(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
硬化性組成物の硬化物層をフィルム上に有する多層フィルムの製造において、従来通りフィルムをロールに接触させながら搬送する場合、硬化性組成物がフィルム上に塗工された後から硬化性組成物が硬化する前の間において、硬化性組成物がフィルムからはみ出したり、フィルムが蛇行したりすること等によって、硬化性組成物がロール表面に付着する場合がある。付着した硬化性組成物はロール上で硬化し、硬化性組成物の硬化物は、その上を通過するフィルムを損傷したり、ロールから剥落して異物としてフィルムに付着したりする。このため、硬化性組成物がロールに付着した場合、硬化性組成物が付着したロールを交換することになるが、ロールの交換には製造ラインを停止する必要があり、生産効率が著しく低下するといった問題がある。
【0005】
本発明の目的は、硬化性組成物がロールに付着した場合でも生産効率を著しく低下させるロールの交換を行うことなく、多層フィルムの損傷および異物の付着を抑制することができる多層フィルムの製造装置および搬送用ロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、硬化性組成物をフィルムに塗工する塗工部と、硬化性組成物層に向けて活性エネルギー線を照射するための照射部と、硬化性組成物層とフィルムとの積層体を搬送するための搬送部とを備える多層フィルムの製造装置において、塗工部の始めから前記照射部の終わりまでの間において、テープが貼付された領域を外周面に有するテープ付ロールを搬送部に用いることにより、硬化性組成物がロールに付着するような場合であっても、硬化性組成物はロール本体には付着せずにテープに付着し、そのテープを貼り変えることで著しく生産効率を低下させるロールの交換を行わずとも、フィルムの損傷や異物のフィルムへの付着を抑制することが可能となることを見出した。
【0007】
本発明は、以下に示す多層フィルムの製造装置および製造方法、ならびに搬送用ロールを提供する。
[1] 第1フィルムと前記第1フィルム上に形成された硬化性組成物の硬化物層とを少なくとも有する多層フィルムの製造装置であって、
第1フィルムに活性エネルギー線硬化性組成物を塗工して第1フィルム上に硬化性組成物層を形成するための塗工部と、
硬化性組成物層に向けて活性エネルギー線を照射するための照射部と、
前記第1フィルムと硬化性組成物層とを含む積層体を搬送するための搬送部と
を備え、
前記搬送部は、テープが貼付された領域を外周面に有するテープ付ロールを含み、
前記テープ付ロールは、前記塗工部の始めから前記照射部の終わりまでの間に配置される、製造装置。
[2] 前記テープ付ロールは、前記積層体を、前記照射部において活性エネルギー線の照射直下で搬送するためのロールである、[1]に記載の製造装置。
[3] 前記テープが貼付された領域は、テープがロールの外周面を1周以上周回して貼付された領域である、[1]または[2]に記載の製造装置。
[4] 前記テープが貼付された領域は、前記積層体と接しない領域を少なくとも有する、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の製造装置。
[5] 前記積層体は、硬化性組成物層を有する領域と、硬化性組成物層を有しない領域とを有し、
前記テープが貼付された領域は、前記硬化性組成物層を有しない領域と接するが、前記硬化性組成物層を有する領域とは接しない、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の製造装置。
[6] 前記テープは、耐熱性テープである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の製造装置。
[7] 硬化性組成物層が形成された第1フィルムを、硬化性組成物層を介して第2フィルムに貼合する貼合部を更に備える、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の製造装置。
[8] 前記多層フィルムは、光学フィルムまたは光学フィルムを構成するフィルムである、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の製造装置。
[9] 第1フィルムと前記第1フィルム上に形成された硬化性組成物の硬化物層とを少なくとも有する多層フィルムの製造方法であって、
[1]〜[8]のいずれか1項に記載の製造装置を用いる、製造方法。
[10] 第1フィルムと前記第1フィルム上に形成された硬化性組成物層とを少なくとも有する積層体の搬送用ロールであって、
前記搬送用ロールは、テープが貼付された領域を外周面に有し、
前記硬化性組成物層は、活性エネルギー線硬化性組成物から構成され、
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化が開始していないか、または硬化が開始しているが完了していない、搬送用ロール。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多層フィルムの製造装置および搬送用ロールによれば、生産効率を低下させることなく、フィルムの損傷や異物のフィルムへの付着を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様に係る多層フィルムの製造装置は、第1フィルムと第1フィルム上に形成された硬化性組成物の硬化物層とを少なくとも有する多層フィルムの製造装置であり、第1フィルムに活性エネルギー線硬化性組成物を塗工して第1フィルム上に硬化性組成物層を形成するための塗工部と、硬化性組成物層に向けて活性エネルギー線を照射するための照射部と、第1フィルムと硬化性組成物層とを含む積層体を搬送するための搬送部とを備え、搬送部は、テープが貼付された領域を外周面に有するテープ付ロールを含み、テープ付ロールは、塗工部の始めから照射部の終わりまでの間に配置される。また、本発明の一態様に係る多層フィルムの製造方法は、上記多層フィルムの製造装置を用いて多層フィルムを製造する方法であってよい。
【0011】
(多層フィルム)
多層フィルムは、第1フィルムと、第1フィルム上に形成された硬化性組成物の硬化物層(以下、単に「硬化性組成物層」ともいう)とを少なくとも有する。多層フィルムは、長尺のロール状フィルムであってよく、または枚葉状フィルムであってよい。多層フィルムは、光学フィルムまたは光学フィルムを構成するフィルムであってよい。光学フィルムとしては、例えば偏光板等が挙げられる。
【0012】
多層フィルムは、第2フィルムを更に含んでよい。第2フィルムは、硬化性組成物の硬化物層を介して、第1フィルムを積層することができる。したがって、多層フィルムが第2フィルムを有する場合、多層フィルムは、第1フィルム/硬化性組成物層の硬化物/第2フィルムをこの順に含むものであってよい。
【0013】
多層フィルムが第2フィルムを有する場合、多層フィルムは、第3フィルムを更に含んでもよい。第3フィルムは、硬化性組成物層を有することが好ましい。第3フィルムが硬化性組成物層を有する場合、第3フィルム上の硬化性組成物層を介して第2フィルムを積層することができる。したがって、多層フィルムが第3フィルムを有する場合、多層フィルムは、第1フィルム/硬化性組成物層の硬化物/第2フィルム/硬化性組成物層の硬化物/第3フィルムをこの順に有するものであってよい。第3フィルムの種類は、第1フィルムと同じであってよく、異なっていてもよい。
【0014】
多層フィルムの厚みは、例えば1〜500μmであってよく、好ましくは2〜250μmである。
【0015】
多層フィルムの幅は、例えば500〜3000mmであってよく、好ましくは1000〜2000mmである。
【0016】
多層フィルムは、硬化性組成物の硬化物層を有する領域と、硬化性組成物の硬化物層を有しない領域とを有することが好ましい。多層フィルムが硬化性組成物の硬化物層を有しない領域を有する場合、硬化性組成物の硬化物層を有しない領域は、多層フィルムの幅方向において例えば端部から1〜100mmまでの領域であってよく、好ましくは端部から5〜75mmまでの領域であり、より好ましくは端部から10〜50mmの領域である。
【0017】
(第1フィルム)
第1フィルムは、樹脂フィルムであってよい。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであり、例えばトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、シクロオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂等であることができる。また、第1フィルムは、例えばポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等から構成されるフィルムであってもよい。
【0018】
セルロース系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。セルロース系樹脂は、好ましくはセルロースエステル系樹脂であり、より好ましくはアセチルセルロース系樹脂である。アセチルセルロース系樹脂の具体例として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等を挙げることができる。このようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルムの市販品としては、例えば、富士フイルム株式会社(株)製の“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”および“フジタックTD80UZ”、コニカミノルタオプト(株)製の“KC8UX2M”および“KC8UY”等が挙げられる。
【0019】
シクロオレフィン系樹脂とは、例えばノルボルネン、多環ノルボルネン系モノマーのような、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する熱可塑性の樹脂(熱可塑性シクロオレフィン系樹脂とも呼ばれる)である。シクロオレフィン系樹脂は、上記シクロオレフィンの開環重合体または2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物であってもよく、シクロオレフィンと鎖状オレフィン、ビニル基を有する芳香族化合物などとの付加重合体であってもよい。また、極性基が導入されているものも有効である。
【0020】
シクロオレフィンと鎖状オレフィンまたは/およびビニル基を有する芳香族化合物との共重合体を用いる場合、鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。ビニル基を有する芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、核アルキル置換スチレン等が挙げられる。このような共重合体において、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットが50モル%以下(好ましくは15〜50モル%)であってもよい。特に、シクロオレフィンと鎖状オレフィンとビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体を用いる場合、シクロオレフィンからなるモノマーのユニットは、上述したように比較的少ない量とすることができる。かかる三元共重合体において、鎖状オレフィンからなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%、ビニル基を有する芳香族化合物からなるモノマーのユニットは、通常5〜80モル%である。
【0021】
シクロオレフィン系樹脂の代表的市販品の例は、Topas(Ticona社製)、アートン(JSR(株)製)、ゼオノア(ZEONOR)(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(ZEONEX)(日本ゼオン(株)製)、アペル(三井化学(株)製)、オキシス(OXIS)(大倉工業社製)等が挙げられる。このようなシクロオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際には、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、たとえばエスシーナ(積水化学工業(株)製)、SCA40(積水化学工業(株)製)、ゼオノアフィルム((株)オプテス製)などの予め製膜されたシクロオレフィン系樹脂製フィルムの市販品を用いてもよい。
【0022】
シクロオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、シクロオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向(フィルムの長手方向)、その進行方向と垂直の方向(フィルムの幅方向)、あるいはその両方へ延伸される。加熱炉の温度は、通常、シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃の範囲が、採用される。延伸の倍率は、通常1.1〜6倍であり、好ましくは1.1〜3.5倍である。
【0023】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等の面で、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0024】
他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分やジオール成分が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、および1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。ジオール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じてそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記ジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を有するジカルボン酸成分および/またはジオール成分が少量用いられてもよい。
【0025】
ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコールまたはビスフェノールとから形成されるポリエステルである。中でも、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性および耐酸性に優れているため、好ましく使用される。このようなポリカーボネートとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのようなビスフェノール類から誘導されるポリカーボネートが例示される。
【0026】
(メタ)アクリル系樹脂は、特に限定されないが、一般にはメタクリル酸エステルを主たるモノマーとする重合体であり、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。この共重合体は通常、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルを含む単官能単量体組成物を、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の共存下に重合して得ることができる。また、(メタ)アクリル系樹脂に第三の単官能単量体を共重合させることもできる。
【0027】
第三の単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、および2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチル等のヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびアクリル酸等の不飽和酸類;クロロスチレンおよびブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類;ビニルトルエンおよびα−メチルスチレン等の置換スチレン類;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;無水マレイン酸および無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物類;フェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド類を挙げることができる。第三の単官能単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし、異なる複数種を併用してもよい。
【0028】
(メタ)アクリル系樹脂に多官能単量体を共重合させてもよい。多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびテトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコールまたはそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、またはこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトール等の多価アルコールを(メタ)アクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジル(メタ)アクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物等に(メタ)グリシジルアクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物が挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、およびネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
【0029】
(メタ)アクリル系樹脂は、さらに、共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度Tgは、80〜120℃の範囲であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂のTgを上記範囲に調整するには、通常、メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体の重合比、それぞれのエステル基の炭素鎖長若しくはそれが有する官能基の種類、または単量体全体に対する多官能単量体の重合比を適宜選択する方法等が採用される。
【0031】
(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。
【0032】
(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性等の観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。ここでいうアクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。かかる弾性重合体の例として、アルキルアクリレートを主成分とし、これに共重合可能な他のビニルモノマーおよび架橋性モノマーを共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート等、アルキル基の炭素数が1〜8程度のものが挙げられ、特に炭素数4以上のアルキル基を有するアクリレートが好ましく用いられる。このアルキルアクリレートに共重合可能な他のビニルモノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メチルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。また、架橋性モノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0033】
また、ゴム粒子を含まない(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムとの積層物を、第1フィルムとすることもできる。(メタ)アクリル系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、各々商品名で、“スミペックス”(住友化学株式会社製)、“アクリペット”(三菱レイヨン株式会社製)、“デルペット”(旭化成株式会社製)、“パラペット”(株式会社クラレ製)、“アクリビュア”(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0034】
第1フィルムの厚みは、通常0.9〜200μm程度の範囲であり、好ましくは1.5〜150μm、さらに好ましくは2〜100μmである。
【0035】
第1フィルムは、単層フィルムであってよく、複層フィルムであってもよい。多層フィルムが偏光板である場合、第1フィルムの偏光子への接着面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層、光拡散層、帯電防止層、防汚層等の各種表面処理層(コーティング層)を有していてもよい。
【0036】
第1フィルムと硬化性組成物の硬化物層との接着性を向上させるために、第1フィルムに硬化性組成物層を塗工する前に先立って、第1フィルムに表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線処理、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理が挙げられるが、均一な処理が可能であり、装置が簡便でコストが低いという点で、コロナ放電処理やラズマ処理などが特に好ましい。
【0037】
第1フィルムは、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物などの紫外線吸収剤や、フェニルホスフェート系化合物、フタル酸エステル化合物などの可塑剤を含有していてもよい。
【0038】
(硬化性組成物の硬化物層)
硬化性組成物の硬化物層を形成するための硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性組成物であってよい。
【0039】
活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化することができる。活性エネルギー線硬化性組成物を用いる場合、多層フィルムの硬化性組成物の硬化物層は、当該活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物層である。
【0040】
活性エネルギー線硬化性組成物は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する組成物であってよく、好ましくは、かかるエポキシ系化合物を硬化性成分として含有する紫外線硬化性組成物である。ここでいうエポキシ系化合物とは、分子内に平均1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0041】
好適に使用できるエポキシ系化合物の具体例は、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルのような脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ系化合物である脂環式エポキシ系化合物を含む。
【0042】
活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化性成分として、上記エポキシ系化合物の代わりに、又はこれとともにラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有することができる。(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物を挙げることができる。
【0043】
活性エネルギー線硬化性組成物は、カチオン重合によって硬化するエポキシ系化合物を硬化性成分として含む場合、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。また、活性エネルギー線硬化性組成物が(メタ)アクリル系化合物のようなラジカル重合性硬化性成分を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、チオキサントン系開始剤、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等を挙げることができる。
【0044】
硬化性組成物の硬化物層の厚みは、例えば0.1〜10μmであってよく、0.2〜4μmであることが好ましい。
【0045】
(第2フィルム)
多層フィルムが第2フィルムを有する場合、第2フィルムとしては、例えば偏光子等が挙げられる。
【0046】
偏光子は、例えば二色性色素が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムで構成される。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルおよびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体等が例示される。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000、好ましくは1500〜5000の範囲である。
【0047】
偏光子は、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程を経て、製造することができる。
【0048】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは、2〜80μm程度であることができる。
【0049】
(多層フィルムの製造装置)
以下、図面を参照しながら多層フィルムの製造装置を説明する。各図において同一部分または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる多層フィルム17の製造装置を模式的に示す。
図1において矢印は、第1フィルム11および多層フィルム17の搬送方向を示す。
図1に示す多層フィルム17の製造装置は、第1フィルム11の片面に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工装置12により塗工して硬化性組成物層を形成するための塗工部と、第1フィルムと硬化性組成物層とを含む積層体13(以下、単に積層体13ともいう)に向けて、活性エネルギー線照射装置14より活性エネルギー線15を照射する照射部と、積層体13を、活性エネルギー線15の照射直下で搬送するためのテープ付ロール16を有する搬送部を備える。
【0051】
図1に示される製造装置では、第1フィルム11は、ロール状に巻回された状態から連続的に繰り出され、多層フィルム17は、ロール状に巻取ることができる。
【0052】
(塗工部)
塗工部は、第1フィルム11に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工して第1フィルム11上に硬化性組成物層を形成するための塗工装置12を少なくとも1つ含むことができる。
【0053】
塗工装置12としては、第1フィルム11に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工することができれば特に制限されないが、例えばドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等が挙げられる。このうち、薄膜塗布、パスラインの自由度、幅広への対応などを考慮すると、塗工装置12としてはグラビアロールが好ましい。
【0054】
塗工された活性エネルギー線硬化性組成物の塗工厚(硬化前の硬化性組成物層の厚み)は、好ましくは約0.1〜10μmであり、より好ましくは0.2〜4μmである。
【0055】
活性エネルギー線硬化性組成物は、調製後、通常は15〜40℃の範囲内の所定温度±5℃(例えば所定温度が30℃である場合、30℃±5℃)、好ましくは±3℃、より好ましくは±1℃に調整された環境下で塗工される。
【0056】
積層体13が、硬化性組成物層を有する領域と、硬化性組成物層を有しない領域とを有する場合、硬化性組成物層を有しない領域は、第1フィルム11の幅方向において端部から例えば1〜100mmの領域であってよく、好ましくは5〜75mmの領域、より好ましくは10〜50mmの領域であってよい。硬化性組成物層を有しない領域が、第1フィルム11の幅方向において端部から例えば10〜50mmの領域である場合、多層フィルムが蛇行した場合でも、活性エネルギー線硬化性組成物がロール16に付着しにくくなる傾向がある。
【0057】
(照射部)
照射部は、積層体13に向けて活性エネルギー線を照射するための活性エネルギー線照射装置14を少なくとも1つ含むことができる。
【0058】
活性エネルギー線15の照射に用いる光源は、特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する光源であることが好ましい。このような光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。活性エネルギー線の照射は複数回に分けて行なわれることが好ましい。
図1には、1つの光源(活性エネルギー線照射装置14)を配置して、活性エネルギー線の照射を1回行う場合を示しているが、これに限定されることなく、例えば2つ以上の光源を配置して活性エネルギー線の照射を2回以上行ってもよい。
【0059】
活性エネルギー線硬化性組成物への各回の光照射強度は、組成物の組成ごとに決定されるものであって特に限定されないが、10〜5000mW/cm
2であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性組成物への光照射強度が10mW/cm
2未満であると、反応時間が長くなりすぎ、5000mW/cm
2を超えると、光源から輻射される熱および活性エネルギー線硬化性組成物の重合時の発熱により、活性エネルギー線硬化性組成物の構成材料である硬化性樹脂などの黄変や第1フィルム11の劣化を生じる可能性がある。なお、照射強度は、好ましくは重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度であり、より好ましくは波長400nm以下の波長領域における強度であり、さらに好ましくは波長280〜320nmの波長領域における強度である。
【0060】
活性エネルギー線15が紫外線である場合、照射部では、積層体13に向けて長手方向(搬送方向)に100〜800N/mの張力をかけながら、照射時間が0.1秒以上となるようなライン速度で積層体13を搬送することが好ましい。活性エネルギーを照射する合計時間は、硬化性組成物層14中の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化できる時間であれば特に制限されないが、例えば積算光量が30mJ/cm
2以上となる時間であればよい。
【0061】
(搬送部)
搬送部は、テープが貼付された領域を外周面に有するテープ付ロール16(以下、単に「ロール16」ともいう)を有する。ロール16は、積層体13を、活性エネルギー線15の照射直下で搬送するためのロールであり、その表面に積層体13を密着させながら搬送させ、その過程で活性エネルギー線照射装置14からの活性エネルギー線15により接着剤を重合硬化させる。活性エネルギー線硬化性組成物を重合硬化させる上で、ロール16の直径は特に限定されない。ロール16は、ライン速度に応じた回転速度で回転駆動させてもよい。ロール16は、活性エネルギー線15の照射による重合硬化時に生じる熱を放熱させるための冷却ロールとして作用させてもよい。その場合、冷却ロールの表面温度は、4〜30℃に設定されることが好ましい。
【0062】
ロール16は、外周表面が鏡面仕上げされていてもよい。ロール16の外周面が鏡面仕上げされている場合、照射した活性エネルギー線15がロール16の外周面において反射することにより、活性エネルギー線15を照射する面とは反対側の面からも活性エネルギー線硬化性組成物の硬化を促進させ易くなる傾向にある。
【0063】
図2は、ロール16を模式的に示す。
図2では、ロール16は、外周にテープ21が貼付され、積層体13の硬化性組成物層を有しない領域22と接触し、硬化性組成物層を有する領域23とは接触していない。
【0064】
テープ21は、ロール本体の外周に着脱可能に貼付される。ロール16が活性エネルギー線の照射直下に配置される場合、ロール16上に付着した活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線が照射されることにより硬化した場合であっても、テープ21を貼変えることにより、異物の剥落やフィルムの損傷が抑制可能となり、ロールの交換を行うことによる生産効率の低下が生じにくくなる。
【0065】
テープ21が貼付された領域は、テープ21がロール外周面を1周以上周回して貼付された領域であることが好ましく、テープ21がロール外周面を1周以上2周以下周回して貼付された領域であることがより好ましい。テープ21がロール外周面を1周以上周回して貼付される場合、活性エネルギー線硬化性組成物がロール表面に直接付着しにくくなる傾向にある。
【0066】
テープ21が貼付された領域は、積層体13の幅方向における端部がテープ21上を搬送されるように貼付すればよく、ロール表面全部を覆うように貼付してもよい。テープ21は、搬送される積層体13の幅方向における寸法に応じて、ロール16の幅方向において貼付する位置を調節することができる。積層体13の幅方向における端部がテープ21上を搬送するようにテープ21が貼付される場合、積層体13からはみ出した活性エネルギー線硬化性組成物がロール表面に直接付着するのを抑制し易くなる傾向にある。
【0067】
テープ21は、ロール16の幅方向において例えばロール端部から1〜750mmの範囲でロール外周に貼付することができるが、好ましくは25〜700mmの範囲で、より好ましくは50〜600mmの範囲でロール外周に貼付される。テープ21が50〜600mmの範囲でロール外周に貼付される場合、活性エネルギー線硬化性組成物の積層体13からのはみ出しや多層フィルムの蛇行によるロール表面への付着が十分に抑制され、硬化性組成物層の硬化の均一性および冷却性が確保し易くなる傾向にある。
【0068】
積層体13の幅方向における端部がテープ21上を搬送するようにテープ21が貼付される場合、テープ21が貼付された領域は、積層体13と接しない領域を少なくとも有することが好ましい。積層体13の幅方向における端部がテープ21上を搬送し、およびテープ21が貼付された領域が積層体13と接しない領域を有する場合、積層体13と接しない領域は、積層体13の幅方向における端部から例えば1〜745mmまでの領域であってよく、端部から好ましくは25〜695mmまでの領域であり、端部からより好ましくは50〜595mmまでの領域である。テープ21が貼付された領域が積層体13と接しない領域を有する場合、積層体13の蛇行によるロール表面への活性エネルギー線硬化性組成物の付着が抑制され易くなる傾向にある。積層体13の幅方向における端部は、通常、積層体13を構成する各フィルムおよび層のうち幅方向における寸法が最も大きいフィルムまたは層の幅方向における端部となる。
【0069】
積層体13が上述の硬化性組成物層を有しない領域22と硬化性組成物層を有する領域23とを有する場合、ロール16のテープ21が貼付された領域は、積層体13の硬化性組成物層を有しない領域22と接するが、硬化性組成物層を有する領域23と接しないことが好ましい。ロール16のテープ21が貼付された領域が、積層体13の硬化性組成物層を有しない領域22と接するが、硬化性組成物層を有する領域23と接しない場合、ロール16が鏡面仕上げされた表面を有するときに活性エネルギー線の鏡面での反射が阻害されず、硬化性組成物層が均一に硬化され易くなり、また、硬化性組成物層の冷却効果が得られ易くなる傾向にある。
【0070】
テープ21と硬化性組成物層を有しない領域22とが接触する領域のロール幅方向における長さは、例えば1〜100mmであってよく、好ましくは5〜75mmである。テープ21と硬化性組成物層を有しない領域22とが接触する領域のロール幅方向における長さが5〜75mmであれば、フィルムがスリップすることなく搬送し易くなる傾向にある。
【0071】
テープ21としては、例えばポリイミドフィルム、ふっ素樹脂フィルム、ビニル樹脂フィルム、アルミ箔上にシリコーン系またはアクリル系粘着剤等の粘着剤からなる粘着剤層が形成されたもの等が挙げられる。ロール16は活性エネルギー線の照射直下に配置されることから、テープ21は、耐紫外線性および耐熱性を有し、脱着が容易な粘着剤を有するものが好ましく、このようなテープの例としては、ポリイミドフィルム上にシリコーン系粘着剤層が形成されたテープ等が挙げられる。ポリイミドフィルムは、カプトン(登録商標)フィルムであってよい。ポリイミドフィルム上にシリコーン系粘着剤層が形成されたテープの代表的市販品の例としては、東レ・デュポン株式会社製Hタイプ 100H/100V等が挙げられる。
【0072】
テープ21は、付着した活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物が剥落しにくい材質からできているものも好ましい。このような材質としては、例えば、ポリイミドフィルム、ふっ素樹脂フィルム、ビニル樹脂フィルム等が挙げられる。中でもポリイミドフィルムは、硬化物が剥落しにくく、耐熱性および耐紫外線性の観点から好ましい。
【0073】
テープ21の厚みは、例えば5〜150μmであってよく、12〜50μmであることが好ましい。テープの厚みが12〜50μmである場合、テープの強度が十分に確保される傾向にあり、テープをロールに巻き付けたときに積層体13の搬送においてスリップや蛇行が生じにくくなる厚みとなり、テープを重ねて貼付したときでも積層体13の搬送に悪影響を及ぼしにくい傾向がある。
【0074】
搬送部は、ロール16の他に更なるロールを1以上有してもよい。更なるロールは、多層フィルムの搬送、多層フィルムの張力調整等の目的で配置されるものであってよい。更なるロールは、フィルムの片面のみを支持するガイドロールや、フィルムの両面側に配置され、フィルムを両側から支持するニップロール等であってよい。ガイドロールおよびニップロールはそれぞれ、駆動ロールであってよく、フリーロールであってもよい。更なるロールが、塗工部の始めから照射部の終わりまでの間の搬送部に配置される場合、テープ付ロールであってもよい。搬送部は、ロール16の他にテープ付ロールを複数有していてもよい。
【0075】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る多層フィルム100の製造装置を模式的に示す。多層フィルム100は、第1フィルム/硬化性組成物層の硬化物/第2フィルム/硬化性組成物層の硬化物/第3フィルムをこの順に有する構成である。
図3において矢印は、第1フィルム101、第2フィルム102、第3フィルム103および多層フィルム100の搬送方向を示す。
図3に示す多層フィルム100の製造装置は、第1フィルム101および第3フィルム103の片面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化性組成物を塗工装置121および122により塗工して硬化性組成物層を形成するための塗工部と、第1フィルム101および第3フィルム103をそれぞれ硬化性組成物層を介して、貼合ロール131および132により第2フィルム102と貼合する貼合部と、第1フィルム101と硬化性組成物層とを含む積層体111(以下、積層体111ともいう)および第3フィルム103と硬化性組成物層とを含む積層体112(以下、積層体112ともいう)に向けて活性エネルギー線照射装置141および142よりそれぞれ活性エネルギー線151および152を照射する第1照射部と、多層フィルム100を、活性エネルギー線151および152の照射直下で搬送するためのテープ付ロール160を有する搬送部と、積層体111、第2フィルムおよび積層体112とを含む積層体113(以下、積層体113ともいう)に向けて、第2活性エネルギー線照射装置171よりそれぞれ活性エネルギー線181を照射する第2照射部とを備える。第2照射部では、第2の活性エネルギー線照射装置171は、活性エネルギー線硬化性組成物を完全に重合硬化させるための装置であり、第1照射部での活性エネルギー線照射後において活性エネルギー線硬化性組成物が完全に重合硬化する場合には省略することができる。最終的に、多層フィルム100は、巻取部において巻取ロール191にロール状に巻取ることができる。
図3に示される製造装置では、第1フィルム101、第2フィルム102および第3フィルム103は、ロール状に巻回された状態から連続的に繰り出すことができる。テープ付ロール160は、上述の第1実施形態に係る製造装置におけるテープ付ロール16について例示したものを用いることができる。
【0076】
(第2照射部)
活性エネルギー線照射装置141、142による活性エネルギー線の積算光量が不十分な場合は、第2活性エネルギー線照射装置171を設け、活性エネルギー線181を追加照射させ、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化を促進することが好ましい。第1照射部と第2照射部とを合わせた積算光量が10mJ/cm
2以上、好ましくは10〜5,000mJ/cm
2となるように設定されることが好ましい。
【0077】
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化を確実に行うためには、例えば無電極DバルブランプであるFUSION製「Light Hammer 10」をフィルム走行に対して横断するように並べる方法などが挙げられる。
【0078】
(貼合部)
貼合部では、ガイドロール192、193を介して送られる積層体111および積層体112と、第2フィルム102とを、貼合ロール131および132の間に挟んだ状態で、例えば貼合ロール132を貼合ロール131の方向に押圧することで、第1フィルム101、第2フィルム102および第3フィルム103を貼合する。
【0079】
貼合ロール131、132の材質としては、金属ロールやゴムロールが挙げられる。一対の貼合ロール131、132の一方が金属ロールであり、他方がゴムロールであってもよい。金属ロールの母材としては、種々公知の材質を用いることができるが、好ましくはSUS304であり、表面にはクロムめっき処理が施されていることがより好ましい。また、ゴムロールの材質は、特に限定されないが、EPDM、NBR、ウレタン、タイタン、シリコーン等が挙げられる。ゴムロールの硬度は、特に限定されないが、通常60〜100°であり、好ましくは85〜95°である。なお、ゴムロールの硬度は、JISK6253に準拠した硬度計で測定することができる。
【0080】
金属ロールとゴムロールの押付圧は、富士フィルム製ツーシートタイププレスケース(超低圧用)における瞬間圧が0.7〜2.3MPaであることが好ましい。貼合ロール131、132の直径は、特に限定されないが、通常は50〜400mmである。また、二本の(一対の)貼合ロール131、132の直径は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0081】
(搬送用ロール)
本発明の一態様に係る搬送用ロール(以下、搬送用ロールともいう)は、第1フィルムと第1フィルム上に形成された硬化性組成物層とを少なくとも有する積層体の搬送用ロールであり、搬送用ロールは、テープが貼付された領域を外周面に有し、硬化性組成物層は、活性エネルギー線硬化性組成物から構成され、活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化が開始していないか、または硬化が開始しているが完了していない。
【0082】
搬送用ロールが搬送する積層体は、上述の多層フィルムの製造装置において説明した積層体であってよい。また、多層フィルムは、第2フィルムおよび第3フィルムを含むものであってよく、第2フィルムおよび第3フィルムは、上述の多層フィルムの製造装置において説明した第2フィルムおよび第3フィルムであってよい。
【0083】
搬送用ロールは、硬化性組成物層中に含まれる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化が開始していないか、または硬化が開始しているが完了していない積層体を搬送するためのロールであり、例えば上述の多層フィルムの製造装置において説明した活性エネルギー線の照射直下で搬送するためのロールであってよい。
【0084】
搬送用ロールの具体的な例は、上述の多層フィルムの製造装置において説明した搬送部が有するテープ付ロール16において例示したものがそのまま適用できる。多層フィルムの搬送に搬送用ロールを用いる場合、テープを貼変えることにより、ロールを交換することなく、フィルムの損傷や異物のフィルムへの付着を抑制することが可能となる。
【実施例】
【0085】
[第1フィルム]
日本ゼオン株式会社製「ゼオノアフィルム」、厚み:60μm
【0086】
[第3フィルム]
コニカミノルタオプト株式会社製「KC6UAW」、厚み:60μm
【0087】
[活性エネルギー線硬化性組成物1]
エポキシ樹脂系紫外線硬化性接着剤(ADEKA株式会社製 KRシリーズ)
【0088】
[第2フィルム(偏光フィルム)]
ポリビニルアルコールの原反フィルムとしては、重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚み75μm、幅3000mmの長尺のポリビニルアルコールフィルム「OPLフィルム M−7500(日本合成製)」を用いた。延伸は、処理槽前後の駆動ニップロールに周速差をつけて行った。
まず、原反フィルムが弛まないように、フィルムの緊張状態を保ったまま、30℃の純水が入った膨潤槽に80秒間浸漬し、フィルムを十分に膨潤させた。膨潤槽での膨潤に伴う入口と出口のロール速度比は1.2であった。ニップロールでの水切りを行った後、30℃の純水が入った水浸漬槽に160秒間浸漬した。この槽中での機械方向の延伸倍率は1.09倍とした。
次に、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水が重量比で0.02/2.0/100の水溶液が入った染色槽に浸漬しつつ、延伸倍率約1.5倍で一軸延伸を行った。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で12/3.7/100の水溶液が入ったホウ酸槽に55.5℃で130秒間浸漬しつつ、原反からの積算延伸倍率が5.7倍になるまで一軸延伸を行った。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で9/2.4/100の水溶液が入ったホウ酸槽に40℃で60秒間浸漬した。さらに、水洗槽にて8℃の純水で約16秒間洗浄し、その後、約60℃の乾燥炉、次に約85℃の乾燥炉を順次通過させ、それら乾燥炉での滞留時間を合計160秒間として乾燥を行った。こうして、ヨウ素が吸着配向された厚み28μmの偏光フィルムを得た。
【0089】
[実施例1]
上記第2フィルムを連続的に搬送するとともに、長尺の第1フィルムおよび長尺の第3フィルムを連続的に搬送し、第1フィルムおよび第3フィルム上にそれぞれ活性エネルギー線硬化性組成物1を、第1フィルムおよび第3フィルムの幅方向において端部から30mmの領域には硬化性組成物層を形成させずに塗工厚約3.5μmでグラビアロールにより塗工した後、貼合ロール間に通して第1フィルム/硬化性組成物層/第2フィルム/硬化性組成物層/第3フィルムからなる積層体を得た。引き続き、得られた積層体を搬送し、長手方向に600N/mの張力を掛け、ロール幅方向においてフィルム端部から30mmの領域にテープ(東レ・デュポン 株式会社製 Hタイプ 100H/100V )を外周に1回周回させた冷却ロールに密着させながらライン速度25m/分で移送し、メタルハライドランプ2灯(GS−YUASA社製、1灯の電力量120W/cm)から照射される紫外線中を通過させて第1の活性エネルギー線照射工程を行い、その後に設けられた無電極Dバルブランプ1灯(Fusion社製「Light Hammer 10」、1灯の電力量216W/cm)から照射される紫外線中を通過させて第2の活性エネルギー線照射工程を行い、多層フィルムを作製した。多層フィルムの端部はテープ上を通過し、硬化性組成物層を有する領域はテープ上を通過しなかった。
【0090】
多層フィルムの作成中、冷却ロールのテープ上に活性エネルギー線硬化性組成物1が付着したため、冷却ロールに貼付けたテープの張替えを実施したところ、10分/回程度の設備停止時間を要した。
【0091】
[比較例1]
冷却ロールにテープを貼付しなかったこと以外は実施例1と同様にして多層フィルムを作製したところ、冷却ロール上に活性エネルギー線硬化性組成物1が付着/硬化し、多層フィルムと接触したことにより硬化性組成物起因のピッチ打痕が発生した。この為、冷却ロール上から付着した硬化性組成物の直接除去を試みたが困難であり、冷却ロール交換に4時間/回 程度の設備停止時間を要した。