(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
実効領域と前記実効領域の周りの外周領域とを有し、電気的素子を収めるパッケージへと分割されることになる、マトリクス状に配置された複数の単位構造を前記実効領域中に含むシート基板であって、
セラミック絶縁体からなり、第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有し、前記複数の単位構造の各々において前記第1の面上にキャビティが設けられた母基板と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第1の面上に設けられ前記キャビティを囲むメタライズ膜と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記メタライズ膜に電気的に接続された第1の接地電極層と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記メタライズ膜に電気的に接続された第2の接地電極層と、
前記複数の単位構造の各々において、前記キャビティ内に設けられた、前記電気的素子が接続されることになる第1および第2の素子パッドと、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記第1の素子パッドに電気的に接続された第1の外部電極層と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記第2の素子パッドに電気的に接続された第2の外部電極層と、
前記複数の単位構造に含まれる第1から第4の単位構造の各々に接するキャスタレーション電極と、
前記外周領域に設けられた電源接続端子と、
前記電源接続端子から前記実効領域へ延びる外周配線と、
を備え、前記母基板の前記第2の面上において、前記キャスタレーション電極は前記第1および第2の外部電極層の各々と電気的に分断されている、シート基板。
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記メタライズ膜と前記第1の接地電極層との間をつなぐ第1の外周スルーホール電極をさらに備える、請求項1に記載のシート基板。
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記メタライズ膜と前記第2の接地電極層との間をつなぐ第2の外周スルーホール電極をさらに備える、請求項1または2に記載のシート基板。
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記第1の素子パッドと前記第1の外部電極層との間をつなぐ第1の内側スルーホール電極をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のシート基板。
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記第2の素子パッドと前記第2の外部電極層との間をつなぐ第2の内側スルーホール電極をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート基板。
前記複数の単位構造のうち互いに隣り合うものは、前記第1の面および前記第2の面の少なくともいずれかに設けられた分割溝に沿って互いに直接接している、請求項1から5のいずれか1項に記載のシート基板。
実効領域と前記実効領域の周りの外周領域とを有し、電気的素子を収めるパッケージへと分割されることになる、マトリクス状に配置された複数の単位構造を前記実効領域中に含むシート基板の製造方法であって、
仕掛かり基板を準備する工程を備え、前記仕掛かり基板は、
セラミック絶縁体からなり、第1の面と前記第1の面と反対の第2の面とを有し、前記複数の単位構造の各々において前記第1の面上にキャビティが設けられた母基板と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第1の面上に設けられ前記キャビティを囲むメタライズ膜と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記メタライズ膜に電気的に接続された第1の接地電極層と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記メタライズ膜に電気的に接続された第2の接地電極層と、
前記複数の単位構造の各々において、前記キャビティ内に設けられた、前記電気的素子が接続されることになる第1および第2の素子パッドと、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記第1の素子パッドに電気的に接続された第1の外部電極層と、
前記複数の単位構造の各々において、前記母基板の前記第2の面上に設けられ前記第2の素子パッドに電気的に接続された第2の外部電極層と、
前記複数の単位構造に含まれる第1から第4の単位構造の各々に接するキャスタレーション電極と、
を含み、前記母基板の前記第2の面上において、前記キャスタレーション電極は前記第1および第2の外部電極層および前記第1および第2の接地電極層の各々と接続されており、前記シート基板の製造方法はさらに、
前記仕掛かり基板に電解めっきを施す工程と、
前記電解めっきを施す工程の後に、前記母基板の前記第2の面上において、前記第1および第2の外部電極層の各々と、前記キャスタレーション電極との間を切断する工程と、
を備える、シート基板の製造方法。
前記仕掛かり基板を準備する工程において前記仕掛かり基板は、前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記メタライズ膜と前記第1の接地電極層との間をつなぐ第1の外周スルーホール電極を含む、請求項7に記載のシート基板の製造方法。
前記仕掛かり基板を準備する工程において前記仕掛かり基板は、前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記メタライズ膜と前記第2の接地電極層との間をつなぐ第2の外周スルーホール電極を含む、請求項7または8に記載のシート基板の製造方法。
前記仕掛かり基板を準備する工程において前記仕掛かり基板は、前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記第1の素子パッドと前記第1の外部電極層との間をつなぐ第1の内側スルーホール電極を含む、請求項7から9のいずれか1項に記載のシート基板の製造方法。
前記仕掛かり基板を準備する工程において前記仕掛かり基板は、前記複数の単位構造の各々において、前記母基板を貫通して前記第2の素子パッドと前記第2の外部電極層との間をつなぐ第2の内側スルーホール電極を含む、請求項7から10のいずれか1項に記載のシート基板の製造方法。
前記複数の単位構造のうち互いに隣り合うものは、前記第1の面および前記第2の面の少なくともいずれかに設けられた分割溝に沿って互いに直接接している、請求項7から11のいずれか1項に記載のシート基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0018】
(シート基板)
図1は、本実施の形態におけるシート基板80の構成を、キャビティCV側が現れるように概略的に示す斜視図である。
図2は、本実施の形態におけるシート基板80の構成を、キャビティCV側の反対側が現れるように概略的に示す斜視図である。
【0019】
シート基板80は、外周領域と、それに囲まれた実効領域とを有している。よって外周領域は実効領域の周りに位置している。シート基板80の実効領域は、マトリクス状に配置された複数の単位構造9を含むものである。互いに隣り合う単位構造9の間には、製造途中で破棄されることになる捨代領域を設ける必要はない。すなわち、互いに隣り合う単位構造9は、分割溝80Gに沿って互いに直接接していてよい。本実施の形態においては、平面レイアウトにおいて、単位構造9の各々は矩形形状を有しており、複数の単位構造9が矩形形状の各辺に沿って配列されている。矩形形状の角部は、ある程度欠けていてよい。
【0020】
シート基板80は、母基板10と、電解めっき処理が施された電極構造(詳しくは後述)とを有している。母基板10は、セラミック絶縁体からなり、上面S1(第1の面)と下面S2(第1の面と反対の第2の面)とを有している。母基板10には、単位構造9の各々において上面S1上にキャビティCVが設けられている。母基板10は、キャビティCV側の構成である基板上部10aと、キャビティCV側と反対側の構成である基板下部10bとを有している。基板上部10aは基板下部10b上に積層されている。
【0021】
シート基板80の上面S1および下面S2の少なくともいずれかの上、好ましくは両方の上、には、単位構造9の縁に沿って分割溝80Gが設けられている。分割溝80Gは、実効領域だけでなく外周領域にも設けられている。分割溝80Gは、それに沿ってシート基板80を容易に分割するためのものである。分割溝80Gは、例えばV字状の断面形状を有している。なお分割溝80Gは、上面S1および下面S2の一方のみの上に設けられていてもよい。また分割溝80Gは省略されてもよい。
【0022】
図3は、シート基板80(
図1および
図2)を用いて製造される電子装置90の構成を概略的に示す分解斜視図である。電子装置90は、パッケージ90Gと、電気的素子91と、蓋体92とを有している。電気的素子91は、パッケージ90GのキャビティCV内において第1の素子パッド41および第2の素子パッド42上に実装されている。第1の素子パッド41および第2の素子パッド42は、電気的素子91との電気的接続のために用いられる、パッケージ90Gの電極である。蓋体92は、パッケージ90Gに接合されることによってキャビティCVを封止している。前述した複数の単位構造9(
図1および
図2)は、電気的素子91(
図3)を収めるパッケージ90G(
図3)へと分割されることになる。よってシート基板80は、パッケージ90Gのための多数個取り基板である。
【0023】
図4は、シート基板80の、キャビティ側の構成を概略的に示す平面図である。
図5は、本実施の形態におけるシート基板80の構成を、
図4に示された構成の図示を省略して、概略的に示す平面図である。
図6は、本実施の形態におけるシート基板80の構成を、
図4および
図5に示された構成の図示を省略して、概略的に示す平面図である。言い換えれば、
図6は、シート基板の下面S2上に設けられた電極構造を、
図4および
図5と同様にキャビティ側から(すなわち上方側から)見た図である。
図7は、
図6の、キャスタレーション電極70近傍の拡大図である。シート基板80(
図1および
図2)は、基板上部10aを含む上部構造80a(
図4)と、基板下部10bを含む下部構造80b(
図5)とが積層されることによって構成されている。
【0024】
なお
図4〜
図7において、以下における説明の便宜上、複数の単位構造9のうちの4つのものである第1〜第4の単位構造9A〜9Dに符号が付されている。図中、第1の単位構造9Aと第2の単位構造9Bとは単位構造9の一の対角方向において隣接しており、第3の単位構造9Cと第4の単位構造9Dとは単位構造の他の対角方向において隣接している。また単位構造9の一の辺方向(図中、横方向)において、第4の単位構造9Dと第1の単位構造9Aとが隣接しており、かつ第2の単位構造9Bと第3の単位構造9Cとが隣接している。また単位構造9の他の辺方向(図中、縦方向)において、第4の単位構造9Dと第2の単位構造9Bとが隣接しており、かつ第1の単位構造9Aと第3の単位構造9Cとが隣接している。
【0025】
シート基板80は外周領域において、
図5に示されているように、母基板10に設けられた電極構造として、基板下部10b上に、電源接続端子81と、外周配線82とを有している。電極構造には電解めっき処理が施されている。電源接続端子81は、この電解めっき処理の電圧印加用である。電源接続端子81はシート基板80の側面上に露出されていることが好ましい。外周配線82は、電源接続端子81につながっており、外周領域に囲まれた実効領域へと延びている。なお、外周配線82は基板上部10a(
図4)に覆われていてよい。
【0026】
シート基板80は、外周領域に囲まれた実効領域において、母基板10に設けられた電極構造として、メタライズ膜15と、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22と、第1の外周スルーホール電極31および第2の外周スルーホール電極32と、第1の素子パッド41および第2の素子パッド42と、第1の外部電極層51および第2の外部電極層52と、第1の内側スルーホール電極61および第2の内側スルーホール電極62と、キャスタレーション電極70とを有している。
【0027】
キャスタレーション電極70は、単位構造9の角部の各々に配置されている。よって、単位構造9の境界が密集している位置に、キャスタレーション電極70が配置されている。この配置により、第1〜第4の単位構造9A〜9Dに接する位置に1つのキャスタレーション電極70が配置されている。
【0028】
キャスタレーション電極は、一般に、貫通孔または切欠の側壁上に設けられた電極であり、中空の形状を有している。本実施の形態においては、キャスタレーション電極70は、母基板10に設けられた貫通孔の側壁の少なくとも一部の上に設けられた金属膜を有する電極である。具体的には、キャスタレーション電極70は、母基板10に設けられた貫通孔の側壁、言い換えれば基板上部10aの貫通孔と基板下部10bの貫通孔とが組み合わさった貫通孔、のうち、少なくとも基板下部10bの貫通孔の側壁上に設けられた金属膜を有している。またキャスタレーション電極70はさらに、
図5に示されているように、基板下部10bの上面S1上において、貫通孔の縁から食みだした縁部を有していてよい。またキャスタレーション電極70はさらに、
図6に示されているように、下面S2上において、貫通孔の縁から食みだした縁部を有していてよい。
【0029】
なおキャスタレーション電極70の各々は、分割溝80Gに沿ってシート基板80が分割されることによって、複数の部分に分割される。分割されたキャスタレーション電極70は、
図3に示されているように、パッケージ90Gの角部に位置する。
【0030】
メタライズ膜15は、複数の単位構造9の各々において、母基板10の上面S1上に設けられておりキャビティCVを囲んでいる。メタライズ膜15の各々には蓋体92(
図3)が接合されることになる。
【0031】
第1の素子パッド41および第2の素子パッド42は、複数の単位構造9の各々において、母基板10の基板下部10b上のキャビティCV内に設けられている。第1の素子パッド41および第2の素子パッド42には電気的素子91(
図3)が接続されることになる。第1の素子パッド41および第2の素子パッド42は互いに離れている。
【0032】
第1の外部電極層51および第2の外部電極層52は、複数の単位構造9の各々において、母基板10の下面S2上に設けられている。第1の接地電極層21および第2の接地電極層22は、複数の単位構造9の各々において、母基板10の下面S2上に設けられている。第1の外部電極層51は、第2の外部電極層52、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22の各々から離れている。第2の外部電極層52は、第1の外部電極層51、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22の各々から離れている。第1の接地電極層21および第2の接地電極層22は互いに離れていてよい。図中、第1の外部電極層51、第2の外部電極層52、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22のそれぞれは、単位構造9の矩形形状において、右下角部、左上角部、左下角部および右上角部に配置されている。言い換えれば、2つの対角方向を有する単位構造9において、第1の外部電極層51および第2の外部電極層52は一の対角方向に配置されており、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22は、他の対角方向に配置されている。
【0033】
第1の内側スルーホール電極61は、複数の単位構造9の各々において、母基板10を貫通して第1の素子パッド41と第1の外部電極層51との間をつないでいる。これにより、第1の外部電極層51は第1の素子パッド41に電気的に接続されている。第2の内側スルーホール電極62は、複数の単位構造9の各々において、母基板10を貫通して第2の素子パッド42と第2の外部電極層52との間をつないでいる。これにより、第2の外部電極層52は第2の素子パッド42に電気的に接続されている。
【0034】
第1の外周スルーホール電極31は、複数の単位構造9の各々において、母基板10を貫通してメタライズ膜15と第1の接地電極層21との間をつないでいる。これにより、第1の接地電極層21はメタライズ膜15に電気的に接続されている。第2の外周スルーホール電極32は、複数の単位構造9の各々において、母基板10を貫通してメタライズ膜15と第2の接地電極層22との間をつないでいる。これにより、第2の接地電極層22はメタライズ膜15に電気的に接続されている。
【0035】
第1の外周スルーホール電極31および第2の外周スルーホール電極32のそれぞれは、単位構造9の矩形形状において、左下角部および右上角部に配置されている。言い換えれば、2つの対角方向を有する単位構造9において、第1の外周スルーホール電極31および第2の外周スルーホール電極32は、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22が配置された対角方向と同じ対角方向に配置されている。
【0036】
第1の外周スルーホール電極31および第2の外周スルーホール電極32の少なくともいずれかは外周配線82に電気的に接続されており、本実施の形態においては外周配線82に両者が接続されている。この接続は直接的な接続であってもよく、あるいは、
図5に示されているように、キャスタレーション電極70の縁部を介しての接続であってもよい。
【0037】
なお第1の外周スルーホール電極31は、複数の単位構造9の各々において、
図5に示されているように、基板下部10bの上面S1上でキャスタレーション電極70に接続されていてよい。第2の外周スルーホール電極32は、複数の単位構造9の各々において、
図5に示されているように、基板下部10bの上面S1上でキャスタレーション電極70に接続されていてよい。
【0038】
図7に示されているように、母基板10の下面S2上において、キャスタレーション電極70は切断部73Cによって第1の外部電極層51と電気的に分断されている。キャスタレーション電極70は切断部74Cによって第2の外部電極層52と電気的に分断されている。キャスタレーション電極70は切断部71Cによって第1の接地電極層21と電気的に分断されていてよい。キャスタレーション電極70は切断部72Cによって第2の接地電極層22と電気的に分断されていてよい。切断部71C、72C、73Cおよび74Cは、典型的には、レーザ光の照射等によって配線が切断された箇所である。シート基板80は、後述する仕掛かり基板に、電解めっき処理と、その後の切断部71C、72C、73Cおよび74Cの形成とが行なわれることによって得られる。この仕掛かり基板について、以下に説明する。
【0039】
(仕掛かり基板およびそれを用いてのシート基板の製造方法)
仕掛かり基板は、上述したシート基板80とほぼ同様の構成を有している。両者の間の相違点として、仕掛かり基板が準備された時点では、その電極構造に電解めっき処理が未だ施されていない。また、母基板10の下面S2上におけるキャスタレーション電極70近傍のパターンが異なっている。
【0040】
図8は、本実施の形態における仕掛かり基板80Pの構成を、
図6に対応して概略的に示す平面図である。
図9は、
図8の、キャスタレーション電極70近傍の拡大図である。仕掛かり基板80Pにおいては、母基板10の下面S2(
図2)上において、
図9に示されているように、キャスタレーション電極70は、第1の外部電極層51、第2の外部電極層52、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22の各々と接続されている。具体的には、下面S2(
図2)上においてキャスタレーション電極70は、
図9に示されているように、第1の接地電極層21、第2の接地電極層22、第1の外部電極層51および第2の外部電極層52のそれぞれにつながる配線部71〜74を有している。なお、キャスタレーション電極70のうち下面S2(
図9に示された面)上の部分は、分離溝80Gによって複数の部分(
図9においては4つの部分)に分割されていてもよい。そのような場合であっても、これら複数の部分は、キャスタレーション電極70のうちの側壁上の部分を介して、互いに電気的に接続されている。よって電極層間の電気的接続が分離溝80Gの存在によって意図せず分断されてしまうことはない。
【0041】
なお、仕掛かり基板80Pについての上記以外の構成については、上述したシート基板80の構成とほぼ同じであるため、その説明を繰り返さない。
【0042】
図10は、仕掛かり基板80Pを用いてのシート基板80の製造方法を概略的に示すフロー図である。まずは、ステップS10(
図10)にて、仕掛かり基板80P(
図8および
図9)が準備される。
【0043】
ステップS20(
図10)にて、仕掛かり基板80Pの電極構造に電解めっき処理が施される。例えば、ニッケル/金のめっき処理が行なわれる。
【0044】
具体的には、電解めっき処理のために、電解めっき用の電源(図示せず)が電源接続端子81(
図1)に接続される。
図5に示されているように、電源接続端子81は外周配線82につながっている。よって電源からの電流は、電源接続端子81および外周配線82を通って、矢印CR1(
図5)に示されているように、第1の単位構造9Aにおける第2の外周スルーホール電極32に達する。次にこの電流は、第2の外周スルーホール電極32を通ってメタライズ膜15(
図4)に達する。次にこの電流は、矢印CR2(
図4)に示されているように、メタライズ膜15を通って第1の外周スルーホール電極31に達する。次にこの電流は、第1の外周スルーホール電極31を通って第1の接地電極層21(
図8)に達する。
【0045】
次にこの電流は、
図9を参照して、キャスタレーション電極70の配線部71を通った後、キャスタレーション電極70の配線部72〜74に分配される。よってこの電流は、配線部72〜74のそれぞれを通って、第2の単位構造9Bにおける第2の接地電極層22と、第4の単位構造9Dにおける第1の外部電極層51と、第3の単位構造9Cにおける第2の外部電極層52とに達する。
【0046】
その結果、第1に、第2の単位構造9Bにおける第2の接地電極層22から、第2の外周スルーホール電極32を通って、第2の単位構造9Bにおけるメタライズ膜15(
図4)に電流が達する。第2に、第4の単位構造9Dにおける第1の外部電極層51から、第1の内側スルーホール電極61を通って、第4の単位構造9Dにおける第1の素子パッド41(
図5)に電流が達する。第3に、第3の単位構造9Cにおける第2の外部電極層52から、第2の内側スルーホール電極62を通って、第3の単位構造9Cにおける第2の素子パッド42(
図5)に電流が達する。
【0047】
上述したように、第1の単位構造9Aにおけるメタライズ膜15に供給された電流が、第2の単位構造9Bのメタライズ膜15に達する。この電流は、上記と同様の電流経路を通って、他の単位構造のメタライズ膜に達することができる。このように電流経路が形成されていることから、単位構造9のうち外周領域近傍のものへ外周配線82を用いて電流を供給することによって、それらよりも内側に位置する単位構造9へも電流を供給することができる。すなわち、すべての単位構造9に電流を供給することができる。よって、仕掛かり基板80Pの電極構造全体への電解めっき処理が可能である。
【0048】
ステップS30(
図10)にて、上記電解めっき後、母基板10の下面S2上において、第1の外部電極層51および第2の外部電極層52の各々と、キャスタレーション電極70との間が切断される。さらに、母基板10の下面S2上において、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22の各々と、キャスタレーション電極70との間も切断されてよい。具体的には、配線部73および配線部74(
図9)のそれぞれが切断されることによって、切断部73Cおよび切断部74C(
図7)が形成される。さらに、配線部71および配線部72(
図9)のそれぞれが切断されることによって、切断部71Cおよび切断部72C(
図7)が形成されてもよい。切断の方法としてはレーザ加工法が好ましい。その場合、これら切断部は、レーザ光が照射されたことによる溶断部またはアブレーション部である。このような切断部によれば、下面S2上において第1の外部電極層51および第2の外部電極層52の各々とキャスタレーション電極70との間が、典型的には0.02mm以上0.10mm以下の間隔で互いに分離される。第1の接地電極層21および第2の接地電極層22の各々とキャスタレーション電極70との間の間隔についても同様である。
【0049】
(シート基板を用いての電子装置の製造方法)
図11は、シート基板80を用いての電子装置90(
図3)の製造方法を概略的に示すフロー図である。まずは、ステップS110にて、シート基板80が準備される。ステップS120にて、シート基板80の複数の単位構造9の各々において、電気的素子91(
図3)が第1の素子パッド41および第2の素子パッド42上に実装される。ステップS130にて、次に、シート基板80の複数の単位構造9の各々において、蓋体92(
図3)がメタライズ膜15上に接合される。これにより電気的素子91の各々が封止される。以上により、複数の電子装置90(
図3)となる部分が分割溝80Gを介してつながった構成が得られる。言い換えれば、上記ステップS110〜S130によって、複数のパッケージ90G(
図3)となる部分が分割溝80Gを介してつながった構成が準備された後、それらの各々において電気的素子91が封止される。
【0050】
ステップS140にて、上記のように互いにつながった複数のパッケージ90G(
図3)の各々に対して、第1の外部電極層51および第2の外部電極層52を用いて電気的測定が行なわれる。これにより、複数のパッケージ90Gとなる部分がつながった状態を維持しつつ、電子装置90の電気的検査を行なうことができる。
【0051】
ステップS150にて、次に、シート基板80が、分割溝80Gに沿って複数のパッケージ90G(
図3)に分割される。これにより、複数の電子装置90が得られる。
【0052】
(仕掛かり基板の製造方法)
仕掛かり基板80Pの製造方法について、以下に説明する。
【0053】
まず、スラリーが作製される。具体的には、仕掛かり基板80Pの主原料となるセラミック粉末と、焼結助剤の粉末と、可塑剤と、バインダーと、溶剤とが、混練されながら脱泡される。例えば、主原料としての酸化アルミニウム(Al
2O
3)と、焼結助剤としてのマグネシア(MgO)、シリカ(SiO
2)またはカルシア(CaO)と、可塑剤としてのジオクチフタレートと、バインダーとしてのアクリル樹脂と、溶剤としてのトルエン、キシレンまたはアルコール類とが用いられる。なお主原料は酸化アルミニウム(Al
2O
3)に限定されるわけではなく、例えば窒化アルミニウム(Al
3N
4)が用いられ得る。
【0054】
得られたスラリーが、ドクターブレード法等によってシート状にされ、そして乾燥させられる。これにより未焼成セラミックシート(グリーンシート)が得られる。打ち抜きプレス等を用いてグリーンシートに貫通孔が形成される。この貫通孔は、仕掛かり基板80Pに、キャビティ、スルーホール電極およびキャスタレーション電極等を設けるためのものである。グリーンシートの貫通孔内および表面上に、仕掛かり基板80Pの電極構造に対応したパターンで、未焼成金属(メタライズペースト)が印刷される。印刷には、例えばスクリーン印刷機が用いられる。メタライズペーストとしては、例えば、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)等の高融点金属を含むものが用いられる。
【0055】
次に、上記のように未焼成金属が印刷された複数のグリーンシート、具体的には上部構造80a(
図4)および下部構造80b(
図5)になる2つのグリーンシート、が重ね合わされる。そして、加熱されつつ、これらに圧力が加えられる。これにより、複数のグリーンシートが互いに接着された構成を有する積層体が得られる。この積層体上を、V字状の剣先を有する刃が摺動させられる。これにより分割溝80G(
図1および
図2)が形成される。
【0056】
次に、この積層体が焼成される。焼成雰囲気は、例えば、水素(H
2)または窒素(N
2)を含む還元性雰囲気である。焼成温度は、例えば1600℃程度である。
【0057】
以上により仕掛かり基板80Pが得られる。
【0058】
(効果のまとめ)
本実施の形態によれば、電解めっきが施された後に、母基板10の下面S2上において、
図7に示されているように、第1の外部電極層51および第2の外部電極層52の各々と、キャスタレーション電極70との間が切断される。これによって、パッケージ90G(
図3)において第1の外部電極層51および第2の外部電極層52の各々を電気的に孤立させることができる。これにより、電気的素子91が実装された後にシート基板80が分割される前に各パッケージ90Gについて電気的検査を行なうことが可能とされる。
【0059】
また上記切断箇所はキャスタレーション電極70近傍に配置することができる。キャスタレーション電極70は、第1から第4の単位構造9A〜9Dに接する位置、すなわち単位構造9の境界が密集する位置、に配置されており、そのような位置の近傍には、シート基板80から得られるパッケージ90Gの数に及ぼす影響を抑えつつ切断部73Cおよび74C(
図7)を配置しやすい。よって、切断部73Cおよび74Cを設けることによる、パッケージ90Gの製造効率の低下を避けることができる。
【0060】
以上から、電気的素子91が実装された後にシート基板80が分割される前に各パッケージ90Gについて電気的検査を行なうことを可能としつつ、パッケージ90Gの製造効率を高めることができる。
【0061】
なお上記において、第1から第4の単位構造9A〜9Dに接する位置に配置されたキャスタレーション電極70について言及しているが、
図4に示されているように、外周領域の近傍においては、3つ以下の単位構造にのみ接するキャスタレーション電極70が配置されている。また、本実施の形態においては単位構造9のマトリクスが3つの行と3つの列とを有している場合について図示しているが(
図4参照)、マトリクスの行数が3以上かつ列が3以上の場合に本実施の形態は特に有用である。ただし、単位構造9が第1から第4の単位構造9A〜9Dを含むものである限り、単位構造9の数は任意である。
【0062】
また上記において詳述した単位構造9においては、第1の外部電極層51および第2の外部電極層52が一の対角方向に配置されており、第1の接地電極層21および第2の接地電極層22が他の対角方向に配置されているが、これら電極層の配置は適宜変更されてよい。例えば、第1の外部電極層51および第1の接地電極層21が一の対角方向に配置され、第2の外部電極層52および第2の接地電極層22が他の対角方向に配置されてもよい。これら電極層の配置に応じて、第1の外周スルーホール電極31、第2の外周スルーホール電極32、第1の内側スルーホール電極61および第2の内側スルーホール電極62の配置も変更され得る。また、第1の素子パッド41および第2の素子パッド42の配置は、
図5に示されたものに限定されるものではなく、上述した電極層の配置と、実装される電気的素子の種類とに応じて変更され得る。
【0063】
また上記において、第1の接地電極層21をメタライズ膜15に電気的に接続する目的において、第1の外周スルーホール電極31に代わる部材が用いられてよい。また第2の接地電極層21をメタライズ膜15に電気的に接続する目的において、第2の外周スルーホール電極32に代わる部材が用いられてよい。また第1の外部電極層51を第1の素子パッド41に電気的に接続する目的において、第1の内側スルーホール電極61に代わる部材が用いられてよい。また第2の外部電極層52を第2の素子パッド42に電気的に接続する目的において、第2の内側スルーホール電極62に代わる部材が用いられてよい。
【0064】
第1の外周スルーホール電極31、第2の外周スルーホール電極32、第1の内側スルーホール電極61および第2の内側スルーホール電極62に関して、上記部材の例として、上面S1と下面S2との間を貫通するキャスタレーション電極が設けられてよい。このキャスタレーション電極は、例えば、キャスタレーション電極70(
図9)から離れて、2つの単位構造9の境界上に配置されてよい。
【0065】
第1の外周スルーホール電極31および第2の外周スルーホール電極32に関して、上記部材の例として、キャビティCVの側壁上に配置された電極を含むキャスタレーション電極と、このキャスタレーション電極に電気的に接続され基板下部10bを貫通するスルーホール電極との組み合わせが設けられてよい。
【0066】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。