(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対のポリマーシートと、その間に介在する二色性染料を含む偏光シートとが各シート間に介在する接着層により接合されてなる積層体を製造する際に、当該接着層を形成するためへの請求項1〜4の何れか1項に記載の接着性組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、(I)末端非反応性ウレタンウレア樹脂、および特定量の(III)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含んでなり、前記(III)ポリイソシアネート化合物が、(IIIA)2級炭素に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、および(IIIB)分子内の炭素数が4〜40である、前記(IIIA)成分以外のポリイソシアネート化合物を特定量で含む接着性組成物である。以下、順を追って説明する。
【0014】
(I)末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)
本発明において、接着性組成物の主成分となる樹脂は、末端非反応性ウレタンウレア樹脂である。そのため、本発明の接着性組成物は、一般的に知られている2液型タイプのものではない。つまり、該接着性組成物は、イソシアネート基を有する樹脂を主成分とする一液と、水酸基等のイソシアネート基と反応しうる基とを有する樹脂を主成分とする他液とを反応させて接着剤とする、従来の2液型タイプのものではない。
本発明の接着性組成物が優れた効果、特に、脂環族ポリアミド樹脂からなるシート、および偏光シートを良好に接着できる理由は必ずしも明らかではないが、分子内にウレア結合を有する主成分に、下記で詳述する特定種類、および特定の配合割合の(III)ポリイソシアネート化合物を反応させることにより、適度な橋架け構造が生まれ、その結果、強固に接合した積層体を製造できるものと考えられる。
【0015】
本発明において、(I)末端非反応性ウレタンウレア樹脂は、分子鎖中にウレア結合(−R−NH−CO−NH−)を有し、分子鎖の末端が、イソシアネート基
以外の基、およびイソシアネート基と反応しうる基以外の基となっているポリマーである。イソシアネート基と反応しうる基とは、例えば、アミノ基(−NH
2基、及び−NH(R)基)、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕等である。
このような(I)成分は、以下のように製造することができる。中でも、より接着性が高く、接着性組成物が色素を含む場合に優れた効果を発揮するためには、以下の成分から製造されることが好ましい。すなわち、
(A)分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、
(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物と、
(C)分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物、
との反応生成物であることが好ましい。これら成分から得られる(I)成分は、原料である(B)成分としてポリアミン化合物を使用することに起因して、分子内にウレア結合が導入される。
【0016】
<A成分:分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー>
上記(I)成分の構成成分である分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A成分)としては、公知のウレタンプレポリマーを用いることが可能である。中でも、
(A1)ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどの少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
(A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物との反応生成物であることが好ましい。
【0017】
<A1成分:ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどの少なくとも2つ以上の水酸基を有するポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物>
上記ポリオール化合物(A1成分)は、生成する末端非反応性ウレタンウレア樹脂(I成分)が高架橋体になり過ぎないという理由から、一分子中に含まれる水酸基数が2〜6個であることが好ましく、さらに有機溶剤への溶解性を加味して考慮すれば、分子中に含まれる水酸基数が2〜3個であることがより好ましい。また、前述のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどのポリオール化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用することもできる。中でも、耐熱性、接着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、特にポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。以下、A1成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
【0018】
<ポリカーボネートポリオール>
A1成分として使用されるポリカーボネートポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き低分子ポリオールの1種以上をホスゲン化するか或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネートの低分子カーボネートとエステル交換させて得られるポリカーボネートポリオールを挙げることができる。上記低分子ポリオールのなかでも、最終的に得られる末端非反応性ウレタンウレア樹脂(I成分)の接着性、及び耐熱性の観点から、直鎖のアルキレン鎖を有する低分子ポリオールがより好ましい。側鎖にアルキル基を有する低分子ポリオールから合成されたポリカーボネートポリオールは、直鎖のアルキレン鎖を有する低分子ポリオール類と比較して、接着性が低下する傾向が見られる。
【0019】
A1成分としてのポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、最終的に得られる末端非反応性ウレタンウレア樹脂(I成分)の耐熱性の観点から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリカーボネートポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0020】
<ポリカプロラクトンポリオール>
A1成分として使用されるポリカプロラクトンポリオールとしては、例えばε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が好ましい。A1成分としてのポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリカプロラクトンポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0021】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールとしては、例えば分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルポリオール化合物及び該ポリエーテルポリオール化合物の変性体である、ポリマーポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール等を挙げることができる。
上記分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの分子中に水酸基を1個以上有するグリコール、グリセリン等のポリオール化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリエーテルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ、「エマルスター(登録商標)」、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどを挙げることができる。
【0022】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールとしては、例えば多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ここで、前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリエステルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能である。市販されているものを例示すれば、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0023】
<A2成分:分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物>
上記ジイソシアネート化合物(A2成分)としては、例えば脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環族ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からA2成分の30〜100質量%、特に50〜100質量%が脂肪族ジイソシアネート化合物、及び/又は脂環族ジイソシアネート化合物であることが好ましい。
A2成分として好適に使用できるジイソシアネート化合物は、例示すると、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;
シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物;
フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル]−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物
などを挙げることができる。
【0024】
これらの中でも、得られる末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)の耐候性の観点から、上記の通り、A2成分のジイソシアネート化合物の、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%が、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環族ジイソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好適である。好適なジイソシアネート化合物の具体例としては、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0025】
<(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物>
前記分子内に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン化合物(B成分)は、分子内に2つ以上のアミノ基(−NH
2または−NH(R)。但し、Rはアルキル基、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基を意味する。)を有するポリアミン化合物である。
該B成分は、末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を合成する際の鎖延長剤として機能するものであり、鎖延長剤として、B成分を用いることによりポリウレタン樹脂中にウレア結合が導入され、ポリウレタンウレア樹脂となる。
得られる末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を適度の硬さにし、また、接着性、及び耐熱性を良好に維持するためには、ポリアミン化合物の分子量は、50〜300であることが好ましく、50〜250であることがより好ましく、100〜220であることが最も好ましい。
B成分のポリアミン化合物としては、ジアミン、及びトリアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適に使用し得る。本発明においてポリアミン化合物として好適に使用される化合物は、具体例として、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5−ペンタントリアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物においては、接着性、及び耐熱性などの観点から、特にジアミン化合物を使用することが好ましい。この理由は、末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を合成する際に、ポリアミン化合物を用いることにより、ウレア結合を有することになり、分子の剛直性が高くなると共に、分子鎖間の水素結合がより強固となるため、耐熱性が向上するものと推察される。また、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合がより強固となることによって、空気中の酸素が該末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)中へ拡散し難くなり、該末端非反応性ウレタンウレア樹脂の光酸化劣化が抑制されたためであると推察される。さらに、接着力が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合が強固となって樹脂の凝集破壊が起こりにくくなったためであると推察される。
また、前記ポリアミン化合物のなかで、耐水性、及び耐汗試験への安定性の観点から、イソホロンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミンを用いることがより好ましく、その中でも、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンを用いることが最も好ましい。
【0026】
<(C)分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物>
末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を合成するためには、分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する化合物(C成分)を併用する。このC成分を使用することにより、分子鎖の末端がキャッピングされた、末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)となる。前述のイソシアネート基と反応しうる基は、前記で説明した基が挙げられる。
前記C成分の中でも、分子内に少なくとも1つの耐候性を発揮する構造を有する機能性付与化合物であることが好ましい。機能性を付与する構造としては、例えばピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、およびベンゾトリアゾール構造が挙げられる。中でも、最も優れた効果を発揮するのは、ピペリジン構造であることが好ましい。
このような機能性付与化合物を用いることによって、末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)に耐候性を発揮する構造を導入することができ、その結果、光安定性能、酸化防止性能、及び紫外線吸収性能等の機能性に優れた末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を得ることができる。
以下、C成分として使用される各種化合物について、代表例としてピペリジン構造を有する化合物などを詳しく説明する。
【0027】
<ピペリジン構造を有する化合物>
前記C成分として使用されるピペリジン構造を有する化合物としては、下記式(i)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に、メチル基であることが好ましい。)。そして、上記ピペリジン環の窒素原子、または、4位の炭素原子にイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物が、ピペリジン構造を有する化合物に該当する。
以下、より具体的な化合物について説明する。
前記C成分として使用される化合物の中で、末端非反応性ウレタンウレア樹脂の末端にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、下記式(1)で示される化合物が好適に挙げられる。
【化2】
【0028】
ここで、
R
1、R
2、R
3及びR
4は、前記式(i)におけるものと同義であり、
R
5は、炭素数1〜10アルキル基または水素原子であり、
R
6は炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、aは0または1であり、
Xは、イソシアネート基と反応しうる基である。
上記式(1)において、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基である。4つのアルキル基が全てメチル基であることが好ましい。
R
5は、炭素数1〜10のアルキル基または水素原子である。中でも、入手の容易さの観点から、炭素数1〜4のアルキル基、または水素原子であることが好ましい。なお、R
1〜R
4が炭素数1〜4のアルキル基であるため、R
5が水素原子であっても、立体障害の影響でR
5が結合している窒素原子とイソシアネート基が反応することはない。
R
6は、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、aは、R
6の数を示すが、aが0の場合は、Xが直接ピペリジン環に結合していると理解されるべきである。
Xは、イソシアネート基と反応しうる基であり、好ましくは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基またはチオール基である。中でも、イソシアネート基との反応性、入手の容易さなどの観点からアミノ基及び水酸基が好適である。
上記式(1)で示される化合物の具体例としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンなどを挙げることができる。
【0029】
<その他のC成分>
上記C成分としては、前述したピペリジン構造を有する耐候性の向上を目的とした化合物以外にも、一般的なアミン、アルコール、チオール、及びカルボン酸を用いることができる。これらの化合物は、分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有することにより、(I)成分の末端を、不活性化することができる。
本発明で使用されるその他のC成分の中でも、好ましい化合物としては、下記式(2)及び(3)で表される化合物を挙げることができる。
【化3】
【0030】
ここで、
R
7は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子であり、
R
8は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはエステル基である。
R
7が水素原子である化合物をC成分として用いた場合には、(I)成分であるポリウレタンウレア樹脂の末端は、−NH(R
8)基となるが、この−NH(R
8)基は、他のポリマー、およびイソシアネート化合物とは実質的に反応しない。そのため、−NH(R
8)基は、イソシアネート基と反応しうる基には該当しない。
上記式(2)において、R
7は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子である。中でも、R
7は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子であることが好ましい。前記アリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR
7の例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基又は水素原子が挙げられる。
また、R
8は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基である。中でも、R
8は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。前記アリール基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR
8の例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、又はカルボキシプロピル基が挙げられる。
下記式(3)
【化4】
【0031】
ここで、
R
9は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基であり、
Zは、水酸基、カルボキシル基またはチオール基である。
で示される化合物も好適に使用できる。
上記式(3)において、R
9は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基であり、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。このアリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。好ましい基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子を有するフェニル基が挙げられる。好適なR
9の例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、及びカルボキシプロピル基が挙げられる。
上記式(3)におけるZは、イソシアネート基と反応しうる基であり、具体的には水酸基、カルボキシル基またはチオール基であり、好ましくは水酸基である。
上記式(2)及び(3)で示される化合物の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、4−ヘプチルアミン、オクチルアミン、1,1−ジプロピルブチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルヘプチルアミン、メチルオクチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、エチルヘキシルアミン、エチルヘプチルアミン、エチルオクチルアミン、プロピルブチルアミン、イソプロピルブチルアミン、プロピルペンチルアミン、プロピルヘキシルアミン、プロピルヘプチルアミン、プロピルオクチルアミンなどのアミン;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デカノール、2−デカノールなどのアルコール;メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、プロパンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、2−メチルプロパンチオール、3−メチル−2−ブテンチオール、1,1−ジメチルヘプタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンメタンチオール、2,6−ジメチルベンゼンチオールなどのチオール;酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸などのカルボン酸などが挙げられる。
以上のC成分は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても構わない。中でも、末端非反応性ウレタンウレア樹脂の耐久性を向上させるという観点から、ピペリジン構造を有する化合物を用いることが好適である。
【0032】
<末端非反応性ウレタンウレア樹脂におけるA1、A2、B、及びC成分の含有量>
上記本発明において、末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を構成する上記各成分、即ちA1成分、A2成分、B成分、およびC成分の量比は、形成される接着層の耐熱性、接合力等を考慮すると、以下の配合割合で製造されることが好ましい。
すなわち、A1成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、B成分に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基等)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.4〜0.8/1.0/0.19〜0.59/0.01〜0.2となる量比、特にn1:n2:n3:n4=0.45〜0.75/1.0/0.23〜0.53/0.02〜0.15となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.65〜0.75/1.0/0.23〜0.33/0.02〜0.1となる量比とすることが最も好ましい。ここで、上記n1〜n4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。
上記末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)は、末端には反応性の基を有さない。つまり、末端非反応性ウレタンウレア樹脂における各成分の含有量は、n2=n1+n3+n4を満足しなければならない。そのため、製造時においても、n2=n1+n3+n4となるような配合割合で製造することが好ましい。ただし、n2よりもn1、n3、及びn4の合計モル数(n1+n3+n4)が大きい場合には、再沈殿等により、未反応のA1、B、C成分を除去すればよい。
【0033】
<多分散度(重量平均分子量/数平均分子量の比)が、1.6〜2.4の範囲である末端非反応性ウレタンウレア樹脂;(I)成分>
本発明において、前記末端非反応性ウレタンウレア樹脂は、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量の比)が、1.6〜2.4の範囲であることが好ましい。このように狭い範囲の多分散度を有する末端非反応性ウレタンウレア樹脂を含む接着性組成物を使用することにより、該接着性組成物を用いて接合した積層体は、優れた接着性、特に高温における優れた接着性を示す。
このような効果が得られた理由として詳細は不明であるが、本発明者らは、以下の通り推測している。すなわち多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6〜2.4の範囲であることで、低分子量を低減でき、耐熱性が安定した点が挙げられる。さらに、低分子量ウレタンウレア樹脂の影響による物理的な分子間相互作用、すなわち、ポリマー鎖の分子間での絡み合いの低下が抑制できると考えられる。その結果、下記に詳述する特定の(III)成分を特定量配合することにより得られる接着層は、該接着層内での破壊、すなわち、凝集破壊が抑制できるようになり、密着性が向上したものと推測される。
なお、多分散度が低いほど、すなわち多分散度が1.0に近いほど、本発明の効果が強く発現する傾向にある。ただし、多分散度が1.6未満である末端非反応性ウレタンウレア樹脂を得ることは、工業的製造方法においては実質困難だと考えられる。一方、多分散度が2.4を超える場合には、低分子量物の影響により、軟化開始温度が低温となる傾向にある。そのため、多分散度が狭い樹脂と比較して、耐熱性に劣り、高温下での密着性が低下する傾向にある。また、高分子量物の影響により、多分散度が狭い樹脂と比較して、有機溶剤に溶解した際の粘度が著しく上昇し、塗工が困難となる。良好な接着力、耐熱性、及び塗工性の観点から、本発明で使用する末端非反応性ウレタンウレア樹脂の多分散度は、1.8〜2.2の範囲であることがより好ましい。
また、前記末端非反応性ウレタンウレア樹脂の分子量は、特に制限されるものではない。中でも、接着力、及び耐熱性の観点から、数平均分子量が好ましくは5千〜10万、より好ましくは8千〜5万であり、特に好ましくは1万〜4万であることが推奨される。
なお、前記末端非反応性ウレタンウレア樹脂の数平均分子量、及び重量平均分子量は、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ウレタンウレア樹脂試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定し、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いて算出した値である。また、多分散度は、重量平均分子量/数平均分子量で算出される値であり、上記方法によって求められた数平均分子量、及び重量平均分子量より算出される値である。
また、前記A1成分、A2成分、B成分、及びC成分を反応させて、末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を得る方法としては、所謂ワンショット法又はプレポリマー法のいずれの方法も採用することができる。中でも、多分散度を制御し、効率良く末端非反応性ウレタンウレア樹脂を得るためには、プレポリマー法を採用することが好ましい。特に後述する製造方法によれば、多分散度が上記範囲を満足する末端非反応性ウレタンウレア樹脂を簡便に製造できる。
【0034】
<末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)の製造方法>
<ウレタンプレポリマー(A)の製造方法>
本発明において、前記末端非反応性ウレタンウレア樹脂は、一般にウレタンプレポリマーとジアミン等のポリアミンとの反応によって製造できる。ウレタンプレポリマー(A成分)は、上記ポリオール化合物(A1成分)と、上記ジイソシアネート化合物(A2成分)とを反応(以下、「プレポリマー反応」ともいう)させることによって製造することができる。
前記ウレタンプレポリマー(A成分)は、前述のように、A1成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2としたときに、n1:n2=0.4/1.0〜0.8/1.0とすることにより、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとすることが好ましい。
A1成分とA2成分を反応させる際の添加順序に特に制限はない。必要に応じて反応途中に適宜、A1成分及びA2成分を追加添加することも可能である。
A1成分とA2成分との反応は、有機溶媒の存在下または非存在下、両者を、好ましくは窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、反応温度70〜130℃で反応させることが好ましい。反応温度が70℃未満の場合には反応が完結せず、また130℃を超える場合にはA1成分の一部が分解して、所望の物性のポリウレタンウレア樹脂が得られなくなる。反応時間は、A1成分とA2成分の仕込み比、及び反応温度によっても変化するが、0.5〜24時間の範囲とすることができる。
有機溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種類以上混合して使用することもできる。
有機溶媒を使用する場合には、その使用量はA1成分とA2成分の合計量を100質量部とした際に、200質量部以下とすることが好ましい。有機溶媒の使用量が200質量部を超える場合には、A1成分とA2成分の反応時間が長くなり、A1成分の一部が分解するおそれがある。
反応に際しては、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基が不純物である水と反応するのを避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、例えばジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を用いてもよい。触媒の添加量は、A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部とすることが好ましい。
【0035】
<ウレタンプレポリマー(A)からウレタンウレア樹脂を製造する方法>
ウレタンウレア樹脂は、ウレタンプレポリマーとジアミン等のポリアミンとの反応によって製造できる。また、前記の方法においてウレタンプレポリマーを製造した場合には、上記プレポリマー化反応後の反応液にB成分であるポリアミン化合物を添加し、連続的にウレタンウレア樹脂の製造を行うこともできる。
上記ウレタンウレア樹脂の製造方法における他の反応条件は、製造設備等を勘案して適宜決定される。通常有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、反応温度−20℃〜40℃の範囲で、より好ましくは、−10℃〜20℃の範囲で反応を行うことができる。
上記ウレタンウレア樹脂の製造における有機溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピル、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルなどのアルコール系有機溶媒を使用できる。これらの有機溶媒は、単独であるいは2種類以上混合して使用することもできる。
上記有機溶媒の使用量は、効率的に反応を行うとの観点や、残留する有機溶媒の影響等の観点から、最終的に得られるポリウレタンウレア樹脂の合計量を100質量部に対し、130〜800質量部の範囲にあることが好ましく、150〜500質量部の範囲にあることがより好ましい。
反応に際しては、反応系中のイソシアネート基と不純物である水との反応を避けるため、各種反応試剤及び有機溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、例えばジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を新たに加えても良いし、プレポリマー反応で使用した場合には除去することなくそのまま使用してもよい。触媒の添加量は、ウレタンウレア樹脂の合計100質量部に対して0.001〜1質量部とすることが好ましい。
【0036】
<ウレタンウレア樹脂から末端非反応性ウレタンウレア樹脂を製造する方法>
前記末端非反応性ウレタンウレア樹脂((I)成分)を合成する際には、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物(C成分)を併用する。このC成分を使用することにより、分子鎖の末端がキャッピングされた(I)成分となる。
上記、分子鎖の末端がキャッピングされたウレタンウレア樹脂((I)成分)を得る方法(以下、「末端修飾反応」とも言う)としては、前述のA成分とB成分の反応が終了し、末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア樹脂が有機溶剤に溶解している反応液に、必要に応じて有機溶剤で希釈したC成分を滴下して加える方法が好適である。また、前述のA成分とB成分の反応の際に添加したアルコール系有機溶剤をC成分として末端修飾反応に使用する場合には、新たにC成分を添加しなくてもよい。
上記の末端修飾反応は、有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で実施される。反応温度は、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基の場合には、前述のA成分とB成分の反応のときと同様の温度である−20℃〜30℃の間の温度で反応させることもできる。一方、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基以外の場合には、イソシアネート基との反応速度が遅いため、30℃を超え130℃以下の温度で反応させることが好ましい。
反応時間は、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基の場合には0.5〜3時間程度であり、C成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基がアミノ基以外の場合には1時間〜24時間程度である。
有機溶媒としては、前述のプレポリマー反応、及びA成分とB成分の反応に使用した有機溶剤と同じものを使用できる。また、当然のことながら、前述のプレポリマー反応、及びA成分とB成分の反応で使用した有機溶剤を含んだ状態で、末端修飾反応を実施しても構わない。
末端修飾反応における有機溶媒の使用量は、最終的に得られるA成分の合計量100質量部に対し、130〜800質量部の範囲であることが好ましい。
反応に際しては、反応系中のイソシアネート基と不純物である水との反応を避けるため、各種反応試剤及び有機溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、例えば、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を新たに加えても良いし、プレポリマー反応までに触媒を使用した場合には除去することなくそのまま使用してもよい。触媒の添加量は、A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
【0037】
<多分散度(重量平均分子量/数平均分子量の比)が、1.6〜2.4の範囲である末端非反応性ウレタンウレア樹脂の製造方法>
上記のようにして、多分散度が、1.6〜2.4の範囲である末端非反応性ウレタンウレア樹脂を製造する場合には、ウレタンプレポリマー(A成分)と、ポリアミン化合物(B成分)とを反応させる際に、A成分とB成分との完全混合時間(θ
M)を、好ましくは30秒以下、より好ましくは15秒以下にすることが好ましい。
完全混合時間(θ
M)とは、撹拌槽(反応容器など)における混合特性を表わす指標であり、n・θ
M(nは撹拌翼の回転数(1/秒))とRe(レイノルズ数;液の乱れ状態を表す指標)との関係を示す「n・θ
M−Re曲線」から求められる。完全混合時間(θ
M)及びn・θ
M−Re曲線については、例えば、「住友重機械工業 技報 vol.35 No.104 1987年8月 p74−78」、特開昭61−200842号公報、特開平6−312122号公報などに記載されている。
完全混合時間(θ
M)を、30秒以下にするための手段としては、任意の適切な方法が採用される。例えば撹拌槽(反応容器など)内に邪魔板等を設置し乱流を発生させる方法や、任意の適切な撹拌翼を用いる方法などが挙げられる。適切な撹拌翼としては、マックスブレンド翼、フルゾーン翼などが挙げられる。
また、前記の方法にてウレタンプレポリマーを製造した場合には、上記プレポリマー化反応後の反応液にB成分を添加し、連続的にウレタンウレア樹脂の製造を行うこともできる。
上記の多分散度の範囲であるウレタンウレア樹脂の製造方法における他の反応条件は、製造設備等を勘案して適宜決定される。中でも、特に多分散度が狭い範囲にあるウレタンウレア樹脂が得られるという観点から、有機溶媒の存在下で、必要に応じて窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で、反応温度−20℃〜40℃の範囲で、より好ましくは、−10℃〜20℃の範囲で反応を行うことが好ましい。反応温度が−20℃未満の場合には、鎖延長反応後半で粘度が上昇し撹拌不足となる傾向にある。また、反応温度が40℃を超える場合には、ウレア結合の形成反応が速く、A成分とB成分が接触直後に反応することによって不均一な反応となりやすく、多分散度が広がる傾向にある。上記反応温度における反応時間は0.5〜3時間程度で十分である。
この条件で多分散度が1.6〜2.4であるウレタンウレア樹脂を製造することができる。得られたウレタンウレア樹脂が、末端非反応性ウレタンウレア樹脂となっている場合には、そのまま(I)成分として使用できる。仮に、該ウレタンウレア樹脂の末端が反応性基である場合には、<ウレタンウレア樹脂から末端非反応性ウレタンウレア樹脂を製造する方法>に記載の方法で末端をキャッピングしてやればよい。末端をキャッピングすることにより多分散度は変化しない。
以上に記載の方法により、本発明の接着性組成物の主成分となる末端非反応性ウレタンウレア樹脂を製造することができる。次に、該接着性組成物に配合する、(III)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物について説明する。
【0038】
<(III)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物((III)成分)>
本発明の接着性組成物には、特定量の(III)成分が含まれる。そして、該(III)成分は、(IIIA)2級炭素に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物((IIIA)成分)、および(IIIB)分子内の炭素数が4〜40である、前記(IIIA)成分以外のポリイソシアネート化合物((IIIB)成分)を特定量含むものである。
前記(III)成分は、接着性樹脂組成物の保存安定性等を考慮すると、分子中のイソシアネート基の数が2〜3個であることが好ましい。また、前記(III)成分の分子量は、特に制限されるものではなく、1000未満であることが好ましい。(III)成分の分子量が1000以上の場合、得られる接着層の耐熱性、および膜強度が低下する傾向がある。この理由は、分子量が大きい(III)成分を用いると、イソシアネート基間の結合数が増える傾向にあり、たとえ橋架け構造を形成したとしても架橋点間の距離が長くなり、耐熱性があまり向上せず、かつ接着性も十分に向上しないと考えられる。よって、(III)成分の分子量は、1000未満であることが好ましく、より好ましくは800以下、最も好ましくは550以下である。この(III)成分は、前記の通り、ポリマーでない方が好ましい。そのため、(III)成分の分子量は、(III)成分そのものの分子量である。(III)成分の分子量の下限は、その単体化合物の分子量であり、特に制限されるものではないが、100とするのが好ましい。
(III)成分の分子内に、2つ以上のイソシアネート基を有することにより、接着層を形成する際に、該(III)成分が(I)成分と反応し、橋架け構造を有するウレタンウレア樹脂を生成するものと考えられる。もしくは/更には、(III)成分の分子内に含まれるイソシアネート基の一部が加水分解してアミンとなり、他の(III)成分の分子内に含まれるイソシアネート基と反応することで、(I)成分中にウレア樹脂を生成するものと考えられる。この橋架け構造、及び/又は新たなウレア樹脂が(I)成分中に形成されたことによって、接着層の耐熱性が向上するとともに、凝集破壊が起こりにくくなる。その結果、接着性向上の効果が高くなると考えられる。このような効果は、通常の2液型のポリウレタン樹脂を使用した場合よりも、優れている。
前記橋架け構造、及び/又は新たなウレア樹脂が形成されることを詳細に説明すると以下の通りである。(III)成分を(I)成分に添加した場合の耐熱性向上、及び接着性向上の効果は、それらを含有する接着性組成物を用いた積層体を作製した後に発現する(接着層が完全に形成されてから発現する。)。具体的には、(I)成分、及び(III)成分を含有する接着性組成物を用いて積層体を作製した直後に、熱や湿気を供給することにより、耐熱性向上、及び接着性向上の効果が発現すると考えられている。つまりは、熱により一部の(III)成分の1つのイソシアネート基が(I)成分のウレタン結合、又はウレア結合と反応する。次いで、湿気反応(水存在下での反応)において、(I)成分に結合した(III)成分の残存するイソシアネート基と、フリーで残存する(III)成分のイソシアネート基の一部が、湿気により加水分解してアミンを生じることにより、架橋反応が進行すると考えられている。もしくは/更には、単にフリーで残存する(III)成分のイソシアネート基の一部が、湿気により加水分解してアミンを生じ、他のフリーで残存する(III)成分のイソシアネート基と反応することにより、(I)成分中に新たなウレア樹脂を生成すると考えられている。
以上のような効果をより発現し、耐溶剤性の高いポリアミド樹脂シート、および他シートと接合し難い偏光シートを強固に接合するためには、前記(III)成分は、(IIIA)2級炭素に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物((IIIA)成分)、および(IIIB)分子内の炭素数が4〜40である、前記(IIIA)成分以外のポリイソシアネート化合物((IIIB)成分)を含まなければならない。なお、(III)成分は、(IIIA)成分、および(IIIB)成分以外のポリイソシアネート化合物を含むこともできるが、接着性組成物自体の生産性、保存安定性、接着性等を考慮すると、(IIIA)成分、および(IIIB)成分の2種類のみからなることが好ましい。
【0039】
<(IIIA)成分>
本発明の接着性組成物は、(IIIA)2級炭素に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を特定量含む。(IIIA)成分を使用することにより、接着層の耐熱性、接着性を向上することができる。
(IIIA)成分としては、例えば4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物を使用することが好ましい。
本発明の接着性組成物は、前記(IIIA)成分に加え、(IIIB)成分を含むことにより、優れた効果を発揮する。
【0040】
<(IIIB)成分>
本発明の接着性組成物は、分子内の炭素数が4〜40である、前記(IIIA)成分以外のポリイソシアネート化合物すなわち2級炭素原子に結合したイソシアネート基を有さないポリイソシアネート化合物((IIIB)成分)を含む。この(IIIB)成分は、炭素数が4〜40であることにより、比較的柔軟な基(運動性が高い基)を有するものとなっている。密着性、保存安定性、取り扱い易さ等を考慮すると、炭素数は、15〜30であることが好ましい。特に好ましくは、分子内に炭素数が4〜10のアルキレン基を有するものであることが好ましい。そして、少なくとも2つのイソシアネート基を分子内に有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。
(IIIB)成分
としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト化合物((IIIB)成分
)が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット化合物、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物からなる群より選ばれるポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0041】
<(III)成分の配合割合>
本発明において、(III)成分の配合割合は、以下の通りである。すなわち、得られる接着層の接着性、及び耐熱性の観点から、(I)成分100質量部に対して4.0〜20質量部でなければならない。(III)成分の配合量がこの範囲を満足することにより、得られる接着層が優れた効果を発揮する。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な接着性、及び耐熱性の向上効果が得られない。また、多すぎる場合には、接着層の白濁、接着性の低下等が起こる傾向がある。本発明の接着性組成物は、下記に詳述するフォトクロミック化合物を含むことができるが、この場合において、(III)成分が多すぎると、フォトクロミック化合物の耐久性が低下してしまう。ポリマーシート同士の接着性をより一層向上させるためには、(III)成分の配合量は、(I)成分100質量部に対して、好ましくは6.0〜17.5質量部、さらに好ましくは7.0〜15.0質量部とすることが望ましい。なお、複数種類の(III)成分を使用した場合には、複数種類の(III)成分の合計配合量が前記配合量を満足するようにする。(III)成分が、(IIIA)成分、および(IIIB)成分からなる場合には、(III)成分の配合量は、(IIIA)成分、および(IIIB)成分の合計量となる。
この際、(III)成分のイソシアネート基の割合は、(I)成分100質量部に対して、好ましくは1.0〜10.0質量部、より好ましくは1.5〜6.0質量部、もっとも好ましくは2.0〜5.0質量部である。ここで、イソシアネート基の量は、(III)成分の分子量、1分子当たりのイソシアネート基の数、及びイソシアネート基の分子量から求めることができる。なお、当然のことであるが、複数種類の(III)成分を使用した場合には、複数種類の(III)成分のイソシアネート基の合計割合が、イソシアネート基の前記割合を満足すればよい。(III)成分が、(IIIA)成分、および(IIIB)成分からなる場合には、(III)成分のイソシアネート基の割合は、(IIIA)成分、および(IIIB)成分のイソシアネート基の合計割合となる。
【0042】
<(IIIA)成分と(IIIB)成分との配合割合>
本発明おいて、(IIIA)成分と(IIIB)成分との合計量は、前記(III)成分の配合量を満足しなければならない。すなわち、(III)成分が(IIIA)成分、および(IIIB)成分以外の(III)成分を含んでもよいことを考えると、(I)成分 100質量部に対して、(IIIA)成分と(IIIB)成分との合計量は最大で20質量部となる。ただし、本発明においては、(III)成分は、(IIIA)成分、および(IIIB)成分からなることが好ましく、この場合、(I)成分 100質量部に対して、(IIIA)成分と(IIIB)成分との合計量が4.0〜20質量部を満足しなければならない。そして、(IIIA)成分と(IIIB)成分とは、以下の配合割合を満足しなければならない。
すなわち、前記(IIIA)成分を100質量部としたとき、前記(IIIB)成分を10〜500質量部としなければならない。この範囲を満足することにより、ポリアミド樹脂シート、特に脂環族ポリアミド樹脂シート、および偏光シート、二色性染料を含む偏光シート等の接着性を高めることができる。前記(IIIB)成分が前記配合割合を外れると、高い接着強度が得られなくなるため好ましくない。さらに接着性を高めるためには、特に、脂環族ポリアミドシート同士を、耐久性にも優れ、より高度に接合するためには、前記(IIIA)成分を100質量部としたとき、前記(IIIB)成分を50〜400質量部とすることが好ましく、100〜300質量部とすることがさらに好ましく、150質量部を超え250質量部以下であることがさらに好ましく、160質量部以上250質量部以下であることが特に好ましい。また、上記配合の範囲であれば、偏光シート、および二色性染料を含む偏光シートと、ポリマーシートとをより強固に接合できる。
【0043】
<接着性組成物におけるその他の配合成分>
<(II)色素>
本発明の接着性組成物は、前記(I)成分、(III)成分以外にその他の成分を含むことができる。中でも、得られる積層体の機能を高めるために、(II)色素を含むこともできる。色素を含むことにより、得られる積層体をサングラス等の光学物品として用いることができる。
(II)色素としては、通常のポリマーに配合される有機無機の色素が制限なく使用できる。例えば、公知の蛍光染料、染料、顔料、フォトクロミック化合物等が挙げられる。色素を配合する場合、その量は、使用する用途に応じて適宜決定すればよい。通常であれば、(I)成分と(III)成分との合計量100質量部に対して、色素を0.1〜20.0質量部とすることが好ましく、0.5〜10.0質量部とすることがより好ましく、1.0〜7.0質量部とすることがさらに好ましい。
(II)該色素の中でも得られる積層体をより有用なものとするためには、該色素は、フォトクロミック化合物を含むことが好ましい。フォトクロミック化合物を含むことにより、日光が照射された場合には色が付き、室内においては透明となる、サングラスを製造することができる。本発明の接着性組成物からなる接着層は、フォトクロミック化合物が運動する適度な空間を有することができ、接着性と併せて優れたフォトクロミック特性を発揮できる。
前記フォトクロミック化合物としては、例えばクロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を使用することができる。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
これらのフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。これらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるためさらに好適である。
本発明において、特に好適に使用できるフォトクロミック化合物を具体的に例示すると、以下のものが挙げられる。
【0045】
本発明において、フォトクロミック化合物の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、(I)成分と(III)成分との合計量100質量部に対して、0.1〜20.0質量部とすることが好ましい。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向がある。一方、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、フォトクロミック組成物に溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(密着力)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、ポリマーシート同士の接着性を十分に保持するためには、フォトクロミック化合物の添加量は、(I)成分と(III)成分との合計量100質量部に対して、0.5〜10.0質量部とすることがより好ましく、1.0〜7.0質量部とすることがさらに好ましい。
また、本発明において、(II)色素としては、550〜600nmの範囲に吸収ピークを有する色素を使用することもできる。この550〜600nmの範囲に吸収ピークを有する色素を使用することにより、得られる積層体の防眩性をより向上させることができる。
550〜600nmの範囲に吸収ピークを有する色素としては、ニトロ系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、スレン系化合物、ポルフィリン系化合物、希土類金属化合物などが挙げられる。その中でも、防眩性と視認性の兼ね合いから、ポルフィリン系化合物、希土類系化合物が好ましい。更には、プラスチック材料中への分散安定性の観点から、ポルフィリン系化合物が最も好ましい。
該希土類金属化合物としては、アクアヒドロキシ(1−フェニル1,3−ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(フェナシルフェニルケトナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1−フェニル−2−メチル−1,3−ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1−チオフェニル−1,3−ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1−フェニル1,3−ブタンジオナト)エルビウム、アクアヒドロキシ(1−フェニル1,3−ブタンジオナト)
ホルミウムなどの錯体を挙げることが出来る。
該ポルフィリン系化合物としては、ポルフィリン骨格に種々の置換基を有していても良い化合物であり、例えば、特開平5−194616号公報、特開平5−195446号公報、特開2003−105218号公報、特開2008−134618号公報、特開2013−61653号公報、特開2015−180942号公報、WO2012/020570号パンフレット、日本国特許第5626081号、日本国特許第5619472号、日本国特許
第5778109号等に記載されている化合物を好適に使用することができる。その中でも、特に好適なポルフィリン系化合物としては、下記式(4)
【化6】
(式中、
Y
1、Y
3、Y
5、およびY
7は、水素原子であり、
Y
2、Y
4、Y
6、およびY
8は、それぞれ、炭素数1〜6の直鎖、または分岐のアルキル基であり、
Mは、2価の金属原子または酸化金属原子である。)
で示されるテトラアザポルフィリン化合物が挙げられる。
炭素数1〜6の直鎖、または分岐アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基が挙げられる。
2価の金属原子としては、例えば、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pd、Pt、Mn、Mg、Ti、Ba、Cd、Hg、Pd、Snなどを挙げることができる。酸化金属原子としては、例えば、VO、MnO、TiOなどを挙げることができる。
なお、前記式(4)で示されるテトラアザポルフィリン化合物は、実際には、1種または2種以上の異性体から成る混合物を表している。このような複数の異性体から成る混合物の構造の記載に際しても、本発明においては、便宜上、例えば、前記式(4)で示される一つの構造式を記載している。
本発明においては、前記テトラアザポルフィリン化合物は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数を併用してもよい。さらに、1種または2種以上の異性体から成る混合物を使用することができる。また、所望により、該混合物から各異性体を分離し、異性体の内の1種の化合物を用いることができ、さらには、任意の割合から成る複数の異性体を併用することができる。
また、防眩性の観点から、前記テトラアザポルフィリン化合物の中でも、好ましくは、580〜605nmに吸収極大を有する化合物を使用することが好ましい。
【0046】
<(II)色素以外の他の成分>
<その他の成分>
さらに、本発明の接着性組成物には、製膜性(積層体の生産性向上)のために、有機溶媒、水、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。また、これら添加剤を配合することにより、接着性組成物がフォトクロミック化合物を含む場合には、該フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上を発揮する。
接着層の成形のし易さを考慮すると、該接着性組成物は、有機溶媒を含むことが好ましい。ただし、この有機溶媒は、接着層となる際に除去されることが好ましい。具体的な有機溶媒を例示すれば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、t−ペンチルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、n−ブチルメチルケトンなどのケトン;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);テトラヒドロフラン(THF);シクロヘキサノン;クロロホルム;ジクロロメタン及びこれらの組み合せを挙げることができる。
ポリマーシートに本発明の接着性組成物を塗布した際の塗布層の平滑性、又は平滑な接着層を形成するためには、前記有機溶媒は、90℃未満の沸点を有する有機溶媒と、90℃以上の沸点を有する有機溶剤を混合して用いることが好適である。このような組み合わせの有機溶媒を使用することにより、上記平滑性に加え、有機溶媒の除去が容易となり、乾燥速度を速めることもできる。沸点が90℃未満、90℃以上の有機溶媒の配合割合は、使用する他の成分に応じて適宜決定すればよい。中でも、優れた効果を発揮するためには、全有機溶媒量を100質量%としたとき、沸点が90℃未満の有機溶媒が20〜80質量%、沸点が90℃以上の有機溶媒が80〜20質量%とすることが好ましい。
また、有機溶媒を使用する場合の配合量は、前記したような有機溶媒を配合したことによる効果の観点から、(I)成分 100質量部に対して、5〜900質量部、特に100〜750質量部とすることが好ましく、150〜400質量部とすることが最も好ましい。
その他、界面活性剤を具体的に例示すれば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の何れも使用できる。中でも、接着性組成物への溶解性からノニオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン性界面活性剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、さらにはシリコーン系やフッ素系の界面活性剤を挙げることができる。
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、(I)成分100質量部に対し、0.001〜5質量部の範囲が好ましい。
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用しても良い。さらにこれらの添加剤の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用しても良い。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤それぞれの添加量は、(I)成分100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。但し、これらの添加剤を使用しすぎると、ポリマーシートへの接着性が低下するため、その添加量は好ましくは0.001〜7質量部、より好ましくは0.001〜3質量部、最も好ましくは0.001〜1質量部である。
【0047】
<接着性組成物の製造方法>
本発明の接着性組成物は、上記(I)成分、(III)成分、並びに必要に応じて使用する(II)成分、及びその他の成分を混合することにより製造できる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではない。
例えば、有機溶媒を使用しない場合、各成分を溶融混練して接着性組成物としペレット化することも可能であり、そのままシート成型することも可能である。また、有機溶媒を使用する場合には、各成分を有機溶媒に溶かすことで接着性組成物を得ることができる。
【0048】
<接着性組成物からなる接着層、及び該接着層の形成方法>
本発明においては、以下の方法で接着層を介してポリマーシートが接合された積層体を製造できる。例えば、接着性組成物を混錬し、均一な状態の接着性シートを一旦作製した後、該接着性シートをポリマーシート同士の間に配置して、該ポリマーシート同士を圧接することにより、接着層を介してポリマーシートが接合された積層体を製造できる。また、有機溶媒を含む接着性組成物を使用した場合には、ポリマーシート上に、一旦、接着性組成物を塗布して塗布層を形成し、該塗布層から有機溶媒を除去して接着層とし、該接着層上に他のポリマーシートを配置して圧接することにより、積層体を得ることもできる。
積層体を製造する方法は、特に制限されるものではないが、中でも、平滑性に優れた積層体を得るためには、以下の方法を採用することが好ましい。
具体的には、先ず、平滑な基材上に、有機溶媒を含む接着性組成物を一旦塗布して塗布層を形成する。
次いで、該塗布層から有機溶媒を除去し、少なくとも(I)成分、(III)成分を含む接着性シートを準備する。この時、有機溶媒を除去するための乾燥は、室温(23℃)以上100℃以下の温度で、10〜100%RHの湿度下で実施されることが好ましい。乾燥をこの条件で実施することにより、(III)成分の加水分解反応を促進し、より強固な密着力が得られるものと考えられる。上記のような湿度(水分の存在下)下で乾燥を行うことにより、接着性組成物に水を配合しなくとも、優れた性能を発揮する接着性シート、および接着性シートからなる接着層とすることができる。
さらに、接合しようとするポリマーシート同士の間に、該接着性シートを介在させて、大気中の湿気存在下で該ポリマーシート同士を接合することにより、接着層を有する積層体を製造することが好ましい。この時、接着性シートが接着層となる。
このような好適な方法を用いると、例えば、偏光シートを接合する場合、有機溶媒等により偏光シートからヨウ素等が滲み出すおそれを抑制できるため、接着強度を向上できる。また、一旦、有機溶媒を除去した接着性シートを使用するため、ポリアミド樹脂シートに含まれる添加剤等を抽出するおそれがなくなるため、ポリアミド樹脂シート同士を強固に接着できると考えられる。また、二色性染料を含む偏光シートの場合も、好適な方法を採用することにより、ポリマーシートとより一層強固に接合できる。
本発明において、得られる積層体の密着性を、より強固に安定化させるためには、以下の手順で処理することがより好ましい(以下の手順で、(III)成分が反応した完全な接着層を形成することが好ましい。)。
【0049】
具体的には、接着性シートでポリマーシート同士を接合したばかりの積層シートを20℃以上60℃以下の温度で4時間以上静置し、脱気することが好ましい。静置する時間の上限は、積層シートの状態を見て決めればよいが、50時間もあれば十分である。また、静置に際しては、常圧で静置することも可能であるし、真空下で静置することも可能である(以下、この工程を脱気工程とする場合もある。)。
次いで、この静置した積層シートを60℃以上130℃以下の温度下、30分以上3時間以下放置しておくことが好ましい(以下、加熱工程とする場合もある。)。この加熱処理を実施することにより、接着性シートとポリマーシートとの界面で接着性シートが軟化・溶融し、密着性が高まるものと考えられる。加えて、(III)成分のイソシアネート基の一部が、反応に供されるものと考える。その結果、このイソシアネート基が(I)成分のウレタン結合、又はウレア結合に結合し、アロファネート結合、又はビュレット結合を形成することを推進するものと考えられる。そして、この加熱処理して得られた積層シートは、その状態が非常に安定なものとなる。
次いで、加熱工程で処理した積層シートを室温(23℃)以上100℃以下の温度範囲、及び30〜100%RHの湿度下で加湿処理することが好ましい(以下、この工程を加湿工程とする場合もある)。この加湿処理を実施することにより、(III)成分による(I)成分どうしの橋架け構造を完結させるとともに、積層シート中に存在する(III)成分由来のイソシアネート基を完全に消失させることができ、接着性をより安定化させることができる。
さらには、加湿工程後の積層シートに、常圧下、もしくは真空下において、40℃以上130℃以下の温度範囲で静置することにより、積層シート中に存在する過剰の水分を除去することが好ましい(以下、この工程を水分除去工程とする場合もある)。
以上の通り、本発明において、積層体を製造する場合には、接着性シートを介してポリマーシート同士を圧着して接合した積層シートを作製後、接着性シートを完全な接着層とするために、前記1)脱気工程、2)加熱工程、3)加湿工程処理、および4)水分除去工程の順に後処理を実施することが好ましい。
(I)成分と(III)成分との反応生成物からなる接着層の耐熱性は、
(i)ポリマーシート同士を該接着層を介して得られる積層体の物性の観点、
(ii)得られた積層体を用いて曲げ加工や射出成型により光学物品を製造する際の加工安定性の観点、
(iii)得られる積層体の接着性の観点、
(iv)さらにはこれら積層体又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性の観点、
から、120〜190℃がさらに好ましく、150〜190℃が特に好ましい。本発明における耐熱性とは、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて、下記条件で測定した軟化点を意味する。
〔測定条件〕 昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブ。
本発明において、得られる積層体がより優れた特性を発揮するためには、前記接着性組成物は、耐熱性が80℃以上120℃未満の(I)成分、および(III)成分を含むことが好ましい。そして、該接着性組成物からなる接着層の耐熱性が、120〜190℃であることがさらに好ましく、150〜190℃であることが特に好ましい。
耐熱性が80℃以上120℃未満である(I)成分は、柔軟性があり、運動性が高いものと考えられる。この(I)成分をベースにすることにより、一定の耐熱性を有しながら、フォトクロミック化合物を配合した場合には、優れたフォトクロミック特性を発揮できる。さらに、柔らかい該(I)成分、及び前記(III)成分を含むものは、ポリアミド樹脂シート、偏光シートへの密着性がよくなり、ポリマーシート同士の接着性を高める一因になると考えられる。加えて、前記の通り、(III)成分を配合することの耐熱性向上、及び接着性向上の効果が積層体を作製した後(完全に接着層が形成されたこと)に発現することにより、優れた特性を有する積層体となる。
該接着層の厚みは、使用用途に応じて適宜決定される。中でも、該接着層がフォトクロミック化合物を含む場合には、その特性を考慮すると、1〜100μmであることが好ましい。
【0050】
<ポリマーシート>
ポリマーシート同士を該接着層を介して接合して得られる積層体において、該ポリマーシートは、特に制限されるものではない。具体的なポリマーシートを例示すると、ポリカーボネート樹脂シート、ポリエステル樹脂シート、ポリアミド樹脂シート、セルロース樹脂シート、アクリル樹脂シート、ウレタン系樹脂シート、ポリオレフィン樹脂シート、偏光シートなどが挙げられる。これらシートの厚みは、積層体を用いる用途に応じて適宜決定すればよい。積層体の用途に応じて最適な厚みは異なるが、通常であれば、20〜1500μmの厚みのものが使用できる。
本発明の接着性組成物は、従来接着が難しかったポリアミド樹脂シート、および偏光シート等を接着する場合に優れた効果を発揮する。以下に、本発明に使用される脂環族ポリアミドシート、および偏光シートについて説明する。
【0051】
<脂環族ポリアミド樹脂からなるシート(脂環族ポリアミドシート)>
本発明において使用されるポリマーシートは、機械的強度、耐溶剤性(耐薬品性)などの観点から、脂環族ポリアミド樹脂からなるシート(脂環族ポリアミドシート)が挙げられる。該脂環族ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂や芳香族ポリアミド樹脂などを含有するコポリアミドであってもよい。
該脂環族ポリアミド樹脂としては、脂環族ジアミン及び脂環族ジカルボン酸から選択された少なくとも一種を構成成分とするホモ又はコポリアミドなどが挙げられる。脂環族ジアミンとしては、ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノシクロアルカン(炭素数5〜10)類;ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビスアミノシクロアルキル(炭素数5〜10)アルカン(炭素数1〜6)類などが挙げられる。脂環族ジアミンは、アルキル基(炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜2のアルキル基)などの置換基を有していてもよい。また、脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの炭素数5〜10のシクロアルカンジカルボン酸類などが挙げられる。
また、該脂環族ポリアミド樹脂は、前記ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環族ジアミン及び/又は脂環族ジカルボン酸と共に、脂肪族ジアミン(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどの炭素数4〜14のアルキレンジアミンなど)及び/又は脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数4〜18のアルカンジカルボン酸など)を構成成分とする樹脂であってもよい。
好ましい脂環族ポリアミド樹脂としては、例えば、脂環族ジアミン類[例えば、ビス(アミノシクロアルキル(炭素数5〜10)アルカン(炭素数1〜6)類、好ましくはビスアミノシクロアルキル(炭素数6〜8)アルカン(炭素数1〜6)類、さらに好ましくはビスアミノシクロヘキシルアルカン(炭素数1〜3)類]と脂肪族ジカルボン酸類(例えば、炭素数4〜18のアルカンジカルボン酸類、好ましくは炭素数6〜16のアルカンジカルボン酸類、さらに好ましくは炭素数8〜14のアルカンジカルボン酸類)とを構成成分とする樹脂(ホモ、又はコポリアミド)などが例示できる。代表的な脂環族ポリアミド樹脂としては、下記式(5)で表される脂環族ポリアミドが挙げられる。
【0052】
【化7】
(式中、Gは、直接結合、アルキレン基又はアルケニレン基を示し、R
10及びR
11は、同一又は異なったアルキル基を示し、m及びnは0又は1〜4の整数、pおよびqは1
以上の整数を示す)。
【0053】
前記式(5)において、Gで表されるアルキレン基(又はアルキリデン基)としては、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロパン−1,3−ジイル、2−プロピリデン、ブチレンなどの炭素数1〜6のアルキレン基(又はアルキリデン基)、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基(又はアルキリデン基)、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基(又はアルキリデン基)が挙げられる。また、Gで表されるアルケニレン基としては、ビニレン、プロぺニレンなどの炭素数2〜6のアルケニレン基、好ましくは炭素数2〜4のアルケニレン基などが挙げられる。
前記式(5)中のR
10及びR
11において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜2のアルキル基(メチル基、エチル基)が挙げられる。
前記式(5)中のmおよびnは、それぞれ、0又は1〜4の整数から選ばれるが、通常、0又は1〜3の整数であり、好ましくは0又は1〜2の整数であり、さらに好ましくは0又は1である。また、置換基R
10及びR
11の置換位置は、通常、アミド基に対して2位、3位、5位、6位から選択でき、好ましくは2位、6位であってもよい。
前記式(5)において、pは4以上であることが好ましく、より好ましくは6〜20であり、最も好ましくは8〜15である。また、前記式(5)において、q(重合度)は、5以上であることが好ましく、より好ましくは10〜800であり、最も好ましくは50〜500である。
前記のような脂環族ポリアミド樹脂としては、市販品を使用するこ
とができる。具体的には、ダイセル・エボニック社製「トロガミド(TROGAMID)」(登録商標)、EMS−GRIVORY社製「グリルアミド(Grilamid)」(登録商標)、及び「グリルアミドTR(Grilamid TR)」(登録商標)などが挙げられる。また、脂環族ポリアミド樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
該脂環族ポリアミド樹脂の数平均分子量は、例えば、6,000〜300,000、好ましくは10,000〜200,000、さらに好ましくは15,000〜100,000程度である。
また、該脂環族ポリアミド樹脂は、熱溶融温度(又は融点)を有していてもよく、熱溶融温度は、例えば、100〜300℃、好ましくは110〜280℃、さらに好ましくは130〜260℃程度であってもよい。特に、結晶性(特に微結晶性)を有する脂環族ポリアミド樹脂の熱溶融温度は、例えば、150〜300℃、好ましくは180〜280℃、さらに好ましくは210〜260℃程度であってもよい。
該脂環族ポリアミド樹脂は、ビカット軟化点が100〜200℃、好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは130〜150℃程度であってもよい。
該脂環族ポリアミド樹脂は、ガラス転移点が100〜200℃、好ましくは110〜170℃、さらに好ましくは125〜150℃程度であってもよい。
該脂環族ポリアミド樹脂は、線膨張係数が0.1〜1.5、好ましくは0.3〜1.0、さらに好ましくは0.5〜0.9程度であってもよい。
本発明で使用する脂環式ポリアミドシート上には、目的に応じてハードコート処理等が施される場合がある。ハードコートは、光硬化タイプや熱硬化タイプなど公知の方法が何ら制限なく使用可能である。一般的には、熱硬化タイプのハードコートの方が生産性に優れており、90〜130℃程度の温度で1〜3時間程度硬化させて使用される。この様な条件下においても、上述の様なビカット軟化点やガラス転移点を有することにより、ハードコート積層時に熱変形することなく使用することが出来る。
本発明で使用する脂環族ポリアミドシートは、前記脂環族ポリアミド樹脂を主成分とするが、本発明の効果が発現される範囲において、他の樹脂を含むこともできる。他の樹脂としては、公知の脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂が例示できる。
【0054】
該脂環族ポリアミドシートは、ポリカーボネートシートなどに比べて、高いアッベ数を有している。そのため、該脂環族ポリアミドシートを使用することにより、ポリカーボネート(アッベ数34)を使用した場合と比較して、得られる積層体において、虹色等の色むらの発生を効率よく抑制できる。そのため、本発明で使用する脂環族ポリアミドシートのアッベ数は、40〜65であることが好ましく、50〜60であることがより好ましい。
積層体を製造するに際し、該脂環族ポリアミドシートを後述する偏光シートと組み合わせて使用する場合には、前述のように脂肪族ポリアミド樹脂がポリカーボネート樹脂などに比べて高いアッベ数を有しているため、リタデーション値を大きくしなくても、通常、虹色の色むらが発生することは少ない(又は虹色の色むらの生成を高いレベルで抑制又は防止できる)。しかしながら、脂肪族ポリアミドシートと偏光シートを組み合わせた積層体を曲げ加工(曲面形状加工)した場合、偏光度が低下する場合がある。そのため、本発明で使用する脂環族ポリアミドシートにおいては、1軸延伸加工を行い、リタデーション値を100nm以上という値にした脂環族ポリアミドシートを用いることが好ましい。このようなリタゼーション値を有する脂環族ポリアミドシートを使用することにより、偏光シートと組み合わせて得られる積層体において、曲げ加工時の偏光度の低下を抑制することもできる。本発明において、脂環族ポリアミドシートを偏光シートと組み合わせる場合、該脂環族ポリアミドシートのリタデーション値は、100〜10000nmであることが好ましく、350〜6000nmであることがより好ましく、500〜5000nmであることがさらに好ましい。
また、前記1軸延伸された脂環族ポリアミドシートを使用する場合には、得られる積層体の両面のうち、少なくとも一方の積層体の表面に使用されればよい。なお、もう一方の積層体の表面(裏面とする場合もある)には、前記1軸延伸された脂環族ポリアミドシートであっても、無延伸の脂環族ポリアミドシートが使用されてもよい。
本発明において、該脂環族ポリアミドシートは、種々の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)、可塑剤、滑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。但し、フォトクロミック化合物を接着性組成物に使用する場合には、フォトクロミック化合物の発色を妨げないようにするために、紫外線吸収剤などの紫外線を吸収する添加剤を配合していない脂環族ポリアミドシートを表面側(サングラス等に積層体を使用した場合、日光が当たる外側の表面)に使用することが好ましい。
本発明において、脂環族ポリアミドシートの好適な厚みとしては、30〜1000μmが好ましく、50〜600μmであることがより好ましく、100〜300μmであることがさらに好ましい。また、これらの脂環族ポリアミドシートは、異なる厚みを組み合わせて使用することも可能である。
本発明において、脂環族ポリアミドシートは、市販品を使用するこ
とができる。具体的にはダイセル・エボニック社製「トロガミド(TROGAMID)CXフィルム」(登録商標)が挙げられる。
また、本発明において、該脂環族ポリアミドシートの表面には、密着性を向上させるため、種々の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンカーコート処理など)を施してもよい。
【0055】
<偏光シート>
本発明において、偏光シートを使用する場合は、市販の偏光シートが制限なく使用できる。偏光シートの厚みは、20〜100μmのものが好適に使用できる。偏光シートは、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質で染色されたポリビニルアルコールが延伸されてなるものである。従来技術においては、これら偏光シートに含まれるヨウ素や二色性染料などの二色性物質の影響により接着剤による接合が難しかったと思われるが、本発明の接着性組成物であれば、このような偏光シートを強固に接合することもできる。
【0056】
<二色性染料を含む偏光シート>
本発明の接着性組成物は、二色性染料を含む偏光シートを強固にポリマーシートと接合できる。
偏光シートに含まれる二色性染料としては、市販の二色性染料が制限なく使用できる。例えば、アゾ系、アントラキノン系等の染料が挙げられる。具体的には、クロランチンファストレッド(C.I.28160)、コンゴーレッド(C.I.22120)、ブリリアントブルーB(C.I.24410)、ベンゾパープリン(C.I.23500)、クロラゾールブラックBH(C.I.22590)、ダイレクトブルー2B(C.I.22610)、ジアミングリーン(C.I.30295)、クリソフェニン(C.I.24895)、シリウスイエロー(C.I.29000)、ダイレクトファーストレッド(C.I.23630)、アシドブラック(C.I.20470)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)、ダイレクトコッパーブルー2B(C.I.24185)、ニッポンブリリアントヴァイオレットBKconc(C.I.27885)等が挙げられる。これらの二色性染料の中から目的に応じて2色以上の色素を選択して用いることもできる。なお、括弧内には、有機合成協会編「新版 染料便覧」(丸善株式会社、1970年)に記載のColour Index No.を示した。
また、該二色性染料を含む偏光シートは、特に制限されるものではないが、本発明の接着性組成物を使用すれば、視感透過率が10〜60%、偏光度が70.0〜99.9である該偏光シートであっても、強固に接合することができる。なお、二色性染料を含む偏光シートを使用した場合には、当然のことではあるが、接合する相手方のポリマーシートは、特に制限されるものではなく、ポリアミド樹脂シート、好ましくは脂環族ポリアミドシート、ポリカーボネートシートであっても、強固に接合できる。
【0057】
<偏光シートのその他の態様、処理方法>
該偏光シートは、その機能、接着性を高めるためには、セルローストリアセテートフィルムが両面に積層されているものであってもよい。該セルローストリアセテートフィルムは、その厚さは20〜200μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。
また、該偏光シートは、偏光シートに含まれる水分量の調整や、偏光シートの寸法安定性のために、本発明の積層体を作製する前に、40〜100℃の範囲で5秒〜30分程度の加熱処理を実施したものを使用することもできる。
【0058】
<積層体の構成、および好適な積層体の製造方法>
図1〜
図3に本発明における好適な積層体の積層構造を示した。
図1は、色素、例えば、フォトクロミック化合物を含む接着性組成物を使用した場合の一例である。脂環族ポリアミドシート1、色素を含む接着層2’、脂環族ポリアミドシート1’からなる積層体である。
図1に記載の積層体は、以下の方法で製造することが好ましい。先ず、有機溶媒を含む接着性組成物を平滑な基材上に塗布する。次いで、有機溶媒を除去して、平滑な表面を有する接着性シートを作製する。次いで、対向する1対の脂環族ポリアミドシートの間に該接着性シートを配置しながら、該脂環族ポリアミドシートの外表面からラミネートロールで両方のシートを圧接することが好ましい。こうすることにより、接着性シートが接着層となり、
図1に示す層構造の積層体を製造することができる。なお、この場合、色素を含む接着層2’と脂環族ポリアミドシート1、1’との間に、色素を含まない接着層2を形成することもできる。
図2には、偏光シート3を使用した場合の積層構造の一例を示した。脂環族ポリアミドシート1、接着層2、偏光シート3、接着層2、脂環族ポリアミドシート1’からなる積層体である。
図2に記載の積層体は、以下の方法で製造することが好ましい。前記と同じ方法で色素を含まない接着性シートを2枚準備する。偏光シートの両表面に該接着性シートを積層する。次いで、該接着性シートを両表面に有する偏光シートの両外側にそれぞれ脂環族ポリアミドシートを配置して、両方の脂環族ポリアミドシートの外表面からラミネートロールで両シートを圧接することが好ましい。こうすることにより、接着性シートが接着層となり、
図2に示す層構造の積層体を製造することができる。
図3には、色素、例えば、フォトクロミック化合物を含む接着層2’と、偏光シート3とを組み合わせた場合の積層構造を有する積層体の一例を示した。脂環族ポリアミドシート1、色素を含む接着層2’、偏光シート3、接着層2、脂環族ポリアミドシート1’からなる積層体である。
図3に記載の積層体は、以下の方法で製造することが好ましい。すなわち、
図2に記載の積層体を製造する方法において、偏光シートの一方の表面に積層する接着性シートに色素が含まれるようにして、
図2に記載の積層体と同じ製造方法を採用すれば、
図3に記載の積層体を得ることができる。
また、本発明において、積層体の最外層(脂環族ポリアミドシート1、1’の表面)には、キズや汚れ、或いは異物の付着を防ぐために、一般的なプラスチック樹脂製フィルム、例えばポリエチレンやポリプロピレン等からなるポリオレフィン系フィルムを、保護フィルムとして貼付することもできる。この保護フィルムを最外層に貼付することにより、得られる積層体を熱曲げ加工や型抜き加工を行う際、保管する際、及び輸送する際において、表面保護が可能となる。このような保護フィルムは、該積層体を眼鏡レンズ等の最終製品として使用する際には、引き剥がされる。なお、この保護フィルムは、積層体の最外層となる脂環族ポリアミドシートの表面に、接着性シートを積層する前から貼付していてもよいし、積層体を製造した後、必要に応じて該表面に貼付することもできる。
以上、脂環族ポリアミドシート、及び偏光シートを使用した場合の例を示したが、本発明の接着性組成物は、該脂環族ポリアミドシート、及び偏光シート等を接合する場合に使用されるものに限定されるわけではない。当然のことながら、二色性染料を含む偏光シートを使用し、他のポリマーシート、例えば、ポリカーボネートシートの接合にも利用することができる。
【0059】
<積層体を用いた光学物品>
本発明において、該積層体は、少なくとも一方のポリマーシート上に、該ポリマーシートと同じ材質の材料を射出成型して一体化することにより、光学物品として用いることもできる。ポリマーシートが脂環族ポリアミド樹脂シートであれば、脂環族ポリアミド樹脂を射出成型により該脂環族ポリアミド樹脂シート上に積層すればよい。
一体化する方法としては、前記積層体を金型内に装着し、光学物品を構成するための材質を射出成型する方法が挙げられる。また、該積層体は、射出成型を施す前に、曲げ加工を施してレンズ状の球面形状に加工することもできる。前記積層体を曲げ加工する方法としては、例えば、熱プレス加工、加圧加工、減圧吸引加工などが挙げられる。曲げ加工する際の温度は、前記積層体に使用しているポリマーシート(好ましくは、脂環族ポリアミドシート、又はポリカーボネート、特に好ましくは脂環族ポリアミドシート)からなる光学シート又はフィルムの種類によって適宜決定されるが、100℃から150℃で実施することが好ましい。
その他、得られた光学物品は、使用する用途に応じて、ハードコート処理等の公知の方法で後加工することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。具体的に使用した(III)成分について説明する。
【0061】
(III)ポリイソシアネート化合物
(IIIA)2級炭素に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
(IIIA1)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物。
(IIIA2)イソホロンジイソシアネートの3量体(パーストープ社製、製品名『トロネートIDT70B』、酢酸ブチル30%混合、分子量666)。
(IIIB)分子内の炭素数が4〜40である(IIIA)以外のポリイソシアネート化合物
(IIIB1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成製、製品名『デュラネート TPA−100』)。
(IIIB2)ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(旭化成製、製品名『デュラネート 24A−100』)。
(IIIB3)ヘキサメチレンジイソシアネート。
【0062】
実施例1
(1)ポリウレタンウレア樹脂(U1)/(I)成分の製造
(ウレタンプレポリマーの製造)
翼径135mmのマックスブレンド翼、邪魔板を備える内径260mm、高さ280mm、仕込用量10Lの反応容器に、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を接続した。マックスブレンド翼は100rpmで撹拌した。
この反応容器に、数平均分子量800のポリカーボネートジオール1770g、イソホロンジイソシアネート700g、トルエン500gを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で7時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。反応の終点は、イソシアネート基の逆滴定法により確認した。
(ポリウレタンウレア樹脂(U1);(I)成分の製造)
ウレタンプレポリマー反応終了後、反応液を0℃付近まで冷却し、イソプロピルアルコール1430g、ジエチルケトン2670gに溶解させた後、液温を0℃に保持した。次いで、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン171gとジエチルケトン145gの混合溶液を30分以内に滴下し、0℃で1時間反応させた。その後さらに、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン42gを滴下し、0℃で1時間反応させることにより、ポリウレタンウレア樹脂(U1)のジエチルケトン溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂(U1)は、数平均分子量が19,000であり、重量平均分子量が41,000であり、多分散度が2.16であり、軟化点が105℃(軟化開始温度;約80℃)であり、動粘度が15,000cStであった。また、ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液は、固形分の濃度(ポリウレタンウレア樹脂(U1)の濃度)が36質量%であった。
上記U1は、ウレタンウレア樹脂2683g、トルエン(沸点110.6℃)500g、イソプロピルアルコール(沸点82.6℃)1430g、及びジエチルケトン(沸点101℃)2815gを含有することから、U1 100質量部に対する有機溶媒の配合量は177質量部であり、有機溶媒のうち沸点90℃未満が30質量%であり、90℃以上が70質量%であった。
なお、ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時の反応液の粘度が0.06kg/m・s、密度が950kg/m
3、マックスブレンド翼の回転数が100rpmであり、レイノルズ数(Re)が456となり、マックスブレンド翼におけるn・θ
M−Re曲線より、混合時間数(n・θ
M)が14であることから、完全混合時間(θ
M)が8秒であった。
<評価方法>
上記ウレタンウレア樹脂(U1)の、数平均分子量、重量平均分子量、多分散度、軟化点、及び動粘度については以下の方法によって測定した。
(数平均分子量、重量平均分子量、及び多分散度)
数平均分子量、重量平均分子量、及び多分散度に関しては、本文中に記載の方法で分析を実施した。
すなわち、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−806M(昭和電工株式会社製)を2本直列接続、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ポリウレタンウレア樹脂(U1)試料溶液:1.0%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件にて測定し、日本ウォーターズ株式会社製GPC解析ソフト『Empower Personal GPC Option』を用いて算出した。また、多分散度は、重量平均分子量/数平均分子量で算出される値であり、上記方法によって求められた数平均分子量、及び重量平均分子量より算出した。
(耐熱性;軟化点)
ポリウレタンウレア樹脂溶液(U1)を、ステンレスの容器に流し込み、40℃で10時間、60℃で10時間、さらに真空乾燥機にて60℃で12時間乾燥させることにより、厚み1mmの試験片を作製した。得られた試験片を、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用い、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブの条件にて軟化点を測定した。
(動粘度)
ポリウレタンウレア樹脂(U1)溶液約10gを、キャノンフェンスケ粘度計(#600)に入れ、このキャノンフェンスケ粘度計(柴田科学株式会社製)を25℃±0.1℃に制御した恒温水槽に15分浸した後、動粘度を測定した。
【0063】
(2)接着性組成物1の調製
ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液1000g(固形分濃度36質量%)、下記フォトクロミック化合物PC1 10.8g、(IIIA)成分である4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物 43.2g(U1 100質量部に対して12質量部)、(IIIB)成分であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体 10.8g(U1 100質量部に対して3質量部)、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート] 3.6g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、接着性組成物1を得た。
PC1:下記式で示される化合物
【化8】
【0064】
(3)積層体の作製
(2)で得られた接着性組成物1を、コーター(テスター産業製)を用いて、50μmのOPPフィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)上に、塗工速度0.3m/minで塗工し、乾燥温度80℃で5分間乾燥させて、膜厚40μmの接着性組成物1からなる接着性シートを作製し、この接着性組成物1からなる接着性シートに、厚み300μmの脂環族ポリアミドシート(4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンと1,10−デカンジカルボン酸からなる脂環族ポリアミドを主成分とするシート、リタデーション値が10nm、ビカット軟化点が130℃、ガラス転移点が140℃、線膨張係数が0.9×10
−4K
−1)を貼り合わせた。
次いで、上記方法で準備した脂環族ポリアミドシート/接着性組成物1からなる接着性シート/OPPフィルムがこの順で積層されたものからOPPフィルムを剥離した。得られた構造体に対し、前記と同じ脂環族ポリアミドシート(厚さ300μm)を、該構造体の接着性シートと該脂肪族ポリアミドシートとが接合するように、ラミネートロールを用いて圧接した。次いで、このようにして得られた積層シートを60℃、真空下(500Pa)で12時間静置(脱気工程)した後、90℃で1時間加熱処理(加熱工程)した。さらに、70℃、90%RHで20時間の加湿処理(加湿工程)を行い、最後に80℃、真空下(500Pa)で5時間静置(水分除去工程)することにより、フォトクロミック特性を有する積層体を得た。
得られた積層体のフォトクロミック特性は、最大吸収波長585nm、発色濃度1.0、退色速度45秒、耐久性93%であった。また、剥離強度は25℃が100N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が70N/25mmであり、耐侯性試験後の25℃での剥離強度が50N/25mmであった。
なお、これらの評価は以下のようにして行った。
【0065】
〔フォトクロミック特性〕
得られた積層体を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm
2、245nm=24μW/cm
2で120秒間照射して発色させ、積層体のフォトクロミック特性を測定した。
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
4)耐久性(%)=〔(A96/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた光学積層体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により96時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A96)を測定し、〔(A96)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
〔剥離強度〕
得られた積層体を、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験雰囲気温度が設定可能な恒温槽を備えた試験機(オートグラフAGS−500NX、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、それぞれ下記1)、2)の剥離強度を測定した。
1)25℃での剥離強度は、上記サイズに切り出した試験片を、25℃に設定した恒温槽内で10分放置した後、上記のようにして測定した(25℃の剥離強度試験結果)。
2)70℃雰囲気下での剥離強度は、上記サイズに切り出した試験片を、70℃に設定した恒温槽内で10分加熱した後、上記のようにして測定した(70℃の剥離強度)。
3)上記サイズに切りだした試験片を、Q−LAB製QUV Accelerated Weathering Testersを用い、放射強度が0.89W/cm
2(340nm)下で8時間放置し(レンズ表面温度約60℃)、その後加湿下で4時間放置し(レンズ表面温度約60℃)、この試験を10サイクル(計120時間)行った後に、上記1)と同様にして剥離強度を測定した(耐久試験後の剥離強度)。
表1に接着性組成物1の組成、表2に得られた積層体の上記評価結果を示した。
【0066】
実施例2
(1)ポリウレタンウレア樹脂(U2)の製造/(I)成分の製造
実施例1で製造したウレタンプレポリマーと同じウレタンプレポリマーを使用し、実施例1の(ポリウレタンウレア樹脂(U1);(I)成分の製造)において、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン171gとジエチルケトン145gの混合溶液を15分以内に滴下した以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンウレア樹脂(U2)のジエチルケトン溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂(U2)は、数平均分子量が18,500であり、重量平均分子量が38,000であり、多分散度が2.05であり、軟化点が105℃(軟化開始温度;約85℃)であり、動粘度が14,000cStであった。その他は、実施例1記載のポリウレタンウレア樹脂(U1)の製造結果と同じであった。
(2)接着性組成物の調製、(3)積層体の製造、および評価
次いで、表1に示す(I)成分(前記ポリウレタンウレア樹脂(U2))、(IIIA)成分、及び(IIIB)成分を用いて接着性組成物2を作製して使用した以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、その評価を行った。得られた積層体の評価結果を表2に示した。なお、実施例2においては、(IIIA2)成分を使用しているが、接着性組成物2を調整する際は、酢酸ブチルを含む状態で他成分と混合した。表1に示した(IIIA2)成分の配合量は、酢酸ブチルを含まないイソホロンジイソシアネートの3量体の量である。以下の実施例等において、(IIIA2)成分を使用した場合は、この実施例2と同じ操作を行い、表の配合割合は上記と同じ通りとした。
【0067】
実施例3
(1)ポリウレタンウレア樹脂(U3)の製造/(I)成分の製造
実施例1で製造したウレタンプレポリマーと同じウレタンプレポリマーを使用し、実施例1の(ポリウレタンウレア樹脂(U1);(I)成分の製造)において、同じ量の同じ成分を使用して、ポリウレタンウレア樹脂(U3)のジメチルケトン溶液を製造した。
ポリウレタンウレア樹脂(U3)を製造する際において、ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時のマックスブレンド翼の回転数を40rpmとし、レイノルズ数(Re)が192となり、マックスブレンド翼におけるn・θ
M−Re曲線より、混合時間数(n・θ
M)が38となり、完全混合時間(θ
M)が30秒であった以外は、実施例1と同様にしてポリウレタンウレア樹脂(U3)を製造した。
得られたポリウレタンウレア樹脂(U3)は、数平均分子量が20,000であり、重量平均分子量が47,000であり、多分散度が2.35であり、軟化点が105℃(軟化開始温度;約65℃)であり、動粘度が30,000cStであった。その他は、実施例1記載のポリウレタンウレア樹脂(U1)の製造結果と同じであった。
(2)接着性組成物の調製、(3)積層体の製造、および評価
次いで、表1に示す(I)成分(前記ポリウレタンウレア樹脂(U3))、(IIIA)成分、及び(IIIB)成分を用いて接着性組成物3を作製して使用した以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、その評価を行った。得られた積層体の評価結果を表2に示した。
【0068】
実施例4
(1)ポリウレタンウレア樹脂(U4)の製造/(I)成分の製造
実施例1と同じ反応容器に、数平均分子量800のポリカーボネートジオール2000g、イソホロンジイソシアネート700g、トルエン500gを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で9時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。次いで、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンを110.5g用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行うことで、ポリウレタンウレア樹脂(U4)のジエチルケトン溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂(U4)は、数平均分子量が20,000であり、重量平均分子量が42,000であり、多分散度が2.10であり、軟化点が100℃(軟化開始温度;約75℃)であり、動粘度が15,000cStであった。
なお、ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時の反応液の粘度が0.07kg/m・s、密度が950kg/m
3、マックスブレンド翼の回転数が100rpmであり、レイノルズ数(Re)が412となり、マックスブレンド翼におけるn・θ
M−Re曲線より、混合時間数(n・θ
M)が20であることから、完全混合時間(θ
M)が12秒であった。
(2)接着性組成物の調製、(3)積層体の製造、および評価
次いで、表1に示す(I)成分(前記ポリウレタンウレア樹脂(U4))、(IIIA)成分、及び(IIIB)成分を用いて接着性組成物4を作製して使用した以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、その評価を行った。得られた積層体の評価結果を表2に示した。
【0069】
実施例5
(1)ポリウレタンウレア樹脂(U5)の製造/(I)成分の製造
実施例1と同じ反応容器に、数平均分子量800のポリカーボネートジオール1550g、イソホロンジイソシアネート700g、トルエン500gを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で6時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。次いで、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンを229.0g用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行うことで、ポリウレタンウレア樹脂(U4)のジエチルケトン溶液を得た。得られたポリウレタンウレア樹脂(U5)は、数平均分子量が20,000であり、重量平均分子量が42,500であり、多分散度が2.13であり、軟化点が120℃(軟化開始温度;約95℃)であり、動粘度が16,000cStであった。
なお、ポリアミン化合物であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンの滴下開始時の反応液の粘度が0.05kg/m・s、密度が950kg/m
3、マックスブレンド翼の回転数が100rpmであり、レイノルズ数(Re)が577となり、マックスブレンド翼におけるn・θ
M−Re曲線より、混合時間数(n・θ
M)が13であることから、完全混合時間(θ
M)が8秒であった。
(2)接着性組成物の調製、(3)積層体の製造、および評価
次いで、表1に示す(I)成分(前記ポリウレタンウレア樹脂(U5))、(IIIA)成分、及び(IIIB)成分を用いて接着性組成物5を作製して使用した以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、その評価を行った。得られた積層体の評価結果を表2に示した。
【0070】
実施例6〜14、比較例1〜6
表1に示す(I)成分、(IIIA)成分、及び(IIIB)成分を用いて接着性組成物6〜14、及び比較接着性組成物1〜6を作製して使用した以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、その評価を行った。得られた積層体の評価結果を表2に示した。
【0071】
比較例7
(1)比較接着性組成物7用のポリウレタン樹脂の合成(2液型タイプの接着性組成物)
以下の方法により、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(i)、及び分子鎖の末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂(ii)を合成した。
(ポリウレタン樹脂(i)の合成)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量1000のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学株式会社製プラクセル)100g、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)39.5gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で6時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(ポリウレタン樹脂(i))を得た。得られたプレポリマー(ポリウレタン樹脂(i))の分子量は、ポリオキシエチレン換算で2500(理論値;2800)であった。
(ポリウレタン樹脂(ii)の合成)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量1000のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学株式会社製プラクセル)100g、水添ジフェニルメタンジイソシアネート61.3gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で6時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得た。その後、トルエン300gを加えた後、窒素雰囲気下で1,4−ブタンジオール12.7gを滴下しながら加え、滴下終了後90℃で24時間反応させ、分子鎖の末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂(ii)を合成した。得られたポリウレタン樹脂(ii)の分子量は、ポリオキシエチレン換算で2万(理論値;1万8千)であった。
(2)比較接着性組成物7の調製
以上のように得られたポリウレタン樹脂(i)175g、ポリウレタン樹脂(ii)溶液474g、フォトクロミック化合物PC1 10.5g、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート] 3.5g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.4gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、比較接着組成物7を得た。
【0072】
(3)積層体の製造、および評価
次いで、前記比較接着性組成物7を使用した以外は、実施例1と同様に積層体を作製し、その評価を行った。得られた積層体の評価結果を表2に示した。
【0073】
【表1-1】
【0074】
【表1-2】
【0075】
【表2-1】
【0076】
【表2-2】
【0077】
実施例15
偏光シートの調製
厚み75μmのポリビニルアルコールフィルム(商品名VF−PS#7500;クラレ社製)原反を、ヨウ素0.04%とヨウ化カリウム0.4%の混合溶液(染色液)を用いて、30℃に保持した前記染色浴中で、原反の長さに対して3倍になるように延伸しながら、前記フィルムを染色した。このフィルムをさらに3.5%ホウ酸水溶液(延伸浴)に浸漬して、原反の6倍になるように延伸を行うことによって、偏光シート1(厚み27μm)を作製した。得られた偏光シート1の視感透過率は42.5%、偏光度は99.2%であった。
接着性組成物15の調製
接着性組成物1において、フォトクロミック化合物PC1を含まないものを接着性組成物15とした。すなわち、前記ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液1000g(固形分濃度36質量%)、(IIIA)成分である4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物 43.2g(U1 100質量部に対して12質量部)、(IIIB)成分であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体 10.8g(U1 100質量部に対して3質量部)、さらに界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、接着性組成物15を得た。この接着性組成物15の組成を表3に示した。
積層体の作製
接着性組成物15を、コーター(テスター産業製)を用いて、厚み100μmの脂環族ポリアミドシート(リタデーション値が10nm、ビカット軟化点が130℃、ガラス転移点が140℃、線膨張係数が0.9×10
−4K
−1)上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚20μmの接着性組成物15からなる接着性シートを有する脂環族ポリアミドシートを得た。
次いで、この接着性シートを有する脂環族ポリアミドシートを2枚と、前記方法で作製した偏光シート1を用意し、該偏光フィルムの両面に、接着性シートを有する脂環族ポリアミドシートの接着性シートが接合するようにして、ラミネートロールを用いて圧接した。
次いで、このようにして得られた積層シートを60℃、真空下(500Pa)で12時間静置(脱気工程)した後、90℃で1時間加熱処理(加熱工程)した。さらに、70℃、90%RHで20時間の加湿処理(加湿工程)を行い、最後に80℃、真空下(500Pa)で5時間静置(水分除去工程)することにより、偏光特性を有する積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は41.0%、偏光度が99.1%であった。また、剥離強度は25℃が90N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が60N/25mmであり、耐侯性試験後の25℃での剥離強度が50N/25mmであった。
なお、視感透過率、及び偏光度の評価は、以下のようにして行い、各種剥離強度は実施例1を同様にして実施した。
〔視感透過率〕
得られた積層体を試料とし、島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2550を用いて、積層体の視感透過率を測定した。
〔偏光度〕
得られた積層体を試料とし、島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2550を用いて、平行透過率(Tp)および直交透過率(Tc)を測定し、偏光度(P)を次式により求めた。
偏光度(P)(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
なお、上記Tc、及びTpは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定し、視感度補正を行ったY値である。
得られた積層体の評価結果を表4に示した。
【0078】
実施例16〜28、比較例8〜14
表3に示す(I)成分、(IIIA)成分、及び(IIIB)成分を用いて、フォトクロミック化合物PC1を含まない接着性組成物16〜28、および比較接着性組成物8〜14を作製し、使用した以外は、実施例15と同様に積層体を作製した。得られた積層体の評価結果を表4に示した。
なお、比較例14においては、比較例7において使用した2液型タイプの比較接着性組成物7からフォトクロミック化合物PC1を抜いた組成の2液型タイプの接着性組成物(比較接着性組成物14)を使用した。
【0079】
実施例29
実施例15において、脂環族ポリアミドシートを、厚さ300μm、リタデーション値が4000nm、ビカット軟化点が130℃、ガラス転移点が140℃、線膨張係数が0.9×10
−4K
−1の1軸延伸した脂環族ポリアミドシートに代えて積層体を作製した以外は、実施例15と同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例15と同様に行った。得られた積層体の評価結果を表4に示した。
【0080】
【表3-1】
【0081】
【表3-2】
【0082】
【表4】
【0083】
実施例30
接着性組成物29の調製
接着性組成物1において、フォトクロミック化合物PC1の配合量を変えたものである。すなわち、前記ポリウレタンウレア樹脂(U1)の溶液1000g、フォトクロミック化合物PC1 5.5g、(IIIA)成分である4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物 43.2g(U1 100質量部に対して12質量部)、(IIIB)成分であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体 10.8g(U1 100質量部に対して3質量部)、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート] 3.6g、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 0.5gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、接着性組成物29を得た。
積層体の作製
前記接着性組成物29を、コーター(テスター産業製)を用いて、厚み100μmの脂環族ポリアミドシート(ビカット軟化点が130℃、ガラス転移点が140℃、線膨張係数が0.9×10
−4K
−1)上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmの接着性組成物29からなる接着性シートを有する第一脂環族ポリアミドシートを得た。
【0084】
次いで、実施例15で作製した、フォトクロミック化合物を含まない接着性組成物15を、コーター(テスター産業製)を用いて、厚み100μmの脂環族ポリアミドシート(ビカット軟化点が130℃、ガラス転移点が140℃、線膨張係数が0.9×10
−4K
−1)上に塗工し、乾燥温度80℃で3分間乾燥させることにより、膜厚40μmの接着性組成物15からなる接着性シートを有する第二脂環族ポリアミドシートを得た。
【0085】
上述のようにして作製した第一、二脂環族ポリアミドシートと、実施例15で作製した偏光フィルムを用意し、該偏光フィルムの両面に、第一、二脂環族ポリアミドシートの接着性シートがそれぞれ接合するようにして、ラミネートロールを用いて圧接した。
次いで、このようにして得られた積層シートを60℃、真空下(500Pa)で12時間静置(脱気工程)した後、90℃で1時間加熱処理(加熱工程)した。さらに、70℃、90%RHで20時間の加湿処理(加湿工程)を行い、最後に80℃、真空下(500Pa)で5時間静置(水分除去工程)することにより、フォトクロミック特性と偏光特性の両方を有する積層体を得た。
得られた積層体の視感透過率は40.8%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は25℃が90N/25mm、70℃雰囲気下での剥離強度が70N/25mmであり、耐侯性試験後の25℃での剥離強度が50N/25mmであった。
なお、上記評価は、フォトクロミック特性としての発色時の視感透過率以外は、実施例1、または実施例15と同様にして実施した。
【0086】
〔発色時の視感透過率〕
得られた積層体を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm
2、245nm=24μW/cm
2で120秒間照射して発色させた後、(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により、視感透過率を測定した。
得られた積層体に使用した接着性組成物を表5に示し、得られた積層体の評価結果を表6に示した。
【0087】
実施例31〜33
実施例31においては、実施例4においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物30、および実施例18で作製した接着性組成物18を使用した以外は、実施例30と同様の方法で積層体を作製し、同様の評価を行った。
実施例32においては、実施例5においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物31、および実施例19で作製した接着性組成物19を使用した以外は、実施例30と同様の方法で積層体を作製し、同様の評価を行った。
実施例33においては、実施例6においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物32、および実施例20で作製した接着性組成物20を使用した以外は、実施例30と同様の方法で積層体を作製し、同様の評価を行った。
得られた積層体に使用した接着性組成物を表5に示し、得られた積層体の評価結果を表6に示した。
【0088】
実施例34
実施例30において、脂環族ポリアミドシートを、厚さ300μm、リタデーション値が4000nm、ビカット軟化点が130℃、ガラス転移点が140℃、線膨張係数が0.9×10
−4K
−1の1軸延伸した脂環族ポリアミドシートに代えて積層体を作製した以外は、実施例30と同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例30と同様に行った。得られた積層体に使用した接着性組成物を表5に示し、得られた積層体の評価結果を表6に示した。
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
実施例35〜48
実施例15で使用した偏光シート1の代わりに、視感透過率は39.2%、偏光度は99.5%である、二色性染料を含む偏光シート2を使用し、表7に示す(I)成分、(IIIA)成分、(IIIB)成分、及びフォトクロミック化合物PC1を含まない接着性組成物を使用した以外は、実施例15と同様に積層体を作製した。得られた積層体の評価結果を表8に示した。
【0092】
実施例49
実施例35において、脂環族ポリアミドシートを、厚さ300μm、リタデーション値が4000nm、ビカット軟化点が130℃、ガラス転移点が140℃、線膨張係数が0.9×10
−4K
−1の1軸延伸した脂環族ポリアミドシートに代えて積層体を作製した以外は、実施例35と同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例35と同様に行った。接着性組成物の各成分の配合割合を表7に示した。得られた積層体の評価結果を表8に示した。
【0093】
実施例50
実施例35において、脂環族ポリアミドシートを、厚さ300μm、リタデーション値が約4500nmの1軸延伸したポリカーボネートシートに代えて積層体を作製した以外は、実施例35と同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例35と同様に行った。接着性組成物の各成分の配合割合を表7に示した。得られた積層体の評価結果を表8に示した。
【0094】
実施例51
実施例50で使用した偏光シート2の代わりに、視感透過率は27.0%、偏光度は92.8%である、二色性染料を含む偏光シート3を使用した以外は、実施例50同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例50と同様に行った。接着性組成物の各成分の配合割合を表7に示した。得られた積層体の評価結果を表8に示した。
【0095】
【表7-1】
【0096】
【表7-2】
【0097】
【表8】
【0098】
実施例52〜55
実施例52においては、実施例35で使用した二色性染料を含む偏光シート2、実施例1においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物29、および実施例15で作製した接着性組成物15を使用した以外は、実施例30と同様の方法で積層体を作製し、同様の評価を行った。
【0099】
実施例53においては、実施例35で使用した二色性染料を含む偏光シート2、実施例4においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物30、および実施例18で作製した接着性組成物18を使用した以外は、実施例30と同様の方法で積層体を作製し、同様の評価を行った。
【0100】
実施例54においては、実施例35で使用した二色性染料を含む偏光シート2、実施例5においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物31、および実施例19で作製した接着性組成物19を使用した以外は、実施例30と同様の方法で積層体を作製し、同様の評価を行った。
【0101】
実施例55においては、実施例35で使用した二色性染料を含む偏光シート2、実施例6においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物32、および実施例20で作製した接着性組成物20を使用した以外は、実施例30と同様の方法で積層体を作製し、同様の評価を行った。
得られた積層体に使用した接着性組成物を表9に示し、得られた積層体の評価結果を表10に示した。
【0102】
実施例56
実施例52において、脂環族ポリアミドシートを、厚さ300μm、リタデーション値が4000nmの1軸延伸した脂環族ポリアミドシートに代えて積層体を作製した以外は、実施例52と同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例52と同様に行った。得られた積層体に使用した接着性組成物を表9に示し、得られた積層体の評価結果を表10に示した。
【0103】
実施例57(1)
実施例52において、脂環族ポリアミドシートを、厚さ300μm、リタデーション値が約4500nmの1軸延伸したポリカーボネートシートに代えて積層体を作製した以外は、実施例52と同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例52と同様に行った。得られた積層体の評価結果を表10に示した
【0104】
実施例57(2)
実施例57(2)においては、実施例35で使用した二色性染料を含む偏光シート2、実施例8においてフォトクロミック化合物PC1を5.5g使用した接着性組成物32、および実施例22で作製した接着性組成物22を使用し、かつ、脂環族ポリアミドシートを、厚さ300μm、リタデーション値が約4500nmの1軸延伸したポリカーボネートシートに代えて積層体を作製した以外は、実施例52と同様の操作を行った。得られた積層体の評価も、実施例52と同様に行った。得られた積層体の評価結果を表10に示した。
【0105】
【表9】
【0106】
【表10】
【0107】
上記実施例1〜57から明らかなように、本発明の接着性組成物を用いた本発明の積層体は、それぞれのシートにおいて、良好なフォトクロミック特性や偏光特性を示しているのに加えて、良好な密着性、特に高温や耐候性試験後においても優れた密着性を有していることが分かる。
【0108】
一方、比較例1〜14に示すように、本発明の接着性組成物以外の接着性組成物を用いた積層体の場合には、密着性が不十分であった。
【0109】
実施例58
積層体の曲げ加工
実施例1で得られた積層体の両表面に、ポリエチレン層とポリプロピレン層とからなる2層(合計厚み80μm)の保護フィルムを貼り付けた後、トムソン刃(両刃、刃角42°)を用いて行い、径が80mmの円板状シートを作製した。得られた円板状シートを減圧吸引加工(熱曲げ加工)により、球面形状への曲げ加工を実施した。減圧吸引加工は、直径90mmの凹型の金型を150℃雰囲気中に設置し、凹型の金型の中心部の穴から、真空ポンプにて減圧吸引を行うことにより実施した。加工時間は、約2分間実施し、金型から取り外すことで球面形状に加工された積層体を得た。
【0110】
射出成型による光学物品の製造
得られた球面形状を有する前記積層体の両面に存在する保護フィルムをともに剥がした後、射出成型機の金型の凹面に設置し、100℃に加熱した。前記金型を閉めた後、280℃に溶融混練されたポリアミド樹脂(トロガミドCX7323)を圧力200MPaで射出し、フォトクロミック特性を有するレンズ(光学物品)を成型した。
【0111】
得られたフォトクロミック特性を有するレンズのフォトクロミック特性は、最大吸収波長586nm、発色濃度1.0、退色速度46秒、耐久性93%であった。
【0112】
実施例59
実施例15で得られた積層体を用いた以外は、実施例58と同様にしてレンズを成型した。実施例59では、偏光特性を有するレンズを成型した。
【0113】
得られた偏光特性を有するレンズの視感透過率は40.8%、偏光度が99.1%であった。
【0114】
実施例60
実施例30で得られた積層体を用いた以外は、実施例35と同様にしてレンズを成型した。実施例60では、偏光特性、及びフォトクロミック特性を有するレンズを成型した。
【0115】
得られた偏光特性、及びフォトクロミック特性を有するレンズの視感透過率は40.8%、偏光度が99.0%であり、紫外線照射後のフォトクロミック特性としての発色時の視感透過率は11.0%であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。