(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビニルエステル(A)が、エポキシ当量が135〜500の範囲であるエポキシ樹脂(a1)と(メタ)アクリル酸(a2)との反応物である請求項1〜3のいずれか1項記載の成形用樹脂組成物。
前記エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基(EP)と前記(メタ)アクリル酸(a2)のカルボキシル基(COOH)とのモル比(COOH/EP)が0.6〜1.1の範囲である請求項4又は5記載の成形用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の成形用樹脂組成物は、ビニルエステル(A)、不飽和単量体(B)、ポリイソシアネート(C)、及び重合開始剤(D)を必須原料とする成形用樹脂組成物であって、前記重合開始剤(D)が、一般式(1)で表される化合物(D1)、ベンゾピナコール又はそのエステル化合物(D2)、及びアゾ基を有する化合物(D3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であるものである。
【0011】
【化2】
(一般式(1)中のR
1はアリール基を表し、R
2は水素原子、アルキル基、又はアリールアルキル基を表す。)
【0012】
前記ビニルエステル(A)は、エポキシ樹脂(a1)と(メタ)アクリル酸(a2)とを反応させることで得られるが、成形時のフィルム剥ぎ性やタック性等の取り扱い性と流動性とのバランスがより向上することから、前記エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量は、135〜500の範囲が好ましく、175〜400の範囲がより好ましい。
【0013】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」の表記は、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方を表し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方を表すものである。
【0014】
また、前記エポキシ樹脂(a1)のエポキシ基(EP)と前記(メタ)アクリル酸(a2)のカルボキシル基(COOH)とのモル比(COOH/EP)は、成形品の強度や耐熱性等の機械的特性がより向上することから、0.85〜1.1の範囲が好ましい。
【0015】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールスルフィド型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、成形品強度と成形材料の取り扱い性、成形材料の成形時の流動性により優れることから2官能性芳香族系エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。エポキシ樹脂を2種以上併用した際の前記エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量は、全エポキシ樹脂の平均エポキシ当量とする。
【0016】
また、前記エポキシ樹脂(a1)としては、エポキシ当量を調整するために、ビスフェノールA等の二塩基酸により高分子量化し使用してもよい。
【0017】
前記エポキシ樹脂(a1)と前記(メタ)アクリル酸(a2)との反応は、エステル化触媒を用い、60〜140℃において行われることが好ましい。また、重合禁止剤等を使用することもできる。
【0018】
本発明の成形用樹脂組成物には、エポキシ樹脂を含んでいてもよいが、成形品の強度や耐熱性等の機械的特性がより優れることから、前記ビニルエステル(A)とエポキシ樹脂混合後の平均エポキシ当量は、4000以上であることが好ましい。
【0019】
前記不飽和単量体(B)としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−プロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−メチルスチレン、o−エチルスチレン、o−プロピルスチレン、o−イソプロピルスチレン、m−メチルスチレン、m−エチルスチレン、m−プロピルスチレン、m−イソプロピルスチレン、m−ブチルスチレン、メシチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、4−ブテニルスチレン等のアルキルスチレン、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、o−フルオロスチレン、o−メチル−p−フルオロスチレン等のハロゲン化スチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン、ヒドロキシスチレン、シアノスチレン、ビニル安息香酸エステル等のスチレン系化合物;1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン等のジビニルベンゼン系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0020】
前記不飽和単量体(B)は、成形作業時の臭気を抑制できるとともに、高温単時間成形が可能となることから、引火点が100℃以上であることが好ましく、それらの中でも、より高強度の成形材料が得られることから、芳香族を有する不飽和単量体がより好ましく、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレートがさらに好ましい。
【0021】
なお、本発明における引火点は、JISK2265−4:2007に規定されたクリーブランド開放法により測定した引火点とする。
【0022】
前記ビニルエステル(A)と前記不飽和単量体(B)との質量比((A)/(B))は、炭素繊維への樹脂含浸性、取り扱い性(タック性)と硬化性とのバランスがより向上することから、40/60〜85/15の範囲であるが、50/50〜70/30の範囲が好ましい。
【0023】
また、前記ビニルエステル(A)と前記不飽和単量体(B)との混合物の粘度は、
炭素繊維への樹脂含浸性がより向上することから、200〜8000mPa・s(25℃、単一円筒形回転粘度計)の範囲が好ましい。
【0024】
前記ポリイソシアネート(C)は、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−体、2,4’−体、又は2,2’−体、若しくはそれらの混合物)、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体、ヌレート変性体、ビュレット変性体、ウレタンイミン変性体、ジエチレングリコールやジプロピレングリコール等の数平均分子量1,000以下のポリオールで変性したポリオール変性体等のジフェニルメタンジイソシアネート変性体、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体、ビュレット変性体、アダクト体、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらの中でも、取り扱い性(フィルム剥離性・タック性)に優れる成形材料が得られることから、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体がより好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体としては、カルボジイミド基を有するものの他に、カルボジイミド基に更にイソシアネート基が付加してウレタンイミン構造を有するものを含む。また、これらのポリイソシアネート(C)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0025】
また、成形時のフィルム剥ぎ性やタック性等の取り扱い性と流動性とのバランスがより向上することから、前記ポリイソシアネート(C)のイソシアネート基(NCO)と前記ビニルエステル(A)の水酸基(OH)とのモル比(NCO/OH)は、0.1〜0.85の範囲が好ましく、0.25〜0.8の範囲がより好ましい。
【0026】
前記重合開始剤(D)は、成形品からの揮発性有機化合物の放散を抑制する上で、一般式(1)で表される化合物(D1)、ベンゾピナコール又はそのエステル化合物(D2)、及びアゾ基を有する化合物(D3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることが重要である。
【0027】
【化3】
(一般式(1)中のR
1はアリール基を表し、R
2は水素原子、アルキル基、又はアリールアルキル基を表す。)
【0028】
前記重合開始剤(D1)は、成形品からの揮発性有機化合物の放散をより低減できることから、前記一般式(1)で表される化合物の中でも、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルα−クミルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。なお、これらの重合開始剤(D1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0029】
前記重合開始剤(D1)の含有量としては、優れた硬化特性及び保存安定性を維持しながら、成形品からの揮発性有機化合物の放散をより低減できることから、前記ビニルエステル(A)と前記不飽和単量体(B)との総量に対して、0.1〜3質量%の範囲が好ましく、0.3〜2質量%の範囲がより好ましい。
【0030】
前記重合開始剤(D2)は、成形品からの揮発性有機化合物の放散を抑制する上で、ベンゾピナコール又はそのエステル化合物であることが重要である。なお、これらの重合開始剤(D2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0031】
前記重合開始剤(D2)の含有量としては、優れた硬化特性及び保存安定性を維持しながら、成形品からの揮発性有機化合物の放散をより低減できることから、前記ビニルエステル(A)と前記不飽和単量体(B)との総量に対して、0.05〜5質量%の範囲が好ましく、0.1〜3質量%の範囲がより好ましい。
【0032】
前記重合開始剤(D3)は、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等が挙げられるが、前記不飽和単量体(B)の硬化反応を効果的に促進することにより、揮発性有機化合物の放散がより抑制できることから、10時間半減期温度が60〜100℃の範囲であることが好ましい。なお、これらの重合開始剤(D3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0033】
また、前記重合開始剤(D3)は、成形品からの揮発性有機化合物の放散をより抑制できることから、下記一般式(2)で表されるものであることがより好ましく、これらの中でも、樹脂への溶解性に優れることから、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロ二トリル)、又は1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)がさらに好ましく、成形品からのVOCの放散をより低減できることから、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)が特に好ましい。
【0034】
【化4】
(一般式(2)中のR
3はアルキル基を表し、R
4はアルキル基、又はアリール基を表し、R
5はシアノ基、又はアセトキシ基を表す。)
【0035】
前記重合開始剤(D3)の含有量としては、優れた硬化特性及び保存安定性を維持しながら、成形品からの揮発性有機化合物の放散をより低減できることから、前記ビニルエステル(A)と前記不飽和単量体(B)との総量に対して、0.1〜3質量%の範囲が好ましく、0.3〜2質量%の範囲がより好ましい。
【0036】
本発明の成形用樹脂組成物には、前記重合開始剤(D)以外の重合開始剤を併用してもよいが、成形品からの揮発性有機化合物の放散を抑制する上で、全重合開始剤中の前記重合開始剤(D)の比率は50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
【0037】
本発明の繊維強化成形材料は、上記した成形用樹脂組成物、及び強化繊維(E)を含有するものである。
【0038】
前記強化繊維(E)としては、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維等の有機繊維などが挙げられるが、より高強度、高弾性の成形品が得られることから、炭素繊維又はガラス繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維(E)は単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0039】
前記ガラス繊維としては、例えば、含アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス等を原料にして得られたものを使用することができるが、経時劣化も少なく機械的特性が安定している無アルカリガラス(Eガラス)を使用することが好ましい。
【0040】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できるが、これらの中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0041】
前記強化繊維(E)としては、例えば、撚糸、紡糸、紡績加工、不織加工したものを使用することができる。また、前記炭素繊維の形状としては、フィラメント、ヤーン、ロービング、ストランド、チョップドストランド、フェルト、ニードルパンチ、クロス、ロービングクロス、ミルドファイバー、ナノファイバー等のものを使用することができる。
【0042】
また、前記強化繊維(E)として使用される繊維束のフィラメント数は、樹脂含浸性及び成形品の機械的物性がより向上することから、1,000〜60,000の範囲が好ましい。
【0043】
本発明の繊維強化成形材料の成分中の、前記強化繊維(E)の含有率は、得られる成形品の機械的物性がより向上することから、25〜80質量%の範囲が好ましく、40〜70質量%の範囲がより好ましい。
【0044】
本発明の繊維強化成形材料の成分としては、前記ビニルエステル(A)、前記不飽和単量体(B)、前記ポリイソシアネート(C)、前記重合開始剤(D)、前記強化繊維(E)以外のものを使用してもよく、例えば、前記ビニルエステル(A)以外の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、重合禁止剤、硬化促進剤、充填剤、低収縮剤、離型剤、増粘剤、減粘剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、補強材、光硬化剤等を含有することができる。
【0045】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ビニルウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。また、これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0046】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂およびこれらを共重合等により変性させたものが挙げられる。また、これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0047】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅などの有機銅化合物、塩化銅、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどのニトロキシルラジカル化合物等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0048】
前記硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸類、バナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物が挙げられる。またアミン類として、N,N−ジメチルアミノ−p−ベンズアルデヒド、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジンのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、N−エチル−m−トルイジン、N−エチル−m−トルイジンのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、ジエタノールアニリン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0049】
前記充填剤としては、無機化合物、有機化合物があり、成形品の強度、弾性率、衝撃強度、疲労耐久性等の物性を調整するために使用できる。
【0050】
前記無機化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、石こう、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉等が挙げられる。
【0051】
前記有機化合物としては、セルロース、キチン等の天然多糖類粉末や、合成樹脂粉末等があり、合成樹脂粉末としては、硬質樹脂、軟質ゴム、エラストマーまたは重合体(共重合体)などから構成される有機物の粉体やコアシェル型などの多層構造を有する粒子を使用できる。具体的には、ブタジエンゴムおよび/またはアクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等からなる粒子、ポリイミド樹脂粉末、フッ素樹脂粉末、フェノール樹脂粉末などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0052】
前記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。好ましくは、ステアリン酸亜鉛、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス等が挙げられる。これらの離型剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0053】
前記増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物や金属水酸化物など、アクリル樹脂系微粒子などが挙げられ、本発明の繊維強化成形材料の取り扱い性によって適宜選択できる。これらの増粘剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0054】
本発明の繊維強化成形材料は、生産性に優れる観点及びデザイン多様性を有する成形性の観点から、シートモールディングコンパウンド(以下、「SMC」と略記する。)又はバルクモールディングコンパウンド(以下、「BMC」と略記する。)であることが好ましい。
【0055】
前記SMCの製造方法としては、通常のミキサー、インターミキサー、プラネタリーミキサー、ロール、ニーダー、押し出し機などの混合機を用いて、前記ビニルエステル(A)、前記不飽和単量体(B)、前記ポリイソシアネート(C)、前記重合開始剤(D)等の各成分を混合・分散し、得られた樹脂組成物を上下に設置されたキャリアフィルムに均一な厚さになるように塗布し、前記強化繊維(E)を前記上下に設置されたキャリアフィルム上の樹脂組成物で挟み込み、次いで、全体を含浸ロールの間に通して、圧力を加えて前記強化繊維(E)に樹脂組成物を含浸させた後、ロール状に巻き取る又はつづら折りに畳む方法等が挙げられる。さらに、この後に20〜60℃の温度で熟成を行うことが好ましい。キャリアフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンのラミネートフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等を用いることができる。
【0056】
前記BMCの製造方法としては、前記SMCの製造方法と同様に、通常のミキサー、インターミキサー、プラネタリーミキサー、ロール、ニーダー、押し出し機などの混合機を用いて、前記ビニルエステル(A)、前記不飽和単量体(B)、前記ポリイソシアネート(C)、前記重合開始剤(D)等の各成分を混合・分散し、得られた樹脂組成物に前記強化繊維(E)を混合・分散させる方法等が挙げられる。また、SMCと同様に20〜60℃の温度で熟成することが好ましい。
【0057】
本発明の成形品は、前記繊維強化成形材料より得られるが、生産性に優れる点とデザイン多様性に優れる観点からその成形方法としては、SMC又はBMCの加熱圧縮成形が好ましい。
【0058】
前記加熱圧縮成形としては、例えば、SMC、BMC等の成形材料を所定量計量し、予め80〜180℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めを行い、成形材料を賦型させ、0.1〜30MPaの成形圧力を保持することによって、成形材料を硬化させ、その後成形品を取り出し成形品を得る製造方法が用いられる。具体的な成形条件としては、金型内で金型温度100〜160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり1〜2分間、1〜10MPaの成形圧力を保持する成形条件が好ましく、生産性がより向上することから、金型温度120〜160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり30〜150秒間、1〜10MPaの成形圧力を保持する成形条件がより好ましい。
【0059】
本発明の繊維強化成形材料から得られる成形品は、曲げ強さ等に優れるとともに、揮発性有機化合物の放散が抑制されていることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、水酸基価は、樹脂試料1gをJIS K−0070の規定の方法に基づきアセチル化剤を用いて、規定温度及び時間で反応させた時に生成した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を測定した。また、エポキシ当量は、樹脂試料をJIS K−7236に準拠した規定の方法に基づき、試料と臭化アンモニウム塩の共存下、過塩素酸を滴下し、生成する臭化水素がエポキシ基を全て消費して過剰となったところを終点とし、規定の計算式を用いて算出した。酸価は、樹脂試料1gをJIS K−0070の規定の方法に基づき(メタ)アクリル酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)を測定した。
【0061】
(合成例1:ビニルエステル(A−1)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)661質量部、ビスフェノールA 58.8質量部、及び2−メチルイミダゾール0.36質量部を仕込み、120℃に昇温して3時間反応させ、エポキシ当量を測定した。エポキシ当量が設定通り240になったことを確認後、60℃付近まで冷却した後、メタクリル酸253質量部、及びt−ブチルハイドロキノン0.28質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール0.25質量部を入れ、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下、エポキシ当量が10080で、エポキシ当量4000以上を確認したので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価206mgKOH/gのビニルエステル(A−1)を得た。
【0062】
(合成例2:ビニルエステル(A−2)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン840LV」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量179)680質量部、メタクリル酸317質量部及びt−ブチルハイドロキノン0.28質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、90℃まで昇温した。ここに2−メチルイミダゾール0.65質量部を仕込み、110℃に昇温して10時間反応させると、酸価が6以下、エポキシ当量が4138でエポキシ当量が4000以上を確認したので、反応を終了した。60℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、水酸基価210mgKOH/gのビニルエステル(A−2)を得た。
【0063】
(実施例1:成形用樹脂組成物(1)の調製及び評価)
合成例1で得たビニルエステル(A−1)55質量部をフェノキシエチルメタクリレート45質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(三井化学株式会社製「コスモネートLL」、以下、「ポリイソシアネート(C−1)」と略記する。)20質量部、及びジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ株式会社製「パーカドックス BC−FF」、以下「DCPO」と略記する。)1質量部を混合し、成形用樹脂組成物(1)を得た。この成形用樹脂組成物(1)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であった。
【0064】
[繊維強化成形材料の作製]
上記で得られた成形用樹脂組成物(1)を、ポリエチレンとポリプロピレンのラミネートフィルム上に塗布量が平均1kg/m
2となるよう塗布し、この上に、炭素繊維ロービング(東レ株式会社製「T700SC−12000−50C」)を25mmにカットした炭素繊維(以下、炭素繊維(E−1)と略記する。)を繊維方向性が無く厚みが均一で炭素繊維含有率が50質量%になるよう空中から均一落下させ、同様に成形用樹脂組成物(1)を塗布したフィルムで挟み込み炭素繊維に樹脂を含浸させた後、45℃恒温機中に24時間放置し、SMCとして繊維強化成形材料(1)を得た。この繊維強化成形材料(1)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0065】
[成形品の作製]
上記で得られた繊維強化成形材料(1)をフィルムから剥離し、26.5cm×26.5cmにカットしたものを3枚重ね、30cm×30cmの平板金型の中央にセットし、プレス金型温度140℃、プレス時間5分間、プレス圧力12MPaで成形し、厚み3mmの平板状の成形品(1)を得た。
【0066】
[揮発性有機化合物(VOC)放散量の評価]
10〜25mgにカットした成形品を20mLバイアル瓶に総量2g秤量した後、バイアル瓶を120℃5hr加熱し、放散されたガスをFID−ガスクロマトグラフにて定量した。分析方法、成形品からのVOC放散量(μgC/g)計算方法はVDA277に準拠した。成形品からのVOC放散量(μgC/g)を下記の基準で評価した。
◎:100μgC/g未満
○:100μgC/g以上300μgC/g未満
△:300μg/g以上400μgC/g未満
×:400μg/g以上
【0067】
[曲げ強さの評価]
上記で得られた成形品から幅25mm、長さ150mmの試験片を切り出し、JIS K7074に準拠し、3点曲げ試験を行い、曲げ強さを測定した。
【0068】
(実施例2:成形用樹脂組成物(2)の調製及び評価)
実施例1で使用したDCPO 1質量部を、1.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形用樹脂組成物(2)、繊維強化成形材料(2)及び成形品(1)を得た後、各評価を行った。成形用樹脂組成物(2)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であり、繊維強化成形材料(2)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0069】
(実施例3:成形用樹脂組成物(3)の調製及び評価)
実施例1で使用したDCPO 1質量部を、DCPO 0.6質量部、及びt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ株式会社製「カヤエステルO」)0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形用樹脂組成物(3)、繊維強化成形材料(3)及び成形品(3)を得た後、各評価を行った。成形用樹脂組成物(3)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であり、繊維強化成形材料(3)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0070】
(実施例4:成形用樹脂組成物(4)の調製及び評価)
実施例1で使用したDCPO 1質量部を、t−ブチルα−クミルパーオキサイド(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックスT」、以下「TBCP」と略記する。)1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形用樹脂組成物(4)、繊維強化成形材料(4)及び成形品(4)を得た後、各評価を行った。成形用樹脂組成物(4)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であり、繊維強化成形材料(4)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0071】
(実施例5:成形用樹脂組成物(5)の調製及び評価)
実施例1で使用したDCPO 1質量部を、TBCP 0.5質量部、及びt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ株式会社製「カヤエステルO」)0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形用樹脂組成物(5)、繊維強化成形材料(5)及び成形品(5)を得た後、各評価を行った。成形用樹脂組成物(5)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であり、繊維強化成形材料(5)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0072】
(実施例6:成形用樹脂組成物(6)の調製及び評価)
合成例1で得たビニルエステル(A−1)55質量部をフェノキシエチルメタクリレート45質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、乳鉢で微粉に磨り潰したベンゾピナコール1質量部を混合・攪拌して、ベンゾピナコールの溶解を確認後、ポリイソシアネート(C−1)20質量部を混合し、成形用樹脂組成物(6)を得た。この成形用樹脂組成物(6)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であった。
実施例1で使用した成形用樹脂組成物(1)を成形用樹脂組成物(6)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維強化成形材料(6)及び成形品(6)を得た後、各評価を行った。繊維強化成形材料(6)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0073】
(実施例7:成形用樹脂組成物(7)の調製及び評価)
実施例6で使用した ベンゾピナコール1質量部を、ベンゾピナコール0.5質量部、及びDCPO 0.5質量部に変更した以外は、実施例6と同様にして、成形用樹脂組成物(7)、繊維強化成形材料(7)及び成形品(7)を得た後、各評価を行った。成形用樹脂組成物(7)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であり、繊維強化成形材料(7)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0074】
(実施例8:成形用樹脂組成物(8)の調製及び評価)
実施例6で使用した ベンゾピナコール1質量部を、ベンゾピナコール 0.5質量部に変更した以外は、実施例6と同様にして、成形用樹脂組成物(8)、繊維強化成形材料(8)及び成形品(8)を得た後、各評価を行った。成形用樹脂組成物(8)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であり、繊維強化成形材料(8)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0075】
(実施例9:成形用樹脂組成物(9)の調製及び評価)
合成例1で得たビニルエステル(A−1)55質量部をフェノキシエチルメタクリレート45質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)を1部混合・攪拌し、溶解確認後、ポリイソシアネート(C−1)20質量部を混合し、成形用樹脂組成物(9)を得た。この成形用樹脂組成物(9)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であった。
実施例1で使用した成形用樹脂組成物(1)を成形用樹脂組成物(9)に変更し、
繊維強化成形材料作製の恒温機温度45℃を25℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維強化成形材料(9)及び成形品(9)を得た後、各評価を行った。繊維強化成形材料(9)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0076】
(実施例10:成形用樹脂組成物(10)の調製及び評価)
実施例9で使用した 1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)1質量部を、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロ二トリル)1質量部に変更した以外は、実施例9と同様にして、成形用樹脂組成物(10)、繊維強化成形材料(10)及び成形品(10)を得た後、各評価を行った。成形用樹脂組成物(10)におけるモル比(NCO/OH)は0.68であり、繊維強化成形材料(10)の目付け量は、2kg/m
2であった。
【0077】
(比較例1:成形用樹脂組成物(R1)の調製及び評価)
合成例2で得たビニルエステル(A−2)70質量部をスチレン30質量部に溶解させた樹脂溶液100質量部に、ポリイソシアネート(C−1)10質量部、及びt−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ株式会社製「カヤカルボンAIC−75」) 1.0質量部を混合し、成形用樹脂組成物(R1)を得た。この成形用樹脂組成物(R1)におけるモル比(NCO/OH)は0.26であった。
【0078】
さらに、実施例1で使用した成形用樹脂組成物(1)を成形用樹脂組成物(R1)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維強化成形材料(R1)及び成形品(R1)を得た後、各評価を行った。
【0079】
上記で得られた成形用樹脂組成物(1)〜(10)及び(R1)の評価結果を表1及び2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
実施例1〜10の本発明の繊維強化成形材料から得られる成形品は、揮発性有機化合物の放散量が抑制され、曲げ強さに優れることが確認された。
【0083】
一方、比較例1は、本発明の必須成分である特定構造を有する重合開始剤を使用しない例であるが、成形品から多量の揮発性有機化合物を放散していることが確認された。