特許第6887238号(P6887238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887238フェノール変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887238
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】フェノール変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20210603BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-222392(P2016-222392)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-80234(P2018-80234A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】塩野 毅
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】加地 栄一
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/109429(WO,A1)
【文献】 特開2015−183174(JP,A)
【文献】 特開平11−236407(JP,A)
【文献】 特開2008−255341(JP,A)
【文献】 特開2011−174018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00 − 4/82
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物。
【化1】
(式中、Meはメチル基を示し、R0下記一般式(II)で示されるフェノール残基であり、R1はC2〜C20のアルキル基を表し、前記アルキル基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、op、o−q、p−rおよびq+rは正の整数で、(o+q)/(p+r)比が0.1から25であり、((о−q)+(p−r))/(q+r)比が2.3から100であり、Meを含む繰り返し単位と0を含む繰返単位とR1を含む繰返単位の並び方は任意である。)
一般式(II)
【化2】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、R2,R3,R4,R5およびR6の内の少なくとも2つは独立にハロゲン原子またはC4〜C10のアルキル基、C4〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基であるか、あるいはR2とR3、R3とR4、R4とR5またはR5とR6の少なくとも1組が結合して環状構造を形成していても良い。)
【請求項2】
一般式(III)で示されるアルキルアルミニウムをさらに含む請求項1に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物。
一般式(III)
【化3】
(式中、R7,R8およびR9は、それぞれ独立してC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、但し、R7,R8およびR9の内、少なくとも一つはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である。)
【請求項3】
有機溶媒をさらに含有する請求項1に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物。
【請求項4】
前記置換基R1がイソブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物。
【請求項5】
下記一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(以下、MMAOと略記する)と下記一般式(IIA)で示されるフェノール化合物を反応させることを含み、前記MMAOのアルミニウム原子に対する、前記フェノール化合物は0.1〜30mol%である、請求項1に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物の製造方法。
【化4】
(式中、Meはメチル基を示し、R1は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、o,pは請求項1の一般式(I)における定義と同義である。
【化5】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は請求項1の一般式(II)における定義と同義である。)
【請求項6】
前記フェノール化合物は、pKaが10.0以下および/または2,6位の置換基のTaftの立体パラメーターが0.0以下である化合物である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記フェノール化合物がパーフルオロフェノール、3,4,5-トリフルオロフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールである請求項5〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(以下、MMAOと略記する)を含有する、請求項1に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物製造用組成物。
【化6】
(式中、Meはメチル基を示し、R1は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、o,pは請求項1の一般式(I)における定義と同義である。)
【請求項9】
下記一般式(IIA)で示されるフェノール化合物を含有する、請求項1の一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物製造用組成物。
【化7】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は請求項1の一般式(II)における定義と同義である。)
【請求項10】
一般式(IV)で示される周期表第4族遷移金属化合物、一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物を含むα−オレフィン重合用触媒組成物。
一般式(IV)
【化8】
(式中、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いアリール基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いシリル基を示し、R14とR15および/またはR18とR19あるいはR15とR16、および/またはR17とR18は結合してC1〜C5の置換基を有する環状構造を形成していて良い。X1とX2はC1〜C10のハロゲン原子を含有して良いアルキル基またはハロゲン原子を示す。Mは周期表第4族遷移金属を示す。)
一般式(I)
【化9】
(式中、Meはメチル基を示し、R0下記一般式(II)で示されるフェノール残基であり、R1はC2〜C20のアルキル基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、op、o−q、p−rおよびq+rは正の整数で、(o+q)/(p+r)比が0.1から25であり、((о−q)+(p−r))/(q+r)比が2.3から100であり、Meを含む繰り返し単位と0を含む繰返単位とR1を含む繰返単位の並び方は任意である。)
一般式(II)
【化10】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、R2,R3,R4,R5およびR6の内の少なくとも2つは独立にハロゲン原子またはC4〜C10のアルキル基、C4〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基であるか、あるいはR2とR3、R3とR4、R4とR5またはR5とR6の少なくとも1組が結合して環状構造を形成していても良い。)
【請求項11】
一般式(III)で示されるアルキルアルミニウムをさらに含む請求項10に記載の触媒組成物。
【化11】
(式中、R7,R8およびR9は、それぞれ独立してC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、但し、R7,R8およびR9の内、少なくとも一つはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である。)
【請求項12】
前記周期表第4族遷移金属化合物のMがチタンである請求項10又は11に記載の触媒組成物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の触媒組成物を用いてα−オレフィンを重合することを含む、α−オレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール変性した修飾メチルアルミノキサン(MMAO)含有組成物およびその製造方法、並びに、それを含むα−オレフィン重合用触媒およびそれを用いたα−オレフィン重合体の製造方法に関するものである。フェノール変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物は、MMAOをフェノール変性することにより、未変性のMMAOに比べて助触媒能向上させたものである。
【背景技術】
【0002】
遷移金属錯体を用いたα−オレフィンの配位重合においては、一般に触媒を活性化する助触媒が必要とされる(非特許文献1,非特許文献2)。助触媒の中で、工業的に広く用いられているものがアルミノキサンで、トリメチルアルミニウム(TMAL)を部分加水分解して得られるポリメチルアルミノキサン(PMAO)が高活性を示すアルミノキサンとして知られている。しかし、このPMAOはトルエンなどの芳香族系炭化水素溶媒に可溶であるが、ヘキサンなどの非芳香族系炭化水素溶媒への溶解度は低い。また、PMAOは室温下において経時的にゲル状物を生成し、容器壁への付着と共に溶液中の組成変化およびAl濃度の低下も引き起こすため、助触媒としての性能が低下する。これを抑制するためには、出来るだけ低い温度(例えば、−20℃以下)で保管する必要がある。ちなみに、PMAOは原料TMALの存在が無い下記構造化合物のみではトルエンへの溶解度がほとんど無くなるため、ここで言うPMAOとはトルエン溶解性と安定性を担保するためのTMALを含有する物を言う。
【0003】
【化1】
【0004】
メチル基よりも長鎖のアルキル基を有するトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)などのトリアルキルアルミニウムとTMALを組み合わせて調製されるアルミノキサンは、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)と呼ばれ、PMAOの欠点を一部解決したものである。すなわち、MMAOは芳香族系炭化水素溶媒だけでなく非芳香族系炭化水素溶媒へも可溶であり、ゲル状物生成と言った劣化が室温下に1年を超えて起こらず、高い安定性を示す。MMAOは、これらの特徴を利用し、主にエラストマーなどを製造する溶液重合に使用されている。
【0005】
MMAOは上記のようにPMAOの欠点を改善したアルミノキサンであるが、その助触媒性能はPMAOに比べ低く、特に活性の改善が求められていた。本発明者らは、MMAO中のトリアルキルアルミニウムとTMALを徹底的に除去することで得られる修飾メチルアルミノキサン(dMMAO)を開発し、架橋フルオレニルアミドジメチルチタン錯体と組み合わせてプロピレン重合を行うと、重合活性の向上と生成ポリマーの高分子量化が達成できるだけでなく、リビング重合が進行することを報告している。(非特許文献3)
【0006】
PMAOをフェノール変性することにより、重合活性向上と重合により生成するポリマーの分子量が増大することが報告されている。このフェノール添加効果は、PMAO骨格変性でなく、共存するTMALと選択的に反応することが原因とされている。(非特許文献4,5および6)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Prog.Polym.Sci.1995,20,309−367.
【非特許文献2】J.Chem.Rev.2000,100,1391−1434.
【非特許文献3】Macromol.Rapid Commun.2002,23,73−76.
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.2003,125,12402−12403.
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.2003,125,9246−9247.
【非特許文献6】Dalton Trans.2016,45,6847−6855.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献3の方法によって得られるdMMAOは優れた助触媒性能を示す。しかし、dMMAOの調製にはMMAO溶液の減圧乾固とヘプタン再溶解を繰り返さなければならず、時間が掛かるだけでなく、操作途中の空気混入などによる劣化に細心の注意を払わなければならない。そのため、より簡便なMMAOの高性能化法が求められていた。
【0009】
また、dMMAOの助触媒性能をより高めたいとの要求もあった。
【0010】
すなわち、本発明の課題は、助触媒性能を向上させたMMAOを提供し、それを用いた性能を向上させたα−オレフィン重合用触媒の提供、さらにはこの重合用触媒を用いたより効率的なα−オレフィン重合体の製造方法を提供することである。本発明は、これらの課題を解決する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を続けた。その結果、嵩高い置換基および/またはハロゲン原子などの電子吸引基を有する特定のフェノールにより変性したMMAOが特定の周期表第4族遷移金属化合物と組み合わせることによって、α−オレフィンの重合においてdMMAOをそのまま用いた場合よりも高い助触媒性能を示すことを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
尚、本発明において得られるフェノールによるMMAOの変性は、従来報告されているような未反応原料アルキルアルミニウムの変性(非特許文献4〜6)を主とするものでなく、MMAO骨格の修飾を主とするものであり、新しい知見に基づく発明である。これは、ただ単にPMAOをMMAOに代えただけと言うものでなく、PMAOと異なるMMAOの高い溶媒溶解性という特徴を見極めた上での発想によるものであることは注目すべきである。この点については、実施例のところで実例を挙げて示す。
【0013】
すなわち本発明は、
[1]下記一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物。
【化2】
(式中、R0は、メチル基又は下記一般式(II)で示されるフェノール残基であり、R1は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基または下記一般式(II)で示されるフェノール残基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、oおよびpは正の整数で、o/p比が0.1から25であり、R0およびR1の少なくとも一部は、下記一般式(II)で示されるフェノール残基であり、R0を含む繰返単位とR1を含む繰返単位の並び方は任意である。)
一般式(II)
【化3】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、R2,R3,R4,R5およびR6の内の少なくとも2つは独立にハロゲン原子またはC4〜C10のアルキル基、C4〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基であるか、あるいはR2とR3、R3とR4、R4とR5またはR5とR6の少なくとも1組が結合して環状構造を形成していても良い。)
[2]
一般式(III)で示されるアルキルアルミニウムをさらに含む[1]に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物。
一般式(III)
【化4】
(式中、R7,R8およびR9は、それぞれ独立してC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、但し、R7,R8およびR9の内、少なくとも一つはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である。)
[3]
有機溶媒をさらに含有する[1]に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物。
[4]
前記置換基R1がイソブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の変性修飾メチルアルミノキサン。
[5]
下記一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(以下、MMAOと略記する)と下記一般式(IIA)で示されるフェノール化合物を反応させることを含む、[1]に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物の製造方法。
【化5】
(式中、Meはメチル基を示し、R1は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、o,pは[1]の一般式(I)における定義と同義である。)
一般式(II)
【化6】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は[1]の一般式(II)における定義と同義である。)
[6]
前記MMAOのアルミニウム原子に対して、前記フェノール化合物を0.1〜30mol%反応させる[5]に記載の製造方法。
[7]
前記フェノール化合物は、pKaが10.0以下および/または2,6位の置換基のTsftの立体パラメーターが0.0以下である化合物である、[5]又は[6]に記載の製造方法。
[8]
前記フェノール化合物がパーフルオロフェノール、3,4,5-トリフルオロフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールである[5]〜[7]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9]
下記一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(以下、MMAOと略記する)を含有する、[1]に記載の変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物製造用組成物。
【化7】
(式中、Meはメチル基を示し、R1は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、o,pは[1]における定義と同義である。)
[10]
下記一般式(IIA)で示されるフェノール化合物を含有する、[1]の一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物製造用組成物。
【化8】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は[1]の一般式(II)における定義と同義である。)
[11]
一般式(IV)で示される周期表第4族遷移金属化合物、一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物を含むα−オレフィン重合用触媒組成物。
一般式(IV)
【化9】
(式中、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いアリール基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いシリル基を示し、R11とR12、R13とR14、R14とR15若しくはR15とR16および/またはR17とR18、R18とR19若しくはR19とR20は結合してC1〜C5の置換基を有する環状構造を形成していて良い。X1とX2はC1〜C10のハロゲン原子を含有して良いアルキル基またはハロゲン原子を示す。Mは周期表第4族遷移金属を示す。)
一般式(I)
【化10】
(式中、R0は、メチル基又は下記一般式(II)で示されるフェノール残基であり、R1は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基又は下記一般式(II)で示されるフェノール残基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、oおよびpは正の整数で、o/p比が0.1から25であり、R0およびR1の少なくとも一部は、下記一般式(II)で示されるフェノール残基であり、R0を含む繰返単位とR1を含む繰返単位の並び方は任意である。)
一般式(II)
【化11】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、R2,R3,R4,R5およびR6の内の少なくとも2つは独立にハロゲン原子またはC4〜C10のアルキル基、C4〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基であるか、あるいはR2とR3、R3とR4、R4とR5またはR5とR6の少なくとも1組が結合して環状構造を形成していても良い。)
[12]
一般式(III)で示されるアルキルアルミニウムをさらに含む[11]に記載の触媒組成物。
【化12】
(式中、R7,R8およびR9は、それぞれ独立してC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、但し、R7,R8およびR9の内、少なくとも一つはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である。)
[13]
前記周期表第4族遷移金属化合物のMがチタンである[11]又は[12]に記載の触媒組成物。
[14]
[11]〜[13]のいずれか一項に記載の触媒組成物を用いてα−オレフィンを重合することを含む、α−オレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高性能化したMMAOを提供することができ、かつ高性能化したMMAO簡便な方法で得ることが出来る。さらに、高性能化したMMAOと周期表第4族遷移金属化合物を組み合わせることでα−オレフィンの重合により適した(高い活性を有する)重合用触媒を提供でき、さらに本触媒を用いることで物性(高分子量重合体の形成など)に優れたα−オレフィン重合体を高活性で与えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】MMAOの1H−NMRチャート(C66溶媒)
図2】dMMAOの1H−NMRチャート(C66溶媒)
図3】MMAOをBHTと接触させた変性修飾MMAOの1H−NMRチャート(C66溶媒):実施例1
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
<変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物>
本発明の第一の態様は、下記一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物である。
【化13】
【0018】
一般式(I)中、R0は、メチル基又は下記一般式(II)で示されるフェノール残基である。また、R1は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基または下記一般式(II)で示されるフェノール残基である。oおよびpは正の整数である。一般式(I)中のR0およびR1の少なくとも一部は、下記一般式(II)で示されるフェノール残基である。R0が全てメチル基の場合は、R1の少なくとも一部は、下記一般式(II)で示されるフェノール残基であり、R1が全て下記一般式(II)で示されるフェノール残基以外である場合は、R0の少なくとも一部は、下記一般式(II)で示されるフェノール残基である。
【0019】
0とR1における、メチル基とメチル基以外のアルキル基の和と一般式(II)で示されるフェノール残基との割合((メチル基+メチル基以外のアルキル基)/フェノール残基)は、例えば、2.3〜100の範囲であることかできる。この割合は、好ましくは4〜50、より好ましくは4〜25の範囲である。
【0020】
oおよびpの合計数は、例えば、2〜30の範囲であることができる。oおよびpの合計数が2未満では、アルミノキサン繰返単位の連鎖が形成されないため触媒性能を十分発現させることが出来ず、30を超えるとアルミノキサン同士の会合のため触媒反応に寄与できるアルミノキサンユニットの量が低下し触媒性能の十分な発現を妨げてしまう場合がある。oおよびpの合計数は、アルミノキサンユニット連鎖の特徴を効率的に発現するという観点から、5〜15の範囲であることが好ましい。
【0021】
o/p比は0.1〜25の範囲であり、好ましくは0.5から20の範囲である。o/p比が0.1を下回ると、重合活性低下が顕著となり、o/p比が25を超えると、溶媒溶解性低下による溶液の安定性が悪化する。
【0022】
【化14】
【0023】
一般式(II)中、R2,R3,R4,R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良い。但し、R2,R3,R4,R5およびR6の内の少なくとも2つは独立にハロゲン原子またはC4〜C10のアルキル基、C4〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基である。あるいは、R2とR3、R3とR4、R4とR5またはR5とR6の少なくとも1組が結合して環状構造を形成していても良い。環状構造を形成する場合には、好ましくはR2とR3および/またはR5とR6が結合して環状構造を形成する
【0024】
一般式(II)中のR2,R3,R4,R5およびR6としては、より具体的に示すと、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基またはイソオクチル基などのアルキル基、エテニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブチニル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのアリール基などを挙げることができる。
【0025】
このようなフェノール残基の元となるフェノール化合物の具体例として、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、パーフルオロフェノール、3,4,5−トリフルオロフェノール、パーフルオロナフトール、パーフルオロアントロールなどを挙げることが出来る。
【0026】
一般式(I)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基または一般式(II)で示されるフェノール残基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良い。
【0027】
1としてのC1〜C20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基などである。アルキル基は、入手の容易さ等を考慮すると、C1〜C6である。C2〜C20のアルケニル基は、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などである。アルケニル基は、入手の容易さ等を考慮すると、C2〜C6である。C6〜C20のアリール基は、例えば、例えば、フェニル基、トリル基などを挙げることができる。アリール基は、入手の容易さ等を考慮すると、C6〜C10である。
【0028】
1としてのアルキル基、アルケニル基およびアリール基が置換基として有してもよいハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。アルキル基、アルケニル基およびアリール基は、置換基としてのハロゲン原子を、各基の炭素数に応じて例えば、1〜20個有することができる。
【0029】
1は、より好ましくはメチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、フッ素若しくは塩素、または一般式(II)で示されるフェノール残基である。
【0030】
一般式(I)で示されるフェノール変性修飾メチルアルミノキサンは、o個の下記式(i)で示されるアルミノキサン繰返単位およびp個の(ii)で示されるアルミノキサン繰返単位を含む化合物である。
式(i)
【化15】
式(ii)
【化16】
【0031】
o個の式(i)で示されるアルミノキサン繰返単位、及びp個の(ii)からなるアルミノキサン繰返単位のそれぞれ順番(並び方)は任意である。o個の連続した式(i)で示されるアルミノキサン繰返単位、及びp個の連続した(ii)からなるアルミノキサン繰返単位からなることもできるが、式(i)で示されるアルミノキサン繰返単位と(ii)からなるアルミノキサン繰返単位とが、任意の順番で連続した化合物であることもできる。さらにR0がメチル基または一般式(II)で示されるフェノール残基である式(i)で示されるアルミノキサン繰返単位の順番も任意である。このような修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を総括して前記一般式(I)で表現する。
【0032】
本発明の第一の態様は、一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物であり、この組成物に含まれる一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンは、式(i)で示されるアルミノキサン繰返単位、及び(ii)からなるアルミノキサン繰返単位の組み合わせ及び個数が異なる複数の変性修飾メチルアルミノキサンの混合物である。この混合物中に含まれる変性修飾メチルアルミノキサンの少なくとも一部または全部が、一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンである。
【0033】
本発明の第一の態様である変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物は、上記一般式(I)で示されるフェノール変性修飾メチルアルミノキサンを含有し、これに加えて、後述する一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を含有することができる。MMAOは、フェノール変性修飾メチルアルミノキサンの原料として用いられ、フェノール化合物と反応せずにそのまま組成物に残ったものであることができる。あるいは一般式(I)で示されるフェノール変性修飾メチルアルミノキサンに加えて、一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を追加することもできる。
【0034】
さらに、本発明の第一の態様である変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物は、MMAOとは別に、あるいはMMAOに加えて有機溶媒を含有することができる。本発明の第一の態様である変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物は、これらの成分に加えて、アルキルアルミニウムを含有することもできる。アルキルアルミニウムを含有させることで、変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物の溶液の安定性を高く保つことが出来るだけでなく、前記周期表第4族遷移金属化合物と接触させた際のアルキル化を容易にするという効果が得られる。
【0035】
(アルキルアルミニウム)
共存してよいアルキルアルミニウムは、例えば、下記一般式(III)で表される化合物であることができる。
【化17】
【0036】
(式中、R7,R8およびR9は、それぞれ独立してC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基などの炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、但し、R7,R8およびR9の内、少なくとも一つはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である。)
【0037】
一般式(III)中のR7,R8およびR9はとしては、より具体的に示すと、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基またはイソオクチル基などのアルキル基、フェニル基またはトリル基などのアリール基などを挙げることができ、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子、メトキシ基またはエトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基を挙げることができる。アリールオキシ基は、上記一般式(II)で示される基であることができる。
【0038】
このようなアルキルアルミニウムの具体例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムを、トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウムを、またジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどの含ハロゲンアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムブトキシドなどのアルコキシ基含有アルキルアルミニウムを、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジメチルアルミニウム−2,6−ジ−t−ブチル−4-メチルフェノキシド、ジメチルアルミニウムペンタフルオロフェノキシドなどのアリールオキシ基含有アルキルアルミニウム、を挙げることができる。ここに挙げたアルキルアルミニウム化合物の中で好ましいものは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミ二ウム、トリイソブチルアルミニウム、およびジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドである。
【0039】
本発明の第一の態様である変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物に共存して良いアルキルアルミニウムの使用量は、オレフィン重合条件により任意に設定できる。例えば、モノマーや溶媒純度が低い場合は、使用量を増やすと言った対応を行うことが出来る。一般には、使用する変性MMAOのAl量に対し0.5〜50モル%の範囲で設定される。好ましくは、0.5〜30モル%で良く、より好ましくは1〜15モル%である。
【0040】
本発明の第一の態様である変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物に共存するアルキルアルミニウムは、変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物に追加的に添加されたアルキルアルミニウムであっても良いが、修飾メチルアルミノキサンを変性する際に原料として用いる修飾メチルアルミノキサンに含有されるアルキルアルミニウム及びこのアルキルアルミニウムが変性の際にフェノール化合物と反応して生成したアリールオキシ基を有するアルキルアルミニウムであることもできる。
【0041】
<変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物の製造方法>
本発明の第二の態様は、下記一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(MMAO)と下記一般式(IIA)で示されるフェノール化合物を反応させることを含む、上記一般式(1)で表される変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物の製造方法である。
【化18】
(式中、Meはメチル基を示し、R1は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、o,pは一般式(I)における定義と同義である。)
一般式(II)
【化19】
(式中、R2,R3,R4,R5およびR6は一般式(II)における定義と同義である。)
【0042】
(修飾メチルアルミノキサン)
一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサンは、o個の下記式(iii)で示されるアルミノキサン繰返単位およびp個の(ii)で示されるアルミノキサン繰返単位を含む化合物である。
式(iii):
【化20】
式(ii):
【化21】
【0043】
式(ii)中のR1は、前述の通り、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良い。但し、修飾メチルアルミノキサンにおけるR1は、フェノール残基は含まない。
【0044】
o個の式(iii)で示されるアルミノキサン繰返単位、及びp個の(ii)からなるアルミノキサン繰返単位のそれぞれ順番は任意であり、o個の連続した式(iii)で示されるアルミノキサン繰返単位、及びp個の連続した(ii)からなるアルミノキサン繰返単位からなることもできるが、式(iii)で示されるアルミノキサン繰返単位と(ii)からなるアルミノキサン繰返単位とが、任意に順番で連続した化合物であることもできる。このような修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を総括して下記一般式(IA)で表現する。
【0045】
一般式(IA):
【化22】
【0046】
式(iii)および(ii)のユニット数であるoおよびpは正の整数であり、o/p比は0.1から25の範囲であり、好ましくは0.5から20の範囲である。
【0047】
修飾アルミノキサンは、環状化合物であるか、または線状化合物であることができる。環状化合物であるか、線状化合物であるかは、製造時の条件により異なる。線状化合物である場合、末端のアルミニウムにはメチル基またはR1が2個結合した構造を有する。
【0048】
好ましい修飾メチルアルミノキサンは、例えば、式(i)のメチル基および式(ii)のR1がエチル基、イソブチル基あるいはn−ヘキシル基でo/pの比が0.5〜20の化合物である。
【0049】
本発明に用いられるアルミノキサン化合物の式(iii)−(Me)AlO−と(ii)−(R1)AlO−の結合はブロック的あるいはランダム的またはそれらの混在した結合となっていてもよい。
【0050】
本発明に用いられる修飾メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムおよびトリアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウム以外のもの)と水との反応により得られるもの、トリメチルアルミニウムとトリアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウム以外のもの)とケトン化合物またはカルボン酸化合物との反応により得られるもの、PMAOにトリアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウム以外のもの)を添加加熱処理したものなど、合成法に依らず用いることが出来る。また、これらを複数種併用して重合に用いても良い。
【0051】
本発明で用いられるフェノールは、一般式(IIA)で示される化合物である。
【化23】
一般式(IIA)中、R2,R3,R4,R5およびR6は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、R2,R3,R4,R5およびR6の内の少なくとも2つは独立にハロゲン原子またはC4〜C10のアルキル基、C4〜C10のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基である。あるいは、R2とR3、R3とR4、R4とR5またはR5とR6の少なくとも1組が結合して環状構造を形成していても良い。環状構造を形成する場合には、好ましくはR2とR3および/またはR5とR6が結合して環状構造を形成する。
【0052】
一般式(IIA)で示されるフェノールの中で好ましいものは、pKaが10.0以下および/または2,6位のTaftの立体パラメーターが0.0以下である。pKaは酸解離定数で、酸の強さを定量的に示す値である。一般式(IIA)で示されるフェノールのpKaがある一定値以下である場合に、これを原料として得られる一般式(I)で示されるフェノール変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物は、本願において示す優れた助触媒向上効果を示すことを本発明者らは見出した。更に、フェノールの2,6位の置換基の嵩高さを示すTaftのパラメーター(参照文献 : Tetrahedron,34,3553−3562,1978)が0.0以下である一般式(IIA)で示されるフェノールを原料として得られる一般式(I)で示されるフェノール変性修飾メチルアルミノキサン含有組成物も同様の優れた効果を示すことを見出した。
【0053】
一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(MMAO)と一般式(IIA)で示されるフェノール化合物との反応は、以下のように実施できる。原料である前記MMAOのアルミニウム原子に対して、前記フェノール化合物を例えば、0.1〜30mol%の範囲で反応させることができる。反応は、フェノール化合物のほぼ全量が、MMAOと反応して変性修飾メチルアルミノキサンとなる条件とすることが好ましい。反応温度は例えば、0〜50℃の範囲で1分から24時間の範囲とすることができる。反応は、有機溶媒中で実施でき、有機溶媒の量は、MMAOのAl原子基準の濃度(wt%−Al)で、例えば、0.1から13wt%の範囲となるように調整することが出来る。MMAOのAl原子基準の濃度が0.1を下回るようになると、溶媒中の避けられない水分量の影響を考慮する必要が出てくる場合がある。また、13を超えるようになると、液粘性が高くなるという問題が生じる場合がある。有機溶媒としては、例えば、トルエンなどの芳香族系炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの非芳香族系炭化水素溶媒、更にはジクロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン含有溶媒およびこれらの混合溶媒などを用いることができる。このようにして得られる一般式(I)で表される変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物は、そのまま次の重合体の製造方法に使用することかできる。
【0054】
本発明は、前記一般式(IA)で示される修飾メチルアルミノキサン(MMAO)を含有する、一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物の製造用組成物を包含することができる。
【0055】
さらに、本発明は、前記一般式(IIA)で示されるフェノール化合物を含有する、一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンを含有する組成物の製造用組成物を包含することができる。
【0056】
<α−オレフィン重合用触媒組成物>
本発明の第三の態様は、一般式(IV)で示される周期表第4族遷移金属化合物、一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンを含むα−オレフィン重合用触媒組成物に関する。本発明のα−オレフィン重合用触媒組成物においては、上記周期表第4族遷移金属化合物に対して、これを活性化する助触媒として、本発明の第一の態様である一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンと組み合わせる。これにより、高い重合触媒活性を発現させることが出来る。さらに、本発明の第一の態様である一般式(I)で示される変性修飾メチルアルミノキサンに加えて、アルキルアルミニウムを共存させることもできる。変性修飾メチルアルミノキサン単独、あるいは変性修飾メチルアルミノキサンとアルキルアルミニウムを適切に組み合わせることで、高い重合触媒活性を発現させることが出来る。
【0057】
(周期表第4族遷移金属化合物)
本発明のα−オレフィン重合体の製造には、一般式(IV)で示される周期表第4族遷移金属化合物が、α−オレフィンの重合性に優れるので、特に好ましい。
一般式(IV):
【化24】
【0058】
(式中、R10〜R20は水素原子、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いアリール基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いシリル基を示し、R14とR15および/またはR18とR19あるいはR15とR16、および/またはR17とR18は結合してC1〜C5の置換基を有する環状構造を形成していて良い。X1とX2はC1〜C10のハロゲン原子を含有して良いアルキル基またはハロゲン原子を示す。Mは周期表第4族遷移金属を示す。)
【0059】
周期表第4族遷移金属を示すMは、具体的にはチタン、ジルコニウムあるいはハフニウムであり、高活性を示すと言う意味でチタンが好ましい。
【0060】
10〜R20はC1〜C10のアルキル基またはアリール基であることが好ましく、ハロゲン原子を含有しても良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ペンタフルオロフェニル基などのハロゲン置換のアリール基などを挙げることが出来る。
【0061】
1およびX2は、C1〜C10のハロゲン原子を含有して良いアルキル基またはアリール基、もしくはハロゲン原子であり、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ペンタフルオロフェニル基などのハロゲン置換のアリール基などを挙げることが出来る。この中で好ましいものはメチル基である。
【0062】
10〜R20は水素原子、C1〜C10のアルキル基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いアリール基、ハロゲン原子およびC1〜C10の置換基を有して良いシリル基を示し、R14とR15および/またはR18とR19あるいはR15とR16、および/またはR17とR18は結合してC1〜C5の置換基を有する環状構造を形成していて良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ペンタフルオロフェニル基などのハロゲン置換のアリール基、無置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基等のシリル基を挙げることが出来る。R14とR15および/またはR18とR19あるいはR15とR16、および/またはR17とR18は結合してC1〜C5の置換基を有する環状構造を形成する場合として、フルオレニル基の一部を含むシクロペンテニル環、シクロヘキセニル環、テトラメチルシクロヘキセニル環、シクロヘプテニル環、シクロオクテニル環などを挙げることが出来る。
【0063】
一般式(IV)で示される周期表第4族遷移金属化合物の具体例としては、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−フルオレニルシランチタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−フルオレニル)シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−(3,6−フルオレニルシラン)チタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(イソプロピル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(イソプロピル)フルオレニルシラン]チタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−フルオレニル)シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−(2,3,6,7−フルオレニル)シランチタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[2,7−ジ(t−ブチル)フルオレニル]シランチタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチル、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタメチルチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチルなどが挙げられる。
【0064】
これらの周期表第4族遷移金属化合物は、重合に際して1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。また、一般式(IV)に示された以外の周期表第4族遷移金属化合物を組み合わせて用いてもよい。シリカなどの担体をあらかじめ固体触媒調製を行う場合に際しては、これらの遷移金属化合物を1種類のみ使用してもよいし、分子量分布調整等を目的として2種類以上を使用してもよい。
【0065】
本発明の製造方法において、周期表第4族遷移金属化合物と(a)変性修飾メチルアルミノキサン、(b)アルキルアルミニウムとの割合は、種々重合条件により適切に設定できる。
(a)の変性修飾メチルアルミノキサンを単独で用いる場合、周期表第4族遷移金属化合物に対するモル比で20〜10000でよく、好ましくは50〜2000、より好ましくは50〜1000の範囲である。(a)変性修飾メチルアルミノキサンと(b)アルキルアルミニウムとを併用する場合、周期表第4族遷移金属化合物に対する変性修飾メチルアルミノキサンのモル比は、20〜10000でよく、好ましくは50〜2000、より好ましくは50〜1000の範囲であり、周期表第4族遷移金属化合物に対するアルキルアルミニウムのモル比は、例えば、0〜2000である。アルキルアルミニウム使用量は、変性修飾メチルアルミノキサンAl量に対し0.5〜50モル%の範囲、好ましくは、0.5〜30モル%で良く、より好ましくは1〜15モル%である。
【0066】
本発明の第四の態様は、上記本発明の触媒組成物を用いてα−オレフィンを重合することを含む、α−オレフィン重合体の製造方法である。
【0067】
α−オレフィンに対する本発明の触媒組成物の割合は特に制限がないが、周期表第4族遷移金属化合物に対するモル比で示すと、通常1000〜200,0000でよく、好ましくは10000〜200,0000の範囲である。
【0068】
α−オレフィンモノマー濃度についても特に制限はないが、モノマー濃度が低すぎると生産性の低下が起こるため、通常1wt%以上に設定される。
【0069】
重合温度は特に制限はないが、通常−50℃〜200℃の範囲で実施され、好ましくは−20℃〜150℃の範囲である。重合時間も特に制限がなく、通常1分間〜100時間の範囲で実施することが出来る。
【0070】
得られる重合体の分子量は、モノマーと触媒との比や重合温度を調整することにより制御することが出来る。また、水素などの添加によっても重合体分子量を調整することが出来る。
【0071】
本発明の製造方法で得られるα−オレフィン重合体は、数平均分子量(Mn)が、例えば、1,0000〜100,0000の範囲であり、より好ましくは2,0000〜50,0000の範囲である。
【0072】
重合形式として、溶媒を用いる溶液重合、溶媒を用いないバルク重合や気相重合等のいずれの方法であっても良い。また、連続重合、回分式重合のいずれの方法においても好ましい性能を発揮する。
【0073】
(α−オレフィン)
本発明の重合体の製造方法に用いられるα−オレフィンは、C3〜C18のもので、具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、3−メチル−ブテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1などを挙げることが出来る。好ましいものとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1およびそれらを組み合わせたもので、最も高い活性を示すと言う意味でプロピレンが特に好ましい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。以下の反応は乾燥窒素ガス雰囲気下に行い、溶媒は脱水乾燥・脱気したものを用いた。また、各特性の評価は下記の方法により行った。
【0075】
試験例1
フェノール変性修飾MMAOの調製
(フェノール化合物とMMAOの反応率)
フェノール化合物とMMAOの反応の進行は、MMAOに含まれるアルミニウムに結合したアルキル基の量を反応の前後で比較することに依り可能である。以下に一般的な手順を説明する。
(1)実施例記載の方法に従いフェノール化合物とMMAOを反応させる。
(2)反応液を室温下に減圧し、溶存しているメタンなどのガス成分を除去する。
MMAOとBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)の反応式を以下に例示する。溶存しているガス成分とは、この場合、メタンとイソブタンである。
【0076】
【化25】
【0077】
(3)残液を加水分解することにより発生するガス量をガスビュレットにより測定する。
(4)反応に使用したフェノール化合物と発生したガス量を比較することに依り、フェノール化合物がMMAOと反応したことを確認する。
【0078】
また、発生ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、フェノール化合物とMMAOの反応後に残留しているアルミニウムに結合したアルキル基の量を測定することも可能である。
【0079】
尚、MMAOには製造原料であるアルキルアルミニウムが含まれることがある。アルキルアルミニウムを含有するMMAO(アルキルアルミニウムとMMAOの混合物)をフェノール化合物と反応させると、フェノール化合物は、MMAOとのみならず、アルキルアルミニウムとも一部反応する可能性がある。フェノール化合物とMMAOとの反応は上述の通りであるが、アルキルアルミニウムとフェノール化合物との反応では、アルキルアルミニウムが有する水素原子またはアルキル基などと、フェノール化合物由来のアリールオキシ基が置換して、アリールオキシ基を有する有機アルミニウム化合物が生成する。この化合物は前述の一般式(III)で示されるアルキルアルミニウムであって、R7,R8およびR9の内、少なくとも一つが、フェノール化合物由来のアリールオキシ基である。ここでのフェノール化合物は、一般式(IIA)で市はされる化合物である。
【0080】
試験例2
(重合体の分子量および分子量分布)
重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ウォーターズ社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)150Cを用いて測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。溶媒はo−ジクロルベンゼを用い、測定温度140℃で行い、単分散ポリスチレン標準試料を用いて作成した検量線によるユニバーサル法により求めた。
【0081】
参考例1:dMMAOの調製
スターラーチップを入れ、3方コックを付けた300mlのナス型フラスコに東ソー・ファインケム社製のMMAO−3A/トルエン溶液(Al濃度6.5wt%)を100ml導入し、真空ポンプ使用による減圧下に溶媒と共存するアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウム)を室温で6時間かけて留去した。得られた固体残留物に乾燥ヘプタンを100ml添加し、十分攪拌した後に上記と同様な減圧下に溶媒を留去した。この操作を計9度繰り返すことにより、MMAO−3A/トルエン中に共存するアルキルアルミニウムを完全に除去したdMMAOを14.8g得た。
【0082】
実施例1
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、MMAO(東ソー・ファインケム社製MMAO−3Aトルエン溶液,6.5wt%−Alのトルエン溶液,1.84ml,4.0mmol,アルキルアルミニウムとしてMe3AlとiBu3AlをAl基準でそれぞれ3.9mol%と2.6mol%含む)、乾燥トルエン26.0ml、を導入した後に、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール,0.30Mのトルエン溶液,1.30ml,0.40mmol)を0℃で添加し、30分間攪拌熟成した。BHTの反応率を上述の方法で求めたところ、99.5%であり、ほとんど定量的にMMAOと反応していることを確認した。また、添加したBHTの75%がMMAO鎖と反応していることをNMRにより確認した。
【0083】
(2)プロピレン重合体の合成
次いで、その温度(0℃)で反応器および反応液中の窒素を減圧下に吸引除去し、プロピレンガスを導入して飽和させた。次いでTi錯体として(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチル(20μmol,74mg)を溶解させたトルエン溶液1mlを添加することにより重合を開始した。重合は0℃で3分間実施し、少量の塩酸酸性メタノール溶液を反応器に加えて重合を停止させた。重合溶液を大量の塩酸酸性メタノール溶液に注ぎ込み、重合体を析出させた。重合体の濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより1.9gの重合体を取得した。この時の重合活性は1900kg/mol−Ti・hrであった。
【0084】
【化26】
【0085】
(3)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は33,9000で、Mw/Mnは1.29であった。
【0086】
実施例2
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
BHTを0.29mmol添加したことと重合時間を10分間としたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、2.1gの重合体を取得した。この時の重合活性は630kg/mol−Ti・hrであった。
【0087】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は14,1000で、Mw/Mnは1.16であった。
【0088】
実施例3
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製プロピレン重合体の合成
BHTの代わりにペンタフルオロフェノール(PFP)を0.1mmol添加したことと重合時間を10分間としたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、1.3gの重合体を取得した。この時の重合活性は390kg/mol−Ti・hrであった。
【0089】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は39,8000で、Mw/Mnは1.22であった。
【0090】
実施例4
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
BHTの代わりにペンタフルオロフェノール(PFP)を0.29mmol添加したことと重合時間を10分間としたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、2.2gの重合体を取得した。この時の重合活性は660kg/mol−Ti・hrであった。フェノール変性修飾MMAOの調製におけるPFPの反応率を上述の試験例1の方法で求めたところ、99.0%であり、ほとんど定量的にMMAOと反応していることを確認した。
【0091】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は20,2000で、Mw/Mnは1.23であった。
【0092】
実施例5
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
BHTの代わりに2,6−ジ-t-ブチルフェノール(DTBP)を0.29mmol添加したことと重合時間を10分間としたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、2.5gの重合体を取得した。この時の重合活性は750kg/mol−Ti・hrであった。フェノール変性修飾MMAOの調製におけるPFPの反応率を上述の試験例1の方法で求めたところ、100%の反応率であり、定量的にMMAOと反応していることを確認した。
【0093】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は14,7000で、Mw/Mnは1.17であった。
【0094】
実施例6
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
MMAOの代わりに参考例1で調製したdMMAOを4.0mmol用いたこと、BHTの代わりに2,6−ジフェニルフェノール(DPP)を0.1mmol添加したことと重合時間を10分間としたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、2.3gの重合体を取得した。この時の重合活性は700kg/mol−Ti・hrであった。フェノール変性修飾MMAOの調製におけるDPPの反応率を上述の試験例1の方法で求めたところ、98.5%であり、ほとんど定量的にMMAOと反応していることを確認した。
【0095】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は31,3000で、Mw/Mnは1.13であった。
【0096】
実施例7
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
MMAOの代わりに参考例1で調製したdMMAOを用い、BHTを0.1mmol用いたことと重合時間を10分間としたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、1.1gの重合体を取得した。この時の重合活性は320kg/mol−Ti・hrであった。
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は24,8000で、Mw/Mnは1.27であった。
【0097】
実施例8
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
MMAOの代わりに参考例1で調製したdMMAOを用い、BHTを0.2mmol用いたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、2.3gの重合体を取得した。この時の重合活性は2300kg/mol−Ti・hrであった。
【0098】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は29,300で、Mw/Mnは1.15であった。
【0099】
実施例9
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
MMAOの代わりに参考例1で調製したdMMAOを用い、BHTを0.4mmol用いたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、2.4gの重合体を取得した。この時の重合活性は2400kg/mol−Ti・hrであった。フェノール変性修飾MMAOの調製におけるBHTの反応率を上述の試験例1の方法で求めたところ、99.0%であり、ほとんど定量的にMMAOと反応していることを確認した。
【0100】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は29,2000で、Mw/Mnは1.18であった。
【0101】
実施例10
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
MMAOの代わりに参考例1で調製したdMMAOを用い、BHTを0.8mmol用いたことを除いて、実施例1と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったところ、2.6gの重合体を取得した。この時の重合活性は2600kg/mol−Ti・hrであった。フェノール変性修飾MMAOの調製におけるBHTの反応率を上述の試験例1の方法で求めたところ、99.0%であり、ほとんど定量的にMMAOと反応していることを確認した。
【0102】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は40,3000で、Mw/Mnは1.18であった。
【0103】
実施例11
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製
撹拌装置を有する窒素置換した内容積100mlガラス反応器に、MMAO(東ソー・ファインケム社製MMAO−3Aトルエン溶液,6.5wt%−Alのトルエン溶液,0.92ml,2.0mmol)、乾燥トルエン27.0ml、を導入した後に、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール,0.30Mのトルエン溶液,0.50ml,0.15mmol)を0℃で添加し、30分間攪拌熟成した。
【0104】
(2)プロピレン重合体の合成
次いで、−20℃で反応器および反応液中の窒素を減圧下に吸引除去し、プロピレンガスを導入して飽和させた。次いでTi錯体として(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル]シランチタンジメチル(10μmol,4.8mg)を溶解させたトルエン溶液1mlを添加することにより重合を開始した。重合は−20℃で3分間実施し、少量の塩酸酸性メタノール溶液を反応器に加えて重合を停止させた。重合溶液を大量の塩酸酸性メタノール溶液に注ぎ込み、重合体を析出させた。重合体の濾別洗浄後に、60℃で6時間減圧乾燥することにより1.8gの重合体を取得した。この時の重合活性は3500kg/mol−Ti・hrであった。
【0105】
【化27】
【0106】
(3)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は21,3000で、Mw/Mnは1.55であった。
【0107】
実施例13
(1)フェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合体の合成
Ti錯体として下記(t-ブチルアミド)ジメチル−9−[オクタメチルチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル]シランチタンジメチルを用いたことを除いて、実施例11と同様にフェノール変性修飾MMAOの調製及びプロピレン重合を行ったが、高活性のため液粘度上昇が急速に起こり、正確な重合活性を求めることが出来なかった。
【0108】
【化28】
【0109】
比較例1
(1)プロピレンの共重合体の合成
BHTを用いなかったことに加え、重合時間を10分間としたことを除いては実施例1と同様にしてプロピレンの重合を行った。得られた重合体は0.37gで、この時の重合活性は111kg/mol−Ti・hrであった。
【0110】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は2,6000で、Mw/Mnは1.58であった。
【0111】
比較例2
(1)プロピレンの共重合体の合成
MMAOの代わりに参考例1で調製したdMMAOを用いたことと、重合時間を10分間としたことを除いては実施例1と同様にしてプロピレンの重合を行った。得られた重合体は1.0gで、この時の重合活性は300kg/mol−Ti・hrであった。
【0112】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は13,7000で、Mw/Mnは1.32であった。
【0113】
参考例2
(1)プロピレンの共重合体の合成
MMAOの代わりに参考例1で調製したdMMAOを用いたことと、重合時間を10分間としたこと、更にBHTの代わりにフェノール(C65OH)を0.1mmol用いたことを除いては実施例1と同様にしてプロピレンの重合を行った。得られた重合体は0.6gで、この時の重合活性は165kg/mol−Ti・hrであった。
【0114】
(2)プロピレン重合体の解析
GPCにより求めた数平均分子量は7,2000で、Mw/Mnは1.16であった。
【0115】
参考例2の結果(表1参照)は、フェノールによる変性は、フェノールが置換基を有する場合に有効であることを示す。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、簡便にMMAOの助触媒性能を向上させることが出来、高性能オレフィン重合触媒の開発において、その価値は極めて大きい。
図1
図2
図3