【文献】
研究成果第561集「医薬品作物、医療用素材等の開発」、2016年,pp. 315-322
【文献】
許南浩編,よく使われる培地(DMEM, ハムF12など)はどうやって開発されたの?,細胞培養なるほどQ&A,株式会社羊土社,2005年,第3刷,pp. 82-83
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コラーゲンを、無機塩類のみからなるゲル化剤でゲル化し、次いで得られたコラーゲンゲルをガラス化し、更にこれを水和処理に付すことを特徴とするコラーゲンビトリゲルの製造方法であって、ゲル化剤が、無機炭酸塩類と、無機塩化物および無機リン酸塩よりなる群から選ばれる化合物とを含有し、無機炭酸塩類が、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムよりなる群から選ばれる1種または2種、無機塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムよりなる群から選ばれる1種または2種以上、無機リン酸塩が、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムよりなる群から選ばれる1種または2種以上であり、 コラーゲンとゲル化剤の混合物の25℃におけるpHが6.2〜9.8であるコラーゲンビトリゲルの製造方法。
コラーゲンを、無機塩類のみからなるゲル化剤でゲル化し、次いで得られたコラーゲンゲルをガラス化することにより得られるコラーゲンゲル乾燥体であって、ゲル化剤が、無機炭酸塩類と、無機塩化物および無機リン酸塩よりなる群から選ばれる化合物とを含有し、無機炭酸塩類が、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムよりなる群から選ばれる1種または2種、無機塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムよりなる群から選ばれる1種または2種以上、無機リン酸塩が、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムよりなる群から選ばれる1種または2種以上であり、 コラーゲンとゲル化剤の混合物の25℃におけるpHが6.2〜9.8であるコラーゲンゲル乾燥体。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは生体内に存在するタンパク質のひとつである。ヒトにおいては全身のタンパク質の約30%を占め、特に皮膚、骨、軟骨、腱及び血管壁に多く存在する。コラーゲンの分子量は約30万であり、分子量約10万のポリペプチド鎖3本から成る三重らせん構造を形成している。このコラーゲンはその由来となる動物及びその組織によってアミノ酸配列順序及びアミノ酸組成比が異なる多数の分子種が存在する。
【0003】
コラーゲンは生体内で細胞外マトリックスとして細胞の足場としての役割を果たすと同時に、増殖、分化及び形態形成に影響を与えることが知られており、古くより細胞培養担体として利用され、近年では生体移植材料としても応用されている。
【0004】
このうち、細胞培養担体としてはコラーゲンコートが施された各種培養シャーレやフラスコが市販されており、またコラーゲンゲル中に細胞を分散させて培養する包埋培養法が知られている。一方、生体移植材料としては細胞を担持したコラーゲンゲル材料、溶液状態で移植し生体内でゲル化させるインジェクタブルゲル、コラーゲンゲルを乾燥して膜状あるいはスポンジ状に加工した材料などが存在する。
【0005】
また、コラーゲンから成る生体移植材料として、非特許文献1には軟骨移植用材料、特許文献1には生体内注入用ゲル化材料、特許文献2には人工皮膚材料などが開示されている。このようにコラーゲンから成る生体移植材料の形状はさまざまであるが、コラーゲンゲルを応用して加工、成形された材料が多い。
【0006】
このようなコラーゲンゲルは、コラーゲン溶液を生理的な塩濃度、水素イオン濃度及び温度条件下におくことで得られることが知られており、そのためのゲル化剤としては、一般的に各種細胞培養液、生理食塩水、中性域に緩衝能を持つ緩衝液が用いられる。
【0007】
ところで、生体移植材料としての応用が期待される新規なコラーゲン材料として、「コラーゲンビトリゲル」がある。「ビトリゲル(Vitrigel)(登録第5602094号商標)」とは竹澤らにより命名された新しい学術用語で、従来の細胞外マトリックス等のハイドロゲルをガラス化(vitrification)した後に再水和して得られる安定した状態にあるゲルと定義されている(非特許文献2)。細胞外マトリックスの一つであるコラーゲンから形成されるコラーゲンビトリゲルは、高密度のコラーゲン線維から成るものである。
【0008】
このコラーゲンビトリゲルを利用した薄膜は、従来の板状のコラーゲンゲル材料に比して薄く、強度が高い特徴を持ち、生体移植材料としての応用が期待されており、例えば、非特許文献3には、ブタ皮膚由来アテロコラーゲンを原料としたコラーゲンビトリゲル薄膜から成る軟骨移植用材料が開示されている。また、ウシ皮膚由来ネイティブコラーゲンを原料としたコラーゲンビトリゲル乾燥体薄膜はすでに細胞培養用基材として製品化されている(関東化学(株)#ad−MEDビトリゲル(商標名))。
【0009】
このコラーゲンビトリゲルの製造には、まず、コラーゲンゲルの調製が必要である。従来、コラーゲンゲルの調製には、上記したように一般の細胞培養液、例えばダルベッコ改変イーグル培養液(DMEM)がゲル化剤として用いられている。また、非特許文献4には、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)を加えたDMEMをゲル化剤とし、ブタ皮膚由来アテロコラーゲンからコラーゲンビトリゲルを調製する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、DMEMをゲル化剤としてコラーゲンゲルを得る方法はイン・ビトロ(
in vitro )試験の包埋培養法において従来用いられてきた調製方法ではあるが、生体移植材料の調製方法としては好ましくない。なぜなら、DMEMには30種を超える化合物が含まれているが、このうちコラーゲンのゲル化に関与している化合物はごく一部であり、生体移植材料としてのコラーゲンビトリゲルの調製にDMEMを用いるためには、30種を超える化合物の安全性の確認及び残留許容限度値の設定が必要であり、製造者にとって多大な負担となるためである。
【0011】
上記問題の解決方法の一例として、前記非特許文献4では、HEPESを加えたリン酸緩衝液(PBS)をゲル化剤に使用して得られるコラーゲンビトリゲルが開示されている。しかしながら、この溶液をゲル化剤として調製したコラーゲンビトリゲルは強度が低く、生体移植材料には適さないという問題があるとともに、HEPES自体にも安全性の懸念があることが指摘されている。
【0012】
また、上記方法で得たものに限らず、コラーゲンビトリゲルの低い強度を補う方法として、架橋剤の添加による化学架橋、紫外線やガンマ線の照射による物理架橋で膜強度を高める方法が知られている。しかし、生体移植材料として用いることを想定した場合、化合物による架橋はその添加した化合物の生体毒性が懸念され、また紫外線やガンマ線の照射はコラーゲンの変性が懸念されるため、これら架橋処理は行わないことが望ましい。
【0013】
以上のようなことから、ゲル化剤の成分として安全性の高い化合物を選定し、かつ組成は可能な限り簡素にしながら、最終的に十分な強度のあるコラーゲンビトリゲルを調製しうる方法の開発が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、コラーゲンビトリゲルとは、
図1に示すように、コラーゲンゲルを乾燥することでガラス化させたコラーゲンゲル乾燥体(コラーゲンキセロゲル)を再水和したものを意味する。また、精製コラーゲンビトリゲルとは、このコラーゲンビトリゲルを脱塩処理後平衡化したもの、これを更に乾燥して再ガラス化したものおよびその再水和物を意味する。
【0026】
本発明のコラーゲンビトリゲルは、コラーゲンを、無機炭酸塩類と、無機塩化物および無機リン酸塩よりなる群から選ばれる化合物(無機塩)とを含有する水溶液と混合してコラーゲンゲルを調製し、次いでこれを乾燥することによりガラス化して得られるコラーゲンゲル乾燥体を、更に水和することにより得られる。
【0027】
より詳しくは、コラーゲンビトリゲルは、次のようにして製造される。すなわち、まずコラーゲン溶液と、前記無機炭酸塩類と、無機塩化物および無機リン酸塩よりなる群から選ばれる化合物とを含有する水溶液(以下、「ゲル化剤」と略称することがある)とを混合することでコラーゲンゾルとし、そのコラーゲンゾルを加温して線維化させてコラーゲンゲルとする。次いでこれを乾燥、ガラス化することにより得られるコラーゲンゲル乾燥体を水和処理することでコラーゲンビトリゲルが得られる。
【0028】
また、精製コラーゲンビトリゲルは、上記のようにして得られたコラーゲンビトリゲルを、更に脱塩(洗浄)、平衡化することで得られ、更にはこれを乾燥、再ガラス化させ、必要により再水和することにより得られる。
【0029】
本発明方法により、コラーゲンビトリゲルを調製するには、まず、コラーゲンを、ゲル化剤と混合してコラーゲンゲルを調製することが必要である。
【0030】
本発明に用いられるコラーゲンは、その由来となる動物種について特に限定されるものではなく、種々のものを使用できる。例えば、その由来としては、哺乳類由来コラーゲン(例えば、ウシ由来コラーゲン、ブタ由来コラーゲン、ヤギ由来コラーゲン、ヒツジ由来コラーゲン、又はサル由来コラーゲン)、鳥類由来コラーゲン(例えば、ニワトリ由来コラーゲン、ガチョウ由来コラーゲン、アヒル由来コラーゲン、又はダチョウ由来コラーゲン)、魚類由来コラーゲン(例えば、サケ由来コラーゲン、タイ由来コラーゲン、マグロ由来コラーゲン、テラピア由来コラーゲン、又はサメ由来コラーゲン)、爬虫類由来コラーゲン(例えば、ワニ由来コラーゲン)、両生類由来コラーゲン(例えば、カエル由来コラーゲン)、無脊椎動物由来コラーゲン(例えば、クラゲ由来コラーゲン)を利用することができる。また前記コラーゲンの由来となる部位についても特に限定されるものではなく、例えば、皮膚、骨、軟骨、筋肉、又は鱗を挙げることができる。
【0031】
本発明において、好ましく用いられるコラーゲンは、ヒトの生体温度である37℃以下で変性せず安定なコラーゲンである。コラーゲンの変性温度はその由来となる生物の生息域に関係し、魚類等水生生物のコラーゲンはヒトのそれと比べて低温域に変性温度がある。したがって、コラーゲンの変性温度がヒトに近い陸生生物由来コラーゲンが好ましく、工業的な安定供給の面から畜産動物からコラーゲンを得ることが好ましい。畜産動物としては、ウシやブタが挙げられるが、ウシはBSE(牛海綿状脳症)等の病原体を保有する危険性があるため好ましくなく、ブタが好ましい。
【0032】
更に本発明に用いられるコラーゲンは、線維性コラーゲンであればその分子構造についても限定されるものではなく、分子種(型)としては、例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、又はV型コラーゲンが挙げられる。特にI型コラーゲンあるいはIII型コラーゲンを主成分として構成されるコラーゲンは工業的に収量が多く、比較的安価で安定的に供給可能である点から好ましい。また、コラーゲン分子の末端に存在する非らせん構造領域(テロペプチド)は抗原性を有するため、このテロペプチドを酵素処理により除去(アテロ化)したアテロコラーゲンを用いることがより好ましい。
【0033】
このコラーゲンは、ゲル化にあたっては水等の溶媒に溶解した溶液の状態で使用することが好ましく、pH2.0〜6.0の酸可溶化コラーゲン溶液であることがより好ましい。pHが2.0よりも低い場合、コラーゲン分子の加水分解の可能性があり、pHが6.0よりも高い場合はコラーゲンが十分に可溶化されない可能性があり、共に好ましくない。
【0034】
また、ゲル化にあたってのコラーゲン溶液のコラーゲン濃度については、コラーゲンの溶解性、コラーゲン溶液の粘性がコラーゲンゲルの製造に支障がなく、得られるコラーゲンビトリゲルの物性がその用途において十分であれば、限定されるものではないが、ゲル化剤と混合後の終濃度が0.05w/v%〜5.0w/v%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.2w/v%〜2.0w/v%の範囲である。
【0035】
一方、コラーゲンのゲル化にあたって使用されるゲル化剤は、上記した通り、無機炭酸塩類(無機炭酸塩、無機炭酸水素塩)と、無機塩化物及び無機リン酸塩よりなる群から選ばれる化合物(以下、「無機塩類」と略称することがある)とを含有する水溶液である。
【0036】
本発明において、ゲル化剤の成分として用いられる無機炭酸塩類は、水に対して易溶性なものであればその分子構造について限定されるものではなく、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機炭酸塩や、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機炭酸水素塩を利用することができる。
【0037】
また、ゲル化剤の別の成分として用いられる無機塩類は、無機塩化物や無機リン酸塩に属し、水に対して易溶性なものであればその分子構造について限定されるものではなく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の無機塩化物や、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム等の無機リン酸類を利用することができる。
【0038】
このゲル化剤における、無機炭酸塩類および無機塩類(無機塩化物、または無機リン酸塩)の種類やその組み合わせは、コラーゲン溶液を混合した際にコラーゲンの線維化(自己組織化)を惹起できるものであれば特に限定されるものではないが、無機炭酸塩類のうち少なくとも1つと、無機塩化物、無機リン酸塩の少なくとも1つの化合物を含有することが必要である。
【0039】
また、ゲル化剤とコラーゲン溶液を混合後の溶液(コラーゲンゾル)は、25℃におけるpHが6.2〜9.8の範囲にあることが好ましく、6.8〜9.0であることがより好ましい。更に、ゲル化剤中での無機炭酸塩類および無機塩類の濃度としては、コラーゲンゾル中でのイオン強度が0.07〜0.22の範囲にあることが好ましく、0.07〜0.18の範囲にあることがより好ましい。
【0040】
本発明においては、ゲル化剤とコラーゲン溶液を混合して調製したコラーゲンゾルを加温してコラーゲンを線維化させ、コラーゲンゲルとするのであるが、その際の温度は、使用するコラーゲンの変性温度を基準にして決定することが好ましい。コラーゲンの線維化はコラーゲンの変性温度付近で惹起され、変性温度を大きく下回る温度では線維化が惹起されない。すなわち、変性温度に対して−20℃以上であり、変性温度以下の範囲であることが好ましい。例えば、ブタ由来コラーゲンの変性温度は41℃であるため、21℃〜41℃の範囲が好ましい。
【0041】
上記のようにして得られたコラーゲンゲルは、次いで乾燥に付され、ガラス化されてコラーゲンゲル乾燥体(コラーゲンキセロゲル)とされる。この「ガラス化(vitrification)」とは、例えば、鶏卵のタンパク質(白身)等の熱変性タンパク質のハイドロゲルを乾燥し、水分を十分に除去することで、硬質で透明度の高いガラス様の物質に変換する現象を意味する(Takushi Eisei、“Edible eyeballs from fish”、
Nature、1990年、Vol345、p.298‐299)。
【0042】
本発明方法において、コラーゲンゲルをガラス化するための乾燥方法としては、風乾を用いることが好ましく、また、その温度としてはコラーゲンの変性温度以下であることが好ましい。
【0043】
より具体的には、好ましくは、風乾に恒温恒湿機を用い、例えば、温湿度条件10℃、40%rh程度の条件下にコラーゲンゲルを2日間静置させて、コラーゲンゲルのガラス化を行うことが好ましい。
【0044】
このようにして得られたコラーゲンゲル乾燥体は、次いで再水和することでコラーゲンビトリゲルとすることができる。コラーゲンゲル乾燥体の再水和に用いる溶液は、本発明のゲル化剤に含まれている成分を含有する、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液、精製水等のpHが中性域(例えば、pH6.0〜8.0程度)にある水溶液を挙げることができる。この再水和に用いる溶液はコラーゲンゲル製造時のゲル化剤とその組成、濃度が同一である必要はなく、これに限定されるものではない。
【0045】
上記再水和にあたっては、コラーゲンゲル乾燥体10mgあたり1mL以上のD‐PBS(−)に30分以上浸漬して水和させることが好ましい。水和に用いる水溶液の温度は、使用するコラーゲンの変性温度を大きく下回る温度であることが好ましく、変性温度に対して−20℃以下が好ましい。
【0046】
以上のようにして、水和物としてコラーゲンビトリゲルが調製される。このコラーゲンビトリゲルは、それ自体の強度が高く、工業的、機械的に製造、加工が容易であり、取扱いやすいものである。そして、このコラーゲンビトリゲルは、その製造工程で使用するゲル化剤、再水和剤の成分として無機炭酸塩類、無機塩化物、無機リン酸塩等の無機化合物しか使用せず、従来使用されていた培地成分や有機物は使用しないため、例えば、生体的に安全性の高い医療用コラーゲンビトリゲルとして利用可能である。
【0047】
なお、上記コラーゲンビトリゲルは、更に脱塩処理、平衡化処理を施し、その後乾燥させることで精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)とすることができる。
【0048】
前記したコラーゲンゲル乾燥体(コラーゲンキセロゲル)はコラーゲンゲルを乾燥して得られるため、ややもすると使用するゲル化剤に含有される無機化合物が乾燥により濃縮され結晶として析出することがある。結晶はコラーゲンビトリゲル乾燥体の表面に不均一に析出するため、見た目を損なうとともに、製品の均一性に問題を生じるおそれがある。
【0049】
これに対し、コラーゲンビトリゲルを脱塩処理、平衡化処理を行うことにより、均一性が高く外見の良い精製コラーゲンビトリゲル(水和体)を得ることができる。ここで行われる脱塩処理は、コラーゲンビトリゲルを、pHが中性域(例えば、pH6.0〜8.0程度)にある水溶液に浸漬することにより行われるが、D‐PBS(−)に浸漬して行うことが好ましい。具体的には、例えば、コラーゲンゲル乾燥体を、10mgあたり1mL以上のD‐PBS(−)に浸漬して水和させコラーゲンビトリゲルとした後に、コラーゲンビトリゲル周囲のD‐PBS(−)を除去し、さらに2回以上D‐PBS(−)に浸漬することでコラーゲンビトリゲルの脱塩、D‐PBS(−)による平衡化を行うことができる。
【0050】
この操作における水溶液の温度は、使用するコラーゲンの変性温度を大きく下回る温度であることが好ましく、変性温度に対して−20℃以下が好ましい。
【0051】
更に、精製コラーゲンビトリゲル(水和体)の再ガラス化のための乾燥は、風乾を用いることが好ましく、また、その温度としてはコラーゲンの変性温度以下であることが好ましい。より具体的には、風乾には恒温恒湿機を用いることが好ましく、例えば、温湿度条件10℃、40%rhの恒温恒湿機内に精製コラーゲンビトリゲル(水和体)を1日間静置させて、乾燥を行うことが好ましい。
【0052】
以上説明した方法で調製されるコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルは、上記したようにそれ自体が十分な強度があり、安全性が高いものであるため、特に医療用の、再生医療用細胞担体、創傷被覆材、人工皮膚、癒着防止材等のデバイスとして、利用可能である。また、その形状も、その用途に応じて任意の形状、例えば、板状、膜状、棒状、糸状、筒状、管状、袋状等に加工することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【実施例1】
【0054】
( コラーゲン溶液の調製 )
ブタ皮膚由来アテロコラーゲン(日本ハム(株)#NMPコラーゲンPS)2gを滅菌水200mLに溶解し、1w/v%コラーゲン溶液を調製した。
【0055】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水(D‐PBS(−);和光純薬工業(株)#045‐29795)500mLに炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)#191‐01305)1.85gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0056】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
50mL容量のコニカルチューブ(コーニング#352070)に、ゲル化剤と1w/v%コラーゲン溶液をそれぞれ20mL採り、均一に混和し、これをコラーゲンゾルとした。コラーゲンゾルの調製は氷冷下で行った。次いで、ポリスチレン角型シャーレ(アズワン(株)#D210‐16)にアクリル円筒鋳型((株)コスモスビード、外径38.8mm×内径34.8mm×高さ30.0mm)を置き、この鋳型内にコラーゲンゾル10mLを充填した。37℃の恒温機内に2時間静置してコラーゲンを線維化させ、コラーゲンゲルを得た。
【0057】
このコラーゲンゲルを恒温恒湿機(温湿度条件10℃、40%rh)で2日間乾燥し、ガラス化させてコラーゲンゲル乾燥体を得た。さらにこのコラーゲンゲル乾燥体を、10mgあたり1mLのD‐PBS(−)に浸漬して水和させ、コラーゲンビトリゲルを得た。
【0058】
上記コラーゲンビトリゲルをD‐PBS(−)で2回洗浄することで過剰な塩を除去し、コラーゲンビトリゲル内をD‐PBS(−)に平衡化した後、再度恒温恒湿機( 温湿度条件10℃、40%rh)で2日間乾燥させ、精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を得た。
【実施例2】
【0059】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)#191‐01665)3.21g、リン酸二水素カリウム(和光純薬工業(株)#169‐04245)3.40g、炭酸水素ナトリウム1.85gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0060】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例3】
【0061】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、炭酸水素ナトリウム1.85gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0062】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例4】
【0063】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水500mLに炭酸水素ナトリウム0.42gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0064】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例5】
【0065】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水500mLに炭酸水素ナトリウム0.84gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0066】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例6】
【0067】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水500mLに炭酸水素ナトリウム2.27gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0068】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例7】
【0069】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水500mLに炭酸水素ナトリウム0.42gと炭酸ナトリウム(和光純薬工業(株)#196‐01595)0.53gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0070】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例8】
【0071】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水500mLに炭酸水素ナトリウム1.85gと炭酸ナトリウム0.53gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0072】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例9】
【0073】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水500mLに炭酸水素ナトリウム2.94gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0074】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例10】
【0075】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、炭酸水素ナトリウム0.46gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0076】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例11】
【0077】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、炭酸水素ナトリウム0.84gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0078】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例12】
【0079】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、炭酸水素ナトリウム2.52gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0080】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例13】
【0081】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、炭酸水素ナトリウム2.94gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0082】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例14】
【0083】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、炭酸水素ナトリウム3.36gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0084】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例15】
【0085】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム(和光純薬工業(株)#163‐03545)0.10g、塩化カルシウム(和光純薬工業(株)#039‐00475)0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物(Millipore#10049-21-5)0.07g、炭酸水素ナトリウム0.42g、炭酸ナトリウム0.53gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0086】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例16】
【0087】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム1.85g、炭酸ナトリウム1.59gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0088】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例17】
【0089】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム1.17g、炭酸水素ナトリウム4.62gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0090】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例18】
【0091】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム0.42gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0092】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例19】
【0093】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム0.84gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0094】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例20】
【0095】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム1.68gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0096】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例21】
【0097】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム2.52gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0098】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例22】
【0099】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム3.36gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0100】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例23】
【0101】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム4.20gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0102】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例24】
【0103】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸ナトリウム0.53gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0104】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例25】
【0105】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸ナトリウム1.06gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0106】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例26】
【0107】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム0.84g、炭酸ナトリウム0.27gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0108】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例27】
【0109】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム0.84g、炭酸ナトリウム0.53gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0110】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例28】
【0111】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム0.84g、炭酸ナトリウム1.06gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0112】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例29】
【0113】
( ゲル化剤の調製 )
リン酸緩衝生理食塩水500mLに炭酸水素ナトリウム0.21gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0114】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例30】
【0115】
( ゲル化剤の調製 )
ハンクス緩衝塩類溶液(HBSS(−);和光純薬工業(株)#085‐09355)500mLに炭酸ナトリウム0.85gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0116】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【実施例31】
【0117】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸ナトリウム0.27gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0118】
( コラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1と同様な方法でコラーゲンビトリゲル及び精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を調製した。
【0119】
( ゲル化剤の調製 )
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)490mLに1mol/L HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸);Thermo Fisher Scientific#15630‐080)10mLを加え、均一に混和し、これをゲル化剤とした。
【0120】
( コラーゲンビトリゲル及びコラーゲンビトリゲル乾燥体の調製 )
50mL容量のコニカルチューブに上記ゲル化剤と実施例1の1w/v%コラーゲン溶液をそれぞれ20mL採り、均一に混和し、これをコラーゲンゾルとした。コラーゲンゾルの調製は氷冷下で行った。次いでポリスチレン角型シャーレにアクリル円筒鋳型を置き、この鋳型内にコラーゲンゾル10mLを充填した。37℃の炭酸ガスインキュベーター(CO
2 5%)内に2時間静置してコラーゲンを線維化させ、コラーゲンゲルを得た。
【0121】
このコラーゲンゲルを恒温恒湿機で乾燥し、ガラス化させ、コラーゲンゲル乾燥体を得た。さらにこのコラーゲンゲル乾燥体を、10mgあたり1mLのD‐PBS(−)に浸漬して水和させ、コラーゲンビトリゲルを得た。コラーゲンビトリゲルをD‐PBS(−)で2回洗浄することで過剰な塩や他の成分を除去し、コラーゲンビトリゲル内をD‐PBS(−)に平衡化した後、再度乾燥させ、コラーゲンビトリゲルの対応乾燥体を得た。
【0122】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤をD‐PBS(−)に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、一度はゲル化したコラーゲンゲルがその後の工程において溶解、ゾル化したためにコラーゲンゲル乾燥体として回収できず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0123】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム8.77gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0124】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、一度はゲル化したコラーゲンゲルがその後の工程において溶解、ゾル化したためにコラーゲンゲル乾燥体として回収できず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0125】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム1.75g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.14g、リン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業(株)#197‐02865)1.35gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0126】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、一度はゲル化したコラーゲンゲルがその後の工程において溶解、ゾル化したためにコラーゲンゲル乾燥体として回収できず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0127】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤をHBSS(−)に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、コラーゲンがゲル化しなかったためにコラーゲンゲルを得られず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0128】
( ゲル化剤の調製 )
HBSS(−)500mLに炭酸ナトリウム2.12gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0129】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、コラーゲンがゲル化しなかったためにコラーゲンゲルを得られず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0130】
( ゲル化剤の調製 )
HBSS(−)500mLに炭酸ナトリウム4.24gを加えて溶解しゲル化剤とした。
【0131】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、コラーゲンがゲル化しなかったためにコラーゲンゲルを得られず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0132】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0133】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、コラーゲンがゲル化しなかったためにコラーゲンゲルを得られず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0134】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸水素ナトリウム0.21gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0135】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、コラーゲンがゲル化しなかったためにコラーゲンゲルを得られず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0136】
( ゲル化剤の調製 )
塩化ナトリウム3.21g、塩化カリウム0.10g、塩化カルシウム0.10g、リン酸二水素ナトリウム一水和物0.07g、炭酸ナトリウム2.12gを採り、滅菌水500mLに溶解し、これをゲル化剤とした。
【0137】
( コラーゲンビトリゲルの調製 )
ゲル化剤を上記ゲル化剤に変更した以外は、実施例1の方法でコラーゲンビトリゲルの調製を試みた。しかし、コラーゲンがゲル化しなかったためにコラーゲンゲルを得られず、コラーゲンビトリゲルを得られなかった。
【0138】
物性測定:
実施例1〜31及び比較例1〜10のコラーゲンゾルに含まれる無機化合物の濃度とそのイオン強度及びpH、実施例1〜3、実施例8、実施例10、実施例12、実施例18、実施例23〜25、実施例27、実施例29〜31及び比較例1の精製コラーゲンビトリゲル(水和体)の膜強度測定を下記方法により行った。この結果を表1〜表7に示す。
【0139】
( pH測定 )
pHは、実施例1〜29及び比較例1〜10の、ゲル化前のコラーゲンゾルについて測定した。pH測定は、各コラーゲンゾル0.5mLをpHメーター((株)堀場製作所#LAQUAtwin AS−712)の測定電極皿に入れ、そのpHを測定することで行った。
【0140】
( イオン強度算出 )
コラーゲンゾルに含まれる化合物(コラーゲンを除く)のイオン種A、B、C...それぞれのモル濃度(mol/L)をm
A、m
B、m
C...、それぞれの電荷数をZ
A、Z
B、Z
C...とするとき、そのコラーゲンゾルのイオン強度Iは下式で定義される。
【0142】
( 膜強度測定 )
実施例1〜3、実施例8、実施例10、実施例12、実施例18、実施例23〜25、実施例27、実施例29〜31及び比較例1の精製コラーゲンビトリゲル(水和体)の膜強度を測定した。精製コラーゲンビトリゲル(水和体)の膜強度は以下の方法により測定した。すなわち、直径34.8mmの精製コラーゲンビトリゲル(乾燥体)を8mlのD‐PBS(−)に浸漬して1時間再水和した。水和により得られた精製コラーゲンビトリゲル(水和体)を中央に直径5mmの穴の開いた直径50mmのアクリル板2枚で挟み固定した。この直径5mmの穴から覗く固定された膜に対して、直径1.0mmのステンレス製針を垂直に、3.0mm/minの速度で突き刺し、針が精製コラーゲンビトリゲル(水和体)を貫通するまでの最大応力(N)を小型卓上試験機((株)島津製作所#EZ‐SX、ロードセル最大荷重5N)を用いて測定した。精製コラーゲンビトリゲル(水和体)1つにつき3ヵ所について測定を行い、その平均値を最大応力(N)とした。この操作を3つの精製コラーゲンビトリゲル(水和体)に対して行い、3つの最大応力の平均値を膜強度(N)とした。
【0150】
表1〜表6から明らかなように、本発明方法により得られた精製コラーゲンビトリゲルは、十分な膜強度を有し、かつ無機塩以外の残留成分を実質的に含まず、生体的な安全性が高く、実用的なものであった。