(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の水酸基含有マレイミド化合物>
本発明の水酸基含有マレイミド化合物は、前記式(1)で表される構造を有する。本発明の水酸基含有マレイミド化合物は、2位と6位に水酸基を有することを特徴とする。水酸基が1つであるヒドロキシフェニルマレイミドや水酸基を2つ含有する異性体(たとえば2,4−ジヒドロキシフェニルマレイミド)に比べエポキシ樹脂の硬化速度が速いことから、生産性や施工性に優れる。また、水酸基が3つ以上のマレイミド化合物である場合、結晶性が強すぎるため反応性自体が低くなる。
【0010】
<組成物>
本発明の組成物は、本発明の水酸基含有マレイミド化合物を含有する。特に好ましくはエポキシ樹脂を含有する組成物である。
本発明の水酸基含有マレイミド化合物はエポキシ樹脂との反応性に優れるため、硬化速度が速くなる。また、芳香環を有しかつマレイミド基との複合架橋が可能なため、耐熱性にも優れる。
【0011】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有していれば特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールスルフィド型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0012】
組成物が本発明の水酸基含有マレイミド化合物とエポキシ樹脂を含有する場合、本発明の水酸基含有マレイミド化合物とエポキシ樹脂の配合比率は、水酸基含有マレイミド化合物の水酸基当量とエポキシ当量の比率として1:2〜2:1が、硬化性や耐熱性の観点から好ましい。特に好ましくは1:1.5〜1.5:1である。
【0013】
<フィラー>
本発明の組成物は、更にフィラーを含有してもよい。フィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば無機微粒子が挙げられる。
【0014】
無機微粒子としては、例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ダイヤモンド等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;絶縁性に優れるものとしては、シリカ等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
【0015】
例えば無機微粒子としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ−ク等を挙げることができる。
また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。
【0016】
表面修飾をしたシリカ微粒子を用いてもよく、例えば、前記シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものがあげられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK−SD等が挙げられる。
【0017】
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。また一次粒子径は、5〜200nmの範囲が好ましい。5nm未満であると、分散体中の無機微粒子の分散が不十分となり、200nmを超える径では、硬化物の十分な強度が保持できないおそれがある。
【0018】
酸化チタン微粒子としては、体質顔料のみならず紫外光応答型光触媒が使用でき、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが使用できる。更に、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングさせて可視光に応答させるように設計された粒子についても用いることができる。酸化チタンにドーピングさせる元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素や、クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素が好適に用いられる。また、形態としては、粉末、有機溶媒中もしくは水中に分散させたゾルもしくはスラリーを用いることができる。市販の粉末状の酸化チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジルP−25、テイカ(株)製ATM−100等を挙げることができる。また、市販のスラリー状の酸化チタン微粒子としては、例えば、テイカ(株)TKD−701等が挙げられる。
【0019】
<繊維質基質>
本発明の組成物は、更に繊維質基質を含有してもよい。本発明の繊維質基質は、特に限定はないが、繊維強化樹脂に用いられるものが好ましく、無機繊維や有機繊維が挙げられる。
【0020】
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
【0021】
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
【0022】
中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。これらのうち、一種類のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
【0023】
本発明の繊維質基質は、繊維の集合体であってもよく、繊維が連続していても、不連続状でもかまわず、織布状であっても、不織布状であってもかまわない。また、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。また、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であってもかまわない。
【0024】
<分散媒>
本発明の組成物は、組成物の固形分量や粘度を調整する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、各種有機溶剤、液状有機ポリマー等が挙げられる。
【0025】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でもメチルエチルケトンが塗工時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
【0026】
前記液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG−900、NC−500:共栄社)、アクリルポリマー(フローレンWK−20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED−251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000;ビックケミー)などが挙げられる。
【0027】
<樹脂>
また、本発明の組成物は、本発明の前述した各種化合物以外の樹脂を有していてもよい。樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば公知慣用の樹脂を配合すればよく、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0028】
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、本発明により得られるアリル基含有マレイミド化合物以外のマレイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0029】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
<硬化剤>
本発明の組成物がエポキシ樹脂を有している場合には、さらに別の硬化剤を配合してもかまわない。硬化剤としては、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボキシル基含有硬化剤、チオール系硬化剤が挙げられる。
【0031】
アミン系硬化剤としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられる。
【0032】
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0033】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0034】
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0035】
また、本発明の組成物がエポキシ樹脂を有する場合、硬化促進剤を併用することもできる。硬化促進剤としてエポキシ樹脂の硬化反応を促す種々の化合物が使用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2-エチルー4−メチルーイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンではN,N−ジメチルー4−アミノピリジン(DMAP)、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0036】
<その他の配合物>
本発明の組成物は、その他の配合物を有していてもかまわない。例えば、触媒、重合開始剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
【0037】
<硬化物>
本発明の組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱分解性に優れることから、耐熱部材として好適に使用可能である。さらにエポキシ樹脂を含有する組成物は、版への密着性に優れることから、電子部材に好適に使用可能である。硬化物の成形方法は特に限定は無く、組成物単独で成形してもよいし、基材と積層することで積層体としてもかまわない。
【0038】
本発明の組成物を硬化させる場合には、熱硬化をおこなえばよい。熱硬化する際、公知慣用の硬化触媒を用いれば良い。
熱硬化を行う場合、1回の加熱で硬化させてもよいし、多段階の加熱工程を経て硬化させてもかまわない。
【0039】
硬化触媒を用いる場合には、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸類;p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の無機塩基類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン酸エステル類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、2-エチルー4−メチルーイミダゾール、1−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルー4−アミノピリジン(DMAP)等の各種の塩基性窒素原子を含有する化合物類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩等の各種の4級アンモニウム塩類であって、対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫又はステアリン酸錫など錫カルボン酸塩、;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトン過酸化物、t−ブチルパーベンゾエートなどの有機過酸化物等を使用することができる。触媒は単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0040】
また、本発明の水酸基含有マレイミド化合物は、炭素―炭素間二重結合を有することから、活性エネルギー線硬化を併用することもできる。活性エネルギー線硬化を行う場合、光重合開始剤を組成物に配合すればよい。光重合開始剤としては公知のものを使用すればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ベンゾフェノン類からなる群から選ばれる一種以上を好ましく用いることができる。前記アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等が挙げられる。前記ベンジルケタール類としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。前記ベンゾイン類等としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。光重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
熱硬化と活性エネルギー線硬化を併用して硬化させる場合、加熱と活性エネルギー線照射を同時に行っても良いし、別々に行っても良い。例えば、活性エネルギー線照射を行った後で熱硬化を行っても良いし、熱硬化の後に活性エネルギー線硬化を行っても良い。また、それぞれの硬化方法を2回以上組み合わせて行っても良く、用途に合わせて適宜硬化方法を選択すればよい。
【0042】
<積層体>
本発明の硬化物は基材と積層することで積層体とすることができる。
積層体の基材としては、金属やガラス等の無機材料や、プラスチックや木材といった有機材料等、用途によって適時使用すればよく、積層体の形状としても、平板、シート状、あるいは三次元構造を有していても立体状であってもかまわない。全面にまたは一部に曲率を有するもの等目的に応じた任意の形状であってよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。また、本発明の硬化物を基材とし、更に本発明の硬化物を積層してもかまわない。
回路基板や半導体パッケージ基板といった用途の場合、金属箔を積層することが好ましく、金属箔としては銅箔、アルミ箔、金箔、銀箔などが挙げられ、加工性が良好なことから銅箔を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の積層体において、硬化物層は、基材に対し直接塗工や成形により形成してもよく、すでに成形したものを積層させてもかまわない。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。
成形された組成物を積層する場合、未硬化または半硬化された組成物層を積層してから硬化させてもよいし、組成物を完全硬化した硬化物層を基材に対し積層してもよい。
また、本発明の硬化物に対して、基材となりうる前駆体を塗工して硬化させることで積層させてもよく、基材となりうる前駆体または本発明の組成物が未硬化あるいは半硬化の状態で接着させた後に硬化させてもよい。基材となりうる前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0044】
<繊維強化樹脂>
本発明の組成物が繊維質基質を有し、該繊維質基質が強化繊維の場合、繊維質基質を含有する組成物は繊維強化樹脂として用いることができる。
組成物に対し繊維質基質を含有させる方法は、本発明の効果を損なわない範囲であればとくに限定はなく、繊維質基質と組成物とを、混練、塗布、含浸、注入、圧着、等の方法で複合化する方法が挙げられ、繊維の形態及び繊維強化樹脂の用途によって適時選択することができる。
【0045】
本発明の繊維強化樹脂を成形する方法については、特に限定されない。板状の製品を製造するのであれば、押し出し成形法が一般的であるが、平面プレスによっても可能である。この他、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いることが可能である。またフィルム状の製品を製造するのであれば、溶融押出法の他、溶液キャスト法を用いることができ、溶融成形方法を用いる場合、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等が挙げられる。また、活性エネルギー線で硬化する樹脂の場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて硬化物を製造する事ができる。特に、熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂の主成分とする場合には、成形材料をプリプレグ化してプレスやオートクレーブにより加圧加熱する成形法が挙げられ、この他にもRTM(Resin Transfer Molding)成形、VaRTM(Vaccum assist Resin Transfer Molding)成形、積層成形、ハンドレイアップ成形等が挙げられる。
【0046】
<プリプレグ>
本発明の繊維強化樹脂は、未硬化あるいは半硬化のプリプレグと呼ばれる状態を形成することができる。プリプレグの状態で製品を流通させた後、最終硬化をおこなって硬化物を形成してもよい。積層体を形成する場合は、プリプレグを形成した後、その他の層を積層してから最終硬化を行うことで、各層が密着した積層体を形成できるため、好ましい。
この時用いる組成物と繊維質基質の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。
【0047】
<耐熱材料および電子材料>
本発明の組成物は、その硬化物が、ガラス転移温度が高く、耐熱分解性に優れることから、耐熱部材に好適に使用可能である。また、基材への密着性に優れることから、特に電子部材に好適に使用可能である。特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0048】
以下、代表的な製品について例を挙げて説明する。
【0049】
1.半導体封止材料
本発明の組成物から半導体封止材料を得る方法としては、前記組成物、及び硬化促進剤、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30〜95質量%の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0050】
2.半導体装置
本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜250℃で2〜10時間の間、加熱する方法が挙げられる。
【0051】
3.プリント回路基板
本発明の組成物からプリント回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜300℃で10分〜3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0052】
4.ビルドアップ基板
本発明の組成物からビルドアップ基板を得る方法は、例えば以下の工程が挙げられる。まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程(工程1)。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程(工程2)。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程(工程3)。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0053】
5.ビルドアップフィルム
本発明の組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、基材である支持フィルム(Y)の表面に、上記組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0054】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0055】
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における上記組成物の層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0056】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0057】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する硬化性樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0058】
上記のようにして得られたビルドアップフィルムを用いて多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70〜140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0059】
6.導電ペースト
本発明の組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例】
【0060】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
尚、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、
1Hおよび
13C−NMR、FD−MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0061】
HPLC:アジレントテクノロジー製「LC1260」
分析条件:下記表1
【0062】
【表1】
【0063】
検出器:フォトダイオードアレイ検出器
流量:1.0mL/分
使用カラム:Poroshell 120 EC−C18
【0064】
1H−NMR:JEOL RESONANCE製「JNM−ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:DMSO−d
6
試料濃度:30質量%
【0065】
13C−NMR:JEOL RESONANCE製「JNM−ECA600」
磁場強度:150MHz
積算回数:320回
溶媒:DMSO−d
6
試料濃度:30質量%
【0066】
FD−MS:日本電子株式会社製「JMS−T100GC AccuTOF」
測定範囲:m/z=50.00〜2000.00
変化率:25.6mA/min
最終電流値:40mA
カソード電圧:−10kV
【0067】
DSC:日立ハイテクサイエンス社製「X−DSC7000」
雰囲気:窒素
昇温プログラム:30℃5分保持→昇温速度10℃/分→350℃2分保持
【0068】
〔合成例1〕ヒドロキシフェニルマレイミド(A)の合成
Polymer Vol.37 No.16,3721−3727;1996,の文献に記載の方法に従って、東京化成工業社製の4-アミノフェノールを原料としてヒドロキシフェニルマレイミド(A)を合成した。
【0069】
【化2】
【0070】
1H−NMR:δ9.69(1H)、7.13−7.07(4H)、6.85−6.82(2H)
13C−NMR:δ170.26ppm、156.98ppm、134.48ppm、128.35ppm、122.47ppm、115.37ppm
マススペクトル:M
+=189
融点(DSCピークトップ):187℃
純度:95.0%(HPLC面積%、検出波長275nm)
【0071】
<合成例2>2,6−ジヒドロキシアニリン(B)の合成
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた500mLフラスコに東京化成工業社製の2−ニトロレソルシノールを25.50g(0.164mol)、10%パラジウム担持炭素(Pd/C)2.60g、メタノール320mLを仕込み室温で撹拌した。水素雰囲気下、室温で36時間水素還元反応を行った。反応液をろ過後、ろ液を減圧濃縮したうえ、80℃で12時間真空乾燥を行い粗生成物を20.22g得た。
得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1、体積比)で分離精製することで、2,6−ジヒドロキシアニリンを16.60g(収率80.9%)得た。
【0072】
【化3】
【0073】
得られた化合物について、各種スペクトルを測定した結果を示す。
1H−NMR:δ9.00−8.60ppm(2H)、6.28−6.21ppm(3H)、4.10−3.60ppm(2H)、
13C−NMR:δ144.90ppm、123.82ppm、115.87ppm、106.63ppm
【0074】
<実施例1>N−(2,6−ジヒドロキシフェニル)マレイミド(C)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに無水マレイン酸13.95g(0.142mol)、トルエン380mLを仕込み室温で攪拌した。次に2,6−ジヒドロキシアニリン16.18g(0.129mol)とDMF45mLの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温でさらに2時間反応させた。p−トルエンスルホン酸一水和物1.51gを加え、反応液を加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を6時間行った。室温まで空冷後、減圧濃縮し褐色溶液61.30gを得た。酢酸エチル280mLに溶解させイオン交換水150mLで2回、2%炭酸水素ナトリウム水溶液150mLで4回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し得られた反応物を80℃で12時間真空乾燥を行い、N−(2,6−ジヒドロキシフェニル)マレイミドを8.18g(収率30.9%)得た。
【0075】
【化4】
【0076】
得られた化合物について、各種スペクトルを測定した結果を示す。
1H−NMR:δ9.60ppm(2H)、7.14ppm(2H)、7.05−7.01ppm(1H)、6.38−6.36ppm(2H)
13C−NMR:δ170.29ppm、155.60ppm、135.16ppm、129.98ppm、106.56ppm、106.35ppm
【0077】
<合成例3>
合成例2の東京化成工業社製の2−ニトロレソルシノールを日本ファインケミカル社製の4−ニトロベンゼン−1,3−ジオールに変更した以外は、合成例2と同様の操作で、2,4−ジヒドロキシアニリン(D)を16.18g(収率78.8%)得た。
【0078】
<合成例4>
実施例1の2,6−ジヒドロキシアニリンを2,4−ジヒドロキシアニリンに変更した以外は、実施例1と同様の操作で、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)マレイミド(E)を8.00g(収率30.2%)得た。
【0079】
<硬化物の評価>
(1)組成物の作製
合成例1で得られたヒドロキシフェニルマレイミドおよび実施例1で得られた水酸基含有マレイミド化合物、エポキシ樹脂および触媒を、水酸基に対してエポキシ基が当量となるように表1に示す割合で配合し、組成物を調製した。
【0080】
<組成物のゲルタイム>
表1に示す割合で配合した組成物のゲルタイム(タック消失時間)を200℃で測定した。
【0081】
【表2】
【0082】
表中にて使用した材料は以下の通り。
N−655−EXP−S:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)
HP−4700:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)
TPP:トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製)
【0083】
表2に示すように、マレイミド基に対して2位と4位に水酸基を有する、フェニルマレイミドを含有するエポキシ樹脂組成物は,他の位置に水酸基を有するフェニルマレイミドと比較して特異的に硬化性が早い。