特許第6885904号(P6885904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6885904-電子・電気機器部品屑の処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6885904
(24)【登録日】2021年5月17日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】電子・電気機器部品屑の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20210603BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20210603BHJP
   B03C 1/00 20060101ALN20210603BHJP
   B07B 13/04 20060101ALN20210603BHJP
【FI】
   B09B5/00 CZAB
   C22B7/00 A
   !B03C1/00 B
   !B07B13/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-164784(P2018-164784)
(22)【出願日】2018年9月3日
(65)【公開番号】特開2020-37068(P2020-37068A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝志
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−256231(JP,A)
【文献】 特開2017−170387(JP,A)
【文献】 特開平06−320137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00−5/00、
C22B1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子・電気機器部品屑の中から製錬工程で処理可能な有価金属を含む処理原料を選別するための製錬原料選別処理工程を含む電子・電気機器部品屑の処理方法において、
前記製錬原料選別処理工程の最初の工程1が風力選別であって、その直前の前処理工程として、前記電子・電気機器部品屑に含まれる塊状銅線屑を取り除くピッキング処理を行うこと
を特徴とする電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項2】
前記ピッキング処理が、長径10mm以上の前記塊状銅線屑を取り除くことを含む請求項1に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項3】
前記ピッキング処理が、作業員が手動で行うことを含む請求項1又は2に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項4】
前記ピッキング処理が、前記電子・電気機器部品屑中の塊状銅線屑の画像認識結果に基づき、ピッキング対象とする前記塊状銅線屑を選択的にピッキングするためのアームを備えるピッキングロボットを用いて自動で行うことを含む請求項1又は2に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項5】
前記製錬原料選別処理工程が、
風力選別を用いて前記電子・電気機器部品屑から粉状物とフィルム状部品屑を除去する前記工程1の後に
風力選別を用いて前記粉状物とフィルム状部品屑が除去された前記電子・電気機器部品屑から合成樹脂類及び基板を濃縮する工程2と、
メタルソータを用いて前記工程2で得られた濃縮物から有価金属を含む基板を濃縮する工程3と
を有することを特徴とする請求項に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項6】
前記工程1と前記工程2の間に、スリット状の篩を有する篩別機を用いて前記電子・電気機器部品屑に含まれる線屑を除去する工程Bを有することを特徴とする請求項に記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【請求項7】
前記工程3の前に、カラーソータによる選別、篩別による選別、及び磁力による選別の少なくとも1つの処理により、前記工程2で得られた濃縮物の金属含有比率を下げるための工程Cを有することを特徴とする請求項又はに記載の電子・電気機器部品屑の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子・電気機器部品屑の処理方法に関し、特に、使用済み電子・電気機器のリサイクル処理に好適な電子・電気機器部品屑の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源保護の観点から、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器部品屑から、有価金属を回収することがますます盛んになってきており、その効率的な回収方法が検討され、提案されている。
【0003】
例えば、特開平9−78151号公報(特許文献1)では、有価金属を含有するスクラップ類を銅鉱石溶錬用自溶炉へ装入し、有価金属を炉内に滞留するマットへ回収させる工程を含む有価金属のリサイクル方法が記載されている。このようなリサイクル方法によれば、銅溶錬自溶炉での銅製錬にスクラップ処理を組み合わせることができるため、有価金属含有率が低いスクラップ類からでも低コストで有価金属を回収することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような銅溶錬自溶炉を用いた処理においては、電子・電気機器部品屑の処理量が増えると、電子・電気機器部品屑を構成する樹脂等の有機物に含まれる炭素成分が増加し、溶錬炉で過還元によるトラブルが発生する場合がある。一方で、電子・電気機器部品屑の処理量は近年増加する傾向にあるため、銅溶錬自溶炉での効率的な処理が望まれている。
【0005】
銅溶錬自溶炉の過還元によるトラブルを発生する手法の一つとして、電子・電気機器部品屑を銅溶錬自溶炉で処理する前に電子・電気機器部品屑を粉砕処理し、容量を小さくすることが提案されている。例えば、特開2015−123418号公報(特許文献2)では、銅を含む電気・電子機器部品屑を焼却後、所定のサイズ以下に粉砕し、粉砕した電気・電子機器部品屑を銅の溶錬炉で処理することが記載されている。
【0006】
しかしながら、電子・電気機器部品屑の処理量が増加することにより、電子・電気機器部品屑に含まれる物質の種類によっては、その後の銅製錬工程での処理に好ましくない物質(製錬阻害物質)が従来よりも多量に投入されることとなる。このような銅製錬工程に装入される製錬阻害物質の量が多くなると、電子・電気機器部品屑の投入量を制限せざるを得なくなる状況が生じる。
【0007】
従来より、天然の鉱石由来の製錬阻害物質も含め、銅製錬の溶錬工程における熱力学的な手法や電解工程における電解液の精製方法については数々の取り組みがされてきたが、天然の鉱石と比較して、製錬阻害物質の含有割合が著しく大きい電子・電気機器部品屑の処理方法には課題が多い。
【0008】
例えば、電子・電気機器部品屑から製錬阻害物質を低減しながら効率的に製錬工程へ投入するための原料を作製するためには、種々の選別機を用いて機械的な処理を行うことが効率性の観点から望ましい。しかしながら、電子・電気機器部品屑には、様々な形状及び種類の部品屑が含まれており、部品屑の一部が選別工程で不具合を発生させ、処理効率の低下を起こす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−78151号公報
【特許文献2】特開2015−123418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、電子・電気機器部品屑から製錬工程で処理するための有価金属を含む処理原料を選別する製錬処理原料の選別処理工程において、選別処理工程に不具合を生じさせる部品屑を予め低減することが可能な電子・電気機器部品屑の処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は一実施態様において、電子・電気機器部品屑の中から製錬工程で処理可能な有価金属を含む処理原料を選別するための製錬原料選別処理工程を含む電子・電気機器部品屑の処理方法において、製錬原料選別処理工程の前処理として、電子・電気機器部品屑に含まれる塊状銅線屑を取り除くピッキング処理を行うことを含む電子・電気機器部品屑の処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電子・電気機器部品屑から製錬工程で処理するための有価金属を含む処理原料を選別する製錬処理原料の選別処理工程において、選別処理工程に不具合を生じさせる部品屑を予め低減することが可能な電子・電気機器部品屑の処理方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理フローの一例を示す処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は、図1の処理フロー図を用いて説明する。本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は、電子・電気機器部品屑の中から製錬工程で処理可能な有価金属を含む処理原料を選別するための製錬原料選別処理工程Xと、製錬原料選別処理工程Xの前処理として、電子・電気機器部品屑に含まれる塊状銅線屑を取り除くピッキング処理工程Yを含む。
【0015】
本実施形態における「電子・電気機器部品屑」とは、廃家電製品・PCや携帯電話等の電子・電気機器を破砕した屑であり、回収された後、適当な大きさに破砕されたものを指す。本実施形態では、電子・電気機器部品屑とするための破砕は、処理者自身が行ってもよいが、市中で破砕されたものを購入等したものでもよい。
【0016】
破砕方法として、特定の装置には限定されず、せん断方式でも衝撃方式でもよいが、できる限り、部品の形状を損なわない破砕が望ましい。従って、細かく粉砕することを目的とする粉砕機のカテゴリーに属する装置は含まれない。
【0017】
電子・電気機器部品屑は、基板、ICやコネクタ等のパーツ、筐体などに使われる合成樹脂類(プラスチック)、線屑、メタル、フィルム状部品屑、破砕や粉砕によって生じる粉状物、その他、からなる部品屑に分類することができ、処理目的に応じて更に細かく分類することができる。以下に限定されるものではないが、本実施形態では、粒度50mm以下に破砕されており、且つ部品屑として単体分離されている割合が70%以上の電子・電気機器部品屑を好適に処理することができる。
【0018】
これら種々の種類からなる部品屑を所定の順序で処理することにより、例えば、選別物を銅製錬工程に利用する場合には、銅製錬工程での処理に好ましくない物質、例えば、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)等の元素、樹脂類、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)等の製錬阻害物質を極力低減しながら、金、銀、白金、パラジウム、銅を含む有価金属を濃縮した処理原料を得ることができる。
【0019】
製錬原料選別処理工程Xとしては、風力選別工程、篩別工程、磁力選別工程、渦電流選別工程、比重選別工程、及び金属物と非金属物とを光学的に選別する光学式選別工程の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0020】
特に、製錬原料選別処理工程Xとして、少なくとも2段階の風力選別工程と、メタルセンサーを用いた選別処理工程とを含むように構成することによって、製錬工程において処理される処理原料中に有価金属をより高濃度で濃縮しながら、処理原料中への製錬阻害物質の混入を抑制することができ、かつ、有価金属のロスを最小化できる点で有利である。製錬原料選別処理工程Xの詳細は後述する。
【0021】
製錬原料選別処理工程Xへ導入される電子・電気機器部品屑(原料)としては、処理業者等の違いによって、種々の形状、大きさ、種類に破砕された部品屑が存在し、部品屑の割合も様々であることが多い。本発明者らの検討の結果、電子・電気機器部品屑(原料)の中に含まれる塊状の銅線の屑(本実施形態では「塊状銅線屑」と称する)が、製錬原料選別処理工程Xで用いられる種々の選別機に悪影響を及ぼすことが分かってきた。
【0022】
本実施形態では、製錬原料選別処理工程Xの前処理として、初期原料である電子・電気機器部品屑に含まれる塊状銅線屑を取り除くピッキング処理を行うことを含む。製錬原料選別処理工程Xの前にピッキング処理を行うことにより、後述する製錬原料選別処理工程Xの選別機の故障、誤検知などを抑制することができ、大量の初期原料を機械的に効率良く処理して、有価金属が濃縮された製錬工程で処理可能な処理原料を得ることができる。
【0023】
ピッキング処理においては長径10mm以上の塊状銅線屑を取り除くことが好ましく、より好ましくは長径20mm以上、更に好ましくは長径45mm以上である。塊状銅線屑は不定形を有している場合が多いが、その塊状銅線屑の最も長い部分の長さのことを、本実施形態では「長径」という。
【0024】
このような塊状銅線屑を製錬原料選別処理工程Xの前工程として取り除いておくことによって、例えば風力選別機を用いて選別処理を行う場合には、塊状銅線屑が他の部品屑と絡まり粗大化して除去精度の悪化や機器内部での詰まりを起こすことなどを抑制することができる。また、電子・電気機器部品屑に含まれる塊状銅線屑の構成成分は有価金属である銅を多く含むものが多いため、この塊状銅線屑を回収して製錬工程へ投入するための処理原料の一部として有効利用できる。
【0025】
ピッキング処理は、作業員が手動で行うことができる。作業員が目視により電子・電気機器部品屑の中から所定の大きさ以上の塊状銅線屑をピッキングすることにより、塊状銅線屑の除去精度が高くなる。一方で、人手による作業は労力がかかるため、電子・電気機器部品屑を短時間で大量に処理する場合には効率的とはいえない場合がある。
【0026】
そのため、ピッキング処理は、ロボットを用いて自動で行うことも好ましい。長径が所定の長さ以上となる塊状銅線屑を、電子・電気機器部品屑の中から抜き出すようなプログラムに基づいて、ピッキングロボットが自動で電子・電気機器部品屑の中から塊状銅線屑をピッキング処理するように構成することで、電子・電気機器部品屑を短時間で大量に処理することが可能となる。
【0027】
ピッキングロボットは、例えば、所定の制御プログラムに応じて、電子・電気機器部品屑中の塊状銅線屑を、例えば画像を用いて認識し、ピッキング対象と認識された塊状銅線屑をピッキング処理するための命令を出力可能な制御部と、制御部による命令に応じて、塊状銅線屑を実際にピッキングするためのアームなどを備えるような装置であれば特に限定されない。
【0028】
このように、本実施形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法によれば、製錬原料選別処理工程Xの前処理として電子・電気機器部品屑に含まれる塊状銅線屑を取り除くピッキング処理を行うことにより、製錬原料選別処理工程に不具合を生じさせる部品屑を予め低減することが可能となる。
【0029】
−製錬原料選別処理工程X−
製錬原料選別処理工程Xは、図1に例示するように、工程1と、工程2と、工程3とを少なくとも備えることができる。更に、電子・電気機器部品屑の性状に合わせて、工程1〜3の前後に工程B〜Cを適宜組み合わせることができる。
【0030】
(1) 工程1
工程1では、初期原料である電子・電気機器部品屑に対し、以降の選別工程に悪影響を与える物質としての粉状物とフィルム状部品屑(樹脂、アルミ箔等)を選別除去する。後工程に対する前処理の役割であり、粗選別に位置づけられる。
【0031】
工程1としては、風力選別が好適に用いられる。この風力選別は本発明の目的において、多く処置できる選別方法であることが特徴である。風力選別は、軽量物と重量物に分かれるが、軽量物である粉状物とフィルム状部品屑(樹脂、アルミ箔等)は焼却前処理工程を経由して銅製錬工程に送られ、重量物は、工程2に送られる。
【0032】
以下の条件に制限されるものではないが、工程1の風量を5〜20m/s、より好ましくは5〜12m/s、更には5〜10m/s程度、更には6〜8m/sで設定することができる。
【0033】
(2) 工程2
工程2では、粉状物とフィルム状部品屑が除去された電子・電気機器部品屑から合成樹脂類、基板及びパーツを濃縮する。
【0034】
工程2としては、風力選別が好適に用いられる。工程2では、塊状のメタルやその他の部品単体を重量物として分離し、軽量物側に基板、合成樹脂類、パーツを濃縮させる。軽量物側に濃縮された基板、合成樹脂類等を含む濃縮物は、次工程である工程3に送られる。重量物は必要に応じて更に磁力選別、渦電流選別、カラーソータ、手選別、ロボット等を組み合わせた選別を行い、重量物中に存在するFe、Al、SUS等のメタル類を回収する。
【0035】
以下の条件に制限されるものではないが、例えば、工程2の風量を5〜20m/s、より好ましくは10〜18m/s、更には15〜18m/s、更には16〜17m/s程度で設定することができる。
【0036】
(3) 工程3
工程3では、工程2で得られた基板、合成樹脂類等を含む軽量物から、銅、金、銀などの有価金属を含む基板を濃縮する。有価金属を含む基板を濃縮処理して、後述する銅製錬工程で処理することにより、銅製錬工程における有価金属の回収効率を向上させることができる。
【0037】
工程3では、メタルセンサー、カラーカメラ、エアーバルブ及びコンベアを備えるソータで処理することが好ましい。工程3では、まず、メタルセンサーで金属を検知し、コンベアで搬送・放出し、後に控えているカラーカメラで物質の位置を確認する。そして、メタルセンサーの情報とカラーカメラによる位置情報に基づき、メタルでないと認識され落下軌跡上にある部品をエアーバルブで選択的に撃ち落とす処理を実施することが好ましい。
【0038】
エアーバルブによって打ち落とされなかった選別物側には、銅、貴金属等の有価金属を含む基板が濃縮されるため、これを上述の製錬工程における処理対象物とすることにより、より少ない部品屑の投入量で有価金属の回収効率を上げることができる。
【0039】
一方、エアーバルブによって打ち落とされた金属を実質的に含まない基板及び合成樹脂類には、以下に説明する製錬工程において製錬阻害物質となるSb、Al、Fe、Niからなる群の中から選択される1種以上の金属が含まれている場合がある。このような製錬阻害物質を含む部品屑を製錬工程に送ることにより、製錬工程を安定的に行うことが困難になり、有価金属の高効率回収が困難になる場合がある。
【0040】
本実施形態に係る処理方法によれば、工程3によって、製錬阻害物質であるSb、Al、Fe、Niからなる群の中から選択される1種以上の金属を少なくとも含む部品屑等を予め除去することができるため、電子・電気機器部品屑に含まれる製錬阻害物質を極力持ち込まないようにすることができる。
【0041】
なお、工程3における処理において、メタルソータは、処理対象物中に粉状物やフィルム状部品屑が混入していると、選別時に粉状物などが舞い上げられてカラーカメラの視界が悪くなり、カラーカメラを用いた除去対象物の特定が困難になったり、カラーカメラが除去対象物と誤検知し、エアーバルブが誤動作して非対象物が巻き込まれたりする場合がある。
【0042】
本発明の実施の形態に係る方法によれば、前処理工程及び工程Bにおいて、工程3における選別処理の選別効率低下の原因となる電子・電気機器部品屑中に含まれる粉状物、フィルム状部品屑などが予め除去されるため、粉状物が処理中に舞い上がることによる選別装置の動作不良及び選別効率の低下を抑えることができる。
【0043】
なお、金属を濃縮させるための一般的な物理選別手法においては、まず磁力選別等を行うことによって金属を回収することが行われる。しかしながら、磁力選別装置は磁性物中に有価金属を含む部品屑が混入し、有価金属の回収量が低下する恐れがある。
【0044】
本発明の実施の形態に係る処理方法によれば、物理選別の初期段階において、まず風力選別を2段階に分けて行う(工程1及び工程2)ことにより、磁力選別の処理を行う場合に比べて有価金属のロスを抑えることができ、より多くの有価金属を濃縮しながら、多量の電子・電気機器部品屑(原料)を一気に選別処理することができる。そして、2段階の風力選別の後、処理に時間を要するメタルソータを用いた選別処理(工程3)を組み合わせることによって、電子・電気機器部品屑の処理量を増大しながら、製錬阻害物質を除去して、有価金属を効率的に回収することができる。
【0045】
図1に示すように、工程1〜3の前後に工程B〜Cを組み合わせることが選別効率を向上できる点においてより好ましい。例えば、工程1と工程2の間には、電子・電気機器部品屑に含まれる線屑を除去する工程Bを有することが好ましい。工程Bとしては、スリット状の篩を有する篩別機を用いて処理することが好ましい。工程Bにおいては篩別により、線屑の他に粉状物も除去することができる。篩別後の粉状物及び銅線屑は、焼却前処理工程を経由して製錬工程に送ることで、部品屑中の有価金属をより効率的に回収できる。
【0046】
工程2と工程3との間には、工程Cが実施されてもよい。工程Cは、カラーソータによる選別及び篩別による選別及び磁力による選別の少なくとも1つの処理を含み、工程3の選別処理の前処理として位置づけることができ、これら選別処理を組み合わせることで、工程3に送られる処理対象物の金属含有比率を下げることができる。
【0047】
処理対象物中の金属含有比率が高いということは、金属を含む部品屑が多く存在することを意味する。工程3のメタルソータによる処理において、金属と検知される部品屑との間に合成樹脂類などの非金属が存在する場合、その間隔がメタルソータの検知範囲以内の時には、一つの金属と誤検知され、金属物と金属物との間にある非金属物であるプラスチックなどの合成樹脂類がエアーバルブではじかれず、金属を含有する基板やパーツとして取り扱われる場合がある。このため、工程3においてメタルソータによる分離を行う前に、磁力、篩別、カラーソータ等による選別を含む工程Cを実施することによって、工程3に送られる処理対象物の金属含有比率を下げてメタルソータの誤検知を抑制することができる。
【0048】
工程2で得られた重量物の中には、銅製錬工程で処理すべき基板が一部混入する場合がある。よって、工程2で得られた重量物を、磁力選別、渦電流選別、カラーソータ、手選別、ロボット等の処理により更に分類することで、銅製錬工程で処理すべき基板を分離して製錬工程に送ることができるため、有価金属の回収効率が高まる。
【0049】
なお、本発明の実施の形態において「除去」或いは「分離」とは、100%除去又は分離する態様を示すものだけでなく対象物中重量比30%以上、より好ましくは50質量%以上除去するような態様を含むものである。
【0050】
−製錬工程−
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法は、前処理工程で得られた塊状銅線屑、工程1〜3、工程B〜Cでそれぞれ選別された有価金属を含む処理原料を製錬工程で処理する製錬工程を更に有する。
【0051】
有価金属として銅を回収する場合は、溶錬炉を用いた製錬工程が行われる。製錬工程には、電子・電気機器部品屑を焼却する工程と、焼却物を破砕及び篩別する工程と、破砕及び篩別処理した処理物を銅製錬する工程とを備える。電子・電気機器部品屑を処理する工程は、焼却工程の前に行われることが好ましい。
【0052】
以下に制限されるものではないが、本実施形態に係る製錬工程としては、自溶炉法を用いた銅製錬工程が好適に利用できる。自溶炉法を用いた銅製錬工程としては、例えば、自溶炉のシャフトの天井部から銅精鉱と溶剤と電子・電気機器部品屑を装入する。装入された精鉱及び電子・電気機器部品屑が、自溶炉のシャフトにおいて溶融し、自溶炉のセットラーにおいて例えば50〜68%の銅を含むマットとそのマットの上方に浮遊するスラグとに分離される。電子・電気機器部品中の銅、金、銀などの有価金属は、自溶炉内を滞留するマットへ吸収されることで、電子・電気機器部品屑中から有価金属を回収できる。
【0053】
銅製錬においては、銅を製造するとともに、金、銀などの貴金属をより多く回収するために、処理する原料として銅、金、銀など有価金属の含有量の多い電子・電気機器部品屑をできるだけ多く投入して処理することが重要である。一方、電子・電気機器部品屑には、銅製錬における製品、副製品の品質に影響を与える物質および/または銅製錬のプロセスに影響を与える製錬阻害物質が含有される。例えば、上述のようなSb、Ni等の元素を含有する物質の溶錬炉への投入量が多くなると、銅製錬で得られる電気銅の品質が低下する場合がある。
【0054】
また、銅製錬などの非鉄金属製錬工程では、精鉱の酸化によって発生する二酸化硫黄から硫酸を製造するが、二酸化硫黄に炭化水素が混入すると、産出される硫酸が着色する場合がある。炭化水素の混入源としては、例えばプラスチックなどの合成樹脂類などが挙げられるが、銅製錬へ持ち込まれる電子・電気機器部品屑の構成によっては、このような合成樹脂類が多く含まれる場合がある。合成樹脂類は、溶錬炉内での急激な燃焼、漏煙のほか局所加熱による設備劣化を生じさせる恐れもある。
【0055】
更に、Al、Feなどが溶錬炉内に一定以上の濃度で存在すると、例えば、銅製錬のプロセスでスラグ組成に変化を与え、有価金属のスラグへの損失、いわゆるスラグロスに影響する場合もある。また、Cl、Br、F等のハロゲン元素が溶錬炉へ投入される電子・電気機器部品屑中に多く含まれていると、銅製錬の排ガス処理設備の腐食や硫酸触媒の劣化を引き起こす場合がある。このような製錬阻害物質の混入の問題は、電子・電気機器部品屑の処理量が多くなるにつれて顕在化し、製錬工程に負担がかかるという問題が生じてきている。
【0056】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法によれば、製錬工程の前に、図1に示すような、前処理工程及び製錬原料選別処理工程Xを含む電子・電気機器部品屑の物理選別工程を備える。これにより、製錬工程に持ち込まれる製錬阻害物質の割合を極力抑えるとともに、電子・電気機器部品屑の処理量を増やし、銅及び有価金属を含む電子・電気機器部品屑の割合を多くして銅及び有価金属を効率的に回収することが可能となる。
【0057】
電子・電気機器部品屑中に含まれる製錬阻害物質の除去量は多ければ多い程望ましいが、部品屑によっては製錬阻害物質と有価金属とを同時に有する部品屑も存在する。以下に制限されるものではないが、電子・電気機器部品屑の原料全体の製錬阻害物質のうちの1/2、より好ましくは2/3以上を重量比で除去することにより、電子・電気機器部品屑を銅製錬工程において安定的に処理することができる。さらに、製錬工程において、製錬阻害物質の処理できる限界量が現状と同等であれば、電子・電気機器部品屑の原料全体の製錬阻害物質を少なくすることで、製錬工程において、製錬阻害物質の少ない電子・電気機器部品屑をより多く処理できることとなる。
【0058】
本発明の実施の形態に係る電子・電気機器部品屑の処理方法によれば、製錬工程で電子・電気機器部品屑を粉状に粉砕する前に部品屑の状態で製錬阻害物質を含む部品屑を部品単位で選別して除去する物理選別工程を具備することにより、製錬工程で処理する電子・電気機器部品屑の処理量を増大でき、有価金属を効率的に回収することが可能となる。
【0059】
本発明は本実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、本実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、本実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除する、或いは各構成要素を適宜組み合わせてもよい。
図1