特許第6887293号(P6887293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887293
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】接合材およびそれを用いた接合方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/08 20060101AFI20210603BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20210603BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20210603BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20210603BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20210603BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   B22F7/08 E
   H01B1/22 D
   H01B1/00 K
   H01B1/00 M
   B22F1/00 K
   B22F1/02 B
   H01L21/52 E
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-82296(P2017-82296)
(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公開番号】特開2017-201057(P2017-201057A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2020年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-91285(P2016-91285)
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲
(72)【発明者】
【氏名】堀 達朗
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】三好 宏昌
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−069475(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/108408(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/198832(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/204013(WO,A1)
【文献】 特開2005−146181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−9/30
H01B 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径1〜100nmの銀微粒子と溶剤と添加剤を含む銀ペーストからなる接合材において、溶剤として、ジオールからなる第1の溶剤と、この第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒からなる第2の溶剤とを含み、第2の溶剤が炭素数8〜12のグリコールエーテルまたはモノアルコールであり、添加剤がトリオールであることを特徴とする、接合材。
【請求項2】
前記第1の溶剤がオクタンジオールであることを特徴とする、請求項1に記載の接合材。
【請求項3】
前記第2の溶剤が、ジブチルジグリコール、ヘキシルジグリコールおよびデカノールからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の接合材。
【請求項4】
前記接合材中の前記銀微粒子の含有量が60〜90質量%であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項5】
前記接合材が平均粒径0.2〜10μmの銀粒子をさらにみ、この銀粒子の含有量と前記銀微粒子の含有量の合計が60〜90質量%であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項6】
前記接合材中の前記平均粒径0.2〜10μmの銀粒子の含有量が30質量%以下であることを特徴とする、請求項に記載の接合材。
【請求項7】
前記銀微粒子が炭素数8以下の脂肪酸またはアミンで被覆されていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項8】
前記脂肪酸がソルビン酸であることを特徴とする、請求項に記載の接合材。
【請求項9】
前記接合材中の前記第1の溶剤の含有量が5〜20質量%であることを特徴とする、請求項1乃至いずれかに記載の接合材。
【請求項10】
前記接合材中の前記第2の溶剤の含有量が0.5〜15質量%であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項11】
前記接合材中の前記添加剤の含有量が0.5〜10質量%であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の接合材。
【請求項12】
前記接合材が焼結助剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の接合材。
【請求項13】
前記焼結助剤がジグリコール酸またはマロン酸であることを特徴とする、請求項12に記載の接合材。
【請求項14】
前記接合材中の前記焼結助剤の含有量が0.001〜0.1質量%であることを特徴とする、請求項12または13に記載の接合材。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の接合材を被接合物間に介在させて加熱することにより、接合材中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層により被接合物同士を接合することを特徴とする、接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材およびそれを用いた接合方法に関し、特に、銀微粒子を含む銀ペーストからなる接合材およびその接合材を用いて銅基板などの金属基板上にSiチップなどの電子部品を接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀微粒子を含む銀ペーストを接合材として使用し、被接合物間に接合材を介在させて加熱することにより、接合材中の銀を焼結させて、被接合物同士を接合することが提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
このような接合材を使用して銅基板などの金属基板上にSiチップなどの電子部品を固定する場合、銀微粒子が溶媒に分散した銀ペーストを基板上に塗布した後、加熱して溶媒を除去することにより、基板上に予備乾燥膜を形成し、この予備乾燥膜上に電子部品を配置した後、電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、銀接合層を介して電子部品を基板に接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−80147号公報(段落番号0014−0020)
【特許文献2】特開2016−8332号公報(段落番号0009−0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜2の接合材のような銀微粒子を含む銀ペーストからなる従来の接合材をメタルマスクとメタルスキージにより基板上に150μm以上の厚さに印刷して厚い塗布膜を形成すると、印刷の際に銀ペーストがメタルマスクとメタルスキージの間で回転(ローリング)することによって、泡噛み(空気などの気体が混入して均一な状態でなくなること)が生じ、塗布膜に泡が巻き込まれ易くなり、この塗布膜に形成された泡によって、予備乾燥膜の表面に凹凸が形成されたり、予備乾燥膜にクラックや剥離が生じ易くなり、このような予備乾燥膜の表面の凹凸や予備乾燥膜のクラックなどによって、銀接合層にボイドが生じ易くなり、接合材の信頼性や放熱性が低下し易くなる。特に、高温信頼性が要求されるSiCデバイスを基板上に接合する場合には、高温信頼性を確保するために接合層を十分に厚くすることが必要となる場合があり、接合層を厚くするために塗布膜を厚くして予備乾燥膜を厚くすると、予備乾燥膜の収縮が大きくなり、予備乾燥膜の表面の凹凸や予備乾燥膜のクラックや剥離が一層生じ易くなる。
【0006】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、塗布膜を厚くしても塗布膜の形成の際の泡噛みを防止して銀接合層にボイドが生じるのを防止することができる、接合材およびそれを用いた接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銀微粒子と溶剤と添加剤を含む銀ペーストからなる接合材において、溶剤としてジオールからなる第1の溶剤とこの第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒からなる第2の溶剤とを使用し、添加剤としてトリオールを使用することにより、塗布膜を厚くしても塗布膜の形成の際の泡噛みを防止して銀接合層にボイドが生じるのを防止することができる、接合材およびそれを用いた接合方法を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明による接合材は、銀微粒子と溶剤と添加剤を含む銀ペーストからなる接合材において、溶剤として、ジオールからなる第1の溶剤と、この第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒からなる第2の溶剤とを含み、添加剤がトリオールであることを特徴とする。
【0009】
この接合材において、第1の溶剤はオクタンジオールであるのが好ましい。また、第2の溶剤は、ジアルキルグリコールエーテル、エチレングリコール系エーテルおよびモノアルコールからなる群から選ばれる1種以上であるのが好ましく、ジブチルジグリコール、ヘキシルジグリコールおよびデカノールからなる群から選ばれる1種以上であるのがさらに好ましい。また、銀微粒子の平均一次粒子径は1〜100nmであるのが好ましく、接合材中の銀微粒子の含有量は60〜90質量%であるのが好ましい。また、接合材が平均粒径0.2〜10μmの銀粒子を含んでもよい。この場合、接合材中の平均粒径0.2〜10μmの銀粒子の含有量が30質量%以下であり且つ銀微粒子の含有量と平均粒径0.2〜10μmの銀粒子の含有量の合計が60〜90質量%であるのが好ましい。また、銀微粒子が炭素数8以下の有機化合物で被覆されているのが好ましく、有機化合物がソルビン酸であるのが好ましい。また、接合材中の第1の溶剤の含有量が5〜20質量%であるのが好ましく、第2の溶剤の含有量が0.5〜15質量%であるのが好ましく、添加剤の含有量が0.5〜10質量%であるのが好ましい。また、接合材が焼結助剤を含んでもよい。この場合、焼結助剤がジグリコール酸またはマロン酸であるのが好ましく、接合材中の焼結助剤の含有量が0.001〜0.1質量%であるのが好ましい。
【0010】
また、本発明による接合方法は、上記の接合材を被接合物間に介在させて加熱することにより、接合材中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層により被接合物同士を接合することを特徴とする。
【0011】
なお、本明細書中において、「銀微粒子の平均一次粒子径」とは、銀微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡写真(TEM像)により求められる一次粒子径の平均値をいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布膜を厚くしても塗布膜の形成の際の泡噛みを防止して銀接合層にボイドが生じるのを防止することができる、接合材およびそれを用いた接合方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による接合材の実施の形態では、銀微粒子と溶剤と添加剤を含む銀ペーストからなる接合材において、溶剤として、ジオールからなる第1の溶剤と、この第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒からなる第2の溶剤とを含み、添加剤がトリオールである。このように、第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒からなる第2の溶剤を消泡剤として添加して、溶剤の表面張力を低下させるとともに、トリオールを添加することにより、塗布膜を厚くしても塗布膜の形成の際の泡噛みを防止して銀接合層にボイドが生じるのを防止することができる。
【0014】
本発明による接合方法の実施の形態では、上記の接合材を被接合物間に介在させて加熱することにより、接合材中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層により被接合物同士を接合する。例えば、上記の接合材を銅基板上に塗布して得られた塗布膜を予備乾燥して得られた予備乾燥膜の接合材上に電子部品を配置した後、この電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層を介して電子部品を銅基板に接合する。上記の接合材を使用すれば、基板上に200μm程度の厚い塗布膜を形成する際に、泡噛みを防止し、予備乾燥膜のクラックや剥離を防止して、5MPa程度の低い圧力を加えながら加熱しても、銀接合層にボイドが生じるのを防止して、高い接合力で被接合物同士を接合することができる。
【0015】
上記の接合材の実施の形態において、第1の溶剤は、(2つのヒドロキシル基を有する)ジオールであり、接合材を加熱して銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成する際に、蒸発または分解などにより銀接合層中に残存しない溶剤であるのが好ましい。また、接合材中の銀微粒子を200〜300℃(好ましくは210〜290℃)の低温で加熱して銀を焼結させて銀接合層を形成することができるように、第1の溶剤の沸点は200〜300℃であるのが好ましく、210〜290℃であるのがさらに好ましい。また、第1の溶剤の表面張力は、その平均値が31.4〜37.4dyne/cmであるのが好ましい。なお、表面張力は、例えば、全自動表面張力計(協和界面化学株式会社製のCBVP−Z)などにより測定することができる。また、第1の溶剤を第2の溶剤および添加剤とともに銀微粒子に添加した銀ペーストにより、150μm以上の厚い塗布膜を形成することができるように、第1の溶剤の粘度は、25℃において1〜300mPa・sであるのが好ましく、50〜200mPa・sであるのがさらに好ましい。このような第1の溶剤として、炭素数3〜10のジオールを使用するのが好ましく、炭素数3〜8のジオールを使用するのがさらに好ましい。また、このような第1の溶剤が分岐を有するジオールであるのが好ましい。
【0016】
このような第1の溶剤として、具体的には、オクタンジオール(ODO)(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、沸点243.0±8.0℃、粘度(25℃)178mPa・s、表面張力(25℃)34.4±3.0dyne/cm(平均値34.4dyne/cm))を使用するのが好ましい。なお、第1の溶剤として、1種のジオールを使用してもよいし、2種以上のジオールを使用してもよい。接合材中の第1の溶剤の含有量は、5〜20質量%であるのが好ましく、7〜18質量%であるのがさらに好ましい。
【0017】
第2の溶剤は、第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒である。このような第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒を添加することにより、溶剤全体の表面張力を低下させることができるので、第1の溶剤のみを使用した場合と比べて、塗布膜を厚くしても塗布膜の形成の際の泡噛みを防止して銀接合層にボイドが生じるのを防止することができる。また、第2の溶剤として使用することができる極性溶媒は、第1の溶剤と相溶性がある程度の極性を有するのが好ましい。また、第2の溶剤として、ヒドロキシル基、エーテル結合、アミノ基、カルボキシル基を有する極性溶媒を使用することができ、ヒドロキシル基やエーテル結合を有する極性溶媒を使用するのが好ましい。なお、第2の溶剤としてヒドロキシル基を有する極性溶媒である場合、ジオールやトリオール以外の(ヒドロキシル基を1または4以上有する)極性溶媒を使用するのが好ましい。
【0018】
また、第2の溶剤は、第1の溶剤と同様に、接合材を加熱して銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成する際に、蒸発または分解などにより銀接合層中に残存しない溶剤であるのが好ましい。また、接合材中の銀微粒子を200〜300℃の低温で加熱して銀を焼結させて銀接合層を形成することができるように、第2の溶剤の沸点は200〜300℃であるのが好ましい。また、第2の溶剤の表面張力は、第1の溶剤の表面張力よりも、その平均値が2.0dyne/cm以上低いのが好ましい。また、第2の溶剤を第1の溶剤および添加剤とともに銀微粒子に添加した銀ペーストにより、150μm以上の厚い塗布膜を形成することができるように、第2の溶剤の粘度は、25℃において1〜200mPa・sであるのが好ましく、1〜100mPa・sであるのがさらに好ましい。このような第2の溶剤として、ジアルキルグリコールエーテルやエチレングリコール系エーテルなどの)グリコールエーテルや、モノアルコールを使用するのが好ましく、炭素数8〜12のグリコールエーテルやモノアルコールを使用するのがさらに好ましい。
【0019】
このような第2の溶剤として、具体的には、ジブチルジグリコール(DBDG)(沸点254.6℃、粘度(25℃)2.4mPa・s、表面張力(25℃)28.7±3.0dyne/cm(平均値28.7dyne/cm))、ヘキシルジグリコール(HeDG)(沸点260℃、粘度(25℃)8.6mPa・s、表面張力(25℃)32.3±3.0dyne/cm(平均値32.3dyne/cm))、1−デカノール(沸点227.8±3.0℃、粘度(25℃)1.38mPa・s、表面張力(25℃)29.9±3.0dyne/cm(平均値29.9dyne/cm))、1−ドデカノール(沸点258℃、粘度(25℃)18〜20mPa・s、表面張力(25℃)30.4±3.0dyne/cm(平均値30.4dyne/cm))などを使用することができ、ジブチルジグリコール(DBDG)、ヘキシルジグリコール(HeDG)または1−デカノールを使用するのが好ましい。なお、第2の溶剤として、第1の溶剤より表面張力が低い極性溶媒の1種を使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。接合材中の第2の溶剤の含有量は、0.5〜15質量%であるのが好ましく、0.7〜12質量%であるのがさらに好ましい。
【0020】
添加剤として使用するトリオールは、3つのヒドロキシル基を有するので、第1の溶剤および第2の溶剤との分散性が良好であり、第1の溶剤および第2の溶剤とともに銀微粒子に添加した銀ペーストにより、塗布膜を厚くしても塗布膜の形成の際の泡噛みを防止して、銀接合層にボイドが生じるのを防止することができる。
【0021】
また、添加剤として使用するトリオールは、第1の溶剤および第2の溶剤と同様に、接合材を加熱して銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成する際に、蒸発または分解などにより銀接合層中に残存しないトリオールであるのが好ましい。また、接合材中の銀微粒子を200〜300℃の低温で加熱して銀を焼結させて銀接合層を形成することができるように、第2の溶剤の沸点は200〜300℃であるのが好ましい。また添加剤として使用するトリオールの表面張力は、溶剤の表面張力が高くならないように、その平均値が30〜50dyne/cmであるのが好ましく、30〜40dyne/cmであるのがさらに好ましい。また、添加剤として使用するトリオールを第1の溶剤および第2の溶剤とともに銀微粒子に添加した銀ペーストにより、150μm以上の厚い塗布膜を形成することができるように、トリオールの粘度は、25℃において2000〜10000mPa・sであるのが好ましく、4000〜10000mPa・sであるのがさらに好ましい。このようなトリオールとして、炭素数3〜8のトリオールを使用するのが好ましく、炭素数3〜6のトリオールを使用するのがさらに好ましい。また、第1の溶剤との相溶性を向上させるために、このようなトリオールが分岐を有するトリオールであるのが好ましい。なお、この分岐は、炭化水素基によって形成されてもよいし、ヒドロキシル基によって形成されていてもよい。
【0022】
このようなトリオールとして、具体的には、2−メチル−ブタン−2,3,4−トリオール(イソプレントリオールA(IPTL−A))(沸点255.5℃、粘度(25℃)5420mPa・s、表面張力(25℃)38.7dyne/cm)や、2−メチル−ブタン−1,3,4−トリオール(イソプレントリオールB(IPTL−B))(沸点278〜282℃、粘度(25℃)4050mPa・s、表面張力(25℃)47.5±1.0dyne/cm(平均値47.5dyne/cm))などを使用することができ、2−メチル−ブタン−2,3,4−トリオール(イソプレントリオールA(IPTL−A))を使用するのが好ましい。なお、添加剤として、1種のトリオールを使用してもよいし、2種以上のトリオールを使用してもよい。接合材中の添加剤としてのトリオールの含有量は、0.5〜10質量%であるのが好ましく、1〜7質量%であるのがさらに好ましい。
【0023】
また、接合材が焼結助剤を含んでもよい。この焼結助剤は、炭素数2〜6のジカルボン酸であるのが好ましく、ジグリコール酸またはマロン酸であるのがさらに好ましい。接合材中の焼結助剤の含有量は、0.001〜0.1質量%であるのが好ましく、0.005〜0.05質量%であるのがさらに好ましい。
【0024】
銀微粒子の平均一次粒子径は、接合材中の銀微粒子を200〜300℃の低温で加熱して銀を焼結させて銀接合層を形成することができるように、1〜100nmであるのが好ましく、40〜100nmであるのがさらに好ましい。また、接合材中の銀微粒子の含有量は、60〜90質量%であるのが好ましく、75〜90質量%であるのがさらに好ましい。
【0025】
また、接合材が平均粒径0.2〜10μm、好ましくは0.3〜1μmの銀粒子を含んでもよい。このようなミクロンサイズの銀粒子は、接合材中の銀微粒子を200〜300℃の低温で加熱して銀を焼結させると、融着した銀微粒子によって互いに連結されて、全体として銀接合層を形成することができる。この場合、接合材中の平均粒径0.2〜10μmの銀粒子の含有量が30質量%以下であり且つ銀微粒子の含有量と平均粒径0.2〜10μmの銀粒子の含有量の合計が60〜90質量%であるのが好ましい。
【0026】
銀微粒子は、接合材中で凝集するのを防止するために、炭素数8以下の有機化合物(例えば、炭素数8以下の脂肪酸またはアミン)で被覆されているのが好ましい。このような有機化合物として、ソルビン酸やヘキサン酸を使用することができ、第1の溶剤および第2の溶剤との分散性が良好になるように、ソルビン酸を使用するのが好ましい。
【0027】
なお、銀微粒子の平均一次粒子径は、例えば、銀微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ株式会社製のS−4700)または透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製のJEM−1011)により所定の倍率(例えば、粒径が20nm以下の場合はTEMにより180,000倍、20nmより大きく且つ30nm以下の場合はSEMにより80,000倍、30nmより大きく且つ100nm以下の場合はSEMにより50,000倍)で観察した像(SEM像またはTEM像)上の100個以上の任意の銀微粒子の一次粒子径から算出することができる。この銀微粒子の平均一次粒子径の算出は、例えば、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製のA像くん(登録商標))により行うことができる。
【0028】
また、接合材の25℃で測定した5rpmの粘度は、10〜30Pa・sであるのが好ましく、10〜20Pa・sであるのがさらに好ましい。また、接合材の25℃で測定した5rpmの粘度に対する1rpm(3.1[1/S])の粘度の比(1rpmの粘度/5rpmの粘度)(Ti値)が3.0〜5.0であるのが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明による接合材およびそれを用いた接合方法の実施例について詳細に説明する。
【0030】
[実施例1]
300mLビーカーに純水180.0gを入れ、硝酸銀(東洋化学株式会社製)33.6gを添加して溶解させることにより、原料液として硝酸銀水溶液を調製した。
【0031】
また、5Lビーカーに3322.0gの純水を入れ、この純水内に窒素を30分間通気させて溶存酸素を除去しながら、40℃まで昇温させた。この純水に(銀微粒子被覆用の)有機化合物としてソルビン酸(和光純薬工業株式会社製)44.8gを添加した後、安定化剤として28%のアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)7.1gを添加した。
【0032】
このアンモニア水を添加した後の水溶液を撹拌しながら、アンモニア水の添加時点(反応開始時)から5分経過後に、還元剤として純度80%の含水ヒドラジン(大塚化学株式会社製)14.91gを添加して、還元液として還元剤含有水溶液を調製した。反応開始時から9分経過後に、液温を40℃に調整した原料液(硝酸銀水溶液)を還元液(還元剤含有水溶液)へ一挙に添加して反応させ、さらに80分間撹拌し、その後、昇温速度1℃/分で液温を40℃から60℃まで昇温させて撹拌を終了した。
【0033】
このようにしてソルビン酸で被覆された銀微粒子(銀ナノ粒子)の凝集体を形成させた後、この銀微粒子の凝集体を含む液をNo.5Cのろ紙で濾過し、この濾過による回収物を純水で洗浄して、銀微粒子の凝集体を得た。この銀微粒子の凝集体を、真空乾燥機中において80℃で12時間乾燥させ、銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を得た。このようにして得られた銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を解砕して、2次凝集体の大きさを調整した。なお、この銀微粒子の平均一次粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めたところ、85nmであった。
【0034】
次に、このようにして2次凝集体の大きさを調整した(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(銀粒子1)86.0gと、第1の溶剤(溶剤1)としてのオクタンジオール(ODO)(協和発酵ケミカル株式会社製の2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、沸点243.0±8.0℃、粘度(25℃)178mPa・s、表面張力(25℃)34.4±3.0dyne/cm(平均値34.4dyne/cm))9.89gと、第2の溶剤(溶剤2)としてのジブチルジグリコール(DBDG)(日本乳化剤株式会社製、沸点254.6℃、粘度(25℃)2.4mPa・s、表面張力(25℃)28.7±3.0dyne/cm(平均値28.7dyne/cm))1.10gと、添加剤としての2−メチル−ブタン−2,3,4−トリオール(イソプレントリオールA(IPTL−A))(日本テルペン化学株式会社製、沸点255.5℃、粘度(25℃)5420mPa・s、表面張力(25℃)38.7dyne/cm)3.0gと、焼結助剤(焼結促進剤)としてのオキシジ酢酸(ジグリコール酸(DGA))(みどり化学株式会社製)0.01gを混合した。この混合物を混練脱泡機(株式会社EME社製のV−mini300型)により公転速度1400rpm、自転速度700rpmで30秒間混練した。この混練物を混合溶剤(日本アルコール販売株式会社製のソルミックスAP−7)で希釈して攪拌し、湿式ジェットミル装置(リックス株式会社製のRM−L1000EP)により解砕し、真空攪拌脱泡ミキサにより真空脱泡して全ての混合溶剤(ソルミックスAP−7)を蒸発させた後、希釈溶剤としてオクタンジオール(ODO)5.80gとジブチルジグリコール(DBDG)0.64gを添加して、80.8質量%の銀粒子1と14.73質量%のODOと1.64質量%のDBDGと2.82質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む銀ペーストからなる接合材を得た。
【0035】
この接合材の粘度をレオメーター(粘弾性測定装置)(Thermo社製のHAAKE Rheostress 600、使用コーン:C35/2°)により求めたところ、25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、25℃で測定した5rpmの粘度に対する1rpm(3.1[1/S])の粘度の比(1rpmの粘度/5rpmの粘度)(Ti値)は3.6であった。この粘度の測定は、せん断速度を1.6[1/S]、3.1[1/S]、6.3[1/S]、15.7[1/S]、31.3[1/S]、62.7[1/S]、156.7[1/S]と変化させて、各せん断速度になったときから20秒後の粘度を測定することによって行った。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.6質量%であった。
【0036】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を以下のようにグラインドゲージ(BYK社の50μmステンレススチール)により評価した。まず、グラインドゲージをアルコール溶剤(ソルミックス)で清掃して十分に乾燥させた後、グラインドゲージの溝が深い方(50μm側)に5〜10g程度の銀ペーストを置き、スクレーパを両手の親指と他の指で挟んで、スクレーパの長辺がグラインドゲージの幅方向と平行になり且つグラインドゲージの溝の深い先端に刃先が接触するようにスクレーパを置き、スクレーパをグラインドゲージの表面に垂直になるように保持しながら、溝の長辺に対して直角に均等な速度で溝の深さ0まで1〜2秒でグラインドゲージを引き終わって3秒以内に、銀ペーストの模様が見易いように光を当てて、銀ペーストに顕著な線が現れ始める部分を、溝の長辺に対して直角方向でグ且つグラインドゲージの表面に対して20〜30°の角度の方向から観察し、溝に沿って1本目に現れる線(1stスクラッチ、最大粒径Dmax)と4本目に現れる線(4thスクラッチ)の粒度を得るとともに、10本以上均一に現れる線の粒度として平均粒径D50を得た。なお、顕著な線が現れ始める前のまばらに現れる線は無視し、グラインドゲージは左右1本ずつあるため、その2本で示された値の平均値を測定結果とした。その結果、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。
【0037】
次に、30mm×30mm×1mmの銅基板(C1020)上に厚さ200μmのメタルマスクを配置し、スクリーン印刷機(パナソニックFSエンジニアリング株式会社製のSP18P−L)を使用してメタルスキージにより上記の接合材(銀ペースト)を10mm×10mmの大きさで厚さ(印刷膜厚)200μmになるように銅基板上に塗布した。この塗布膜を3D形状測定機(株式会社キーエンス製のマイクロスコープVR−3200)で観察したところ、塗布膜に泡は観察されなかった。
【0038】
その後、接合材を塗布した銅基板を金属バットに載せ、オーブン(ヤマト科学株式会社製)内に設置し、大気雰囲気中において120℃で20分間加熱して予備乾燥することにより、接合材中の溶剤を除去して予備乾燥膜を形成した。この予備乾燥膜を3D形状測定機(株式会社キーエンス製のマイクロスコープVR−3200)で観察したところ、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されなかった。
【0039】
次に、予備乾燥膜を形成した銅基板を25℃まで冷却した後、予備乾燥膜上に厚さ0.3mmの銀めっきが施された(8mm×8mmの大きさの)SiCチップを配置して、熱プレス機(DOWAエレクトロニクス社製)に設置し、大気雰囲気中において5.0MPaの荷重をかけながら、290℃まで約120秒間で昇温させ、290℃に達した後に90秒間保持する本焼成を行って、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によってSiCチップを銅基板に接合した接合体を得た。
【0040】
このようにして得られた接合体について、超音波顕微鏡(C−SAM SONOSCAN社製)により銀接合層のボイドの有無を観察したところ、ボイドは観察されなかった。
【0041】
[実施例2]
溶剤1としてのODO添加量を9.34g、溶剤2としてのDBDGの添加量を1.65gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ6.91gおよび1.22gとした以外は、実施例1と同様の方法により、79.5質量%の銀粒子1と15.06質量%のODOと2.66質量%のDBDGと2.77質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.5質量%であった。
【0042】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.7であった。
【0043】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0044】
[実施例3]
溶剤1としてのODOの添加量を8.79g、溶剤2としてのDBDGの添加量を2.20gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ6.88gおよび1.72gとした以外は、実施例1と同様の方法により、79.2質量%の銀粒子1と14.42質量%のODOと3.61質量%のDBDGと2.76質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.3質量%であった。
【0045】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.8であった。
【0046】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0047】
[実施例4]
溶剤1としてのODOの添加量を8.09g、溶剤2としてのDBDGの添加量を0.90g、 添加剤としてのIPTL−Aの添加量を5.0gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ5.56gおよび0.62gとした以外は、実施例1と同様の方法により、81.0質量%の銀粒子1と12.85質量%のODOと1.43質量%のDBDGと4.71質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.8質量%であった。
【0048】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.7であった。
【0049】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0050】
[実施例5]
溶剤1としてのODOの添加量を11.24g、溶剤2としてのDBDGの添加量を1.25g、添加剤としてのIPTL−Aの添加量を1.5gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ6.41gおよび0.71gとした以外は、実施例1と同様の方法により、80.3質量%の銀粒子1と16.46質量%のODOと1.83質量%のDBDGと1.40質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.1質量%であった。
【0051】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.4であった。
【0052】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0053】
[実施例6]
溶剤2としてDBDGの代わりにヘキシルジグリコール(HeDG)(日本乳化剤株式会社製、沸点260℃、粘度(25℃)8.6mPa・s、表面張力(25℃)32.3±3.0dyne/cm(平均値32.3dyne/cm))1.10gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO5.93gおよびHeDG0.66gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、80.7質量%の銀粒子1と14.83質量%のODOと1.65質量%のHeDGと2.81質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.5質量%であった。
【0054】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.5であった。
【0055】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0056】
[実施例7]
溶剤2としてDBDGの代わりに1−デカノール(和光純薬工業株式会社製、沸点227.8±3.0℃、粘度(25℃)1.38mPa・s、表面張力(25℃)29.9±3.0dyne/cm(平均値29.9dyne/cm))1.10gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO5.33gおよび1−デカノール0.59gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、81.2質量%の銀粒子1と14.36質量%のODOと1.60質量%の1−デカノールと2.83質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は80.0質量%であった。
【0057】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.5であった。
【0058】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0059】
[実施例8]
溶剤1としてのODOの添加量を8.79g(8.79質量%)とし、溶剤2としてDBDGの代わりに1−デカノール(和光純薬工業株式会社製)2.20gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO4.84gおよび1−デカノール1.21gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、81.1質量%の銀粒子1と12.85質量%のODOと3.21質量%の1−デカノールと2.83質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.9質量%であった。
【0060】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.6であった。
【0061】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0062】
[実施例9]
300mLビーカーに純水180.0gを入れ、硝酸銀(東洋化学株式会社製)33.6gを添加して溶解させることにより、原料液として硝酸銀水溶液を調製した。
【0063】
また、5Lビーカーに3322.0gの純水を入れ、この純水内に窒素を30分間通気させて溶存酸素を除去しながら、60℃まで昇温させた。この純水に(銀微粒子被覆用の)有機化合物としてソルビン酸(和光純薬工業株式会社製)44.8gを添加した後、安定化剤として28%のアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)7.1gを添加した。
【0064】
このアンモニア水を添加した後の水溶液を撹拌しながら、アンモニア水の添加時点(反応開始時)から5分経過後に、還元剤として純度80%の含水ヒドラジン(大塚化学株式会社製)14.9gを添加して、還元液として還元剤含有水溶液を調製した。反応開始時から9分経過後に、液温を60℃に調整した原料液(硝酸銀水溶液)を還元液(還元剤含有水溶液)へ一挙に添加して反応させた。反応開始時から25分経過した時点で、撹拌を終了した。
【0065】
このようにしてソルビン酸で被覆された銀微粒子(銀ナノ粒子)の凝集体を形成させた後、この銀微粒子の凝集体を含む液をNo.5Cのろ紙で濾過し、この濾過による回収物を純水で洗浄して、銀微粒子の凝集体を得た。この銀微粒子の凝集体を、真空乾燥機中において80℃で12時間乾燥させ、銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を得た。このようにして得られた銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を解砕して、2次凝集体の大きさを調整した。なお、この銀微粒子の平均一次粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めたところ、60nmであった。
【0066】
次に、このようにして2次凝集体の大きさを調整した(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(銀粒子2)21.5gと、実施例1と同様の方法により得られた平均一次粒子径85nmの(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(銀粒子1)64.5gとを銀微粒子の凝集体の乾燥粉末として使用し、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ7.19gおよび0.80gとした以外は、実施例1と同様の方法により、59.7質量%の銀粒子1と19.9質量%の銀粒子2と15.85質量%のODOと1.76質量%のDBDGと2.78質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.2質量%であった。
【0067】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.7であった。
【0068】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0069】
[実施例10]
焼結助剤としてオキシジ酢酸(ジグリコール酸)に代えてマロン酸0.01gを使用し、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ7.44gおよび0.83gとした以外は、実施例9と同様の方法により、58.5質量%の銀粒子1と19.5質量%の銀粒子2と17.34質量%のODOと1.93質量%のDBDGと2.72質量%のIPTL−Aと0.01質量%のマロン酸を含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.0質量%であった。
【0070】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.8であった。
【0071】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0072】
[実施例11]
実施例9と同様の方法により(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を得た後、この銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(銀粒子2)61.5gと、ミクロンサイズの銀粒子AG2−1C(DOWAエレクトロニクス社製、平均粒径(SEM像により求められる平均一次粒子径)0.3μm)(銀粒子3)20.5gとを、実施例1の銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(銀粒子1)に代えて使用し、溶剤1としてのODOの添加量を8.25g、溶剤2としてのDBDGの添加量を8.25g、添加剤としてのIPTL−Aの添加量を1.5gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ1.98gおよび1.98gとし、焼結助剤としてのオキシジ酢酸(ジグリコール酸)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、59.2質量%の銀粒子2と19.7質量%の銀粒子3と9.83質量%のODOと9.83質量%のDBDGと1.44質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.2質量%であった。
【0073】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.9であった。
【0074】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0075】
[実施例12]
溶剤1としてのODOの添加量を9.90g、溶剤2としてのDBDGの添加量を6.60gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ2.14gおよび1.43gとした以外は、実施例11と同様の方法により、59.4質量%の銀粒子2と19.8質量%の銀粒子3と11.61質量%のODOと7.74質量%のDBDGと1.45質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.5質量%であった。
【0076】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.9であった。
【0077】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0078】
[実施例13]
溶剤1としてのODOの添加量を11.55g、溶剤2としてのDBDGの添加量を4.95gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ2.13gおよび0.91gとした以外は、実施例11と同様の方法により、59.7質量%の銀粒子2と19.9質量%の銀粒子3と13.26質量%のODOと5.68質量%のDBDGと1.46質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.9質量%であった。
【0079】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.9であった。
【0080】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0081】
[実施例14]
溶剤1としてのODOの添加量を13.20g、溶剤2としてのDBDGの添加量を3.30gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ2.02gおよび0.50gとした以外は、実施例11と同様の方法により、60.0質量%の銀粒子2と20.0質量%の銀粒子3と14.83質量%のODOと3.71質量%のDBDGと1.46質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.3質量%であった。
【0082】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.9であった。
【0083】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0084】
[実施例15]
溶剤1としてのODOの添加量を14.85g、溶剤2としてのDBDGの添加量を1.65gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ1.81gおよび0.20gとした以外は、実施例11と同様の方法により、60.3質量%の銀粒子2と20.1質量%の銀粒子3と16.32質量%のODOと1.81質量%のDBDGと1.47質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.7質量%であった。
【0085】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.9であった。
【0086】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0087】
[実施例16]
溶剤2としてDBDGの代わりに1−デカノール(和光純薬工業株式会社製)8.25gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO2.19gおよび1−デカノール2.19gを添加した以外は、実施例11と同様の方法により、58.9質量%の銀粒子2と19.6質量%の銀粒子3と10.03質量%のODOと10.03質量%の1−デカノールと1.44質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.0質量%であった。
【0088】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.3であった。
【0089】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0090】
[実施例17]
溶剤2としてDBDGの代わりに1−デカノール(和光純薬工業株式会社製)6.60gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO2.30gおよび1−デカノール1.54gを添加した以外は、実施例12と同様の方法により、59.2質量%の銀粒子2と19.7質量%の銀粒子3と11.79質量%のODOと7.86質量%の1−デカノールと1.45質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.4質量%であった。
【0091】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.3であった。
【0092】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0093】
[実施例18]
溶剤2としてDBDGの代わりに1−デカノール(和光純薬工業株式会社製)4.95gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO2.32gおよび1−デカノール0.99gを添加した以外は、実施例13と同様の方法により、59.5質量%の銀粒子2と19.8質量%の銀粒子3と13.47質量%のODOと5.77質量%の1−デカノールと1.46質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.8質量%であった。
【0094】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.2であった。
【0095】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0096】
[実施例19]
溶剤2としてDBDGの代わりに1−デカノール(和光純薬工業株式会社製)3.30gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO2.23gおよび1−デカノール0.56gを添加した以外は、実施例14と同様の方法により、59.8質量%の銀粒子2と19.9質量%の銀粒子3と15.07質量%のODOと3.77質量%の1−デカノールと1.46質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.2質量%であった。
【0097】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.2であった。
【0098】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0099】
[実施例20]
溶剤2としてDBDGの代わりに1−デカノール(和光純薬工業株式会社製)1.65gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO2.05gおよび1−デカノール0.23gを添加した以外は、実施例15と同様の方法により、60.1質量%の銀粒子2と20.0質量%の銀粒子3と16.59質量%のODOと1.84質量%の1−デカノールと1.47質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.6質量%であった。
【0100】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.1であった。
【0101】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0102】
[実施例21]
溶剤2としてDBDGの代わりにヘキシルジグリコール(HeDG)(日本乳化剤株式会社製)8.25gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO1.99gおよびHeDG1.99gを添加した以外は、実施例11と同様の方法により、59.1質量%の銀粒子2と19.7質量%の銀粒子3と9.88質量%のODOと9.88質量%のHeDGと1.44質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.2質量%であった。
【0103】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.1であった。
【0104】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0105】
[実施例22]
溶剤1としてのODOの添加量を7.50g、溶剤2としてのDBDGの添加量を7.50g、添加剤としてのIPTL−Aの添加量を3.0gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ1.65gおよび1.65gとした以外は、実施例11と同様の方法により、59.5質量%の銀粒子2と19.8質量%の銀粒子3と8.90質量%のODOと8.90質量%のDBDGと2.90質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.3質量%であった。
【0106】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.1であった。
【0107】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0108】
[実施例23]
溶剤1としてのODOの添加量を8.00g、溶剤2としてのDBDGの添加量を8.00g、添加剤としてのIPTL−Aの添加量を2.0gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ1.92gおよび1.92gとした以外は、実施例11と同様の方法により、59.2質量%の銀粒子2と19.7質量%の銀粒子3と9.59質量%のODOと9.59質量%のDBDGと1.92質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は78.0質量%であった。
【0109】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.2であった。
【0110】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0111】
[実施例24]
実施例9と同様の方法により(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を得た後、この銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(銀粒子2)72.0gと、ミクロンサイズの銀粒子AG2−1C(DOWAエレクトロニクス社製、平均粒径0.3μm)(銀粒子3)10.0gとを、実施例1の銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(銀粒子1)に代えて使用し、溶剤1としてのODOの添加量を8.25g、溶剤2としてのDBDGの添加量を8.25g、添加剤としてのIPTL−Aの添加量を1.5gとし、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ2.75gおよび2.75gとし、焼結助剤としてのオキシジ酢酸(ジグリコール酸)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、68.3質量%の銀粒子2と9.5質量%の銀粒子3と10.40質量%のODOと10.40質量%のDBDGと1.40質量%のIPTL−Aを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は76.5質量%であった。
【0112】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.4であった。
【0113】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0114】
[実施例25]
添加剤としてのIPTL−Aの代わりに2−メチル−ブタン−1,3,4−トリオール(イソプレントリオールB(IPTL−B))(沸点278〜282℃、粘度(25℃)4050mPa・s、表面張力(25℃)47.5±1.0dyne/cm(平均値47.5dyne/cm))3.00gを添加し、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ2.84gおよび0.32gとした以外は、実施例1と同様の方法により、83.4質量%の銀粒子1と12.34質量%のODOと1.37質量%のDBDGと2.92質量%のIPTL−Bと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は82.8質量%であった。
【0115】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.4であった。
【0116】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡は観察されず、予備乾燥膜にクラックや剥離は観察されず、接合体の銀接合層にボイドは観察されなかった。
【0117】
[比較例1]
溶剤1としてのODO添加量を17.49gとし、溶剤2としてのDBDGを添加せず、希釈溶剤としてODOおよびDBDGの代わりにODO5.67gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、81.4質量%の銀粒子1と15.80質量%のODOと2.79質量%のIPTL−Aと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は79.9質量%であった。
【0118】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は3.3であった。
【0119】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡が形成され、予備乾燥膜にクラックが生じたが、予備乾燥膜の剥離は観察されなかった。また、接合体の銀接合層には予備乾燥膜のクラックを起点にしたボイドが観察された。
【0120】
[比較例2]
添加剤としてのIPTL−Aの代わりにジオール(IPDL−EtHex)(日本テルペン化学株式会社製、沸点287.8℃、粘度(25℃)90.2mPa・s、表面張力(25℃)30.3dyne/cm)3.0gを添加し、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ8.36gおよび0.93gとした以外は、実施例1と同様の方法により、78.6質量%の銀粒子1と16.55質量%のODOと1.84質量%のDBDGと2.74質量%のIPDL−EtHexと0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は77.5質量%であった。
【0121】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.5であった。
【0122】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡が形成され、予備乾燥膜にクラックや剥離が生じたが、予備乾燥膜の剥離は観察されなかった。また、接合体の銀接合層には予備乾燥膜のクラックを起点にしたボイドが観察された。
【0123】
[比較例3]
添加剤としてのIPTL−Aの代わりにジオール(IPDL−C8)(日本テルペン化学株式会社製、沸点308.1℃、粘度(25℃)65mPa・s、表面張力(25℃)30.86dyne/cm)3.0gを添加し、希釈溶剤としてのODOおよびDBDGの添加量をそれぞれ8.13gおよび0.90gとした以外は、実施例1と同様の方法により、78.9質量%の銀粒子1と16.28質量%のODOと1.81質量%のDBDGと2.75質量%のIPDL−C8と0.01質量%のDGAを含む接合材(銀ペースト)を得た。なお、銀ペースト中のAg濃度を熱減量法で求めたところ、Ag濃度は77.5質量%であった。
【0124】
この接合材(銀ペースト)中に含まれる銀粒子の粒度を実施例1と同様の方法により評価したところ、1stスクラッチは20μm未満、4thスクラッチは10μm未満、平均粒径D50は5μm未満であった。また、この接合材(銀ペースト)の粘度とTi値を実施例1と同様の方法により求めたところ、粘度は25℃において5rpm(15.7[1/S])で15(Pa・s)であり、Ti値は4.5であった。
【0125】
この接合材を用いて、実施例1と同様の方法により、塗布膜、予備乾燥膜および接合体を作製して観察したところ、塗布膜に泡が形成され、予備乾燥膜にクラックや剥離が生じた。また、接合体の銀接合層には予備乾燥膜のクラックを起点にしたボイドが観察された。
【0126】
[比較例4]
溶剤2としてDBDGの代わりにヘキサデカン(和光純薬工業株式会社、沸点286.6±3.0℃、粘度(25℃)3mPa・s、表面張力(25℃)27.3±3.0dyne/cm(平均値27.3dyne/cm)、非極性)1.10gを添加し、希釈溶剤としてODOおよびDBDGを添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、接合材(銀ペースト)の作製を試みたが、希釈溶剤としてODOおよびヘキサデカンを添加する前に分離が生じたため、各成分が分散不良で銀ペーストを作製することができなかった。
【0127】
これらの実施例および比較例の接合材の製造条件および特性を表1〜表2に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】