【実施例】
【0034】
以下、試験例等示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例等に何ら限定されるものではない。
【0035】
(試験例1:素材の検討)
以下の素材について、麺類のほぐれ性を改善することができるか検討した。
<素材>
・ 米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)を水に懸濁した溶液(米糠の含有量は1質量%)
・ 小麦ふすまを水に懸濁した溶液(小麦ふすまの含有量は1質量%)
・ 米酵素分解物(米酵素分解物No.1、播州調味料株式会社製)を1質量%含有する溶液
・ 米糠酵素分解物(米ペプチド、長田産業株式会社製)を1質量%含有する溶液
【0036】
<試験方法>
沸騰した鍋の中にうどん(半生讃岐うどん包丁切り、石丸製麺株式会社製)を入れ、15分間茹でた後、2〜3℃の氷水で3分間冷却した。次いで、3分間液切りし、その後、前記各素材溶液を対麺重量で2%添加し、混合した。丸型の惣菜パックに入れ、蓋をして10℃、48時間保存し、試料とした。
なお、前記素材を用いなかった場合(無添加区)をネガティブコントロールとし、前記素材に代えて、ソヤアップM3000(水溶性大豆多糖類及び乳化剤含有、不二製油株式会社製)を用いた場合(ソヤアップ添加区)をポジティブコントロールとした。
【0037】
−評価−
水500mLの中に、試料50gを添加し、箸を使用して麺線一本一本がばらけるまで撹拌した回数を測定した。なお、評価の際は、無添加区を0、ソヤアップ添加区を3となるように、評価数字を付けて評価した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果から、米糠に麺類のほぐれ性を改善する効果が確認された。
【0040】
(試験例2:米糠の温熱水抽出物の濃度の検討)
<米糠の温熱水抽出物の調製>
ビーカーに、米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)と水を入れ(米糠濃度15質量%、pH6)、アルミホイルで蓋をし、95℃で10分間加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
温熱水抽出物の濃度を水で調整し、5質量%、10質量%、15質量%、又は20質量%の温熱水抽出物を含有する抽出液とした。
【0041】
<試験方法>
試験例1における素材溶液を前記各抽出液に代えた以外は、試験例1と同様にしてほぐれ性を試験し、評価した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果から、様々な米糠の温熱水抽出物の濃度において、麺類のほぐれ性を改善する効果が確認された。中でも、15質量%以上とした場合には、ポジティブコントロールよりも優れた効果を有することが確認された。
【0044】
(試験例3:抽出の際の加熱時間の検討)
<米糠の温熱水抽出物の調製>
ビーカーに、米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)と水を入れ(米糠濃度15質量%、pH6)、アルミホイルで蓋をし、95℃に達したところからの加熱時間を5分間、10分間、30分間、45分間、60分間、90分間、又は120分間として、加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
得られた各温熱水抽出物の濃度を水で調整し、15質量%の温熱水抽出物を含有する各抽出液とした。
【0045】
<試験方法>
試験例1における素材溶液を前記各抽出液に代えた以外は、試験例1と同様にしてほぐれ性を試験し、評価した。結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3の結果から、抽出の際の加熱時間による麺類のほぐれ性を改善する効果の差は確認されず、本発明によれば、短時間で麺類用結着防止剤の有効成分を得ることができることが確認された。
【0048】
(試験例4:温熱水のpHの検討)
<米糠の温熱水抽出物の調製>
ビーカーに、米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)と水を入れ(米糠濃度15質量%、pH6、9、11、又は13に調整)、アルミホイルで蓋をし、95℃で10分間加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
得られた各温熱水抽出物の濃度を水で調整し、15質量%の温熱水抽出物を含有する各抽出液とした。
【0049】
<試験方法>
−ほぐれ性−
試験例1における素材溶液を前記各抽出液に代えた以外は、試験例1と同様にしてほぐれ性を試験し、評価した。結果を表4に示す。
【0050】
−風味、食味−
上記ほぐれ性の試験後のうどんを食し、以下の評価基準で評価した。結果を表4に示す。
[評価基準]
A : アルカリ臭及び/又は異質な風味がなく、穀物らしい好ましい風味がある。
B : アルカリ臭及び/又は異質な風味がなく、やや穀物らしい好ましい風味がある。
C : ややアルカリ臭及び/又は異質な風味がある、若しくはやや穀物とは異なる風味がある。
D : アルカリ臭及び/又は異質な風味があり、穀物とは異なる風味が感じられる。
【0051】
【表4】
【0052】
表4の結果から、本発明の米糠の温熱水抽出物を用いた場合には、抽出の際のpHを変えて得られた抽出物を用いた場合でも、麺類のほぐれ性を改善することができることが確認された。また、抽出の際のpHを13未満にすることで、麺類の風味・食味を優れたものとすることができることが確認された。
一方、ソヤアップ添加区では、麺類の風味・食味が、やや劣る結果となった。
【0053】
(試験例5:有機酸及び乳化剤の検討)
<試験例5−1>
−米糠の温熱水抽出物の調製−
ビーカーに、米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)と水を入れ(米糠濃度15質量%、pH9に調整)、アルミホイルで蓋をし、95℃で10分間加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
得られた温熱水抽出物の濃度を水で調整し、15質量%の温熱水抽出物を含有する抽出液とした。
【0054】
<試験例5−2〜5−5>
−米糠の温熱水抽出物の調製−
ビーカーに、米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)と水を入れ(米糠濃度15質量%、pH9に調整)、アルミホイルで蓋をし、95℃で10分間加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
前記米糠の温熱水抽出物に、有機酸として、クエン酸(試験例5−2)、リンゴ酸(試験例5−3)、乳酸(試験例5−4)、又は醸造酢(試験例5−5)を加え、pH4に調整した。
pH調整後の温熱水抽出物の濃度を水で調整し、15質量%の温熱水抽出物を含有する抽出液とした。
【0055】
<試験例5−6>
−米糠の温熱水抽出物の調製−
ビーカーに、米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)と水を入れ(米糠濃度15質量%、pH9に調整)、アルミホイルで蓋をし、95℃で10分間加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
得られた温熱水抽出物の濃度を水で調整し、15質量%の温熱水抽出物を含有する抽出液とし、そこに、乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステルを前記抽出液の全量に対し、0.05質量%加えた。
【0056】
<試験方法>
−ほぐれ性−
試験例1における素材溶液を前記試験例5−1〜5−6の各抽出液に代えた以外は、試験例1と同様にしてほぐれ性を試験し、評価した。結果を表5に示す。
【0057】
−風味、食味−
上記ほぐれ性の試験後のうどんを食し、試験例4と同じ評価基準で評価した。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表5の結果から、本発明の米糠の温熱水抽出物を用いた場合は、穀物らしい好ましい風味が感じられ、有機酸を加えることにより、風味・食味が更に優れたものとなることが確認された。また、乳化剤を加えることにより、ほぐれ性が向上することも確認された。
【0060】
(試験例6:米糠の種類の検討)
<米糠の温熱水抽出物の調製>
ビーカーに、下記のいずれかの米糠と水を入れ(米糠濃度20質量%、pH6)、アルミホイルで蓋をし、95℃で10分間加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
得られた温熱水抽出物の濃度を水で調整し、20質量%の温熱水抽出物を含有する抽出液とした。
[米糠]
・ 赤糠
・ 上糠
・ 特糠
・ 脱脂糠
【0061】
<試験方法>
−ほぐれ性−
試験例1における素材溶液を前記各抽出液に代えた以外は、試験例1と同様にしてほぐれ性を試験し、評価した。結果を表6に示す。
【0062】
−風味、食味−
上記ほぐれ性の試験後のうどんを食し、試験例4と同じ評価基準で評価した。結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
表6の結果から、米糠の種類に関わらず、ほぐれ性と、風味や食味を両立することができることが確認された。
【0065】
(試験例7:温熱水の温度の検討)
<米糠の温熱水抽出物の調製>
ビーカーに、米糠(秘蔵いりぬか、下田商事株式会社製)と水を入れ(米糠濃度15質量%、pH6)、アルミホイルで蓋をし、60℃で10分間加熱した。放冷後、さらしで濾過し、液体部分をとり、米糠の温熱水抽出物とした。
温熱水抽出物の濃度を水で調整し、15質量%の温熱水抽出物を含有する抽出液とした。
【0066】
<試験方法>
試験例1における素材溶液を前記抽出液に代えた以外は、試験例1と同様にしてほぐれ性を試験し、評価したところ、評価結果は「3」であった。
したがって、60℃を超える温度の温熱水で米糠を抽出することにより、ほぐれ性に優れる米糠の抽出物を得ることができることが確認された。