(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号再生成部は、前記受信部で受信された通信信号に含まれる所定の大きさよりも小さい幅のパルスの幅を大きくし、前記受信部で受信された通信信号に含まれる所定の大きさよりも大きい幅のパルスの幅を変更しない
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池監視装置。
前記信号変換装置は、前記複数の電池監視装置のうちの一端に配置された電池監視の前記受信部に接続されると共に前記複数の電池監視装置のうちの他端に配置された電池監視装置の前記送信部に接続されている
請求項9に記載の電池監視システム。
前記複数の電池監視装置のうちの1の電池監視装置の前記第1の送信部及び第2の受信部が、隣接する他の電池監視装置の前記第1の受信部及び前記第2の送信部に接続されている
請求項11に記載の電池監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る電池監視システム1の構成を示す図である。電池監視システム1は、直列接続された複数の電池セル41を含む組電池40の各電池セル41の状態を監視するシステムである。電池監視システム1は、組電池40、制御装置10、信号変換装置20、複数の電池監視装置30A、30B、・・・、30Zおよび伝送路50を含んで構成されている。以下において、電池監視装置30A、30B、・・・、30Zを互いに区別しない場合またはこれらを総称する場合、「電池監視装置30」と表記する。
【0020】
制御装置10は、SPI通信方式を用いて、電池監視装置30に対して各種の指令を与える。すなわち、制御装置10はSPI通信方式におけるマスタ装置として機能し、電池監視装置30はSPI通信方式におけるスレーブ装置として機能する。制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータで構成されている。制御装置10は、SPI形式のクロック信号SCK、データ信号MOSI、チップセレクト信号CSを用いて電池監視装置30に対して各種の指令を与える。当該指令に基づいて電池監視装置30から送信されたデータ信号MISOは、制御装置10によって受信される。
【0021】
クロック信号SCKは、電池監視装置30の動作タイミングを制御する信号である。すなわち、電池監視装置30は、クロック信号SCKに同期して動作する。データ信号MOSIは、電池監視装置30に対する指令を含む。また複数の電池監視装置30を備えたシステムにおいては、データ信号MOSIは、複数の電池監視装置30のうちのいずれかを指定する指定情報を含み得る。チップセレクト信号CSは、レベル遷移によって電池監視装置30をアクティブ状態または非アクティブ状態に移行させる信号である。例えば、チップセレクト信号CSがローレベルに遷移することで電池監視装置30はアクティブ状態に移行し、チップセレクト信号CSがハイレベルに遷移することで電池監視装置30は非アクティブ状態に移行する。本実施形態において、電池監視装置30は、チップセレクト信号CSがローレベルを呈する間、アクティブ状態を維持する。
【0022】
制御装置10から出力されるクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSは、それぞれ、信号変換装置20に供給される。信号変換装置20から出力されるデータ信号MISOは、制御装置10に供給される。
【0023】
信号変換装置20は、変換部21、送信部22および受信部23を含んで構成されている。変換部21は、制御装置10から供給されるSPI形式のクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSを統合して第1のパルス列P1および第2のパルス列P2からなる差動形式の通信信号に変換する。送信部22は、第1のパルス列P1を信号線L1に送出するとともに、第2のパルス列P2を信号線L2に送出する。このように、制御装置10から出力されるSPI形式のクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSは、信号変換装置20によって第1のパルス列P1および第2のパルス列P2からなる差動形式の通信信号に変換されて伝送路50に送出される。
【0024】
伝送路50は、信号変換装置20と電池監視装置30との間で通信を行うための線路である。伝送路50は、信号変換装置20と電池監視装置30とを絶縁するための結合素子51を備えており、伝送路50を通過する信号の直流成分が結合素子51によって除去される。結合素子51として、例えば、フォトカプラ、アイソレータ、トランスまたはキャパシタ等を用いることができる。信号線L1に送出された第1のパルス列P1および信号線L2に送出された第2のパルス列P2は、それぞれ、伝送路50を介して電池監視装置30に供給される。
【0025】
組電池40を構成する複数の電池セル41は、各々が複数の電池セルを含むように群分けされ、電池セル群42A、42B、・・・、42Zを形成している。電池監視装置30Aは、最も高電位の電池セル群42Aに対応して設けられ、電池セル群42Aに含まれる電池セル41の各々の状態を監視する。電池監視装置30Bは、電池セル群42Bに対応して設けられ、電池セル群42Bに含まれる電池セル41の各々の状態を監視する。電池監視装置30Zは、最も低電位の電池セル群42Zに対応して設けられ、電池セル群42Zに含まれる電池セル41の各々の状態を監視する。なお、各電池監視装置30が監視対象とする電池セル41の数は、適宜増減することが可能である。
【0026】
電池監視装置30は、それぞれ、送受信部31、32、変換部33および処理部34を有する。送受信部31及び32は、伝送路50を介して隣接する電池監視装置30または信号変換装置20との間で通信信号を送受信する。
【0027】
電池監視装置30の各々は、最も低電位側に配置された電池監視装置30Zを除き、送受信部32が、隣接する低電位側の電池監視装置30の送受信部31に接続され、最も高電位側に配置された電池監視装置30Aを除き、送受信部31が、隣接する高電位側の電池監視装置30に接続されている。すなわち、複数の電池監視装置30は、デイジーチェーンを形成するように直列接続されており、隣接する他の電池監視装置30との間で通信可能とされている。本実施形態に係る電池監視システム1では、互いに隣接する電池監視装置30間で双方向通信が可能とされている。すなわち、各電池監視装置30は、隣接する高電位側の電池監視装置30及び隣接する低電位側の電池監視装置30との間で、通信信号の送受信を行うことが可能である。
【0028】
最も高電位側に配置された電池監視装置30Aの送受信部31は、伝送路50を介して信号変換装置20の送信部22及び受信部23に接続されている。すなわち、制御装置10から電池監視装置30に向かう通信信号及び電池監視装置30から制御装置10に向かう通信信号は、電池監視装置30Aを経由する。
【0029】
変換部33は、送受信部31及び32によって受信された差動形式の通信信号を、SPI形式のクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSに変換する。変換部33は、変換処理によって復元したクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSを処理部34に供給する。
【0030】
処理部34は、変換部33から供給されるクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSに基づいて、所定の処理を行う。すなわち、処理部34は、チップセレクト信号CSがローレベルに遷移することでアクティブ状態となり、クロック信号SCKに同期して、データ信号MOSIに含まれる指令に応じた処理を行う。処理部34の詳細な構成については後述する。
【0031】
図2は、電池監視装置30の詳細な構成を示す図である。処理部34は、制御部60、セル選択スイッチ61、レベルシフタ62、AD変換器63および記憶部64を備える。セル選択スイッチ61は、制御部60から供給される制御信号に応じて、監視対象とする電池セル41のうちの1つを選択し、選択した電池セルの正極及び負極の各々の電位を出力する。レベルシフタ62は、セル選択スイッチ61によって選択された電池セル41の正極電位と負極電位との差分であるセル電圧を、グランド電位を基準としたレベルで出力する。A/D変換器63は、レベルシフタ62から出力されたセル電圧に応じたデジタル値を出力する。記憶部64は、A/D変換器63から出力されるセル電圧のデジタル値を記憶する記憶媒体である。
【0032】
制御部60は、変換部33による変換処理によって得られたデータ信号MOSIに含まれるコマンドに応じて、セル選択スイッチ61、レベルシフタ62、AD変換器63および記憶部64を制御する。
【0033】
送受信部31は、通信ポート35Aに接続された送信部311A及び受信部312Aを有する。送受信部32は、通信ポート35Bに接続された送信部321B及び受信部322Bを有する。電池監視装置30は、送受信部31と送受信部32との間に設けられた信号再生成部100A及び100Bを備える。
【0034】
受信部312Aは、通信ポート35Aに入力される差動形式の通信信号を受信し、受信した通信信号を変換部33に供給するとともに信号再生成部100Aに供給する。
【0035】
送信部311Aは、変換部33から供給される差動形式の通信信号及び信号再生成部100Bから供給される再生成された差動形式の通信信号を、通信ポート35Aを介して伝送路50に送出する。
【0036】
受信部322Bは、通信ポート35Bに入力される差動形式の通信信号を受信し、受信した通信信号を変換部33に供給するとともに信号再生成部100Bに供給する。
【0037】
送信部321Bは、変換部33から供給される差動形式の通信信号及び信号再生成部100Aから供給される再生成された差動形式の通信信号を、通信ポート35Bを介して伝送路50に送出する。
【0038】
信号再生成部100Aは、受信部312Aから供給される通信信号に含まれるパルスの幅が、所定の大きさとなるように通信信号を再生成し、再生成した通信信号を送信部321Bに供給する。
【0039】
信号再生成部100Bは、受信部322Bから供給される通信信号に含まれるパルスの幅が、所定の大きさとなるように通信信号を再生成し、再生成した通信信号を送信部311Aに供給する。
【0040】
図3は、信号再生成部100A及び100Bの構成の一例を示す図である。信号再生成部100A及び100Bは、互いに同じ構成を有している。
【0041】
信号再生成部100A及び100Bは、差動形式の通信信号を構成する第1のパルス列P1及び第2のパルス列P2にそれぞれ対応した第1の回路110及び第2の回路120を含んで構成されている。すなわち、第1の回路110は、通信信号の第1のパルス列P1に含まれるパルスの幅が所定の大きさとなるように、通信信号の第1のパルス列P1を再生成し、第2の回路120は、通信信号の第2のパルス列P2に含まれるパルスの幅が所定の大きさとなるように、通信信号の第2のパルス列P2を再生成する。第1の回路110及び第2の回路120は、互いに同じ構成を有している。
【0042】
以下、第1の回路110の構成について説明する。第1の回路110は、NOR回路201、RSラッチ回路210、遅延回路220、NOT回路230及びAND回路240を含んで構成されている。RSラッチ回路210は、NOR回路211、212及びNOT回路213を含んで構成されている。NOR回路211の一方の入力端がセット入力端子として機能し、NOR回路212の一方の入力端がリセット入力端子として機能する。
【0043】
NOR回路201は、一方の入力端が通信信号の第1のパルス列P1が入力信号Sin_1として入力される入力端子T1に接続され、他方の入力端がNOT回路230の出力端に接続され、出力端が、RSラッチ回路210のNOR回路212の一方の入力端に接続されている。
【0044】
NOR回路211は、RSラッチ回路210のセット入力端子として機能する一方の入力端が、通信信号の第1のパルス列P1が入力される入力端子T1に接続され、他方の入力端がNOR回路212の出力端に接続され、出力端がNOT回路213の入力端に接続されている。NOR回路212は、RSラッチ回路210のリセット入力端子として機能する一方の入力端がNOR回路201の出力端に接続され、他方の入力端がNOR回路211の出力端に接続されている。NOT回路213の出力端は、RSラッチ回路210の出力端とされ、AND回路240の一方の入力端に接続されると共に、遅延回路220の入力端に接続されている。
【0045】
遅延回路220は、NOT回路213の出力端から出力される信号(すなわち、RSラッチ回路210の出力信号)を遅延させた遅延信号を出力端から出力する。NOT回路230は、入力端が遅延回路220の出力端に接続され、出力端がAND回路240の他方の入力端に接続されると共に、NOR回路201の他方の入力端に接続されている。AND回路240は、一方の入力端が、RSラッチ回路210の出力端であるNOT回路213の出力端に接続され、他方の入力端がNOT回路230の出力端に接続されている。AND回路240は、RSラッチ回路210の出力信号と、遅延回路220の出力信号を論理反転させた信号との論理積を、第1の回路110の出力信号Sout_1として出力端子T2から出力する。出力信号Sout_1は、第1のパルス列P1を再生成したパルス列からなる信号である。
【0046】
第2の回路120は、NOR回路201の一方の入力端及びRSラッチ回路210のセット入力端子として機能するNOR回路211の一方の入力端が、入力端子T3に接続され、AND回路240の出力端が、出力端子T4に接続されている点が、第1の回路110と異なる。入力端子T3には、通信信号の第2のパルス列P2が、入力信号Sin_2として入力され、出力端子T4からは、RSラッチ回路210の出力信号と、遅延回路220の出力信号を論理反転させた信号との論理積が、第2の回路120の出力信号Sout_2として出力される。出力信号Sout_2は、第2のパルス列P2を再生成したパルス列からなる信号である。
【0047】
図4は、遅延回路220の構成の一例を示す図である。
図4には、複数の遅延回路220回路を含む回路ブロックが示されている。遅延回路220は、信号再生成部100A、100Bのみならず、処理部や変換部などの他の部分で使用される場合がある。当該回路ブロックには、必要に応じた数の遅延回路220が備えられる。複数の遅延回路220は、それぞれ、電圧電流変換回路221に接続されている。電圧電流変換回路221は、演算増幅器OPの非反転入力端子に入力される定電圧の大きさ及び抵抗素子Rの抵抗値に応じた大きさの定電流を生成する。遅延回路220の各々は、電圧電流変換回路221によって生成された定電流が流れるトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4を備える。電圧電流変換回路221にゲートが接続されたトランジスタQ2及びQ3は、これらに流れる電流の大きさに応じた抵抗値を有する抵抗素子として機能する。トランジスタQ1のゲートに入力される入力信号に対してトランジスタQ2及びQ3の抵抗値に応じた長さ分だけ遅延した信号が、トランジスタQ4のドレインから出力される。遅延回路220による遅延時間は、演算増幅器OPの非反転入力端子に入力される定電圧の大きさ及び抵抗素子Rの抵抗値によって調整することが可能である。遅延回路220による遅延時間によって、信号再生成部100A及び100Bによる再生成後の通信信号のパルス幅を調整することが可能である。
【0048】
図5は、信号再生成部100A及び100Bの第1の回路110及び第2の回路120の入力信号Sin及び出力信号Soutの波形の一例を示す図である。なお、信号再生成部100A及び100Bの第1の回路110及び第2の回路120の回路構成は、互いに同じであり、従って、第1の回路110及び第2の回路120の入出力特性は互いに同じである。
図5に示すように、信号再生成部100A及び100Bは、入力信号Sinに含まれるパルスの幅が所定の大きさとなるように、信号の再生成処理を行い、再生成した信号を出力信号Soutとして出力する。本実施形態において、信号再生成部100A及び100Bは、所定の大きさよりも小さい幅のパルスについては、パルス幅を大きくし、所定の大きさよりも大きい幅のパルスについては、パルス幅を小さくする。
【0049】
以下に、電池監視システム1の動作の一例について説明する。以下の説明では、一例として電池監視装置30Zを対象としてセル電圧のデータの読み出しを行う場合の動作について説明する。
【0050】
制御装置10は、セル電圧のデータの読み出しを指示するコマンドおよび該コマンドを実行する対象を指定する指定情報をSPI信号のデータ信号MOSIに含め、クロック信号SCKおよびチップセレクト信号CSとともに信号変換装置20に供給する。信号変換装置20の変換部21は、制御装置10から受信したクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSを、第1のパルス列P1および第2のパルス列P2を含む差動形式の通信信号に変換し、これを伝送路50に送出する。
【0051】
コマンドを含む差動形式の通信信号は、電池監視装置30Aの通信ポート35Aに入力され、電池監視装置30Aの送受信部31の受信部312Aによって受信される。受信部312Aは、受信したコマンドを含む通信信号を変換部33に供給すると共に信号再生成部100Aに供給する。
【0052】
変換部33は、受信部312Aから供給されたコマンドを含む差動形式の通信信号を、SPI形式のクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSに変換し、変換処理によって得られた各信号を処理部34に供給する。処理部34は、データ信号MOSIに含まれる指定情報が自己を指定するものである場合、データ信号MOSIに含まれるコマンドに応じた処理を実行し、データ信号MOSIに含まれる指定情報が自己を指定するものではない場合、データ信号MOSIに含まれるコマンドに応じた処理を実行しない。ここでは、指定情報によって示されるコマンドの実行対象が電池監視装置30Aではないため、電池監視装置30Aの処理部34は、コマンドに応じた処理を実行しない。
【0053】
信号再生成部100Aは、受信部312Aから供給された通信信号に含まれるパルスの幅が、所定の大きさとなるように通信信号を再生成する。信号再生成部100Aは、再生成した通信信号を送受信部32の送信部321Bに供給する。送信部321Bは、信号再生成部100Aから供給された再生成された通信信号を、通信ポート35Bを介して伝送路50に送出する。
【0054】
伝送路50に送出されたコマンドを含む通信信号は、次段の電池監視装置30Bの通信ポート35Aに入力され、電池監視装置30Bの送受信部31の受信部312Aによって受信される。受信部312Aは、受信したコマンドを含む通信信号を変換部33に供給すると共に信号再生成部100Aに供給する。
【0055】
変換部33は、受信部312Aから供給されたコマンドを含む差動形式の通信信号を、SPI形式のクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSに変換し、変換処理によって得られた各信号を処理部34に供給する。処理部34は、データ信号MOSIに含まれる指定情報によって示されるコマンドの実行対象が電池監視装置30Bではないため、コマンドに応じた処理を実行しない。
【0056】
信号再生成部100Aは、受信部312Aから供給された通信信号に含まれるパルスの幅が、所定の大きさとなるように通信信号を再生成する。信号再生成部100Aは、再生成した通信信号を送受信部32の送信部321Bに供給する。
【0057】
送信部321Bは、信号再生成部100Aから供給された再生成された通信信号を、通信ポート35Bを介して伝送路50に送出する。伝送路50に送出されたコマンドを含む通信信号は、電池監視装置30Bの低電位側に隣接する電池監視装置(図示せず)の通信ポート35Aに入力される。
【0058】
このように、制御装置10から発せられるコマンド等を含む、制御装置10から各電池監視装置30に向けられた通信信号は、高電位側の電池監視装置30から低電位側の電池監視装置30に向けて順次伝送される。通信信号は、複数の電池監視装置30を通過する際に、信号再生成部100Aによって再生成され、パルス幅が修復される。
【0059】
コマンドを含む差動形式の通信信号は、最終段の電池監視装置30Zの通信ポート35Aに入力され、電池監視装置30Zの送受信部31の受信部312Aによって受信される。受信部312Aは、受信した通信信号を、変換部33に供給する。
【0060】
変換部33は、受信部312Aから供給されたコマンドを含む差動形式の通信信号を、SPI形式のクロック信号SCK、データ信号MOSIおよびチップセレクト信号CSに変換し、変換処理によって得られた各信号を処理部34に供給する。処理部34は、データ信号MOSIに含まれる指定情報が自己を指定するものであることを認識すると、データ信号MOSIに含まれるコマンドに応じて、処理部34内の記憶部64に記憶しているセル電圧の測定値を示すデータ(以下セル電圧データという)を読み出し、読み出したセル電圧データを変換部33に供給する。変換部33は、処理部34によって読み出されたセル電圧データを差動形式の通信信号に変換し、これを送受信部31の送信部311Aに供給する。送信部311Aは、セル電圧データを含む通信信号を、通信ポート35Aを介して伝送路50に送出する。
【0061】
送信部311Aから送信されたセル電圧データを含む通信信号は、電池監視装置30Zの高電位側に隣接する電池監視装置(図示せず)の通信ポート35Bに入力され、当該電池監視装置の送受信部32の受信部322Bによって受信される。受信部322Bは、受信した通信信号を信号再生成部100Bに供給する。
【0062】
信号再生成部100Bは、受信部322Bから供給された通信信号に含まれるパルスの幅が、所定の大きさとなるように通信信号を再生成する。信号再生成部100Bは、再生成した通信信号を送受信部31の送信部311Aに供給する。送信部311Aは、信号再生成部100Bから供給された再生成されたセル電圧データを含む通信信号を、通信ポート35Aを介して伝送路50に送出する。
【0063】
このように、セル電圧データ等を含む、電池監視装置30から制御装置10に向けられた通信信号は、低電位側の電池監視装置30から高電位側の電池監視装置30に向けて順次伝送される。通信信号は、複数の電池監視装置30を通過する際に、信号再生成部100Bによって再生成され、パルス幅が修正される。
【0064】
電池監視装置30Aの送受信部31の送信部311Aは、セル電圧データを含む通信信号を、通信ポート35Aを介して伝送路50に送出する。伝送路50に送出されたセル電圧データを含む通信信号は、信号変換装置20の受信部23によって受信され、変換部21に供給される。変換部21は、受信した差動形式の通信信号の形式をSPI形式に変換する。変換部21は、変換処理によって生成されたセル電圧データを含むMISO信号を制御装置10に供給する。
【0065】
以上のように、本発明の実施形態に係る電池監視システム1によれば、制御装置10から電池監視装置30に向けられた通信信号は、高電位側に配置された電池監視装置30から低電位側に配置された電池監視装置30に向けて順次伝送される。このとき、通信信号は、各電池監視装置30において変換部33及び処理部34を経由するルートとは別ルートで各電池監視装置30に伝送されるので、変換部33及び処理部34における処理の完了を待つことなく後段の電池監視装置30に伝送される。従って、通信信号の各電池監視装置30への伝送を高速に行うことができる。
【0066】
このように、複数の電池監視装置30によってデイジーチェーンを構成し、通信信号を、複数の電池監視装置30においてリレー方式で伝送する場合、伝送距離が長くなる程(すなわち、電池監視装置の接続数が増加する程)通信信号における波形鈍りが大きくなる。差動形式の通信信号を用いる通信方式においては、通信信号において波形鈍りが大きくなると、受信回路である差動コンパレータで通信信号を受信したときに、通信信号のパルス幅が小さくなり、受信側においてデータを適正に受信することが困難となるおそれがある。従って、パルス幅の修復手段を有さない電池監視システムにおいては、電池監視システムに含めることができる電池監視装置の数が制限される。
【0067】
本実施形態に係る電池監視システム1によれば、複数の電池監視装置30によって構成されるデイジーチェーンの高電位側から低電位側に向かう通信信号は、各電池監視装置30の信号再生成部100Aによってパルス幅が所定の大きさとなるように再生成される。また、デイジーチェーンの低電位側から高電位側に向かう通信信号は、各電池監視装置30の信号再生成部100Bによってパルス幅が所定の大きさとなるように再生成される。従って、本実施形態に係る電池監視システム1によれば、電池監視装置30間で送受信される通信信号のパルス幅の変動を抑制することができる。これにより、通信信号の伝送距離にかかわらず(すなわち、電池監視装置の接続数にかかわらず)、通信信号のパルス幅を一定に保つことができ、電池監視システムに含めることができる電池監視装置の数の制限をなくすことができる。
【0068】
ここで、
図6は、信号再生成部100A(または信号再生成部100B)を構成する第1の回路110及び第2の回路120における入出力信号波形の一例を示す図である。
図6の上段が第1の回路110及び第2の回路120にそれぞれ入力される入力信号Sin_1及びSin_2であり、
図6の下段が第1の回路110及び第2の回路120からそれぞれ出力される出力信号Sout_1及びSout_2である。例えば、時間的に近接する入力信号Sin_1及びSin_2からなるペアPA1、PA2、PA3及びPA4のうち、入力信号Sin_1が入力信号Sin_2に対して時間的に先行しているペアPA1及びPA2は、それぞれデータ“1”を示し、入力信号Sin_2が入力信号Sin_1に対して時間的に先行しているペアPA3及びPA4は、それぞれデータ“0”を示す。同様に、時間的に近接する出力信号Sout_1及びSout_2からなるペアPA5、PA6、PA7及びPA8のうち、出力信号Sout_1が出力信号Sout_2に対して時間的に先行しているペアPA1及びPA2は、それぞれデータ“1”を示し、出力信号Sout_2が出力信号Sout_1に対して時間的に先行しているペアPA3及びPA4は、それぞれデータ“0”を示す。信号再生成部100A及び100Bによって通信信号のパルス幅が拡張された場合、
図6の下段に示すように、第1の回路110の出力信号Sout_1におけるパルスと、第2の回路120の出力信号Sout_2におけるパルスとが、部分的に重なる場合がある。
【0069】
第1の回路110の出力信号Sout_1及び第2の回路120の出力信号Sout_2によって一対の差動信号が構成される。この差動信号は、コンパレータによって受信されることが想定される。コンパレータにおいて、差動信号におけるパルスの重なり部は、0入力及び1入力が入力されていないものと認識される。すなわち出力信号Sout_1及びSout_2において、パルスの重なり部の幅分だけパルス幅が縮小したものとみなせる。従って、出力信号Sout_2において、パルスの重なりが生じた場合には、信号再生成部100A及び信号再生成部100Bによるパルス幅の修復効果が減退する。
【0070】
以下に説明する本発明の第2の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bは、再生成される通信信号において、パルスの重なりが発生することを防止する。
【0071】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bの構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bは、第1の回路110に付随するNOT回路251A及びNOR回路252A並びに第2の回路120に付随するNOT回路251B及びNOR回路252Bを更に含む点が、
図3に示す第1の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bと異なる。
【0072】
第1の回路110に付随するNOT回路251Aは、入力端が通信信号の第1のパルス列P1が入力信号Sin_1として入力される入力端子T1に接続され、出力端がNOR回路252Aの一方の入力端に接続されている。NOR回路252Aの他方の入力端は、第2の回路120を構成するAND回路240の出力端、すなわち、第2の回路120の出力端子T4に接続されている。
【0073】
同様に、第2の回路120に付随するNOT回路251Bは、入力端が通信信号の第2のパルス列P2が入力信号Sin_2として入力される入力端子T3に接続され、出力端がNOR回路252Bの一方の入力端に接続されている。NOR回路252Bの他方の入力端は、第1の回路110を構成するAND回路240の出力端、すなわち、第1の回路110の出力端子T2に接続されている。
【0074】
第1の回路110に付随するNOR回路252Aは、第2の回路120の出力信号Sout_2(第2の回路120によって再生成されたパルス)がハイレベルを呈する間、第1の回路110に入力される信号のレベルをローレベルに固定し、第2の回路120の出力信号Sout_2がローレベルを呈する間、入力端子T1に入力される入力信号Sin_1を、第1の回路110に供給する。すなわちNOR回路252Aは、第2の回路120の出力信号Sout_2の信号レベルに応じて、第1の回路110の機能を有効化させるイネーブル回路として機能する。
【0075】
同様に、第2の回路120に付随するNOR回路252Bは、第1の回路110の出力信号Sout_1(第1の回路110によって再生成されたパルス)がハイレベルを呈する間、第2の回路120に入力される信号のレベルをローレベルに固定し、第1の回路110の出力信号Sout_1がローレベルを呈する間、入力端子T3に入力される入力信号Sin_2を、第2の回路120に供給する。すなわちNOR回路252Bは、第1の回路110の出力信号Sout_1の信号レベルに応じて、第2の回路120の機能を有効化させるイネーブル回路として機能する。
【0076】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る信号再生成部100A(または信号再生成部100B)を構成する第1の回路110及び第2の回路120における入出力信号波形の一例を示す図である。
図8の上段が第1の回路110及び第2の回路120にそれぞれ入力される入力信号Sin_1及びSin_2であり、
図8の下段が第1の回路110及び第2の回路120からそれぞれ出力される出力信号Sout_1及びSout_2である。例えば、時間的に近接する入力信号Sin_1及びSin_2からなるペアPA1、PA2、PA3及びPA4のうち、入力信号Sin_1が入力信号Sin_2に対して時間的に先行しているペアPA1及びPA2は、それぞれデータ“1”を示し、入力信号Sin_2が入力信号Sin_1に対して時間的に先行しているペアPA3及びPA4は、それぞれデータ“0”を示す。同様に、時間的に近接する出力信号Sout_1及びSout_2からなるペアPA5、PA6、PA7及びPA8のうち、出力信号Sout_1が出力信号Sout_2に対して時間的に先行しているペアPA1及びPA2は、それぞれデータ“1”を示し、出力信号Sout_2が出力信号Sout_1に対して時間的に先行しているペアPA3及びPA4は、それぞれデータ“0”を示す。
【0077】
本発明の第2の実施形態に係る信号再生成部100A及び信号再生成部100Bによれば、第1の回路110は、第2の回路120によって再生成されたパルスの電圧レベルが、ローレベルを呈する間、その機能が有効となり、再生成したパルスを出力する。同様に、第2の回路120は、第1の回路110によって再生成されたパルスの電圧レベルが、ローレベルを呈する間、その機能が有効となり、再生成したパルスを出力する。従って、
図8の下段に示すように、第1の回路110の出力信号Sout_1におけるパルスと、第2の回路120の出力信号Sout_2におけるパルスとが重なることを防止することができ、信号再生成部100A及び信号再生成部100Bによるパルス幅の修復効果の減退を回避することができる。
【0078】
本実施形態に係る信号再生成部100A及び信号再生成部100Bを適用した電池監視システムによれば、電池監視装置間における差動形式の通信信号の送受信に際し、パルスの重なりの発生を抑制できるので、より安定した信号伝送を行うことが可能となる。
【0079】
[第3の実施形態]
図9は、本発明の第3の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bの構成の一例を示す図である。第3の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bは、第1の回路110及び第2の回路120において、NOT回路261及びNAND回路262が追加され、
図3に示すAND回路240が、NAND回路241に置き換えられている点が、第1の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bと異なる。
【0080】
図10は、信号再生成部100A及び100Bの第1の回路110及び第2の回路120の入力信号Sin及び出力信号Soutの波形の一例を示す図である。なお、信号再生成部100A及び100Bの第1の回路110及び第2の回路120の回路構成は、互いに同じであり、従って、第1の回路110及び第2の回路120の入出力特性は互いに同じである。
【0081】
本発明の第3の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bは、
図10に示すように、入力信号Sinに含まれる所定の大きさよりも小さい幅のパルスについては、パルス幅を大きくし、入力信号Sinに含まれる所定の大きさよりも大きい幅のパルスについては、パルス幅を変更しない。電池監視システムにおいては、パルス幅が互いに異なる複数種の信号を利用する場合がある。本発明の第3の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bによれば、所定の大きさよりも小さい幅のパルスについては、パルス幅が拡張され、所定の大きさよりも大きい幅のパルスについては、パルス幅が変更されないので、パルス幅が互いに異なる複数種の信号を利用する電池監視システムに本実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bを適用することが可能である。
【0082】
[第4の実施形態]
図11は、本発明の第4の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bの構成の一例を示す図である。第4の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bは、第1の回路110及び第2の回路120において、NOT回路261及びNAND回路262が追加され、
図7に示すAND回路240が、NAND回路241に置き換えられている点が、第2の実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bと異なる。
【0083】
本発明の第4の実施形態に係る信号再生成部100A及び信号再生成部100Bによれば、第2の実施形態に係る信号再生成部100A及び信号再生成部100Bと同様、第1の回路110の出力信号Sout_1におけるパルスと、第2の回路120の出力信号Sout_2におけるパルスとが、部分的に重なることを回避することができ、信号再生成部100A及び信号再生成部100Bによるパルス幅の修復効果の減退を回避することができる。また、本発明の第4の実施形態に係る信号再生成部100A及び信号再生成部100Bによれば、第3の実施形態に係る信号再生成部100A及び信号再生成部100Bと同様、所定の大きさよりも小さい幅のパルスについては、パルス幅が拡張され、所定の大きさよりも大きい幅のパルスについては、パルス幅が変更されないので、パルス幅が互いに異なる複数種の信号を利用する電池監視システムに本実施形態に係る信号再生成部100A及び100Bを適用することが可能である。
【0084】
[第5の実施形態]
図12は、本発明の第5の実施形態に係る電池監視システム1Aの構成を示す図である。電池監視システム1Aは、電池監視装置30間及び電池監視装置30と信号変換装置20との間の通信経路が第1の実施形態に係る電池監視システム1と異なる。また、本実施形態に係る電池監視装置30は、
図1に示す送受信部31が受信専用の受信部310に置換され、
図1に示す送受信部32が送信専用の送信部320に置換されている。
【0085】
電池監視装置30は、最も低電位側に配置された電池監視装置30Zを除き、送信部320が、伝送路50を介して隣接する低電位側の電池監視装置30の受信部310に接続されている。すなわち、複数の電池監視装置30は、デイジーチェーンを形成するように直列接続されており、隣接する他の電池監視装置30との間で通信可能とされている。本実施形態に係る電池監視システム1Aにおいては、互いに隣接する電池監視装置30間で行われる通信は、デイジーチェーンの高電位側から低電位側に向かう一方向通信とされている。
【0086】
最も高電位側に配置された電池監視装置30Aの受信部310は、伝送路50を介して信号変換装置20の送信部22に接続されている。最も低電位側に配置された電池監視装置30Zの送信部320は、伝送路50を介して信号変換装置20の受信部23に接続されている。
【0087】
図13は、本実施形態に係る電池監視システム1Aに適用される電池監視装置30の構成を示す図である。
【0088】
受信部310は、通信ポート35Aに接続され、送信部320は、通信ポート35Bに接続されている。受信部310と送信部320との間には、信号再生成部100が設けられている。
【0089】
受信部310は、通信ポート35Aに入力される差動形式の通信信号を受信し、受信した通信信号を変換部33に供給するとともに信号再生成部100に供給する。
【0090】
送信部320は、変換部33から供給される差動形式の通信信号及び信号再生成部100から供給される再生成された通信信号を、通信ポート35Bを介して伝送路50に送出する。
【0091】
信号再生成部100は、受信部310から供給される通信信号に含まれるパルスの幅が、所定の大きさとなるように通信信号を再生成し、再生成した通信信号を送信部320に供給する。信号再生成部100の構成として、
図3、
図7、
図9、
図11に示されたいずれの構成を適用することも可能である。
【0092】
本実施形態に係る電池監視システム1Aによれば、制御装置10から各電池監視装置30に向けられた通信信号は、高電位側に配置された電池監視装置30から低電位側に配置された電池監視装置30に向けて順次伝送され、最終段の電池監視装置30Zまで伝送される。通信信号は、複数の電池監視装置30を通過する際に、信号再生成部100によって再生成され、パルス幅が修復される。
【0093】
また、本実施形態に係る電池監視システム1Aによれば、各電池監視装置30から制御装置10に向けられた通信信号は、高電位側に配置された電池監視装置30から低電位側に配置された電池監視装置に向けて順次伝送され、最終段の電池監視装置30Zまで伝送された後、電池監視装置30Zの送信部320から伝送路50に送出され、信号変換装置20を経由して制御装置10に伝送される。通信信号は、複数の電池監視装置30を通過する際に、信号再生成部100によって再生成され、パルス幅が修復される。