【文献】
佐々木 雄史、他,アミン類を固定化したシリカ誘導体の合成と塩酸溶液からの貴金属イオンの吸着特性,環境資源工学,日本,2013年,Vol. 60, No. 3,P. 145-150
【文献】
Md. Rabiul AWUAL, et al.,Investigation of palladium(II) detection and recovery using ligand modified conjugate adsorbent,Chemical Engineering Journal,2013年 2月26日,Vol. 222,P. 172-179
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
白金族元素含有触媒の存在下で水素化反応を行うことで得られた反応混合物を含有する溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを充填したカラムに通すことで、前記溶液中に含まれる白金族元素を回収する、触媒回収方法であって、
前記反応混合物を含有する溶液を、前記シリカを充填したカラムに通す際の空間速度(SV)を、0.1〜10(1/hr)の範囲にする、触媒回収方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の触媒回収方法は、医薬、農薬、工業薬品、石油、石油化学製品、ポリマー製品、油脂製品、食用油、潤滑剤、香料などの製造分野において、白金族元素含有触媒を用いて水素化反応を行う場合に広く適用でき、水素化反応により得られた反応混合物を含有する溶液から、白金族元素を良好に回収することができるものである。
【0019】
本発明の触媒回収方法を適用できる水素化反応により得られる反応混合物としては、白金族元素含有触媒の存在下で水素化反応を行って得られる反応混合物であれば特に限定されない。このような水素化反応としては、たとえば、アセチレンのエチレンへの水素化、3−ヘキシン−1−オールのシス−3−ヘキセン−1−オールへの水素化などに代表されるアセチレン結合の炭素−炭素二重結合への水素化反応;ガソリンの水素化(ガソリンの品質改善)、ジイソブチレンからイソオクタンの製造、不飽和グリセリドから飽和グリセリドの製造、共役ジエン系重合体から水素化共役ジエン系重合体の製造などに代表される炭素−炭素二重結合の飽和結合への水素化反応;シクロペンタノンやシクロヘキサノンから対応するアルコールを製造するカルボニル基の水素化反応;ニトリル基やアゾメチン基(シッフ塩基)をアミノ基へ変換する水素化反応;などが挙げられる。
これらのなかでも、本発明の触媒回収方法は、共役ジエン系重合体を水素化することにより得られる、水素化共役ジエン系重合体を含有するものに好適に適用することができる。
【0020】
以下においては、共役ジエン系重合体を水素化することにより得られる、本発明の水素化共役ジエン系重合体の製造方法を例示して、本発明の触媒回収方法について詳細に説明する。ただし、本発明の触媒回収方法は、共役ジエン系重合体を水素化することにより得られる、水素化共役ジエン系重合体を対象とする溶液に限定されるものではない。また、以下においては、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を用いた触媒回収方法を例示しているが、本発明の触媒回収方法では、後述するように、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜に代えて、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを用いてもよい。
【0021】
本発明の水素化共役ジエン系重合体の製造方法は、
有機溶媒中、白金族元素含有触媒の存在下で、共役ジエン系重合体を水素化することで、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を得る水素化反応工程と、
前記水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜と接触させることで、該溶液中に含まれる白金族元素を回収する触媒回収工程と、を備える。
【0022】
水素化反応工程における水素化とは、共役ジエン系重合体に含まれる炭素−炭素二重結合の少なくとも一部を水素添加して飽和結合に変換する反応である。本発明で用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン単量体単独で、もしくは共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を該共役ジエン単量体と組み合わせて、従来公知の乳化重合法または溶液重合法により、好ましくは乳化重合法により製造される重合体である。
【0023】
共役ジエン系重合体を形成するための共役ジエン単量体としては、共役ジエン構造を有する重合性単量体であれば、特に限定されず、たとえば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらの中でも1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0024】
共役ジエン単量体と共重合可能な単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、クロトンニトリルなどのα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体;アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、メチルメタクリレートなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、メタアクリルアミドなどのα,β−エチレン不飽和カルボン酸アミド;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのビニル芳香族化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;フルオロエチルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物;などが挙げられる。
【0025】
本発明で用いる共役ジエン系重合体の具体例としては、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合体、メタアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メタアクリロニトリル−イソプレン共重合体、メタアクリロニトリル−ブタジエン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0026】
上記共役ジエン系重合体の中でも、水素化共役ジエン系重合体の製造原料としての実用性や汎用性の観点からは、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メタアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が好ましく、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体がより好ましい。
【0027】
共役ジエン系重合体を構成する単量体単位の組成比は特に限定されないが、共役ジエン単量体単位5〜100重量%、これと共重合可能な単量体の単位95〜0重量%であることが好ましく、共役ジエン単量体単位10〜90重量%、これと共重合可能な単量体の単位90〜10重量%であることがより好ましい。また、共役ジエン系重合体の重量平均分子量(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法、標準ポリスチレン換算)も特に限定されないが、通常5,000〜500,000である。
【0028】
共役ジエン系重合体の好適な調製方法としての乳化重合法は、一般的にラジカル重合開始剤を用いて水系媒体中で重合を行うものであり、乳化重合法において、重合開始剤や分子量調整剤は公知のものを使用すればよい。重合反応は回分式、半回分式、連続式のいずれでもよく、重合温度や圧力も特に制限されない。使用する乳化剤も特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などを使用できるが、アニオン性界面活性剤が好ましい。これらの乳化剤は、それぞれ単独で使用しても2種以上を併用してもよい。その使用量は特に限定されない。
【0029】
乳化重合により得られる共役ジエン系重合体ラテックスの固形分濃度は特に限定されないが、通常2〜70重量%、好ましくは5〜60重量%である。その固形分濃度はブレンド法、希釈法、濃縮法など公知の方法により適宜調節することができる。
【0030】
共役ジエン系重合体の水素化反応は、乳化重合により得られるラテックスに対し、ラテックス状態のまま行ってもよいが、触媒活性等の観点より、乳化重合により得られるラテックスを、凝固・乾燥して得られる共役ジエン系重合体ゴムを、適当な有機溶媒に溶解して、重合体溶液の状態で行うことが好ましい。
【0031】
ラテックスの凝固・乾燥は、公知の方法により行えばよいが、凝固して得られるクラムと塩基性水溶液とを接触させる処理工程を設けることにより、得られる共役ジエン系重合体ゴムをテトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定される重合体溶液のpHが7を超えるように改質することが好ましい。THFに溶解して測定される重合体溶液のpHは、好ましくは7.2〜12、より好ましくは7.5〜11.5、最も好ましくは8〜11の範囲である。このクラムと塩基性水溶液との接触処理により、溶液系水素化を速やかに進行させることが可能となる。
【0032】
水素化反応を行う際の重合体溶液中における、共役ジエン系重合体濃度は、好ましくは1〜70重量%、より好ましくは1〜40重量%、特に好ましくは2〜20重量%である。有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンセンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル類;酢酸エチルなどのエステル類;などが挙げられる。これらの有機溶媒の中でもケトン類が好ましく用いられ、アセトンが特に好適に用いられる。
【0033】
本発明において、水素化反応を行う際には、水素化触媒として、白金族元素含有触媒を使用する。白金族元素含有触媒としては、白金族元素、すなわち、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムまたは白金を含有する触媒であればよく、特に限定されないが、触媒活性や入手容易性の観点からパラジウム化合物、ロジウム化合物が好ましく、パラジウム化合物がより好ましい。また、2種以上の白金族元素化合物を併用してもよいが、その場合もパラジウム化合物を主たる触媒成分とすることが好ましい。
【0034】
パラジウム化合物は、通常、II価またはIV価のパラジウム化合物が用いられ、その形態は塩や錯塩である。
【0035】
パラジウム化合物としては、例えば、酢酸パラジウム、シアン化パラジウム、フッ化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウム、水酸化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、ヘキサクロロパラジウム酸アンモニウム、テトラシアノパラジウム酸カリウムなどが挙げられる。
【0036】
これらのパラジウム化合物の中でも、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、へキサクロロパラジウム酸アンモニウムが好ましく、酢酸パラジウム、硝酸パラジウムおよび塩化パラジウムがより好ましい。
【0037】
ロジウム化合物としては、例えば、塩化ロジウム、臭化ロジウム、ヨウ化ロジウム、硝酸ロジウム、硫酸ロジウム、酢酸ロジウム、蟻酸ロジウム、プロピオン酸ロジウム、酪酸ロジウム、吉草酸ロジウム、ナフテン酸ロジウム、アセチルアセトン酸ロジウム、酸化ロジウム、三水酸化ロジウムなどが挙げられる。
【0038】
本発明において、白金族元素含有触媒としては、上述したパラジウム化合物やロジウム化合物をそのまま使用してもよいし、あるいは、上述したパラジウム化合物やロジウム化合物などの触媒成分を担体に担持させて、担持型触媒として使用してもよい。
【0039】
担持型触媒を形成するための担体としては、一般的に金属触媒の担体として用いられているものであればよいが、具体的には、炭素、ケイ素、アルミニウム、マグネシウムなどを含有する無機化合物が好ましく、その中でも、パラジウム化合物やロジウム化合物などの触媒成分の吸着効率がより高まるという観点より、担体の特性として、平均粒子径が10nm〜100nm、比表面積が200〜2000m
2/gであるものを使用するのが好ましい。
【0040】
このような担体は、活性炭、活性白土、タルク、クレー、アルミナゲル、シリカ、けいそう土、合成ゼオライトなど公知の触媒用担体の中から適宜に選択する。担体への触媒成分の担持方法としては、たとえば、含浸法、コーティング法、噴霧法、沈殿法などが挙げられる。触媒成分の担持量は、触媒と担体との合計量に対する触媒成分の割合で通常0.5〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%である。触媒成分を担持した担体は、反応器の種類や反応形式などに応じて、例えば球状、円柱状、多角柱状、ハニカム状などに成形することができる。
【0041】
また、パラジウム化合物やロジウム化合物などの白金族元素の塩を担体に担持させずに、白金族元素含有触媒としてそのまま使用する場合においては、これらの化合物を安定させるための安定化剤を併用することが好ましい。安定化剤を、パラジウム化合物やロジウム化合物などの白金族元素含有触媒を溶解または分散させた媒体中に存在させることにより、共役ジエン系重合体などの水素化対象化合物を高水素添加率で水素化することができる。
【0042】
このような安定化剤としては、たとえば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリアルキルビニルエーテルなどの側鎖に極性基を有するビニル化合物の重合体;ポリアクリル酸のナトリウム、ポリアクリル酸カリウムなどのポリアクリル酸の金属塩;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリエーテル;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;ゼラチン、アルブミンなどの天然高分子;などが挙げられる。これらの中でも、側鎖に極性基を有するビニル化合物の重合体、またはポリエーテルが好ましい。側鎖に極性基を有するビニル化合物の重合体の中では、ポリビニルピロリドン、ポリアルキルビニルエーテルが好ましく、ポリメチルビニルエーテルがより好ましい。
【0043】
また、水素化反応に際しては、還元剤を併用してもよく、還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒドラジン、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン塩酸塩等のヒドラジン類、またはヒドラジンを遊離する化合物などが挙げられる。
【0044】
水素化反応の温度は、通常0〜200℃、好ましくは5〜150℃、より好ましくは10〜100℃である。水素化反応の温度を上記範囲とすることにより、副反応を抑えながら、反応速度を十分なものとすることができる。
【0045】
水素化反応を行う際における、水素の圧力は、通常、0.1〜20MPaであり、好ましくは0.1〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。反応時間は特に限定されないが、通常30分〜50時間である。なお、水素ガスは、先ず窒素などの不活性ガスで反応系を置換し、さらに水素で置換した後に加圧することが好ましい。
【0046】
そして、白金族元素含有触媒として、担持型触媒を使用した場合には、濾過や遠心分離などにより担持型触媒を分離することにより、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を得ることができる。
【0047】
次いで、上記のようにして得られた水素化共役ジエン系重合体を含む溶液に対し、溶液中に含まれている、白金族元素、具体的には、溶液中に遊離している、ナノオーダーサイズ(具体的には、数nm〜数十nmのオーダー)の白金族元素粒子を回収するために、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を接触させ、これに、遊離のナノオーダーサイズの白金族元素粒子を吸着させることで、遊離のナノオーダーサイズの白金族元素粒子を回収する。アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜に吸着させるナノオーダーサイズの白金族元素粒子としては、白金族元素粒子が含まれる溶液を、精密粒度分布測定装置を用いて動的光散乱法により測定した場合における、粒子径のピークが、1nm超、90nm以下の範囲にあるものが好ましい。
【0048】
すなわち、白金族元素含有触媒として、担持型触媒を使用した場合には、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液から、濾過や遠心分離などにより担持型触媒を分離することにより、白金族元素を含有する担持型触媒を回収することができるが、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液中には、ナノオーダーサイズの白金族元素粒子が遊離の状態で存在することとなる。また、白金族元素含有触媒として、白金族元素の塩を、担体に担持させずに、そのまま用いた場合にも、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液中には、ナノオーダーサイズの白金族元素粒子が遊離の状態で存在することとなる。
【0049】
本発明によれば、このようなナノオーダーサイズの白金族元素粒子が遊離の状態で存在する溶液に対し、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を接触させ、これに、遊離のナノオーダーサイズの白金族元素粒子を吸着させることで、遊離のナノオーダーサイズの白金族元素粒子を回収することができる。
【0050】
特に、本発明によれば、溶液中で遊離の状態で存在するナノオーダーサイズの白金族元素粒子が、保護基によって保護され、コロイド状の状態にて存在している場合においても、良好に、白金族元素粒子を吸着させて回収することができる。
【0051】
保護基としては、白金族元素粒子を保護することができるものであればよく、特に限定されないが、たとえば、共役ジエン系重合体などの水素化対象化合物や、白金族元素含有触媒として白金族元素の塩を担体に担持させることなくそのまま用いる場合において必要に応じて使用する安定化剤などが挙げられる。
【0052】
本発明によれば、白金族元素粒子が保護基によって保護されている場合においても、白金族元素粒子が遊離の状態で存在する溶液に対し、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を接触させることで、遊離のナノオーダーサイズの白金族元素粒子を吸着させることができ、これにより、遊離のナノオーダーサイズの白金族元素粒子を回収することができる。
【0053】
白金族元素含有触媒の存在下で水素化反応を行うことで得られた反応混合物を含有する溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜と接触させる方法としては、特に限定されないが、たとえばアミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜により、たとえば上述した水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を濾過する方法が挙げられる。水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を濾過する方法としては、たとえば、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を、フィルターホルダーによって固定し、このフィルターホルダーにシリンジを接続することで白金族元素粒子回収装置を作製し、白金族元素粒子回収装置のシリンジ内に、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を投入して濾過する方法が挙げられる。このような濾過を行う際においては、窒素ガス等によって溶液に加圧して濾過を行うことが好ましい。窒素ガス等によって溶液に加圧することにより、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液の空間速度(SV)を高くした場合でも、繊維膜による白金族元素粒子の吸着率を高くすることができる。これにより、繊維膜による白金族元素粒子の吸着率を高く維持しながら、より速く溶液を濾過することができるようになるため、白金族元素粒子の回収の処理効率を向上させることができる。
【0054】
窒素ガス等によって溶液に加圧して濾過を行う場合には、白金族元素含有触媒の存在下で水素化反応を行うことで得られた反応混合物を含有する溶液に対して加える圧力は、好ましくは2〜20kg/cm
2、より好ましくは6〜18kg/cm
2、さらに好ましくは10〜15kg/cm
2である。白金族元素含有触媒の存在下で水素化反応を行うことで得られた反応混合物を含有する溶液に対して加える圧力を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、たとえば、上述した白金族元素粒子回収装置のシリンジ内の圧力を、窒素ガス等によって、上記範囲に制御する方法が挙げられる。
【0055】
水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基
を表面に有する繊維膜と接触させる際の、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液中の水素化共役ジエン系重合体の濃度は好ましくは0.001〜20重量%、より好ましくは0.002〜15重量%、特に好ましくは0.005〜10%重量%の範囲である。この範囲であることによって、白金族元素粒子回収の生産性と回収効率の安定性が保たれ好ましい。
【0056】
本発明で用いるアミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を形成するための繊維膜としては、特に限定されず、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に導入することができるものであればよいが、たとえば、セラミック繊維膜が挙げられる。
【0057】
セラミック繊維膜を構成するセラミックは、一般的に、無機物を焼き固めた焼結体を示すものであり、金属または非金属を問わず、あらゆる無機化合物の焼結体の成形体、粉末、膜などを含むものである。セラミック繊維膜を構成するセラミックとしては、特に限定されないが、たとえば、ガラス、セメント、陶器、磁器などが挙げられる。なかでも、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に導入することにより白金族元素粒子をより高い効率で回収することができるという観点より、ガラスを用いることが好ましい。
【0058】
ガラスとしては、一般的に、昇温によりガラス転移現象を示す非晶質を含む固体、および、昇温によりガラス転移現象を示す固体となる物質を含むものであり、特に限定されないが、たとえば、ガラス転移現象を示す酸化物や、高温で加熱することによって、ガラス転移現象を示す酸化物となる物質、具体的には、二酸化ケイ素などが挙げられる。なお、ガラスには、二酸化ケイ素または二酸化ケイ素によって構成される物質を示すシリカも含まれる。
【0059】
セラミック繊維膜を構成するセラミックとしてガラスを用いる場合には、セラミック繊維膜としては、ガラス繊維を膜状に成形してなるガラス繊維膜を用いることができる。なお、ガラス繊維は、ガラスを原料として製造される繊維であり、高温で溶融させたガラスを、高速で巻き取ったり、吹き飛ばしたりする方法などによって、たとえば、平均径をミクロン(1000分の1ミリ)単位の繊維状としたものが挙げられる。ガラス繊維は、一般的に、短繊維と長繊維とに分類され、様々な用途で使用されている。本発明で用いるガラス繊維膜を構成するガラス繊維としては、このような短繊維および長繊維のいずれも用いることができる。
【0060】
ガラス繊維を構成するガラスの種類としては、特に限定されず、たとえば、アルミノシリケート酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ウランガラス、カリガラス、ケイ酸ガラス、結晶化ガラス、ゲルマニウムガラス、石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、バリウム瑚珪酸ガラス、硼酸塩および珪酸塩を含む硼珪酸塩ガラスなどが挙げられる。
【0061】
本発明で用いるアミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜は、このような繊維膜の表面に、アミノ基またはチオール基を含有する基を導入することにより得られる。
【0062】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜の細孔径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜2.0μm、より好ましくは0.2〜1.5μm、さらに好ましくは0.3〜1.0μmである。細孔径を上記範囲の下限より大きくすることにより、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を濾過する場合における空間速度(SV)が適切な範囲に制御され、白金族元素粒子の回収の処理効率がより良好に保持される。一方、細孔径を上記範囲の上限より小さくすることにより、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜における、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液との接触面積が適切な範囲に制御され、白金族元素粒子の吸着率がより良好に保持される。
【0063】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜の厚みは、特に限定されないが、好ましくは300〜8800μm、より好ましくは320〜4400μm、さらに好ましくは350〜3200μmである。繊維膜の厚みを上記範囲の下限より厚くすることにより、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を濾過する場合における、白金族元素粒子の吸着率がより良好に保持される。一方、繊維膜の厚みを上記範囲の上限より薄くすることにより、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を濾過する場合における空間速度(SV)が適切な範囲に制御され、白金族元素粒子の回収の処理効率がより良好に保持される。
【0064】
なお、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜の厚みは、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜自体の厚みを変化させることで調整してもよいし、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を、複数枚重ねて用いることで調整してもよい。
【0065】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜の形状および寸法は、特に限定されず、任意に選択すればよいが、たとえば、寸法がφ20〜100mmである円形のシート状のものを用いることができる。
【0066】
白金族元素含有触媒の存在下で水素化反応を行うことで得られた反応混合物を含有する溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜により濾過する場合には、空間速度(SV)を、100〜2000(1/hr)の範囲とすることが好ましく、400〜600(1/hr)の範囲とすることがより好ましい。空間速度(SV)を上記範囲の上限より低くすることにより、白金族元素粒子の吸着率がより良好に保持される。一方、空間速度(SV)を上記範囲の下限より高くすることにより、白金族元素粒子の回収の処理効率がより良好に保持される。なお、空間速度(SV)は、上述したアミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜の細孔径、厚み、形状および寸法等を調整することにより、制御することができる。
【0067】
また、本発明において、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜として、アミノ基を含有する基を表面に有する繊維膜を用いる場合には、アミノ基としては、アミノ基を形成する水素原子が、置換されたものであってもよいし、無置換のものであってもよいが、置換されていない無置換のアミノ基、すなわち、「−NH
2」の形態であるものを用いることが好ましい。たとえば、アルキル基などで置換されている置換アミノ基では、白金族元素粒子の吸着効果が低下してしまう場合がある。
【0068】
なお、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜としては、アミノ基を含有する基のみを表面に有するものや、チオール基を含有する基のみを表面に有するものを用いてもよいし、あるいは、アミノ基を含有する基と、チオール基を含有する基との両方を表面に有するものを用いてもよい。なかでも、白金族元素粒子の吸着効果により優れるという観点より、少なくともアミノ基を含有する基を表面に有する繊維膜を用いることが好ましい。
【0069】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を形成するアミノ基を含有する基としては、白金族元素粒子の吸着効果をより高めることができるという点より、アミノ基を備える、炭素数1〜12の炭化水素基であることが好ましく、アミノ基を備える、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましい。なお、アミノ基を備える炭化水素基としては、炭化水素基の末端がアミノ基であることが好ましい。
【0070】
アミノ基を備える炭化水素基としては、特に限定されないが、たとえば、置換基を有していてもよい直鎖、分岐の炭化水素基が挙げられる。このようなアミノ基を備える炭化水素基は、ヘテロ原子を含むものであってもよく、ヘテロ原子を含む場合には、ヘテロ原子の数は、特に限定されないが、たとえば、1〜6が好ましい。アミノ基を備える炭化水素基中におけるヘテロ原子の位置としては、特に限定されず、炭化水素基の炭化水素鎖中であってもよい(たとえば、−CH
2−S−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−CH
2−NH−CH
2−で表される構造を含むものなど。)。
【0071】
なお、ヘテロ原子とは、周期表15族及び16族の原子をいう。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、砒素原子、セレン原子などが挙げられる。これらの中でも、窒素原子、硫黄原子、および酸素原子が好ましい。
【0072】
アミノ基を備える炭化水素基が、分岐の炭化水素基である場合には、分岐の末端にアミノ基またはチオール基を有していてもよい。
【0073】
また、アミノ基を備える炭化水素基は、末端に芳香族炭化水素を含むものであってもよい。このような芳香族炭化水素は、環構造に炭素以外の元素が含まれた複素芳香族化合物であってもよく、また、1または2以上のアミノ基またはチオール基を有していてもよい。
【0074】
このようなアミノ基を備える炭化水素基の具体例としては、アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、5−アミノペンチル基などが挙げられる。
【0075】
あるいは、このようなアミノ基を備える炭化水素基の具体例としては、下記式(1)〜(7)で表される基なども挙げられる。
【化1】
【0076】
上述したアミノ基を備える炭化水素基などを、繊維膜に導入する方法としては、特に限定されないが、たとえば、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を構成する繊維膜として、ケイ素を含有するものを用いる場合には、繊維膜に対して、アミノ基を備えるアミノ系シランカップリング剤を用いて、シランカップリング処理を行う方法を用いることができる。
【0077】
アミノ系シランカップリング剤としては、ケイ素を含有する基と、アミノ基を含有する基とを有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、ケイ素を含有する基と、アミノ基を含有する基とが、アルキレン基によって連結された構造を有する化合物が挙げられる。このような化合物における、ケイ素を含有する基と、アミノ基を含有する基とを連結するアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数3のアルキレン基がさらに好ましい。このようなアミノ系シランカップリング剤の具体例としては、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルメチルジメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルメチルジエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルメチルジメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルメチルジメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、5−アミノペンチルトリメトキシシラン、5−アミノペンチルメチルジメトキシシラン、5−アミノペンチルトリエトキシシラン、5−アミノペンチルメチルジエトキシシランなどが挙げられ、これらのなかでも、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0078】
また、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を形成するチオール基を含有する基としては、白金族元素粒子の吸着効果をより高めることができるという点より、チオール基を備える、炭素数1〜12の炭化水素基であることが好ましく、チオール基を備える、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましい。なお、チオール基を備える炭化水素基としては、炭化水素基の末端がチオール基であることが好ましい。
【0079】
チオール基を備える炭化水素基としては、特に限定されないが、たとえば、置換基を有していてもよい直鎖、分岐の炭化水素基が挙げられる。このようなチオール基を備える炭化水素基は、ヘテロ原子を含むものであってもよく、ヘテロ原子を含む場合には、ヘテロ原子の数は、特に限定されないが、たとえば、1〜6が好ましい。チオール基を備える炭化水素基中におけるヘテロ原子の位置としては、特に限定されず、炭化水素基の炭化水素鎖中であってもよい(たとえば、−CH
2−S−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−CH
2−NH−CH
2−で表される構造を含むものなど。)。
【0080】
チオール基を備える炭化水素基が、分岐の炭化水素基である場合には、分岐の末端にアミノ基またはチオール基を有していてもよい。
【0081】
また、チオール基を備える炭化水素基は、末端に芳香族炭化水素を含むものであってもよい。このような芳香族炭化水素は、環構造に炭素以外の元素が含まれた複素芳香族化合物であってもよく、また、1または2以上のアミノ基またはチオール基を有していてもよい。
【0082】
このようなチオール基を備える炭化水素基の具体例としては、メルカプトメチル基、
2−メルカプトエチル基、3−メルカプトプロピル基、4−メルカプトブチル基、5−メルカプトペンチル基などが挙げられる。
【0083】
あるいは、このようなチオール基を備える炭化水素基の具体例としては、下記式(8)〜(12)で表される基なども挙げられる。
【化2】
【0084】
上述したチオール基を備える炭化水素基などを、繊維膜に導入する方法としては、特に限定されないが、たとえば、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を構成する繊維膜として、ケイ素を含有するものを用いる場合には、繊維膜に対して、チオール基を備えるチオール系シランカップリング剤を用いて、シランカップリング処理を行う方法を用いることができる。
【0085】
チオール系シランカップリング剤としては、ケイ素を含有する基と、チオール基を含有する基とを有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、ケイ素を含有する基と、チオール基を含有する基とが、アルキレン基によって連結された構造を有する化合物が挙げられる。このような化合物における、ケイ素を含有する基と、チオール基を含有する基とを連結するアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数3のアルキレン基がさらに好ましい。このようなチオール系シランカップリング剤の具体例としては、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルメチルジメトキシシラン、4−メルカプトブチルトリエトキシシラン、4−メルカプトブチルメチルジエトキシシラン、5−メルカプトペンチルトリメトキシシラン、5−メルカプトペンチルメチルジメトキシシラン、5−メルカプトペンチルトリエトキシシラン、5−メルカプトペンチルメチルジエトキシシランなどが挙げられ、これらのなかでも、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0086】
上述したアミノ系シランカップリング剤やチオール系シランカップリング剤を用いてシランカップリング処理を行う際には、予め、繊維膜の表面を活性化させる活性化処理を行うことが好ましい。活性化処理としては、特に限定されないが、たとえば、繊維膜を、過酸化水素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を含む水溶液を用いて洗浄する方法が挙げられる。繊維膜を洗浄する場合には、たとえば、繊維膜を、過酸化水素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を含む水溶液に浸漬させて、振とう撹拌する方法を用いることが好ましい。振とう撹拌する際における温度条件は、特に限定されないが、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜80℃である。振とう撹拌する際における撹拌時間は、特に限定されないが、好ましくは20〜300分、より好ましくは60〜150分である。
【0087】
繊維膜の表面を活性化させるための水溶液として、過酸化水素水を含む水溶液を用いる場合には、水溶液中の過酸化水素の濃度は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜50重量%である。
【0088】
また、繊維膜の表面を活性化させるための水溶液として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアを含む水溶液を用いる場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのうちいずれか一つを含む水溶液を用いてもよいし、二つ以上を含む水溶液を用いてもよいが、水溶液中における水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの合計の濃度が(すなわち、水溶液中における、水酸化ナトリウムの濃度、水酸化カリウムの濃度、アンモニアの濃度の合計の濃度が)、好ましくは0.01〜10mol/L、より好ましくは0.5〜5mol/Lである。
【0089】
本発明は、水素化反応により得られた反応混合物を含有する溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜と接触させることで、溶液中に含まれる白金族元素、より具体的には、溶液中において遊離の状態で存在するナノオーダーサイズの白金族元素粒子を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜に吸着させ、これにより回収するものであり、このような白金族元素を効率的に回収できるものである。特に、本発明によれば、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を用いて、濾過等の方法により、水素化反応により得られた反応混合物を含有する溶液中の白金族元素粒子を吸着して回収することができるため、溶液を処理する際の空間速度(SV)をより高くすることができ、これにより、白金族元素粒子の回収の処理効率をより向上させることができる。また、本発明によれば、本発明で用いる、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜は、水素化反応により得られた反応混合物を含有する溶液を形成する有機溶媒に対して不溶であるため、このような有機溶媒に残存したり、反応したりしてしまうことがないため、このような有機溶媒を好適に再利用することができる。そして、その結果として、生産効率を高めることができる。
【0090】
なお、上述した例においては、触媒回収方法として、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を用いる方法を例示したが、本発明の触媒回収方法では、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜に代えて、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを用いてもよい。
【0091】
本発明において、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを用いる場合には、水素化共役ジエン系重合体の製造方法は、
溶媒中、白金族元素含有触媒の存在下で、共役ジエン系重合体を水素化することで、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を得る水素化反応工程と、
前記水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカと接触させることで、該溶液中に含まれる白金族元素を回収する触媒回収工程と、を備える。
【0092】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカに、白金族元素粒子を吸着させる方法としては、特に限定されないが、(1)アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液中に添加し、攪拌する方法や、(2)水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを充填したカラムに通す方法などが挙げられる。
【0093】
水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基
を表面に有するシリカと接触させる際の、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液中の水素化共役ジエン系重合体の濃度は好ましくは0.001〜20重量%、より好ましくは0.002〜15重量%、特に好ましくは0.005〜10%重量%の範囲である。この範囲であることによって、白金族元素粒子回収の生産性と回収効率の安定性が保たれ好ましい。
【0094】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液中に添加し、攪拌する方法における、添加割合は、「水素化共役ジエン系重合体:アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカ」の重量割合で、好ましくは1:0.01〜1:100の範囲、より好ましくは1:0.01〜1:50の範囲とすることができる。
【0095】
また、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液に、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを接触させる際における、接触温度は、好ましくは10〜150℃、より好ましくは20〜120℃、また、接触時間は、好ましくは10分〜100時間、より好ましくは30分〜72時間である。
【0096】
また、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを充填したカラムに通す方法においては、空間速度(SV)を、0.1〜50(1/hr)の範囲とすることが好ましく、0.2〜10(1/hr)の範囲とすることがより好ましい。空間速度(SV)を上記範囲の上限より低くすることにより、白金族元素粒子の吸着率がより良好に保持される。一方、空間速度(SV)を上記範囲の下限より高くすることにより、白金族元素粒子の回収の処理効率がより良好に保持される。なお、空間速度(SV)は、たとえば、水素化共役ジエン系重合体を含む溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを充填したカラムに通す際における、圧力を調整することにより、制御することができる。
【0097】
また、本発明において、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカとして、アミノ基を含有する基を表面に有するシリカを用いる場合には、アミノ基としては、アミノ基を形成する水素原子が、アルキル基などで置換されたものであってもよいし、無置換のものであってもよいが、置換されていない無置換のアミノ基、すなわち、「−NH
2」の形態であるものを用いることが好ましい。たとえば、アルキル基などで置換されている置換アミノ基では、白金族元素粒子の吸着効果が低下してしまう場合がある。
【0098】
なお、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカとしては、アミノ基を含有する基のみを表面に有するものや、チオール基を含有する基のみを表面に有するものを用いてもよいし、あるいは、アミノ基を含有する基と、チオール基を含有する基との両方を表面に有するものを用いてもよい。なかでも、白金族元素粒子の吸着効果により優れるという観点より、少なくともアミノ基を含有する基を表面に有するシリカを用いることが好ましい。
【0099】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを形成するアミノ基を含有する基としては、上述したアミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を形成するアミノ基を含有する基と、同様の基を用いることができる。
【0100】
また、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを形成するチオール基を含有する基としては、上述したアミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を形成するチオール基を含有する基と、同様の基を用いることができる。
【0101】
アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカの平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1μm〜10mmであり、より好ましくは2μm〜1mmである。
【0102】
そして、本発明によれば、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカに、溶液中に遊離の状態で存在する白金族元素粒子を吸着させた後に、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを濾過や遠心分離などにより分離することで、溶液中に遊離の状態で存在する白金族元素粒子を効率的に回収することができる。
【0103】
本発明によれば、水素化反応により得られた反応混合物を含有する溶液を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカと接触させることで、溶液中に含まれる白金族元素、より具体的には、溶液中において遊離の状態で存在するナノオーダーサイズの白金族元素粒子を、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカに吸着させ、これにより回収するものであり、このような白金族元素を効率的に回収できるものである。また、本発明によれば、本発明で用いる、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカは、水素化反応により得られた反応混合物を含有する溶液を形成する有機溶媒に対して不溶であるため、このような有機溶媒に残存したり、反応してしまうことがないため、このような有機溶媒を好適に再利用することができる。そして、その結果として、生産効率を高めることができる。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。
【0105】
(白金族元素粒子の粒子径の評価)
水素化反応により得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を濾過して得た濾液を、精密粒度分布測定装置「DLS8000」(大塚電子社製)を用いて、動的光散乱法により測定することにより、濾液中の白金族元素粒子の粒子径を測定した。ここで、1nm超、90nm以下の範囲に粒子径のピークが観察された濾液については、ナノオーダーサイズの白金族元素粒子が含まれていると判断した。
【0106】
製造例1
反応器に、オレイン酸カリウム2部、イオン交換水180部、アクリロニトリル37部、およびt−ドデシルメルカプタン0.5部を、この順に仕込んだ。次いで、反応器内部を窒素で置換した後、ブタジエン63部を添加し、反応器を10℃に冷却して、クメンハイドロパーオキサイド0.01部、および硫酸第一鉄0.01部を添加した。次いで、反応器を10℃に保ったまま内容物を16時間攪拌した。その後、反応器内へ10重量%のハイドロキノン水溶液を添加して重合反応を停止させた後、重合反応液から未反応の単量体を除去することで、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックスを得た。重合転化率は90%であった。
【0107】
次いで、上記とは別の反応器に、塩化カルシウム(凝固剤)3部を溶解した凝固水300部を入れ、これを50℃で攪拌しながら、上記にて得られたラテックスを凝固水中へ滴下した。そして、ここへ水酸化カリウム水溶液を加えてpHを11.5に保ちながら重合体クラムを析出させた後、凝固水から重合体クラムを分取して水洗後、50℃で減圧乾燥した。次いで、得られた重合体クラムをアセトンに溶解することで、重合体含量が15重量%のアセトン溶液を調製した。
【0108】
そして、得られたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体のアセトン溶液にシリカ担持型パラジウム(Pd)触媒(Pd量は「Pd金属/アクリロニトリル−ブタジエン共重合体」の比で1000重量ppm)を加えて、これを攪拌機付オートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流すことで溶存酸素を除去した。次いで、系内を2回水素ガスで置換後、5MPaの水素を加圧し、内容物を50℃に加温して6時間攪拌することで、水素化反応を行った。
【0109】
水素化反応終了後、反応系を室温に冷却し、系内の水素を窒素で置換した。そして、水素化反応により得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液について、濾過を行うことで、シリカ担持型パラジウム触媒を回収した。得られた濾液のうち一部を採取し、これを10倍量の水中に投入して、重合体を析出させ、得られた重合体を真空乾燥機で24時間乾燥することで、固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を得た。得られた固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体について、原子吸光測定により、共重合体中のパラジウム量を測定したところ、パラジウム量は145重量ppmであった。また、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のヨウ素価は、7.4であった。さらに、得られた濾液のうち一部を採取し、上述した方法により白金族元素粒子の粒子径の評価を行ったところ、粒子径のピークは1nm超、90nm以下の範囲であった。
【0110】
製造例2
製造例1と同様にして、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)のラテックスを得て、これを凝固した後、アセトンに溶解することで、重合体含量が15重量%のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体のアセトン溶液を得た。
【0111】
次いで、上記とは別の反応器にて、酢酸パラジウム1部、ポリメチルビニルエーテル3部、ヒドラジン(10%水溶液)3部を、アセトン800部に混合することで、触媒溶液(酢酸パラジウム触媒)を得た。
【0112】
次いで、得られたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体のアセトン溶液に、上記にて調製した触媒溶液を、「Pd金属/アクリロニトリル−ブタジエン共重合体」の比で250重量ppmとなる量にて添加し、これを攪拌機付オートクレーブに投入し、窒素ガスを10分間流すことで溶存酸素を除去した。次いで、系内を2回水素ガスで置換後、5MPaの水素を加圧し、内容物を50℃に加温して6時間攪拌することで、水素化反応を行った。
【0113】
次いで、水素化反応により得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液のうち一部を採取し、これを10倍量の水中に投入して、重合体を析出させ、得られた重合体を真空乾燥機で24時間乾燥することで、固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を得た。得られた固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体について、原子吸光測定により、共重合体中のパラジウム量を測定したところ、パラジウム量は250重量ppmであった。また、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のヨウ素価は、7.4であった。さらに、得られた濾液のうち一部を採取し、上述した方法により白金族元素粒子の粒子径の評価を行ったところ、粒子径のピークは1nm超、90nm以下の範囲であった。
【0114】
製造例3
市販の硼珪酸塩ガラス製のガラス繊維膜(A−1)(商品名「ADVANTEC GA-100」(細孔径1.0μm))0.1部を、過酸化水素8.1部を蒸留水19.0部で希釈した水溶液中で、60℃の条件で30分間浸漬し、振とう機を用いて、振とう攪拌することで、過酸化水素処理ガラス繊維膜を得た。その後、上記水溶液から取り出した過酸化水素処理ガラス繊維膜を、蒸留水で十分に洗浄した後、シランカップリング剤としての3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.2部を蒸留水48.0部で希釈した溶液中にて、振とう機を用いて、80℃で2時間振とう攪拌することで、シランカップリング処理を行った。次いで、シランカップリング処理を行った過酸化水素処理ガラス繊維膜を、メタノールおよび蒸留水にて十分に洗浄した後、120℃で2時間乾燥させ、シランカップリング剤を定着させることで、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)を得た。その後、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)に対して、X線光電子分光分析(型番「PHI5000 VersaProbe II」、Ulvac−Phi社製)にて通常の測定条件でワイドスキャンおよびナロースキャンを行った。なお、X線光電子分光分析による測定は、上述した過酸化水素を用いた処理およびシランカップリング処理を行う前のガラス繊維膜(A−1)に対しても同様に行った。その結果、ガラス繊維膜(A−1)における各元素の含有割合は、炭素(C)5.2原子%、窒素(N)0原子%、酸素(O)64.5原子%、ケイ素(Si)24.9原子%であった。一方、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)における各元素の含有割合は、炭素(C)12.2原子%、窒素(N)2.1原子%、酸素(O)57.4原子%、ケイ素(Si)25.5原子%であった。この結果から、ガラス繊維膜(A−1)からは検知されなかった窒素(N)が、シランカップリング処理を行った後のアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)からは検知され、このことから、シランカップリング剤によって、ガラス繊維膜(A−1)にアミノ基が導入されたことが確認された。
【0115】
製造例4
ガラス繊維膜(A−1)0.1部に代えて、硼珪酸塩ガラス製のガラス繊維膜(A−2)(商品名「ADVANTEC GB-100R」(細孔径0.6μm))0.1部を使用した以外は、製造例3と同様にして、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−2)を得て、同様に測定を行った。その結果、ガラス繊維膜(A−2)における各元素の含有割合は、炭素(C)5.1原子%、窒素(N)0原子%、酸素(O)64.6原子%、ケイ素(Si)25.3原子%であった。一方、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−2)における各元素の含有割合は、炭素(C)12.3原子%、窒素(N)2.3原子%、酸素(O)57.6原子%、ケイ素(Si)25.4原子%であった。この結果から、ガラス繊維膜(A−2)からは検知されなかった窒素(N)が、シランカップリング処理を行った後のアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−2)からは検知され、このことから、シランカップリング剤によって、ガラス繊維膜(A−2)にアミノ基が導入されたことが確認された。
【0116】
製造例5
ガラス繊維膜(A−1)0.1部に代えて、硼珪酸塩ガラス製のガラス繊維膜(A−3)(商品名「ADVANTEC GF−75」(細孔径0.3μm))0.1部を使用した以外は、製造例3と同様にして、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)を得て、同様に測定を行った。その結果、ガラス繊維膜(A−3)における各元素の含有割合は、炭素(C)5.2原子%、窒素(N)0原子%、酸素(O)64.9原子%、ケイ素(Si)25.0原子%であった。一方、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)における各元素の含有割合は、炭素(C)12.1原子%、窒素(N)2.5原子%、酸素(O)57.6原子%、ケイ素(Si)25.4原子%であった。この結果から、ガラス繊維膜(A−3)からは検知されなかった窒素(N)が、シランカップリング処理を行った後のアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)からは検知され、このことから、シランカップリング剤によって、ガラス繊維膜(A−3)にアミノ基が導入されたことが確認された。
【0117】
製造例6
シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.2部の代わりに、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン0.2部を使用した以外は、製造例3と同様にして、過酸化水素処理ガラス繊維膜にシランカップリング剤を定着させることで、メルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−4)を得て、同様に測定を行った。その結果、ガラス繊維膜(A−1)における各元素の含有割合は、炭素(C)5.2原子%、硫黄(S)0原子%、酸素(O)64.5原子%、ケイ素(Si)24.9原子%であった。一方、メルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−4)における各元素の含有割合は、炭素(C)14.1原子%、硫黄(S)1.7原子%、酸素(O)58.3原子%、ケイ素(Si)25.9原子%であった。この結果から、ガラス繊維膜(A−1)からは検知されなかった硫黄(S)が、シランカップリング処理を行った後のメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−4)からは検知され、このことから、シランカップリング剤によって、ガラス繊維膜(A−1)にチオール基が導入されたことが確認された。
【0118】
製造例7
ガラス繊維膜(A−1)0.1部に代えて、ガラス繊維膜(A−2)0.1部を使用した以外は、製造例6と同様にして、メルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−5)を得て、同様に測定を行った。その結果、ガラス繊維膜(A−2)における各元素の含有割合は、炭素(C)5.1原子%、硫黄(S)0原子%、酸素(O)64.6原子%、ケイ素(Si)25.3原子%であった。一方、メルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−5)における各元素の含有割合は、炭素(C)14.2原子%、硫黄(S)2.0原子%、酸素(O)58.0原子%、ケイ素(Si)26.0原子%であった。この結果から、ガラス繊維膜(A−2)からは検知されなかった硫黄(S)が、シランカップリング処理を行った後のメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−5)からは検知され、このことから、シランカップリング剤によって、ガラス繊維膜(A−2)にチオール基が導入されたことが確認された。
【0119】
製造例8
ガラス繊維膜(A−1)0.1部に代えて、ガラス繊維膜(A−3)0.1部を使用した以外は、製造例6と同様にして、メルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)を得て、同様に測定を行った。その結果、ガラス繊維膜(A−3)における各元素の含有割合は、炭素(C)5.2原子%、硫黄(S)0原子%、酸素(O)64.9原子%、ケイ素(Si)25.0原子%であった。一方、メルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)における各元素の含有割合は、炭素(C)14.2原子%、硫黄(S)2.1原子%、酸素(O)57.7原子%、ケイ素(Si)25.6原子%であった。この結果から、ガラス繊維膜(A−3)からは検知されなかった硫黄(S)が、シランカップリング処理を行った後のメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)からは検知され、このことから、シランカップリング剤によって、ガラス繊維膜(A−3)にチオール基が導入されたことが確認された。
【0120】
実施例1
内径25mm、高さ130mmのクリアシリンジ(商品名「クリアシリンジ PSY−Eシリーズ」、武蔵エンジニアリング社製)、および内径25mmのクリアシリンジ用のフィルターホルダー(商品名「スウィネクスフィルターホルダー」、AS ONE社製)を準備し、このフィルターホルダーに、上述した製造例3で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)を3枚を重ねて挟んだ後、フィルターホルダーを上記クリアシリンジに接続することで、パラジウム回収装置を作製した。次いで、アダプターチューブ(商品名「アダプターチューブAT−Eシリーズ」、武蔵エンジニアリング社製)を準備し、このアダプターチューブを上記クリアシリンジに接続することで、窒素ガスによる加圧送液(加圧濾過)を実施できるようにした。
【0121】
そして、製造例1で得られた濾過後の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液(水素化反応にシリカ担持型パラジウム触媒を用いて得られた溶液)を一部採取し、これを水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の濃度が5重量%になるように、アセトンを添加して濃度調整を行った後、上述したパラジウム回収装置中を用いて、クリアシリンジ内の圧力が1.0(kg/cm
2)となるように窒素ガスを流しながら加圧濾過を行ったところ、空間速度(SV)は564.8(1/hr)であった。その後、パラジウム回収装置によって加圧濾過して得られた溶液を、10倍量の水中に投入することで、固形分を析出させ、得られた固形分を真空乾燥機で24時間乾燥することで、固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を得た。得られた固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体について、原子吸光分析により、含有するパラジウム量を測定し、下記式にしたがって、パラジウムの回収率を算出した。結果を表1に示す。
パラジウムの回収率(%)=((製造例1で得られた共重合体中のパラジウム量−加圧濾過後に得られた共重合体中のパラジウム量)/製造例1で得られた共重合体中のパラジウム量)×100
ここで、上記式により得られるパラジウムの回収率(固形状の共重合体中のパラジウム量の測定結果に基づいて得られるパラジウムの回収率)の値が高い場合には、上記加圧濾過によって、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液から、良好にパラジウムが回収されたことを示す。すなわち、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液中におけるパラジウム量がより多い場合には、この溶液から得られる固形状の共重合体には、より多くのパラジウムが含まれることとなる。そのため、上記式のように、溶液を加圧濾過することなく得られた固形状の共重合体中に含まれるパラジウム量と、溶液を加圧濾過した後に得られた固形状の共重合体に含まれるパラジウム量とに基づいて算出されるパラジウムの回収率は、加圧濾過によって溶液から回収されるパラジウムの回収率を示す指標とすることができる。
【0122】
実施例2〜5
上述したパラジウム回収装置で使用するガラス繊維膜として、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)を3枚重ねたものに代えて、それぞれ、製造例4で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−2)を3枚重ねたもの(実施例2)、製造例5で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)を1枚用いたもの(実施例3)、製造例5で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)を3枚重ねたもの(実施例4)、製造例5で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)を9枚重ねたもの(実施例5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、パラジウム回収装置で加圧濾過の処理を行い、同様に測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例2〜5においては、加圧濾過を、パラジウム回収装置内のクリアシリンジ内の圧力が1.0(kg/cm
2)となるように窒素ガスを流しながら行った際における空間速度(SV)は、それぞれ、表1に示すものとなった。
【0123】
実施例6
製造例1で得られた濾過後の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液に代えて、製造例2で得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液(水素化反応に酢酸パラジウム触媒を用いて得られた溶液)を使用した以外は、実施例1と同様にして、パラジウム回収装置で加圧濾過の処理を行い、同様に測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例6においては、加圧濾過を、パラジウム回収装置内のクリアシリンジ内の圧力が1.0(kg/cm
2)となるように窒素ガスを流しながら行った際における空間速度(SV)は、表1に示すものとなった。
【0124】
実施例7〜10
上述したパラジウム回収装置で使用するガラス繊維膜として、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)を3枚重ねたものに代えて、それぞれ、製造例4で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−2)を3枚重ねたもの(実施例7)、製造例5で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)を1枚用いたもの(実施例8)、製造例5で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)を3枚重ねたもの(実施例9)、製造例5で得られたアミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−3)を9枚重ねたもの(実施例10)を使用した以外は、実施例6と同様にして、パラジウム回収装置で加圧濾過の処理を行い、同様に測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例7〜10においては、加圧濾過を、パラジウム回収装置内のクリアシリンジ内の圧力が1.0(kg/cm
2)となるように窒素ガスを流しながら行った際における空間速度(SV)は、それぞれ、表1に示すものとなった。
【0125】
実施例11〜15
上述したパラジウム回収装置で使用するガラス繊維膜として、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)を3枚重ねたものに代えて、それぞれ、製造例6で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−4)を3枚重ねたもの(実施例11)、製造例7で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−5)を3枚重ねたもの(実施例12)、製造例8で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)を1枚用いたもの(実施例13)、製造例8で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)を3枚重ねたもの(実施例14)、製造例8で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)を9枚重ねたもの(実施例15)を使用した以外は、実施例1と同様にして、パラジウム回収装置で加圧濾過の処理を行い、同様に測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例11〜15においては、加圧濾過を、パラジウム回収装置内のクリアシリンジ内の圧力が1.0(kg/cm
2)となるように窒素ガスを流しながら行った際における空間速度(SV)は、それぞれ、表1に示すものとなった。
【0126】
実施例16〜20
上述したパラジウム回収装置で使用するガラス繊維膜として、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)を3枚重ねたものに代えて、それぞれ、製造例6で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−4)を3枚重ねたもの(実施例16)、製造例7で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−5)を3枚重ねたもの(実施例17)、製造例8で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)を1枚用いたもの(実施例18)、製造例8で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)を3枚重ねたもの(実施例19)、製造例8で得られたメルカプトプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−6)を9枚重ねたもの(実施例20)を使用した以外は、実施例6と同様にして、パラジウム回収装置で加圧濾過の処理を行い、同様に測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例16〜20においては、加圧濾過を、パラジウム回収装置内のクリアシリンジ内の圧力が1.0(kg/cm
2)となるように窒素ガスを流しながら行った際における空間速度(SV)は、それぞれ、表1に示すものとなった。
【0127】
比較例1〜3
上述したパラジウム回収装置で使用するガラス繊維膜として、アミノプロピル基修飾ガラス繊維膜(C−1)を3枚重ねたものに代えて、それぞれ、上述した過酸化水素を用いた処理およびシランカップリング処理を行う前のガラス繊維膜である、ガラス繊維膜(A−1)を3枚重ねたもの(比較例1)、ガラス繊維膜(A−2)を3枚重ねたもの(比較例2)、ガラス繊維膜(A−3)を3枚重ねたもの(比較例3)を使用した以外は、実施例6と同様にして、パラジウム回収装置で加圧濾過の処理を行い、同様に測定を行った。結果を表1に示す。なお、比較例1〜3においては、加圧濾過を、パラジウム回収装置内のクリアシリンジ内の圧力が1.0(kg/cm
2)となるように窒素ガスを流しながら行った際における空間速度(SV)は、それぞれ、表1に示すものとなった。
【0128】
【表1】
【0129】
表1に示すように、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有する繊維膜を用いた場合には、パラジウムの回収率が高く、パラジウムを良好に回収できることが確認できる(実施例1〜20)。
一方、アミノ基およびチオール基のいずれも導入されていない繊維膜を使用した場合には、パラジウムの回収率が低く、パラジウムをほとんど回収できない結果となった(比較例1〜3)。
【0130】
実施例21
製造例1で得られた濾過後の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を一部採取し、これをバイアルに移し、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の濃度が5重量%となるように、アセトンを添加して濃度調整を行った後、水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体100部に対して、アミノプロピル基修飾シリカ(商品名「QuadraSil AP」、SIGMA−ALDRICH社製、表面にアミノプロピル基が導入されてなるシリカ、平均粒子径54μm)100部を添加した。次いで、振とう器(商品名「RECIPRO SHAKER SR−1」、タイテック社製)を使用して、25℃、120rpmの条件にて、24時間攪拌を行った後、濾過を行うことにより、アミノプロピル基修飾シリカを回収した。
【0131】
そして、アミノプロピル基修飾シリカを回収した後の濾液を10倍量の水中に投入して、重合体を析出させ、得られた重合体を真空乾燥機で24時間乾燥することで、固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を得た。得られた固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体について、原子吸光測定により、共重合体中のパラジウム量を測定したところ、パラジウム量は53.9重量ppmであり、パラジウムの回収率は62.8%であった。結果を表2に示す。なお、パラジウムの回収率は「パラジウムの回収率(%)=(アミノプロピル基修飾シリカによる回収処理をする前のパラジウムの量−アミノプロピル基修飾シリカによる回収処理をした後のパラジウムの量)/アミノプロピル基修飾シリカによる回収処理をする前のパラジウムの量×100」に従って算出した(後述する実施例22〜24、比較例4〜6も同様。)。
【0132】
実施例22
アミノプロピル基修飾シリカの添加量を100部から300部に変更した以外は、実施例21と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は17.4重量ppmであり、パラジウムの回収率は88.0%であった。結果を表2に示す。
【0133】
実施例23
アミノプロピル基修飾シリカ100部の代わりに、メルカプトプロピル基修飾シリカ(商品名「QuadraSil MP」、SIGMA−ALDRICH社製、表面にメルカプトプロピル基が導入されてなるシリカ、平均粒子径54μm)100部を使用した以外は、実施例21と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は90.5重量ppmであり、パラジウムの回収率は37.6%であった。結果を表2に示す。
【0134】
実施例24
メルカプトプロピル基修飾シリカの添加量を100部から300部に変更した以外は、実施例23と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は41.8重量ppmであり、パラジウムの回収率は71.2%であった。結果を表2に示す。
【0135】
比較例4
アミノプロピル基修飾シリカ100部の代わりに、メチルチオウレア基修飾シリカ(商品名「QuadraSil MTU」、SIGMA−ALDRICH社製、表面にメチルチオウレア基を含む基が導入されてなるシリカ、平均粒子径54μm)100部を使用した以外は、実施例21と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は134.8重量ppmであり、パラジウムの回収率は7.0%であった。結果を表2に示す。
【0136】
比較例5
アミノプロピル基修飾シリカ100部の代わりに、テトラアセテート構造修飾シリカ(商品名「QuadraSil TAA」、SIGMA−ALDRICH社製、表面にテトラアセテート構造を有する基が導入されてなるシリカ、平均粒子径54μm)100部を使用した以外は、実施例21と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は145.0重量ppmであり、パラジウムの回収率は0%であった(パラジウムを実質的に全く回収できなかった)。結果を表2に示す。
【0137】
比較例6
アミノプロピル基修飾シリカ100部の代わりに、表面にチオール基を有するイオン交換樹脂(商品名「Smopex FG」、ジョンソン・マッセイ社製)100部を使用した以外は、実施例21と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は136.3重量ppmであり、パラジウムの回収率は6.0%であった。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
実施例21〜24、比較例4〜6の評価
表2に示すように、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを用いた場合には、パラジウムの回収率が高く、パラジウムを良好に回収できることが確認できる(実施例21〜24)。
一方、アミノ基またはチオール基以外の官能基を有するシリカや、チオール基を有するイオン交換樹脂を使用した場合には、パラジウムの回収率が低く、パラジウムをほとんど回収できない結果となった(比較例4〜6)。
【0140】
実施例25
内径18mm、高さ300mmのカラムを準備し、このカラム中に、アミノプロピル基修飾シリカ(商品名「QuadraSil AP」、SIGMA−ALDRICH社製、表面にアミノプロピル基が導入されてなるシリカ、平均粒子径54μm)7g(高さ80mmとなる量)を詰めることで、パラジウム回収用カラムを作製した。
【0141】
そして、製造例1で得られた濾過後の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を一部採取し、これを、上記にて作製したパラジウム回収用カラム中に、空間速度SV=1.7(1/hr)の条件にて通した後、パラジウム回収用カラムを通した後の溶液を10倍量の水中に投入して、重合体を析出させ、得られた重合体を真空乾燥機で24時間乾燥することで、固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体を得た。得られた固形状の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体について、原子吸光測定により、共重合体中のパラジウム量を測定したところ、パラジウム量は2.0重量ppmであり、パラジウムの回収率は98.6%であった。結果を表3に示す。なお、パラジウムの回収率は「パラジウムの回収率(%)=(パラジウム回収用カラムを通す前のパラジウムの量−パラジウム回収用カラムを通した後のパラジウムの量)/パラジウム回収用カラムを通す前のパラジウムの量×100」に従って算出した(後述する実施例26〜36も同様。)。
【0142】
実施例26〜28
実施例25と同様にして作製したパラジウム回収用カラムを使用し、かつ、製造例1で得られた濾過後の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を、パラジウム回収用カラム中に通す際の空間速度SVを、2.1(1/hr)、2.7(1/hr)、3.1(1/hr)にそれぞれ変更した以外は、実施例25と同様の操作を行った。得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量およびパラジウムの回収率は表3に示す通りであった。
【0143】
実施例29
実施例25と同様にして作製したパラジウム回収用カラムを使用し、かつ、製造例1で得られた濾過後の水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液の代わりに、製造例2で得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を使用するとともに、パラジウム回収用カラム中に通す際の空間速度SVを、1.2(1/hr)に変更した以外は、実施例25と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は7.2重量ppmであり、パラジウムの回収率は97.1%であった。結果を表3に示す。
【0144】
実施例30〜32
実施例25と同様にして作製したパラジウム回収用カラムを使用し、かつ、製造例2で得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を、パラジウム回収用カラム中に通す際の空間速度SVを、1.7(1/hr)、2.1(1/hr)、2.4(1/hr)にそれぞれ変更した以外は、実施例29と同様の操作を行った。得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量およびパラジウムの回収率は表3に示す通りであった。
【0145】
実施例33
内径18mm、高さ300mmのカラムを準備し、このカラム中に、メルカプトプロピル基修飾シリカ(商品名「QuadraSil MP」、SIGMA−ALDRICH社製、表面にメルカプトプロピル基が導入されてなるシリカ、平均粒子径54μm)7g(高さ80mmとなる量)を詰めることで、パラジウム回収用カラムを作製した。
【0146】
そして、上記にて作製したパラジウム回収用カラムを使用したこと、および、製造例2で得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を、パラジウム回収用カラム中に通す際の空間速度SVを、0.8(1/hr)に変更したこと以外は、実施例29と同様の操作を行ったところ、得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量は21.0重量ppmであり、パラジウムの回収率は91.6%であった。結果を表3に示す。
【0147】
実施例34〜36
実施例13と同様にして作製したパラジウム回収用カラムを使用し、かつ、製造例2で得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体の溶液を、パラジウム回収用カラム中に通す際の空間速度SVを、1.2(1/hr)、1.6(1/hr)、1.7(1/hr)にそれぞれ変更した以外は、実施例13と同様の操作を行った。得られた水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体中のパラジウム量およびパラジウムの回収率は表3に示す通りであった。
【0148】
【表3】
【0149】
実施例25〜36の評価
表3に示すように、アミノ基またはチオール基を含有する基を表面に有するシリカを用いた場合には、カラムを使用した方法を採用した場合においても、パラジウムの回収率が高く、パラジウムを良好に回収できることが確認できる(実施例25〜36)。