特許第6885680号(P6885680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6885680粉体搬送装置、粉体搬送方法及び画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885680
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】粉体搬送装置、粉体搬送方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   G03G15/08 300
   G03G15/08 347
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-112261(P2016-112261)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-219594(P2017-219594A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘一
(72)【発明者】
【氏名】松本 純一
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】吉浜 舜
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196689(JP,A)
【文献】 特開2010−242634(JP,A)
【文献】 特開2013−174139(JP,A)
【文献】 特開2014−170052(JP,A)
【文献】 特開2014−005807(JP,A)
【文献】 米国特許第05273406(US,A)
【文献】 特開昭49−000804(JP,A)
【文献】 特開平05−321842(JP,A)
【文献】 特開2010−203400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を搬送する粉体搬送装置であって、
粉体流路を形成する弾性体からなる内壁部と、前記内壁部を囲むように前記内壁部の前記粉体流路とは反対側に設けられた外壁部とを有するポンプ部材が複数並べて設けられ、
前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部と前記外壁部との間の空間に流体を供給して、前記複数のポンプ部材それぞれの内壁部を前記粉体流路の中心軸側に変形させる駆動手段と、
前記複数のポンプ部材の内壁部の前記中心軸側への変形を、前記粉体流路における粉体の搬送方向の上流側から下流側に向けて順次行うように、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記内壁部を変形させる際に、前記粉体流路に空隙が残るように前記内壁部を変形させ、
前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部が変形していないときの前記搬送方向と直交する方向における前記粉体流路の断面積をSとし、前記内壁部が変形したときの前記搬送方向と直交する方向における前記空隙の断面積をsとしたとき、
0.75<(1−s/S)<0.99
を満たすことを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項2】
請求項1の粉体搬送装置において、
前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部が変形していないときに前記粉体流路に充填されている粉体の該粉体流路の単位体積あたりの充填率は、70[%]以下及び30[%]以上であることを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2の粉体搬送装置において、
前記制御手段は、前記粉体の搬送時に前記複数のポンプ部材のうち互いに隣り合った二つのポンプ部材の内壁部が連動して前記粉体流路の中心軸側へ変形するように、前記駆動手段を制御することを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかの粉体搬送装置において、
前記外壁部は弾性体からなり、前記搬送方向における前記内壁部及び前記外壁部の両端部が固定された接続部材を備え、
前記駆動手段は、前記流体の供給を停止して前記内壁部を復元させるように構成され、
前記制御手段は、前記駆動手段による前記流体の供給を制御するように構成されていることを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項5】
請求項の粉体搬送装置において、
前記駆動手段によって前記流体を供給するときの圧力は20[kPa]以上であることを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項6】
請求項又はの粉体搬送装置において、
前記内壁部を変形させる際に前記駆動手段によって前記流体を供給する時間は、0.2[秒]以上及び1.5[秒]以下であることを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかの粉体搬送装置において、
前記粉体は現像剤であることを特徴とする粉体搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかの粉体搬送装置を備える画像形成装置。
【請求項9】
粉体を搬送する粉体搬送方法であって、
粉体流路を形成するように弾性体からなる内壁部と、前記内壁部を囲むように前記内壁部の前記粉体流路とは反対側に設けられた外壁部とを有するポンプ部材が複数並べて設けられ、
前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部と前記外壁部との間の空間に流体を供給して、前記複数のポンプ部材の内壁部の前記粉体流路の中心軸側への変形を、前記粉体流路における粉体の搬送方向の上流側から下流側に向けて順次行い、
前記内壁部を変形させる際に、前記粉体流路に空隙が残るように前記内壁部を変形させ、
前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部が変形していないときの前記搬送方向と直交する方向における前記粉体流路の断面積をSとし、前記内壁部が変形したときの前記搬送方向と直交する方向における前記空隙の断面積をsとしたとき、
0.75<(1−s/S)<0.99
を満たすことを特徴とする粉体搬送方法。
【請求項10】
請求項の粉体搬送方法において、
前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部が変形していないときに前記粉体流路に充填されている粉体の該粉体流路の単位体積あたりの充填率は、70%以下及び30%以上であることを特徴とする粉体搬送方法。
【請求項11】
請求項9又は10の粉体搬送方法において、
前記粉体の搬送時に前記複数のポンプ部材のうち互いに隣り合った二つのポンプ部材の内壁部を連動させて前記粉体流路の中心軸側へ変形させることを特徴とする粉体搬送方法。
【請求項12】
請求項乃至11のいずれかの粉体搬送方法において、
前記複数のポンプ部材はそれぞれ、前記外壁部が弾性体からなり、前記搬送方向における前記内壁部及び前記外壁部の両端部が固定された接続部材を備え、
前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部と前記外壁部との間の空間への流体の供給を停止して前記内壁部を復元させることを特徴とする粉体搬送方法。
【請求項13】
請求項12の粉体搬送方法において、
前記流体を供給するときの圧力は20[kPa]以上であることを特徴とする粉体搬送方法。
【請求項14】
請求項12又は13の粉体搬送方法において、
前記内壁部を変形させる際に前記流体を供給する時間は、0.2[秒]以上及び1.5[秒]以下であることを特徴とする粉体搬送方法。
【請求項15】
請求項乃至14のいずれかの粉体搬送方法において、
前記粉体は現像剤であることを特徴とする粉体搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体搬送装置、粉体搬送方法及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の現像剤などの粉体を搬送する粉体搬送装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、かかる粉体搬送装置であって、モータで回転駆動されたスクリュを用いて、補給容器から現像装置に現像剤を搬送するものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記回転駆動されたスクリュを用いる粉体搬送装置では、回転駆動されるスクリュによるせん断力が粉体に作用したり、スクリュを回転駆動するモータに発生した熱が粉体に伝わって粉体が温度上昇したりすることにより、粉体の凝集が発生しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、粉体を搬送する粉体搬送装置であって、粉体流路を形成する弾性体からなる内壁部と、前記内壁部を囲むように前記内壁部の前記粉体流路とは反対側に設けられた外壁部とを有するポンプ部材が複数並べて設けられ、前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部と前記外壁部との間の空間に流体を供給して、前記複数のポンプ部材それぞれの内壁部を前記粉体流路の中心軸側に変形させる駆動手段と、前記複数のポンプ部材の内壁部の前記中心軸側への変形を、前記粉体流路における粉体の搬送方向の上流側から下流側に向けて順次行うように、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記内壁部を変形させる際に、前記粉体流路に空隙が残るように前記内壁部を変形させ、前記複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部が変形していないときの前記搬送方向と直交する方向における前記粉体流路の断面積をSとし、前記内壁部が変形したときの前記搬送方向と直交する方向における前記空隙の断面積をsとしたとき、0.75<(1−s/S)<0.99を満たすことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粉体の凝集を抑制しつつ粉体を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る粉体搬送装置の一例を示す概略構成図。
図2】ポンプユニットの斜視断面図。
図3】(a)及び(b)はそれぞれポンプユニットの正面図及び側面図。
図4】ポンプユニットの内筒及び外筒の膨張時の変形の様子を示す断面図。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ、ポンプユニットの内筒及び外筒の膨張時の変形の様子を示す正面図及び側面図。
図6】(a)〜(f)は、6個のポンプユニットを有するコンベアの全体における蠕動運動による粉体搬送動作の動作パターンの一例を示す説明図。
図7】(a)及び(b)はそれぞれ粉体流路内の充填率の説明図。
図8】ポンプユニットの軸方向(搬送方向)における収縮の様子を示す説明図。
図9】ポンプユニットの収縮率の測定に用いた測定システムの概要を示す説明図。
図10】ポンプユニットの印加圧力ごとの収縮率を示すグラフ。
図11】ポンプユニットの印加圧力ごとの閉口率を示すグラフ。
図12】ポンプユニットの押出体積の測定に用いた測定システムの概要を示す説明図。
図13】ポンプユニットについて測定した押出体積の一例を示すグラフ。
図14図13の押出体積を単位時間当たりの推定キャリア搬送量に置き換えたグラフ。
図15】粉体搬送装置の粉体搬送動作例の実施に用いたシステムの概略構成図。
図16】粉体搬送動作例におけるポンプユニットの加圧オン・オフ制御(電磁弁のオン・オフ制御)の一例を示すタイムチャート。
図17】(a)〜(d)は、図15の粉体搬送装置において搬送動作を行ったときにコンベアの出口からキャリアが排出される様子を撮影した写真を示す図。
図18】キャリアの搬送量(累積量)の測定結果を示すグラフ。
図19図18の結果から算出した、複数の加圧時間tそれぞれに対する単位時間当たりの搬送量を示すグラフ。
図20】ポンプユニットの閉口率とコンベアで搬送されるキャリアの単位時間当たりの搬送量との関係を測定した結果を示すグラフ。
図21図15の粉体搬送装置において搬送動作を行った直後のコンベアの粉体流路の内部を撮影した写真を示す図。
図22】ポンプユニットにおけるキャリアの充填率とコンベアで搬送されるキャリアの単位時間当たりの搬送量との関係を測定した結果を示すグラフ。
図23】(a)〜(d)は、図15の粉体搬送装置において搬送動作を行ったときにコンベアの出口からトナー(現像剤)が排出される様子を撮影した写真を示す図。
図24図15の粉体搬送装置について測定した現像剤(トナー)の搬送量(累積量)の測定結果を示すグラフ。
図25図15の粉体搬送装置について測定した現像剤(トナー)の単位時間当たりの搬送量の測定結果を示すグラフ。
図26】本実施形態に係る粉体搬送装置を適用可能な画像形成装置500の一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
〔搬送対象〕
以下に示す実施形態の装置及び方法における搬送対象の粉体は、例えば、電子写真方式の画像形成装置の現像剤に用いられるキャリア、トナー、キャリア及びトナーの混合体、キャリア及びトナーの製造に用いられる材料などである。また、本実施形態の装置及び方法は、小麦粉等の食糧、粉状の薬、セメント等の土木・建築材料、磁性粉末、金属粉末、樹脂粉末等の様々な粉体の搬送にも適用できる。搬送対象の粉体の粒径は特に限定されないが、例えば数百nm〜数百μmである。例えば、キャリアの粒径は数μm〜数百μm(例えば10μm〜100μm)であり、トナーの粒径は数μm〜数十μm(典型的には例えば3μm〜20μm)である。また、搬送対象は、数mm以上の粒状物であってもよい。また、搬送対象の形状は特に限定されないが、例えば球状であってもよいし、不定形であってもよい。
【0010】
〔粉体搬送装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る粉体搬送装置10の一例を示す概略構成図である。図1において、粉体搬送装置10は、粉体搬送ポンプ本体である蠕動運動型のコンベア100と、コンベア100を駆動する駆動手段としての圧縮空気供給部200と、圧縮空気供給部200を制御する制御手段としての制御部300とを備える。
【0011】
コンベア100は、粉体流路を形成する弾性体からなる内壁部を有するポンプ部材としてのポンプユニット110が搬送方向Aに複数並べて設けられている。なお、図1の例では、4個のポンプユニット110が中心軸Cの方向に直列に連結された例を示しているが、ポンプユニット110の数は2個、3個、又は5個以上であってもよい。
【0012】
圧縮空気供給部200は、圧縮空気発生装置(エアーコンプレッサ)210と、圧力調整装置(エアーレギュレータ)220と、圧縮空気供給切換装置230と、気体供給経路形成部材としてのエアーチューブ215,225,235とを備える。圧縮空気発生装置210で発生した圧縮空気は図中B方向に排出され、エアーチューブ215を介して圧力調整装置220に供給され、圧力調整装置220で所定の圧力が調整された後、エアーチューブ225を介して圧縮空気供給切換装置230に供給される。圧縮空気供給切換装置230は、複数のポンプユニット110それぞれに個別に対応付けて設けられた複数の電磁弁231を有する。
【0013】
複数の電磁弁231はそれぞれ、例えば、2つの接続ポート(第1接続ポート、第2接続ポート)と排気ポートとを有する通常オフの3方向電磁弁(3ポート電磁弁)を用いて構成することができる。電磁弁231の第1接続ポートは圧力調整装置220側に接続され、第2接続ポートはポンプユニット110側に接続される。例えば、電磁弁231は通常オフであり、第1接続ポートから第2接続ポートへの経路が閉じた状態になっているため、ポンプユニット110から第2接続ポートへの経路は排気ポートを介して大気に連通され大気圧になっている。電磁弁231がオン制御されると、第2接続ポートから排気ポートへの経路が閉じられ、第1接続ポートから第2接続ポートへの経路が開かれて圧力調整装置220からの所定の圧力の圧縮空気がポンプユニット110に供給される。これらの複数の電磁弁231は、制御部300により所定の動作パターンに基づいて互いに独立にオン/オフ制御することができる。
【0014】
また、圧力調整装置220は例えば比例電磁弁を用いて構成することができる。圧力調整装置220における圧力の調整は制御部300で制御できるようにしてもよい。
【0015】
なお、圧縮空気供給部200において、圧力調整装置220を設けずに、電磁弁231として、出力側の圧力を制御可能な比例電磁弁を用いてもよい。更に、圧縮空気供給部200において電磁弁231がオフのとき、ポンプユニット110内の圧縮空気を強制的に吸い出して速やかに大気圧又は所定圧力に減圧する強制減圧機構を設けてもよい。この強制的な吸気機構は、例えば、電磁弁231の排気ポートに圧力調整装置(エアーレギュレータ)を介して接続されたエアータンクと、そのエアータンクに接続された真空ポンプとを用いて構成することができる。また、加圧用の流体としては圧縮空気以外の流体を用いてもよい。
【0016】
制御部300は、例えば、CPU、メモリ、外部インターフェース等を有するマイクロコンピュータなどのコンピュータ装置で構成することでき、所定の制御プログラムを実行することにより、上記電磁弁231や圧力調整装置220を制御することができる。制御部300は、上記所定の制御を行うように設計されたシステムLSI等の電子回路素子で構成してもよい。
【0017】
〔ポンプユニットの構成〕
図2はポンプユニット110の斜視断面図であり、図3(a)及び(b)はそれぞれポンプユニット110の正面図及び側面図である。ポンプユニット110は、粉体流路Pを形成する弾性体からなる内壁部としてのチューブである内筒120と、内筒120を囲むように内筒120の粉体流路Pとは反対側(外側)に設けられた弾性体からなる外壁部としての外筒130とを備えている。更に、ポンプユニット110は、搬送方向Aにおける内筒120及び外筒130の両端部が固定された1対の接続部材としての上流側フランジ140及び下流側フランジ145を備えている。
【0018】
本実施形態のポンプユニット110を有するコンベア100は、人体の蠕動運動を行う腸管を複数のポンプユニット110でモデル化したものであり、腸管の筋層を構成する環状筋及び縦走筋をそれぞれ内筒120及び外筒130で模倣している。外筒130は、軸方向繊維強化型の人工筋肉として機能する。これら複数のポンプユニット110を直列に連結し、搬送方向下流側に向かって、各ポンプユニット110が環状の収縮・弛緩動作と軸方向の収縮動作とを順次行うことにより、腸管の蠕動運動を再現している。
【0019】
内筒120は、例えば、天然ラテックスゴム(例えば、低アンモニア天然ラテックスゴム)やシリコーンゴムなどのゴム部材から構成された円筒状の部材である。内筒120の軸方向両端部はそれぞれ、上流側フランジ140及び下流側フランジ145の内周面140a,145aに固定されている。例えば、内筒120は、上流側フランジ140の流入側に設けられた凹部140bと下流側フランジ145の排出側に設けられた凹部145bとに内側固定リング141、146により固定される。
【0020】
内筒120は、内筒120の軸線方向に平行な方向に沿って延在して、導入された圧力により折れ目を誘発するゴム異形部としてのガイド溝120aを備える。ガイド溝120aは、内筒120の周方向に間隔を隔てて複数本(図示の例では4本)設けられ、内筒120を構成する弾性体(ゴム部材)の変形を拘束し、弾性体を周方向に複数個(図示の例では4個)の膨張域に区画する。本例におけるゴム異形部は、内筒120を構成する弾性体を内筒120の径方向外側に突出する形状とすることで内筒120の内周面にガイド溝120aを形成している。
【0021】
また、内筒120は、周方向に間隔を隔てて、内筒120の軸方向に沿って延在する中心軸側に突出した複数の山形状の内側突出部120bを備える。山形状の内側突出部120bは、周方向に等角度に形成された4本のガイド溝120aのうちの互いに隣接するガイド溝120aの中間にそれぞれ設けられる。内側突出部120bは内筒120の内壁側に設けられているので、内筒120と外筒130との間の空気室(チャンバー)D内に圧縮空気を導入すると、内側突出部120bがある部分に対しても面に垂直な方向の圧力が作用する。なお、内筒120には、内側突出部120bを設けずにガイド溝120aのみ設けてもよい。
【0022】
外筒130は、例えば、低アンモニア天然ラテックスゴムから成る2つの円筒状のゴム部材の間に、軸方向に延長する高弾性繊維を周方向に多数本埋設して成る繊維層を設けたもので構成される。高弾性繊維としては、例えば、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維などが用いられる。外筒130の軸方向両端部はそれぞれ、上流側及び下流側フランジ140,145の外周面140b,145bに外側固定リング142、147で固定されている。
【0023】
上流側フランジ140は、空気孔Eと複数の貫通孔140dとを備え、粉体の流入側に配置される。下流側フランジ145は、複数の貫通孔145dを備え、粉体の排出側に配置される。内筒120の外周側と外筒130の内周側と上流側フランジ140及び下流側フランジ145とにより、加圧用媒体(流体)である圧縮空気が供給される空気室Dが形成される。また、内筒120の内周側の表面により、粉体を搬送するための粉体流路Pが形成される。
【0024】
上流側フランジ140の空気孔Eは、前述の圧縮空気供給部200から送られてきた圧縮空気を空気室Dに導入するための孔であり、貫通孔140d,145dはポンプユニット110を軸方向に複数接続するときに位置決めして固定するための孔である。
【0025】
図3において、記号dはポンプユニット110の管路径である粉体流路(搬送経路という。)Pの直径(変形前の内筒120の内径)である。また、記号dはポンプユニット110の変形前の外筒130の外径であり、記号dは上流側フランジ140及び下流側フランジ145の外径である。また、図3において、記号lはポンプユニット110の搬送方向における長さであり、記号l’は搬送方向における上流側フランジ140と下流側フランジ145との間のフランジ間距離の長さ(外筒130の露出部分の長さ)である。
【0026】
図4は、内筒120及び外筒130の膨張時の変形の様子を示す断面図である。空気室Dに圧縮空気を導入すると、内筒120の空気室D側の面(外周面)に垂直な方向に空気圧が作用し、内筒120は内側矢印方向に膨張するように変形する。このとき、内筒120の円筒面から鋭角に突き出たガイド溝120aを構成する壁面に垂直な方向の空気圧が作用する。この空気圧により、ガイド溝120aは、溝が潰れる方向(壁面同士が近づく方向)に変形し、その結果、図中の一点鎖線で示すように、内筒120にはガイド溝120aの溝底を起点に折り目が発生する。そして、空気室D内の圧力を更に上昇させると、内筒120は、この折り目によって複数個の膨張域に区画されて膨張するような膨張変形を起こす。一方、外筒130は、高弾性繊維により軸方向に対しては非伸長性であるので、径方向に膨張しながら軸方向に収縮する。
【0027】
図5(a)及び(b)はそれぞれ、ポンプユニット110の内筒120及び外筒130の膨張時の変形の様子を示す正面図及び側面図である。図5(a)に示すように、外筒130はポンプユニット110の径方向外側へ膨張する。その際、内筒120のガイド溝120aにより分割された複数の膨張域120(1)〜120(4)が径方向内側に均等に膨張するとともに、図5(b)に示すように、ポンプユニット110は軸方向へ収縮する。
【0028】
本実施形態のポンプユニット110では、粉体を確実に搬送するために、ガイド溝120aが設けられた内筒120を、図5(b)に示すように最大変形時において最大変形箇所(中央部)で空隙Gが残るように変形(膨張)させている。すなわち、内筒120を変形させる際に、粉体流路P内の内筒120の最大変形箇所において粉体流路Pに空隙Gが残るように内筒120を変形させる。更に言い換えると、内筒120を変形させる際に、粉体流路Pを中心軸に沿った軸方向から見たとき空隙(開口部)が残るように内筒120を変形させる。
【0029】
また、ポンプユニット110全体は、空気室Dへの加圧により外筒130が変形することで軸方向に収縮するため、粉体を効率よくポンプユニット110の一方の端部側から他方の端部側に搬送することができる。
【0030】
〔蠕動運動による粉体搬送動作〕
次に、本実施形態の複数のポンプユニット110を有するコンベア100の粉体搬送動作について説明する。
【0031】
図6(a)〜(f)は、6個のポンプユニット111〜116を有するコンベア100の全体における蠕動運動による粉体搬送動作の動作パターンの一例を示す説明図である。なお、図6(a)〜(f)は、コンベア100の蠕動運動による粉体搬送動作の1サイクル分を示している。また、本実施形態において、コンベア100が図6(a)の状態から粉体搬送動作を開始した時点から次の図6(a)の状態になる時点までの1サイクル分の時間を、粉体搬送動作の動作間隔tと定義する。この動作間隔tは、粉体搬送動作の動作周期や、粉体搬送動作の1サイクル分の動作時間ともいう。
【0032】
まず、図6(a)に示すように、第1〜第6ポンプユニット111〜116の連結方向が横方向になるようにコンベア100をセットする。そして、最上流の第1ポンプユニット111を粉体収容部に連結して第1ポンプユニット111内へ粉体を導入する。次に、エアーチューブ235を介して第1ポンプユニット111に連結されている電磁弁231を開放して第1ポンプユニット111の空気室D内に圧縮空気を所定の加圧時間tだけ供給する。この圧縮空気の供給により、第1ポンプユニット111の内筒120を内側に所定の変形量だけ変形させるように膨張させ、第1ポンプユニット111内の粉体を第2ポンプユニット112内に押し出す。
【0033】
次に、第1ポンプユニット111の内筒120を膨張させたまま、エアーチューブ235を介して第2ポンプユニット112に連結されている電磁弁231を開放し、第2ポンプユニット112の空気室Dに圧縮空気を所定の加圧時間tだけ供給する。この圧縮空気の供給により、第2ポンプユニット112の内筒120を内側に所定の変形量だけ変形させるように膨張させ、第2ポンプユニット112内の粉体を第3ポンプユニット113内に押し出す。以下、この図6(a)の状態を初期状態として説明する。
【0034】
次に、図6(b)に示すように、第2ポンプユニット112の内筒120を膨張させたまま、エアーチューブ235を介して第3ポンプユニット113に連結されている電磁弁231を所定時間だけ開放する。これにより、第3ポンプユニット113の空気室D内に圧縮空気を所定時間だけ供給する。この圧縮空気の供給により、第3ポンプユニット113の内筒120を内側に所定の変形量だけ変形させるように膨張させ、第3ポンプユニット113内の粉体を第4ポンプユニット114内に押し出す。このとき、エアーチューブ235を介して第1ポンプユニット111に連結されている電磁弁231を閉鎖する。この電磁弁231の閉鎖により、第1ポンプユニット111の空気室D内の圧縮空気は電磁弁231を介して排気されて大気圧まで減圧されるので、第1ポンプユニット111の内筒120は外筒130とともに膨張前の元の形状に復元する。これにより、第1ポンプユニット111内の粉体経路Pの体積が元の体積まで大きくなるので、第1ポンプユニット111内に新たな粉体を導入することができる。
【0035】
なお、前述の強制減圧機構を設けた場合は、第1ポンプユニット111の空気室D内の圧縮空気を強制的に吸い出して速やかに大気圧又は所定圧力に戻すことができるので、第1ポンプユニット111内に新たな粉体をより速やかに導入することができる。
【0036】
次に、図6(c)に示すように、第3ポンプユニット113の内筒120を膨張させたまま、第4ポンプユニット114の内筒120を膨張させて、第4ポンプユニット114の内の粉体を第5ポンプユニット115内に押し出す。それとともに、第2ポンプユニット112の内筒120を収縮させる。
【0037】
次に、図6(d)に示すように、第4ポンプユニット114の内筒120を膨張させたまま、第5ポンプユニット105の内筒120を膨張させて、第5ポンプユニット115内の粉体を第6ポンプユニット116内に押し出す。それとともに、第3ポンプユニット113の内筒120を収縮させる。
【0038】
次に、図6(e)に示すように、第5ポンプユニット115の内筒120を膨張させたまま、第6ポンプユニット106の内筒120を膨張させて、第6ポンプユニット116内の粉体をコンベア100の外部へ押し出す。それとともに、第4ポンプユニット114の内筒120を収縮させる。
【0039】
次に、図6(f)に示すように、第6ポンプユニット116の内筒120を膨張させたまま、第1ポンプユニット111を膨張させて、第1ポンプユニット111内の粉体を第2ポンプユニット112内に押し出す。それとともに、第5ポンプユニット115の内筒120を収縮させる。その後、第6ポンプユニット116の内筒120を収縮させるとともに、第1ポンプユニット111を膨張させたまま第2ポンプユニット112の内筒120を膨張させると、図6(a)の状態になる。
【0040】
以下、図6(a)〜図6(f)の動作を繰り返すことにより、第1ポンプユニット111内へ注入された粉体を第6ポンプユニット116からコンベア100の外部へ排出することができる。
【0041】
上記図6(a)〜(f)に例示したようなコンベア100の粉体搬送動作における蠕動運動には、「波長」、「送り」及び「波数」の3つの要素がある。ここで、波長lは蠕動運動時に互いに隣接して膨張するポンプユニット110の数である(図6(a)参照)。また、送りpは蠕動運動の波を伝播させる際に伸縮させるポンプユニット110の数である(図6(b)参照)。波数nは、コンベア100全体で同時に伝播させる蠕動運動の波の数である(図6(c)参照)。上記図6(a)〜(f)の例は、波長lが2、送りpが1、波数nが1の場合の蠕動運動による粉体搬送動作の動作パターンの例である。
【0042】
〔理論幾何最大搬送量〕
次に、上記構成のコンベア100の蠕動運動による粉体搬送動作における理論幾何最大搬送量について説明する。
【0043】
ここで、前述の図3に示すように、ポンプユニット110の管路径である粉体流路Pの直径をd[mm]とし、ポンプユニット110の搬送方向における長さをl[mm]とする。1個のポンプユニット110の内部空間理論体積(変形前の粉体流路Pの体積)V[mm]は次式(1)で表される。
【数1】
【0044】
また、ポンプユニット110の1個あたりの粉体の押出し体積率(体積排除率)F[%]を次式(2)で定義する。ここで、Vはポンプユニット110の加圧時(膨張変形時)における粉体流路Pの内部体積[mm]である。
【数2】
【0045】
例えば、前述の図1に示すようにコンベア100を水平に配置し、そのコンベア100の最上流側のポンプユニット110への粉体400の供給をエルボ管からの流れ込みを用いる場合を考える。この場合、ポンプユニット110粉体流路Pの初期内部体積Vに対する粉体流路Pに充填される粉体400の体積Vの割合である次式(3)の充填率Rは、最大でも50[%]と見積もられる(図7参照)。
【数3】
【0046】
更に、前述の図4、5に示すように本実施形態のポンプユニット110の内筒120は半円状に膨張変形するため、ポンプユニット110から軸方向に沿った任意の方向への粉体の搬送量は、押出し体積率Fで25[%]と推定される。
【0047】
上記押出し体積率Fを用いて、コンベア100で搬送される粉体の単位時間当たりの理論幾何最大搬送量(体積)Q[mm/s]は次式(4)で表される。ここで、式中のl、n及びt[s]はそれぞれ、前述の動作パターンの波長、波数及び動作間隔である。また、式中のNはコンベア100を構成するポンプユニット110の個数である。
【数4】
【0048】
更に、粉体の密度をρ[g/mm]とすると、コンベア100で搬送される粉体の単位時間当たりの理論幾何最大搬送量(質量)Q[g/s]は次式(5)で表される。
【数5】
【0049】
〔コンベアの基本性能〕
次に、上記構成のコンベア100の基本性能について説明する。
(1)収縮率
図8は、ポンプユニット110の軸方向(搬送方向)における収縮の様子を示す説明図である。ポンプユニット110の収縮率とはポンプユニット110が軸方向へ収縮する割合を示したものである。ポンプユニット110が軸方向へ収縮することで管内の内容物の搬送効率を上げ、同時に内筒120の閉塞を補助する。ポンプユニット110の軸方向長さをl[mm]とし、ポンプユニット110の収縮量をX[mm]とすると、収縮率R[%]は次式(6)で定義される。
【数6】
【0050】
図9は、ポンプユニット110の収縮率の測定に用いた測定システムの概要を示す説明図である。なお、図9の構成のうち図1と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0051】
図9において、圧縮空気発生装置(エアーコンプレッサ)210からの圧縮空気の圧力を、圧力調整装置(エアーレギュレータ)としての減圧弁(CKD株式会社製のRJB500−LLC6−L)220’にて所定圧力に減圧した。この減圧弁で減圧した圧縮空気をポンプユニット110に印加した。印加圧力は0[kPa]から40[kPa]の範囲で10[kPa]ごとに変化させた。また、圧力印加のオン/オフ動作には、圧縮空気供給切換装置としてのON/OFF弁(SMC株式会社製のVO301−005GS solenoid valve、有効断面積:1.8[mm])231’を用いた。減圧弁220’とON/OFF弁231’との間には長さ500[mm]のエアーチューブ225を用い、ON/OFF弁231’とポンプユニット110との間には長さ1500[mm]のエアーチューブ235を用いた。本測定システム及び後述の粉体搬送動作例のシステムで用いるエアーチューブは全て内径が4[mm]である。
【0052】
表1は、以下の測定等に用いた3種類のポンプユニット(A,B,C)の寸法である。
【表1】
【0053】
図10は、上記測定システムで測定した表1のタイプAのポンプユニット110の印加圧力ごとの収縮率を示すグラフである。図10に示すように、ポンプユニット110への印加圧力の上昇に伴って、ポンプユニット110の収縮率も上昇することが分かる。40[kPa]の圧力印加時には約7.3[%]の収縮率となった。
【0054】
(2)閉口率(開口率)
ポンプユニット110の閉口率(閉塞率ともいう。)Rは次式(7)で定義され、開口率Rは次式(8)で定義される。ここで、式中のS[mm]はポンプユニット110を軸方向から見たときの加圧していない粉体流路Pの初期開口面積であり、s[mm]は圧縮空気を供給した加圧時の粉体流路Pの開口面積(空隙Gの面積)である。
【数7】
【数8】
【0055】
図11は、上記図9の測定システムで測定した表1のタイプA及びタイプBのポンプユニット110の印加圧力ごとの閉口率を示すグラフである。図中の記号「◆」がタイプAのポンプユニット110の閉口率の測定データであり、図中の記号「△」がタイプBのポンプユニット110の閉口率の測定データである。図11に示すように、タイプA及びタイプBのいずれのポンプユニット110についても、印加圧力の上昇に伴って閉口率も上昇することが分かる。また、40[kPa]以上の圧力印加で閉口率はほぼ100[%]となった。
【0056】
(3)押出体積
押出体積とは、ポンプユニット110の内筒120が内側に膨らむように膨張変形したときに粉体流路Pから押し出される体積、すなわち、内筒120の内側の粉体流路Psの初期体積が内筒120の膨張変形によって減少する体積減少量である。この押出体積に前述の動作間隔tと搬送対象の粉体の密度ρを考慮すると、前述のように単位時間あたりの搬送量(質量)を算出することができる。
【0057】
図12は、ポンプユニット110の押出体積の測定に用いた測定システムの概要を示す説明図である。なお、図中のGは重力を表している。
図12において、ポンプユニット110の上部に透明なアクリル管405を配置し、ポンプユニット110とアクリル管405に水410を入れた。各印加圧力ごとの水410の上面H1,H2の変化量ΔHを計測することで押出体積を算出した。印加圧力を40[kPa]として、ポンプユニット110に圧縮空気を供給する加圧時間tを0.1[s]、0.3[s]、0.5[s]、1.0[s]、1.5[s]の場合の押出体積と復元時の押出体積を計測した。本測定で得られる押出体積と復元時の押出体積の差は、後述の粉体搬送動作例におけるポンプユニット110内の粉体流路Pの空間差分に対応する。
【0058】
図13は、上記図12の測定システムで前述のタイプAのポンプユニット110について測定した各加圧時間の押出体積の一例を示すグラフである。図13により、ポンプユニット110の加圧時間tを長くしていくと、ポンプユニット110の空気室Dの膨張体積は増加し、加圧時間tが0.5[s]のときに押出体積は収束する。また、ポンプユニット110の加圧時間tを長くしていくと、復元時の押出体積は減少し、加圧時間1.0[s]で0[cm]となる。つまり、ポンプユニット110の膨張時と復元時との体積差は、粉体搬送動作時におけるポンプユニット110の粉体流路Pの変動体積を示す。粉体搬送動作時におけるポンプユニット110の粉体流路Pの単位時間当たりの変動体積が大きいほど、搬送体積が大きくなり、粉体の搬送量が増加する。
【0059】
図14は、図13の押出体積を単位時間当たりの推定キャリア搬送量に置き換えたグラフである。粉体搬送動作の動作パターンの波長−送り−波数は2−1−1とし、搬送対象のキャリアの密度は1.7[g/cm]とした。図14により、ポンプユニット110の加圧時間tが0.5[s]の場合の単位時間当たりの推定搬送量が最も大きいことがわかる。つまり、印加圧力が40[kPa]のときに最大搬送量が得られるポンプユニット110の加圧時間tは0.5[s]と想定される。
【0060】
〔粉体搬送動作例:キャリア〕
次に、上記構成の粉体搬送装置10での粉体の搬送動作例について説明する。ここでは、前述のタイプAの4個のポンプユニット110を直列に接続したコンベア100の蠕動運動によって供給側から搬送対象の粉体が搬送されるかを確認した。また、コンベア100の一方の端部から供給された粉末が反対側の端部へ搬送されるのかを確認し、単位時間あたりの搬送量(搬送速度)を測定した。搬送対象の粉体400としては電子写真式の画像形成装置における現像剤を構成するキャリアを用いた。
【0061】
図15は、粉体搬送装置10の粉体搬送動作例の実施に用いたシステムの概略構成図である。なお、図15において前述の図1と共通する部分については同じ符号を付し、それらの説明は省略する。図中のL0はコンベア100の搬送方向における長さである。
【0062】
図15において、コンベア100の搬送方向上流側の端部にアクリル製のエルボ管416を接続し、エルボ管416の上部にアクリル製の直管417を配置した。コンベア100の各ポンプユニット110(111〜114)は空の状態で設置し、直管417の上部より粉体(キャリア)400を供給し、エルボ管416及び直管417を粉体400で満たした。なお、粉体400は十分な量が常にエルボ管416及び直管417内に満たされているようにした。
【0063】
各ポンプユニット110(111〜114)を駆動するときに印加する圧縮空気の印加圧力は、ポンプユニット110内の粉体400を十分に押し出せる圧力である40[kPa]とした。コンベア100を制御する制御部300としては、H8マイコン(ルネサス エレクトロニクス株式会社製)からなるたMUC(Micro Controller Unit)を用いた。ポンプユニット110の加圧時間tは0.1[s]、0.3[s]、0.5[s]、1.0[s]、1.5[s]の5種類とした。また、粉体搬送動作例の動作パターンの波長−送り−波数は2−1−1とした。
【0064】
図16は、粉体搬送動作例におけるポンプユニット100(111〜114)の加圧オン・オフ制御(電磁弁のオン・オフ制御)の一例を示すタイムチャートである。図16は蠕動運動による粉体搬送動作の1サイクル分の加圧オン・オフ制御の例である。図中のtが第1〜第4ポンプユニット110(111〜114)に対する加圧時間であり、tが粉体搬送動作の動作間隔である。
【0065】
粉体搬送量の測定方法としては、コンベア100のキャリア供給側とは反対側の端部からより排出された粉体400の質量を測定することで単位時間当たりの搬送量[g/s]を求める方法を用いた。コンベア100から排出された粉体400の質量測定には、質量測定手段としての電子はかり(株式会社島津製作所製のUW6200H)420を使用した。また、粉体400の質量測定は、コンベア100の定常状態を確認した後に開始し、0.5秒ごとに10秒間測定した。
【0066】
図17(a)〜(d)は、図15の粉体搬送装置10においてポンプユニット110の加圧時間tを0.5[s]に設定して搬送動作を行ったときにコンベア100の出口からキャリア401が排出される様子を撮影した写真を示す図である。撮影時間間隔は0.1[s]であり、搬送開始から0.4[s]後までを撮影した。図17に示すように、コンベア100の蠕動運動によりキャリア401を搬送できることを確認した。また、コンベア100を自由にレイアウトして配置し、キャリア401を任意の方向(例えば水平方向、垂直方向、傾斜方向)に搬送することができることを確認した。
【0067】
図18は、図15の粉体搬送装置10のポンプユニット110の各加圧時間tについて測定したキャリアの搬送量(累積量)の測定結果を示すグラフである。図18の結果により、ポンプユニット110の加圧時間tを1.5[s]から短くしていくにつれて単位時間当たりの搬送量が増加していき、加圧時間0.5[s]で単位時間当たりの搬送量が最大となる。これは、ポンプユニット110の一回の加圧時間が短くなると単位時間あたりに行うポンプユニット110の駆動回数が多くなるため、搬送量が増加したと考えられる。更に、ポンプユニット110の加圧時間tを短くすることで、押し出されたキャリアに流動性が増し、搬送量が増加したと考えられる。
【0068】
また、図18により、更にポンプユニット110の加圧時間tを0.5[s]から短くした場合の単位時間当たりの搬送量は減少することがわかる。この加圧時間0.5[s]以降では搬送量が減少している原因としては、内筒120の膨張変動幅が小さくなるからであると考える。これは、前述の図13の押出体積の結果からも確認できる。
【0069】
図19は、図18の結果から最小二乗法によって算出した、複数の加圧時間t[s]それぞれに対する単位時間当たりの搬送量[g/s]を示すグラフである。この結果から、加圧時間tが1.5[s]のときには1.5[g/s]の搬送量、加圧時間tが1.0[s]のときには1.9[g/s]の搬送量となることがわかった。また、加圧時間tが0.5[s]のときには4.4[g/s]の搬送量、加圧時間tが0.3[s]のときには1.7[g/s]の搬送量、加圧時間tが0.1[s]のときには0.0[g/s]の搬送量となった。本結果は、前述の図14で示した推定キャリア搬送量と近い結果である。
【0070】
図20は、前述の式(7)で定義したポンプユニット110の閉口率Rとコンベア100で搬送されるキャリアの単位時間当たりの搬送量[g/s]との関係を測定した結果を示すグラフである。図20に示すように、閉口率Rが75[%]以上及び99[%]以下の範囲で2「g/s」以上の良好な搬送量が得られた。
【0071】
図21は、図15の粉体搬送装置10において加圧時間tを1.0[s]に設定してキャリア401の搬送動作を行った直後のコンベア100の粉体流路Pの内部を撮影した写真を示す図である。図15の粉体搬送装置10では自然落下によってコンベア100内にキャリアを供給しているため、図21に示すように、コンベア100の内部のキャリア量は少量である。コンベア100の内部における搬送対象の粉体の充填率を増加させることで搬送量を向上させることができる。
【0072】
図22は、ポンプユニット110におけるキャリアの充填率(図7参照)とコンベア100で搬送されるキャリアの単位時間当たりの搬送量[g/s]との関係を測定した結果を示すグラフである。この測定では閉口率Rを90[%]に設定した。図22に示すように、充填率が30[%]以上及び70[%]以下の範囲で10「g/s」以上の良好な搬送量が得られた。
【0073】
なお、図15の粉体搬送装置10において前述のタイプB及びCのポンプユニット110のそれぞれを用いたコンベア100についてキャリアの搬送動作を行ったところ、タイプAのポンプユニット110の場合と同様に搬送できることを確認できた。また、図17図21と同様な結果が得られた。
【0074】
表2は、前述のタイプA、B及びCの3種類のポンプユニット110のそれぞれを用いたコンベア100についてキャリアの充填率とコンベア100で搬送されるキャリアの単位時間当たりの搬送量[g/s]との関係を測定した結果を示す。表2に示すように、3種類のポンプユニット110のいずれにおいても充填率50[%]で最大の搬送量が得られ、充填率が30[%]以上及び70[%]以下の範囲で良好な搬送量が得られた。
【表2】
【0075】
〔粉体搬送動作例:現像剤(トナー)〕
図18及び図19の結果から、ポンプユニット110に対する40[kPa]印加時では、ポンプユニット110の加圧時間を0.5[s]とした場合に最も搬送量が大きいことがわかった。この結果を参考に画像形成装置で使用されている現像剤としてのトナーを搬送し、その搬送量を測定した。粉体搬送装置10は図15に示したものを使用した。搬送対象の現像剤はシアントナー(株式会社リコー製)を使用した(密度:2.0[g/cm])。
【0076】
図23(a)〜(d)は、図15の粉体搬送装置10においてポンプユニット110の加圧時間tを0.5[s]に設定して搬送動作を行ったときにコンベア100の出口からトナー(現像剤)402が排出される様子を撮影した写真である。撮影時間間隔は0.1[s]であり、搬送開始から0.4[s]後までを撮影した。図23に示すように、コンベア100の蠕動運動によりトナー402を搬送できることを確認した。また、コンベア100を自由にレイアウトして配置し、トナー402を任意の方向(例えば水平方向、垂直方向、傾斜方向)に搬送することができることを確認した。
【0077】
図24及び図25はそれぞれ、図15の粉体搬送装置10のポンプユニット110の加圧時間tに0.5[s]に設定して測定した現像剤(トナー)の搬送量(累積量)及び単位時間当たりの搬送量[g/s]の測定結果を示すグラフである。図24及び図25には比較のためキャリアの搬送量の測定結果も示した。図24及び図25に示すように、現像剤の搬送量はキャリア搬送時に比べて減少している。現像剤の単位時間当たりの搬送量は2.0[g/s]となり、キャリアの場合の5.6[g/s]を下回り、キャリア搬送時に比べて現像剤の搬送量は小さい。これは、粉末の特性の違いでキャリアよりも現像剤の方が付着・凝集性が大きく、アクリル製のエルボ管416及び直管417管からの現像剤の供給が少なかったからであると考えられる。
【0078】
図26は、本実施形態に係る粉体搬送装置を適用可能な画像形成装置500の一例を示す概略構成図である。図26の画像形成装置500は、電子写真方式の画像形成装置であり、像担持体としての回転駆動可能な感光体ドラム510を備えている。感光体ドラム510の周りには、帯電手段としての帯電ローラ520と、現像手段としての現像装置530と、転写手段としての転写チャージャ540と、像担持体クリーニング手段としてのクリーニング装置550とを備えている。更に、画像形成装置500は、露光手段としての光書き込み装置560と、定着手段としての定着装置570とを備えている。
【0079】
画像形成装置500で画像形成動作が開始されると、帯電ローラ520で所定電位に帯電された感光体ドラム510の表面に光書き込み装置560で光が走査されながら照射されることにより、感光体ドラム510の表面に静電潜像が形成される。感光体ドラム510上の静電潜像は現像装置で現像されてトナー像となる。感光体ドラム510上のトナー像は、転写チャージャ540と感光体ドラム510との間に所定のタイミングで搬送されてくる記録媒体としての用紙600に転写され、定着装置570で用紙600上に定着される。トナー像が転写された感光体ドラム510の表面はクリーニング装置550でクリーニングされる。
【0080】
本実施形態における現像装置530は、トナーとキャリアとを含む二成分の現像剤を用いて潜像を現像する現像装置である。現像装置530は、感光体ドラム510に対向するように配置された現像剤担持体としての現像ローラと、装置内の現像剤は攪拌しながら搬送する現像剤攪拌搬送手段と、装置内の現像剤のトナー濃度を検知するセンサ535とを備える。現像剤攪拌搬送手段は、互いに逆向き(図中の奥側に向かう方向及び手前側に向かう方向)に現像剤を攪拌しながら搬送する1対の現像剤搬送部533、534で構成される。また、現像装置内の現像剤のトナー濃度が所定の濃度よりも低下した場合は、センサ535の検知結果に基づいて、トナー収容部580内のトナーがトナー搬送部581で搬送されて現像装置530に補給される。
【0081】
図26の画像形成装置500において、前述の実施形態に係る粉体搬送装置10は、現像装置530の現像剤搬送部533、534における現像剤の搬送と、トナー搬送部581におけるトナーの搬送とに適用することができる。この場合、粉体搬送装置10のコンベア100が現像剤搬送部533、534及びトナー搬送部581に配置され、従来の回転駆動されるスクリュを用いた場合に比して、トナー及び現像剤の凝集を抑制しつつトナー及び現像剤を高速搬送することができる。特に、従来の従来の回転駆動されるスクリュを用いた場合とは異なり、トナーなどの搬送部に近い位置に配置されたモータなどの発熱がないため、冷却装置を設ける必要がなく、非クーラント化による省スペースにつながる。
【0082】
なお、前述の実施形態に係る粉体搬送装置10は、現像装置530の現像剤搬送部533、534及びトナー搬送部581のいずれか一方に適用してもよい。また、図26の画像形成装置の例では、二成分現像方式の現像装置を用いる場合について説明したが、前述の実施形態に係る粉体搬送装置10は、一成分現像方式の現像装置を用いる画像形成装置にも適用できる。また、前述の実施形態に係る粉体搬送装置10は、複数色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のトナーを用いたカラー画像形成装置におけるトナーの搬送や、トナー及びキャリアを含む現像剤の搬送にも適用できる。更に、前述の実施形態に係る粉体搬送装置10は、キャリアやトナーの製造時におけるキャリア、トナー、それらの製造に用いる材料(粉体)等の搬送にも適用することができる。
【0083】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得る。
【0084】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
キャリアや現像剤(トナー)等の粉体400を搬送する粉体搬送装置10であって、粉体流路Pを形成する弾性体からなる内筒120等の内壁部を有するポンプユニット110等のポンプ部材が複数並べて設けられ、複数のポンプ部材それぞれの内壁部を粉体流路の中心軸側に変形させる圧縮空気供給部200等の駆動手段と、複数のポンプ部材の内壁部の中心軸側への変形を、粉体流路における粉体の搬送方向の上流側から下流側に向けて順次行うように、駆動手段を制御する制御部300等の制御手段と、を備え、内壁部を変形させる際に、粉体流路Pに空隙Gが残るように内壁部を変形させる。
これによれば、ポンプ部材の内壁部の中心軸側への変形を、粉体流路における搬送方向の上流側から下流側に向けて順次行うことにより、各ポンプ部材の内壁部で形成される粉体流路に、粉体を搬送方向下流側に押し出す動きを発生させることができる。この粉体を押し出す動きによる搬送実験を本願発明者らが行ったところ、搬送対象が粉体の場合、粉体流路に空隙が残るように内壁部を変形させることで粉体を搬送できることが判明した。
本態様では、搬送方向の上流側から下流側に向けて複数のポンプ部材の内壁部を順次変形させる際に、粉体流路に空隙が残るように内壁部を変形させることにより、搬送方向に粉体を搬送できる。しかも、その粉体の搬送に用いられる弾性体からなる内壁部の中心軸側への変形時には、粉体に接触しながら回転する従来のスクリュを用いる場合に比して搬送対象の粉体に作用するせん断力が小さい。更に、粉体の搬送に用いられる内壁部の変形は、従来のモータで発生した熱が駆動系を介して伝わりやすいスクリュで粉体を搬送する場合に比して、熱が伝わりにくい比較的長いチューブを介した圧縮空気の供給で発生させることができる。よって、従来のモータで回転駆動されるスクリュを用いる場合に比して粉体に対するせん断力及び温度上昇が発生しにくく、粉体の凝集を抑制することができる。以上のように、粉体の凝集を抑制しつつ粉体を搬送することができる。
(態様B)
上記態様Aにおいて、複数のポンプ部材それぞれの内壁部が変形していないときの搬送方向と直交する方向における粉体流路の断面積をSとし、内壁部が変形したときの搬送方向と直交する方向における空隙の断面積をsとしたとき、0.75<(1−s/S)<0.99を満たす。これによれば、上記実施形態について説明したように、2[g/s]以上の単位時間当たりの搬送量が得られる。
(態様C)
上記態様A又は態様Bにおいて、複数のポンプ部材それぞれの内壁部が変形していないときに粉体流路に充填されている粉体の粉体流路の単位体積あたりの充填率は、70[%]以下及び30[%]以上である。これによれば、上記実施形態について説明したように、10[g/s]以上の単位時間当たりの搬送量が得られる。
(態様D)
上記態様A乃至Cのいずれかにおいて、前記制御手段は、粉体の搬送時に複数のポンプ部材のうち互いに隣り合った二つのポンプ部材の内壁部が連動して粉体流路の中心軸側へ変形するように、駆動手段を制御する。これによれば、上記実施形態について説明したように、単位時間当たりの搬送量を更に高めることができる。
(態様E)
上記態様A乃至Dのいずれかにおいて、複数のポンプ部材はそれぞれ、内壁部を囲むように内壁部の粉体流路とは反対側に設けられた弾性体からなる外筒130等の外壁部と、搬送方向における内壁部及び外壁部の両端部が固定された上流側フランジ140及び下流側フランジ145等の接続部材と、を備え、前記駆動手段は、複数のポンプ部材それぞれの内壁部と外壁部との間の空間に圧縮空気等の流体を供給して内壁部を変形させ、その流体の供給を停止して内壁部を復元させるように構成され、前記制御手段は、駆動手段による流体の供給を制御するように構成されている。これによれば、上記実施形態について説明したように、粉体流路の中心軸側への内壁部の変形を安定して発生させることができるとともに、任意の数のポンプ部材を容易に連結して所望の長さの粉体流路を形成できる。
(態様F)
上記態様Eにおいて、駆動手段によって流体を供給するときの圧力は20[kPa]以上である。これによれば、上記実施形態について説明したように、粉体流路の中心軸側への内壁部の変形をより確実に発生させることができる。
(態様G)
上記態様E又はFにおいて、内壁部を変形させる際に駆動手段によって流体を供給する時間は、0.2[秒]以上及び1.5[秒]以下である。これによれば、上記実施形態について説明したように、前記空隙が残るような粉体流路の中心軸側への内壁部の変形を確実に発生させることができる。
(態様H)
上記態様A乃至Gのいずれかにおいて、粉体は現像剤である。これによれば、上記実施形態について説明したように、現像剤の凝集を抑制しつつ現像剤を搬送することができる。
(態様I)
上記態様A乃至Hのいずれかの粉体搬送装置10を備える画像形成装置500である。これによれば、上記実施形態について説明したように、画像形成装置で用いられる現像剤等の粉体の凝集を抑制しつつ搬送することができる。
(態様J)
粉体を搬送する粉体搬送方法であって、粉体流路を形成するように弾性体からなる内壁部を有するポンプ部材が複数並べて設けられ、前記複数のポンプ部材の内壁部の前記粉体流路の中心軸側への変形を、前記粉体流路における粉体の搬送方向の上流側から下流側に向けて順次行い、前記内壁部を変形させる際に、前記粉体流路に空隙が残るように前記内壁部を変形させる。
これによれば、上記実施形態について説明したように、搬送方向の上流側から下流側に向けて複数のポンプ部材の内壁部を順次変形させる際に、粉体流路に空隙が残るように内壁部を変形させることにより、搬送方向に粉体を搬送できる。しかも、その粉体の搬送に用いられる弾性体からなる内壁部の中心軸側への変形時には、粉体に接触しながら回転する従来のスクリュを用いる場合に比して搬送対象の粉体に作用するせん断力が小さい。更に、粉体の搬送に用いられる内壁部の変形は、従来のモータで発生した熱が駆動系を介して伝わりやすいスクリュで粉体を搬送する場合に比して、熱が伝わりにくい比較的長いチューブを介した圧縮空気の供給で発生させることができる。よって、従来のモータで回転駆動されるスクリュを用いる場合に比して粉体に対するせん断力及び温度上昇が発生しにくく、粉体の凝集を抑制することができる。以上のように、粉体の凝集を抑制しつつ粉体を搬送することができる。
(態様K)
上記態様Jにおいて、複数のポンプ部材それぞれの前記内壁部が変形していないときの前記搬送方向と直交する方向における前記粉体流路の断面積をSとし、前記内壁部が変形したときの前記搬送方向と直交する方向における前記空隙の断面積をsとしたとき、0.75<(1−s/S)<0.99を満たす。これによれば、上記実施形態について説明したように、2[g/s]以上の単位時間当たりの搬送量が得られる。
(態様L)
上記態様J又はKにおいて、複数のポンプ部材それぞれの内壁部が変形していないときに粉体流路に充填されている粉体の粉体流路の単位体積あたりの充填率は、70%以下及び30%以上である。これによれば、上記実施形態について説明したように、10[g/s]以上の単位時間当たりの搬送量が得られる。
(態様M)
上記態様J乃至Lのいずれかにおいて、粉体の搬送時に複数のポンプ部材のうち互いに隣り合った二つのポンプ部材の内壁部を連動させて粉体流路の中心軸側へ変形させる。これによれば、上記実施形態について説明したように、単位時間当たりの搬送量を更に高めることができる。
(態様N)
上記態様J乃至Mのいずれかにおいて、複数のポンプ部材はそれぞれ、内壁部を囲むように内壁部の前記粉体流路とは反対側に設けられた弾性体からなる外壁部と、搬送方向における内壁部及び外壁部の両端部が固定された接続部材と、を備え、複数のポンプ部材それぞれの内壁部と外壁部との間の空間に流体を供給して内壁部を変形させ、その流体の供給を停止して内壁部を復元させる。これによれば、上記実施形態について説明したように、粉体流路の中心軸側への内壁部の変形を安定して発生させることができるとともに、任意の数のポンプ部材を容易に連結して所望の長さの粉体流路を形成できる。
(態様O)
上記態様Nにおいて、流体を供給するときの圧力は20[kPa]以上である。これによれば、上記実施形態について説明したように、粉体流路の中心軸側への内壁部の変形をより確実に発生させることができる。
(態様P)
上記態様N又はOにおいて、内壁部を変形させる際に流体を供給する時間は、0.2[秒]以上及び1.5[秒]以下である。これによれば、上記実施形態について説明したように、前記空隙が残るような粉体流路の中心軸側への内壁部の変形を確実に発生させることができる。
(態様Q)
上記態様J乃至Pのいずれかにおいて、粉体は現像剤である。これによれば、上記実施形態について説明したように、現像剤の凝集を抑制しつつ現像剤を搬送することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 粉体搬送装置
100 コンベア
110 ポンプユニット
111〜116 ポンプユニット
120 内筒
130 外筒
140 上流側フランジ
145 下流側フランジ
200 圧縮空気供給部
210 圧縮空気
215 エアーチューブ
220 圧力調整装置
225 エアーチューブ
230 圧縮空気供給切換装置
231 電磁弁
235 エアーチューブ
300 制御部
400 粉体
401 キャリア
402 現像剤(トナー)
500 画像形成装置
A 搬送方向
B 圧縮空気の供給方向
C 粉体流路の中心軸
D 空気室
E 空気孔
G 重力
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2016−80913号公報
図1
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図3
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図5
図6
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