特許第6885420号(P6885420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885420塩化ビニル樹脂組成物、絶縁電線、ケーブル、絶縁電線の製造方法およびケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885420
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】塩化ビニル樹脂組成物、絶縁電線、ケーブル、絶縁電線の製造方法およびケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20210603BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210603BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20210603BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20210603BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 13/14 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 13/24 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08K3/22
   C08K5/09
   C08K5/3477
   C08K5/07
   H01B7/02 F
   H01B7/18 H
   H01B3/44 B
   H01B3/44 P
   H01B13/14 A
   H01B13/24 Z
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-89846(P2019-89846)
(22)【出願日】2019年5月10日
(65)【公開番号】特開2020-186286(P2020-186286A)
(43)【公開日】2020年11月19日
【審査請求日】2020年5月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 剛
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−014308(JP,A)
【文献】 特開2018−002781(JP,A)
【文献】 特開2016−196605(JP,A)
【文献】 特開2008−214480(JP,A)
【文献】 特開2005−179517(JP,A)
【文献】 特開2013−129734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
H01B 7/00− 7/02
H01B 13/02− 13/20
H01B 13/22− 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物であって、
前記K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンを含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、
前記ルチル型酸化チタンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、
前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物であって、
前記K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと、三酸化アンチモンとを含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり
記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塩化ビニル樹脂組成物において、
前記脂肪酸金属塩は、さらにステアリン酸カルシウムを含み、
前記ステアリン酸カルシウムに対する前記ステアリン酸亜鉛の質量比は、12以上13以下である、塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項4】
K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂と、K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物であって、
前記K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂及び前記K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと、三酸化アンチモンとを含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり
前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の塩化ビニル樹脂組成物において、
前記脂肪酸金属塩は、さらにステアリン酸カルシウムを含み、
前記ステアリン酸カルシウムに対する前記ステアリン酸亜鉛の質量比は、12以上13以下である、塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物により形成される絶縁層を備え、
前記絶縁層において、前記塩化ビニル樹脂組成物が架橋されている、絶縁電線。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩化ビニル樹脂組成物により形成されるシースを備え、
前記シースにおいて、前記塩化ビニル樹脂組成物が架橋されている、ケーブル。
【請求項8】
(a)K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、
(b)導体の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、絶縁層を形成する工程、
(c)前記絶縁層に電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、
を含み、
前記K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンを含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、
前記ルチル型酸化チタンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、
前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、絶縁電線の製造方法。
【請求項9】
(a)K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、
(b)導体の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、絶縁層を形成する工程、
(c)前記絶縁層に電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、
を含み、
前記K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと、三酸化アンチモンとを含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり
記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、絶縁電線の製造方法。
【請求項10】
(a)K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂と、K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、
(b)導体の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、絶縁層を形成する工程、
(c)前記絶縁層に電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、
を含み、
前記K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂及び前記K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと、三酸化アンチモンとを含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり
記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、絶縁電線の製造方法。
【請求項11】
(a)K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、
(b)導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、シースを形成する工程、
(c)前記シースに電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、
を含み、
前記K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンを含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、
前記ルチル型酸化チタンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、
前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、ケーブルの製造方法。
【請求項12】
(a)K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、
(b)導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、シースを形成する工程、
(c)前記シースに電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、
を含み、
前記K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと三酸化アンチモンとを含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり
記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、ケーブルの製造方法。
【請求項13】
(a)K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂と、K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂と、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、
(b)導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、シースを形成する工程、
(c)前記シースに電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、
を含み、
前記K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂及び前記K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂は、前記塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成し、
前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと三酸化アンチモンとを含み、
前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含み、
前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、
前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含み、
前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である、ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル樹脂組成物、絶縁電線、ケーブル、絶縁電線の製造方法およびケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線(絶縁電線)は、導体と、前記導体の周囲に設けられる被覆材としての絶縁層とを有している。また、ケーブルは、前記電線と、前記電線の周囲に設けられる被覆材としてのシース(外被層)とを備えている。前記シースは、前記絶縁層の周囲に設けられる。
【0003】
前記電線の絶縁層や前記ケーブルのシースのような被覆材は、ゴムや樹脂を主原料とした電気絶縁性材料からなる。前記電線の絶縁層は、ゴムや樹脂を主原料とした電気絶縁性材料からなる。このような電線は、用途に応じて必要な特性が異なる。例えば、自動車用の電線には、高い難燃性や引張特性、耐熱性などが要求される。特に、難燃性は、難燃性規格UL1581に規定される垂直難燃試験VW−1に合格することが要求される。
【0004】
このような電線の例として、特許文献1には、導体と、前記導体の周りに被覆された被覆層(絶縁層)とを備える絶縁電線において、前記被覆層を、金属水和物(金属水酸化物)を添加した塩化ビニル樹脂組成物により構成した絶縁電線が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−26427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、塩化ビニル樹脂組成物において、耐熱性および難燃性を向上させることを検討した。しかし、耐熱性および難燃性を向上させようとすると、電子線を照射して架橋された塩化ビニル樹脂組成物、当該塩化ビニル樹脂組成物を絶縁層とした絶縁電線、または、当該塩化ビニル樹脂組成物をシースとしたケーブルにおいて、いわゆる照射ヤケと呼ばれる変色が生じることを確認した。このような変色が生じると、絶縁層やシースの色相判別に苦慮するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、塩化ビニル樹脂組成物、ならびに、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いた絶縁電線およびケーブルにおいて、電子線照射による変色を防止でき、かつ、耐熱性および難燃性に優れた塩化ビニル樹脂組成物、ならびに、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いた絶縁電線およびケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
[1]塩化ビニル樹脂組成物は、ベースポリマと、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを含む。前記ベースポリマは、K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂を含み、前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンを含み、前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含む。前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上である。前記ルチル型酸化チタンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である。
【0010】
[2]塩化ビニル樹脂組成物は、ベースポリマと、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを含む。前記ベースポリマは、K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂を含み、前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと三酸化アンチモンとを含み、前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含む。前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上である。前記三酸化アンチモンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し3.5質量部未満であり、前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である。
【0011】
[3][2]記載の塩化ビニル樹脂組成物において、前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含む。
【0012】
[4][1]〜[3]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物において、前記脂肪酸金属塩は、さらにステアリン酸カルシウムを含み、前記ステアリン酸カルシウムに対する前記ステアリン酸亜鉛の質量比は、12以上13以下である。
【0013】
[5][1]〜[4]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物において、前記ベースポリマは、K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂と、K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂とを含む。
【0014】
[6]絶縁電線は、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物により形成される絶縁層を備え、前記絶縁層において、前記塩化ビニル樹脂組成物が架橋されている。
【0015】
[7]ケーブルは、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の塩化ビニル樹脂組成物により形成されるシースを備え、前記シースにおいて、前記塩化ビニル樹脂組成物が架橋されている。
【0016】
[8]絶縁電線の製造方法は、(a)ベースポリマと、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、(b)導体の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、絶縁層を形成する工程、(c)前記絶縁層に電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、を含む。前記ベースポリマは、K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂を含み、前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンを含み、前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含む。前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上である。前記ルチル型酸化チタンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である。
【0017】
[9]絶縁電線の製造方法は、(a)ベースポリマと、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、(b)導体の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、絶縁層を形成する工程、(c)前記絶縁層に電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、を含む。前記ベースポリマは、K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂を含み、前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと三酸化アンチモンとを含み、前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含む。前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上である。前記三酸化アンチモンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し3.5質量部未満であり、前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である。
【0018】
[10][9]記載の絶縁電線の製造方法において、前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含む。
【0019】
[11][8]〜[10]のいずれか1つに記載の絶縁電線の製造方法において、前記ベースポリマは、K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂と、K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂とを含む。
【0020】
[12]ケーブルの製造方法は、(a)ベースポリマと、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、(b)導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、シースを形成する工程、(c)前記シースに電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、を含む。前記ベースポリマは、K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂を含み、前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンを含み、前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含む。前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上である。前記ルチル型酸化チタンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上であり、前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である。
【0021】
[13]ケーブルの製造方法は、(a)ベースポリマと、水酸化アルミニウムと、ハイドロタルサイトと、脂肪酸金属塩と、シアヌル酸誘導体および/またはイソシアヌル酸誘導体と、ステアロイルベンゾイルメタンと、ジベンゾイルメタンおよび/またはジベンゾイルメタン金属塩と、隠蔽剤と、可塑剤とを混練し、塩化ビニル樹脂組成物を生成する工程、(b)導体と前記導体の周囲を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線の周囲を被覆するように、前記塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、シースを形成する工程、(c)前記シースに電子線を照射し、前記塩化ビニル樹脂組成物を架橋する工程、を含む。前記ベースポリマは、K値が75以上86以下の塩化ビニル樹脂を含み、前記隠蔽剤は、ルチル型酸化チタンと三酸化アンチモンとを含み、前記脂肪酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛を含む。前記ステアリン酸亜鉛と、前記シアヌル酸誘導体と、前記イソシアヌル酸誘導体と、前記ステアロイルベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタンと、前記ジベンゾイルメタン金属塩との総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し2質量部以上である。前記三酸化アンチモンの含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し3.5質量部未満であり、前記水酸化アルミニウムと前記ハイドロタルサイトと前記三酸化アンチモンとの総含有量が、前記ベースポリマ100質量部に対し12質量部以上16質量部以下である。
【0022】
[14][13]記載のケーブルの製造方法において、前記ベースポリマ100質量部に対し、前記ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、前記ベースポリマ100質量部に対し、前記三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含む。
【0023】
[15][12]〜[14]のいずれか1つに記載のケーブルの製造方法において、前記ベースポリマは、K値が71以上73以下の塩化ビニル樹脂と、K値が84以上86以下の塩化ビニル樹脂とを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電子線照射による変色を防止でき、かつ、耐熱性および難燃性に優れた塩化ビニル樹脂組成物、ならびに、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いた絶縁電線およびケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施の形態に係る絶縁電線の構造を示す横断面図である。
図2】一実施の形態に係るケーブルの構造を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(検討事項)
まず、実施の形態を説明する前に、本発明者が検討した事項について説明する。
【0027】
本発明者は、塩化ビニル樹脂組成物において、耐熱性および難燃性を向上させることを検討した(以下、検討例の塩化ビニル樹脂組成物と称する)。
【0028】
塩化ビニル樹脂は、ハロゲンを含むため難燃性に優れているが、それ自体は硬質であるため、絶縁電線の絶縁層またはケーブルのシースに使用するためには、塩化ビニル樹脂に比較的多量の可塑剤を添加して、塩化ビニル樹脂組成物として使用する必要がある。一方で、この塩化ビニル樹脂組成物は、可塑剤の添加により難燃性が低下してしまうため、塩化ビニル樹脂組成物に、難燃剤として金属水酸化物である水酸化アルミニウムなどを添加することを検討した。
【0029】
しかし、難燃性および耐熱性を向上させようとすると、電子線を照射して架橋された塩化ビニル樹脂組成物、当該塩化ビニル樹脂組成物を絶縁層とした絶縁電線、または、当該塩化ビニル樹脂組成物をシースとしたケーブルにおいて、いわゆる照射ヤケと呼ばれる変色が生じることを確認した。
【0030】
この理由として、主に次の2つが考えられる。1つ目は、塩基である水酸化アルミニウムの存在下で塩化ビニル樹脂の脱塩化水素反応が促進され、アリル塩素(−CH=CH−CHCl−)を含むポリエン(以下、アリル塩素化合物と称する)が生成し、このアリル塩素化合物が発色することである。2つ目は、(2)塩化水素と水酸化アルミニウムとの中和による生成した塩化アルミニウムが、アリル塩素化合物とπ錯体を形成し、このπ錯体が発色することである。
【0031】
一般に、塩化ビニル樹脂は、製造・加工時や使用時においても熱や紫外線、酸素などにより塩化水素が脱離する分解反応が起きて変色するため、塩化ビニル樹脂の脱塩化水素反応によって発生した塩化水素の捕捉・中和、または、アリル塩素化合物の安定化のために、塩化ビニル樹脂組成物に安定剤を添加することが行われる。ただし、電子線のエネルギーが熱や紫外線などのエネルギーに比べて遥かに大きいことから、単なる安定剤の添加では電子線照射による変色を防止することは難しいと考えられてきた。仮に電子線照射による変色を防止できたとしても、この際に安定剤を消費してしまうため、耐熱性が低下するという懸念もあった。
【0032】
また、塩化ビニル樹脂に難燃性を向上させるために水酸化アルミニウムを多量に添加すると、耐熱性が低下することが知られており、そもそも難燃性と耐熱性とを両立すること自体が難しい。
【0033】
以上より、塩化ビニル樹脂組成物に難燃剤として水酸化アルミニウムを添加する場合において、その組成を工夫することにより、電子線照射による変色を防止でき、かつ、耐熱性および難燃性に優れた塩化ビニル樹脂組成物が望まれる。そして、当該塩化ビニル樹脂組成物を用いて、電子線照射による変色を防止でき、かつ、耐熱性および難燃性に優れた絶縁電線およびケーブルを提供することが望まれる。
【0034】
(実施の形態)
<塩化ビニル樹脂組成物の特徴および効果>
以下、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物について詳述する。本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、(A)塩化ビニル樹脂と、(B)水酸化アルミニウムと、(C)ハイドロタルサイトと、(D)脂肪酸金属塩と、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)と、(F)ステアロイルベンゾイルメタンと、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)と、(H)隠蔽剤と、(I)可塑剤とを含んでいる。ここで、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)とは、シアヌル酸誘導体単独での使用、イソシアヌル酸誘導体単独での使用、または、これら両方の併用のいずれかを意味している。同様に、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)とは、ジベンゾイルメタン単独での使用、ジベンゾイルメタン金属塩単独での使用、または、これら両方の併用のいずれかを意味している。
【0035】
また、本実施の形態に係る(A)塩化ビニル樹脂は、K値が75以上86以下のものを含んでいる。ここで、K値とは、JIS K7367−2またはISO 1628−2に規定される試験法により測定される、塩化ビニル樹脂の比粘度を示した値であり、重合度と相関がある。より具体的には、本実施の形態に係る(A)塩化ビニル樹脂は、(A2)K値が75以上78以下のもの、(A3)K値が79以上82以下のもの、または、(A4)K値が83以上86以下のもののいずれか1種類を単独で用いている。または、本実施の形態に係る(A)塩化ビニル樹脂は、(A1)K値が71以上74以下のもの、(A2)K値が75以上78以下のもの、(A3)K値が79以上82以下のもの、または、(A4)K値が83以上86以下のもののうちいずれか2種類を併用している。
【0036】
また、本実施の形態に係る(H)隠蔽剤には、(H1)ルチル型酸化チタンを単独で用いるか、または、(H1)ルチル型酸化チタンおよび(H2)三酸化アンチモンを併用する。
【0037】
なお、以下では、塩化ビニル樹脂組成物を構成する(A)塩化ビニル樹脂をベースポリマとして説明する。また、本実施の形態では、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)ハイドロタルサイトを便宜上、難燃剤と総称することがある。同様に、(D)脂肪酸金属塩、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)、(F)ステアロイルベンゾイルメタン、および、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)を便宜上、安定剤と総称することがある。なお、(H2)三酸化アンチモンは難燃剤としても作用するが、本実施の形態では、便宜上(H)隠蔽剤として分類し説明する。
【0038】
本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物にあっては、以上のような特徴を有することにより、電子線照射による変色を防止でき、かつ、耐熱性および難燃性を向上させることができる。以下、その理由について具体的に説明する。
【0039】
まず、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物にあっては、K値が75以上86以下の(A)塩化ビニル樹脂を含んでいる。このように、本実施の形態にあっては、比較的重合度が高く分子量の大きい塩化ビニル樹脂をベースポリマとして採用することにより、脱塩化水素反応が起きにくくなり、耐熱性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物にあっては、(B)水酸化アルミニウムと、(C)ハイドロタルサイトとを含有させている。こうすることで、難燃性を向上させることができる。ただし、前述したように、(B)水酸化アルミニウムを多量に加えると、耐熱性が低下する。そこで、難燃剤としても塩化水素捕捉剤としても作用する(C)ハイドロタルサイトを併用することで、耐熱性と難燃性とを両立させることができる。
【0041】
一方で、塩化ビニル樹脂組成物において、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)ハイドロタルサイトは、脱塩化水素反応を促進させるため、電子線照射による変色の原因となる。そこで、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物にあっては、安定剤として、(D)脂肪酸金属塩と、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)と、(F)ステアロイルベンゾイルメタンと、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)とを併用する。こうすることで、塩化ビニル樹脂組成物において、電子線照射による変色を防止することができると共に、耐熱性も向上させることができる。
【0042】
ただし、本発明者らの検討によれば、塩化ビニル樹脂組成物において、上記安定剤のみでは電子線照射による変色を完全に防ぐことができない場合があることを確認している。そのため、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物にあっては、さらに(H)隠蔽剤を添加することによって、電子線照射による変色を確実に防止することができる。
【0043】
以上より、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物にあっては、電子線照射による変色を防止でき、かつ、耐熱性および難燃性を向上させることができる。
【0044】
<塩化ビニル樹脂組成物の詳細な構成>
以下、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物に使用する原材料について、本発明の成立に必要な配合量なども含めて、より詳細に説明する。
【0045】
[ベースポリマ]
本実施の形態に係る(A)塩化ビニル樹脂は、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物のベースポリマを構成する。前述したように、K値は、塩化ビニル樹脂の比粘度を示した値であり、重合度と相関がある。具体的には、(A1)K値が71以上74以下の塩化ビニル樹脂の平均重合度は1300程度、(A2)K値が75以上78以下の塩化ビニル樹脂の平均重合度は1700程度、(A3)K値が79以上82以下の塩化ビニル樹脂の平均重合度は2000程度、(A4)K値が83以上86以下の塩化ビニル樹脂の平均重合度は2500程度である。
【0046】
塩化ビニル樹脂において、重合度が低くなると成形性は向上するが耐熱性が低下する。一方、重合度が高くなると耐熱性は向上するが、成形性が低下する。具体的には、塩化ビニル樹脂の重合度が高くなると分子量が大きくなるため、脱塩化水素反応が起こりにくくなり耐熱性が向上する。一方、塩化ビニル樹脂の重合度が高くなると分子量が大きくなるため、可塑剤との親和性が低下し、加工性が低下する。なお、塩化ビニル樹脂の重合度が高くなると、加工温度を高くする必要があり、結果として脱塩化水素反応を促進してしまうおそれもある。
【0047】
本実施の形態において、(A)塩化ビニル樹脂は、(A2)K値が75以上78以下のもの、(A3)K値が79以上82以下のもの、または、(A4)K値が83以上86以下のもののいずれか1種類を単独で用いている。本実施の形態においては、塩化ビニル樹脂のK値の範囲を75以上86以下(平均重合度1300以上2500以下)とすることで、耐熱性と成形性とを両立することができる。
【0048】
また、本実施の形態において、(A)塩化ビニル樹脂は、(A1)K値が71以上74以下のもの、(A2)K値が75以上78以下のもの、(A3)K値が79以上82以下のもの、または、(A4)K値が83以上86以下のもののうちいずれか2種類を併用している。このように、本実施の形態にあっては、K値(重合度)の異なる2種類の塩化ビニル樹脂を併用することで、耐熱性および成形性をさらに向上させることができる。
【0049】
また、ベースポリマに(A)塩化ビニル樹脂以外の樹脂成分である塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレンなどを含んでいてもよい。この場合、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物の耐熱性を低下させないようにするという観点から、ベースポリマ100質量部中の(A)塩化ビニル樹脂以外の樹脂成分の含有量は、5質量部以上20質量部未満であることが好ましい。
【0050】
[難燃剤]
本実施の形態に係る(B)水酸化アルミニウムは、難燃剤として作用する。具体的には、(B)水酸化アルミニウムは、200℃以上の温度になると吸熱反応である結晶水(水和水)の解離反応が起こるため、難燃性に寄与する。
【0051】
本実施の形態に係る(C)ハイドロタルサイトは、難燃剤および安定剤として作用する。具体的には、(C)ハイドロタルサイトは(B)水酸化アルミニウムと同様に分解時の吸熱反応による難燃性への寄与と、塩化水素捕捉能による照射変色防止性への寄与とを兼ね備えている。
【0052】
[安定剤]
本実施の形態に係る(D)脂肪酸金属塩は、金属石鹸ともよばれ、安定剤として作用する。具体的には、脂肪酸金属塩は、塩化水素捕捉能により照射変色防止性に寄与する。
【0053】
(D)脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、例えば、炭素数8以上22以下の飽和脂肪酸や炭素数8以上22以下の不飽和脂肪酸が挙げられるが、塩化ビニル樹脂との親和性の観点から炭素数17のステアリン酸が好ましい。
【0054】
本実施の形態において、(D)脂肪酸金属塩としては、塩化水素捕捉能が高いという観点から(D1)ステアリン酸亜鉛を含むことが好ましい。
【0055】
さらに、本実施の形態において、(D)脂肪酸金属塩としては、(D1)ステアリン酸亜鉛と、(D2)ステアリン酸カルシウムとを併用することがさらに好ましい。まず、(D1)ステアリン酸亜鉛が塩化水素を捕捉し、塩化亜鉛が生じるが、この塩化亜鉛は(A)塩化ビニル樹脂の脱塩化水素反応を促進するという欠点がある。そこで、(D2)ステアリン酸カルシウムを併用することにより、(D2)ステアリン酸カルシウムが塩化亜鉛と反応して捕捉するため、前記欠点を解消することができる。
【0056】
(D)脂肪酸金属塩は滑剤としても作用するため、(A)塩化ビニル樹脂との親和性は高いが、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)、(F)ステアロイルベンゾイルメタンおよび(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)は、(A)塩化ビニル樹脂との親和性が低いため、ベースポリマ100質量部に対する(D)脂肪酸金属塩の含有量は、(D)脂肪酸金属塩、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)、(F)ステアロイルベンゾイルメタンおよび(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)の総含有量に対して60%以上95%以下であることが好ましい。
【0057】
本実施の形態に係る(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)は、安定剤として作用する。具体的には、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)は、前述した(D1)ステアリン酸亜鉛の塩化水素捕捉によって生じる塩化亜鉛と無色のキレート化合物を生成し安定化させることで、塩化亜鉛による(A)塩化ビニル樹脂の脱塩化水素反応促進を防止することができる。
【0058】
(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)としては、イソシアヌル酸誘導体を用いることが好ましく、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル))を用いることがより好ましい。上記シアヌル酸誘導体又はイソシアヌル酸誘導体(例えばイソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル))の役割は、金属塩のキレート化による塩化ビニル樹脂からの脱塩化水素を抑制するためのものである。
【0059】
本実施の形態に係る(F)ステアロイルベンゾイルメタンは、安定剤として作用する。具体的には、金属塩(例えば塩化亜鉛)存在下でアリル塩素化合物を安定化させることにより、照射変色防止性に寄与する。
【0060】
本実施の形態に係る(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)は、安定剤として作用する。具体的には、(G)ジベンゾイルメタンは、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛)と反応すると、ジベンゾイルメタン金属塩(例えばジベンゾイルメタン亜鉛塩)が生成し、このジベンゾイルメタン金属塩がアリル塩素化合物を安定化させることにより、照射変色防止性に寄与する。
【0061】
なお、(G)ジベンゾイルメタンは、前記2段階の反応で作用する一方、(G)ジベンゾイルメタン金属塩を予め添加すれば、実質1段階の反応で安定剤として作用するため、本実施の形態にあっては、(G)ジベンゾイルメタン金属塩を添加することが好ましい。
【0062】
従来、(F)ステアロイルベンゾイルメタンが、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)に置き換わる安定剤として使用されてきたが、本実施の形態にあっては、(F)ステアロイルベンゾイルメタンと、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)とを併用することで、電子線照射による変色を効果的に防止できることを見出した。
【0063】
後述の実施例に示すように、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物は、(D)脂肪酸金属塩として(D1)ステアリン酸亜鉛を含み、ベースポリマ100質量部に対し、(D1)ステアリン酸亜鉛と、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)と、(F)ステアロイルベンゾイルメタンと、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)との総含有量が2質量部以上である。これらの安定剤の総含有量がベースポリマ100質量部に対して、2質量部未満であると照射変色防止性が低下する。なお、これらの安定剤の総含有量の上限は特に制限されないが、塩化ビニル樹脂組成物の機械特性を向上させるという観点からは、これらの安定剤の総含有量がベースポリマ100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。
【0064】
また、後述の実施例に示すように、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物において、(D)脂肪酸金属塩としてさらに(D2)ステアリン酸カルシウムを含むことが好ましく、(D2)ステアリン酸カルシウムに対する(D1)ステアリン酸亜鉛の質量比は、12以上13以下であることが好ましい。詳細は後述するが、(D1)ステアリン酸亜鉛による塩化水素捕捉能と、(D2)ステアリン酸カルシウムによる塩化亜鉛捕捉能とのバランスがとれ、照射変色防止性を向上させることができる。
【0065】
[隠蔽剤]
本実施の形態に係る(H)隠蔽剤として用いた(H1)ルチル型酸化チタンおよび(H2)三酸化アンチモンは、いずれも白色顔料として作用する。(H1)ルチル型酸化チタンは、触媒としての活性が低く熱安定性などに優れることから、酸化チタンの中でも顔料として好ましい。なお、(H2)三酸化アンチモンは、難燃剤としても作用するため、難燃性向上の観点からは、(H1)ルチル型酸化チタンと(H2)三酸化アンチモンとを併用することが好ましい。
【0066】
後述の実施例に示すように、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物において、(H)隠蔽剤に(H1)ルチル型酸化チタンを単独で用いた場合には、ベースポリマ100質量部に対し、(H1)ルチル型酸化チタンを2質量部以上含む。こうすることで、電子線照射による変色を防止することができる。そして、ベースポリマ100質量部に対し、(B)水酸化アルミニウムと(C)ハイドロタルサイトとの総含有量が12質量部以上16質量部以下である。難燃剤として作用する原材料の総和が、ベースポリマ100質量部に対して、12質量部未満であるとVW−1試験に合格する難燃性が得られず、16質量部以上であると電子線照射による変色が起こりやすくなり照射変色防止性が低下する。
【0067】
また、後述の実施例に示すように、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物において、(H)隠蔽剤に(H1)ルチル型酸化チタンと(H2)三酸化アンチモンとを併用した場合には、ベースポリマ100質量部に対し、(B)水酸化アルミニウムと(C)ハイドロタルサイトと(H2)三酸化アンチモンとの総含有量が12質量部以上16質量部以下であり、かつ、(H2)三酸化アンチモンの含有量が3.5質量部未満である。前述したように、難燃剤として作用する原材料の総和が、ベースポリマ100質量部に対して、12質量部未満であるとVW−1試験に合格する難燃性が得られず、16質量部以上であると電子線照射による変色が起こりやすくなり照射変色防止性が低下する。なお、(H2)三酸化アンチモンは難燃剤としても作用するため、(H)隠蔽剤に(H1)ルチル型酸化チタンと(H2)三酸化アンチモンとを併用した場合には、(B)水酸化アルミニウムと(C)ハイドロタルサイトとの総含有量が、ベースポリマ100質量部に対し11質量部以上であれば、難燃性を確保することができる。また、(H2)三酸化アンチモンの含有量が、ベースポリマ100質量部に対して、3.5質量部以上であると脱塩化水素反応を促進し、耐熱性が低下する。
【0068】
また、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物において、(H)隠蔽剤に(H1)ルチル型酸化チタンおよび(H2)三酸化アンチモンを併用した場合には、ベースポリマ100質量部に対し、(H1)ルチル型酸化チタンを0.94質量部以上含み、かつ、(H2)三酸化アンチモンを1.8質量部以上3.5質量部未満含むことが好ましい。こうすることで、照射変色防止性を向上させることができる。
【0069】
[可塑剤]
本実施の形態に係る(I)可塑剤としては、特に限定されないが、トリメリテート系可塑剤を使用することが好ましく、例えばトリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリノルマルアルキル、トリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。本実施の形態にあっては、電子線照射後の耐寒性低下を防止するという観点から、トリメリット酸トリノルマルアルキルを用いることが好ましい。(I)可塑剤の含有量は、塩化ビニル樹脂組成物の機械特性を向上させるという観点から、ベースポリマ100質量部に対して、30質量部以上80質量部以下であることが好ましい。
【0070】
[その他]
また、本実施の形態の塩化ビニル樹脂組成物は、(A)塩化ビニル樹脂、(B)水酸化アルミニウム、(C)ハイドロタルサイト、(D)脂肪酸金属塩、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)、(F)ステアロイルベンゾイルメタン、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)、(H)隠蔽剤、および、(I)可塑剤以外にも、(J)その他の成分として、必要に応じて滑剤、加工助剤、充填剤、ブルーム防止剤、酸化防止剤、銅害防止剤、架橋助剤などを含有していてもよい。
【0071】
滑剤としては、金属石鹸系であるステアリン酸マグネシウム、脂肪酸系であるステアリン酸、シリコーン、脂肪酸アミド系、炭化水素系、エステル系、アルコール系などが挙げられる。なお、本実施の形態に係る(D)脂肪酸金属塩は、滑剤としても作用する。
【0072】
加工助剤としては、酸化ポリエチレンなどのワックス成分が挙げられる。
【0073】
充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、シリコン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0074】
ブルーム防止剤としては、水酸化カルシウムなどのアルカリ性金属水和物が挙げられる。
【0075】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、フェノール/チオエステル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤などが挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、1,3,5−トリス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、4,4’−ブチリデンビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)などが挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、3,3’−チオジプロピオン酸ジドデシル、3,3’−チオジプロピオン酸ジテトラデシル、ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2−ビス[[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロピルオキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル、3,3’−チオジプロピオン酸ジオクタデシルなどが挙げられる。
【0076】
銅害防止剤としては、例えば、N’1,N’12−ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジン)などのヒドラジドや2−ヒドロキシ−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イルベンゾアミド、アルコールカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0077】
架橋助剤としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、トリアリルイソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−メタフェニレンビスマレイミド、エチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛などが挙げられる。架橋助剤は、ベースポリマ100質量部に対して、例えば2〜20質量部添加することが好ましい。架橋助剤が2質量部未満とすると、架橋が不十分になる場合があり、20質量部を超えると成形時に架橋してしまう場合があるためである。
【0078】
本実施の形態の塩化ビニル樹脂組成物は、以上で説明した原材料以外のものも特性に影響が出ない範囲で添加してもよい。
【0079】
本実施の形態の塩化ビニル樹脂組成物は、以下で説明する絶縁電線に限らず、あらゆる用途およびサイズに適用可能であり、例えば、鉄道車両用、自動車用、盤内配線用、機器内配線用、電力用の各電線の絶縁層に使用することができる。
【0080】
<絶縁電線の構成>
図1は、本発明の一実施の形態に係る絶縁電線を示す横断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係る絶縁電線10は、導体1と、導体1の周囲に被覆される絶縁層2とを有している。
【0081】
導体1としては、通常用いられる金属線、例えば銅線、銅合金線のほか、アルミニウム線、金線、銀線などを用いることができる。また、導体1として、金属線の周囲に錫やニッケルなどの金属めっきを施したものを用いてもよい。さらに、導体1として、金属線を撚り合わせた撚り導体を用いることもできる。導体1の外径は、特に限定されるものではないが、0.15mmφ以上7mmφ以下であることが好ましい。
【0082】
絶縁層2は、前述した本発明の一実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物からなる。絶縁層2の厚さは特に限定されるものではないが、0.15mm以上2mm以下が好ましい。
【0083】
絶縁電線10の外径は、特に限定されるものではないが、0.4mmφ以上7mmφ以下が好ましい。絶縁電線10の用途としては、例えばドライヤ、炊飯器、トランス口出部、照明器具、エアコンなどの機器内の高温部での配線に用いることができる。
【0084】
本実施の形態に係る絶縁電線10にあっては、絶縁層2が前述した本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物により構成されているため、電子線照射による変色を防止することができ、かつ、耐熱性および難燃性に優れる。
【0085】
<絶縁電線の製造方法>
図1に示す本実施の形態の絶縁電線10は、例えば、以下のように製造される。まず、後述の本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物の原材料を溶融混練する。その後、導体1を準備し、押出成形機により、導体1の周囲を被覆するように、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物を押し出して、所定厚さの絶縁層2を形成する。その後、絶縁層2を構成する塩化ビニル樹脂組成物を、電子線架橋法により架橋する。この際、塩化ビニル樹脂組成物を絶縁電線10の絶縁層2として成形した後に、例えば1〜30Mradの電子線を照射して架橋する。これにより、塩化ビニル樹脂組成物の機械特性が向上する。以上の工程により、本実施の形態に係る絶縁電線10を製造することができる。
【0086】
本実施の形態に係る絶縁電線10の製造方法にあっては、以上の工程により、電子線によって架橋された本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層2を備えた絶縁電線10が製造される。この際、絶縁層2が前述した本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物により構成されているため、電子線照射による変色を防止することができ、かつ、耐熱性および難燃性に優れる。
【0087】
なお、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物を製造するための混練装置は、例えば、ロール、バンバリーミキサーや加圧ニーダなどのバッチ式混練機、二軸押出機などの連続式混練機などの公知の混練装置を採用することができる。
【0088】
<ケーブルの構成>
図2は、本発明の一実施の形態に係るケーブル11を示す横断面図である。図2に示すように、本実施の形態に係るケーブル11は、前述の絶縁電線10を2本撚り合わせた二芯撚り線と、前記二芯撚り線の周囲に設けられた介在3と、介在3の周囲に設けられたシース4とを備えている。シース4は、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物により構成されている。
【0089】
本実施の形態に係るケーブル11にあっては、シース4が前述した本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物により構成されているため、電子線照射による変色を防止することができ、かつ、耐熱性および難燃性に優れる。
【0090】
本実施の形態に係るケーブル11は、芯線として絶縁電線10を2本撚り合わせた二芯撚り線を有する場合を例に説明したが、芯線は単芯(1本)でもよいし、二芯以外の多芯撚り線であってもよい。また、絶縁電線10の絶縁層2は、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物であることが好ましいが、これに限定されるものではなく他の樹脂組成物により構成してもよい。また、本実施の形態に係るケーブル11において、介在3は必須ではなく、介在3を有していなくてもよい。また、絶縁電線10とシース4との間に、他の絶縁層(シース)が形成された、多層シース構造を採用することもできる。
【0091】
<ケーブルの製造方法>
本実施の形態に係るケーブル11は、例えば、以下のように製造される。まず、前述した方法により、絶縁電線10を2本製造する。その後、絶縁電線10の周囲を介在3により被覆し、その後、介在3を被覆するように、樹脂組成物を押し出して、所定厚さのシース4を形成する。その後、シース4を構成する塩化ビニル樹脂組成物を、電子線架橋法により架橋する。この際、塩化ビニル樹脂組成物をケーブル11のシース4として成形した後に、例えば1〜30Mradの電子線を照射して架橋する。これにより、塩化ビニル樹脂組成物の機械特性が向上する。以上の工程により、本実施の形態に係るケーブル11を製造することができる。
【0092】
本実施の形態に係るケーブル11の製造方法にあっては、以上の工程により、電子線によって架橋された本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物からなるシース4を備えたケーブル11が製造される。この際、シース4が前述した本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物により構成されているため、電子線照射による変色を防止することができ、かつ、耐熱性および難燃性に優れる。
【0093】
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
<実施例および比較例の概要>
以下、実施例1〜14の絶縁電線および比較例1〜10の絶縁電線について説明する。実施例1〜14の絶縁電線は、図1に示す絶縁電線10に対応する。すなわち、絶縁電線10の絶縁層2は、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物からなる。また、比較例1〜10の絶縁電線の形状は、図1に示す絶縁電線10と同様であるが、この絶縁層2は本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物とは異なる組成の樹脂組成物からなる。実施例および比較例の各原材料については後述する。
【0095】
実施例1〜14の絶縁電線の製造方法は次の通りである。まず、表2に示す実施例1〜14の各原材料を室温にてドライブレンドし、混合した原材料を170℃に加熱したオープンロールミキサにより溶融混練した後にペレット化し、塩化ビニル樹脂組成物を生成した。その後、電線製造用の押出被覆装置を用いて、シリンダー温度170℃、ヘッド温度180℃、線速20m/minにて、導体の周囲に塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁層を形成した。この絶縁層に電子線架橋処理(3.5Mrad)を行うことで、絶縁層を構成する塩化ビニル樹脂組成物の架橋を行い、実施例1〜14の絶縁電線を作製した。比較例1〜10の絶縁電線の製造方法は、実施例1〜14の難燃性絶縁電線と同様であるため省略する。
【0096】
なお、実施例1〜14および比較例1〜10の絶縁電線では、導体(図1に示す導体1に相当)として、外径0.76mmのスズメッキ撚り導体(芯線17本、素線外径0.16mm)を用い、絶縁層(図1に示す絶縁層2に相当)の厚さを0.5mmとした。
【0097】
<実施例および比較例の原材料>
まず、実施例および比較例で用いた原材料の詳細を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
次に、実施例1〜14の組成を表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
表2に示すように、実施例1〜14の絶縁電線の絶縁層を構成する塩化ビニル樹脂組成物は、その原材料として(A)塩化ビニル樹脂と、(B)水酸化アルミニウムと、(C)ハイドロタルサイトと、(D)脂肪酸金属塩と、(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)と、(F)ステアロイルベンゾイルメタンと、(G)ジベンゾイルメタン(ジベンゾイルメタン金属塩)と、(H)隠蔽剤と、(I)可塑剤とを含んでいる。
【0102】
実施例2,5の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)ハイドロタルサイトの添加量を変更したものである。実施例3,4の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)ハイドロタルサイトの添加量に加え、安定剤の添加量を変更したものである。
【0103】
実施例6の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(H2)三酸化アンチモンの添加量を変更したものである。
【0104】
実施例7の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(B)水酸化アルミニウムの添加量を変更したものである。
【0105】
実施例8の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例1の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(H1)ルチル型酸化チタンおよび(H2)三酸化アンチモンの添加量を変更したものである。より具体的には、実施例8の塩化ビニル樹脂組成物は、(H)隠蔽剤として(H2)三酸化アンチモンを添加せず、(H1)ルチル型酸化チタンのみを添加したものである。
【0106】
実施例9,10の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例2の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(A)塩化ビニル樹脂の種類および配合を変更したものである。実施例11の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例3の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(A)塩化ビニル樹脂の種類および配合を変更したものである。実施例12の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例4の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(A)塩化ビニル樹脂の種類および配合を変更したものである。実施例13の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例5の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(A)塩化ビニル樹脂の種類および配合を変更したものである。実施例14の塩化ビニル樹脂組成物は、実施例6の塩化ビニル樹脂組成物に対して、(A)塩化ビニル樹脂の種類および配合を変更したものである。
【0107】
次に、比較例1〜10の組成を表3に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3に示す比較例1〜10は、表2に示す実施例1〜14で用いた原材料の種類や各原材料の配合比率を変更したものである。
【0110】
表2および表3に示すように、比較例1〜4の塩化ビニル樹脂組成物は、主に安定剤である(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)および(F)ステアロイルベンゾイルメタンを含んでいない点、ならびに、ベースポリマ100質量部に対して(H2)三酸化アンチモンを3.5質量部以上含んでいる点で、実施例1〜14と相違している。
【0111】
比較例5の塩化ビニル樹脂組成物は、主に安定剤である(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)および(F)ステアロイルベンゾイルメタンを含んでいない点、ならびに、ベースポリマ100質量部に対して(H2)三酸化アンチモンを3.5質量部以上含んでいる点に加え、(C)ハイドロタルサイトの添加量が実施例1〜14に比べて少なく、かつ、(B)水酸化アルミニウムを含んでいない点で、実施例1〜14と相違している。
【0112】
比較例6,8〜10の塩化ビニル樹脂組成物は、主に安定剤である(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)および(F)ステアロイルベンゾイルメタンを含んでいない点に加え、(H2)三酸化アンチモンを含んでいない点で、実施例1〜14と相違している。
【0113】
比較例7の塩化ビニル樹脂組成物は、主にベースポリマ100質量部に対して(H2)三酸化アンチモンを3.5質量部以上含んでいる点、および、(C)ハイドロタルサイトの添加量が実施例1〜14に比べて少なく、かつ、(B)水酸化アルミニウムを含んでいない点で、実施例1〜14と相違している。
【0114】
<実施例および比較例の評価方法>
(1)照射変色防止性
作製した絶縁電線、すなわち電子線照射後の絶縁電線を300mmの長さに切断したサンプルを目視で観察し、変色がないものを「○」とし、変色しているものを「×」とした。さらに、このサンプルを136℃のギアオーブンにおいて48時間暴露し、ほとんど変色がないものを「◎」とした。
【0115】
(2)耐熱性
作製した絶縁電線から導体を引き抜いて絶縁層のみのサンプルとし、このサンプルを136℃のギアオーブンにおいて1800時間暴露し、暴露後の伸びが初期の伸びに対して50%以上確保できているものを「○」とし、50%未満のものを「×」とした。
【0116】
(3)難燃性
作製した絶縁電線に対して、難燃性規格UL1581に規定される垂直難燃試験VW−1を3回行い、3回とも合格したものを「○」とし、1回でも不合格となるものを「×」とした。
【0117】
<実施例1〜14の詳細および評価結果>
表2に実施例1〜14の評価結果を示す。表2に示すように、実施例1〜14において、(1)照射変色防止性、(2)耐熱性および(3)難燃性はいずれも良好であった。なお、実施例9,10,14は、電子線照射後の熱負荷によってもほとんど変色しておらず、実施例1〜8,11〜13に比べてより高い照射変色防止性を示した。
【0118】
<比較例1〜10の評価結果>
表3に比較例1〜10の評価結果を示す。
【0119】
表3に示すように、比較例1〜4において、(3)難燃性は良好である一方、(1)照射変色防止性および(2)耐熱性が不良となった。
【0120】
また、比較例6,8〜10において、(2)耐熱性および(3)難燃性は良好である一方、(1)照射変色防止性が不良となった。
【0121】
また、比較例7において、(1)照射変色防止性は良好である一方、(2)耐熱性および(3)難燃性が不良となった。
【0122】
また、比較例5において、(1)照射変色防止性、(2)耐熱性および(3)難燃性の全てが不良となった。
【0123】
<実施例および比較例のまとめ>
実施例1〜14に示すように、本実施の形態に係る塩化ビニル樹脂組成物、およびこれを用いた絶縁電線は、電子線照射による変色を防止でき、かつ、耐熱性および難燃性を向上させることができる。
【0124】
特に、実施例1〜7,9〜14に示すように、(H)隠蔽剤として、(H1)ルチル型酸化チタンおよび(H2)三酸化アンチモンを併用した場合であっても、実施例8に示すように、(H1)ルチル型酸化チタンを単独で用いた場合であっても、電子線照射による変色を防止できる。より具体的には、実施例8に示すように、(H)隠蔽剤として(H1)ルチル型酸化チタンを単独で用いた場合、すなわち(H2)三酸化アンチモンを含まない場合でも、ベースポリマ100質量部に対し(H1)ルチル型酸化チタンを2質量部以上含むことにより、電子線照射による変色を防止できる。そして、(H2)三酸化アンチモンを含まない場合でも、ベースポリマ100質量部に対し(B)水酸化アルミニウムおよび(C)ハイドロタルサイトの添加量が12質量部以上であれば、難燃性を確保できる。
【0125】
一方、比較例1〜5の塩化ビニル樹脂組成物において、(1)照射変色防止性が不良となったのは、安定剤である(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)および(F)ステアロイルベンゾイルメタンを含んでいないため、脱塩化水素反応が原因となる着色が発生したことによるものと考えられる。
【0126】
比較例6,7〜10の塩化ビニル樹脂組成物において、(1)照射変色防止性が不良となったのは、安定剤である(E)シアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸誘導体)および(F)ステアロイルベンゾイルメタンを含んでいないため、ならびに、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)ハイドロタルサイトの添加量が多く、脱塩化水素反応が原因となる着色が発生したことによるもの、あるいは、(H)隠蔽剤の添加量が少なかったため着色を薄めることができなかったことによるものと考えられる。
【0127】
比較例1〜5,7の塩化ビニル樹脂組成物において、(2)耐熱性が不良となったのは、(H2)三酸化アンチモンが多量に添加されているため、脱塩化水素反応が促進されてしまったためと考えられる。
【0128】
比較例5の塩化ビニル樹脂組成物において、(3)難燃性が不良となったのは、(H2)三酸化アンチモンが特に多量に添加されているため、脱塩化水素反応が促進され、塩化ビニル樹脂が熱分解されやすく燃えやすくなってしまったためと考えられる。
【0129】
比較例7の塩化ビニル樹脂組成物において、(3)難燃性が不良となったのは、難燃剤として作用する(B)水酸化アルミニウムと(C)ハイドロタルサイトと(H2)三酸化アンチモンとの総含有量が、ベースポリマ100質量部に対し、12質量部未満であるためと考えられる。
【0130】
本発明は前記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 導体
2 絶縁層
3 介在
4 シース
10 絶縁電線
11 ケーブル
図1
図2