(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、高出力特性を有する薄膜リチウム二次電池の生産性の向上が要求されている。しかしながら、LiPON等の窒化物系材料は通常、窒素雰囲気中での反応性スパッタリング法で成膜されるため、固体電解質層の成膜レートを高くすることができない。
これに対して、リン酸リチウム(Li
3PO
4)等の酸化物系材料においては、アルゴン等の単独ガスでスパッタ成膜が可能であるため、LiPON等と比較して高い成膜レートを確保できるものの、正極層であるLiCoO
2との界面抵抗(リチウムイオンの輸送抵抗)がLiPONの場合と比べて大きいため出力特性の向上が図れないという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、正極層と固体電解質層との界面抵抗を抑制しつつ、生産性の向上を図ることができる薄膜リチウム二次電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜リチウム二次電池は、コバルトを含む正極層と、負極層と、リチウムイオン伝導性の第1の固体電解質層と、リチウムイオン伝導性の第2の固体電解質層とを具備する。
上記第1の固体電解質層は、上記正極層と上記負極層との間に配置され、シリコンを含む。
上記第2の固体電解質層は、上記正極層と上記第1の固体電解質層との間に配置され、シリコンを実質的に含まない。
【0008】
上記薄膜リチウム二次電池において、固体電解質層は、シリコンを含む第1の固体電解質と、シリコンを実質的に含まない第2の固体電解質層との積層構造を有し、正極層と第1の固体電解質層との間に第2の固体電解質層が配置される。これにより、正極層と固体電解質層との界面抵抗を抑制することができる。また、固体電解質層のすべてを反応性スパッタで成膜する必要がなくなるため、生産性の向上を図ることができる。
【0009】
第2の固体電解質層の材料は、シリコンを実質的に含まないリチウムイオン伝導性の固体電解質材料であれば特に限定されず、例えば、窒化リン酸リチウム(LiPON)、窒化ホウ酸リチウム(LiBON)、窒化バナジウム酸リチウム(LiVON)のようなリチウムを含む酸窒化物材料で構成される。
【0010】
第1の固体電解質層も同様に、シリコンを含むリチウムイオン伝導性の固体電解質材料であれば特に限定されず、例えば、Li
3PO
4とLi
4SiO
4との混合物で構成される。
【0011】
第1の固体電解質層の厚みは特に限定されず、典型的には、上記第2の固体電解質層よりも大きな厚みを有し、例えば、10nm以上100nm以下である。
これにより、第2の固体電解質層の成膜に要する時間が短くなるため、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
上記正極層は、典型的には、LiCoO
2である。
【0013】
本発明の一形態に係る薄膜リチウム二次電池の製造方法は、
基板上に、コバルトを含む正極層を形成し、
上記正極層上に、シリコンを実質的に含まないリチウムイオン伝導性の下地電解質層を形成し、
上記下地電解質層上に、シリコンを含むリチウムイオン伝導性の固体電解質層を形成し、
上記固体電解質層上に、負極層を形成する。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、正極層と固体電解質層との界面抵抗を抑制しつつ、生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜リチウム二次電池の構成を示す概略断面図である。
【0018】
本実施形態の薄膜リチウム二次電池100は、基板S上に形成された、正極層1、固体電解質材料層2及び負極層3の積層体で構成される。薄膜リチウム二次電池100は、典型的には、基板S上に形成された封止層5によって封止される。
【0019】
基板Sは、特に限定されず、シート状、フィルム状、薄板状のものが適用可能である。基板Sの材料も特に限定されず、ガラス、アルミナ等のセラミックス材料、シリコン等の半導体材料、金属等の導電性材料、ポリイミド等の樹脂材料が適用可能である。
【0020】
正極層1は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料であれば特に限定されず、本実施形態では、コバルトを含む金属化合物が用いられる。より具体的に、正極層1には、LiCoO
2(コバルト酸リチウム、以下、LCOともいう。)等のリチウム遷移金属化合物が用いられる。正極層1は、例えば、LCOからなるターゲットを用いたRFスパッタリングによって形成される。正極層1の厚みは特に限定されず、例えば、3μmである。
【0021】
正極層1は、正極集電層4を介して基板S上に形成される。正極集電層4としては、伝導性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、クロム、銅、アルミニウム、ニッケル、金、白金、モリブデン、マンガン、銀、これら金属の2種以上の合金系等を用いることができる。
【0022】
本実施形態において正極集電層4は、白金/チタン(Pt/Ti)の積層膜によって構成される。正極集電層4は、例えば、白金からなるターゲットとチタンからなるターゲットとを用いたRFスパッタリングによって形成される。
【0023】
負極層3としては、典型的には、金属リチウムが用いられる。これ以外にも、グラファイト、ハードカーボン、Si、Sn、SiO、SnO、Nb
2O
5、TiO
2等が適用可能である。負極層3は、例えば、蒸発源にリチウムを用いた真空蒸着法によって形成される。負極層3の厚みは特に限定されず、例えば、2μmである。
【0024】
負極層3には負極集電層が接続されるが、負極集電層の図示は省略する。負極集電層は、典型的には、正極集電層4と同じ材料で構成され、正極集電層4と同じ成膜方法で形成される。
【0025】
封止層8は、絶縁材料で構成される。封止層8を構成する絶縁材料は特に限定されず、合成樹脂材料、金属化合物材料あるいはそれらの積層体が用いられる。本実施形態では、封止層8は、ポリ尿素層とアルミナ(Al
2O
3)層が交互に積層された積層膜で構成される。ポリ尿素層は、例えば、蒸着重合法によって形成され、アルミナ層は、例えば、アルミニウムからなるターゲットを用いた酸素ガス雰囲気中でのRFスパッタリングによって形成される。
【0026】
次に、固体電解質材料層2の詳細について説明する。
【0027】
固体電解質材料層2は、第1の固体電解質層21と第2の固体電解質層22との積層構造を有する。第1の固体電解質層21は、正極層1と負極層3との間に配置され、第2の固体電解質層22は、正極層1と第1の固体電解質層21との間に配置される。固体電解質材料層2の厚み(第1及び第2の固体電解質層21,22の総厚)は特に限定されず、例えば、2μmである。
【0028】
第1の固体電解質層21は、シリコンを含むイオン伝導性の固体電解質材料で構成される。このような固体電解質材料としては、例えば、Li
3SiO
4(ケイ酸リチウム)のほか、Li
3PO
4(以下、LPOともいう。)とLi
4SiO
4(以下、LSOともいう。)との混合物(以下、LPO−LSOともいう。)が挙げられる。
【0029】
本実施形態において、第1の固体電解質層21は、LPO−LSOで構成される。LPO−LSOの組成比は特に限定されず、本実施形態では、Li
3PO
4とLi
4SiO
4との比が50:50であり、これにより例えば、約1.6×10
−6[S/cm]のリチウムイオン伝導度を得ることができる。
【0030】
第1の固体電解質層21は、上記組成で構成されたLPO−LSOターゲットを用いたアルゴン(Ar)ガス雰囲気中でのRFスパッタリングで形成されるが、これに限られず、LPOからなるターゲットとLSOからなるターゲットとを用いた二元系RFスパッタリングで形成されてもよい。
【0031】
一方、第2の固体電解質層22は、シリコンを実質的に含まないイオン伝導性の固体電解質材料で構成される。このような固体電解質材料としては、例えば、Li
3PO
4(リン酸リチウム)、Li
3BO
3(ホウ酸リチウム)、Li
3VO
4(バナジウム酸リチウム)のほか、これらの窒化物(LiPON、LiBON、LiVON)等が挙げられる。
【0032】
本実施形態において、第2の固体電解質層22は、LiPON、LiBON、LiVON等のリチウムを含む酸窒化物材料で構成される。特に本実施形態では、LiPONが用いられる。これにより、LPO−LSOと同等以上のリチウムイオン伝導度を得ることができる。第2の固体電解質層22は、典型的には、LPOからなるターゲットを用いた窒素ガス雰囲気中での反応性RFスパッタリングで形成される。
【0033】
ここで、従前の薄膜リチウム二次電池は、固体電解質材料として、リチウムイオン伝導度が比較的優れるLiPONが主に用いられていた。この場合、LPOからなるターゲットを用いた窒素ガス雰囲気中での反応性RFスパッタリング法で固体電解質材料層が形成されることになる。しかしながら、反応性スパッタリング法は成膜レートが比較的低いため、約2μmという厚みの固体電解質材料層を成膜するのに多大な時間が必要となり、生産性の低下が避けられない。
【0034】
一方、固体電解質材料層の全体を、例えばLPO−LSO等のようにAr単独ガスを用いたRFスパッタリングで成膜可能な材料で形成すると、LCOからなる正極層と固体電解質材料層との間の界面抵抗が大きくなり、リチウムイオンの輸送抵抗が増加して出力が低下する。この問題は、固体電解質材料にシリコンを含む材料が用いられる場合により顕著となる。
【0035】
以上のような問題に鑑み、本実施形態の薄膜リチウム二次電池100においては、固体電解質材料層2が、LPO−LSOで構成された第1の固体電解質層21とLiPONで構成された第2の固体電解質層22との積層体で構成される。これにより、固体電解質材料層2の全体をLiPON等の酸窒化物材料で構成する場合と比較して、固体電解質材料層2の成膜時間の短縮化を図るようにしている。
【0036】
また、本実施形態の薄膜リチウム二次電池100においては、2層構造を有する固体電解質材料層2のうち、シリコンを含まない第2の固体電解質層22が正極層1に接触する下地電解質層として機能し、シリコンを含む第1の固体電解質層21が固体電解質材料層2の主要な構成層として機能する。これにより、正極層1と固体電解質材料層2との間の界面抵抗を低減し、電流−電圧特性に優れた高出力の電池特性が確保される。
【0037】
第2の固体電解質層22の厚みは特に限定されず、例えば、5nm以上1000nm以下である。第2の固体電解質層22の厚みが5nmよりも薄いと、正極層1の表面状態(平均粗さ等)によっては、正極層1に対する第2の固体電解質層22のカバレッジ性が低下して、界面抵抗の発生を抑えることができないおそれがある。また、第2の固体電解質層22が1000nmを超えると、反応性スパッタ法を用いた固体電解質材料層2の成膜時間が徒に長くなり、生産性の低下が避けられなくなる。
第2の固体電解質層22の厚みは、好ましくは、10nm以上100nm以下である。これにより、固体電解質材料層2の成膜時間の短縮化を図りつつ、正極層1との間の界面抵抗を効率よく低減することができる。
【0038】
第2の固体電解質層22は、上述のように、シリコンを実質的に含まないリチウムイオン伝導性の固体電解質材料で構成される。正極層と固体電解質材料層との界面反応が生じる理由は明らかではないが、正極層(LCO)のコバルト成分と固体電解質材料層(LPO−LSO)のシリコン成分との界面反応に起因するものと推定される。このため、第2の固体電解質層22には、シリコンを含まない材料で構成されるのが好ましい。
【0039】
なお、「シリコンを実質的に含まない」とは、シリコンを含む材料をすべて排除するものではなく、上記界面反応が生じない程度の微量のシリコンが含まれてもよいという趣旨である。つまり、第2の固体電解質層22は、正極層1との界面反応が生じない、又は界面反応が生じたとしても電池特性への影響を無視できる程度の量のシリコンを含んでもよい。この場合のシリコンの含有量は、第2の固体電解質層22の構成材料や組成によって適宜設定可能であり、例えば、10wt%以下である。
【0040】
[製造方法]
続いて、以上のように構成される本実施形態の薄膜リチウム二次電池100の製造方法について説明する。
図2は、薄膜リチウム二次電池100の要部の層構造を示す模式図である。
【0041】
まず、基板S上に、正極集電層4が形成される。正極集電層4は、厚み100nmのPtと厚み20nmのTiとの積層膜で構成され、本実施形態では、PtからなるターゲットとTiからなるターゲットとを用いたアルゴンガス雰囲気中でのRFスパッタリングによって形成される。
【0042】
続いて、正極集電層4の上に、正極層1が形成される。正極層1は、厚み3μmのLCOで構成され、本実施形態では、LCOからなるターゲットを用いたアルゴンガス雰囲気中でのRFスパッタリングによって形成される。
【0043】
次に、正極層1の上に、シリコンを実質的に含まないリチウムイオン伝導性の下地電解質層として、厚み100nm(0.1μm)のLiPON膜からなる第2の固体電解質層22が形成される。第2の固体電解質層22は、LPOからなるターゲットを用いた窒素を含むガス雰囲気中での反応性スパッタリングによって形成される。当該ガス雰囲気は窒素のみでもよいし、窒素とアルゴン等の希ガスとの混合ガス雰囲気でもよい。
【0044】
続いて、下地電解質層の上に、シリコンを含むリチウムイオン伝導性の固体電解質層として、厚み1.9μmのLPO−LSO膜からなる第1の固体電解質層21が形成される。第1の固体電解質層21は、LPO:LSOの比が50:50のターゲットを用いたアルゴンガス雰囲気中でのRFスパッタリングによって形成される。成膜圧力は、例えば、0.1Pa以上0.3Pa以下である。なお、LPOからなるターゲットとLSOからなるターゲットとを用いた二元系RFスパッタリングによって、第1の固体電解質層21が形成されてもよい。
【0045】
第1の固体電解質層21及び第2の固体電解質層22は、それぞれ別々の真空チャンバ内で成膜されてもよいし、共通の真空チャンバ内で成膜されてもよい。後者の場合、チャンバには、LPO及びLSOの2つのターゲットが配置されるとともに、アルゴンガス供給ラインとアルゴン及び窒素の混合ガス供給ラインとが切り替え可能に設置される。
【0046】
続いて、第1の固体電解質層21の上に、負極層3が形成される。負極層3は、厚み2μmのリチウム膜で構成され、本実施形態では、リチウム蒸発源を用いた真空蒸着法によって形成される。その後、図示しない負極集電層及び封止層が順に形成される。
【0047】
[実験例]
以下、実験例を通じて、本実施形態の薄膜リチウム二次電池100の詳細について説明する。
【0048】
まず、本発明者は、固体電解質材料層にLPO−LSO(単層)を用い、Li/LPO−LSO/Ptのハーフセル構造のサンプルを作製した。LPO−LSOの成膜条件は以下のとおりとした。
【0049】
(LPO−LSOの成膜条件)
・スパッタ電源:13.56MHz、100W
・ターゲット:LPO−LSO(LPO:LSO=50:50)
・スパッタガス:アルゴン
・スパッタ圧力:0.1Pa(サンプル1)、0.25Pa(サンプル2)、0.6Pa(サンプル3)
【0050】
成膜圧力が異なる3つのサンプル1〜3について、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いたLPO−LSOの膜質の評価結果を
図3に示す。
【0051】
図3に示すように、いずれのサンプル1〜3についても、明確なLPO起因のピークとLSOとみられるブロードなピークが確認された。成膜圧力による明確な差は見られなかったが、圧力条件が0.25Paであるサンプル2に係るLPO起因のピーク強度が他のサンプル1,3よりも若干高いように感じられた。また図示せずとも、サンプル1〜3のLPO−LSO膜についてSEMによる表面および断面の観察を行った結果、表面がかなり荒れていることが確認された。
【0052】
次に、各サンプルについて、固体電解質材料層をLiPONで構成した標準サンプル(以下、STD LiPONセル、あるいは、単にLiPONセルとも称する。)と比較したイオン伝導度を交流インピーダンス測定によって評価した。その結果を
図4に示す。なお、LiPONセルにおけるLiPON層の成膜条件は以下のとおりとした。
【0053】
(LiPONセルにおけるLiPON層の成膜条件)
・スパッタ電源:13.56MHz、2000W
・ターゲット:LPO
・スパッタガス:窒素
・スパッタ圧力:0.25Pa
【0054】
図4に示すように、圧力条件が0.1Pa及び0.25Paに係るサンプル1,2については、イオン伝導度がLiPONセルよりも高く、最もイオン伝導度が高い圧力条件は、0.25Paであるサンプル2であることが確認された。
【0055】
また、サンプル2を6Vまで電位を走査した結果を
図5に示す。同図にしめすように、サンプル2の固体電解質材料層は分解反応を起こさず、安定であることが確認された。
【0056】
続いて
図6に示すように、比較例として、正極層1の上に直接形成された、厚さ2μmのLPO−LSOからなる固体電解質材料層210を有するフルセル構造の薄膜リチウム二次電池110(以下、LPO−LSOセルという。)を作製した。固体電解質材料層210の成膜条件は、上述のサンプル2(圧力条件0.25Pa)と同一とした。なお同図において、
図2と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
LPO−LSOセルの放電プロファイル特性の一例を、上述のLiPONセルのそれと比較して
図7に示す。また、LPO−LSOセルの交流インピーダンス特性の一例を、上記LiPONセルのそれと比較して
図8に示す。
【0058】
図7に示すように、LPO−LSOセルの放電容量は、LiPONセルの放電容量とほぼ同じであるが、放電電位がLIPONセルよりも低い。これは、
図4で検証したハーフセル構造における交流インピーダンス特性よりも、LPO−LSOセルでは抵抗成分が増えているためと推定される。すなわち
図8に示すように、LPO−LSOフルセル構造においては、正極層1との界面に正極層1のコバルト成分と固体電解質材料層210のシリコン成分との反応層の生成に起因して界面抵抗が生じたものと考えられる。
【0059】
一方、本実施形態の薄膜リチウム二次電池100における固体電解質材料層2は、LPO−LSOからなる第1の固体電解質層21とLiPONからなる第2の固体電解質層22との積層構造を有する(
図2参照)。この薄膜リチウム二次電池100(以下、LPO−LSO/LiPONセルともいう。)の放電プロファイル特性を
図9に、交流インピーダンス特性を
図10にそれぞれ示す。
【0060】
なお、第1の固体電解質層21の成膜条件は、上記サンプル2(圧力条件0.25Pa)におけるLPO−LSO層の成膜条件と同一とした。また、第2の固体電解質層22の成膜条件は、上記LiPONセルにおけるLiPON層の成膜条件と同一とした。
【0061】
図9に示すように、LCO層とLPO−LSO層との界面にLiPON層が介在する本実施形態のLPO−LSO/LiPONセルにおいては、LPO−LSOセルよりも放電電位が上がり、放電容量も向上する。しかも、LiPONセルよりも高い放電電位及び放電容量が得られることも確認された。さらに
図10に示すように、本実施形態によれば、界面抵抗層が消失し、LiPONセルより低抵抗なセルが得られた。
【0062】
以上のように本実施形態によれば、正極層1と固体電解質材料層2との界面に、シリコンを実質的に含まない第2の固体電解質層(LiPON層)22を介在させているため、正極層1と固体電解質材料層2との界面抵抗を抑制することができる。これにより、出力特性に優れた薄膜リチウム二次電池を得ることができる。
【0063】
一例として、LiPONセル及びLPO−LSO/LiPONセルの放電特性(Cレート特性)を
図11及び
図12にそれぞれ示す。同図に示すように、本実施形態のLPO−LSO/LiPONセルでは、LiPONセルと比較して、高電流の放電電圧が上がっており、これにより界面抵抗の低減による出力特性の向上が認められる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0065】
例えば以上の実施形態では、正極層1として、LCOを例に挙げて説明したが、これ以外にも、LiNi
xCo
yMn
zO
2、LiNi
xCo
yAl
zO
2等のコバルトを含む3元素系のリチウム−金属複合酸化物が適用可能である。
【0066】
また、以上の実施形態では、第1の固体電解質層21として、LPO:LSO=50:50のLPO−LSO層で構成されたが、LPOとLSOの比は上記の例に限られず、仕様等に応じて適宜変更することが可能である。