特許第6887203号(P6887203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887203
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】導体接続装置及び導体接続方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20210603BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20210603BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B23K20/10
   H01R43/02 B
   H01R4/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-138506(P2017-138506)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-18226(P2019-18226A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 肇宏
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢
(72)【発明者】
【氏名】中山 智裕
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭41−021167(JP,Y1)
【文献】 特開2012−192413(JP,A)
【文献】 特開2015−167957(JP,A)
【文献】 特開2010−218796(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第03437749(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
H01R 4/02
H01R 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体を超音波溶接して接合させる導体接続装置であって、
前記導体と接触するとともに、凹凸形状が形成された接触面を有し、超音波振動するホーンと、
前記接触面と当接するとともに、前記接触面に沿って相対移動可能に構成された一対の規制部と、
前記接触面に対して接近又は離間する方向に相対移動するアンビルとが備えられ、
前記接触面と当接する前記規制部の面には、前記接触面の凹凸形状と噛み合うように、前記規制部の相対移動の方向及び超音波振動の振動方向に沿って凹凸形状が形成され、
前記規制部は、前記規制部の面に形成された凹凸形状と前記接触面の凹凸形状とが噛み合ったまま前記接触面に沿って移動でき、
前記アンビルが、互いに対向する前記規制部に挟まれるように、前記ホーン及び前記規制部が前記アンビルに対して相対移動し、かつ、一対の前記規制部の少なくとも一方が他方に向けて移動する
導体接続装置。
【請求項2】
前記ホーンは、
一対の前記規制部が対向する方向及び、前記ホーンと前記アンビルとが対向する方向と交差する方向に沿って超音波振動する
請求項1に記載の導体接続装置。
【請求項3】
前記アンビルに対する前記ホーン及び前記規制部の相対移動と、一対の前記規制部の少なくとも一方の他方に対する移動とを同期させる制御部が備えられた
請求項1又は請求項2に記載の導体接続装置。
【請求項4】
前記ホーン及び前記規制部が前記アンビルに向けて移動する
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の導体接続装置。
【請求項5】
前記アンビルにおける前記接触面と対向する対向接触面が、凹凸形状で形成された
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載の導体接続装置。
【請求項6】
前記対向接触面の凹凸形状が、前記ホーンの超音波振動の振動方向と交差する方向に沿って形成された
請求項5に記載の導体接続装置。
【請求項7】
交換可能に構成された前記導体に応じた複数の前記アンビルが備えられ、
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の導体接続装置。
【請求項8】
導体と接触するとともに、凹凸形状が形成された接触面を有し、超音波振動するホーンと、前記接触面と当接するとともに所定の間隔を隔てて対向配置され、前記接触面に沿って相対移動する一対の規制部とで、形成された空間に複数の前記導体を配置する導体配置工程と、
前記接触面に対して所定間隔を隔てて配置されたアンビルに対して、前記ホーン及び前記規制部が相対移動するとともに、前記アンビルが対向する前記規制部に挟まれるように一対の前記規制部の少なくとも一方が他方に相対移動し、前記規制部が前記アンビルを挟んで、前記アンビルと前記ホーンとで前記導体を圧縮する移動圧縮工程と、
前記ホーンを超音波振動して、前記アンビルと前記ホーンとで圧着された前記導体を超音波溶接する溶接工程とを備え、
前記接触面と当接する前記規制部の面には、前記接触面の凹凸形状と噛み合うように、前記規制部の相対移動の方向及び超音波振動の振動方向に沿って凹凸形状が形成され、
前記規制部は、前記規制部の面に形成された凹凸形状と前記接触面の凹凸形状とが噛み合ったまま前記接触面に沿って移動できる
導体接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両などに配索される導体を導電可能に接続する導体接続装置及び前記導体の導体接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車には、操作性や快適性を向上させる様々な電気機器が装備されており、このような電気機器は、自動車に配索されるワイヤハーネスなどによって互いに電気的に接続され、信号の送受信や電力の供給が行われている。
【0003】
上述のワイヤハーネスを構成する複数の被覆電線は、絶縁被覆で覆われた導体を露出させて互いに接続することによって導通可能としている。このように導体同士を導通可能に接続する導体接続装置が従来から提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、幅方向に所定の間隔を隔てて対向配置された規制部と、前記規制部同士の間において対向配置されたアンビル及びホーンとで形成された導体配置空間に複数の導体を配置し、前記ホーンを前記アンビル側に移動して前記導体を圧縮するとともに、前記ホーンを超音波振動させることで前記導体を接合できる導体接続装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された導体接続装置では、前記導体配置空間に挿入する前記導体の径や本数が異なる場合には、これらの前記導体により製造されるワイヤハーネスの外径が変化するため、前記導体配置空間に前記導体が挿入できないことや、前記導体配置空間に隙間があまり確実に前記導体を接合できないためといった問題があった。
【0006】
このように前記導体の本数などを変える場合には、前記ホーン及び前記規制部、前記アンビルすべてを交換しなければならず、段替えにおいて手間がかかるといった問題があった。すなわち、特許文献1に開示された導体接続装置では、様々な導体の接合に対応できないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−82375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、容易に様々な導体の接合に対応できる導体接続装置及び導体接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数の導体を超音波溶接して接合させる導体接続装置であって、前記導体と接触するとともに、凹凸形状が形成された接触面を有し、超音波振動するホーンと、前記接触面と当接するとともに、前記接触面に沿って相対移動可能に構成された一対の規制部と、前記接触面に対して接近又は離間する方向に相対移動するアンビルとが備えられ、前記接触面と当接する前記規制部の面には、前記接触面の凹凸形状と噛み合うように、前記規制部の相対移動の方向及び超音波振動の振動方向に沿って凹凸形状が形成され、前記規制部は、前記規制部の面に形成された凹凸形状と前記接触面の凹凸形状とが噛み合ったまま前記接触面に沿って移動でき、前記アンビルが、互いに対向する前記規制部に挟まれるように、前記ホーン及び前記規制部が前記アンビルに対して相対移動し、かつ、一対の前記規制部の少なくとも一方が他方に向けて移動することを特徴とする。
【0010】
またこの発明は、導体と接触するとともに、凹凸形状が形成された接触面を有し、超音波振動するホーンと、前記接触面と当接するとともに所定の間隔を隔てて対向配置され、前記接触面に沿って相対移動する一対の規制部とで、形成された空間に複数の前記導体を配置する導体配置工程と、前記接触面に対して所定間隔を隔てて配置されたアンビルに対して、前記ホーン及び前記規制部が相対移動するとともに、前記アンビルが対向する前記規制部に挟まれるように一対の前記規制部の少なくとも一方が他方に相対移動し、前記規制部が前記アンビルを挟んで、前記アンビルと前記ホーンとで前記導体を圧縮する移動圧縮工程と、前記ホーンを超音波振動して、前記アンビルと前記ホーンとで圧着された前記導体を超音波溶接する溶接工程とを備え、前記接触面と当接する前記規制部の面には、前記接触面の凹凸形状と噛み合うように、前記規制部の相対移動の方向及び超音波振動の振動方向に沿って凹凸形状が形成され、前記規制部は、前記規制部の面に形成された凹凸形状と前記接触面の凹凸形状とが噛み合ったまま前記接触面に沿って移動できる導体接続方法であることを特徴とする。
【0011】
前記導体は、導電性を有する素線を撚った撚線、あるいは単線で構成された導体、素線を束ねた導体などを含み、また、前記導体は導電性を有すればどのような材質で構成されていてもよく、銅や銅合金で構成された銅系導体や、アルミニウムやアルミニウム合金などで構成されたアルミニウム系導体で構成されるものを含む。
【0012】
なお前記導体は、例えば撚線や素線の束を絶縁性の絶縁被覆で被覆させた被覆電線の一端において、外層を形成する前記絶縁被覆を切剥いで露出させた露出導体や、絶縁被覆で被覆されていない撚線導体や素線を束ねた導体などを含む。また、前記導体は例えば銅管や銅箔などで接合部分を囲繞して接合させる場合も含む。
【0013】
上述の複数の導体とは、同一又は異なる種類の導体で構成されていてもよい。具体的には、外径や材質が異なる導体であってもよく、また一部は撚線で一部は単線であってもよい。
【0014】
この発明により、容易に様々な導体の接合に対応できる。
詳述すると、前記規制部は前記ホーンにおける前記接触面に沿って移動可能に構成されているため、前記導体の外径や本数が変更された場合であっても、前記規制部の位置を調整することで、前記導体を前記接触面と前記規制部とで形成される導体配置空間に配置できる。
【0015】
このため、接合される前記導体に適した前記アンビルを交換するだけで前記導体を接合できる。したがって、前記導体を超音波溶接するのに、段替えを手間取ることを防止でき、容易に前記導体を接合できる。
【0016】
具体的には、接合させた導体で構成されるワイヤハーネスの外径が、従前に導体を接合させて製造していたワイヤハーネスの外径と異なる場合や、接合させる導体の本数が異なる場合などであっても、前記規制部を前記接触面に沿って移動させて、前記導体を挿入に適した前記導体配置空間を形成することができるため、容易に前記導体に適した前記導体配置空間を形成でき、前記導体を接合するための段替えを容易に行うことができる。
【0017】
また、前記規制部は前記ホーンにおける前記接触面に沿って移動可能に構成されているため、前記ホーンの超音波振動により、前記規制部と前記ホーンとの間に隙間が形成されることがない。したがって、前記アンビルに対して前記ホーンを相対移動させて圧縮するとともに、前記ホーンを超音波振動させたとしても、前記ホーンと前記規制部との間に形成される隙間に前記導体が噛み込まれて、バリが形成されることを防止できる。
【0018】
さらに、前記規制部は、前記ホーンにおける前記接触面に沿って相対移動可能に構成されているため、前記規制部の位置を前記接触面に沿って適宜移動させることで、前記導体と接触する前記接触面の位置を変更できる。すなわち、前記ホーンの超音波振動により摩耗する位置を変更できるため、前記ホーンが局所的に摩耗することを防止でき、装置の寿命を延ばすことができる。
【0019】
なお、前記アンビルに対する前記ホーン及び前記規制部の相対移動と、一対の前記規制部の移動とは、前記規制部の移動と前記ホーンなどの移動とが同じタイミングで移動する場合や、対向配置された前記規制部の前記接触面に沿った移動と、前記ホーン及び前記規制部のアンビルに対する相対移動とが独立して行われる場合を含む。
【0020】
この発明の態様として、前記ホーンは、一対の前記規制部が対向する方向及び、前記ホーンと前記アンビルとが対向する方向と交差する方向に沿って超音波振動してもよい。
上述の交差する方向とは、前記規制部が対向する方向(対向方向とする)及び前記ホーンと前記アンビルとが対向する方向(圧縮方向とする)とに直交する直交方向に限らず、前記直交方向と交差する方向であってもよい。
【0021】
この発明により、前記導体を効率よく接合させることができる。
詳述すると、前記導体配置空間に配置された前記導体を前記ホーンと前記アンビルとが圧縮するため、前記圧縮方向に並べられた前記導体同士の接触面には圧縮方向に向かって外力が作用する。また、前記ホーンと前記アンビルとが前記導体を圧縮するため、前記導体は前記対向方向へと広がろうとするが、前記規制部により前記導体の前記対向方向への移動は規制される。このため、前記対向方向に並んだ前記導体の接触面には前記対向方向に向かって外力が作用する。
【0022】
この状態において、例えば、前記ホーンを前記圧縮方向及び前記対向方向と直交する方向に超音波振動させた場合、前記導体において外力が作用している前記圧縮方向及び前記対向方向と直交する方向に沿って前記導体が超音波振動される。これにより、外力が作用している前記導体の金属表面の酸化皮膜などが確実に除去され、前記導体を構成する金属の原子間引力により、前記導体が溶接されるやすくなる。これにより、前記圧縮方向又は前記対向方向に並んだ前記導体を効率よく確実に接合できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記アンビルに対する前記ホーン及び前記規制部の相対移動と、一対の前記規制部の少なくとも一方の他方に対する移動とを同期させる制御部が備えられてもよい。
【0024】
この発明によると、前記ホーン及び前記規制部の圧縮方向への移動と、前記規制部の対向方向への移動とを同期させることで、前記アンビルと前記ホーンとが前記導体を圧縮する前に前記アンビルと前記規制部とを当接させることができ、前記導体が前記アンビルと前記規制部との間に形成される隙間に噛み込むことを確実に防止できる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記ホーン及び前記規制部が前記アンビルに向けて移動してもよい。
この発明によると、前記ホーン及び前記規制部、又は前記アンビルの双方を移動させる複雑な構成とする必要がなく、また駆動機構を前記ホーン側にのみ設けることができるため、簡易な構成で前記導体を確実に接続することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記アンビルにおける前記接触面と対向する対向接触面が、凹凸形状で形成してもよい。
この発明によると、前記対向接触面と当接した前記導体が凹凸形状に沿って配置されるため、前記導体同士が接触する接触面が前記圧縮方向あるいは前記対向方向と交差する位置に形成されやすくなる。
【0027】
このため前記ホーンを超音波振動させた場合に、前記接触面と前記振動方向とが垂直とならずに、前記接触面における酸化皮膜をより除去しやすくなる。したがって、効率よく超音波溶接することができ、確実に前記導体同士を接合できる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記対向接触面の凹凸形状が、前記ホーンの超音波振動の振動方向と交差する方向に沿って形成してもよい。
この発明により、より確実に前記導体同士の接触面と前記振動方向とを交差させることができるため、前記ホーンの超音波振動により前記導体同士の接触面においてより効率よく酸化皮膜を除去できる。したがって、前記導体をより確実に接合できる。
【0029】
またこの発明の態様として、交換可能に構成された前記導体に応じた複数の前記アンビルが備えられてもよい。
この発明により、より容易に前記アンビルを所望のアンビルに交換できるため、前記導体を超音波溶接に手間取ることをより確実に防止でき、汎用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明により、容易に様々な導体の接合に対応できる導体接続装置及び導体接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】導体接続装置の概略斜視図。
図2】導体接続装置の概略分解斜視図。
図3】ホーンの説明図。
図4】規制部の説明図。
図5】導体接続装置の説明図。
図6】導体接続方法のフローチャート。
図7】導体接続方法の説明図。
図8】導体接続方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は導体接続装置1の概略斜視図を示し、図2は導体接続装置1の概略分解斜視図を示し、図3は導体接続装置1を構成するホーン13の説明図を示し、図4は導体接続装置1を構成する規制部21の説明図を示す。
【0033】
図3について詳述すると、図3(a)はホーン13の底面を拡大した拡大底面図を示し、図3(b)はホーン13を+Y側から視た拡大側面図を示し、図3(c)はホーン13を+X側から視た拡大正面図を示す。なお、図3(b)及び図3(c)ではホーン13の一部分のみを拡大して表示する。
【0034】
また、図4について詳述すると、図4(a)は規制部21の上面を拡大した拡大平面図を示し、図4(b)は規制部21を+Y側から視た拡大側面図を示し、図4(c)は規制部21を+X側から視た拡大正面図を示す。なお、図4(a)及び図4(c)では規制部21の一部分のみを拡大して表示する。
【0035】
図5は導体接続装置1の構成を説明する説明図を示す。図5について詳述すると、図5(a)は導体接続装置1において被覆電線100を接続する部位を+X方向から視た概略正面図を示し、図5(b)は図5(a)におけるA−A断面図を示す。
【0036】
ここで、被覆電線100の長手方向を長手方向Xとし、被覆電線100の横幅方向であって長手方向Xと直交する方向を幅方向Yとし、図1中の長手方向Xに沿って左側を+X方向とし、右側を−X方向とするとともに、幅方向Yに沿って左側を−Y方向とし、右側を+Y方向とする。
また、図1中において、縦方向を上下方向Zとし、図1中の上側を+Z方向(上方)、下側を−Z方向(下方)とする。
【0037】
導体接続装置1は、図1に示すように、複数本の被覆電線100の先端側に設けた導体露出部120同士を超音波溶接(超音波金属接合)する装置であり、上下方向Zに昇降する超音波溶接具10と、超音波溶接具10の+X方向側に固定された一対の幅方向調整部20と、下降する超音波溶接具10とで導体露出部120を圧縮する複数のアンビル30と、超音波溶接具10及び幅方向調整部20の移動を制御する制御部40とで構成されている。
【0038】
被覆電線100は、アルミニウム合金の素線を撚り合わせて形成された撚線導体を絶縁樹脂製の絶縁被覆110で被覆して構成されており、被覆電線100の先端側には絶縁被覆110を所定の長さ分剥いで撚線導体を露出させた導体露出部120が設けられている。
【0039】
なお、撚線導体は導電性を有していれば、どのような素材であってもよく、例えば、アルミニウムや銅、銅合金などの素線を撚り合わせてもよい。また、撚線導体は必ずしも撚線である必要はなく導電性を有する素線を束ねて構成されていてもよい。
【0040】
導体接続装置1を構成する超音波溶接具10は、図示しない昇降用モータによって上下方向Zに沿って昇降する昇降部11と、昇降部11の中央部分から+X方向側に突出するホーン支持部12と、ホーン支持部12の+X方向側端面から下方に延びるホーン13とで構成されている。
なお、昇降用モータは制御部40により制御されている。
【0041】
ホーン支持部12は、昇降部11の中央部分から+X方向側に突出するとともに、ホーン13を昇降部11に支持するように構成されている。
ホーン13は、図1乃至図5に示すように、ホーン支持部12の+X方向側端面から下方に延び、図示しない超音波発振器と接続されることで長手方向Xに沿って超音波振動するように構成されている。
【0042】
また、ホーン13の底面であるホーン側下面13aには、図3(a)に示すように、上方に窪ませて形成したホーン側凹部14と、下方に突出させて形成したホーン側凸部15が、長手方向X及び幅方向Yに沿って格子状に複数設けられている。すなわち、ホーン13の底面は長手方向X及び幅方向Yから視て凹凸形状となるように形成されている。
【0043】
ホーン側凹部14は、ホーン側下面13aから幅方向Yに沿って上方に窪ませて形成されたホーン幅方向谷部141(図3(b)参照)と、ホーン側下面13aを長手方向Xに沿って上方に窪ませて形成されたホーン長手方向谷部142(図3(c)参照)との交差部分に形成される凹部であり、ホーン側凸部15はホーン側下面13aから幅方向Yに沿って下方に突出するように、ホーン幅方向谷部141を間に挟んで形成されたホーン幅方向山部151(図3(b)参照)と、ホーン側下面13aを長手方向Xに沿って下方に突出するように、ホーン長手方向谷部142を間に挟んで形成されたホーン長手方向山部152(図3(c)参照)との交差部分に形成される凸部である。
【0044】
このホーン幅方向谷部141及びホーン幅方向山部151は、幅方向Yに沿ってそれぞれ等間隔に5列及び6列配列され、ホーン長手方向谷部142及びホーン長手方向山部152は長手方向Xに沿ってそれぞれ等間隔に23列及び24列配列されており(図3(a)参照)、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15は長手方向X及び幅方向Yに沿って格子状に形成されることとなる。
【0045】
超音波溶接具10の+X方向側において幅方向Yに沿って対向配置された幅方向調整部20は、被覆電線100の幅方向Yへの移動を規制する規制部21と、規制部21を固定するとともに支持する固定支持部22と、規制部21を間接的に昇降部11に固定する固定部23と、固定部23に対して固定支持部22を移動可能に連結させる連結部24とで構成されている。
【0046】
規制部21は、図1及び図2に示すように、長手方向Xに沿った長さが対応するホーン13の長さと等しく、上下方向Zに沿った高さが導体露出部120の外径の3倍に比べて十分に長くなるように構成された直方体である。
【0047】
規制部21の上面には、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15と噛み合うように、上方に突出する複数の規制部側凸部25及び規制部側凹部26が形成されている。
詳述すると、規制部側凸部25は、幅方向Yに沿って上方に突出する規制部幅方向山部251(図4(b)参照)と、長手方向Xに沿って上方に突出する規制部長手方向山部252(図4(c)参照)との交差部分に形成される凸部であり、規制部側凹部26は、幅方向Yに沿って下方に窪んだ、規制部幅方向山部251の間に形成される規制部幅方向谷部261(図4(b)参照)と、長手方向Xに沿って下方に窪んだ、規制部長手方向山部252の間に形成される規制部長手方向谷部262(図4(c)参照)との交差部分に形成される凹部である。
【0048】
この規制部幅方向山部251及び規制部幅方向谷部261は、ホーン幅方向谷部141及びホーン幅方向山部151と対応するように、幅方向Yに沿って等間隔に7列及び6列配列され、規制部長手方向山部252及び規制部長手方向谷部262は、長手方向Xに沿って等間隔に複数列配列されている。すなわち、規制部側凸部25及び規制部側凹部26は長手方向X及び幅方向Yに沿って格子状に形成されており、規制部21の上面は、ホーン側下面13aと対応して長手方向X及び幅方向Yから視て凹凸形状となる。
【0049】
このように構成された規制部21の一端側は、固定支持部22と嵌合されて固定されており、幅方向Yに沿うように支持されている。
なお、本実施形態において、規制部21の高さは、導体露出部120の外径の3倍に比べて十分な長さとしているが、導体露出部120の外径の3倍である必要はなく、超音波溶接される複数の導体露出部120が形成する電線束の総外径よりも十分に長く形成されていればよい。
【0050】
連結部24は、図1及び図2に示すように、昇降部11に固定された固定部23を幅方向Yに沿って貫通するとともに、一端が固定支持部22に固定された棒状体であり、制御部40により制御されている図示しない幅方向移動用モータによって、幅方向Yに沿って移動可能に構成されている。
【0051】
すなわち、連結部24は固定支持部22と固定部23とを連結するとともに、固定部23に対して規制部21が固定された固定支持部22を移動させることができる。なお、固定部23は昇降部11に固定されているため規制部21及び固定支持部22は昇降部11に対して間接的に固定されている。
【0052】
図示しない昇降用モータと幅方向移動用モータを制御する制御部40は、昇降用モータと幅方向移動用モータを同期させて駆動させることができる構成であり、超音波溶接具10を下降させるとともに、規制部21の幅方向Yに沿って移動させることができる。
なお、規制部21は別個独立に幅方向Yに沿って移動できる。
【0053】
アンビル30は、導体接続装置1の基板上に設けられた直方体状の受け具であり、上面には+Z方向に向けてアンビル上部31が立設されている。このアンビル上部31は、超音波溶接される複数の導体露出部120が形成する電線束の総外径に対応するように所定の幅を有するとともに、高さが規制部21の高さよりも高くなるように形成されており、アンビル上部31の上面であるアンビル側上面31aには、長手方向Xに沿って凸部が2つ設けられた緩やかに連続する凹凸形状が形成されている(図5(a)参照)。
【0054】
アンビル側上面31aに形成された凹凸形状について詳述する。この凹凸形状は、幅方向Y及び上下方向Zと並行となるように整列させた複数の導体露出部120が凹部及び凸部と接触することで、互いに接触する導体露出部120同士の接触面が幅方向Y及び上下方向Zと交差して配置されるように形成されている。
【0055】
例えば、アンビル側上面31aに形成された凹凸形状は、凸部の頂点同士の長さ(凹部の幅)及び凹部の頂点同士の長さ(凸部の幅)がそれぞれ導体露出部120の外径よりも長くなるとともに、凸部と凹部の高さが導体露出部120の外径よりも短くなるように形成されている。
【0056】
なお、本実施形態においては、アンビル上部31の幅方向Yの幅が異なるように構成されたアンビル30が3個設けられている(アンビル30a、30b、30c)。なお、幅方向Yの幅は、アンビル30aが一番小さく、アンビル30cが一番大きくなるように形成されている。
【0057】
また、このように複数設けられたアンビル30(アンビル30a、30b、30c)は、レール50に沿って移動可能に構成され、所望のアンビル30を超音波溶接具10の下方に配置させることができる。
【0058】
なお、本実施形態において、アンビル30は3個設けられているが、接続する被覆電線100に合わせて設ける個数を適宜調整でき、また各アンビル30におけるアンビル上部31の幅も適宜調整できる。
【0059】
このように構成された超音波溶接具10と幅方向調整部20は、図1及び図5に示すように、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15に規制部側凸部25及び規制部側凹部26がそれぞれ挿通されており、規制部21の上面とホーン13の下面であるホーン側下面13aとが面一の状態で、規制部21がホーン側下面13aに沿って幅方向Yに移動可能に配置されている。
【0060】
また、アンビル30は、ホーン側下面13aとアンビル側上面31aとが対向する位置にアンビル30を配置されている。このときアンビル上部31の−X方向側端部がホーン13及び昇降部11と対向しないようにアンビル30は配置されている(図5(b)参照)。
なお、アンビル30はレール50に沿って移動させてホーン13の下方に配置される。
【0061】
このように超音波溶接具10と幅方向調整部20とを固定されるとともに、超音波溶接具10の下方にアンビル30を配置させた導体接続装置1は、制御部40の制御により昇降用モータで超音波溶接具10及び幅方向調整部20を下方側に移動できるとともに、幅方向移動用モータにより規制部21を幅方向Yに沿って移動させることができる。
【0062】
また、幅方向調整部20が超音波溶接具10に固定された状態において、互いに対向する規制部21の先端面21a同士は所定の間隔を隔てるように配置させて、規制部21とホーン13とで複数本の被覆電線100(導体露出部120)を挿入させて配置させることができる配置空間Sを形成できる(図5(a)参照)。
【0063】
以下、導体接続装置1を用いた被覆電線100の接続方法について、図6乃至図8に基づいて簡単に説明する。
ここで図6は、複数本の被覆電線100における導体露出部120を溶接して接続する導体接続方法のフローチャートを示し、図7及び図8は、図5におけるα部におけるB−B断面図を用いて導体露出部120を接続する導体接続方法を説明する説明図を示す。
【0064】
詳述すると、図7(a)は配置空間Sに導体露出部120を挿入した状態におけるB−B断面図を示し、図7(b)は配置空間Sに導体露出部120を挿入した状態で超音波溶接具10及び幅方向調整部20を下降させた状態におけるB−B断面図を示す。
【0065】
図8(a)は配置空間Sに挿入した導体露出部120をホーン13とアンビル30とで圧縮した状態におけるB−B断面図を示し、図8(b)は圧縮した導体露出部120に対して超音波溶接をした状態におけるB−B断面図を示す。
なお、図7及び図8においては規制部側凸部25及び規制部側凹部26の図示を省略している。
【0066】
被覆電線100の端末部分に設けられた導体露出部120は、図6に示すように、配置空間Sに導体露出部120を配置する電線配置工程s1と、超音波溶接具10と幅方向調整部20とを下降する圧縮移動工程s2と、ホーン13とアンビル30とで導体露出部120を圧縮する導体圧縮工程s3と、圧縮された導体露出部120を超音波により溶接する超音波溶接工程s4とをこの順に行うことで導通可能に接続される。
【0067】
以下、各工程について図7及び図8に基づいて詳述する。
あらかじめ、複数本(本実施形態では9本)の被覆電線100を用意して、被覆電線100の一端側(―X方向側)の絶縁被覆110を所定の長さ分だけ切り剥ぎ、絶縁被覆110に囲繞された撚線導体を露出させて導体露出部120を形成する。
【0068】
次に、接続する導体露出部120の本数や外径に適したアンビル30を選択し、アンビル側上面31aがホーン側下面13aと対向配置するようにレール50に沿って移動させ、アンビル30を所定の位置に配置する。ここではアンビル30aを超音波溶接具10の下方側に配置することとする。
【0069】
続いて、先端面21aが所定の間隔となるまで規制部21を幅方向Yに沿って移動させるとともに、ホーン13が所定の高さとなるまで超音波溶接具10を上昇させて、配置空間Sを形成させる。
【0070】
この状態において、図7(a)に示すように、所定の間隔を隔てて対向配置された規制部21とホーン13とで形成された配置空間Sに、9本の導体露出部120を上下方向Zに沿って3本、幅方向Yに沿って3本ずつ配列させて、+X方向側から−X方向側に向けて挿入する(電線配置工程s1)。
【0071】
そして、図7(b)に示すように、制御部40の制御により、超音波溶接具10を下降させるとともに、超音波溶接具10の下降と同期させて規制部21を導体露出部120側へ幅方向Yに沿って移動させる。これにより、先端面21aがアンビル上部31の幅方向Y側の両側面と当接するとともに、導体露出部120がホーン側下面13a及びアンビル側上面31aとで挟み込まれ、導体露出部120がホーン13により上方から押し付けられる(圧縮移動工程s2)。
【0072】
ここで、図5(b)に示すように、規制部21はホーン側凹部14及びホーン側凸部15と規制部側凸部25及び規制部側凹部26とがそれぞれ噛み合った状態でホーン側下面13aに沿って移動できるため、ホーン13と規制部21との間に隙間が生じない。このため、幅方向Yに沿って規制部21を移動させた場合に、導体露出部120がホーン13と規制部21とで噛み込まれることも防止できる。
【0073】
また、導体露出部120の延びる長手方向Xと直交する幅方向Yに沿うようにホーン幅方向谷部141及び規制部幅方向山部251とが形成され、長手方向Xに沿ってホーン長手方向谷部142及び規制部長手方向山部252とが形成されており、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15と規制部側凸部25及び規制部側凹部26とが噛み合っているため、ホーン13と規制部21との間に長手方向Xに沿った隙間が形成されにくく、導体露出部120がホーン13と規制部21との間に噛み込まれることをより防止できる。
【0074】
また、先端面21aは、ホーン13により押し付けられた導体露出部120と当接する前にアンビル上部31の幅方向Y側の両側面と当接するため、規制部21とアンビル上部31との間に隙間が生じない。これにより、導体露出部120が上方から押されて幅方向Yに移動したとしても、上方から押された導体露出部120が幅方向Y方向に移動することを規制できるとともに、規制部21とアンビル上部31との間に導体露出部120が噛み込まれることを防止できる。
【0075】
さらにまた、上方から押し付けられた導体露出部120を支持するアンビル側上面31aが凹凸形状で形成されているため、下方側に配列された3本の導体露出部120が凹凸形状に沿って互いに上下方向Z及び幅方向Yにずれて配置されることとなり、導体露出部120同士の接触面が上下方向Z及び幅方向Yを交差する方向に配置される(図7(b)参照)。
【0076】
これにより、中央に配置された3本の導体露出部120が、幅方向Y及び上下方向Zにずれた導体露出部120同士の間などに配置されることとなり、3本の導体露出部120同士の接触面も幅方向Y及び上下方向Zと交差する方向に沿って配置される。同様に、上方に配置された3本の導体露出部120同士の接触面も幅方向Y及び上下方向Zと交差する方向に沿って配置される。
【0077】
このように、9本の導体露出部120は配置空間Sの内部に乱雑に配置されることにより、導体露出部120同士の接触面が超音波振動の方向である長手方向Xと垂直からずれた位置に形成され易くなるため、超音波振動によって、より確実に導体露出部120を接合させることができ、接続不良を防止できる(図7(b)参照)。
【0078】
そして、導体露出部120が配置空間Sにおいて乱雑して配列された状態で、ホーン13をさらに下降することにより、導体露出部120を上下方向Zから圧縮させることができ(導体圧縮工程s3)、導体露出部120同士の接触箇所を増やすとともに、接触面積を大きくすることができる(図8(a)参照)。
【0079】
そして、導体露出部120をホーン13で圧縮した状態で、ホーン13を長手方向Xに沿って超音波振動させながらさらに超音波溶接具10(ホーン13)を下降させることで、導体露出部120同士が超音波溶接により互いに超音波金属接合される(超音波溶接工程s4)。
【0080】
このように、導体露出部120を圧縮させながら超音波金属接合することにより、図8(b)に示すように、複数本の導体露出部120の接触面において溶接されて、被覆電線100を束ねたワイヤハーネス200を製造することができる。
したがって、導体露出部120同士の接合不良が起こることを防止でき、導体露出部120をより確実に電気的に接続することができる。
【0081】
このように、被覆電線100を束ねて溶接したワイヤハーネス200は、導体露出部120を溶接した溶接断面におけるアンビル30側が凹凸形状で構成されている。
【0082】
なお、ホーン13とアンビル30とで導体露出部120を圧縮することにより、導体露出部120同士をより確実に接触させることができ、溶接した場合において、導体露出部120同士の間に空洞が形成されることを防止できる。
【0083】
なお、本実施形態では、ホーン13を下降させて導体露出部120を圧縮したのちに、ホーン13を超音波振動しているが、ホーン13を超音波振動させながら導体露出部120を圧縮してもよい。
【0084】
このように構成された、複数の導体露出部120を超音波溶接して超音波金属接合させる導体接続装置1は、導体露出部120を圧縮するホーン側下面13aを有し、超音波振動するホーン13と、ホーン側下面13aと当接するとともに、ホーン側下面13aに沿って移動可能に構成された一対の規制部21と、ホーン側下面13aに対して接近又は離間する方向に相対移動するアンビル30とが備えられ、アンビル30を構成するアンビル上部31が一対の規制部21において互いに対向する規制部21に挟まれるように、ホーン13及び規制部21をアンビル30に対して下降させ、かつ、一対の規制部21を導体露出部120に向けて移動させることにより、容易に様々な導体露出部120の接合に対応できる
【0085】
詳述すると、規制部21はホーン13におけるホーン側下面13aに沿って移動可能に構成されているため、導体露出部120の外径や本数が変更された場合であっても、規制部21の位置を調整することで、ホーン側下面13aと規制部21とで形成される配置空間Sに外径や本数が変更された導体露出部120を配置できる。
【0086】
これにより、接合される導体露出部120に適したアンビル30を交換するだけで、様々な導体露出部120を接合できる。したがって、導体露出部120を超音波溶接するのに、段替えを手間取ることを防止でき、容易に導体露出部120を接合できる。
【0087】
具体的には、接合させた複数の導体露出部120で構成される電線束の外径が、従前に導体露出部120を接合させて製造していた電線束の外径と異なる場合や、接合させる導体露出部120の本数が異なるために電線束の外径が異なる場合などであっても、規制部21をホーン側下面13aに沿って移動させて、導体露出部120を挿入させるのに適した配置空間Sを形成することができるため、容易に導体露出部120同士を接合できる。
【0088】
また、規制部21はホーン13におけるホーン側下面13aに沿って移動可能に構成されているため、ホーン13の超音波振動により、規制部21とホーン13との間に隙間が形成されることがない。したがって、アンビル30に対してホーン13を相対移動させて導体露出部120を圧縮するとともに、ホーン13を超音波振動させたとしても、導体露出部120がホーン13と規制部21との間に形成される隙間に噛み込まれて、バリが形成されることを防止できる。
【0089】
さらに、規制部21は、ホーン13におけるホーン側下面13aに沿って相対移動可能に構成されているため、規制部21の位置をホーン側下面13aに沿って適宜移動させることで、導体露出部120と接触するホーン側下面13aの位置を変更できる。すなわち、ホーン13の超音波振動によりホーン側下面13aの摩耗する位置を変更できるため、ホーン13が局所的に摩耗することを防止でき、導体接続装置1の寿命を延ばすことができる。
【0090】
また、ホーン13は、一対の規制部21が対向する方向である幅方向Y及び、ホーン13とアンビル30とが対向する方向である上下方向Zと交差する方向に沿って超音波振動することにより、導体露出部120を効率よく接合させることができる。
【0091】
詳述すると、配置空間Sに配置された露出導体130をホーン13とアンビル30とが導体露出部120を上下方向Zから圧縮するため、圧縮方向である上下方向Z沿って並べられた導体露出部120同士の接触面には上下方向Zに向けて外力が作用する。また、ホーン13とアンビル30とが導体露出部120を圧縮するため、導体露出部120が幅方向Yへと広がろうとするが、規制部21により導体露出部120の幅方向Yへの移動は規制される。このため、幅方向Yに並んだ導体露出部120の接触面には幅方向Yに向けて外力が作用する。
【0092】
この状態において、ホーン13を上下方向Z及び幅方向Yと直交する方向(長手方向X)に超音波振動させることにより、すなわち導体露出部120において外力が作用している上下方向Z及び幅方向Yと直交する長手方向Xに沿って導体露出部120を超音波振動させるため、超音波振動により導体露出部120の金属表面の酸化皮膜などを除去され、導体露出部120を構成する金属の原子間引力により、導体露出部120が溶接されることとなる。これにより、上下方向Z又は幅方向Yに並んだ導体露出部120を効率よく確実に接合できる。
【0093】
さらにまた、アンビル30に対するホーン13及び規制部21の相対移動と、一対の規制部21の少なくとも一方の他方に対する移動とを同期させる制御部40が備えられることにより、アンビル30とホーン13とが導体露出部120を圧縮する前にアンビル30と規制部21とを当接させることができるため、導体露出部120がアンビル30と規制部21との間に形成される隙間に噛み込むことを確実に防止できる。
【0094】
また、ホーン13及び規制部21がアンビル30に向けて移動することにより、ホーン13及び規制部21、又はアンビル30の双方を移動させる複雑な構成とする必要がなく、また駆動機構をホーン13側にのみ設けることができるため、簡易な構成で導体露出部120を確実に接続することができる。
【0095】
また、アンビル30におけるホーン側下面13aと対向するアンビル側上面31aが、凹凸形状で形成されることにより、アンビル側上面31aと当接した導体露出部120が凹凸形状に沿って配置されるため、導体露出部120同士が接触する接触面が上下方向Zあるいは幅方向Yと交差することとなる。
【0096】
このためホーン13を超音波振動させた場合に、導体露出部120同士の接触面と振動方向とが垂直とならずに、接触面における酸化皮膜をより除去しやすくなる。したがって、効率よく超音波溶接することができ、確実に導体露出部120同士を超音波金属接合できる。
【0097】
さらにまた、アンビル側上面31aの凹凸形状が、ホーン13の超音波振動の振動方向である長手方向Xと交差する幅方向Y方向に沿って形成されることで、より確実に導体露出部120同士の接触面と振動方向とを交差させることができ、ホーン13の超音波振動により導体露出部120同士の接触面においてより効率よく酸化皮膜を除去できる。したがって、導体露出部120をより確実に接合できる。
【0098】
また、交換可能に構成された導体露出部120に応じた複数のアンビル30が備えられることで、より容易にアンビル30を所望のアンビル30に交換でき、導体露出部120を超音波溶接に手間取ることをより確実に防止でき、汎用性を向上させることができる。
【0099】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
導体は、導体露出部120に対応し、
導体接続装置は、導体接続装置1に対応し、
接触面は、ホーン側下面13aに対応し、
対向接触面は、アンビル側上面31aに対応し、
導体配置工程は、電線配置工程s1
移動圧縮工程は、圧縮移動工程s2及び導体圧縮工程s3に対応し、
溶接工程は超音波溶接工程s4に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0100】
例えば、本実施形態において、ホーン13は長手方向Xに沿って超音波振動する構成としているが、幅方向Yに沿って超音波振動する構成としても構わない。しかしながら、長手方向Xに沿って超音波振動する本実施形態では、超音波振動の方向とアンビル側上面31aに形成された凹凸形状の方向(幅方向Y)とが直交するため、効率よく超音波溶接を行うことができる。
なお、長手方向Xや幅方向Yに沿う必要はなく、長手方向Xと交差する方向に超音波振動をさせても構わない。
【0101】
また、本実施形態において、アンビル側上面31aに形成された凹凸形状は、凸部の頂点同士の長さ(凹部の幅)及び凹部の頂点同士の長さ(凸部の幅)がそれぞれ導体露出部120の外径よりも長くなるとともに、凸部と凹部の高さが導体露出部120の外径よりも短くなるように形成されているが、導体露出部120同士の接触面が、幅方向Y及び上下方向Zと交差するように導体露出部120を配置するように形成されていれば、必ずしもこのように形成される必要はない。すなわち、アンビル側上面31aに形成された凹凸形状は、凹部の幅及び凹部の幅がそれぞれ導体露出部120の外径よりも短くなるように形成されていてもよい。
【0102】
さらにまた、本実施形態では、アンビル側上面31aの表面に幅方向Yに沿った凹凸形状を形成させているが、長手方向Xに沿って凹凸形状を形成させても構わず、また凹凸形状の形も例えば本実施形態のように緩やかに連続した凹凸形状に限定されず、段差形状である場合などでも構わない。
【0103】
また、本実施形態では、アンビル側上面31aのみに幅方向Yに沿った凹凸形状を形成させているが、例えば、先端面21aにおける導体露出部120を当接する部位、すなわち、先端面21aにおいてアンビル上部31と当接しない箇所の表面を凹凸形状としてもよい。また、ホーン側下面13aの中央部分のみに凹凸形状を設けてもよい。
【0104】
このように、先端面21aのホーン13側の形状を凹凸形状とすることにより、導体露出部120の幅方向Yの移動を規制するとともに、導体露出部120の配列状態を乱雑にして導体露出部120同士の接触面積及び接触箇所を増加させることができ、より確実に接合不良を防止できる。
この場合、ワイヤハーネス200における溶接断面のホーン13側及び先端面21a側が凹凸形状で構成されている。
【0105】
また、本実施形態において、規制部21における規制部側凸部25がホーン13の底面であるホーン側下面13aに設けられたホーン側凹部14に噛み合うとともに、規制部21がホーン幅方向谷部141に沿って幅方向Yに移動可能に構成されているが、規制部21がホーン側下面13aに沿って幅方向Yに移動できれば、必ずしもこの構成である必要はない。
【0106】
例えば、本実施形態ではホーン側凹部14及びホーン側凸部15、規制部側凸部25及び規制部側凹部26を長手方向X及び幅方向Yに沿った格子状に形成しているが、格子の数は適宜変更してもよく、また、ホーン側下面13aにはホーン側凹部14やホーン側凸部15の一方のみが形成され、対応する規制部21の上面にも規制部側凸部25及び規制部側凹部26の一方が形成されていてもよい。
【0107】
また、ホーン13と規制部21との対向面の構成は規制部21がホーン側下面13aに沿って幅方向Yに移動できるように対応していればどのように構成しても構わない。
【0108】
さらにまた、規制部側凸部25及び規制部側凹部26は一対で構成された規制部21の一方の上面にのみ形成されていてもよい。この場合、ホーン側凹部14及びホーン側凸部15も規制部側凸部25及び規制部側凹部26と対応するホーン側下面13aに設けられてもよい。また、必ずしも一対の規制部21の両方をホーン側下面13aに沿って幅方向Yに移動させる必要はなく、規制部21の一方を他方に対して近づくように移動させてもよい。
【0109】
また、ホーン13又は規制部21の一方には、格子状の凹部又は凸部が形成され、他方には格子状の凹部又は凸部に対応するように幅方向Yに沿った山部又は谷部が形成していても構わない。
また、例えば、長手方向Xに沿ったホーン長手方向谷部142及び/又は規制部長手方向山部252が形成されていない形状であってもよい。すなわち、ホーン側凹部14及び/又は規制部側凸部25は、幅方向Yに沿って形成された長尺状のホーン幅方向谷部141及び規制部幅方向山部251で構成されていてもよい。この場合、ホーン側凹部14及び規制部側凸部25の本数は、1本であっても構わないが、複数本設けるほうが、被覆電線の噛み込みを抑制する点では好ましい。
【0110】
すなわち、ホーン13のホーン側下面13aには、少なくとも幅方向Yに沿って上方に窪ませたホーン側凹部14又は幅方向Yに沿って下方に突出させたホーン側凸部15が設けられ、一対に形成された規制部21の少なくとも一方の上面には、ホーン側凹部14に対応するように上方に突出させた規制部側凸部25又は、ホーン側凸部15に対応するように下方に窪ませた規制部側凹部26の少なくとも一方が、ホーン側凹部14又はホーン側凸部15に対応するように形成され、規制部側凸部25又は規制部側凹部26は、対応するホーン側凹部14又はホーン側凸部15に沿って、規制部21をホーン13に対して相対移動可能に嵌合されていることにより、規制部21がホーン側下面13aに沿って幅方向Yに移動できる。
【0111】
このようにホーン側下面13aに沿って規制部21を移動させる構成とすることにより、ホーン13と規制部21との間に隙間が生じることを防止でき、導体露出部120の噛み込みを防止することができる。
【0112】
また、導体接続装置1は一方(+X方向)から配置空間Sに対して導体露出部120を挿入させて溶接させる構成としているが、例えば双方から導体露出部120を挿入させて導体露出部120を溶接させる構成や、電線の端部ではなく中間部分の電線被覆を剥ぎ取り露出させた導体露出部120と他の電線の導体露出部を溶接させる構成としても構わない。すなわち、導体接続装置1は被覆電線100の端末を接続させる装置とは限らない。
【符号の説明】
【0113】
1 導体接続装置
13 ホーン
13a ホーン側下面
21 規制部
30 アンビル
31a アンビル側上面
40 制御部
120 導体露出部
s1 電線配置構成
s2 圧縮移動工程
s3 導体圧縮工程
s4 超音波溶接工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8