のデシケータ中で乾燥させた後に、測定に使用した。
【0039】
本発明の方法による測定法を説明する。
図4は実際の測定手順を示した図である。処理のプロトコールは以下の通りである。薬包紙(1)に前記の十分に乾燥させた分離材(2)を30mg秤量しておく。容器A(3)に溶血液(4)8580μLを分注し、全血検体(5)16.25μLを添加し攪拌し溶血を行った。次に容器B(6)に溶離液(7)6000μLを分注し、溶血させた液8000μLを添加し攪拌した。この試料混合液(容器B(6))の1000μLを、セル(8)に分注し、分光光度計U−2000(日立製作所(株)製)にてヘモグロビン全成分の吸光度(A
a)を測定した。続いて、前記検体溶液の入ったセル(8)に、事前に秤量しておいた分離材(2)を30mg投入し、攪拌してA1c相当成分を分離材に結合させた。30分室温にて放置して分離材を沈殿させた後、分光光度計U−2000(日立製作所(株)製)にて上澄み液のヘモグロビン全成分−A1c成分の吸光度(A
b)を測定した。
【0040】
前述の式1によりA1c比率(%)を算出した。
さらに、本発明の方法の性能を確認するため、ラテックス免疫比濁法である共和メディック社製「グルコヘモグロビン分析計 A1c GEAR K」との相関性試験を実施した。検体は全血(7検体)を使用した。
【0041】
図5は第2波長として440nmとした本発明の方法で相関性試験の結果を示した図である。
図6は第2波長として450nmとした本発明の方法で相関性試験の結果を示した図である。横軸がラテックス免疫比濁法での測定値、縦軸が本発明の方法による測定値である。本発明の方法(
図5)では相関係数が0.9547(R
2:0.9114)、(
図6)では相関係数が0.9603(R
2:0.9222)と非常に良好な相関性が得られた。この結果からも、本発明は、簡易測定法でありながら、従来の測定法との相関性も良好で、A1cを定量することが可能であることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0042】
1.薬包紙
2.分離材
3.容器A
4.溶血液
5.全血検体
6.容器B
7.溶離液
8.セル
9.光源
10.ハーフミラー
11.全反射ミラー
12.フォトセンサ(サンプル側)
13.フォトセンサ(リファレンス側)
14.フォトセンサ
15.セル(サンプル側)
16.セル(リファレンス側)
17.測定容器
18.フローセル
19.測定試料
20.試料導入機構
21.送液機構
22.溶液
23.ダイクロイックミラー