特許第6885492号(P6885492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6885492
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】両面研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/08 20120101AFI20210603BHJP
   B24B 37/28 20120101ALI20210603BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20210603BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B24B37/08
   B24B37/28
   B24B37/00 K
   H01L21/304 621A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-84316(P2020-84316)
(22)【出願日】2020年5月13日
【審査請求日】2020年8月5日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑宜
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−069685(JP,A)
【文献】 特開2001−121412(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/159603(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 − 37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤中心を有する回転定盤の上定盤と下定盤との間に複数枚のキャリアを設置し、前記複数枚のキャリアの各々に一枚以上のウェーハを保持させ、圧送方式でスラリを供給しながら前記ウェーハの両面を研磨する方法において、
厚みが互いに異なる少なくとも一組のウェーハを含む複数のウェーハを準備し、
前記複数のウェーハを厚みの大きな順に並べて、番号を付け、
前記複数枚のキャリアに保持される前記ウェーハの配置を、
前記複数枚のキャリアから基準キャリアを選択し、
前記定盤中心を角度中心として該定盤中心及び前記基準キャリアとともになす角αが最大になる一枚又は二枚のキャリアを対称キャリアとし、
前記基準キャリアに配置されるウェーハの平均厚みAμmと、前記対称キャリアに配置されるウェーハの平均厚みBμmとの差が、1.0μm以下となるようにして、前記ウェーハの両面研磨を行い、
前記ウェーハの配置において、
前記複数のウェーハを、1番目のウェーハから順に、前記平均厚みAμmと前記平均厚みBμmとの差が1.0μm以下となるように前記複数枚のキャリアに配置し、ただし、配置することにより前記平均厚みAμmと前記平均厚みBμmとの差が1.0μmを超えるウェーハは配置を見合わせることを特徴とする両面研磨方法。
【請求項2】
前記複数枚のキャリアを4枚以上とし、前記4枚以上のキャリアを、前記定盤中心を中心とした円に沿って等間隔に設置することを特徴とする請求項1に記載の両面研磨方法。
【請求項3】
前記スラリをロータリージョイントを介して圧送しながら、前記ウェーハの両面研磨を行い、
圧送する前記スラリの全流量を4l/min以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の両面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両面研磨におけるスラリの代表的な供給方法の一つに、ロータリージョイントを介して圧力をかけながらスラリを研磨面に送る圧送方式がある。
【0003】
圧送方式の場合、例えば図6に示すように、回転定盤10のスラリ供給孔6aからのスラリ流量がスラリ供給孔6bからのスラリ流量よりも大きいと、上定盤1aのスラリ供給孔6aが設けられている側が浮き上がり、この部分でのウェーハ20aに対する研磨圧力が小さくなる。一方、上定盤1aは、下定盤2に、定盤中心5を中心として回転可能に配置されるので、スラリ供給孔6aが設けられている側が浮き上がると、全体が傾く。それにより、上定盤1aのスラリ供給孔6bが設けられている側は下方に変位し、この部分でのウェーハ20bに対する研磨圧力が大きくなる。これらの結果、ウェーハ20aとウェーハ20bとの間で研磨強度の差が生じ、ウェーハ20aが凸化する一方、ウェーハ20bが凹化し、それにより、両面研磨されたウェーハ群のフラットネスにばらつきが生じてしまう。
【0004】
このような問題に対し、例えば特許文献1では、圧送方式において、定盤が有する供給孔からのスラリ流量分布を均一に保つことが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、研磨後のウェーハの厚みばらつきを低減することが可能な非公転式の両面研磨方法が開示されている。
【0006】
そして、特許文献3には、加工物を両面において全面均一の等しい研磨能率で研磨するために、第1と第2の研磨定盤の回転軸心の位置を異ならすとともに、両者の間に挟持される平板状加工物の回転軸心の位置を同じ向きに回転させる機構を具えた両面同時研磨装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019−136837号公報
【特許文献2】特開2012−143839号公報
【特許文献3】特公平8−9140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方策のうち、特許文献1に開示されたような方法は、特に圧送方式において加工されたウェーハ群のフラットネスのばらつきを低減できる。しかしながら、本発明者は、鋭意研究していく中で、このような方法でも、両面研磨後のウェーハ群のフラットネスにばらつきが生じてしまうことがあることが分かった。
【0009】
例えば、スラリ供給孔からのスラリ流量分布を均一にした状態であっても、投入するウェーハの厚み分布に大きな偏りが存在すると、圧送による浮力に差が生じ、定盤の傾きが顕在化され、両面研磨後のフラットネスばらつきを増大してしまうことが分かった。具体例を図7を参照しながら説明する。図7は、特許文献1に開示された方法に従ってウェーハ20a及び20bを両面研磨するための一例の両面研磨装置100の概略断面図である。図7に示した例では、スラリ供給孔6a側に配置したウェーハ20aの厚みが、スラリ供給孔6b側に配置したウェーハ20bの厚みよりもかなり大きい。このような場合、スラリ供給孔6a及び6bから同様の流量でスラリを圧送すると、スラリ供給孔6a側ではウェーハ20aの厚みのせいでスラリの流れが滞って詰まり、高圧となる。一方で、スラリ供給孔6b側では、圧送されたスラリが流れやすく、低圧となる。その結果、上定盤1aのうちスラリ供給孔6a側の部分が、スラリ供給孔6b側の部分よりも大きな浮力を受け、浮き上がる。その結果、破線で示したように上定盤1a自体が傾く。この状態で研磨を続行すると、上定盤1aからの研磨強度が、スラリ供給孔6a側とスラリ供給孔6b側とで変わってしまう。これらの結果、両面研磨後のウェーハ群のフラットネスにばらつきが生じてしまう。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、両面研磨後のフラットネスのばらつきが低減されたウェーハ群を提供することができるスラリ圧送方式の両面研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、定盤中心を有する回転定盤の上定盤と下定盤との間に複数枚のキャリアを設置し、前記複数枚のキャリアの各々に一枚以上のウェーハを保持させ、圧送方式でスラリを供給しながら前記ウェーハの両面を研磨する方法において、
前記複数枚のキャリアに保持される前記ウェーハの配置を、
前記複数枚のキャリアから基準キャリアを選択し、
前記定盤中心を角度中心として該定盤中心及び前記基準キャリアとともになす角αが最大になる一枚又は二枚のキャリアを対称キャリアとし、
前記基準キャリアに配置されるウェーハの平均厚みAμmと、前記対称キャリアに配置されるウェーハの平均厚みBμmとの差が、1.0μm以下となるようにして、前記ウェーハの両面研磨を行うことを特徴とする両面研磨方法を提供する。
【0012】
このような本発明の両面研磨方法によると、スラリの圧送によって定盤が傾くのを防ぎながらウェーハの両面研磨をすることができ、その結果、両面研磨後のフラットネスのばらつきが低減されたウェーハ群を提供することができる。
【0013】
前記複数枚のキャリアを4枚以上とし、前記4枚以上のキャリアを、前記定盤中心を中心とした円に沿って等間隔に設置することが好ましい。
【0014】
このようにキャリアを設置することによって、スラリの圧送によって定盤が傾くことを更に効果的に防ぐことができる。
【0015】
前記スラリをロータリージョイントを介して圧送しながら、前記ウェーハの両面研磨を行い、圧送する前記スラリの全流量を4l/min以上とすることがより好ましい。
【0016】
このようにスラリを圧送することにより、スラリによる潤滑作用をより効果的に利用でき、研磨面が異常な発熱を引き起こすことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の両面研磨方法であれば、両面研磨後のフラットネスのばらつきが低減されたウェーハ群を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の両面研磨方法を実施することができる一例の両面研磨装置を示す概略断面図である。
図2】本発明の両面研磨方法に従うウェーハの配置の一例を説明するための概略平面図である。
図3】本発明の両面研磨方法に従うウェーハの配置の他の一例を説明するための概略平面図である。
図4】本発明の両面研磨方法に従うウェーハの配置の更に他の一例を説明するための概略平面図である。
図5】実施例及び比較例のそれぞれの両面研磨方法により得られたウェーハ群のフラットネス幅(GBIR Range)を示すグラフである。
図6】従来の両面研磨方法の一例を説明するための両面研磨装置の概略断面図である。
図7】従来の両面研磨方法の他の一例を説明するための両面研磨装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、両面研磨後のフラットネスのばらつきが低減されたウェーハ群を提供することができる両面研磨方法の開発が求められていた。
【0020】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ウェーハを一定の法則に従ってキャリアに仕込むことで、定盤の傾きを抑えながら両面研磨ができることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
即ち、本発明は、定盤中心を有する回転定盤の上定盤と下定盤との間に複数枚のキャリアを設置し、前記複数枚のキャリアの各々に一枚以上のウェーハを保持させ、圧送方式でスラリを供給しながら前記ウェーハの両面を研磨する方法において、
前記複数枚のキャリアに保持される前記ウェーハの配置を、
前記複数枚のキャリアから基準キャリアを選択し、
前記定盤中心を角度中心として該定盤中心及び前記基準キャリアとともになす角αが最大になる一枚又は二枚のキャリアを対称キャリアとし、
前記基準キャリアに配置されるウェーハの平均厚みAμmと、前記対称キャリアに配置されるウェーハの平均厚みBμmとの差が、1.0μm以下となるようにして、前記ウェーハの両面研磨を行うことを特徴とする両面研磨方法である。
【0022】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
(両面研磨装置)
まず、本発明の両面研磨方法を実施することができる一例の両面研磨装置を、図1を参照しながら説明する。しかしながら、本発明の両面研磨方法は、図1に示す両面研磨装置以外の装置を用いて実施することもできる。
なお、図1では、図6及び図7の両面研磨装置100の部材と同様の部材に対し同様の参照符号を付している。
【0024】
図1に示す両面研磨装置100は、回転定盤10を具備する。
回転定盤10は、上定盤1及び上定盤1に対向した下定盤2を含む。上定盤1の下定盤2に対向した面には、研磨布(パッド)が貼り付けられている。同様に、下定盤2の上定盤1に対向した面には、研磨布が貼り付けられている。研磨布としては、例えば、発泡ポリウレタンパッドを用いることができるが、特に限定されない。
【0025】
回転定盤10は、上定盤1の中心及び下定盤2の中心を通る、定盤中心5を有する。上定盤1及び下定盤2は、この定盤中心5を軸として、それぞれに接続された駆動部により自転することができる。
【0026】
上定盤1及び下定盤2は、これらの間に処理空間4を定義している。この処理空間4に、複数枚のキャリア3が設置されている。
【0027】
複数枚のキャリア3は、定盤中心5の周囲に、定盤中心5からの距離が同じになるように設置されることが好ましい。なお、本明細書において、定盤中心5からの距離は、定盤中心5から各キャリア3の中心までの距離を指す。
【0028】
キャリア3の枚数は、特に限定されない。キャリア3の枚数は、例えば、2枚〜7枚とすることができる。
【0029】
複数枚のキャリア3を4枚以上とし、これらの4枚以上のキャリア3を、定盤中心5を中心とした円に沿って等間隔に設置することが特に好ましい。このようにキャリア3を配置することにより、以下に詳細に説明する、スラリの圧送の際に定盤が傾くことを抑制する作用をより確実に発揮できる。
【0030】
複数枚のキャリア3としては、例えば金属製のものを用いることができるが、特に限定されない。
【0031】
複数枚のキャリア3の各々は、一枚以上のウェーハ20を保持するように構成されている。例えば、キャリア3は、ウェーハ20をはめ込んで保持できる保持孔(ワークホール)を備えていても良い。保持孔の内周部には、樹脂製のインサート材を設けることが好ましい。
【0032】
上定盤1には、複数のスラリ供給孔6が設けられている。スラリ供給孔6は、上定盤1ではなく下定盤2に設けられていても良いし、上定盤1及び下定盤2の両方に設けられていてもよい。
【0033】
スラリ供給孔6は、研磨用のスラリを処理空間4に供給するように構成されている。図1に示す両面研磨装置100では、スラリを、例えばスラリ供給孔6及びロータリージョイントを介して、処理空間4に圧送しながら、ウェーハ20の両面研磨を行うことができる。
【0034】
図1に示す両面研磨装置100は、定盤中心5に沿って配置された軸7aを備えたサンギア7と、下定盤2の周囲を囲むように位置する基部8aを備えたインターナルギア8とを更に具備する。
【0035】
サンギア7及びインターナルギア8は、定盤中心5を軸として、それぞれに接続された駆動部によって自転することができる。
【0036】
サンギア7は、軸7aから上方に突出した係合部7bを更に備える。また、インターナルギア8は、基部8aから上方に突出した係合部8bを更に備える。サンギア7の係合部7b及びインターナルギア8の係合部8bは、複数枚のキャリア3に係合している。これらの係合は、ギアの噛合によるものでも良いし、ギアを介さない係合でもよい。
【0037】
複数枚のキャリア3は、サンギア7及びインターナルギア8に係合しているので、サンギア7及びインターナルギア8の自転により、回転することができる。
【0038】
図1に示す両面研磨装置100では、上定盤1、下定盤2、サンギア7及びインターナルギア8を駆動させながら、且つスラリを処理空間4に圧送して供給しながら、キャリア3に保持されたウェーハ20の両面研磨を行うことができる。すなわち、図1に示す両面研磨装置100は、上定盤1、下定盤2、サンギア7及びインターナルギア8の各駆動部を有する4way式両面研磨装置である。
【0039】
(ウェーハの配置)
次に、本発明の両面研磨方法におけるウェーハの配置について説明する。
【0040】
本発明の両面研磨方法は、
複数枚のキャリアに保持されるウェーハの配置を、
複数枚のキャリアから基準キャリアを選択し、
定盤中心を角度中心としてこの定盤中心及び基準キャリアとともになす角αが最大になる一枚又は二枚のキャリアを対称キャリアとし、
基準キャリアに配置されるウェーハの平均厚みAμmと、対称キャリアに配置されるウェーハの平均厚みBμmとの差が、1.0μm以下となるようにして、ウェーハの両面研磨を行うことを特徴とする。
【0041】
このような配置を、図2図4を参照しながら具体例を示して説明する。
【0042】
図2に示す例では、4枚のキャリア3a、3b、3x及び3yが、定盤中心5を中心とした円に沿って等間隔に設置されている。図2は、図1に示す回転定盤10の上定盤1を取り外して上から観察した平面図として示している。そのため、図2は、4枚のキャリア3a、3b、3x及び3yが下定盤2上に設置された様子を示している。
【0043】
まず、基準キャリアを選択する。ここでは、4枚のキャリア3の中で、図2で一番上に示したキャリア3aを基準キャリアとして選択する場合の例を説明する。
【0044】
次に、定盤中心5を角度中心としてこの定盤中心5と基準キャリア3aとともになす角αが最大になる対称キャリアを、基準キャリア3aを除く他のキャリア3b、3x及び3yから求める。ここで、角αをなす二直線は、定盤中心5と基準キャリア3aの中心3acとを通る直線、及び定盤中心5と対称キャリアの中心とを通る直線とする。
【0045】
図2に示す例では、定盤中心5を角度中心として、定盤中心5、基準キャリア3aの中心3ac、及び図2で一番下に示したキャリア3bの中心3bcがなす角αが180℃で最大となる。よって、図2に示す例では、一番下に示したキャリア3b、すなわち定盤中心5に対して基準キャリア3aと点対称の位置に座するキャリア3bが対称キャリアに相当にする。
【0046】
このようにして選択した基準キャリア3aと対称キャリア3bとに、基準キャリア3aに配置されるウェーハの平均厚みAμmと、対称キャリア3bに配置されるウェーハの平均厚みBμmとの差が、1.0μm以下となるように、ウェーハを配置する。
【0047】
例えば、基準キャリア3aに平均厚みがaμmである一枚のウェーハを配置し、対称キャリア3bに平均厚みがa’μmである一枚のウェーハを配置する場合、aμmを平均厚みAとし、a’μmを平均厚みBとする。或いは、基準キャリア3aに平均厚みがそれぞれaμm、bμm及びcμmである3枚のウェーハを配置し、対称キャリア3bに平均厚みがそれぞれa’μm、b’μm及びc’μmである3枚のウェーハを配置する場合、{(a+b+c)/3}μmを平均厚みAとし、{(a’+b’+c’)/3}μmを平均厚みBとする。
【0048】
図3に、キャリア3の設置の他の例を示す。図3では、6枚のキャリア3a、3b、3x、3y、3z及び3wが定盤中心5を中心とした円に沿って等間隔に設置されている。図3に示す例でも、対称キャリアは、図2の例と同様に、定盤中心5に対して基準キャリア3aと点対称の位置に座する1つのキャリア3bである。
【0049】
このように、キャリア3が偶数枚であり且つ等間隔で設置されている場合、対称キャリアは、図2の例と同様に、定盤中心5に対して基準キャリア3aと点対称の位置に座する1つのキャリア3bである。
【0050】
次に、キャリア3が奇数枚である具体例を説明する。
図4は、5枚のキャリア3a、3c、3d、3e及び3fが、定盤中心5を中心とした円に沿って等間隔に設置されている例を示している。以下では、キャリア3aを基準キャリアとする場合を説明する。
【0051】
図4に示す例では、定盤中心5を角度中心として、定盤中心5、基準キャリア3aの中心3ac及び図4における左下に座したキャリア3cの中心3ccがなす角αが、最大になる。また、定盤中心5を角度中心として、定盤中心5、基準キャリア3aの中心3ac及び図4における右下に座したキャリア3dの中心3dcがなす角αが、同様に最大になる。よって、基準キャリア3aに対する対称キャリアは、図4における左下及び右下にそれぞれ座したキャリア3c及び3dである。
【0052】
このようにして選択した基準キャリア3aと対称キャリア3c及び3dとに、基準キャリアに配置されるウェーハの平均厚みAμmと、対称キャリアに配置されるウェーハの平均厚みBμmとの差が、1.0μm以下となるように、ウェーハを配置する。
【0053】
例えば、基準キャリア3aに平均厚みがaμmである一枚のウェーハを配置し、対称キャリア3cに平均厚みがa’μmである一枚のウェーハを配置し、対称キャリア3dに平均厚みb’μmである一枚のウェーハを配置する場合、aμmを平均厚みAとし、{(a’+b’)/2}μmを平均厚みBとする。或いは、基準キャリア3aにそれぞれ平均厚みがaμm、bμm及びcμmである3枚のウェーハを配置し、対称キャリア3cに平均厚みがそれぞれa’μm、b’μm及びc’μmである3枚のウェーハを配置し、対称キャリア3dに平均厚みがそれぞれd’μm、e’μm及びf’μmである3枚のウェーハを配置する場合、{(a+b+c)/3}μmを平均厚みAとし、{(a’+b’+c’+d’+e’+f’)/6}μmを平均厚みBとする。
【0054】
このように、キャリア3が奇数枚であり且つ等間隔で設置されている場合には、対称キャリアは、図4の例と同様に、2枚のキャリアとなる。
【0055】
以上のようにしてウェーハをキャリア(基準キャリア3a及び対称キャリア3b、又は基準キャリア3a並びに対称キャリア3c及び3d)に配置して、ウェーハの両面研磨を行うことにより、キャリアに配置されたウェーハの厚み分布の偏りを小さくしながらウェーハの両面研磨を行うことができ、それにより、スラリの圧送によって回転定盤10(例えば上定盤1)が傾くのを防ぎながら両面研磨を行うことができる。その結果、本発明の両面研磨方法によれば、複数のウェーハに対する研磨強度のばらつきを抑えることができ、それにより、両面研磨後のフラットネスのばらつきが低減されたウェーハ群を提供することができる。
【0056】
平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差が0.8μm以下になるようにキャリアにウェーハを配置して研磨を行うことが好ましく、上記差を0.5μm以下になるようにキャリアにウェーハを配置して研磨を行うことがより好ましい。上記差が小さいほど、両面研磨後のフラットネスのばらつきが更に低減されたウェーハ20群を提供することができる。上記差は小さければ小さいほど好ましいが、下限値としては例えば0μmとすることができる。
【0057】
両面研磨装置100が具備する複数枚のキャリア3のいずれを基準キャリアとして選択しても、本発明の平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差が1.0μm以下となるようにウェーハを配置することが好ましい。このようにすることで、全てのキャリア3にわたって、ウェーハの厚み分布の偏りを小さく又はなくすことができ、それにより、スラリ圧送の際の定盤の傾きを更に抑制することができる。その結果、この好ましい態様によれば、両面研磨後のフラットネスのばらつきが更に低減されたウェーハ群を提供することができる。
【0058】
次に、ウェーハの配置の具体例を説明する。ここでは、1バッチに必要とするウェーハの枚数が15枚であり、図4に示すような5つのキャリア3a、3c、3d、3e及び3fに、それぞれ3枚ずつウェーハを配置する例を説明する。
【0059】
この場合、まず、例えば研磨対象の15枚と調整用の5枚との計20枚のウェーハを準備する。これらのウェーハの厚みを測定する。ウェーハの厚みとしては、点又はラインで測定した厚みの平均値を用いることができる。調製用のウェーハは5枚でなくても良い。
【0060】
厚みを測定した20枚のウェーハを厚みの大きなものから順に並べ、1、2、3…20と番号を付ける。これらを、1番目のウェーハから順に、キャリア3a、キャリア3c、キャリア3f、キャリア3e、キャリア3d、キャリア3a…の順で5枚のキャリア3a、3c、3d、3e及び3fに配置するが、平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差が1.0μm以下になるように配置し、これを超える場合は配置を見合わせるウェーハを選択する。配置しなかったウェーハは別のバッチで研磨すればよい。なお、これはあくまで一例の並べ方である。
【0061】
なお、以上では、1枚のキャリアに3枚のウェーハを配置する例を示したが、1枚のキャリアに配置するウェーハの枚数は、特に限定されない。例えば、一枚のキャリアに、1枚〜4枚のウェーハを配置することができる。なお、基準キャリアに配置するウェーハの枚数と、対称キャリアに配置するウェーハの枚数とを同じにすることが好ましい。すべてのキャリアに対し、同じ枚数のウェーハを配置することが特に好ましい。
【0062】
次に、本発明の両面研磨方法で用いることができるスラリについて説明する。
【0063】
本発明の両面研磨方法で用いるスラリは、特に限定されないが、例えば、コロイダルシリカを含有した無機アルカリ水溶液を用いることができる。砥粒の粒子径及び濃度、水溶液のpH、並びに用いるアルカリも、特には限定されない。
【0064】
スラリをロータリージョイントを介して圧送しながら、ウェーハの両面研磨を行い、圧送するスラリの全流量を4l/min以上とすることがより好ましい。
【0065】
このようにスラリを圧送することにより、スラリによる潤滑作用をより効果的に利用でき、研磨面が異常な発熱を引き起こすことを防ぐことができる。
【0066】
両面研磨装置100に圧送して供給するスラリの全流量は、例えば12l/min以下とすることができる。両面研磨装置100に圧送して供給するスラリの全流量は、6l/min以上10l/min以下とすることがより好ましい。
【0067】
この場合、複数のスラリ供給孔からのスラリ流量を均一にしながら両面研磨を行うことが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
実施例1では、図1に示した両面研磨装置100と同様の構成を有するLapmaster WoltersのAC2000を用いて、ウェーハ20の両面研磨を行った。
【0070】
研磨パッドとしては、ショアA硬度80の発泡ポリウレタンパッドを用いた。
【0071】
キャリア3は、SUS基板にDLCコーティングを行ったものを母材として、フッ素樹脂であるPVDFをワークホール用のインサート材として用いた。各キャリア3のワークホールは3つとし、投入キャリアは5枚とした。
【0072】
これら5枚のキャリア3を、図4に示したのと同様の配置で、下定盤2上に設置した。
【0073】
スラリは、砥粒として平均粒径35nmのコロイダルシリカを砥粒濃度1.0wt%で含む、pH10.5のKOH水溶液を用いた。スラリ供給孔6にロータリージョイント及びスラリ圧送用のポンプを接続した。
【0074】
一方で、被研磨対象の20枚のウェーハ20を準備した。ウェーハ20としては、直径300mmのP型シリコン単結晶ウェーハを用いた。
【0075】
各ウェーハ20の厚みを、静電容量式の変位計で挟み込む形で測定した。データは1mm刻みで直径プロファイルを2本取得し、それらの全データの平均値を厚みとした。
【0076】
次に、厚みを測定した20枚のウェーハ20を厚みの大きなものから順に並べ、1、2、3…20と番号を付けた。これらを、1番目のウェーハ20から順に、図4に示すキャリア3a、キャリア3c、キャリア3f、キャリア3e、キャリア3d、キャリア3a…の順で5枚のキャリア3a、3c、3d、3e及び3fに配置した。実施例1では、キャリア3a、キャリア3c及びキャリア3fをそれぞれ基準キャリアとし、先に説明した平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差の最大値が1.0μmを超えないようにし、20枚のウェーハ20のうち配置を見合わせるウェーハを選択した。具体的には、実施例1では、5番目、7番目、14番目、15番目及び20番目のウェーハ20の配置を見合わせ、これら以外の1番目から19番目までの計15枚のウェーハ20を、5枚のキャリア3a、3c、3d、3e及び3fの各々に3枚ずつ配置し、保持させた。このとき、平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差の最大値は0.22μmであった。
【0077】
このように配置したウェーハ20に対し、以下の条件で両面研磨を行った。
・両面研磨装置100に供給するスラリの全流量を8.0l/minとした。
・加工荷重は150gf/cmに設定した。
・加工時間はウェーハ20の中心厚みのバッチ平均値が775±0.3μmに収まるように、研磨レートから逆算して設定した。
・各駆動部の回転速度は、上定盤:23.0rpm;下定盤:−20.0rpm;サンギア:−23.9rpm;インターナルギア:7.7rpmに設定した。
【0078】
(実施例2及び3)
実施例2及び3では、先に説明した平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差の最大値がそれぞれ0.73μm及び0.95μmとなるように、キャリア3にウェーハ20を配置して、ウェーハ20の両面研磨を行ったこと以外は実施例1と同様の手順で、ウェーハ20の両面研磨を行った。
【0079】
(比較例1及び2)
比較例1及び2では、先に説明した平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差の最大値がそれぞれ1.08μm及び1.24μmとなるように、キャリア3にウェーハ20を配置して、ウェーハ20の両面研磨を行ったこと以外は実施例1と同様の手順で、ウェーハ20の両面研磨を行った。
【0080】
(比較例3)
比較例3では、先に説明した平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差を考慮せず、1番目から15番目までのウェーハ20を先に示した順で5枚のキャリア3a、3c、3d、3e及び3fの各々に3枚ずつ配置して、ウェーハ20の両面研磨を行ったこと以外は実施例1と同様の手順で、ウェーハ20の両面研磨を行った。比較例3では、先に説明した平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差の最大値が1.89μmであった。
【0081】
[洗浄]
実施例1〜3、及び比較例1〜3で両面研磨後の全てのウェーハに対し、SC−1洗浄を条件NHOH:H:HO=1:1:15で行った。
【0082】
[評価]
洗浄後の全てのウェーハ20のフラットネスを、KLA TencorのWafer Sightを用いて、GBIR(Global backside ideal range)値として測定した。GBIR値の算出は、M49 modeの2mm E.E.に設定して行った。更には、15枚のウェーハ20(すなわちバッチ内のウェーハ群)のGBIR値の中から最大値と最小値とを採取して、その差をGBIR Rangeと称し、バラツキの指標とした。
【0083】
実施例及び比較例の各々に関し、平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差の最大値を横軸とした。また、横軸は、スラリ供給方式を圧送方式で加工した場合のGBIR Rangeを、同一号機のままに浮力が生じない重力落下形式に変更して加工した場合のGBIR Rangeで割った数値とした。上記の横軸と縦軸でプロットしたグラフが図5である。図5では、左側から右側にかけて、実施例1〜3、及び比較例1〜3の結果を順にプロットしている。
【0084】
図5に示した結果から明らかなように、本発明に従って、平均厚みAμmと平均厚みBμmとの差が1.0μm以下となるようにウェーハを配置して、これらのウェーハの両面研磨を行った実施例1〜3は、重力落下方式と同等以下の両面研磨後のフラットネスのばらつきを達成できた。これは、実施例1〜3では、上記厚みの差が1.0μm以下になるようにしてウェーハの配置を行って両面研磨したことにより、スラリ圧送による上定盤の傾きを抑えることができ、その結果、15枚のウェーハに対する研磨強度のばらつきを抑えることができ、それにより、両面研磨後のフラットネスのばらつきを低減することができたと考えられる。
【0085】
一方、比較例1〜3では、上記厚みの差が1.0μm以下になるようにせずにウェーハの配置を行って両面研磨したことにより、スラリ圧送によって上定盤が傾き、その結果、15枚のウェーハに対して研磨強度の偏在が起きたと考えられる。
【0086】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0087】
1及び1a…上定盤、 2…下定盤、 3、3e、3f、3x、3y、3z及び3w…キャリア、 3a…基準キャリア、 3b、3c及び3d…対称キャリア、 3ac、3bc、3cc及び3dc…キャリアの中心、 4…処理空間、 5…定盤中心、 6、6a及び6b…スラリ供給孔、 7…サンギア、 7a…軸、7b…係合部、 8…インターナルギア、 8a…基部、 8b…係合部、 10…回転定盤、 20、20a及び20b…ウェーハ、 100…両面研磨装置。
【要約】
【課題】両面研磨後のフラットネスのばらつきが低減されたウェーハ群を提供することができるスラリ圧送方式の両面研磨方法を提供すること。
【解決手段】定盤中心を有する回転定盤の上定盤と下定盤との間に複数枚のキャリアを設置し、複数枚のキャリアの各々に一枚以上のウェーハを保持させ、圧送方式でスラリを供給しながらウェーハの両面を研磨する方法において、複数枚のキャリアに保持されるウェーハの配置を、複数枚のキャリアから基準キャリアを選択し、定盤中心を角度中心として定盤中心及び基準キャリアとともになす角αが最大になる一枚又は二枚のキャリアを対称キャリアとし、基準キャリアに配置されるウェーハの平均厚みAμmと、対称キャリアに配置されるウェーハの平均厚みBμmとの差が、1.0μm以下となるようにして、ウェーハの両面研磨を行うことを特徴とする両面研磨方法。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7