(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886148
(24)【登録日】2021年5月18日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】アクティブマスダンパおよびアクティブマスダンパの制御装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20210603BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/02 C
E04H9/02 341D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-156390(P2017-156390)
(22)【出願日】2017年8月14日
(65)【公開番号】特開2019-35452(P2019-35452A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】304039065
【氏名又は名称】カヤバ システム マシナリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】猪口 敏一
(72)【発明者】
【氏名】田川 泰敬
【審査官】
近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−087880(JP,A)
【文献】
特開2007−239942(JP,A)
【文献】
特開平04−333110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に対して往復動可能に設置される可動マスと、
前記可動マスを駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御部と、
前記構造物の加速度を検知する加速度センサとを備え、
前記制御部は、前記可動マスの変位を指示する変位指令から前記構造物の加速度までの伝達関数に基づいて、前記加速度センサが検知した加速度のみから前記変位指令を生成する
ことを特徴とするアクティブマスダンパ。
【請求項2】
前記変位指令の大きさである変位指令レベルと前記可動マスのストローク制限値とに基づいて前記変位指令に乗じる補正ゲインを求め、前記変位指令に前記補正ゲインを乗じるゲイン乗算部を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブマスダンパ。
【請求項3】
前記ゲイン乗算部は、
前記変位指令レベルを前記ストローク制限値で除した指標値をパラメータとして、
前記指標値が1以下では前記補正ゲインを1とし、前記指標値が1を超えて1以上に設定される設定値以下では前記補正ゲインが放物線を描いて下降し、前記指標値が前記設定値を超えると前記補正ゲインが前記指標値に反比例して下降するマップを用いて前記補正ゲインを求める
ことを特徴とする請求項2に記載のアクティブマスダンパ。
【請求項4】
前記可動マスの変位を検知する変位センサと、
前記変位指令と前記変位センサが検知する前記可動マスの変位とに基づいてフィードバック制御するフィードバック制御部とを備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアクティブマスダンパ。
【請求項5】
構造物に対して往復動可能に設置される可動マスを駆動するアクチュエータを制御するアクティブマスダンパの制御装置であって、
前記制御装置は、前記構造物の加速度を検知する加速度センサとを備え、
前記可動マスの変位を指示する変位指令から前記構造物の加速度までの伝達関数に基づいて、前記加速度センサが検知した加速度のみから前記可動マスの変位を指示する変位指令を生成する
ことを特徴とするアクティブマスダンパの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマスダンパおよびアクティブマスダンパの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震動による構造物の振動を抑制する装置として、構造物に往復動可能に設置された可動マスと可動マスを駆動するアクチュエータとを備えたアクティブマスダンパがある。
【0003】
アクティブマスダンパは、構造物が地震動等によって振動する際に、構造物の振動を打ち消すように可動マスを駆動して構造物の振動を抑制するものである。したがって、アクティブマスダンパは、アクチュエータを制御するための制御装置を備えている。
【0004】
たとえば、従来のアクティブマスダンパは、構造物に作用する加速度を検知する加速度センサを備えており、加速度センサが検知した加速度からアクチュエータが可動マスへ与える制御力を求めて、可動マスを駆動するものがある(たとえば、特許文献1の従来技術欄参照)
また、アクティブマスダンパは、他にも、可動マスがストローク限界を超えないように加速度センサで検知する加速度だけでなく、可動マスの変位を検知する変位センサを備え、変位センサで検知する変位をも加味してアクチュエータを制御するものもある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−239942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加速度センサが検知した加速度からアクチュエータが可動マスへ与える制御力を求めるアクティブマスダンパは、アクチュエータに力指令を与えるようになっており、構造物や可動マスの変位や速度についてはフィルタ処理によって推定するしかない。したがって、このようなアクティブマスダンパでは、フィルタの精度により構造物や可動マスの変位や速度に誤差が生じて制御出力が発散する恐れがありフィルタの設計が難しく、思うような制振効果が得られない可能性がある。
【0007】
また、加速度センサだけでなく変位センサを用いたアクティブマスダンパにあっても、加速度を二回も積分する演算が必要となっていて、フィルタ処理が必須で位相が遅れてしまう問題があり、思うような制振効果が得られない可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、制振性能を向上できるアクティブマスダンパおよびアクティブマスダンパの制御装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明のアクティブマスダンパおよびアクティブマスダンパの制御装置は、制御部が変位指令から構造物の加速度までの伝達関数に基づいて加速度センサが検知した加速度のみから可動マスの変位を指示する変位指令を生成するようになっている。このように構成されたアクティブマスダンパおよびアクティブマスダンパの制御装置にあっては、変位指令でアクチュエータを制御するので、可動マスの変位に誤差が生じにくく、加速度を積分する処理を行わずに加速度から変位指令を生成するので制御上で位相遅れが発生しない。
【0010】
さらに、アクティブマスダンパは、変位指令の大きさである変位指令レベルと可動マスのストローク制限値とに基づいて変位指令に乗じる補正ゲインを求め、変位指令に補正ゲインを乗じるゲイン乗算部を備えていてもよい。このようにゲイン乗算部を備えると、アクティブマスダンパは、制御部によって可動マスのストローク限界を超えるような変位指令が生成されても、可動マスを許容されるストロークの範囲で変位させつつ構造物の振動抑制効果を発揮できる。
【0011】
また、アクティブマスダンパは、変位指令レベルをストローク制限値で除した指標値をパラメータとして、指標値が1以下では補正ゲインを1とし、指標値が1を超えて1以上に設定される値以下では補正ゲインが放物線を描いて下降し、指標値が設定値を超えると補正ゲインが指標値に反比例して下降するマップを用いて補正ゲインを求めてもよい。このようにアクティブマスダンパが構成されると、指標値が1と設定値を跨いで変化する際に補正ゲインが連続して急変しないので、可動マスの速度に振動が生じて構造物の振動抑制効果を減じてしまう恐れがなくなる。
【0012】
そして、アクティブマスダンパは、可動マスの変位を検知する変位センサと、変位指令と変位センサが検知する可動マスの変位とに基づいてフィードバック制御するフィードバック制御部とを備えていてもよい。このように構成されたアクティブマスダンパは、可動マスの変位指令に対する追従性を高めるとともに、速度指令や力指令でアクチュエータを駆動するサーボアンプにも対応できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアクティブマスダンパおよびアクティブマスダンパの制御装置によれば、制振性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施の形態におけるアクティブマスダンパおよびアクティブマスダンパの制御装置を構造物に適用した図である。
【
図2】一実施の形態におけるアクティブマスダンパの制御ブロック図である。
【
図3】一般的な制御系における制御モデルを示した図である。
【
図4】一実施の形態のアクティブマスダンパにおける制御系の制御モデルを示した図である。
【
図5】一実施の形態におけるアクティブマスダンパの制御ブロック図の第一変形例である。
【
図6】一実施の形態におけるアクティブマスダンパの制御ブロック図の第二変形例である。
【
図7】一実施の形態におけるアクティブマスダンパの制御ブロック図の第三変形例である。
【
図8】一実施の形態におけるアクティブマスダンパのゲイン乗算部におけるマップの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、一実施の形態におけるアクティブマスダンパ1は、構造物Sの振動を抑制するため、構造物Sに設置されている。
【0016】
アクティブマスダンパ1は、
図1および
図2に示すように、構造物Sに対して往復動可能に設置される可動マス2と、可動マス2を駆動するアクチュエータ3と、アクチュエータ3を制御する制御装置としてのコントローラCとを備えている。そして、本例のコントローラCは、構造物Sの加速度を検知する加速度センサ4と、アクチュエータ3を制御する制御部5とを備えている。
【0017】
以下、各部について詳細に説明する。
図1に示すように、可動マス2は、構造物Sに設けたガイドレール6上を走行して往復動できるように設置されている。アクチュエータ3は、たとえば、モータで駆動されるテレスコピック型の電動シリンダとされており、可動マス2を構造物Sに対してガイドレール6に沿って往復動させる。なお、アクチュエータ3の構成は、前記したものに限定されるものではなく、テレスコピック型の油圧シリンダであってもよい。本例では、アクチュエータ3がモータであるので、アクチュエータ3の回転動力を可動マス2の直線運動へ変換するのに、ボールナットとボール螺子とでなる送り螺子機構を利用しているが、ラックアンドピニオンを利用してもよい。
【0018】
加速度センサ4は、構造物Sに作用する加速度を検知するべく、構造物Sに設置されており、検知した加速度は信号としてコントローラCへ入力される。コントローラCは、加速度センサ4で検知した加速度の情報を受け取ると、これを処理して変位指令を生成して、アクチュエータ3を駆動する。
【0019】
コントローラCは、本例では、加速度の入力によって変位指令Uを生成する制御部5と、アクチュエータ3を駆動するサーボアンプ7とを備えて構成されている。制御部5は、本例では、変位指令Uから構造物Sの加速度までの伝達関数に基づいて変位指令Uを生成する。
【0020】
ここで、
図3に示すように、コントローラが目標値rの入力を受けてプラントを制御する一般的な制御系を考える。プラントの出力yとして、出力yをフィードバック信号としてコントローラへ入力し、コントローラは目標値rと出力yの入力によってプラントへ操作量uを出力するようになっている。
【0021】
プラントには、外乱dが入力されるほか、出力yをコントローラへフィードバックする際にはノイズvが入力されるものとする。以上のように構成される系を伝達関数で表現すると、次の式(1)が成立し得る。なお、添え字は入力から出力を表すものとする。また、Cは、コントローラの伝達関数を表し、Pは、プラントの伝達関数を表している。
【0022】
【数1】
この式(1)を変形すると、次の式(2)が得られる。
【0023】
【数2】
ここで、入出力関係に着目すると、目標値rから出力yまでの閉ループ伝達関数W
ryは、以下の式(3)によって与えられる。また、外乱dから出力yまでの閉ループ伝達関数W
dyは、以下の式(4)によって与えられる。さらに、ノイズvから出力yまでの閉ループ伝達関数W
vyは、以下の式(5)によって与えられる。
【0026】
【数5】
閉ループ伝達関数W
ryは、操作量uが目標値rにどれだけ追従しているかを表す伝達関数であり、目標追従性の指標となる。閉ループ伝達関数W
dyは、外乱dが操作量uに与える影響を表す伝達関数であり、低感度特性の指標となる。さらに、閉ループ伝達関数W
vyは、観測されるノイズvが操作量uに与える影響を表す伝達関数であり、ロバスト安定性の指標となる。
【0027】
次に、式(4)を変形すると、以下の式(6)が得られる。
【0028】
【数6】
したがって、C
ru、C
yuとW
dyは、式(3)、(4)、(5)からそれぞれ、以下の式(7)、(8)、(9)で表せる。
【0031】
【数9】
以上の式から所望する閉ループ伝達特性に応じてコントローラを設計できる。そこで、次に、本例の制御系について考えると、本例の制御系は、
図4に示すように、プラントがアクティブマスダンパ1と構造物Sであり、構造物Sの加速度を出力yとして加速度センサ4で検知し、制御部5は出力yの入力を受けて変位指令Uを出力する。なお、制御部5に入力される加速度である出力yには、ノイズvが重畳される。そして、
図3に示した外乱dは、
図4に示した制御系では、構造物Sに作用する風や地震による入力に置き換えられる。
【0032】
よって、
図4に示した制御系においても式(7)から(9)が成立し、前述の式(7)に着目すると、所望する閉ループ特性をW
vyに設定すれば、加速度から変位指令Uを出力する制御部5の伝達関数を設定できる。
【0033】
つまり、予め所望する閉ループ特性をW
vyに設定して、この閉ループ特性から加速度センサ4で検知する加速度の入力によって変位指令Uを生成する制御部5を設計できる。このようにすると、加速度から構造物Sの振動を抑制するのに最適な変位指令Uを求める制御部5を実現できる。このように制御部5における伝達関数が設定され、制御部5は、加速度の入力によって変位指令Uを出力する。
【0034】
変位指令Uは、可動マス2のストローク中心からの変位を指示する指令であって、サーボアンプ7は、制御部5から変位指令Uの入力を受けると、アクチュエータ3を駆動して、可動マス2を変位指令U通りの位置へ移動させる。
【0035】
このようにして、可動マス2が駆動されると、可動マス2は構造物Sの振動に対してこの振動を減衰させ得る位相と振幅で往復動して、構造物Sの振動を抑制する。そして、本発明の制御装置としてのコントローラCは、構造物Sの加速度を検知する加速度センサ4と、加速度センサ4が検知した加速度のみから可動マス2の変位を指示する変位指令Uを生成する制御部5を備えており、変位指令Uでアクチュエータ3を制御するので、可動マス2の変位に誤差が生じにくい。また、加速度を積分する処理を行わずに加速度から変位指令Uを生成するので、制御上で位相遅れが発生しない。以上より、本発明のコントローラ(制御装置)Cおよびアクティブマスダンパ1によれば、可動マス2の変位に誤差が生じにくく制御上の位相遅れを解消できるから、構造物Sを効果的に制振させ得るので制振性能を向上できる。また、本例のアクティブマスダンパ1では、変位指令Uから構造物Sの加速度までの伝達関数に基づいて変位指令を生成するので、途中に加速度を積分するような処理をせずとも加速度から直接に変位指令Uを生成できるのである。
【0036】
なお、
図5に示すように、制御部5とサーボアンプ7との間にフィードバック制御部8を設けて、可動マス2の変位をフィードバックして可動マス2の変位指令Uに対する可動マス2の変位の追従性を高めてもよい。また、フィードバック制御部8を設けると、サーボアンプ7がアクチュエータ3の変位制御に対応していない場合にも対応が可能となる。この例では、可動マス2の変位を検知する変位センサ9を備えており、フィードバック制御部8は、変位指令Uと前記変位との偏差からサーボアンプ7へ与える指令を生成する。サーボアンプ7がアクチュエータ3を速度制御する場合、
図5に示すように、フィードバック制御部8は、変位指令Uと変位センサ9との偏差からサーボアンプ7へ与える速度指令を生成する。また、サーボアンプ7がアクチュエータ3を力制御、本例ではトルク制御する場合、
図6に示すように、フィードバック制御部8は、変位指令Uと前記変位との偏差から速度指令を生成し、前記を微分して可動マス2の速度を得てこの速度と速度指令の偏差から力指令を生成すればよい。なお、フィードバック制御部8は、P補償、PI補償、PID補償といった補償のうち構造物Sの制振に適する補償を行えばよい。
【0037】
また、
図7に示すように、制御部5の後段にゲイン乗算部10を設けてもよい。ゲイン乗算部10の設置に際して、フィードバック制御部8と変位センサ9の設置の有無は任意に選択できる。ゲイン乗算部10は、変位指令Uの大きさである変位指令レベルUrと可動マス2のストローク制限値Srとに基づいて補正ゲインKaを求めて、変位指令Uに補正ゲインKaを乗じた値を補正後の変位指令U’として出力する。
【0038】
具体的には、ゲイン乗算部10は、Ka=Sr/Urを演算して補正ゲインKaを求める。変位指令レベルUrは、変位指令Uの瞬間値ではなく大きさを示す値であり、変動する変位指令Uの振幅、つまり、波高値に相当するものである。変位指令レベルUrを得るには、単純に変位指令Uの波高値を検出してもよいが、タイムリーに変位指令レベルUrを得るには、特開2013−170980号公報や特開2015−59761号公報に開示されている手法を利用できる。具体的には、変位指令Uと変位指令Uの微分値或いは積分値を角周波数ωで補正した値の合成ベクトルを求めてこれを変位指令レベルUrとしてもよいし、変位指令Uとこれを複数の位相変更フィルタで処理して、得られて値の最大値を変位指令レベルUrとしてもよい。
【0039】
ストローク制限値Srは、本例では、可動マス2のストローク中心からの最大ストロークした際の変位値(最大変位値)に設定されているが、最大変位値から安全マージンを引いた値に設定されてもよい。
【0040】
このようにすると、変位指令Uに補正ゲインKaを乗じると、補正後の変位指令U’=U×(Sr/Ur)となり、値U/Urは、変位指令Uを変位指令レベルUrで除した値となるから常に1以下の値となる。よって、可動マス2が変位できない値を変位指令Uが指示する場合であっても、補正後の変位指令U’は、必ず可動マス2が変位できる値を指示する。そのため、変位指令Uが可動マス2のストローク限界を超える変位を指示せず、補正後の変位指令U’は変位指令Uの位相に一致する。よって、ゲイン乗算部10を備える場合には、可動マス2のストローク限界を超えるような変位指令Uが生成されても、可動マス2を許容されるストロークの範囲で変位させつつ構造物Sの振動抑制効果を発揮できる。
【0041】
また、ゲイン乗算部10は、変位指令レベルUrをストローク制限値Srで除した指標値Iをパラメータとして、この指標値Iからマップ演算を行って補正ゲインKaを求めてもよい。
【0042】
マップは、
図8に示すように、指標値Iと補正ゲインKaとの関係を示しており、指標値Iが1以下では補正ゲインKaを1とし、指標値が1を超えて1以上に設定される設定値α以下では補正ゲインKaが放物線を描いて下降し、指標値Iが設定値αを超えると補正ゲインKaが指標値Iに反比例して下降するようになっている。指標値Iは、I=Ur/Srとなっており、変位指令レベルUrがストローク制限値Srに対して大きくなると、補正ゲインKaが小さくなるようになっている。
【0043】
本例では、具体的には、
図8に示したマップでは、設定値αを2として、I≦1の範囲では、Ka=1とし、1<I≦αの範囲では、Ka=−0.2(I−α)
2+1、つまり、Ka=−0.2(I−2)
2+1とし、α<Iの範囲では、Ka=1.6/Iとしてある。このように設定すると、指標値Iが1の時にKa=1とKa=−0.2(I−2)
2+1の値が一致し両者の傾きも一致する。さらに、指標値Iが2の時にKa=−0.2(I−2)
2+1とKa=1.6/Iの値が一致し両者の傾きも一致する。よって、このようにマップを設定すると、指標値Iが1とαを跨いで変化する際に補正ゲインKaが連続して急変しない。
【0044】
以上のように、指標値Iが1以下では補正ゲインKaを1とし、指標値が1を超えて1以上に設定される設定値α以下では補正ゲインKaが放物線を描いて下降し、指標値Iが設定値αを超えると補正ゲインKaが指標値Iに反比例して下降するようにマップを設定すれば、指標値Iが1と設定値αを跨いで変化する際に補正ゲインKaが連続して急変しない。よって、補正後の変位指令U’の値が補正ゲインKaによって急変しないので、可動マス2の速度に振動が生じて構造物Sの振動抑制効果を減じてしまう恐れがない。
【0045】
なお、この場合、変位指令レベルUrがストローク制限値Srの二倍の値になると指標値Iが2となり、補正ゲインKaが0.8となる。この場合、補正後の変位指令U’の上限値は、ストローク制限値Srの1.6倍となるので、予め、ストローク制限値Srの値を前記最大変位値を1.6で除した値以下に設定すれば、最大変位値を超える変位の指示を阻止できる。このようにα、Kaを求めるマップの設定により、ストローク制限値Srを適宜最適となるように設定すればよい。また、αの値、1<I≦αの範囲における放物線の数式、α<Iの範囲における指標値Iに反比例の数式については、構造物Sの制振に適するように変更できる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・アクティブマスダンパ、2・・・可動マス、3・・・アクチュエータ、4・・・加速度センサ、5・・・制御部、8・・・フィードバック制御部、9・・・変位センサ、10・・・ゲイン乗算部、C・・・コントローラ(制御装置)、S・・・構造物