【文献】
Journal of Coatings Technology and Research,2016年,Vol.13,pp.781-793, Supplementary information
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記Gが炭素原子数2〜4のアルキレングリコール残基または炭素原子数4〜6のオキシアルキレングリコール残基で、Aが炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸残基である請求項1記載のセルロースエステル樹脂組成物。
前記Gがプロピレングリコール残基または2−メチル−1,3−プロパンジオール残基で、Aがフタル酸残基、テレフタル酸残基またはイソフタル酸残基である請求項1記載のセルロースエステル樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のエステル化合物は、下記一般式(1)
【0023】
で表される構造を有する。前記一般式(1)中のGは炭素原子数2〜10のアルキレングリコール残基または炭素原子数4〜10のオキシアルキレングリコール残基である。Aは炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン酸残基または炭素原子数6〜18のアリールジカルボン酸残基である。nは括弧で括られた繰り返し単位の繰り返し数で1〜10であり、括弧で括られた繰り返し単位毎にAおよびGは同一であっても異なっていても良い。R
1〜R
5はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、シアノ基又はニトロ基である。
【0024】
本発明のエステル化合物は数平均分子量(Mn)が500〜2,000である必要がある。数平均分子量が500より小さいと揮発性が高くなることから好ましくない。数平均分子量(Mn)が2,000より大きいとセルロースエステル樹脂との相溶性が悪くなり、均一なセルロースエステル樹脂組成物が得にくくなることから好ましくない。数平均分子量(Mn)は550〜1,500が好ましく、600〜1,200がより好ましい。
【0025】
本発明において、前記数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0026】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ−L」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料15mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0027】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0028】
前記一般式(1)で表されるエステル化合物中のGである炭素原子数2〜10のアルキレングリコール残基としては、例えば、エチレングリコール残基、1,2−プロピレングリコール残基、1,3−プロピレングリコール残基、1,2−ブタンジオール残基、1,3−ブタンジオール残基、2−メチル−1,3−プロパンジオール残基、1,4−ブタンジオール残基、1,5−ペンタンジオール残基、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)残基、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)残基、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)残基、3−メチル−1,5−ペンタンジオール残基、1,6−ヘキサンジオール残基、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール残基、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール残基、2−メチル−1,8−オクタンジオール残基、1,9−ノナンジオール残基、1,10−デカンジオール残基等が挙げられる。
【0029】
前記一般式(1)で表されるエステル化合物中のGである炭素原子数4〜10のオキシアルキレングリコール残基としては、例えば、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、テトラエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、トリプロピレングリコール残基等が挙げられる。
【0030】
一般式(1)で表されるエステル化合物中のGの中でも、炭素原子数2〜4のアルキレングリコール残基または炭素原子数4〜6のオキシアルキレングリコール残基がセルロースエステル樹脂との相溶性が良好なエステル化合物となり、その結果、高いRthを発現し、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから好ましく、プロピレングリコール残基又は2−メチル−1,3−プロパンジオール残基がより好ましい。
【0031】
本発明の一般式(1)で表されるエステル化合物はGとして1種類の残基を有していても良いし、2種以上の残基を有していても良い。
【0032】
本発明において、前記「グリコール残基」とは、グリコールが有する2つの水酸基を除いた残りの有機基を表す。
【0033】
前記一般式(1)で表されるエステル化合物中のAである炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン酸残基としては、例えば、コハク酸残基、マレイン酸残基、フマル酸残基、グルタール酸残基、アジピン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、シクロヘキサンジカルボン酸残基等が挙げられる。
【0034】
前記一般式(1)で表されるエステル化合物中のAである炭素原子数6〜18のアリールジカルボン酸残基としては、例えば、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、2,6ナフタレンジカルボン酸残基、1,5ナフタレンジカルボン酸残基、1,4ナフタレンジカルボン酸残基、4,4’−ビフェニルジカルボン酸残基等が挙げられる。
【0035】
前記一般式(1)で表されるエステル化合物中のAの中でも、炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸残基が相溶性が良好なエステル化合物となり、その結果、高いRthを発現し、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから好ましく、フタル酸残基、テレフタル酸残基またはイソフタル酸残基がより好ましい。
【0036】
本発明の一般式(1)で表されるエステル化合物はAとして1種類の残基を有していても良いし、2種以上の残基を有していても良い。
【0037】
本発明において、「ジカルボン酸残基」とは、ジカルボン酸が有する2つのカルボキシル基を除いた残りの有機基を示す。
【0038】
本発明の一般式(1)で表されるエステル化合物中のnは括弧で括られた繰り返し単位の繰り返し数で1〜10である。nはセルロースエステル樹脂との相溶性が良好なエステル化合物となり、その結果、高いRthを発現し、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから1〜5が好ましい。
【0039】
本発明の一般式(1)で表されるエステル化合物中のR
1〜R
5はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、シアノ基又はニトロ基である。
【0040】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。前記炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,2−ジメチルブチル基、2−メチルヘキシル基、1−イソプロピルプロピル基、1,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、tert−ヘプチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0041】
前記炭素原子数1〜10のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0042】
前記R
1〜R
5は、水素原子又はメチル基がセルロースエステル樹脂との相溶性が良好なエステル化合物となり、その結果、高いRthを発現し、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから好ましく、水素原子がより好ましい。更に、R
1〜R
5は全て水素原子が好ましい。
【0043】
前記R
1〜R
5は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。また、一般式(1)で表されるエステル化合物はR
1〜R
5をそれぞれ二つ有する。二つある同じR
1〜R
5は同一であっても良いし、異なっていても良い。
【0044】
本発明のエステル化合物は、一般式(1)で表される通り、骨格中に芳香族カルバメート結合を有する。芳香族カルバメート結合は水素結合性のプロトンを有しており、本発明のエステル化合物は高極性であるセルロースエステル樹脂と強く相互作用する。芳香族カルバメート結合がセルロースエステル樹脂と強く相互作用することにより水分がセルロースエステル樹脂と相互作用することを抑制することができ、耐水性に優れるフィルムが得られる。更に、特定の分子量のポリエステルとすることで、優れた耐揮発性のフィルムを得ることができる。
【0045】
本発明の一般式(1)で表されるエステル化合物は、例えば、以下の工程を含む本発明の製造方法により好適に得ることができる。
・炭素原子数2〜10のアルキレングリコールまたは炭素原子数2〜8のオキシアルキレングリコール(g)と、炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン酸、該アルキレンジカルボン酸誘導体、炭素原子数6〜18のアリールジカルボン酸および該アリールジカルボン酸誘導体からなる群から選ばれる一種以上の化合物(a)とを反応させて末端に水酸基を有する縮合物を得る工程(この工程を第一工程と略記することがある。)。
・前記第一工程で得られた縮合物と下記一般式(2)
【0047】
(式中、R
1〜R
5はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、シアノ基又はニトロ基である。)
で表されるイソシアネート化合物(s)とを反応させて、前記一般式(1)で表され、数平均分子量が500〜2,000であるエステル化合物を得る工程(この工程を第二工程と略記することがある。)。
【0048】
前記第一工程で用いるグリコール(g)である炭素原子数2〜10のアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
【0049】
前記炭素原子数4〜10のオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0050】
前記グリコール(g)の中でも、炭素原子数2〜4のアルキレングリコールまたは炭素原子数4〜6のオキシアルキレングリコールがセルロースエステル樹脂との相溶性が良好なエステル化合物となり、その結果、高いRthを発現し、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから好ましく、プロピレングリコール又は2−メチル−1,3−プロパンジオールがより好ましい。グリコール(g)は1種類を使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0051】
前記第一工程で用いる化合物(a)の中でも炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0052】
前記第一工程で用いる化合物(a)の中でも炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン酸誘導体は、エステル化反応やエステル置換反応等により水酸基含有化合物とアルキレンカルボン酸エステルを形成できる誘導体である。具体的には、例えば、前記アルキレンジカルボン酸のアルキルエステル、酸無水物、アミド等が挙げられる。
【0053】
前記炭素原子数6〜18のアリールジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6ナフタレンジカルボン酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。
【0054】
前記第一工程で用いる化合物(a)の中でも炭素原子数6〜18のアリールジカルボン酸誘導体は、エステル化反応やエステル置換反応等により水酸基含有化合物とカルボン酸エステルを形成できる誘導体である。具体的には、例えば、前記アリールジカルボン酸のアルキルエステル、酸無水物、アミド等が挙げられる。
【0055】
前記化合物(a)の中でも、炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸又は該アリールジカルボン酸誘導体が、セルロースエステル樹脂との相溶性が良好なエステル化合物となり、その結果、高いRthを発現し、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから好ましく、フタル酸、テレフタル酸またはイソフタル酸がより好ましい。化合物(a)は1種類を使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0056】
本発明において、炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン酸、該アルキレンジカルボン酸誘導体、炭素原子数6〜18のアリールジカルボン酸、該アリールジカルボン酸誘導体の炭素原子数とは、カルボキシル基の炭素原子数を含めない数を言う。
【0057】
前記第一工程において、グリコール(g)と化合物(a)とを反応させて末端に水酸基を有する縮合物は、ポリエステルポリオールである。該ポリエステルポリオールは、例えば、グリコール(g)と化合物(a)とを化合物(a)中のカルボキシル基に対してグリコール(g)中の水酸基が過剰となるような反応割合で必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば、180〜250℃の温度範囲内で10〜25時間、エステル化反応させることにより製造することができる。尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定せず、適宜設定してよい。
【0058】
グリコール(g)と化合物(a)は、グリコール(g)と化合物(a)とをモル比〔(g)/(a)〕で1.01/1〜10/1となる範囲で反応させることが反応完結しやすいことから好ましく、モル比〔(g)/(a)〕で1.01/1〜5/1となる範囲がより好ましい。
【0059】
前記第一工程で得られる縮合物の水酸基価は、セルロースエステル樹脂との相溶性が良好なエステル化合物となり、その結果、高いRthを発現し、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから50〜350が好ましく、120〜300がより好ましい。
【0060】
前記第一工程で得られる縮合物は、例えば、下記一般式(3)
【0062】
(式中、Gは炭素原子数2〜10のアルキレングリコール残基または炭素原子数4〜10のオキシアルキレングリコール残基を表す、Aは炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン酸残基または炭素原子数6〜18のアリールジカルボン酸残基を表す。nは括弧で括られた繰り返し単位の繰り返し数で1〜10であり、括弧で括られた繰り返し単位毎にAおよびGは同一であっても異なっていても良い。)
で表される縮合物を例示することができる。
【0063】
前記一般式(1)で表される縮合物の数平均分子量(Mn)は、本発明のエステル化合物を容易に得ることができることから300〜1,700が好ましく、350〜900がより好ましい。
【0064】
前記第二工程で用いるイソシアネート化合物(s)としては、例えば、イソシアン酸フェニル、4−メチルイソシアン酸フェニル、4−イソプロピルイソシアン酸フェニル、4−ヒドロキシイソシアン酸フェニル、4−フルオロイソシアン酸フェニル、4−クロロイソシアン酸フェニル、4−臭素イソシアン酸フェニル等が挙げられる。イソシアネート化合物(s)の中でも優れた相溶性、耐水性を発現することから、イソシアン酸フェニルが好ましい。
【0065】
第二工程において縮合物とイソシアネート化合物(s)とは、通常のウレタン化反応により反応させることができる。具体的には、例えば、縮合物とイソシアネート化合物(s)とを、必要に応じて触媒の存在下に40℃〜140℃、好ましくは60℃〜120℃の温度範囲で3〜20時間反応させることができる。縮合物とイソシアネート化合物(s)とは、縮合物が有する水酸基数とイソシアネート化合物(s)が有するイソシアネート基数の比〔水酸基数/イソシアネート基数〕が1/0.85〜1/0.99となるように反応させることがイソシアネート基の残存がなく、かつ、湿気による位相差の変動が少ない光学フィルムが得られることから好ましく、1/0.90〜1/0.99となるように反応させることがより好ましい。
【0066】
前記必要に応じて使用できる触媒としては、例えば、3級アミン類のテトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。又、4級アンモニユウム塩や、金属化合物のオクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等も使用できる。触媒は、前記縮合物とイソシアネート化合物(s)との合計100質量部に対して0.0005〜0.1質量部使用することが好ましい。
【0067】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、本発明のエステル化合物とセルロースエステル樹脂とを含有することを特徴とする。
【0068】
前記セルロースエステル樹脂は、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等から得られるセルロースの有する水酸基の一部、又は全部がエステル化されたものである。これらの中でも、綿花リンターから得られるセルロースをエステル化して得られるセルロースエステル樹脂を使用して得られるフィルムは、フィルムの製造装置を構成する金属支持体から剥離しやすく、フィルムの生産効率を向上させることが可能となるため好ましい。
【0069】
前記セルロースエステル樹脂の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロース樹脂やジアセチルセルロース樹脂等のセルロースアセテート樹脂;セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネートブチレート樹脂、セルロースアセテートフタレート樹脂及び硝酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらのセルロースエステル樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。本発明のセルロースエステル樹脂組成物からなるフィルムを光学フィルム、特に偏光板保護フィルムとして使用する場合には、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂を使用することが、機械的物性及び透明性に優れたフィルムを得ることができるため好ましく、セルロースアセテート樹脂の中でも、高位相差を発現できることからジアセチルセルロース樹脂がより好ましい。
【0070】
前記セルロースアセテート樹脂としては、平均酢化度(結合酢酸量)が50.0〜62.5質量%の範囲のものであると、得られるセルロースエステル樹脂組成物からなる光学フィルムは機械的物性及び透明性に優れたフィルムとなるため好ましい。
【0071】
なお、平均酢化度は、セルロースアセテート樹脂の質量を基準として、該セルロースアセテート樹脂をケン化することによって生成する酢酸の質量割合である。
【0072】
前記セルロースエステル樹脂は、数平均分子量が30,000〜300,000の範囲のものであると、フィルムの機械的物性を向上することができるため好ましい。また、より高い機械的物性が必要な場合は、50,000〜200,000の範囲のものを用いるとより好ましい。
【0073】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物中の本発明のエステル化合物の含有量としては、セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.5〜50質量部の範囲が好ましく、0.5〜30質量部の範囲がより好ましく、5〜15質量部の範囲がより好ましい。前記エステル化合物をかかる範囲で用いるならば、耐水性、透明性に優れ高いRthを発現し、光学用途に好適に使用できるフィルムが得られる組成物となる。
【0074】
本発明の光学フィルムは、本発明のセルロースエステル樹脂組成物を含有するフィルムである。本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚は使用される用途により異なるが、一般に10〜200μmの範囲が好ましい。
【0075】
本発明の光学フィルムは、種々の用途で用いることができる。最も有効な用途としては、例えば、液晶表示装置の光学補償機能を必要とする偏光板保護フィルムがあるが、光学等方性を必要とする偏光板保護フィルムフィルムの支持体としても使用することができる。
【0076】
本発明の光学フィルムは、種々の表示モードの液晶セルに用いることができる。例えばIPS(In−Plane Switching)、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、OCB(Optically Compensatory Bend)等が例示できる。
【0077】
本発明の光学フィルムは、例えば、溶融押出法により製造することができる。具体的には、前記セルロースエステル樹脂、本発明のエステル化合物及び必要に応じてその他の各種添加剤等を含有してなるセルロースエステル樹脂組成物を、例えば、押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いてフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0078】
また、本発明の光学フィルムは、前記成形方法の他に、例えば、前記セルロースエステル樹脂と前記エステル化合物とを有機溶剤中溶解して得られた樹脂溶液を、金属支持体上に流延させ、次いで、前記有機溶剤を留去し乾燥させる、いわゆる溶液流延法(ソルベントキャスト法)で成形することによって得ることができる。
【0079】
前記溶液流延法によれば、表面に凹凸が形成されにくく、表面平滑性に優れるフィルムが得られる。その為、該溶液流延法により得られるフィルムは光学用途に好ましく用いることが出来、特に偏光板保護フィルム用途として好ましく使用できる。
【0080】
前記溶液流延法は、一般に、セルロースエステル樹脂と本発明のエステル化合物とを有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延させる第1工程と、流延させた前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤を留去し乾燥させてフィルムを形成する第2工程、それに続く、金属支持体上に形成されたフィルムを金属支持体から剥離し加熱乾燥させる第3工程からなる。
【0081】
前記第1工程で使用する金属支持体としては、無端ベルト状又はドラム状の金属製のものなどを例示でき、例えば、ステンレス製でその表面が鏡面仕上げの施されたものを使用することができる。
【0082】
前記金属支持体上に樹脂溶液を流延させる際には、得られるフィルムに異物が混入することを防止するために、フィルターで濾過した樹脂溶液を使用することが好ましい。
【0083】
前記第2工程の乾燥方法としては、特に限定しないが、例えば30〜50℃の温度範囲の風を前記金属支持体の上面及び/又は下面に当てることで、流延した前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤の50〜80質量%を蒸発させ、前記金属支持体上にフィルムを形成させる方法が挙げられる。
【0084】
次いで、前記第3工程は、前記第2工程で形成されたフィルムを金属支持体上から剥離し、前記第2工程よりも高い温度条件下で加熱乾燥させる工程である。前記加熱乾燥方法としては、例えば100〜160℃の温度条件にて段階的に温度を上昇させる方法が、良好な寸法安定性を得ることができるため、好ましい。前記温度条件にて加熱乾燥することにより、前記第2工程後のフィルム中に残存する有機溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0085】
尚、前記第1工程〜第3工程で、有機溶媒は回収し再使用することも可能である。
【0086】
前記セルロースエステル樹脂と本発明のエステル化合物とを有機溶剤に混合させ溶解する際に使用できる有機溶剤としては、それらを溶解可能なものであれば特に限定しないが、例えばセルロースエステル樹脂としてセルロースアセテートを使用する場合は、良溶媒として、例えばメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類を使用することが好ましい。
【0087】
また、前記良溶媒と共に、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の貧溶媒を併用することが、フィルムの生産効率を向上させるうえで好ましい。
【0088】
前記良溶媒と貧溶媒との混合割合は、質量比で良溶媒/貧溶媒=75/25〜95/5の範囲が好ましい。
【0089】
前記樹脂溶液中のセルロースエステル樹脂の濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0090】
前記溶液流延法において、第3工程で加熱乾燥させたフィルムを得た後、更にこのフィルムを加熱延伸する第4工程を設けることができる。
【0091】
第4工程では、第1工程〜第3工程により本発明のセルロースエステル樹脂組成物を用いて製膜後、得られたフィルムを加熱延伸する。延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施しても良い。また、二軸延伸を行う場合には、同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
【0092】
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方向については張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時二軸延伸の好ましい延伸倍率は、例えば、幅方向に×1.05〜×1.5倍で長手方向(流延方向)に×0.8〜×1.3倍であり、特に幅方向に×1.1〜×2.5倍、長手方向に×0.8〜×0.99倍とすることが好ましい。特に好ましくは幅方向に×1.1〜×2.0倍、長手方向に×0.9〜×0.99倍である。
【0093】
前記必要に応じて添加する事ができるその他の各種添加剤としては、例えば、本発明のエステル化合物以外でセルロースエステル樹脂の改質の改質が期待される改質剤、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、マット剤、染料等が挙げられる。
【0094】
前記必要に応じて添加する事ができるその他の各種添加剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル;トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、アセチルクエン酸トリブチル等の多価アルコールのエステル化合物;末端が酢酸等の脂肪族モノカルボン酸で封止されたポリエステル化合物、スクロースオクタアセテート、スクロースベンゾエート等のフラノース構造もしくはピラノース構造を有する糖エステル化合物;バルビツール酸構造を有する化合物;イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール等の5員の芳香族複素環と6員の芳香族炭化水素環とが連結された構造を有する化合物等が挙げられる。
【0095】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、本発明のエステル化合物以外のポリエステル樹脂、ポリエステルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等が挙げられる。
【0096】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。前記紫外線吸収剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲が好ましい。
【0097】
前記マット剤としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられる。前記マット剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜0.3質量部の範囲が好ましい。
【0098】
前記染料としては、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、種類や配合量など特に限定しない。
【0099】
本発明の光学フィルムの膜厚は、5〜120μmの範囲が好ましく、8〜100μmの範囲がより好ましく、10〜80μmの範囲が特に好ましい。前記光学フィルムを偏光板板保護フィルムとして用いる場合には、膜厚が10〜80μmの範囲であれば、液晶表示装置の薄型化を図る際に好適であり、且つ充分なフィルム強度、Rth、耐水性などの優れた性能を維持することができる。
【0100】
本発明の光学フィルムは、耐水性が良好なことから、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム、カラーフィルター等の液晶表示装置の部材として好適に使用する事ができる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。例中の部及び%は断りがない限り質量基準である。本発明において、酸価および水酸基価はJIS K 0070−1992に準じた方法により測定した。
【0102】
実施例1(エステル化合物)
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、テレフタル酸ジメチル1748g、2−メチル−1,3−プロパンジオール2433g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.25gを加えた。窒素気流下で攪拌しながら、210℃になるまで段階的に昇温して、合計11時間反応させた。反応後、160℃で未反応の2−メチル−1,3−プロパンジオールを減圧除去し、取り出しポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールの得量は2452gで、酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は277mgKOH/gであった。
【0103】
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた0.3リットルの四つ口フラスコに、前記ポリエステルポリオール152gを仕込んだ。フラスコ内温度が120℃を超えないように、イソシアン酸フェニル85gを5回に分割して加えた。その後、80℃で14時間反応し、IR測定により、イソシアネートの消失を確認した。120℃で、未反応原料や低分子量成分を減圧除去し、一般式(1)で表されるエステル化合物(1)を得た。エステル化合物(1)の酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は10mgKOH/g、数平均分子量(Mn)710、重量平均分子量(Mn)840であった。
【0104】
得られたエステル化合物(1)の耐揮発性の評価を行った。具体的には、正確に量ったエステル化合物(1)10gを容器に入れ、ギヤーオーブンにて、140℃で2時間加温し、加熱後の重量を測定した。下記式より、重量変化率を求め、下記の基準に従い評価した。
重量減少率[%]=〔重量減少量[g]×100〕/加熱前のエステル化合物の量[g]
【0105】
<耐揮発性の評価基準>
○:重量減少率の絶対値が0.5%以下である
×:重量減少率の絶対値が0.5%を超える
【0106】
重量変化率の絶対値が小さい程、耐揮発性に優れるエステル化合物である。耐揮発性の評価結果を、エステル化合物(1)の数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価の濃度と共に第1表に示す。
【0107】
実施例2(同上)
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた3リットルの四つ口フラスコに、テレフタル酸ジメチル971g、プロピレングリコール1141g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.13gを加えた。窒素気流下で攪拌しながら、200℃になるまで段階的に昇温して、合計29時間反応させた。反応後、160℃で未反応のプロピレングリコールを減圧除去し、取り出し、ポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールの得量は957gで酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は278mgKOH/gであった。
【0108】
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた0.3リットルの四つ口フラスコに、前記ポリエステルポリオール151gを仕込んだ。フラスコ内温度が120℃を超えないように、イソシアン酸フェニル151gを5回に分割して加えた。その後、105℃で14時間反応し、IR測定により、イソシアネートの消失を確認した。120℃で、未反応原料や低分子量成分を減圧除去し、一般式(1)で表される本発明のエステル化合物(2)を得た。エステル化合物(2)の酸価は0.6mgKOH/g、水酸基価は15mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は650、重量平均分子量(Mw)740であった。
【0109】
実施例1と同様にしてエステル化合物(2)の耐揮発性の評価を行った。評価結果をエステル化合物(2)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価、末端構造情報と共に第1表に示す。
【0110】
実施例3(同上)
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた3リットルの四つ口フラスコに、無水フタル酸1481g、プロピレングリコール1092g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.15gを加えた。窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温して、合計21時間反応させた。反応後、160℃で未反応のプロピレングリコールを減圧除去し、取り出し、ポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールの得量は1560gで、酸価は0.8mgKOH/g、水酸基価は138mgKOH/gであった。
【0111】
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた0.3リットルの四つ口フラスコに、前記ポリエステルポリオール183gを仕込んだ。フラスコ内温度が120℃を超えないように、イソシアン酸フェニル51gを5回に分割して加えた。100℃で13時間反応し、IR測定により、イソシアネートの消失を確認した。120℃で、未反応原料や低分子量成分を減圧除去し、一般式(1)で表される本発明のエステル化合物(3)を得た。エステル化合物(3)の酸価は0.7mgKOH/g、水酸基価は18mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は830、重量平均分子量(Mw)1210であった。
【0112】
実施例1と同様にしてエステル化合物(3)の耐揮発性の評価を行った。評価結果をエステル化合物(3)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価、末端構造情報と共に第1表に示す。
【0113】
比較例1(比較対照用エステル化合物)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、テレフタル酸ジメチルを554g、プロピレングリコールを476g、パラトルイル酸を817g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.11g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、230℃になるまで段階的に昇温し、合計17時間縮合反応させた。反応後、195℃にて未反応のプロピレングリコールを減圧除去し、比較対照用エステル化合物(1’)を得た。比較対照用エステル化合物(1’)の酸価は0.3mgKOH/g、水酸基価は12mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は490、重量平均分子量(Mw)は720であった。
【0114】
実施例1と同様にして比較対照用エステル化合物(1’)の耐揮発性の評価を行った。評価結果を比較対照用エステル化合物(1’)の数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価、末端構造情報と共に第1表に示す。
【0115】
比較例2(同上)
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた0.3リットルの四つ口フラスコに、シクロヘキサノール110gを仕込んだ。フラスコ内温度が120℃を超えないように、イソシアン酸フェニル119gを3回に分割して加えた。80℃で5時間反応させ、IR測定により、イソシアネートの消失を確認した。120℃で、未反応原料や低分子量成分を減圧除去し、比較対照用エステル化合物(2’)を得た。比較対照用エステル化合物(2’)の酸価は0.2mgKOH/g、水酸基価は3mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は270、重量平均分子量(Mw)は270であった。
【0116】
実施例1と同様にして比較対照用エステル化合物(2’)の耐揮発性の評価を行った。評価結果を比較対照用エステル化合物(1’)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価、末端構造情報と共に第1表に示す。
【0117】
比較例3(同上)
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた3リットルの四つ口フラスコに、テレフタル酸ジメチル971g、プロピレングリコール1141g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.13gを加えた。窒素気流下で攪拌しながら、200℃になるまで段階的に昇温し、合計29時間反応させた。反応後、160℃で未反応のプロピレングリコールを減圧除去し、比較対照用エステル化合物(3’)を得た。比較対照用エステル化合物(3’)の酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は278mgKOH/g、数平均分子量(Mn)は500、重量平均分子量(Mw)は610であった。
【0118】
実施例1と同様にして比較対照用エステル化合物(3’)の耐揮発性の評価を行った。評価結果を比較対照用エステル化合物(3’)の数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mw)、酸価、水酸基価、
末端構造情報と共に第1表に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例4(セルロースエステル樹脂組成物及び光学フィルム)
ジアセチルセルロース(製品名 L−50、酢化度55%、ダイセル化学工業製)100部、エステル化合物(1)10部、メチレンクロライド810部、メタノール90部を加えて溶解し、セルロースエステル樹脂組成物であるドープ液を得た。ドープ液をガラス板上に厚み約0.8mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚60μmのセルロースエステル樹脂フィルム(1)を得た。得られたセルロースエステル樹脂フィルム(1)のRth、耐水性、耐アルカリ性(耐けん化性)及び耐透湿性を下記方法に従って評価した。評価結果を第2表に示す。
【0121】
<Rth値の評価方法>
王子計測機器株式会社製 位相差測定装置KOBRA−WRを用い、平行ニコル測定法にてフィルムのRthを測定し、下記の基準に従って評価した。尚、測定は、23℃/55%RHにて行った。測定には、23℃/55%RHの環境下に1時間静置したセルロースエステル樹脂フィルム(1)を用いた。
○:Rthが100nm以上である。
×:Rthが100よりも小さい。
【0122】
<耐水性の評価方法>
耐水性は環境の湿度によって変化するRth値(絶対値)で評価した。具体的には、前記<Rth値の評価方法>にてRthを測定したのち、セルロースエステル樹脂フィルム(1)を23℃のイオン交換水に12時間浸漬した。イオン交換水中でセルロースエステル樹脂フィルム(1)をガラスに挟みこみ、フィルムが乾燥しない状態でRth値を測定した。以下の式で、Rth変化量を求め、下記の基準に従って評価した。
Rth変化量[nm]=イオン交換水に浸漬後のRth−イオン交換水に浸漬前のRth
【0123】
<Rth変化量の評価基準>
○:Rth変化量の絶対値が35より小さい。
×:Rth変化量の絶対値が35以上である。
【0124】
<耐けん化性の評価方法>
4cm角のセルロースエステル樹脂フィルム(1)を作成し、この質量を測定した(試験前質量)。このフィルムを50℃に加温した2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した。その後、室温のイオン交換水に2分間浸漬し、フィルムを洗浄した。フィルムを70℃で1時間乾燥し、重量を測定した(試験後重量)。以下の式で、重量変化率を求め、また、フィルム外見を目視で観察し、下記の基準に従って評価した。
質量変化率[%]=〔(試験後質量−試験前質量)×100〕/試験前質量
【0125】
○:質量変化率が25%よりも小さく、且つ、フィルムが透明である。
×:質量変化率が25%以上、または、フィルムが不透明である。
【0126】
<耐透湿性の評価方法>
JIS Z 0208に記載の方法に従い、セルロースエステル樹脂フィルム(1)の透湿度を測定した。透湿度(g/m
2・24hr)が小さい程、耐透湿性に優れる。
【0127】
実施例5(同上)
エステル化合物(1)のかわりにエステル化合物(2)を用いた以外は実施例4と同様にしてセルロースエステル樹脂フィルム(2)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0128】
実施例6(同上)
エステル化合物(1)のかわりにエステル化合物(3)を用いた以外は実施例4と同様にしてセルロースエステル樹脂フィルム(3)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0129】
比較例4(同上)
エステル化合物(1)のかわりに比較対照用エステル化合物(1’)を用いた以外は実施例4と同様にして比較対照用セルロースエステル樹脂フィルム(1’)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第3表に示す。
【0130】
比較例5(同上)
エステル化合物(1)のかわりに比較対照用エステル化合物(2’)を用いた以外は実施例4と同様にして比較対照用セルロースエステル樹脂フィルム(2’)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第3表に示す。
【0131】
比較例6(同上)
エステル化合物(1)のかわりに比較対照用エステル化合物(3’)を用いた以外は実施例4と同様にして比較対照用セルロースエステル樹脂フィルム(3’)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第3表に示す。
【0132】
比較例7(同上)
エステル化合物(1)を除いた以外は実施例4と同様にして比較対照用セルロースエステル樹脂フィルム(4’)を得た。実施例4と同様の評価を行い、その結果を第3表に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
第3表の脚注
−:測定せず。