(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルミニウム粒子と前記被覆樹脂との質量比(アルミニウム粒子:被覆樹脂)が、86:14〜99.9:0.1である、請求項1又は2に記載の樹脂被覆アルミニウム顔料。
前記ラジカル重合性不飽和カルボン酸の単量体(B1)に由来する構成単位と、前記1分子当たりラジカル重合性二重結合を3個以上有する単量体(B2)に由来する構成単位とのモル比率が1:1.5〜1:10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム顔料。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪樹脂被覆アルミニウム顔料≫
本実施形態の樹脂被覆アルミニウム顔料(「被覆顔料」と省略することがある。)は、扁平形状のアルミニウム粒子(A)表面が、ラジカル重合性不飽和カルボン酸(B1)に由来する構成単位を含むアクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂で被覆された樹脂被覆アルミニウム顔料であって、前記被覆樹脂の面積に対する、前記被覆樹脂の表面の面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積の割合が15面積%以下である。
【0012】
<粒子(A)>
実施形態に係るアルミニウム粒子(A)(「粒子(A)」と省略することがある。)は、扁平形状(鱗片形状)のアルミニウム粒子である。
なお、1実施形態として、粒子(A)は、無機粒子又は金属粒子であってもよく、無機又は金属を含む任意の粒子であってもよい。金属としては、元素の周期表1〜15族に属するもののうち、第1周期及び第2周期のものを除いたものが挙げられる。無機及び/又は金属材料としては、雲母チタン、ガラス粉末、アルミニウム粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、亜鉛粉、ステンレス粉、ニッケル粉などを例示できる。これらのなかでは、金属粉子が好ましく、扁平形状(鱗片形状)の金属粒子がより好ましく、アルミニウム粒子がさらに好ましく、光輝性の観点から扁平形状(鱗片形状)のアルミニウム粒子が特に好ましい。
【0013】
実施形態に係るアルミニウム粒子は、従来公知の方法で製造されたものを広く用いることができる。扁平形状のアルミニウム粒子を用いる場合には、略球状のアルミニウム粒子を磨砕・加工して扁平形状のアルミニウム粒子にしてもよく、蒸着等の方法により扁平形状のアルミニウムに加工してもよい。加工方法としては、ボールミルを用いる方法や蒸着を利用する方法等が挙げられる。コーンフレークまたはシルバーダラーと呼ばれる形状のアルミニウム粒子や蒸着アルミニウム粒子等が例示される。
【0014】
以下、粒子(A)の形状について説明する。通常、顔料としての粒子(A)は1個のみで提供されることは想定されないため、下記に示す値は、提供される複数個の粒子(A)を対象にして求められた平均値であってもよい。
【0015】
粒子(A)の平均粒径は、100μm以下であってよく、0.1μm〜100μmであってよく、1μm〜80μmであってよく、5μm〜50μmであってよい。
粒子(A)の平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積粒度分布から、体積基準メジアン径d50として算出可能である。
優れた光輝性及び分散性が得られるとの観点から、粒子(A)の平均粒径は0.1μm以上であることが好ましい。なかでも、特に優れた光輝性及び分散性が得られるとの観点から、粒子(A)の平均粒径は5μm以上であることが好ましい。粒子(A)の平均粒径が100μm以下であると、粒子の沈殿が生じ難く、且つ光輝性も良好であるため好ましい。なかでも特に、粒子(A)の平均粒径が50μm以下であると、粒子の沈殿が生じ難く、且つ光輝性も良好であるため好ましい。
【0016】
粒子(A)が扁平形状である場合、粒子(A)の平均厚みは、1μm以下であってよく、0.001μm〜1μmであってよく、0.01〜0.8μmであってよく、0.01〜0.5μmであってよい。粒子(A)の平均厚みは、1個の粒子(A)に対して、無作為に選定された領域における厚みの平均値をもとめ、そこからさらに複数個の粒子(A)の厚みについての平均値とする。ここで複数個とは10個以上とする。
粒子(A)の平均粒径(R)と平均厚み(t)の比R/tは、5以上であることが好ましく、5〜3000であってよく、15〜1500であってよく、30〜750であってよい。粒子(A)の前記R/tが上記の範囲内であることで、粒子が適度な薄片の形状となるため、優れた光輝性が得られやすい。
【0017】
粒子(A)の表面粗さRaは、20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましい。粒子(A)の表面粗さRcは、80nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましい。前記表面粗さRa及び/又はRcが上記の上限値以下であることにより、粒子(A)の表面状態がより平滑となり、優れた光輝性が発揮されやすい。
【0018】
粒子(A)の形状に関し、上記の平均粒径、平均厚み、R/t、Ra、Rcの5つの項目の数値範囲のうち、2つ以上の項目の数値範囲を満たしていることが好ましい。
【0019】
<アクリル系共重合体(B)>
実施形態に係るアクリル系共重合体(B)は、ラジカル重合性不飽和カルボン酸(B1)に由来する構成単位を含むものである。アクリル系共重合体は、1分子当たりラジカル重合性二重結合を3個以上有する単量体(B2)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
実施形態に係るアクリル系共重合体(B)は、ラジカル重合性不飽和カルボン酸の単量体(B1)(「単量体(B1)」と省略することがある。)と、1分子当たりラジカル重合性二重結合を3個以上有する単量体(B2)(「単量体(B2)」と省略することがある。)と、のラジカル重合物であってよい。実施形態に係るアクリル系共重合体(B)は、単量体(B1)に由来する構成単位、及び単量体(B2)に由来する構成単位を含んでもよい。
【0020】
実施形態に係る単量体(B1)は、ラジカル重合性不飽和カルボン酸である。
ラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはこれら不飽和ジカルボン酸のハーフエステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を併用して用いることができる。
なお、単量体(B1)は、ラジカル重合性リン酸エステルであってもよい。ラジカル重合性リン酸エステルとしては、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルホスフェート等が挙げられる。
これらの単量体は、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0021】
実施形態に係る単量体(B2)は、1分子当たりラジカル重合性二重結合を3個以上有する単量体であってよく、1分子当たりラジカル重合性二重結合を3〜6個有する単量体であってよく、1分子当たり3〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む単量体であってよい。
1分子当たり3〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む単量体としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどや、これら単量体のエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)付加物、或いは、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0022】
被覆顔料における、アクリル系共重合体(B)が単量体(B2)を含む共重合体である場合、単量体(B1)に由来する構成単位と単量体(B2)に由来する構成単位とのモル比率(B1:B2)は、被覆樹脂の被覆状態を良好とする観点から、1:1.5〜1:10が好ましく、1:1.5〜1:8がより好ましく、1:1.5〜1:7がさらに好ましい。
【0023】
<重合開始剤(C)>
実施形態に係る重合開始剤(C)は、活性種として少なくともラジカルを発生させるラジカル重合開始剤であり、例えば、ニトリル基を含むアゾ重合開始剤が挙げられる。
実施形態に係る重合開始剤(C)としてニトリル基を含むアゾ重合開始剤を用いる場合、前記単量体(B1)と、前記単量体(B2)とをラジカル重合反応させ、得られたアクリル系共重合体(B)の末端に、重合開始剤(C)に由来する下記一般式(1)で表される構造が含まれる。
【0025】
[式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数1〜5のアルキル基、−C(=O)OR
2aで表される基、又は−C(=O)NHR
2aで表される基{前記R
2aは炭素数1〜8のアルキル基を表す。}を表し、前記R
1と前記R
2とが互いに結合した環状構造を形成してもよい。]
【0026】
R
2の炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭素数2〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0027】
R
2aの炭素数1〜8のアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。炭素数1〜8のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0028】
前記式(1)において、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数2〜5のアルキル基を表すことが好ましい。
前記式(1)において、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数2〜5の直鎖状のアルキル基を表すことが好ましい。
前記式(1)において、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数2〜3のアルキル基を表すことが好ましい。
前記式(1)において、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数2〜3の直鎖状のアルキル基を表すことが好ましい。
【0029】
ニトリル基を含むアゾ重合開始剤(C)としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
[式(2)中、R
1及びR
2は、前記式(1)におけるものと同一の意味を表す。]
【0032】
実施形態に係る重合開始剤(C)としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)等が挙げられ、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0033】
実施形態に係る他の重合開始剤(C)としては過酸化物が挙げられ、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−(t−ブチル)シクロヘキシリデンジペルオキサイド等が例示されるが、これらに限定されない。
【0034】
実施形態に係る重合開始剤(C)の、重合時温度は90〜140℃であってもよく、90〜100℃であってもよい。半減期時間は、重合時温度により適宜設定することができる。
【0035】
1実施形態として、被覆顔料は、
ラジカル重合性不飽和カルボン酸又はラジカル重合性リン酸エステルの単量体(B1)と、1分子当たり3〜6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む単量体(B2)とを、ニトリル基を含む重合開始剤(C)にてラジカル重合反応させ、無機又は金属粒子(A)上にアクリル系共重合体(B)を形成させてなり、
前記無機又は金属粒子(A)が、前記共重合体(B)を含有する被覆樹脂に被覆され、
前記アクリル系共重合体(B)の末端に、前記重合開始剤(C)に由来する下記一般式(1)で表される構造を含むものであってよい。
【0037】
[式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数1〜5のアルキル基、−C(=O)OR
2aで表される基、又は−C(=O)NHR
2aで表される基{前記R
2aは炭素数1〜8のアルキル基を表す。}を表し、前記R
1と前記R
2とが互いに結合した環状構造を形成してもよい。]
【0038】
<粒子(A)と被覆樹脂>
以下、実施形態の被覆顔料における粒子(A)及び被覆樹脂について説明する。ここで、通常、被覆顔料は、顔料の粒子1個のみで提供されることは想定されないため、下記に示す値は、提供される被覆顔料を対象にした平均値として求めてもよい。
【0039】
実施形態の被覆顔料において、粒子(A)は、アクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂に被覆されている。
【0040】
被覆樹脂はアクリル系共重合体(B)を50質量%以上含むものであることが好ましく、80質量%以上含むものであることがより好ましく、95質量%以上含むものであることがさらに好ましく、99質量%以上含むものであることが特に好ましい。又は、被覆樹脂はアクリル系共重合体(B)のみからなるものであってもよい。
【0041】
本明細書において、粒子(A)が「被覆樹脂に被覆されている」とは、粒子(A)表面の一部又は全部に被覆樹脂が積層されている状態を意味する。被覆樹脂は、粒子(A)の表面に直接結合していることが好ましい。結合の種類としては、共有結合、配位結合、イオン結合等の化学結合が挙げられる。被覆樹脂が粒子(A)の表面に結合していることにより、粒子(A)から被覆樹脂を剥がれ難くすることができる。
【0042】
実施形態の被覆顔料において、粒子(A)と被覆樹脂との質量比(粒子(A):被覆樹脂)は、50:50〜99.9:0.1が好ましく、70:30〜99.7:0.3が特に好ましい。粒子(A)と被覆樹脂との質量比が上記範囲内にあることで、粒子(A)の光輝性と被覆樹脂の耐薬品性とのバランスが好ましいものとなる。また、粒子(A)に対する被覆樹脂の被覆が薄くなることで、光輝感の観点からも好ましい。
プレコートメタル用途等耐薬品性が特に重要視される用途においては、光輝性と耐薬品性のバランスが取れる範囲内で被覆される樹脂が厚いほうが好ましく、70:30〜90:10が特に好ましい。
また、光輝性が特に重要視される用途においては、アルミ顔料そのものが持つ光反射性を最大限活かすために、光輝性と耐薬品性のバランスが取れる範囲内で被覆される樹脂が薄いほうが好ましく、80:20〜99:1、特に80:20〜95:5が好ましい。
【0043】
実施形態の被覆顔料における、粒子(A)の総表面積[m
2]あたりの単量体(B1)の質量[g](単量体(B1)の質量[g]/粒子(A)の総表面積[m
2])は、5×10
−4〜35×10
−4[g/m
2]が好ましく、7×10
−4〜25×10
−4[g/m
2]がより好ましく、10×10
−4〜20×10
−4[g/m
2]がさらに好ましい。
粒子(A)総表面積あたりの単量体(B1)の質量が上記範囲内にあることで、粒子(A)の光輝性と被覆樹脂の耐薬品性とのバランスが好ましいものとなる。また、単量体(B1)は、アクリル系共重合体(B)の重合の起点となり得るものであるので、粒子(A)総表面積あたりの単量体(B1)の質量が6×10
−4以上であることにより、粒子(A)の表面上でのラジカル重合が、領域間でより均一な状態で進行すると考えられる。その結果、平滑で均一な厚みを有する被覆樹脂が得られる。
【0044】
粒子(A)の総表面積は、比表面積計を用いて測定した粒子(A)の比表面積と粒子(A)の質量から計算することができる。
【0045】
前記被覆樹脂は樹脂粒を有していてよい。実施形態に係る樹脂粒は、粒子(A)上で共重合体(B)がラジカル重合されることで形成され得るものであり、半球状の共重合物であり得る。
被覆樹脂の「平滑」及び「均一な厚み」の程度の指標として、実施形態の被覆顔料において、前記被覆樹脂の面積に対する、前記被覆樹脂の表面の、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積の割合が15面積%以下であり、13面積%以下であることがより好ましく、5面積%以下であることがさらに好ましく、2面積%以下であることが特に好ましい。面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積の割合が上記の上限値以下である被覆顔料は、被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するので、光輝性及び耐薬品性が大変に優れている。
前記被覆樹脂の面積(投影面積)に対する、前記被覆樹脂の表面の、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積(投影面積)の割合は、例えば、被覆顔料のSEM画像ファイルに対して、測定エリアで観察される樹脂粒1粒子ごとにHeywood径(面積円相当径)を算出し、樹脂被覆アルミニウム顔料表面に観察される付着樹脂について、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の割合(面積%)を下記式により計算できる。
面積円相当径25nm以上の樹脂粒割合(面積%)=測定エリアにおける面積円相当径25nm以上の樹脂粒の総面積(μm
2)/測定エリア面積(μm
2)×100
なお、測定に使用した画像は、被覆樹脂が撮像されていた部分のみを測定エリアとして使用し、面積円相当径25nm以上の樹脂粒の総面積は、各面積円相当径から算出するものとする。値は、複数個の被覆粒子の粒子表面に対しての観察結果の平均値として算出してよい。
【0046】
実施形態の被覆顔料は、一例として、後述の被覆顔料の製造方法により製造可能である。
実施形態の被覆顔料は、
(i)粒子(A)と、単量体(B1)と、を反応させ、
(ii)前記単量体(B1)又はそれに由来する構造と、単量体(B2)とを、重合開始剤(C)にてラジカル重合反応させることにより、無機又は金属粒子(A)上にアクリル系共重合体(B)を形成させてなり、
前記無機又は金属粒子(A)が、アクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂に被覆され、
前記アクリル系共重合体(B)の末端に、前記重合開始剤(C)に由来する下記一般式(1)で表される構造を含むものであってもよい。
【0048】
[式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数1〜5のアルキル基、−C(=O)−O−R
2aで表される基、又は−C(=O)−NH−R
2aで表される基{前記R
2aは炭素数1〜8のアルキル基を表す。}を表し、前記R
1と前記R
2とが互いに結合した環状構造を形成してもよい。]
金属粒子(A)、アクリル系共重合体(B)、単量体(B1)、単量体(B2)、重合開始剤(C)、及び式(1)について、上記で例示したものが挙げられる。
【0049】
前記ラジカル重合反応は、開始剤の半減期時間が3〜45分の条件下で行われたものであることが好ましく、4〜40分の条件下で行われたものであることが好ましく、5〜35分の条件下で行われたものであることがより好ましく、5〜20分の条件下で行われたものであることがさらに好ましく、5〜10分の条件下で行われたものであることが特に好ましい。
なお、前記ラジカル重合反応は、開始剤の半減期時間が5〜15分の条件下で行われたものであってもよく、15〜25分の条件下で行われたものであってもよく、25〜35分の条件下で行われたものであってもよい。
【0050】
<塗料・インク>
実施形態の被覆顔料は、塗料又はインクとして利用可能である。一実施形態として、実施形態の被覆顔料を含有する塗料又はインクを提供できる。塗料としては、粉体塗料、家具塗装用塗料、電化製品塗装用塗料、自動車塗装用塗料、プラスチック塗装用塗料等が挙げられる。インクとしては、印刷用インク、包装材印刷用インク等が挙げられる。
【0051】
塗料又はインクは、実施形態の被覆顔料と、分散媒と塗料又はインク用樹脂とを含有してもよい。分散媒としては、金属顔料の分散に用いられる任意の分散媒を用いることができ、従来公知の分散媒を用いてもよい。分散媒としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、ホワイトスピリッツ等の脂肪族炭化水素系溶剤、及びミネラルスピリット等の芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素の混合系溶剤等が挙げられる。
塗料又はインク用樹脂としては、塗料またはインクへと配合される任意の樹脂を用いることができ、従来公知の樹脂を用いてもよい。樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
また、塗料又はインク用顔料としては、実施形態の被覆顔料の他に、実施形態の被覆顔料に該当しない、塗料またはインクへと配合される任意の着色顔料を更に含有することができ、従来公知の着色顔料を用いてもよい。着色顔料としては、フタロシアニン系顔料、ハロゲン化フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、アゾメチン金属錯体系顔料、インダンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、ベンゾイミダゾロン系顔料、縮合アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラピリミジン系顔料、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、バナジウム酸ビスマスが挙げられる。
【0052】
例えば、塗料又はインクは被覆顔料を0.5〜50質量%含有することが好ましく、5〜40質量%含有することがより好ましく、10〜30質量%含有することがさらに好ましい。
【0053】
塗料又はインクは、実施形態の被覆顔料の他に、必要に応じて老化防止剤、防腐剤、防軟剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0054】
実施形態の被覆顔料の被覆樹脂は、記被覆樹脂の面積に対する、前記被覆樹脂の表面の面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の総面積の割合が15面積%以下である。樹脂粒の直径が小さいと樹脂被覆顔料表面の凹凸が小さくなるため、光の乱反射が起こりにくく、光輝感の低下を防ぐことが出来る。
実施形態の被覆顔料は、重合開始剤(C)にてラジカル重合反応させたアクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂に被覆されていることが好ましい。実施形態に係る重合開始剤(C)を用いて、前記単量体(B1)と、前記単量体(B2)とをラジカル重合反応させると、得られたアクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するものとなり、被覆顔料は、光輝感が良好で且つ耐薬品性に優れたものとなる。このことは、おそらく、重合開始剤(C)の重合時温度における半減期時間が比較的短いために、時間あたりに供給されるラジカルの量が増加し、形成される樹脂粒の大きさが小さくなり、形成される樹脂粒数が増え、領域間でのラジカル重合反応の進行がより均一な状態となり、その結果、平滑で均一な厚みを有する被覆樹脂が形成されることによるものと考えられる。
【0055】
重合開始剤(C)を用いることで、従来技術に比して得られるアクリル系共重合体(B)の分子量は小さくなる。その結果、樹脂表面にて成長する樹脂粒のサイズは従来技術に比して小さくなる。この結果、形成された半球状の共重合物である樹脂粒同士の間に生じる空隙面積は無視できるほど小さくすることが出来る。これは、無機または金属粒子の露出面積がほとんどなくなることを意味し、酸またはアルカリによって腐食され難く、優れた耐薬品性を担保することが可能となる。
また、樹脂粒の直径が小さいと樹脂被覆顔料表面の凹凸が小さくなるため、光の乱反射が起こりにくく、光輝感の低下を防ぐことが出来る。
被覆樹脂の層を厚くすれば耐薬品性を向上させることができるが、被覆樹脂の層が厚くなると光輝性が損なわれてしまう。一方、実施形態の被覆樹脂は、被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するので、光輝性、及び耐薬品性が非常に良好である。
樹脂の表面が平滑でないと凸部に力が加えられた場合に剥がれやすさの原因となってしまう。一方、実施形態の被覆樹脂は、被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するので、光輝性、耐薬品性、に加え、塗膜耐久性も良好となり得る。
被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有することは、同等の耐薬品性を有する被覆顔料と比べて、より被覆樹脂の厚みを少なくできるということであり、本来の粒子(A)の輝きがより良好に発揮される。
【0056】
≪被覆顔料の製造方法≫
実施形態の被覆顔料の製造方法は、
粒子(A)の表面を、アクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂で被覆する工程を有する。
【0057】
実施形態の被覆顔料の製造方法は、
(i)粒子(A)と、単量体(B1)と、を反応させる工程、
(ii)前記単量体(B1)又はそれに由来する構造と、単量体(B2)とを、ニトリル基を含む重合開始剤(C)にてラジカル重合反応させることにより、粒子(A)上にアクリル系共重合体(B)を形成させる工程、とを有し、
前記無機又は金属粒子(A)が、アクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂に被覆され、
前記ラジカル重合反応は、開始剤の半減期時間が3〜45分の条件下で行い、
前記アクリル系共重合体(B)の末端に、前記重合開始剤(C)に由来する下記一般式(1)で表される構造を含んでもよい。
【0059】
[式(1)中、R
1はメチル基を表し、R
2は炭素数1〜5のアルキル基、−C(=O)−O−R
2aで表される基、又は−C(=O)−NH−R
2aで表される基{前記R
2aは炭素数1〜8のアルキル基を表す。}を表し、前記R
1と前記R
2とが互いに結合した環状構造を形成してもよい。]
【0060】
実施形態の被覆顔料の製造方法において、金属粒子(A)、アクリル系共重合体(B)、単量体(B1)、単量体(B2)、重合開始剤(C)、及び式(1)について、上記≪樹脂被覆無機又は金属顔料≫で例示したものが挙げられ、詳細な説明を省略する。
【0061】
前記工程(i)は、粒子(A)と、単量体(B1)と、を反応させて前記粒子(A)との間に結合を形成させる工程であってもよい。結合の種類としては、共有結合、配位結合、イオン結合等の化学結合が挙げられる。
【0062】
前記工程(i)は、粒子(A)の最表面の原子と、単量体(B1)との間に結合を形成させる工程であってもよい。結合の種類としては、共有結合、配位結合、イオン結合等の化学結合が挙げられる。
【0063】
上記工程(i)によれば、粒子(A)の表面に、単量体(B1)、又は反応の結果生じた単量体(B1)に由来する構造が結合した状態となる。粒子(A)の表面に結合した単量体(B1)又はそれに由来する構造は、続くラジカル重合の起点となり得る。
上記工程(ii)によれば、粒子(A)の表面に、アクリル系共重合体(B)を形成できる。
【0064】
上記工程(i)及び工程(ii)を経て製造された被覆顔料の、アクリル系共重合体(B)は、粒子(A)の側から、単量体(B1)に由来する構成単位、単量体(B2)に由来する構成単位をこの順に有するものとなり得る。
【0065】
工程(i)及び工程(ii)において、反応は反応液中で進行させることができる。工程(i)における反応液は、粒子(A)と、単量体(B1)と、溶媒及び/又は分散媒と、必要に応じその他の成分と、を含むことができる。工程(ii)における反応液は、粒子(A)と単量体(B1)との反応物と、重合開始剤(C)と、単量体(B2)と、溶媒及び/又は分散媒と、必要に応じその他の成分と、を含むことができる。
【0066】
溶媒及び/又は分散媒としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤を例示できる。その他の成分としては、ラジカル重合反応の連鎖移動剤等が挙げられる。
【0067】
工程(i)における反応液の温度は、一例として、80〜120℃程度が挙げられる。
工程(ii)における反応液の温度は、ラジカル重合反応の反応温度であり、一例として、80〜140℃であってもよく、85〜105℃であってもよく、90〜100℃であってもよい。
【0068】
前記ラジカル重合反応は、重合開始剤(C)の半減期時間が2〜220分の条件下で行われたものであることが好ましく、3〜45分の条件下で行われたものであることが好ましく、4〜40分の条件下で行われたものであることが好ましく、5〜35分の条件下で行われたものであることがより好ましく、5〜20分の条件下で行われたものであることがさらに好ましく、5〜10分の条件下で行われたものであることが特に好ましい。
なお、前記ラジカル重合反応は、開始剤の半減期時間が5〜15分の条件下で行われたものであってもよく、15〜25分の条件下で行われたものであってもよく、25〜35分の条件下で行われたものであってもよい。
【0069】
実施形態の被覆顔料の製造方法によれば、上記工程(i)及び工程(ii)を行うことにより、実施形態の被覆顔料が製造される。
【0070】
実施形態に係る重合開始剤(C)を用いて、前記単量体(B1)と、前記単量体(B2)とをラジカル重合反応させると、得られたアクリル系共重合体(B)を含有する被覆樹脂が平滑で均一な厚みを有するものとなり、被覆顔料は、光輝感が良好で且つ耐薬品性に優れたものとなる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりがない限り「部」、「%」は質量基準である。
【0072】
〔樹脂被覆アルミニウム顔料の製造〕
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム顔料を、下記のとおり製造した。
【0073】
<実施例1>
容量3Lの4つ口フラスコに、原料A:アルミニウムペースト「MAXAL 64064」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径15μm、扁平形状、金属分67質量%)326gと、ミネラルスピリット(JX日鉱日石エネルギー社製)854gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。次に、アクリル酸溶液(原料B1:アクリル酸2.0gをミネラルスピリットに溶解させ、10.0質量%溶液に調製したもの)を15分かけて滴下し、100℃で1時間攪拌した。この工程により、原料Aのアルミニウム粒子表面と原料B1のアクリル酸との化学結合が形成された。結合の形成はFT−IRにより確認された。
次に、モノマー溶液(原料B2:トリメチロールプロパントリメタクリレート33gをミネラルスピリットに溶解させ、50.0質量%溶液に調製したもの)と開始剤溶液(原料C:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5gをミネラルスピリットに溶解させ、0.25質量%溶液に調製したもの)をそれぞれ同時に90分かけて滴下し、その後100℃で5時間重合した。重合終了後、常温まで冷却し、この反応液を濾過し、ミネラルスピリットを用いて洗浄することにより、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム顔料を得た。当該顔料における金属分と樹脂被覆層の質量比は86:14であった。
【0074】
<実施例2>
上記の実施例1において、原料Aをアルミニウムペースト「MAXAL 64047」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径21.5μm、扁平形状、金属分67質量%)に変更したこと以外、実施例1と同様の方法にて樹脂被覆アルミニウム顔料を得た。
【0075】
<実施例3>
上記の実施例1において、原料Aをアルミニウムペースト「MAXAL 64054」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径17.0μm、扁平形状、金属分67質量%)に変更したこと以外、実施例1と同様の方法にて樹脂被覆アルミニウム顔料を得た。
【0076】
<実施例4>
容量3Lの4つ口フラスコに、原料A:アルミニウムペースト「MAXAL 64064」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径15μm、扁平形状、金属分67質量%)326gとミネラルスピリット854gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。次に、アクリル酸溶液(原料B1:アクリル酸2.0gをミネラルスピリットに溶解させ、10.0質量%溶液に調製したもの)を15分かけて滴下し、100℃で1時間攪拌した。この工程により、原料Aのアルミニウム粒子表面と原料B1のアクリル酸との化学結合が形成された。
次に、モノマー溶液(原料B2:トリメチロールプロパントリメタクリレート33gをミネラルスピリットに溶解させ、50.0質量%溶液に調製したもの)と開始剤溶液(原料C:ジ−(t−ブチル)シクロヘキシリデンジペルオキサイド0.7gをミネラルスピリットに溶解させ、0.35質量%溶液に調製したもの)をそれぞれ同時に90分かけて滴下し、その後133℃で2時間重合した。重合終了後、常温まで冷却し、この反応液を濾過し、ミネラルスピリットを用いて洗浄することにより、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム顔料を得た。当該顔料における金属分と樹脂被覆層の質量比は86:14であった。
【0077】
<比較例1>
容量3Lの4つ口フラスコに、原料A:アルミニウムペースト「MAXAL 64064」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径15μm、扁平形状、金属分67質量%)326gと、ミネラルスピリット854gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。次に、原料B1:アクリル酸2.0gを加えて100℃で1時間攪拌した。この工程により、原料Aのアルミニウム粒子表面と原料B1のアクリル酸と化学結合が形成された。
次に、モノマー溶液(原料B2:トリメチロールプロパントリメタクリレート33gをミネラルスピリットに溶解させ、50.0質量%溶液に調製したもの)を全量投入した後に、開始剤溶液(原料C:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4.0gをミネラルスピリットに溶解させ、2.0質量%溶液に調製したもの)を30分かけて滴下し、100℃で5時間重合した。重合終了後、常温まで冷却し、この反応液を濾過し、ミネラルスピリットを用いて洗浄することにより、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム顔料を得た。
【0078】
<比較例2>
上記の比較例1において、ミネラルスピリットの使用量854gを3106gに変更したこと以外、比較例1と同様の方法にて樹脂被覆アルミニウム粒子を得た。
【0079】
<比較例3>
容量3Lの4つ口フラスコに、原料A:アルミニウムペースト「MAXAL 64064」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径15μm、扁平形状、金属分67質量%)326gとミネラルスピリット1134gを加え、不活性ガス雰囲気下で80℃に昇温した。次に、原料B1:アクリル酸1.1gを加え、80℃で30分間攪拌した。この工程により、原料Aのアルミニウム粒子表面と原料B1のアクリル酸との化学結合が形成された。
次に、原料B2:トリメチロールプロパントリメタクリレート21g及び2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル2.1gを全量投入し、80℃で5時間重合した。重合終了後、常温まで冷却し、この反応液を濾過し、ミネラルスピリットを用いて洗浄することにより、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム顔料を得た。
【0080】
<比較例4>
容量3Lの4つ口フラスコに、原料A:アルミニウムペースト「MAXAL 64064」(Benda−Lutz Werke社製、平均粒径15μm、扁平形状、金属分67質量%)326gとミネラルスピリット854gを加え、不活性ガス雰囲気下で100℃に昇温した。次に、アクリル酸溶液(原料B1:アクリル酸6.5gをミネラルスピリットに溶解させ、10.0質量%溶液に調製したもの)を15分かけて滴下し、100℃で1時間攪拌した。この工程により、原料Aのアルミニウム粒子表面と原料B1のアクリル酸との化学結合が形成された。
次に、モノマー溶液(原料B2:トリメチロールプロパントリメタクリレート33gをミネラルスピリットに溶解させ、50.0質量%溶液に調製したもの)と開始剤溶液(原料C:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)4.0gをミネラルスピリットに溶解させ、0.25質量%溶液に調製したもの)をそれぞれ同時に90分かけて滴下し、その後100℃で5時間重合した。重合終了後、常温まで冷却し、この反応液を濾過し、ミネラルスピリットを用いて洗浄することにより、ペースト状の光輝材料である樹脂被覆アルミニウム顔料を得た。
比較例4では、前記トリメチロールプロパントリメタクリレート、及び前記開始剤溶液の投入後に、反応溶液中にゲル状樹脂粒発生し塗料化できなかったため、以降の評価は行わなかった。
【0081】
得られた樹脂被覆アルミニウム顔料の評価を、以下の方法により行った。
【0082】
〔SEM測定〕
樹脂被覆アルミニウム顔料を過剰のn−ヘキサンで超音波洗浄を10分間して、溶液を濾過後に、再度n−ヘキサンにて超音波洗浄・濾過後、自然乾燥を行い、樹脂被覆アルミニウム顔料の測定用サンプルを得た。
次いで、測定用サンプルに白金を蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEM 日本電子製JSM7800F)で顔料表面を観察し、評価した。測定倍率は50000倍とした。
【0083】
〔画像解析式粒度分布測定〕
上記の[SEM測定]により得られたSEM画像ファイルに対して、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(「Mac−View」Ver.4、マウンテック社製)にて、アルミ顔料表面に観察される樹脂粒の分布を測定した。
樹脂粒の直径は、測定エリアで観察される樹脂粒1粒子ごとに測定し、Heywood径(面積円相当径)を算出した。算出結果から樹脂被覆アルミニウム顔料表面に観察される付着樹脂について、面積円相当径が25nm以上の樹脂粒の割合(面積%)を計算した。
面積円相当径25nm以上の樹脂粒割合(面積%)=測定エリアにおける面積円相当径25nm以上の樹脂粒の総面積(μm
2)/測定エリア面積(μm
2)×100
なお、測定に使用した画像は、被覆樹脂が撮像されていた部分のみを測定エリアとして使用したため、測定エリア面積は被覆樹脂の面積に相当する。面積円相当径25nm以上の樹脂粒の総面積は、各面積円相当径から算出した。値は、複数個の樹脂被覆アルミニウム顔料の粒子表面に対しての観察結果の平均値として算出した。
面積円相当径25nm以上の樹脂粒割合(面積%)の結果を表1、
図1及び
図2に示す。
図1には実施例1の樹脂被覆アルミニウム顔料のSEM画像ファイルの画像解析式粒度分布測定結果の一例を示す。
図2には比較例1の樹脂被覆アルミニウム顔料のSEM画像ファイルの画像解析式粒度分布測定結果の一例を示す。
図1及び
図2中、線で囲まれた領域(一部斜線あり)は、面積円相当径25nm以上の樹脂粒を示している。
【0084】
〔アルミ比表面積測定:BET法〕
樹脂被覆アルミニウム顔料を過剰のn−ヘキサンで超音波洗浄を10分間して、溶液を濾過後に、再度n−ヘキサンにて超音波洗浄・濾過後、自然乾燥を行い、樹脂被覆アルミニウム顔料の測定用サンプルを得た。
得られた測定用サンプルについて、比表面積計(マウンテック製、Macsorb Model−1208)にて測定した。アルミ比表面積(m
2/g)はBET法による窒素ガスの吸着量から測定された樹脂被覆アルミニウム顔料1g当たりの表面積として求められ、使用したアルミ顔料の総表面積(m
2)は、測定されたアルミ比表面積(m
2/g)×アルミ顔料ペーストの質量(g)×固形分比(%)として算出し、アルミ単位面積(m
2)あたりのアクリル酸の質量(g)は、使用したアクリル酸量(g)/アルミ総表面積(m
2)として算出した。
【0085】
〔耐薬品性の評価〕
樹脂被覆アルミニウム顔料(不揮発分)4.4質量部と、ワニス{ベッコライト(登録商標)M−6003−60、DIC株式会社製}12.3質量部、スーパーベッカミン(登録商標)L−105−60(DIC株式会社製)1.8質量部、スーパーベッカミン(登録商標)J−820−60(DIC株式会社製)1.8質量部と、混合溶剤(ソルベッソ(登録商標)100(エクソン モービル社製):n−ブタノール=1:2)9.6質量部とを混ぜて、プラスチック板に塗装した。得られた塗板を30分間常温で乾燥した後、該塗板を140℃にて15分間加熱して塗膜を硬化させた。
上記で得られた塗板上に、スポイトにて10%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液を3滴垂らし、室温で15時間保管した。その後、塗板を水洗、乾燥し、水酸化ナトリウム水溶液滴下前後での塗膜の色差を目視評価することにより、耐薬品性を求めた。耐薬品性の評価としては、「優」:水酸化ナトリウム水溶液滴下前後で色差が確認できない場合を「10」、「劣」:水酸化ナトリウム水溶液滴下部分のアルミニウムが全溶解した場合を「1」として、10段階で相対評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
上記で評価した耐薬品性と、面積円相当径25nm以上の樹脂粒割合(面積%)との、評価結果をプロットしたものを
図3に示す。面積円相当径25nm以上の樹脂粒割合が少ないほど、耐薬品性が良好であった。
【0088】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。