(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る中空ナノ粒子、中空シリカナノ粒子及びそれらの製造方法について詳細に説明する。
【0014】
<中空ナノ粒子>
図1は、本発明の一実施形態に係る中空ナノ粒子の断面図である。
中空ナノ粒子100は、ブロック共重合体10と、シリカ11とを含むシェル層20からなり、シェル層20で覆われた内部は空洞21となっており、中空構造を有する。また、ブロック共重合体10は、疎水性有機鎖1及びポリアミン鎖2を有する。中空ナノ粒子100は、シェル層に、ブロック共重合体10とシリカ11とを含むため、樹脂と混合した場合に馴染みやすく、また、シェル層20にブロック共重合体10とシリカ11とからなる分子レベルでのハイブリッド構造を有し、シリカのみからなる中空粒子よりも機械強度がより向上されている。
【0015】
中空ナノ粒子100の空隙率は、20体積%以上が好ましく、20体積%以上70体積%以下がより好ましく、20体積%以上60体積%以下がさらに好ましく、20体積%以上50体積%以下が特に好ましく、22体積%が最も好ましい。空隙率が上記下限値以上であることで、屈折率及び誘電率がより低くなり、またより軽量化されたものとすることができる。一方、上記上限値以下であることで、中空ナノ粒子の機械強度をより良好なものとすることができる。
【0016】
なお、空隙率は、中空ナノ粒子の体積に対する空隙の体積の割合であり、例えば、以下に示す方法を用いて計算することができる。まず、中空ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像から粒子径(外径)R
1及び厚さt
1を測定する。次いで、中空ナノ粒子の体積V
x1及び空隙の体積V
x2を以下の式を用いてそれぞれ算出する。
【0017】
V
x1 = {4×π×(R
1/2)
3}/3
V
x2 = {4×π×(R
1/2−t
1)
3}/3
【0018】
得られた中空ナノ粒子の体積V
x1及び空隙の体積V
x2から、空隙率(体積%)は、以下の式を用いて計算することができる。
【0019】
空隙率(体積%) = V
x2/V
x1×100
【0020】
中空ナノ粒子100の粒子径R
1の平均値(すなわち、平均粒子径)は、20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上500nm以下がより好ましく、20nm以上300nm以下がさらに好ましく、20nm以上100nm以下が特に好ましく、50nmが最も好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であることで、空隙率をより高く保つことができる。一方、上記上限値以下であることで、中空ナノ粒子の機械強度をより良好なものとすることができる。
【0021】
中空ナノ粒子100の粒子径R
1及びt
1は、例えば、TEM像から測定することができ、粒子径R
1の平均値(平均粒子径)及び厚さt
1の平均値は公知の画像解析ソフトを用いて複数個(例えば、100個以上500個以下程度等)の中空ナノ粒子の粒子径R
1の測定値の平均値を算出することで得られる。或いは、平均粒子径は小角散乱(リガク製、TTRII)で測定し、散乱曲線のNANO−Solver解析により見積もることもできる。
【0022】
なお、本明細書において、「粒子径」とは、中空構造を有する粒子の場合にはその外径を意味する。
【0023】
中空ナノ粒子100のシェル層20の厚さt
1は、3nm以上100nm以下が好ましく、3nm以上50nm以下がより好ましく、5nm以上40nm以下がさらに好ましく、5nm以上20nm以下が特に好ましく、10nmが最も好ましい。シェル層20の厚さt
1が上記下限値以上であることで、中空ナノ粒子の機械強度をより良好なものとすることができる。一方、上記上限値以下であることで、空隙率をより高く保つことができる。
【0024】
中空ナノ粒子100の粒子径R
1及び厚さt
1は、上記空隙率の範囲となるように適宜調整される。粒子径R
1及び厚さt
1の調整方法の詳細については、後述する。
【0025】
[ブロック共重合体]
シェル層20に含まれるブロック共重合体10は、疎水性有機鎖1及びポリアミン鎖2を有する。
【0026】
疎水性有機鎖1は、有機溶媒中で溶解し、水性溶媒中でブロック共重合体10が隙間なく並んだ二重層からなるベシクルを形成できれば特に限定されず、例えば、炭素数5以上(好ましくは、炭素数10以上)のポリアルキレン鎖を有する化合物、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン等の疎水性ポリマーが挙げられる。疎水性有機鎖1の分子量としては、ベシクルをナノサイズで安定化できる範囲であれば特に限定されないが、好適にベシクルを形成できることから、疎水性有機鎖1における重合単位の繰り返し単位数が5以上1000以下であることが好ましく、5以上500以下であることがより好ましい。
【0027】
ポリアミン鎖2は、水性溶媒中で溶解して、ブロック共重合体10が隙間なく並んだ二重層からなるベシクルを形成できれば特に限定されず、例えば、アクリレート系ポリアミン鎖、分岐鎖状ポリエチレンイミン鎖、直鎖状ポリエチレンイミン鎖、ポリアリルアミン鎖等が挙げられる。目的とする中空ナノ粒子を効率的に製造できることから、アクリレート系ポリアミン鎖が好ましい。また、ポリアミン鎖2の分子量としては、疎水性有機鎖1とのバランスを取って、ベシクルを形成できる範囲であれば特に制限されないが、好適にベシクルを形成できることから、ポリアミン鎖2における重合単位の繰り返し単位数が5以上1000以下であることが好ましく、5以上100以下であることがより好ましい。
【0028】
ポリアミン鎖2の分子構造も特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、デンドリマー状、星状、櫛状等が挙げられる。シリカ析出の鋳型とするベシクルを効率的に形成でき、製造コストをより低くできることから、直鎖状のアクリレート系ポリアミン鎖が好ましい。
【0029】
ポリアミン鎖2の骨格には一種類のアミン重合単位のみからなるものであってもよく、二種類以上のアミン単位の共重合からなるポリアミン鎖(共重合体)であってもよい。また、ポリアミン鎖2の骨格には、水性溶媒中でベシクルを形成できる範囲であれば、アミン以外の重合単位が存在していてもよい。好適にベシクルを形成できる点からは、ポリアミン鎖2のアミン骨格の中における他の重合単位の割合は、50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、15モル%以下がさらに好ましい。
【0030】
ブロック共重合体10中の疎水性有機鎖1とポリアミン鎖2との割合は、水性溶媒中で安定なベシクルを形成できる範囲であれば特に限定されない。容易にベシクルを形成できることから、疎水性有機鎖1に対するポリアミン鎖2の割合は質量比で5/100以上80/100以下が好ましく、10/100以上70/100以下がより好ましく、15/100以上60/100以下がさらに好ましく、20/100以上30/100以下が特に好ましく、21/100以上23/100以下が最も好ましい。
【0031】
また、ブロック共重合体10の数平均分子量は、2000以上100000以下が好ましく、2500以上80000以下がより好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましく、6000以上30000以下が特に好ましく、6800以上7200以下が最も好ましい。
また、ブロック共重合体10の重量平均分子量は、2000以上100000以下が好ましく、25000以上80000以下がより好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましく、6000以上30000以下が特に好ましく、8000以上8300以下が最も好ましい。
数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲であるブロック共重合体10を用いることで、中空ナノ粒子100の厚さt
1を3nm以上100nm以下に制御することができ、20体積%以上と高い空隙率の中空ナノ粒子100が得られる。
なお、ブロック共重合体10の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、後述する実施例に記載の方法を採用することができる。
【0032】
ブロック共重合体10は、公知のリビング重合を用いることにより得られる。リビング重合としては、例えば、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシドリビングラジカル重合(NMP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、有機テルル媒介リビングラジカル重合(TERP)等のリビングラジカル重合が利用できる。このうち、分子量を最も精密に制御できる点でリビングアニオン重合が好ましい。リビングアニオン重合を用いてブロック重合体10を得る方法としては、例えば、参考文献1(国際公開第2015/041146号)に記載の方法等を用いて、得られる。具体的には、まず、疎水性有機鎖1を構成する第1の重合性単量体を重合開始剤の存在下でリビングアニオン重合させて第1の重合性単量体由来の重合体ブロック(A)を得る。次いで、重合体ブロック(A)の成長末端に、ジフェニルエチレン又はα−メチルスチレンを反応させて、重合体ブロック(A)の片末端にジフェニルエチレン又はα−メチルスチレン由来の重合単位(B)が結合した中間重合体を得る。次いで、該中間重合体が有するジフェニルエチレン又はα−メチルスチレン由来の重合単位(B)を成長末端として、さらにポリアミン鎖2を構成する第2の重合性単量体を重合開始剤の存在下でリビングアニオン重合させて、第2の重合性単量体由来の重合体ブロック(C)を形成し、ブロック共重合体10を得る。これらの反応は、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて行なうことができる。
【0033】
第1の重合性単量体としては、例えば、スチレン又はその誘導体(ジフェニルエチレン及びα−メチルスチレンを除く。)等が挙げられる。
前記スチレン誘導体としては、例えば、p−ジメチルシリルスチレン、p−ビニルフェニルメチルスルフィド、p−ヘキシニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。これらのスチレン誘導体は、スチレンと併用してもよく、また、スチレン誘導体は、1種で用いることもでき、2種以上併用することもできる。なお、以下において、単に「スチレン」と記載した場合、ジフェニルエチレン及びα−メチルスチレンを除くスチレン誘導体をも含む概念であるとする(ただし、実施例及び比較例中の記載は除く)。
【0034】
第2の重合性単量体としては、例えば、アルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート化合物(c)(以下、単に「(メタ)アクリレート化合物(c)」と略記する場合がある)等が挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物(c)としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリレート化合物(c)は、1種で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0035】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいう。
【0036】
(メタ)アクリレート化合物(c)を重合する際に、その他の(メタ)アクリレート化合物や、アクリロニトリル、1,3−ブタジエン、イソプレン、ビニルピリジンといった共役モノマー等を併用してもかまわない。
【0037】
その他の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有する(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート等のシラン系(メタ)アクリレート;ジアルキルシロキシ基、ジフェニルシロキシ基、トリアルキルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基といったシロキシ基を有する(メタ)アクリレート;かご型シルセスキオキサン基を有する(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素系(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらのその他の(メタ)アクリレート化合物は、1種で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0038】
また、前記パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ブロック共重合体の製造方法において、第1工程は、スチレンを含有する溶液を、重合開始剤の存在下でリビングアニオン重合させて、スチレン由来の重合体ブロック(A)を得た後に、ジフェニルエチレン又はα−メチルスチレンと反応させる工程である。この工程を経ることで、スチレン由来の重合体ブロック(A)の片末端にα−メチルスチレン由来の重合単位(B)が結合した中間重合体が得られる。また、この第1工程では、α−メチルスチレンを用いる場合には、スチレン及びα−メチルスチレンの混合液を、重合開始剤の存在下でリビングアニオン重合させてスチレン由来の重合体ブロック(A)の片末端にα−メチルスチレン由来の重合単位(B)が結合した中間重合体を得てもよい。
【0040】
次いで、第2工程として、第1工程で得られた中間重合体が有するジフェニルエチレン又はα−メチルスチレン由来の重合単位(B)を成長末端として、さらに、(メタ)アクリレート化合物(c)を重合開始剤の存在下でリビングアニオン重合させて、(メタ)アクリレート化合物由来の重合体ブロック(C)を形成することによって、目的とするブロック共重合体10が得られる。
【0041】
上記のリビングアニオン重合の際に、スチレン、ジフェニルエチレン又はα―メチルスチレン及び重合開始剤に加え、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン及びピリジンからなる群から選ばれる1種以上の添加剤を存在させることで、通常は低温で行う必要があるリビングアニオン重合を工業的に製造可能な温度域で行うことができる。ここで、これら添加剤は、上記重合性単量体の構造又は重合反応により得られた重合体の構造に存在するエステル結合への重合開始剤(アニオン)の求核反応を防ぐ働きがあるものと考えられる。また、これらの添加剤の使用量は、前記重合開始剤の量に応じて適宜調整することができるが、重合反応速度を高め、生成する重合体の分子量制御が容易となることから、重合開始剤1モルに対して0.05モル以上10モル以下が好ましく、0.1モル以上5モル以下がより好ましい。
【0042】
上記のスチレン、ジフェニルエチレン又はα―メチルスチレン、(メタ)アクリレート化合物及び重合開始剤は、有機溶媒を用いて、希釈又は溶解して、溶液として反応に用いることが好ましい。
【0043】
前記有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、及びこれらの誘導体等の炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトシキエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム等のエーテル溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0044】
前記第1工程で用いられるスチレン及びα−メチルスチレンの混合液を有機溶媒で希釈する際には、単位時間当たりのブロック共重合体の収量を効率よく増加させることができることから、スチレンの混合液中の濃度は0.5M以上8M以下が好ましく、1M以上7M以下がより好ましく、2M以上6M以下がさらに好ましい。なお、「M」はmol/Lを示し、以降同じである。
【0045】
また、前記第1工程で用いるスチレン及びα−メチルスチレンの混合液を有機溶媒で希釈する際のα−メチルスチレンの混合液中の濃度は、得られるブロック共重合体中のα−メチルスチレン由来の重合単位(B)の繰り返し単位数に応じて適宜調整することができる。例えば、前記繰り返し単位数の平均を1とする場合、α−メチルスチレンの混合液中の濃度は、反応溶液中の重合開始剤のモル数と同モル数になるように濃度を調整する。前記繰り返し単位数はスチレンの反応末端を全てα−メチルスチレンに置き換えるために1以上が好ましく、α−メチルスチレンの反応速度を考慮すると、1以上5以下がより好ましく、1以上3以下がさらに好ましい。
【0046】
一方、前記第2工程で用いる(メタ)アクリレート化合物(c)を有機溶媒で希釈する際には、第1工程で得られた中間重合体の溶液との混合性と単位時間当たりの重合体の収量のバランスを考慮すると、0.5M以上が好ましく、1M以上6M以下がより好ましく、2M以上5M以下がさらに好ましい。
【0047】
前記重合開始剤としては、有機リチウムを用いることができるが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等)、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルコキシアルキルリチウム;α−メチルスチリルリチウム;1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウム、3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム等のジアリールアルキルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体等が挙げられる。これらの中でも、重合反応を効率よく進行させることができることから、アルキルリチウムが好ましく、その中でもn−ブチルリチウム又はsec−ブチルリチウムが好ましい。また、工業的に入手が容易で安全性が高いことから、n−ブチルリチウムがより好ましい。これらの重合開始剤は、1種で用いることもでき、2種以上併用することもできる。
【0048】
重合開始剤の有機溶媒溶液中の濃度としては、単位時間当たりの重合体の収量を効率よく増加させることができることから、0.01M以上が好ましく、0.05M以上3M以下がより好ましく、0.05M以上2M以下がさらに好ましい。また、重合開始剤を希釈又は溶解して溶液とする有機溶媒としては、重合開始剤の溶解性や重合開始剤活性の安定性を考慮すると、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
【0049】
スチレン等の重合性単量体及び重合開始剤の溶液を、高濃度でマイクロリアクターの流路へ導入する際には、リビングアニオン重合をスムーズに進行させるために、マイクロリアクターの流路内に重合により形成される高粘度の重合性単量体の重合物の溶液を確実に送液する必要がある。特に、第1工程で得られた中間重合体と、(メタ)アクリレート化合物(c)とをリビングアニオン重合をさせる際には、高粘度の第1工程で得られた中間重合体の溶液と、低粘度の(メタ)アクリレート化合物の溶液とを、粘度が大きく異なるにもかかわらず、確実に混合し、リビングアニオン重合させ、生成する高粘度のブロック共重合体の溶液を確実に送液できる必要がある。このように高粘性の溶液を確実に、マイクロリアクターの流路へ導入するポンプとしては、高圧送液が可能で、かつ脈流が非常に小さいポンプが好ましく、そのようなポンプとしてはプランジャーポンプやダイヤフラム式ポンプが好ましい。
【0050】
また、スチレン等の重合性単量体、重合開始剤、生成した中間重合体の溶液をマイクロリアクターの流路へ導入する際の送液圧力としては、効率よく重合体の製造が可能となることから、2MPa以上32MPa以下が好ましく、3MPa以上20MPa以下がより好ましく、4MPa以上15MPa以下がさらに好ましい。このような圧力で送液が可能なポンプとしては、液体クロマトグラフィー用のプランジャーポンプが好ましく、ダブルプランジャーポンプがより好ましい。また、ダブルプランジャーポンプの出口にダンパーを装着し脈流を抑えて送液する方法がさらに好ましい。
【0051】
ブロック共重合体10の製造で用いるマイクロリアクターは、複数の液体を混合可能な流路を備えるものであるが、流路が設置された伝熱性反応容器を有するものが好ましく、内部に微小管状流路が形成された伝熱性反応容器を有するものがより好ましく、表面に複数の溝部が形成された伝熱性プレート状構造体を積層された伝熱性反応容器を有するものが特に好ましい。
【0052】
リビングアニオン重合反応は、従来のバッチ方式での反応温度である−78℃以下の温度で行うこともできるが、工業的に実施可能な温度である−40℃以上の温度でも行うことができ、−28℃以上でも行うことができる。反応温度が−40℃以上であると、簡易な構成の冷却装置を用いて重合体を製造することができ、製造コストを低減できることから好ましい。また、前記温度が−28℃以上であると、より簡易な構成の冷却装置を用いて重合体を製造することができ、製造コストを大幅に低減できることから好ましい。
【0053】
2種以上の重合性単量体又は重合体の溶液を混合する好ましい形態のマイクロミキサーシステムとしては、従来の方法と比較して高濃度でマイクロリアクターの流路へ導入しリビングアニオン重合をスムーズに進行させるために、高濃度の重合性単量体溶液と重合開始剤溶液を短時間で混合できるマイクロミキサーであることが好ましい。
【0054】
前記マイクロミキサーは、マイクロリアクターが備える複数の液体を混合可能な流路であるが、このマイクロミキサーとしては、市販されているマイクロミキサーを用いることが可能であり、例えば、インターディジタルチャンネル構造体を備えるマイクロリアクター、インスティチュート・フュール・マイクロテクニック・マインツ(IMM)社製シングルミキサー及びキャタピラーミキサー;ミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM−1、YM−2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);マイクロ化学技研社製IMTチップリアクター;東レエンジニアリング開発品マイクロ・ハイ・ミキサー等が挙げられ、いずれも使用することができる。
【0055】
また、ブロック共重合体10の製造方法において、第1工程及び第2工程におけるリビングアニオン重合の反応時間、反応温度や、第1の重合性単量体及び第2の重合性単量体の種類や配合比を適宜調整することで、得られるブロック共重合体10中の疎水性有機鎖1及びポリアミン鎖2の質量比が上記範囲となるように調整することができる。
【0056】
また、ブロック共重合体10は、様々な機能性を有する分子により修飾されていてもよい。修飾については、疎水性有機鎖1への修飾であってもよく、ポリアミン鎖2への修飾であってもよい。ブロック共重合体10への修飾は、水性溶媒中で安定なベシクルを形成できれば、どのような機能性分子を導入してもよく、修飾されたブロック共重合体10のベシクルを鋳型としてシリカを析出することによって、任意の機能性分子が導入された中空ナノ粒子を得ることができる。このような観点から、特に蛍光性化合物で修飾することが好ましく、該蛍光性化合物を用いた場合には、得られる中空ナノ粒子も蛍光性を発現し、種々の応用分野で好適に用いることが可能となる。
【0057】
好ましいブロック表重合体10としては、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられるが、これに限定されない。式(1)中、m/nは100/80以上100/5以下が好ましく、100/70以上100/10以下がより好ましく、100/60以上100/15以下がさらに好ましく、100/20以上100/30以下が特に好ましく、21/100以上23/100以下が最も好ましい。
【0059】
[シリカ]
シェル層20に含まれるシリカ11としては、ブロック共重合体10からなるシェル層22に含まれるポリアミン鎖2を触媒及び足場としたシリカソースのゾルゲル反応による形成される。シリカソースとしては、例えば、水ガラス、テトラアルコキシシラン類、テトラアルコキシシランのオリゴマー類等が挙げられる。
【0060】
テトラアルコキシシラン類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
オリゴマー類としては、テトラメトキシシランの4量体、テトラメトキシシランの7量体、テトラエトキシシラン5量体、テトラエトキシシラン10量体等が挙げられる。
【0062】
また、シリカ11としては、上記に例示されたものに加えて、ポリシルセスキオキサンを含んでもよい。ポリシルセスキオキサンは、有機シランから誘導されるシリコーン樹脂である。有機シランとしては、アルキルトリアルコキシシラン類、ジアルキルアルコキシシラン類、トリアルキルアルコキシシラン類等が挙げられる。
【0063】
アルキルトリアルコキシシラン類としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシトキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシトキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトメトキシシラン、3−メルカプトトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
ジアルキルアルコキシシラン類としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
トリアルキルアルコキシシラン類としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0066】
<中空ナノ粒子の製造方法>
図3は、本発明の一実施形態に係る中空ナノ粒子及び中空シリカナノ粒子の製造方法を示す概略構成図である。以下、
図3を参照しながら、中空ナノ粒子の製造方法について詳細を説明する。
【0067】
中空ナノ粒子は、例えば、以下の工程1)〜2)を含む製造方法により得られる。
1)疎水性有機鎖1及びポリアミン鎖2を有するブロック共重合体10を溶解した有機溶媒を攪拌しながら、水性溶媒を滴下して、前記ブロック共重合体からなるベシクル50の分散液を得る工程;
2)前記ベシクル50の分散液にシリカソースを加えて、前記ベシクル50を鋳型として、前記シリカソースのゾルゲル反応を行ない、シリカ11を析出させて、中空ナノ粒子100を得る工程
【0068】
工程1)では、まず、ブロック共重合体10を有機溶媒中に溶解する。有機溶媒としては、上記ブロック共重合体10の製造方法の説明において例示されたものと同様のものが挙げられる。次いで、ブロック共重合体10を溶解した有機溶媒を攪拌しながら、水性溶媒を滴下する。これにより、中空構造を有するベシクル50を自己組織化によって形成させることができる。このとき、有機溶媒中のブロック共重合体10の濃度、水性溶媒と有機溶媒の容積比、水性溶媒を滴下する速度、有機溶媒の攪拌速度を適宜調整することで、得られるベシクル50の粒子径を制御することができる。また、後述する工程2)においてベシクル50を鋳型として、シリカ11が析出されることから、ベシクル50の粒子径を制御することで、得られる中空ナノ粒子100の平均粒子径が上記範囲となるように制御することができる。
【0069】
ベシクル50のシェル層22は、ブロック共重合体10を主成分とするものであり、疎水性有機鎖1同士の疎水相互作用により疎水性有機鎖1が層の内側にあり、親水性であるポリアミン鎖2が層の外側にある二重層を形成し自己組織化することによって、有機溶媒及び水性溶媒の混合溶媒中において安定なベシクル50を形成すると考えられる。
【0070】
ベシクル50を形成する際の水性溶媒としては、水を含み、安定なベシクル50を形成できるものであれば、特に限定されず、水、水と水溶性溶媒の混合溶液が挙げられる。混合溶液を用いる場合は、混合溶液中の水の量は、体積比として水/水溶性溶媒が0.5/9.5以上3/7以下とすることができ、0.1/9.9以上5/5以下が好ましい。生産性、環境やコスト等の観点から、水とアルコールの混合溶液を用いてもよく、水のみを用いることが好ましい。
【0071】
有機溶媒中のブロック共重合体10の濃度は、基本的にベシクル同士の融合が起こらない範囲であればよいが、通常、0.05w/v%以上15w/v%以下とすることができ、0.1w/v%以上10w/v%以下が好ましく、0.2w/v%以上5w/v%以下がより好ましく、0.5w/v%以上4w/v%%以下がさらに好ましく、1w/v%以上3w/v%以下が特に好ましく、2w/v%が最も好ましい。
【0072】
有機溶媒に対する水性溶媒の混合比は、容積比で60/40以上99/1以下とすることができ、70/30以上97/3以下が好ましく、80/20以上95/5がより好ましく、85/15以上93/7以下がさらに好ましく、90/10が特に好ましい。
混合比が上記範囲であることで、安定なベシクル50を形成することができる。
【0073】
次いで、工程2)では、水性溶媒の存在下で、ベシクル50を鋳型として、シリカソースのゾルゲル反応を行なう工程である。これにより、ベシクル50のシェル層22にシリカ11を析出させることができる。ベシクル50のシェル層22に含まれるポリアミン鎖2はシリカソースのゾルゲル反応の触媒及び足場として機能し、ブロック共重合体10とシリカ11とからなる分子レベルでのハイブリッド構造を形成する。また、シリカの析出後に、有機シランを用いてさらにゾルゲル反応を行なうことで、中空ナノ粒子100にポリシルセスキオキサンを含有させることができる。有機シランとしては、上記シリカの説明において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0074】
ゾルゲル反応を行う方法としては、ベシクル50の分散液とシリカソースとを混合することで、中空ナノ粒子100を容易に得ることができる。シリカソースとしては、上記シリカの説明において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0075】
上記ゾルゲル反応は、溶媒の連続相では起こらず、ベシクル50のシェル層22のみで選択的に進行する。従って、ベシクル50が解体することがなければ、反応条件は任意である。
【0076】
ゾルゲル反応においては、ベシクル50の量に対するシリカソースの量は特に制限されない。目的とする中空ナノ粒子100の組成に応じて、ベシクル50とシリカソースとの割合は適宜に設定することができる。
【0077】
得られる中空ナノ粒子100中のシリカの含有量は、一般的には中空ナノ粒子全体の10質量%以上95質量%以下とすることができ、20質量%以上90質量%以下であることが好ましい。シリカの含有量はゾルゲル反応の際に用いたブロック共重合体10の中のポリアミン鎖2の含有量、ベシクルの量、シリカソースの種類及び量、ゾルゲル反応時間や温度等を変えることで変化させることができる。
【0078】
また、シリカ析出後に、有機シランを用いて、中空ナノ粒子100にポリシルセスキオキサンの構造を導入する場合は、有機シランの量としては、シリカソースの量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0079】
ゾルゲル反応の温度は特に制限されず、例えば、0℃以上90℃以下が好ましく、10℃以上40℃以下がより好ましい。効率的に中空ナノ粒子100を製造する観点から、反応温度は15℃以上30℃以下がさらに好ましい。
【0080】
ゾルゲル反応の時間は1分から数週間まで様々であり任意で選択できるが、水ガラスやアルコキシシランの反応活性の高いメトキシシラン類の場合は、反応時間は1分以上24時間以下とすることができ、反応効率を上げることから、反応時間は30分以上5時間以下が好ましい。また、反応活性が低い、エトキシシラン類、ブトキシシラン類の場合は、ゾルゲル反応時間は5時間以上が好ましく、その時間を一週間程度とすることも好ましい。有機シランでのゾルゲル反応の時間としては、反応の温度によって、3時間以上1週間以下が好ましい。
【0081】
上記製造方法で得られた中空ナノ粒子100は、互いに凝集せず、粒子径が均一であり、空隙率が20体積%以上と高いものである。得られる中空ナノ粒子100の粒子径分布は、製造条件や、目的とする粒子径によっても変化するが、目的とする粒子径(平均粒子径)に対し±15%以下とすることができ、±10%以下が好ましい。
【0082】
また、ポリシルセスキオキサンを含有する中空ナノ粒子100は、優れた単分散性を示すと共に、溶媒中高いゾル安定性を持つことができる。また、乾燥しても、再び媒体中に再分散することができる。これは、従来の中空ナノ粒子の分散液では、一旦乾燥したら、粒子状への再分散が困難であることと大きく異なる特性である。従来のストーバー法等で得られるシリカ微粒子の場合、得られた微粒子の表面を界面活性剤のような物質で化学修飾しない限り、媒体中での再分散性は困難であり、又、乾燥によって、二次凝集等が生じるため、ナノレベルの超微小粒子を得るための粉砕処理等が必要である場合が多い。
【0083】
また、中空ナノ粒子100は、シェル層20のシリカ11のマトリックスに存在するポリアミン鎖2により、金属イオンを高度に濃縮して吸着させることができる。また、ポリアミン鎖2はカチオン性であるため、中空ナノ粒子100は、アニオン性の生体材料等の各種イオン性物質の吸着や固定化も可能である。さらにブロック共重合体10中の疎水性有機鎖1は機能性に応じて種々選択でき、またその構造制御も容易であることから、各種機能を付与することが可能である。
【0084】
例えば、機能の付与としては、蛍光性物質の固定化等が挙げられる。例えば、ポリアミン鎖2に少量の蛍光性物質、ピレン類、ポルフィリン類等を導入すると、その機能性残基が中空ナノ粒子100のシェル層20に取りこまれることになる。さらに、ポリアミン鎖2の塩基に酸性基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基を有するポルフィリン類、フタロシアニン類、ピレン類等の蛍光性染料を少量混合させたものを使用することで中空ナノ粒子100中のシェル層20に、これらの蛍光性物質を取り込むことができる。また、同じように機能性物質を選択的に疎水性有機鎖1に固定し、ベシクルを形成して、シリカ11を析出させることで、機能性物質を中空ナノ粒子100のシェル層20の内部に選択的取り込ませることもできる。
【0085】
中空ナノ粒子100は乾燥して粉体としての使用が可能であり、その他の樹脂等の化合物へのフィラーとして用いることもできる。乾燥後の粉体を溶媒に再分散させてなる分散体、又はゾルとして、その他の化合物へ配合することも可能である。
【0086】
<中空シリカナノ粒子>
図2は、本発明の一実施形態に係る中空シリカナノ粒子の断面図である。
中空シリカナノ粒子200は、シリカからなるシェル層30からなり、当該シェル層30で覆われた内部は空洞21となっており、中空構造を有する。
【0087】
中空シリカナノ粒子200の空隙率は、20体積%以上70体積%以下であり、20体積%以上60体積%以下が好ましく、20体積%以上50体積%以下がより好ましく、25体積%以上40体積%以下がさらに好ましく、27体積%以上30体積%以下が特に好ましく、28体積%が最も好ましい。空隙率が上記下限値以上であることで、屈折率及び誘電率がより低くなり、またより軽量化されたものとすることができる。一方、上記上限値以下であることで、中空シリカナノ粒子の機械強度をより良好なものとすることができる。
【0088】
なお、空隙率は、上記中空ナノ粒子において記載の空隙率の計算方法と同様の方法を用いることができ、上記式において、R
1をR
2に、t
1をt
2にそれぞれ置き換えることで計算することができる。
【0089】
中空シリカナノ粒子200のシェル層30の厚さt
2は、3nm以上100nm以下であり、3nm以上50nm以下が好ましく、5nm以上40nm以下がより好ましく、5nm以上20nm以下がさらに好ましく、7nm以上15nm以下が特に好ましく、8nmが最も好ましい。シェル層30の厚さt
2が上記下限値以上であることで、中空シリカナノ粒子の機械強度をより良好なものとすることができる。一方、上記上限値以下であることで、空隙率をより高く保つことができる。
【0090】
中空シリカナノ粒子200の粒子径R
2の平均値(すなわち、平均粒子径)は、20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上500nm以下がより好ましく、20nm以上300nm以下がさらに好ましく、20nm以上100nm以下が特に好ましく、46nmが最も好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であることで、空隙率をより高く保つことができる。一方、上記上限値以下であることで、中空シリカナノ粒子の機械強度をより良好なものとすることができる。
【0091】
中空シリカナノ粒子200の粒子径R
2は、上記中空ナノ粒子100の粒子径R
1と同様の方法を用いて測定することができる。
【0092】
また、中空シリカナノ粒子200は、後述する製造方法に記載のとおり、中空ナノ粒子100から製造されるものであることから、中空ナノ粒子100の粒子径R
1及び厚さt
1を適宜調整することで、中空シリカナノ粒子200の粒子径R
2及び厚さt
2を上記範囲に制御することができる。
【0093】
中空シリカナノ粒子200は、後述するとおり、上記中空ナノ粒子のシェル層20に含まれるブロック共重合体10を除去することで得られる。そのため、当該ブロック共重合体10が存在した部分が微小孔となるため、シェル層30の表面には、複数の微小孔が存在し、当該微小孔の少なくとも一部は内部の空洞21と連通した連通孔を形成している。そのため、中空シリカナノ粒子200は、シェル層30はシリカの密度が適度に低減されており、従来の中空シリカナノ粒子よりも軽量化されたものとなっている。
【0094】
シェル層30を構成するシリカについては、上記中空ナノ粒子100のシェル層20に含まれるシリカと同様のものが挙げられる。
【0095】
<中空シリカナノ粒子の製造方法>
実施形態に係る中空シリカナノ粒子は、上記中空ナノ粒子を用いて製造することができる。よって、上記中空ナノ粒子を得るまでの製造工程については、上記中空ナノ粒子の製造方法と重複するため説明を割愛する。
図3を参照しながら、中空シリカナノ粒子の製造方法について説明する。
【0096】
[除去工程]
除去工程では、中空ナノ粒子100からブロック共重合体10を除去する。当該ブロック共重合体10を除去することで、目的とする中空シリカナノ粒子200を得ることができる。
【0097】
ブロック共重合体10を除去する方法としては、焼成処理法や溶媒洗浄法等が挙げられるが、ブロック共重合体10を完全に除去できることから、焼成炉中での焼成処理法が好ましい。
【0098】
焼成処理では、空気、酸素存在下での高温焼成と不活性ガス、例えば、窒素、ヘリウムの存在下での高温焼成を用いることもできるが、通常、空気中での焼成が好ましい。
【0099】
焼成する温度としては、ブロック共重合体10が300℃付近から熱分解するため、300℃以上の温度であれば好適であり、特に300℃以上1000℃以下の範囲で行うことが好ましく、400℃以上800℃以下の範囲で行うことがより好ましく、500℃以上700℃以下の範囲で行うことがさらに好ましく、550℃以上650℃以下の範囲で行うことが特に好ましく、600℃で行うことが最も好ましい。
【0100】
シェル層20にポリシルセスキオキサンを含む中空ナノ粒子100を焼成する場合には、ポリシルセスキオキサンが熱分解する温度以下で焼成すれば、特に限定されない。例えば、シェル層20にポリシルセスキオキサンを含む中空ナノ粒子100を400℃で焼成すると、ブロック共重合体10を除去できると共に、シェル層30にポリシルセスキオキサンを含んだままの中空シリカナノ粒子200が製造できる。
【0101】
中空シリカナノ粒子の製造方法によれば、単分散性に優れ、空隙率が上記範囲に制御された中空シリカナノ粒子を得ることができる。これは、従来のナノサイズの中空シリカ粒子の製造方法、例えば、ポリマーラテックスナノ粒子やブロックポリマーミセルを鋳型とした中空シリカ粒子の製造方法では得ることのできない、空隙率が20体積%以上と高い中空シリカナノ粒子である。また、得られた中空シリカナノ粒子のシェル層には、ポリシルセスキオキサンを含有させておくこともできる。
【0102】
また、中空シリカナノ粒子の製造方法は、上述のとおり水中にて短時間で行うことができることから、環境対応型の製造方法である。また、ブロック共重合体10のベシクル50の分散液の調製、中空ナノ粒子100からのブロック共重合体10の除去も汎用の設備を用いて容易に行うことができ、中空シリカナノ粒子の製造方法として有用性が高いものである。
【0103】
また、上記製造方法で得られた中空シリカナノ粒子は、粉体としての使用が可能であり、その他の樹脂等の化合物へのフィラーとして用いることもできる。乾燥後の粉体を溶媒に再分散させてなる分散体、又はゾルとして、その他の化合物へ配合することも可能である。
【0104】
また、上記製造方法で得られた中空シリカナノ粒子は、その応用には業種、領域を問わず、大きな期待が寄せられる。特に反射防止、低誘電率、断熱材、ドラッグデリバリーシステム領域において有用な材料である。また、上記製造方法で得られた中空シリカナノ粒子は、例えば、結晶性ナノ発光材料(量子ドット;QD)のような、耐湿(耐溶媒)性が脆弱な、複雑な構造を有する結晶性無機化合物を得るための、安定した反応場として利用することができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
<ブロック共重合体の物性の測定方法>
[数平均分子量及び重量平均分子量]
合成例で得られたブロック共重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、GPC法により、下記の条件で測定した。
【0107】
(測定条件)
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0108】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0109】
[残存モノマー量]
合成例で得られた重合体の溶液を、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所社製「GC−2014F型」)を用いて、下記の条件で測定し、残存モノマー量を求めた。
【0110】
(測定条件)
カラム:株式会社島津製作所社製のワイドボアキャピラリーカラム
検出器:FID(水素炎イオン化型検出器)
カラム温度:70〜250℃
注入量:1μL(テトラヒドロフラン希釈溶液)
【0111】
[
13C−NMRスペクトル]
NMR(JEOL RESONANCE社製「ECA−500型」)を用いて、重水素化クロロホルムを溶媒として測定を行った。
【0112】
[合成例1]St−DM−1の合成
(1.5M スチレン溶液の調製)
アルゴンガスで置換した300mLナスフラスコ中に、注射器を用いてスチレン(以下、「St」と略記する。)39.1g(43.1mL)及びテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略記する。)206.9mLを採取し撹拌することにより、Stの1.5M溶液250mLを調製した。
【0113】
(1.5M ジメチルアミノエチルメタクリレート溶液の調製)
アルゴンガスで置換した300mLナスフラスコ中に、注射器を用いてジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、「DM」と略記する。)47.2g(50.4mL)及びTHF149.6mLを採取し撹拌することにより、DMの1.5M溶液200mLを調製した。
【0114】
(0.05M n−ブチルリチウム溶液の調製)
アルゴンガスで置換した200mLナスフラスコ中に、注射器を用いてヘキサン147.1mLを採取した後、氷冷した。冷却後2.6Mのn−ブチルリチウム溶液2.9mLを採取し撹拌することにより、n−ブチルリチウムの0.05M溶液150mLを調製した。
【0115】
(0.05M ジフェニルエチレン溶液の調製)
アルゴンガスで置換した200mLナスフラスコ中に、注射器を用いてジフェニルエチレン0.901g(0.9mL)及びTHF149.1mLを採取し撹拌することにより、ジフェニルエチレンの0.05M溶液150mLを調製した。
【0116】
(0.33M メタノール溶液の調製)
アルゴンガスで置換した100mLナスフラスコ中に、注射器を用いてメタノール0.53g(0.64mL)及びTHF49.4mLを採取し撹拌することにより、メタノールの0.33M溶液50mLを調製した。
【0117】
(St−DM−1の合成)
次の操作により、StとDMのリビングアニオン共重合を行った。3つのT字型の菅継手からなるマイクロミキサー及びそのマイクロミキサーの下流に連結されたチューブリアクターを備えたマイクロリアクター装置に、4台のシリンジポンプ(ハーバード社製「シリンジポンプ Model 11 Plus」)を接続し、そのシリンジポンプに、上記で得られた4種類の溶液をそれぞれ吸い込んだ50mLガストシリンジをセットした。菅継手径250μmのマイクロミキサー及び内径1mm、長さ100cmのチューブリアクターで構成される反応器の上流から、St溶液を6.7mL/分、n−ブチルリチウム溶液を4mL/分の速度で送液して混合することにより、Stのリビングアニオン重合を行った。続いて、菅継手径500μmのマイクロミキサー及び内径1mm、長さ100cmのチューブリアクターで構成される反応器の上流から、得られたStの重合溶液と、ジフェニルエチレン溶液を4mL/分の速度で送液して混合することにより、Stの反応開始末端とジフェニルエチレンとの反応を行った。Stの重合とジフェニルエチレンの反応は25℃のウォーターバス中にチューブを浸漬し行った。次に、菅継手径500μmのマイクロミキサー及び内径1mm、長さ200cmのチューブリアクターで構成される反応器の上流から、得られたStとジフェニルエチレンとの反応溶液と、DM溶液を1.5mL/分の速度で送液して混合することにより、StとDMとのリビングアニオン共重合を行った。DMの重合は−27℃のウォーターバス中にチューブを浸漬し行った。得られた重合体の溶液を所定量のメタノール溶液を入れた瓶に投入することにより重合反応を停止して、重合体(St−DM−1)の溶液を得た。なお、反応温度は、マイクロリアクター全体を恒温層に埋没させることにより25℃に調整した。得られた重合体の溶液の残存モノマー量から、Stの反応率(ポリマー転嫁率)は99.8質量%であり、DMの反応率(ポリマー転嫁率)は59.8質量%であった。また、得られた重合体の数平均分子量(Mn)は7,018であり、重量平均分子量(Mw)は8,150であり、分散度(Mw/Mn)は1.16であった。なお、
13C−NMRスペクトルから、得られた重合体St−DM−1は下記式(1)で表される化合物であった。式(1)中、m/nは50/11.2である。
【0118】
【化2】
【0119】
<中空ナノ粒子及び中空シリカナノ粒子の物性の測定方法>
[熱重量分析(TGA)測定]
実施例で得られた中空ナノ粒子及び比較例で得られたコア−シェル型ナノ粒子の粉体をTGA測定(装置:SIIナノテクノロジー株式会社製、TG/DTA6300)し、150℃以上800℃以下の範囲の質量減少により、粒子の組成を見積もった。
【0120】
[透過電子顕微鏡(TEM)による観察]
実施例及び比較例で得られた中空ナノ粒子、コア−シェル型ナノ粒子及び中空シリカナノ粒子の分散液をエタノールで希釈し、それを炭素蒸着された銅グリッドに乗せ、サンプルをTEM(日本電子株式会社製、JEM−2200FS)にて観察を行った。実施例で得られた中空ナノ粒子及び中空シリカナノ粒子については、TEM像から50個の粒子の空洞の径(すなわち、粒子の内径)、シェル層の厚さ及び粒子径(すなわち、粒子の外径)を測定し、平均値を算出した。また、比較例で得られたコア−シェル型ナノ粒子についても同様に、50個の粒子のコア層の径、シェル層の厚さ及び粒子径を測定し、平均値を算出した。比較例で得られた中空シリカナノ粒子についても同様に、50個の粒子の空洞の径(すなわち、粒子の内径)、シェル層の厚さ及び粒子径(すなわち、粒子の外径)を測定し、平均値を算出した。
【0121】
[空隙率]
実施例及び比較例で得られた中空ナノ粒子、コア−シェル型ナノ粒子及び中空シリカナノ粒子(各50個)のTEM像から各粒子の粒子径及びシェル層の厚さを測定することで、粒子の体積及び空隙の体積を算出し、空隙の体積に対する粒子の体積の割合(体積%)を空隙率として計算した。
【0122】
[実施例1]
(中空ナノ粒子の製造)
5mLのSt−DM−1のTHF溶液(2.0w/v%)に攪拌しながら45mLの蒸留水を滴下して、更に室温で24時間攪拌することで、polymer vesicleの分散液を得た。このpolymer vesicleの分散液にメトキシシランの4量体(三菱ケミカル社製、「MKC(登録商標)シリケート(商品名)」、グレード:MS51)の0.50mLをシリカソースとして加えた。得られた分散液を室温にて3時間攪拌した後、エタノールでの洗浄、乾燥を経て、0.26gの粉体を得た。TGA測定データから見積もることにより、粉体中の有機成分の含有率は40質量%であった。TEM観察(
図4参照)により、得られた粉体が30nmの空洞と、10nmのシェル層を有し、平均粒子径が50nmである中空粒子であり、空隙率が22体積%であった。
【0123】
[実施例2]
(中空シリカナノ粒子の製造)
実施例1で得られたポリマー/シリカハイブリッド中空粒子のうち0.1gをアルミナ坩堝に加え、それを電気炉内にて焼成した。電気炉としては、((株)アサヒ理化製作所製セラミック電気管状炉ARF−100K型にAMF−2P型温度コントローラ付きの焼成炉装置)を用いた。炉内温度は、5時間かけて600℃まで上げ、その温度にて3時間保持した。これを自然冷却し、ポリマー成分を除去した。収量は0.055gであった。TEM観察により、得られた中空シリカ粒子が中空構造を有し、中心部の空洞は30nmであり、シェル層の厚さは8nmであり、平均粒子径が46nmであり、空隙率が28体積%であった。
【0124】
[比較例1]
(中空シリカナノ粒子の製造)
参考文献2(特開2014−077047号公報)に記載の方法に従って、コア−シェル型シリカナノ粒子を製造した。具体的には、以下に示す手順で行った。
【0125】
まず、共重合体(A−1)を合成した。分岐鎖状ポリエチレンイミン(SP018、日本触媒社製、平均分子量1800)の1.5gとグリシジルヘキサデシルエーテル(Aldrich社試薬、以下EP−C
16)の0.5gとをエタノールの40mLに溶解させた。反応を75℃にて24時間行った。エタノールを除去し、60℃で真空乾燥を経て、共重合体(A−1)を得た。
1H−NMR測定によって、エーテル酸素に隣接するプロトン由来のシグナル(3.0−4.0ppm)はブロードになったことから、共重合体(A−1)の形成が確認できた。
【0126】
次いで、共重合体(A−1)の0.05gと水の5mLとの混合溶液を80℃で24時間攪拌することで、会合体を得た。この会合体の分散液にメトキシシランの4量体(三菱ケミカル社製、「MKC(登録商標)シリケート(商品名)」、グレード:MS51)の0.50mLをシリカソースとして加えた。得られた分散液を室温にて4時間攪拌した後、エタノールでの洗浄、乾燥を経て、コア−シェル型ナノ粒子の粉体を得た。TGA測定データから見積もることにより、粉体中の有機成分の含有率は17.3%であった。TEM観察により、得られた粉体がコア−シェル構造を有するナノ粒子であることが確認できた。中心部3.5nmのコアは比較的電子密度の低い疎水性有機セグメントと考えられ、明るく見える。一方、4nmのシェル層は電子密度の高い脂肪族ポリアミンとシリカとの複合体と考えられ、暗く見える。また、得られた粉体の形状は単分散性に優れた球状であり、平均粒子径が11nm程度であった。
【0127】
次いで、特許文献4に記載の方法に従い、上記コア−シェル型シリカナノ粒子を焼成して、中空シリカナノ粒子を得た。具体的には、上記コア−シェル型シリカナノ粒子のうち0.1gをアルミナ坩堝に加え、それを電気炉内にて焼成した。電気炉としては、((株)アサヒ理化製作所製セラミック電気管状炉ARF−100K型にAMF−2P型温度コントローラ付きの焼成炉装置)を用いた。炉内温度は、5時間かけて600℃まで上げ、その温度にて3時間保持した。これを自然冷却し、共重合体(A−1)を除去した。TEM観察により、得られたシリカナノ粒子が中空構造を有し、平均粒子径(粒子の外径の平均値)が10nm程度であり、中心部に複数の3.0nmの空洞が存在し、空隙率が6体積%であった。
中空ナノ粒子は、疎水性有機鎖及びポリアミン鎖を有するブロック共重合体と、シリカとを含むシェル層からなる。中空シリカナノ粒子は、空隙率が20体積%以上70体積%以下であり、シリカからなるシェル層の厚さが3nm以上100nm以下である。前記中空ナノ粒子の製造方法は、疎水性有機鎖及びポリアミン鎖を有するブロック共重合体を溶解した有機溶媒を攪拌しながら、水性溶媒を滴下して、前記ブロック共重合体からなるベシクルの分散液を得る工程と、前記ベシクルの分散液にシリカソースを加えて、前記ベシクルを鋳型として前記シリカソースのゾルゲル反応を行ない、シリカを析出させて、中空ナノ粒子を得る工程と、を含む。