特許第6885346号(P6885346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885346
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】紫外線吸収性ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/08 20060101AFI20210603BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20210603BHJP
   C03C 3/078 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C03C4/08
   C03C3/087
   C03C3/078
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-562877(P2017-562877)
(86)(22)【出願日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2017001705
(87)【国際公開番号】WO2017126595
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2019年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-8693(P2016-8693)
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-88822(P2016-88822)
(32)【優先日】2016年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100121393
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】赤田 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 創史
【審査官】 有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−508338(JP,A)
【文献】 特開2000−247679(JP,A)
【文献】 特開平10−114540(JP,A)
【文献】 国際公開第97/017303(WO,A1)
【文献】 特開平09−315835(JP,A)
【文献】 特表平09−502420(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/088026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%表示で、
SiO 66〜75%、
NaO 10〜20%、
CaO 5〜15%、
MgO 0〜6%、
Al 0〜5%、
O 0〜5%、
Fe 1.61〜2.55%、
FeO 0.36〜1%、
TiO 0.8〜3.2%、
CoO 0.014〜0.04%、
Se 0.005%以下、
Cr 0.08%以下、
NiO 0.2%以下、
を含有し、
Feに換算した全鉄の含有量は、酸化物基準の質量%表示で2.68〜3.0%であり、
レドックス([Feに換算した二価鉄(Fe2+)]/[Feに換算した二価鉄(Fe2+)とFeに換算した三価鉄(Fe3+)の合計])が15〜40%であり、
板厚2.8mmでの、ISO9050:2003で規定された紫外線透過率(TUV)が2%以下、
板厚2.8mmでの標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が19.8%以上30%以下であり、
板厚2.8mmでの、JIS R 3106:1998で規定されたエネルギー透過率(TE)が30%以下であり、
ISO9050:1990およびJIS Z8726:1990で規定された演色評価数の比R14/R9が1.8以上であり、かつ、R14/R1が1.05以上である、紫外線吸収性ガラス。
【請求項2】
板厚2.8mmでの、ISO13837:2008 convention Aで規定された紫外線透過率(TUV400)が5%以下である、請求項1に記載の紫外線吸収性ガラス。
【請求項3】
板厚2.8mmでの、ISO9050:2003で規定された前記紫外線透過率(TUV)が1%以下である、請求項1または2に記載の紫外線吸収性ガラス。
【請求項4】
板厚2.8mmでの、標準A光源に基づく前記可視光透過率(TVA)が19.8%以上28%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の紫外線吸収性ガラス。
【請求項5】
−2.73[Fe]−5.19[FeO]−0.85[TiO]+9.94[NiO]+28.48[Cr]+231.19[CoO]−4169.28[Se]+913.24[TiO][Se]−1.71[Fe][TiO]+100.71をA、
24.88[Fe]−130.39[FeO]+21.54[TiO]−93.79[NiO]−782.99[Cr]−1402.05[CoO]+29997.75[Se]−4613.21[TiO][Se]−5.01[Fe][TiO]+60.53をB、
6.07[Fe]−37.46[FeO]+2.55[TiO]−4.27[NiO]−183.6[Cr]−433.37[CoO]+6265.9[Se]−206.26[TiO][Se]−0.65[Fe][TiO]+91.92をCとしたとき、
A/Bが1.8以上であり、かつ、A/Cが1.05以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の紫外線吸収性ガラス。ここで、角括弧で囲まれた成分の表示は、紫外線吸収性ガラスに含まれるその成分の含有量(酸化物基準の質量%)を表す。
【請求項6】
板厚2.8mmでの、JIS Z 8701:1999で規定された主波長(λD)が500nm以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の紫外線吸収性ガラス。
【請求項7】
TiOの含有量が、酸化物基準の質量%表示で0.85〜3.2%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の紫外線吸収性ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用(特に、自動車用)濃グレー色系ガラスとして好適な紫外線吸収性ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ガラスのリアサイドガラスおよびリアガラスとして、可視光線透過率を大幅に低減させた濃いグレー色のガラス(いわゆる、濃色グレーガラス若しくはプライバシーガラスという)が実用化されている。このプライバシーガラスは、紫外領域から赤外領域までの広い波長域の太陽光線遮蔽性能が高いことによる室内の快適性や空調負荷低減、高級感を与える色調の選択が可能、デザイン的に優れた意匠性、車内のプライバシー保護、等の面で優れている。
【0003】
近年、紫外線対策についての関心が高まっている。これに対応するため、さらに紫外線透過率(TUV)が低いプライバシーガラスが求められている。特許文献1には、板厚3.5mmにおける紫外線透過率(TUV)が2%以下ときわめて低い、車両用プライバシーガラスとして好適な紫外線吸収性ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/088026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両用プライバシーガラスでは、きわめて低い紫外線透過率を達成し、かつ、ガラスを通して見る景色の色感の向上が求められる。例えば、ガラスを通して見る木々の緑の色感の向上などが求められうる。そのためには、緑色に関する演色性を向上させることが考えられる。
【0006】
本発明は、上記課題に対応するため、車両用濃グレー色系ガラスとして好適な、紫外線透過率がきわめて低く、かつ、緑色に関する演色性に優れた、紫外線吸収性ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明は、酸化物基準の質量%表示で、
SiO 66〜75%、
NaO 10〜20%、
CaO 5〜15%、
MgO 0〜6%、
Al 0〜5%、
O 0〜5%、
Fe0.7〜3.5%、
FeO 0.2〜1%、
TiO 0.1〜3.2%、
CoO 0.01〜0.04%、
Se 0.005%以下、
Cr 0.08%以下、
NiO 0.2%以下、
を含有し、レドックス([Feに換算した二価鉄(Fe2+)]/[Feに換算した二価鉄(Fe2+)とFeに換算した三価鉄(Fe3+)の合計])が15〜40%であり、
板厚2.8mmでの、ISO9050:2003で規定された紫外線透過率(TUV)が2%以下、
板厚2.8mmでの標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が10%以上30%以下であり、
板厚2.8mmでの、JIS R 3106:1998で規定されたエネルギー透過率(TE)が30%以下であり、
ISO9050:1990およびJIS Z8726:1990で規定された演色評価数の比R14/R9が1.8以上であり、R14/R1が1.05以上である、紫外線吸収性ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紫外線吸収性ガラスは、きわめて低い紫外線透過率を達成し、かつ、ガラスを通して見る木々の緑の色感の向上が可能である。本発明の紫外線吸収性ガラスは、特に自動車用のリアサイドガラス、リアガラス、並びにルーフガラスなどとして好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の紫外線吸収性ガラスは、酸化物基準の質量%表示で、
SiO 66〜75%、
NaO 10〜20%、
CaO 5〜15%、
MgO 0〜6%、
Al 0〜5%、
O 0〜5%、
Fe 0.7〜3.5%、
FeO 0.2〜1%、
TiO 0.1〜3.2%、
CoO 0.01〜0.04%、
Se 0.005%以下、
Cr 0.08%以下、
NiO 0.2%以下、
を含有し、レドックス([Feに換算した二価鉄(Fe2+)]/[Feに換算した二価鉄(Fe2+)とFeに換算した三価鉄(Fe3+)の合計])が15〜40%であり、
板厚2.8mmでの、ISO9050:2003で規定された紫外線透過率(TUV)が2%以下、
板厚2.8mmでの標準A光源に基づく可視光透過率(TVA)が10%以上30%以下であり、
板厚2.8mmでの、JIS R 3106:1998で規定されたエネルギー透過率(TE)が30%以下であり、
ISO9050:1990およびJIS Z8726:1990で規定された演色評価数の比R14/R9が1.8以上であり、かつ、R14/R1が1.05以上である、紫外線吸収性ガラスである。
【0010】
上記した数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
【0011】
本発明において、上記成分とする理由を以下に述べる。なお、特に明記がない限り、%は質量%を意味するものとする。
【0012】
SiOは、ネットワークを構築する成分であり、必須成分である。SiOは、含有量が66%以上であれば耐候性が良くなり、75%以下であれば粘度が高くなりすぎず、溶融に都合が良い。67%以上が好ましく、68%以上がより好ましい。また72%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
【0013】
NaOは、原料の溶融を促進する成分であり、必須成分である。NaOは、含有量が10%以上であれば原料の溶融を促進させ、20%以下であれば耐候性が悪くならない。11%以上であれば好ましく、12%以上であればより好ましい。また、18%以下であれば好ましく、16%以下であればより好ましい。
【0014】
CaOは、原料の溶融を促進し耐候性を改善する成分であり、必須成分である。CaOは、含有量が5%以上であれば原料の溶融を促進し耐候性を改善させ、15%以下であれば失透を抑制する。6%以上であれば好ましく、7%以上であればより好ましい。13%以下であれば好ましく、11%以下であればより好ましい。
【0015】
MgOは、原料の溶融を促進し耐候性を改善する成分であり、選択成分である。MgOは、含有量が6%以下であれば失透を抑制する。5%以下であれば好ましく、4.6%以下であればより好ましく、4%以下であればさらに好ましい。また、MgOを含有する場合、MgOの含有量は1%以上であれば好ましく、2%以上であればより好ましく、3%以上であればさらに好ましい。
【0016】
Alは、耐候性を改善する成分であり、選択成分である。Alは、含有量が5%以下であれば粘度が高くなりすぎず、溶融に都合が良い。4%以下であれば好ましく、3%以下であればより好ましい。Alを含有する場合、Alの含有量は0.5%以上であれば好ましく、1%以上であればより好ましい。
【0017】
Oは、原料の溶融を促進する成分であり、選択成分である。KOは、含有量が5%以下であれば揮発による溶融窯の耐火物へのダメージを抑制する。4%以下であれば好ましく、3%以下であればより好ましく、2%以下であればさらに好ましい。KOを含有する場合、KOの含有量は0.1%以上であれば好ましく、0.3%以上であればより好ましい。
【0018】
三価鉄の酸化物であるFeは紫外線を吸収する成分であり、必須成分である。また、ガラスに黄みを帯びさせる成分でもある。Feは、含有量が0.7%より低いと紫外線透過率が大きくなりすぎるため、0.7%以上とする。含有量が多すぎると可視光透過率が小さくなりすぎるため、3.5%以下とする。Fe含有量は、0.8%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましく、1.5%以上がさらに好ましい。また、Fe含有量は、3%以下が好ましく、2.6%以下がより好ましく、2.2%以下がさらに好ましい。
【0019】
二価鉄の酸化物であるFeOは、熱エネルギーを吸収する成分であり、必須成分である。FeOは、含有量が0.2%以上であれば充分に低い日射透過率が得られる。一方、含有量が1%以下であれば溶融時の熱効率が悪化せず、加熱源から遠い溶融炉の底部において素地が滞留することを抑制する。0.25%以上であれば好ましく、0.30%以上であればより好ましく、0.35%以上であればさらに好ましく、0.40%以上であれば特に好ましい。また、0.9%以下であれば好ましく、0.8%以下であればより好ましく、0.7%以下であればさらに好ましく、0.6%以下であれば特に好ましい。
【0020】
本発明の紫外線吸収性ガラスでは、可視光透過率と日射透過率のバランスの指標として、レドックス([Feに換算した二価鉄(Fe2+)]/[Feに換算した二価鉄(Fe2+)とFeに換算した三価鉄(Fe3+)の合計])を用いる。
【0021】
本発明の紫外線吸収性ガラスは、レドックスが15〜40%である。レドックスが15%以上であれば、日射透過率が大きくなりすぎず、40%以下であれば可視光透過率が小さくなりすぎない。本発明の紫外線吸収性ガラスは、レドックスが18%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、21%以上であることがさらに好ましい。また37%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、32%以下であることがさらに好ましく、29%以下であることが特に好ましい。
【0022】
TiOは、紫外線透過率(TUV)を小さくする成分であり、必須成分である。また、TiOは溶融時の素地の粘性を下げる効果があり、素地の滞留を起こり難くする働きがある。含有量が0.1%より低いと紫外線透過率が大きくなりすぎるため、0.1%以上とする。0.3%以上であることが好ましく、0.8%以上であることがより好ましく、0.85%以上であることがさらに好ましい。但し、含有量が多すぎると、可視光透過率が小さくなりすぎるため、3.2%以下とする。また、TiOの含有量が3.2%以下であれば、後述するR14/R9を大きくすることができる。3.0%以下であることが好ましく、2.9%以下であることがより好ましく、2.7%以下であることがさらに好ましく、2.5%以下であることが特に好ましく、2.2%以下が最も好ましい。
【0023】
CoOは、ガラスに青みを帯びさせる成分であり、必須成分である。CoOは、含有量が0.01%以上であればガラスの色調が黄色みを帯びるのを抑制し、0.04%以下であれば可視光透過率(TVA)が低くなり過ぎない。CoOの含有量は、0.012%以上が好ましく、より好ましくは0.014%以上であり、より好ましくは0.016%以上であり、より好ましくは0.017%以上であり、さらに好ましくは0.018%以上であり、特に好ましくは0.020%以上である。また、CoOの含有量は、0.038%以下が好ましく、より好ましくは0.036%以下であり、さらに好ましくは0.032%以下であり、特に好ましくは0.030%以下である。
【0024】
Seは、必須ではないが、ガラスの色調整のために含有できる。Seは、0.005%以下であれば黄色みを帯びるのを抑制する。また、赤みを帯びる影響が少ない。さらに、後述するR14/R1およびR14/R9を大きくすることができる。Seは、0.004%以下であればより好ましく、0.003%以下であればさらに好ましく、0.002%以下であれば特に好ましい。
【0025】
Crは、本発明の紫外線吸収性ガラスにおいて、可視光透過率を低減させる成分であり、また、ガラスに緑みを帯びさせる成分でもあり、任意成分である。Crは、含有量が0.08%以下であれば可視光透過率が小さくなりすぎることを抑制する。Crの含有量は、0.06%以下であればより好ましく、さらに好ましくは0.05%以下であり、特に好ましくは0.04%以下である。
【0026】
NiOは、本発明の紫外線吸収性ガラスにおいて、ガラスに茶色みを帯びさせることができる、任意成分である。0.2%以下であれば青みを帯びるのを抑制する。NiOの含有量は0.17%以下であることが好ましく、0.15%以下であることがより好ましく、0.10%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることがより好ましく、0.04%以下であることがさらに好ましく、0.03%以下であることが特に好ましく、0.02%以下であることが最も好ましい。
【0027】
本発明の紫外線吸収ガラスは、Feに換算した全鉄の含有量(すなわち、二価鉄の酸化物であるFeOおよび三価鉄の酸化物であるFeを含む全鉄の含有量。以下、t−Feともいう)は、1.5%以上が好ましい。1.5%以上であれば紫外線透過率(TUV380およびTUV400)を低くすることができる。また、主波長(λD)を長くすることができる。t−Feの含有量は1.8%以上がより好ましく、1.9%以上がより好ましく、1.95%以上がさらに好ましく、2.0%以上が特に好ましく、2.2%以上が最も好ましい。また、t−Feの含有量は、5.0%以下が好ましい。t−Feが5.0%以下であれば、TVAが低くなりすぎない。また、t−Feが5.0%以下であれば、溶融時の熱効率が悪化せず、加熱源から遠い溶融炉の底部において素地が滞留することを抑制するため、溶解性がよい。t−Feは4.0%以下がより好ましく、3.0%以下がさらに好ましく、2.5%以下が特に好ましい。
【0028】
なお、実生産においては、芒硝などの清澄剤が用いられるため、その痕跡として、通常0.05〜0.5%、好ましくは0.05〜0.4%程度のSOがガラス中に含有してよい。
【0029】
本発明の紫外線吸収性ガラスは、上記以外にB、Ba、Sr、Li、Zn、Pb、P、Zr、Bi、Snの各酸化物を含有してもよい。これらの酸化物の含有量は各々、0〜1質量%であってよい。これらの成分は、合量で好ましくは1%以下、より好ましくは0.7%以下、さらに好ましくは0.4%以下、特に好ましくは0.2%以下、最も好ましくは0.1%以下含んでもよい。
【0030】
また、Sb、Asの酸化物や、Cl、Fを含有してもよい。これらは溶融補助剤、清澄剤から意図的に混入し得る。あるいは原料やカレット中の不純物として含有し得る。これらの含有量はそれぞれ好ましくは0〜0.1質量%であってよく、より好ましくは0〜0.05質量%であってよく、さらに好ましくは0〜0.01質量%であってよい。
【0031】
また、Mn、Cu、Mo、Nd、Erの各酸化物を含有してもよい。これらの酸化物換算(MnO、CuO、MoO、Nd、Er)の含有量はそれぞれ好ましくは0〜0.1質量%であってよく、より好ましくは0〜0.05質量%であってよく、さらに好ましくは0〜0.01質量%であってよい。
【0032】
また、本発明の紫外線吸収性ガラス物品は、紫外線透過率(TUV)を小さくするため、CeOを含有してもよい。CeOを含有する場合、CeOの含有量は0〜1質量%であってよい。CeOは、好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下含んでもよい。CeOは、原料コストを安くするためには、実質的に含まないことが好ましい。ここで実質的に含まないとは不可避的不純物を除き含有させないことを意味し、本発明において具体的にはCeOの含有率がガラス中に100ppm以下であることを意味する。
【0033】
なお、V、W等の酸化物(V、WO)の紫外線吸収剤は実質的に含まないことが好ましい。ここで実質的に含まないとは不可避的不純物を除き含有させないことを意味し、具体的にはこれらの酸化物の含有率がガラス中にそれぞれ100ppm以下であることを意味する。
【0034】
本発明の紫外線吸収性ガラスは、上記組成のガラスであって、以下のような光学特性を有する。
【0035】
2.8mm厚さで、紫外線透過率(TUV)が2%以下であり、1%以下が好ましい。2.8mm厚さで、可視光透過率(TVA)が10%以上、30%以下である。12%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。また、28%以下が好ましく、25%以下がより好ましい。
【0036】
また、上記光学特性に加えて、エネルギー透過率(TE)は30%以下であり、28%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
また、上記光学特性に加えて、2.8mm厚さで、紫外線透過率(TUV400)が5%以下であることが好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。
【0038】
本明細書を通じて、エネルギー透過率(TE)はJIS R 3106:1998により、紫外線透過率(TUV)はISO9050:2003により、紫外線透過率(TUV400)はISO13837:2008 convention Aにより、それぞれ求めたものである。また、可視光透過率(TVA)は標準A光源に基づき算出したものである。
【0039】
また、本発明の紫外線吸収性ガラスは、上記光学特性に加えて、緑色に関する演色性を向上させるため、ISO9050:1990およびJIS Z8726:1990で規定された演色評価数の比R14/R9が1.8以上であり、かつ、R14/R1が1.05以上である。試験色14は木の葉の緑色を表しており、マンセル値では5GY4/4である。試験色1、試験色9はそれぞれISO9050:1990およびJIS Z8721:1993に規定された色相環において緑色の逆側の色である赤色系を表しており、マンセル値ではそれぞれ7.5R6/4、4.5R4/13である。
【0040】
R14/R9が1.8以上であり、かつ、R14/R1が1.05以上であれば、本発明において、緑の発色を向上させつつ赤の発色が抑えられ、緑色に関する演色性が向上し、ガラスを通して見える木々の緑の色感が向上でき、緑を素直に表現することが可能となる。R14/R9は2.2以上が好ましく、3以上がより好ましい。R14/R1は1.1以上が好ましく、1.15以上がより好ましい。SeおよびTiOの含有量を少なくすることにより、R14/R9が大きくなる。また、Seの含有量を少なくすることにより、R14/R1が大きくなる。
【0041】
また、本発明の紫外線吸収性ガラスは、下記式(1)で表される値をA、下記式(2)で表される値をBとしたとき、A/Bは1.8以上が好ましい。
【0042】
−2.73[Fe]−5.19[FeO]−0.85[TiO]+9.94[NiO]+28.48[Cr]+231.19[CoO]−4169.28[Se]+913.24[TiO][Se]−1.71[Fe][TiO]+100.71 式(1)
【0043】
24.88[Fe]−130.39[FeO]+21.54[TiO]−93.79[NiO]−782.99[Cr]−1402.05[CoO]+29997.75[Se]−4613.21[TiO][Se]−5.01[Fe][TiO]+60.53 式(2)
【0044】
ここで、角括弧で囲まれた成分の表示は、紫外線吸収性ガラスに含まれるその成分の含有量(酸化物基準の質量%)を表す(本明細書の以下の記載において同じ)。Aは紫外線吸収ガラスのR14の指標であり、BはR9の指標である。本願において、R14/R9を1.8以上とするためには、A/Bは1.8以上が好ましく、2.2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。
【0045】
また、本発明の紫外線吸収性ガラスは、下記式(3)で表される値をCとしたとき、A/Cは1.05以上が好ましい。
【0046】
6.07[Fe]−37.46[FeO]+2.55[TiO]−4.27[NiO]−183.6[Cr]−433.37[CoO]+6265.9[Se]−206.26[TiO][Se]−0.65[Fe][TiO]+91.92 式(3)
【0047】
Cは紫外線吸収ガラスのR1の指標である。本願において、R14/R1を1.05以上とするためには、A/Cは1.05以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.15以上がさらに好ましく、1.2以上が特に好ましく、1.25以上が最も好ましい。
【0048】
また、本発明の紫外線吸収性ガラスは、2.8mm厚さで、主波長λDが570nm以下であることが好ましい。ここで、主波長λDは、JIS Z 8701:1999で規定された透過光の主波長である。λDは560nm以下がより好ましく、550nm以下がさらに好ましく、540nm以下が特に好ましい。また、λDは488nm以上が好ましい。λDは500nm以上がより好ましく、510nm以上がさらに好ましく、520nm以上が特に好ましく、530nm以上が最も好ましい。
【0049】
また、本発明の紫外線吸収性ガラスは、2.8mm厚さで、刺激純度Peが25%以下であることが好ましい。ここで、刺激純度Peは、JIS Z 8701:1999で規定された刺激純度である。Peが25%以下であれば、より無彩色に近いグレー色となる。Peは、20%以下がより好ましく、15%以下がより好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、8%以下が特に好ましく、5%以下が最も好ましい。
【0050】
また、本発明の紫外線吸収性ガラスは、粘度が10ポアズとなる温度T2が1440℃以下であればガラスの製造がしやすいという効果がある。T2は1435℃以下が好ましく、1410℃以下がより好ましく、1400℃以下であれば特に好ましい。
【0051】
本発明の紫外線吸収性ガラスの製造法は、特に限定されないが、たとえば、次のようにして製造できる。調合した原料を連続的に溶融炉に供給し、約1500℃に加熱してガラス化する。次いで、この溶融ガラスを清澄した後、フロート法等により所定の厚さのガラス板に成形する。次いで、このガラス板を所定の形状に切断することにより、本発明の紫外線吸収性ガラスが製造される。その後、必要に応じて、切断したガラスを物理強化等の強化処理を施し、または合わせガラスに加工し、または複層ガラスに加工することができる。
【実施例】
【0052】
以下において例1〜は実施例、例4、5、7〜9は参考例、例6、10、11は比較例である。原料としてケイ砂、長石、苦灰石、ソーダ灰、芒硝、高炉スラグ、酸化第二鉄、酸化チタン、酸化コバルト、亜セレン酸ソーダ、酸化クロム、酸化ニッケルを用いて原料バッチを調合した。
【0053】
母成分として、SiO:66〜70、Al:1.8、CaO:8.4、MgO:4.6、NaO:13.3、KO:0.7およびSO:0.2(単位:酸化物基準の質量%)からなるソーダライムシリケートガラスを使用した。母成分と、光学成分として加えるFe、TiO、CoO、Se、CrおよびNiOの合計が100質量%になるようにSiO含有量を調整して目標組成とした。
【0054】
バッチを白金―ロジウム製のルツボに入れて、電気炉中で溶融(O濃度0.5%程度の雰囲気)し、カーボン板状に流し出した後、別の電気炉内で徐冷した。得られたガラスブロックを切断し、一部を研磨して蛍光X線分析装置(リガク社製走査型蛍光X線分析装置ZSX100e)により組成を分析した。
【0055】
別の一部の表面を研磨して鏡面状に、かつ厚み2.8mmになるように仕上げて、分光光度計により分光透過率を測定した。FeOについては波長1000nmの赤外線透過率から計算により求めた。Feについては蛍光X線分析による全酸化鉄含有量と上記FeO含有量を基に算出した。
【0056】
また、上述した手順にしたがって式(1)で表される値A、式(2)で表される値B、式(3)で表される値Cを求めた。
【0057】
また、分光透過率を基に可視光透過率(TVA)、エネルギー透過率(TE)、紫外線透過率(TUV)紫外線透過率(TUV400)、主波長(λD)、および刺激純度(Pe)を算出した。さらに、分光透過率を基にISO9050:1990およびJIS Z8726:1990に準拠した方法で、演色評価数計算用の試験色1、9、14についての演色評価数R1、R9、R14を求めた。
【0058】
以下、表1に得られたガラス中の吸収成分の含有量と光学特性を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、本発明のガラス組成に関する要件を全て満たす例1〜5、7〜9のガラスは、いずれも板厚2.8mmでの光学特性に関する要件、および、演色性に関する要件を満たしていた。TiO含有量が0.1%未満の例6のガラスは、板厚2.8mmでの光学特性のうち、紫外線透過率(TUV)を満たさなかった。また、TiO含有量が3.2%超の例10のガラスは、R14/R1およびR14/R9を満たさなかった。また、TiO含有量が3.2%超の例11のガラスは、R14/R9を満たさなかった。
【0061】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年1月20日付けで出願された日本特許出願(特願2016−008693)および2016年4月27日付けで出願された日本特許出願(特願2016−088822)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。