(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール性樹脂層が、ヒートシール層(A)と、1%割線モジュラスが50〜150MPaの中間層(C1)と、1%割線モジュラスが20〜60MPaの中間層(C2)とが、(A)/(C2)/(C1)の順に積層された層である請求項1又は2に記載のシーラントフィルム。
前記中間層(C1)及び中間層(C2)が、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とする樹脂層であり、中間層(C1)の厚みが5〜20μmであり、中間層(C2)の厚みが5〜20μmである請求項6に記載のシーラントフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明のシーラントフィルムとラミネートフィルムを構成する各部分について詳述する。
本発明のシーラントフィルムは、ヒートシール層(A)を表層とするシール性樹脂層と、基材層(B)とを有する積層フィルムからなり、前記シール性樹脂層が、1%割線モジュラスが200MPa以下の樹脂層からなり、その厚みが15〜50μmであり、前記ヒートシール層(A)の1%割線モジュラスが20〜45MPaであり、その厚みが5μm以上であり、前記基材層(B)の1%割線モジュラスが250MPa以上であり、その厚みが1〜30μmである。
【0010】
[シール性樹脂層]
本発明のシーラントフィルムのヒートシール層(A)を表層とするシール性樹脂層としては、1%割線モジュラスが200MPa以下の樹脂層であり、その厚みが15〜50μmである。1%割線モジュラスは好ましくは15〜180MPa、より好ましくは20〜150MPaである。また、厚みは好ましくは18〜45μm、より好ましくは20〜40である。シール性樹脂層は単層構成の樹脂層であっても多層構成の樹脂層であってもよい。この範囲のシール性樹脂層であると、その軟質な樹脂層により被着体を構成する各種の熱可塑性樹脂素材に対する接着性が良好なシーラントフィルムとなり、該シーラントフィルムと延伸基材等とをラミネート加工したラミネートフィルムは各種容器の蓋材フィルムとして使用した場合に、加熱或いは加圧を含む殺菌工程等における内圧変化に伴うフィルムの伸び等の変形に前記シール性樹脂層が追従でき、ヒートシール層と容器のシール界面での剥離を生じさせにくくなるので、容器内の内圧変化に伴う破袋を抑制する耐圧性を向上させることが可能になる。
【0011】
[ヒートシール層(A)]
シール性樹脂層の表層を構成するヒートシール層(A)は1%割線モジュラスを20MPa以上とすることで開封時のシール性樹脂層の伸びを抑制でき、剥離時の糸引きを生じることなく好適な易開封性を実現できる。また、1%割線モジュラスを45MPa以下の樹脂層とすることで、被着体に対する接着性や、シール性樹脂層の伸び等の変形への追従性が良好となり、好適な耐圧性を実現できる。ヒートシール層(A)の1%割線モジュラスは好ましくは25〜42MPa、より好ましくは30〜39MPaである。
【0012】
ヒートシール層(A)の厚みは5μm以上とすることで、良好な接着性を実現できる。シール性樹脂層全体がヒートシール層(A)であってもよく上限は50μmであってもよい。当該厚みは、好ましくは5〜40μm、より好ましくは5〜30μmである。
【0013】
ヒートシール層(A)は、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とすることが好ましく、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の50質量%以上がエチレン系樹脂であることが好ましく、50〜97質量%がエチレン系樹脂であることがより好ましく、73〜88質量%であることがさらに好ましい。前記エチレン系樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体を好ましく使用でき、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を特に好ましく使用できる。エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体としては、特に限定されないが、なかでも酢酸ビニル及び/又はメチルメタクリレート由来成分含有率15〜25質量%ものが1%割線モジュラスを20〜45MPaに調整しやすく、高い柔軟性が得られ、高い耐内圧性を発現できることから好ましい。
【0014】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体としては、接着性の機能付与として(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸やその無水物を導入した変性物であってもよい。
【0015】
ヒートシール層(A)の樹脂組成物への被着体を構成する各種の熱可塑性樹脂素材に対する接着性の機能付与としては、粘着付与剤樹脂を用いることが好ましい。粘着付与剤樹脂としては、脂肪族系炭化水素樹脂(脂環式系炭化水素樹脂を含む)、芳香族系炭化水素樹脂、ロジン類、ポリテルペン系樹脂等が挙げられる。粘着付与剤樹脂としては、低臭気性、透明性、成形性等に優れることから、脂肪族系炭化水素樹脂が好ましく使用できる。粘着付与樹脂を併用する場合には、その含有量をヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の3〜30質量%とすることが好ましく、10〜25質量%とすることがより好ましい。
【0016】
脂肪族系炭化水素樹脂としては、例えば、ブテン−1、ブタジエン、イソブチレン、1,3−ペンタジエン等の炭素原子数4〜5のモノオレフィンまたはジオレフィンを主成分とする重合体、シクロペンタジエンやスペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量体化後重合させた樹脂等の環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を環内水添した樹脂等が挙げられる。芳香族系炭化水素樹脂としては、例えば、α−メチルトルエン、ビニルトルエン、インデン等のビニル芳香族系炭化水素を主成分とした樹脂等が挙げられる。ロジン類としては、例えば、ロジン、重合ロジン、ロジングリセリンエステル、ロジングリセリンエステルの水添物、ロジングリセリンエステルの重合物、ロジンペンタエリストリトールエステル、ロジンペンタエリストリトールエステルの水添物、ロジンペンタエリストリトールエステルの重合物等が挙げられる。ポリテルペン系樹脂としては、例えば、水添テルペン樹脂、テルペン−フェノール共重合樹脂、ジペンテン重合体、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、α−ピネン−フェノール共重合樹脂等が挙げられる。
【0017】
前記粘着付与剤樹脂としては、更に前記以外の合成樹脂系の粘着付与剤樹脂、例えば、酸変性C5石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。
【0018】
好ましい配合例として、ヒートシール層(A)における樹脂成分として、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂と粘着付与剤樹脂とを使用する場合、被着体を構成する各種の熱可塑性樹脂素材に対する接着性に優れ、製膜性が良好なことから、これらの重量比(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂/粘着付与剤樹脂)が97/3〜70/30となる範囲が好ましい。
【0019】
また、前記ヒートシール層(A)には、スチレン系樹脂を配合することも好ましい。スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンの単独重合体;ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の合成ゴムにスチレンの単量体をグラフト重合した耐衝撃性スチレン系樹脂等が挙げられる。スチレン系樹脂の配合は、特にスチレン系樹脂素材の被着体に対して有効であり、MFR1〜40g/10minのものが好ましく、5〜20g/10minのものが成形加工性に優れることからより好ましい。スチレン系樹脂を併用する場合には、その含有量をヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の5〜20質量%とすることが好ましく、8〜17質量%とすることがより好ましい。
【0020】
好ましい配合例として、ヒートシール層(A)における樹脂成分として、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、粘着付与剤樹脂及びスチレン系樹脂とを使用する場合、配合比としては、特にスチレン系樹脂素材の被着体に対して有効で透明性の低下が少ないことから、これらの質量比(共重合体/粘着付与剤/スチレン系重合体)が50〜92/3〜30/5〜20となる範囲であることが好ましい。
【0021】
ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の樹脂成分を含有してもよい。当該他の樹脂成分としては、上記以外のポリオレフィン系樹脂等を使用できるが、当該他の樹脂の含有量はヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
【0022】
前記ヒートシール層(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0023】
[中間層(C1)]
本発明に使用するシール性樹脂層は、上記ヒートシール層(A)のみから構成される層であってもよいが、他の中間層を積層してもよい。なお、中間層を積層する場合には、複数層が積層されたシール性樹脂層全体の1%割線モジュラスを200MPa以下とし、シール性樹脂層全体の厚みを15〜50μmとする。なお、シール性樹脂層が複数層からなる場合、シール性樹脂層全体の1%割線モジュラスは、シール性樹脂層と同一の組成で且つ同一の層比率で積層されたフィルムで、ASTM D882準拠の条件で測定した23℃における1%割線モジュラスをいう。当該シール性樹脂層構成としては、具体的には、ヒートシール層(A)と中間層(C1)とが積層された(A)/(C1)の2層構成、又は、ヒートシール層(A)と中間層(C2)と中間層(C1)とが積層された(A)/(C2)/(C1)の3層構成が好ましく例示できる。
【0024】
シール性樹脂層の基材層(B)側の表層に設けられる中間層(C1)としては、その1%割線モジュラスが50〜150MPaであることが好ましく、60〜120MPaであることがより好ましい。当該中間層(C1)を使用することで、シール性樹脂層をヒートシール層(A)のみから構成する場合に比べて、シーラントフィルムのコシを高めやすくなり、良好な接着性を得やすくなる。また、中間層(C1)に安価な樹脂を使用することで、シーラントフィルム全体のコストを低減しつつ、好適な特性を実現する等、当該中間層(C1)を設けることで、使用態様に応じたシーラントフィルムの設計変更がしやすくなる。
【0025】
中間層(C1)に含有される樹脂としては、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とすることが好ましく、中間層(C1)に含まれる樹脂成分中の50質量%以上がエチレン系樹脂であることが好ましく、60〜100質量%がエチレン系樹脂であることがより好ましく、75〜100質量%であることがさらに好ましい。当該エチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。これらのなかでも、中間層(C1)の1%割線モジュラスを50〜150MPaに調整しやすいことから、密度0.860〜0.945g/cm
3のエチレン系樹脂が好ましく、なかでも高い柔軟性が得られ、高い耐内圧性を発現できる密度0.880〜0.925g/cm
2の直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。高い柔軟性を有する前記エチレン系樹脂を使用することにより、前記ヒートシール層(A)および中間層(C2)の樹脂組成物として挙げた高価であるエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体を含有する前記ヒートシール層(A)および中間層(C2)の厚みを耐圧性の低下を抑制しつつ低減し、高価な樹脂の使用量を低減できるので経済性を向上させることが可能である。
【0026】
中間層(C1)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の樹脂成分を含有してもよい。当該他の樹脂成分としては、上記以外のポリオレフィン系樹脂等を使用できるが、当該他の樹脂の含有量は中間層(C1)に含まれる樹脂成分中の10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
【0027】
[中間層(C2)]
さらに、前記シール性樹脂層は、前記ヒートシール層(A)と前記中間層(C1)と間に、1%割線モジュラスが好ましくは20〜60MPaより好ましくは20〜45の中間層(C2)を設けてもよい。当該中間層(C2)を設けることで、シール性樹脂層を被着体とのシール性に寄与するヒートシール層(A)とシーラントフィルムのコシに寄与する中間層(C1)のみから構成する場合に比べて、耐圧性の向上に必要なシール性樹脂層の伸び等の変形への追従性を調整することが良好となり、好適な耐圧性を実現できるので、使用態様に応じたシーラントフィルムの設計変更がしやすくなる。
【0028】
中間層(C2)に含有される樹脂としては、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とすることが好ましく、中間層(C2)に含まれる樹脂成分中の50質量%以上がエチレン系樹脂であることが好ましく、60〜100質量%がエチレン系樹脂であることがより好ましく、75〜97質量%であることがさらに好ましい。当該エチレン系樹脂としては、前記ヒートシール層(A)に挙げたエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体を含有した樹脂組成物を使用することができ、加えて、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが使用できる。中間層(C2)に含有されるエチレン系樹脂は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体が好ましく、なかでも酢酸ビニル及び/又はメチルメタクリレート由来成分含有率15〜25質量%ものが1%割線モジュラスを20〜45MPaに調整しやすく、高い柔軟性が得られるので、高い耐内圧性を発現できることから好ましい。
【0029】
低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンは特に限定されずに使用することができるが、密度0.860〜0.945g/cm
3のエチレン系樹脂が好ましく、なかでも高い柔軟性が得られ、高い耐内圧性を発現できる密度0.880〜0.925g/cm
2の直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0030】
中間層(C2)には、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び、または 或いは/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体に、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを混合した樹脂組成物を使用することで、高価であるエチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−メチルメタクリレート共重合体等の樹脂の使用量を耐圧性の低下を抑制しつつ削減できるので、経済性を向上させることが可能である。
【0031】
前記中間層(C2)の厚みは好ましくは5〜20μmであり、より好ましくは7〜18である。
【0032】
また、中間層(C2)には上記エチレン系樹脂に、粘着付与樹脂を併用することも好ましい。特にヒートシール層(A)に粘着付与樹脂を使用する場合には、ヒートシール層(A)から中間層(C2)への粘着付与樹脂の移行を抑制でき、被着体との好適な接着性を保持しやすくなるため好ましい。
【0033】
使用する粘着付与樹脂としては、ヒートシール層(A)にて例示した粘着付与樹脂と同様のものを使用でき、好ましいものも同様である。粘着付与樹脂を併用する場合には、その含有量を(C2)に含まれる樹脂成分中の3〜30質量%とすることが好ましく、10〜25質量%とすることがより好ましい。
【0034】
中間層(C2)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の樹脂成分を含有してもよい。当該他の樹脂成分としては、上記以外のポリオレフィン系樹脂等を使用できるが、当該他の樹脂の含有量は中間層(C2)に含まれる樹脂成分中の10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
【0035】
[基材層(B)]
本発明のシーラントフィルムは、ヒートシール層(A)を表層とするシール性樹脂層に加えて基材層(B)の1%割線モジュラスが250MPa以上の樹脂層を有し、その厚みが1〜30μmである。この範囲の基材層(B)であると上述の軟質なヒートシール層(A)を表層とするシール性樹脂層に由来する積層フィルムの機械強度不足を補い、積層フィルムの生産時のフィルムの伸び等の問題を生じさせないので生産性を確保することができ、且つ蓋材フィルムとしての剛性を向上できるので各種容器における180°ピール強度を向上させることが可能になる。
【0036】
前記基材層(B)の1%割線モジュラスは250MPa以上、好ましくは265MPa以上、より好ましくは280MPa以上である。その上限は特に制限されないが、好ましくは1100MPa以下である。1%割線モジュラスが250MPa未満の樹脂層である場合、或いは基材層(B)を積層しない場合には、各種容器における180°ピール強度が低下し、接着性が低下するので、ヒートシール層(A)を表層とするシール性樹脂層が軟質な樹脂層であっても耐圧性が損なわれるし、シーラントフィルムの製造工程においてもフィルムが軟質であるためにロールへの巻き付きやフィルムの伸び等に成膜安定性の低下を招くことから、好ましくない。
【0037】
前記基材層(B)に含有される樹脂としては、エチレン系樹脂を主たる樹脂成分とすることが好ましく、基材層(B)に含まれる樹脂成分中の50質量%以上がエチレン系樹脂であることが好ましく、60〜100質量%がエチレン系樹脂であることがより好ましく、75〜100質量%であることがさらに好ましい。当該エチレン系樹脂としては、単一のエチレン系樹脂からなるものであっても、複数の密度やMFRの異なるエチレン系樹脂を混合して用いてもよく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。これらのなかでも、基材層(B)の1%割線モジュラスを250MPa以上に調整しやすいことから、密度0.925〜0.960g/cm
3のエチレン系樹脂が好ましく、密度0.925〜0.960g/cm
3の中密度〜高密度ポリエチレンがより好ましく、密度0.925〜0.940g/cm
3の中密度ポリエチレンが特に好ましい。また、これらは非ゴム質のオレフィン系樹脂であるとより好ましい。
【0038】
基材層(B)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の樹脂成分を含有してもよい。当該他の樹脂成分としては、上記以外のポリオレフィン系樹脂等を使用できるが、当該他の樹脂の含有量は基材層(B)に含まれる樹脂成分中の10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。
【0039】
[シーラントフィルムの製造方法]
本発明の易開封性のシーラントフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各層に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態でヒートシール層(A)/中間層(C1)/中間層(C2)/基材層(B)を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出する方法が挙げられる。共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた積層フィルムが得られるので好ましい。融点とTgとの差が大きい樹脂を積層するような場合は、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0040】
本発明のシーラントフィルムは、印刷適性やラミネート適性の向上を目的として、基材層(B)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。また、フィルム成膜加工性、機能性付与として、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、導電剤等を適宜添加、或いはコーティングしてもよい。これらの添加剤、コーティング剤としては、オレフィン系樹脂用の各種添加剤、コーティング剤を使用することが好ましい。
【0041】
[ラミネートフィルム]
本発明のシーラントフィルムは、一般に破断しない強度の確保、ヒ−トシール時の耐熱性確保、および印刷の意匠性向上等が図れることから、延伸基材フィルムとラミネートされることが望ましい。ラミネートする延伸基材フィルムとしては、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等が挙げられるが、破断強度、透明性等の点で2軸延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。また、前記延伸基材フィルムとしては、必要性に応じて、易裂け性処理や帯電防止処理が施されていてもよい。シーラントフィルムと延伸基材フィルムのラミネート方法としては、特に限定されないが、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート、多層押出コーティング等の複合化技術を用いればよい。ドライラミネート法で、前記シーラントフィルムと延伸基材フィルムとをラミネートする際に用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に合成例と実施例と比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の部及び%は全て重量基準である。
【0043】
<シール性樹脂層用樹脂組成物の製造>
(合成例1)
酢酸ビニル由来成分含有率30%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA1と略記する。)と環式脂肪族系石油樹脂(荒川化学製アルコンP−100。以下、石油樹脂1と略記する。)を、EVA1/石油樹脂1(質量比)=85/15で用い、これらの合計に対してエルカ酸アミド(ブロッキング防止剤)と平均粒径3μmの合成ゼオライトを、エルカ酸アミドが2000ppm、合成ゼオライトが5000ppmとなるように混合し、口径40mmの単軸押出機にて溶融混練後、ペレット化して、シール性樹脂層用のEVA系樹脂組成物1のペレットを得た。
【0044】
(合成例2)
酢酸ビニル由来成分含有率25%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA2と略記する。)と石油樹脂1を、EVA2/石油樹脂1(質量比)=85/15で用いた以外は、合成例1と同様の方法でペレット化して、シール性樹脂層用のEVA系樹脂組成物2のペレットを得た。
【0045】
(合成例3)
酢酸ビニル由来成分含有率21%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA3と略記する。)と石油樹脂1を、EVA3/石油樹脂1(質量比)=85/15で用いた以外は、合成例1と同様の方法でペレット化して、シール性樹脂層用のEVA系樹脂組成物3のペレットを得た。
【0046】
(合成例4)
酢酸ビニル由来成分含有率19%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA4と略記する。)と石油樹脂1を、EVA4/石油樹脂1(質量比)=85/15で用いた以外は、合成例1と同様の方法でペレット化して、シール性樹脂層用のEVA系樹脂組成物4のペレットを得た。
【0047】
(合成例5)
酢酸ビニル由来成分含有率15%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA5と略記する。)と石油樹脂1を、EVA5/石油樹脂1(質量比)=85/15で用いた以外は、合成例1と同様の方法でペレット化して、シール性樹脂層用のEVA系樹脂組成物5のペレットを得た。
【0048】
(合成例6)
酢酸ビニル由来成分含有率13%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA6と略記する。)と石油樹脂1を、EVA6/石油樹脂1(質量比)=85/15で用いた以外は、合成例1と同様の方法でペレット化して、シール性樹脂層用のEVA系樹脂組成物6のペレットを得た。
【0049】
(合成例7)
エチレン−メチルメタアクリレート共重合樹脂(メチルメタアクリレート由来成分含有率20%、MFR3.0g/10min。以下、EMMA1と略記する。)と石油樹脂1を、EMMA1/石油樹脂1(質量比)=85/15で用いた以外は、合成例1と同様の方法でペレット化して、シール性樹脂層用のEMMA系樹脂組成物1のペレットを得た。
【0050】
(実施例1)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物2〔1%割線モジュラス20MPa〕、中間層(C1)に直鎖状低密度ポリエチレン〔1%割線モジュラス50MPa〕(以下、PE1と略記する。)、基材層(B)に直鎖状低密度ポリエチレン75部および低密度ポリエチレン25部との混合物〔1%割線モジュラス250MPa〕(以下、PE3と略記する。)を用い、ヒートシール層用(A)押出機、中間層(C1)用押出機、基材層(B)用押出機のそれぞれに樹脂を供給し、共押出法によりTダイ温度240℃で(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmになるように押出し、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、基材層(B)の濡れ張力が40mN/mとなるようにコロナ放電処理を施した後、ロールに巻き取り、40℃の熟成室で24時間熟成させて、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0051】
(実施例2)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物3〔1%割線モジュラス32MPa〕、中間層(C1)にPE1、基材層(B)にPE3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0052】
(実施例3)
ヒートシール層(A)にEMMA系樹脂組成物1〔1%割線モジュラス35MPa〕、中間層(C1)にPE1、基材層(B)にPE3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0053】
(実施例4)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物4〔1%割線モジュラス39MPa〕、中間層(C1)にPE1、基材層(B)にPE3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0054】
(実施例5)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物5〔1%割線モジュラス45MPa〕、中間層(C2)に酢酸ビニル由来成分含有率19%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂〔1%割線モジュラス30MPa〕(以下、EVA7と略記する。)、中間層(C1)にPE1、基材層(B)にPE3を用い、ヒートシール層用(A)押出機、中間層(C2)用押出機、中間層(C1)用押出機、基材層(B)用押出機のそれぞれに樹脂を供給し、共押出法によりTダイ温度240℃で(A)/(C2)/(C1)/(B)の各層の厚さが5μm/10μm/15μm/5μmになるように押出した以外は、実施例1と同様の方法で、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0055】
(実施例6)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物5〔1%割線モジュラス45MPa〕、中間層(C1)にPE1、基材層(B)にPE3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0056】
(実施例7)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物3、基材層(B)にPE3を用い、ヒートシール層用(A)押出機、基材層(B)用押出機のそれぞれに樹脂を供給し、共押出法によりTダイ温度240℃で(A)/(B)の各層の厚さが15μm/30μmになるように押出した以外は、実施例1と同様の方法で、全厚が45μmの共押出積層フィルムを得た。
【0057】
(実施例8)
実施例2と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが10μm/5μm/15μmで、全厚が30μmの共押出積層フィルムを得た。
【0058】
(実施例9)
実施例2と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが30μm/20μm/3μmで、全厚が53μmの共押出積層フィルムを得た。
【0059】
(実施例10)
実施例2と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが30μm/20μm/30μmで、全厚が80μmの共押出積層フィルムを得た。
【0060】
(実施例11)
実施例2のうち、中間層(C1)に直鎖状低密度ポリエチレン〔1%割線モジュラス150MPa〕(以下、PE2と略記する。)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0061】
(実施例12)
実施例2のうち、基材層(B)に高密度ポリエチレン〔1%割線モジュラス900MPa〕(以下、PE4と略記する。)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/1μmで、全厚が31μmの共押出積層フィルムを得た。
【0062】
(比較例1)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物1〔1%割線モジュラス16MPa〕、中間層(C1)にPE1、基材層(B)にPE3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0063】
(比較例2)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物6〔1%割線モジュラス50MPa〕、中間層(C1)にPE1、基材層(B)にPE3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0064】
(比較例3)
実施例7と同様の方法で、(A)/(B)の各層の厚さが10μm/20μmで、全厚が30μmの共押出積層フィルムを得た。
【0065】
(比較例4)
実施例2と同様の方法で、(A)/(C1)/(B)の各層の厚さが30μm/30μm/5μmで、全厚が65μmの共押出積層フィルムを得た。
【0066】
(比較例5)
実施例2のうち、中間層(C1)にPE3を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、(A)/((C1)/(B)の各層の厚さが15μm/15μm/5μmで、全厚が35μmの共押出積層フィルムを得た。
【0067】
(比較例6)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物3、中間層(C1)にPE1を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(C1)の各層の厚さが10μm/5μmで、全厚が15μmの共押出積層フィルムを得た。
【0068】
(比較例7)
ヒートシール層(A)にEVA系樹脂組成物3、基材層(B)にPE3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、(A)/(B)の各層の厚さが40μm/40μmで、全厚が80μmの共押出積層フィルムを得た。
【0069】
実施例及び比較例にて得られた積層フィルム等につき、以下の評価を行った。得られた結果は下表のとおりである。
【0070】
[1%割線モジュラスの測定]
前記1%割線モジュラスの測定は、長手方向がフィルムの流れ方向(縦方向)となるように、縦300mm×横25.4mm(標線間隔200mm)で切り出した厚さ30μmのフィルムを試験片として用い、ASTM D−882に準拠して引張速度20mm/minの条件で行う。前記の1%割線モジュラスの測定に用いる厚さ30μmのフィルムとしては、Tダイを有する押出機と水冷方式の金属冷却ロールを有するフィルム製造装置の押出機を用いて、ヒートシール層(A)、中間層(C2)、中間層(C1)または、基材層(B)の各樹脂層と同一組成の樹脂からなる厚さ30μmのフィルムをそれぞれ製膜し、40℃で48時間放置して熟成させた後、測定条件である23℃に24時間放置した厚さ30μmのフィルムを用いた。
【0071】
[ラミネートフィルムの作製方法]
上記の実施例及び比較例で得られた共押出多層フィルムの基材層(B)の表面に二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)をドライラミネーションで貼り合わせて、40℃で36時間エージングし、ラミネートフィルムを得た。この際、ドライラミネーション用接着剤としては、DIC株式会社製の2液硬化型接着剤(ポリエステル系接着剤「ディックドライLX500」及び硬化剤「KW75」)を使用した。
【0072】
[ヒートシール強度の測定方法]
得られたラミネートフィルムのヒートシール層(A)表面とA−PETシート(100μm)とを重ね合わせ、ヒートシール温度170℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールした。次いで、ヒートシールしたフィルムを23℃で24時間自然冷却後、15mm幅の短冊状に切り出して試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、ヒートシール強度を測定した。
【0073】
[ヒートシール性の評価]
上記で測定したヒートシール強度の結果から、下記の基準でA−PETシートとのヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が13N/15mm以上のもの。
×:ヒートシール強度が13N/15mm未満のもの。
【0074】
[破裂強度の測定方法]
得られたラミネートフィルムを10cm×10cmに切り出し、ヒートシール層(A)表面がA−PET製88mm角型成形容器(深さ22mm)のフランジ側に来るように重ね合わせて、カップシーラー(シンワ機械製カップシーラー)を用いて、170℃の温度に調節された上部ヒートシール金型で、シール圧力約65Kg、シール時間1秒の条件でヒートシールした。次いで、JIS Z 0238:1998[ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法] 8. 容器の破裂強さ試験に準拠し、試料容器を水平面に置き、蓋部に厚さ1mm程度のゴムシートを固定し、次に、ゴムシート部分に空気針を突き刺し、試験機から空気を1.0±0.2l/minの量で試料容器内に送入する。空気の送入は容器が破裂するまで続け、容器が破裂したときの最大圧力を測定し、破裂強度とした。
【0075】
[耐圧性の評価]
上記で測定した破裂強度の結果から、下記の基準で耐圧性を評価した。
○:破裂強度が30KPa以上のもの。
×:破裂強度が30KPa未満のもの。
【0076】
[開封性の評価方法]
上記の破裂強度の測定と同様の手順で、ラミネートフィルムをA−PET製角型成形容器にヒートシールした試料容器を作成した。次いで、ヒートシールされたフランジ部分の外側フィルム部分を手で掴み、フランジ水平面から45度の角度で蓋材を引き剥がしたときの開封状態を評価した。
【0077】
[開封性の評価]
○:開封時に膜残り等の剥離不良が発生しないもの。
×:開封時に膜残り等の剥離不良が発生するもの。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
上記表から明らかなとおり、本発明の実施例1〜12の積層フィルムを用いたラミネートフィルムは、ヒートシール性と耐圧性が良好でありながら、易開封性を有するものであり、包装容器の蓋材等の用途に好適である。一方、比較例1〜7のものは、好適なヒートシール性、耐圧性、易開封性が得られないものであった。