特許第6887672号(P6887672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887672
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20210603BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   H03F3/45 210
   H03F3/34 210
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-115198(P2017-115198)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-4226(P2019-4226A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】徳永 光紀
(72)【発明者】
【氏名】彌永 大児
(72)【発明者】
【氏名】小川 正則
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−310951(JP,A)
【文献】 特開2015−35683(JP,A)
【文献】 特開平9−260971(JP,A)
【文献】 特開昭58−027411(JP,A)
【文献】 特開平6−152271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/45
H03F 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動増幅可能に接続されて設けられた第1及び第2のトランジスタを有してなる差動増幅段と、前記差動増幅段のアクティブ負荷に対してベース電流の補償を行うベース電流補償回路とを具備してなる演算増幅器であって、
前記差動増幅段は、前記第1及び第2のトランジスタのアクティブ負荷となるカレントミラー回路を有し、前記カレントミラー回路は、第3及び第4のトランジスタを有してなり、前記第3及び第4のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、前記第4のトランジスタのコレクタと接続され、前記第4のトランジスタのコレクタは、前記第2のトランジスタのコレクタに接続される一方、前記第3のトランジスタのコレクタは、前記第1のトランジスタのコレクタに接続され、
前記第1のトランジスタからの出力信号は、ベースが前記第1のトランジスタの出力側に接続されてエミッタホロアとして動作するよう設けられた出力用の第5のトランジスタを介して出力可能とされ、
前記ベース電流補償回路は、第6乃至第10のトランジスタを有してなり、
カレントミラー回路を構成する前記第9及び第10のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、前記第9のトランジスタのコレクタと接続される一方、前記第9及び第10のトランジスタはエミッタが相互に接続されて電流源と接続され、
前記第7のトランジスタは、エミッタに負電源電圧が印加可能とされる一方、コレクタは前記第8のトランジスタのエミッタに、ベースは前記第3及び第4のトランジスタのベースに、それぞれ接続され、
前記第8のトランジスタは、コレクタが抵抗器を介して前記第9のトランジスタのエミッタに、ベースが前記第9のトランジスタのコレクタに、それぞれ接続され、
前記第10のトランジスタのコレクタは、前記第2のトランジスタのコレクタに接続される一方、前記第10のトランジスタのエミッタにはダイオードのアノードが接続され、前記ダイオードのカソードは前記第6のトランジスタのエミッタに接続され、前記第6のトランジスタのコレクタには負電源電圧が印加可能とされる一方、前記第6のトランジスタのベースは前記第2のトランジスタのコレクタに接続されてなることを特徴とする演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器に係り、特に、構成の簡素化と共に入力オフセット電圧の抑圧、低減等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
演算増幅器は、様々な電子回路に用いられており、その電気的特性の更なる向上等の観点から、回路構成等に関して種々提案、実用化がなされていることは良く知られている通りである。
かかる演算増幅器の重要な特性のひとつに入力オフセット電圧があるが、極力小さいことが望まれる。
【0003】
図4には、従来の演算増幅器の代表的な構成例が示されており、以下、同図について説明する。
この図4に示された演算増幅器は、特に、特許文献1において示された演算増幅器の基本的な回路構成部分を抜き出したものである。
【0004】
かかる演算増幅器は、トランジスタQ1A,Q2Aによる差動増幅段61と、カレントミラー回路を構成するトランジスタQ3A,Q4Aからなるアクティブ負荷62とに大別されて構成されてなるものである。
このような演算増幅器においては、システマチックに入力オフセット電圧が発生することを避けることができない。
【0005】
そのため、このシステマチックに発生する入力オフセット電圧を低減させる方策としては、例えば、特許文献2等において提案された回路がある。
図3には、特許文献2に開示された入力オフセット電圧の低減を図った演算増幅器の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この回路について概説する。
【0006】
この演算増幅器は、トランジスタQ1A,Q2Aによる差動増幅段61と、トランジスタQ3A,Q4Aによるアクティブ負荷62と、ベース電流補償回路63と、電圧増幅器Gmと、バッファ増幅器BFとに大別されて構成されたものとなっている。
かかる演算増幅器においては、差動増幅段61からの出力信号が電圧増幅器Gmで増幅され、さらにバッファ増幅器BFにより低インピーダンス信号に変換されて出力されるものとなっている。
この演算増幅器は、入力オフセット電圧を低減するために設けられた素子によって、入力電圧範囲が影響を受けて狭くなることがないという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3886090号公報
【特許文献2】特開2015−35683号公報
【非特許文献】
【0008】
「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術」培風館
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、システマチックに発生する入力オフセット電圧低減のための方策を図った上述の従来回路(図3参照)にあっても、ベース電流補償回路63を構成する素子であるトランジスタQ8Aのコレクタ・エミッタ間電位が小さくなり、不活性領域(飽和領域)での動作となる。そのため、トランジスタQ8Aのベース電流が増加し、トランジスタQ10Aから供給される補償電流も増加し、入力オフセット電圧の発生要因となるトランジスタQ1A,Q2Aのベース・エミッタ間電圧の差が大きくなることを十分に抑圧、低減することができず、入力オフセット電圧の低減が必ずしも満足できるものではないという問題がある。
【0010】
ここで、図3に示された演算増幅器においてシステマチックに発生する入力オフセット電圧について具体的に説明する。
最初に、前提条件として、トランジスタQ1AとQ2Aは同一の特性であり、トランジスタQ3A、Q4A、Q7A、及び、Q8Aも同一の特性であり、また、トランジスタQ5AとQ6Aも同一の特性であると仮定する。また、電流源CS2とCS3から出力される電流は同一の大きさであると仮定し、さらに、電圧増幅器Gmの入力インピーダンスは限りなく大きいと仮定する。
【0011】
また、説明を簡単にして理解を容易とするため、トランジスタQ10Aのエミッタ面積は、トランジスタQ9Aの3倍であるとする。
かかる前提の下、トランジスタQ1Aのコレクタに流れる電流ICQ1Aは、下記する式1Aで表される。
【0012】
ICQ1A=ICQ3A−IBQ5A=hfeQ3A×IBQ3A−ICS3/(hfeQ5A+1)・・・式1A
【0013】
ここで、ICQ3AはトランジスタQ3Aのコレクタ電流、IBQ5AはトランジスタQ5Aのベース電流、hfeQ3AはトランジスタQ3Aの電流増幅率、ICS3は第3の定電流源CS3の出力電流、hfeQ5AはトランジスタQ5Aの電流増幅率である。
トランジスタQ2Aのコレクタ電流ICQ2Aは、下記する式2Aで表される。
【0014】
ICQ2A=IBQ4A(1+hfeQ4A)+IBQ3A+IBQ7A−IBQ6A−ICQ10A・・・式2A
【0015】
ここで、IBQ4AはトランジスタQ4Aのベース電流、hfeQ4AはトランジスタQ4Aの電流増幅率、IBQ3AはトランジスタQ3Aのベース電流、IBQ7AはトランジスタQ7Aのベース電流、IBQ6AはトランジスタQ6Aのベース電流、ICQ10AはトランジスタQ10Aのコレクタ電流である。
【0016】
この2つの式より、トランジスタQ1Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ1Aは、下記する式3Aにより、トランジスタQ2Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ2Aは、下記する式4Aにより、それぞれ表される。
【0017】
VBEQ1A=Vtln(ICQ1A/Is)=Vtln[{hfeQ3A×IBQ3A−ICS3/(hfeQ5A+1)}/Is]・・・式3A
【0018】
VBEQ2A=Vtln(ICQ2A/Is)=Vtln[{(hfeQ4A+1)×IBQ4A+IBQ3A+IBQ7A−IBQ6A−ICQ10A}/Is]・・・式4A
【0019】
上記の式中、Vtは熱電圧、Isはバイポーラトランジスタの逆方向飽和電流である。
ここで、hfeQ3A=hfeQ4A=100、hfeQ5A=hfeQ6A=100、IBQ3A=IBQ4A=IBQ7A=0.1μA、ICS1=20μA、ICS2=ICS3=10μA、ICQ11A=ICS1/2とすると、トランジスタQ1Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ1Aは式5Aにより、トランジスタQ2Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ2Aは式6Aにより、それぞれ表される。
【0020】
VBEQ1A=Vtln(9.901μA/Is)・・・式5A
【0021】
VBEQ2A=Vtln{(10.3μA−IBQ6A−ICQ10A)/Is)}・・・式6A
【0022】
トランジスタが活性領域で動作するためには、式7Aに示すようにトランジスタのエミッタとコレクタ間の電位差VCEを、トランジスタのベース・エミッタ間の電位差VBEより大きくする必要がある。
【0023】
VCE≧VBE・・・式7A
【0024】
差動回路を構成するトランジスタQ3A,Q4Aは、同等の活性領域で動作しているものとし、ベース電流補償回路63を構成するトランジスタQ8Aのコレクタ・エミッタ間電圧VCEを導出するため、トランジスタQ8Aのコレクタ電位VCQ8Aとエミッタ電位VEQ8Aを、下記する式8A、式9Aにより求める。
【0025】
VCQ8A=VBEQ4A+VBEQ6A+VD1A−VBEQ11A・・・式8A
【0026】
VEQ8A=VBEQ4A+VBEQ6A+VD1A−VBEQ9A−VBEQ8A・・・式9A
【0027】
ここで、VBEQ4AはトランジスタQ4Aのベース・エミッタ間の電位差、VBEQ6AはトランジスタQ6Aのベース・エミッタ間の電位差、VD1AはダイオードD1Aの順方向電圧、VBEQ9AはトランジスタQ9Aのベース・エミッタ間の電位差、VBEQ8AはトランジスタQ8Aのベース・エミッタ間の電位差である。
【0028】
トランジスタQ8Aのコレクタ・エミッタ間の電位差VCEQ8Aは、式8Aから式9Aを差し引くことで導かれ、下記する式10Aのように表される。
【0029】
VCEQ8A=VBEQ8A+VBEQ9A−VBEQ11A・・・式10A
【0030】
ここで、トランジスタQ8AとトランジスタQ11Aは、同一特性であるとし、VBEQ8A=VBEQ11Aと近似すると、式10Aは下記する式11Aのように表される。
【0031】
VCEQ8A=VBEQ9A・・・式11A
【0032】
トランジスタQ8Aのコレクタ電流ICQ8AとトランジスタQ9Aのコレクタ電流ICQ9Aを比べると、コレクタ電流ICQ8Aはコレクタ電流ICQ9Aより十分に大きい。したがって、下記する式12A、式13Aが成立する。
【0033】
VBEQ9A<VBEQ8A・・・式12A
【0034】
VCEQ8A=VBEQ9A<VBEQ8A・・・式13A
【0035】
先に述べた通り、トランジスタが活性領域で動作するためには、式7Aに示されたように、トランジスタのエミッタ・コレクタ間の電位差VCEを、ベース・エミッタ間の電位差VBE以上とする必要がある。しかしながら、式13Aに示されたように、トランジスタQ8Aは、この条件を満たしていないため、不活性領域(飽和領域)での動作となる。
【0036】
不活性領域における電流増幅率が活性領域における電流増幅率より劣ることは、例えば、非特許文献1の「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術」にも記載されている通りである。したがって、不活性領域にあるトランジスタQ8Aの電流増幅率hfeQ8Aは、活性領域にある場合に比して低下することとなる。
トランジスタQ7Aのコレクタ電圧は、トランジスタQ8Aのエミッタ電圧と等しいので、下記する式14Aのように表される。
【0037】
VCEQ7A=VBEQ8A=VBEQ4A+VBEQ6A−VD1A−VBEQ9A−VBEQ8A・・・式14A
【0038】
ここで、VBEQ4A=VBEQ6A=VBEQ8A=VD1A=VBEと定義し、また、負電源電圧Vee=0とおくと、トランジスタQ7Aのコレクタ・エミッタ間電圧VCEQ7Aは、下記する式15Aのように表される。
【0039】
VCEQ7A=2VBE−VBEQ9A・・・式15A
【0040】
なお、トランジスタQ9Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ9Aは、式12Aに示されたようにトランジスタQ8Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ8Aより小さい。すなわち、式15Aに示すVCEQ7Aは、1VBEより大きくなり、トランジスタQ7Aは活性領域で動作することになる。
【0041】
これらを踏まえて、ICQ10Aを導出するために、トランジスタQ8Aのベース電流IBQ8Aを求める。なお、トランジスタQ7Aの電流増幅率hfeQ7Aを、hfeQ7A=100と仮定すると共に、トランジスタQ8Aの電流増幅率hfeQ8Aについては、先に述べたようにトランジスタQ8Aが不活性領域での動作状態にあることを考慮し、その電流増幅率が活性領域の電流増幅率より20%減少したと仮定して、hfeQ8A=80とする。
しかして、ベース電流IBQ8Aは、下記する式16Aのように表される。
【0042】
IBQ8A=(hfeQ7A×IBQ7A)/(hfeQ8A+1)=0.123μA・・・式16A
【0043】
また、トランジスタQ10Aのベース電流IBQ10Aは、トランジスタQ8Aのベース電流IBQ8Aを用いて下記する式17Aで表される。
【0044】
ICQ10A=(3・hfeQ10A×IBQ8A)/(hfeQ9A+4)=0.355μA・・・式17A
【0045】
ここで、トランジスタQ9A,Q10Aの電流増幅率であるhfeQ9A、hfeQ10Aを、hfeQ9A=hfeQ10A=100とした。
次に、トランジスタQ6Aのベース電流IBQ6Aを求める。
ベース電流IBQ6Aは、トランジスタQ9A,Q10Aのエミッタ電流IEQ9A、IEQ10A、及び、トランジスタQ11Aのベース電流IBQ11Aを用いて、下記する式18Aで表される。
【0046】
IBQ6A=(ICS2−IBQ11A−IEQ9A−IEQ10A)/(hfeQ6A+1)=・・・式18A
【0047】
トランジスタQ11Aのベース電流IBQ11Aは、トランジスタQ11Aの電流増幅率hfeQ11Aを用いて、下記する式19Aで与えられる。
【0048】
IBQ11A=(IBQ8A・hfeQ8A)/(hfeQ11A+1)=0.0974μA・・・式19A
【0049】
但し、トランジスタQ11Aの電流増幅率hfeQ11Aを、hfeQ11A=100とした。
また、トランジスタQ9A,Q10Aのエミッタ電流IEQ9A、IEQ10Aは、式16A、式17Aを用いて下記する式20Aで表される。
【0050】
IEQ9A+IEQ10A=IBQ8A+ICQ10A=0.123μA+0.355μA=0.478μA・・・式20A
【0051】
したがって、トランジスタQ6Aのベース電流IBQ6Aは、下記する式21Aで表される。
【0052】
IBQ6A=(ICS2−IBQ11A−IEQ9A−IEQ10A)/(hfeQ6A+1)=0.0933μA・・・式21A
【0053】
但し、ICS2=10μA、hfeQ6A=100とした。
したがって、トランジスタQ2Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ2Aは、式6Aに式21A、式17Aを代入し、下記する式22Aで与えられる。
【0054】
VBEQ2A=Vtln(9.852μA/Is)・・・式22A
【0055】
式3Aで求められるトランジスタQ1Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ1Aと式4Aで求められるトランジスタQ2Aのベース・エミッタ間の電位差VBEQ2Aの差が入力オフセット電圧Vioであり、下記する式23Aで表される。
なお、熱電圧VtはVt=26mVと仮定する。
【0056】
Vio=VBEQ2A−VBEQ1A=Vtln(9.852μA/9.901μA)=−0.129mV=−129μA・・・式23A
【0057】
このように、従来回路にあっては、ベース電流補償回路63を構成する素子であるトランジスタQ8Aのコレクタ・エミッタ間電位が小さくなり、不活性領域(飽和領域)での動作となるため、トランジスタQ8Aのベース電流が増加し、トランジスタQ10Aから供給される補償電流も増加し、そのため、入力オフセット電圧の要因となるトランジスタQ1A、Q2Aのベース・エミッタ間の電位差が大きくなってしまう。
【0058】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、入力電圧範囲を狭くすることなく、システマチックに発生する入力オフセット電圧を簡素な構成で確実に低減可能な演算増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0059】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る演算増幅器は、
差動増幅可能に接続されて設けられた第1及び第2のトランジスタを有してなる差動増幅段と、前記差動増幅段のアクティブ負荷に対してベース電流の補償を行うベース電流補償回路とを具備してなる演算増幅器であって、
前記差動増幅段は、前記第1及び第2のトランジスタのアクティブ負荷となるカレントミラー回路を有し、前記カレントミラー回路は、第3及び第4のトランジスタを有してなり、前記第3及び第4のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、前記第4のトランジスタのコレクタと接続され、前記第4のトランジスタのコレクタは、前記第2のトランジスタのコレクタに接続される一方、前記第3のトランジスタのコレクタは、前記第1のトランジスタのコレクタに接続され、
前記第1のトランジスタからの出力信号は、ベースが前記第1のトランジスタの出力側に接続されてエミッタホロアとして動作するよう設けられた出力用の第5のトランジスタを介して出力可能とされ、
前記ベース電流補償回路は、第6乃至第10のトランジスタを有してなり、
カレントミラー回路を構成する前記第9及び第10のトランジスタは、ベースが相互に接続されると共に、前記第9のトランジスタのコレクタと接続される一方、前記第9及び第10のトランジスタはエミッタが相互に接続されて電流源と接続され、
前記第7のトランジスタは、エミッタに負電源電圧が印加可能とされる一方、コレクタは前記第8のトランジスタのエミッタに、ベースは前記第3及び第4のベースに、それぞれ接続され、
前記第8のトランジスタは、コレクタが抵抗器を介して前記第9のトランジスタのエミッタに、ベースが前記第9のトランジスタのコレクタに、それぞれ接続され、
前記第10のトランジスタのコレクタは、前記第2のトランジスタのコレクタに接続される一方、前記第10のトランジスタのエミッタにはダイオードのアノードが接続され、前記ダイオードのカソードは前記第6のトランジスタのエミッタに接続され、前記第6のトランジスタのコレクタには負電源電圧が印加可能とされる一方、前記第6のトランジスタのベースは前記第2のトランジスタのコレクタに接続されてなるものである。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、入力電圧範囲を狭くすることなく、システマチックに発生する入力オフセット電圧を簡素な構成で確実に抑圧、低減でき、従来に比して、より安定性、信頼性の高い演算増幅器を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の実施の形態における演算増幅器の第1の回路構成例を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態における演算増幅器の第2の回路構成例を示す回路図である。
図3】従来回路の第1の回路構成例を示す回路図である。
図4】従来回路の第2の回路構成例を示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態における演算増幅器と従来回路における入力オフセット電圧と電源電圧との相関関係を示す特性線図である。
図6】本発明の実施の形態における演算増幅器と従来回路における入力オフセット電圧と同相入力電圧との相関関係を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2、並びに、図4及び図5を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における演算増幅器の第1の回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
【0063】
この演算増幅器は、差動増幅段51と、電圧増幅器(図1においては「Gm」と表記)11と、バッファ増幅器(図1においては「BF」と表記)12と、ベース電流補償回路52とに大別されて構成されたものとなっている。
この演算増幅器は、差動増幅段51により得られた出力信号を電圧増幅器11で増幅し、その増幅信号をバッファ増幅器12により低出力インピーダンスの信号に変換して出力するものであり、かかる動作は、従来回路と基本的に同様である。
【0064】
次に、かかる演算増幅器の回路構成について具体的に説明する。
差動増幅段51は、第1及び第2のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q1」、「Q2」と表記)1,2を主たる構成要素として差動増幅可能に構成されている。
PNP型の第1及び第2のトランジスタ1,2は、エミッタ同士が接続されると共に、その接続点と正電源電圧端子44との間には、第1の定電流源(図1においては「CS1」と表記)15が接続されている。なお、正電源電圧端子44には、外部から正電源電圧Vccが印加されるようになっている。
【0065】
第1のトランジスタ1のベースは、非反転入力端子41に、第2のトランジスタ2のベースは、反転入力端子42に、それぞれ接続されている。
また、第1のトランジスタ1のコレクタは、第3のトランジスタ3のコレクタ、及び、第5のトランジスタ(図1においては「Q5」と表記)5のベースに接続されると共に、位相補償用コンデンサ(図1においては「Cc」と表記)21を介して、電圧増幅器11の出力段に接続されている。
【0066】
一方、第2のトランジスタ2のコレクタは、第4のトランジスタ4のコレクタ、及び、第10のトランジスタ10のコレクタに接続されている。
NPN型の第3及び第4のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q3」、「Q4」と表記)3,4は、カレントミラー回路を構成し、第1及び第2のトランジスタ1,2のアクティブ負荷となっている。
【0067】
第3のトランジスタ3と第4のトランジスタ4は、ベースが相互に接続されると共に、第4のトランジスタ4のコレクタと接続されており、それぞれのエミッタは、負電源電圧端子45に接続されている。
【0068】
差動増幅段51の出力は、第5のトランジスタ5を介して電圧増幅器11に入力されるようになっている。
すなわち、PNP型の第5のトランジスタ5のエミッタは、第3の定電流源(図1においては「CS3」と表記)17を介して正電源電圧端子44に接続されると共に、電圧増幅器11の入力端子に接続されている。
【0069】
また、第5のトランジスタ5のコレクタは、負電源電圧端子45に接続されて、負電源電圧Veeが印加可能となっている。
電圧増幅器11の出力端子は、バッファ増幅器12の入力端子に接続され、バッファ増幅器12の出力端子は、出力端子43に接続されている。
上述の第5のトランジスタ5はエミッタホロアとして動作し、第1のトランジスタ1の出力信号は、第5のトランジスタ5を介して、さらに、電圧増幅器11及びバッファ増幅器12を経て出力されるようになっている。
【0070】
ベース電流補償回路52は、第6乃至10のトランジスタ(図1においては、それぞれ「Q6」、「Q7」、「Q8」、「Q9」、「Q10」と表記)6〜10を主たる構成要素として構成されている。
【0071】
この構成例においては、第6のトランジスタ6、第9のトランジスタ9、及び、第10のトランジスタ10にPNP型が、第7及び第8のトランジスタ7,8にNPN型が、それぞれ用いられている。
【0072】
第9及び第10のトランジスタ9,10は、カレントミラー回路を構成している。
すなわち、第9及び第10のトランジスタ9,10のベースが相互に接続されると共に、第9のトランジスタ9のコレクタと接続される一方、各々のエミッタが相互に接続されると共に、第2の定電流源(図1においては「CS2」と表記)16を介して正電源電圧端子44に接続されている。
【0073】
また、第8及び第7のトランジスタ8,7は、第9及び第10のトランジスタ9,10のエミッタと負電源電圧端子45との間に、直列接続されて設けられている。
すなわち、第8のトランジスタ8のコレクタは、第9及び第10のトランジスタ9,10のエミッタに、第8のトランジスタ8のエミッタは、第7のトランジスタ7のコレクタに、第7のトランジスタ7のエミッタは、負電源電圧端子45に、それぞれ接続されて直列接続されている。
【0074】
そして、第8のトランジスタ8のベースは、第9のトランジスタ9のコレクタに、第7のトランジスタ7のベースは、第4のトランジスタ4のベースに接続されている。
また、第9及び第10のトランジスタ9,10のエミッタと負電源電圧端子45との間には、ダイオード(図1においては「D1」と表記)13と第6のトランジスタ6が直列接続されて設けられている。
【0075】
すなわち、ダイオード13のアノードは、第9及び第10のトランジスタ9,10のエミッタに、ダイオード13のカソードは、第6のトランジスタ6のエミッタに、第6のトランジスタ6のコレクタは、負電源電圧端子45に、それぞれ接続されている。
また、第6のトランジスタ6のベースは、第4のトランジスタ4のコレクタに接続されている。
【0076】
次に、上述の構成を有する演算増幅器においてシステマチックに発生する入力オフセット電圧について説明する。
まず、システマチックに発生する入力オフセット電圧であるため、前提条件として、第1及び第2のトランジスタ1,2は同一特性、第3、第4,第7、及び第8のトランジスタ3、4、7、8は同一特性、第5及び第6のトランジスタ5,6は同一特性であるとする。
【0077】
また、電圧増幅器11の入力インピーダンスは無限大であると仮定する。
さらに、説明を簡単にして理解を容易とするため、第10のトランジスタ10のエミッタ面積は、第9のトランジスタ9の3倍であるとする。
【0078】
かかる前提の下、第1のトランジスタ1のコレクタに流れる電流ICQ1は、下記する式1で表される。
【0079】
ICQ1=ICQ3−IBQ5=hfeQ3×IBQ3−ICS3/(hfeQ5+1)・・・式1
【0080】
ここで、ICQ3は第3のトランジスタ3のコレクタ電流、IBQ5は第5のトランジスタ5のベース電流、hfeQ3は第3のトランジスタ3の電流増幅率、ICS3は第3の定電流源17の出力電流、hfeQ5は第5のトランジスタ5の電流増幅率である。
【0081】
第2のトランジスタ2のコレクタ電流ICQ2は、下記する式2で表される。
【0082】
ICQ2=IBQ4(1+hfeQ4)+IBQ3+IBQ7−IBQ6−ICQ10・・・式2
【0083】
ここで、IBQ4は第4のトランジスタ4のベース電流、hfeQ4は第4のトランジスタ4の電流増幅率、IBQ3は第3のトランジスタ3のベース電流、IBQ7は第7のトランジスタ7のベース電流、IBQ6は第6のトランジスタ6のベース電流、ICQ10は第10のトランジスタ10のコレクタ電流である。
【0084】
この2つの式より、第1のトランジスタ1のベース・エミッタ間の電位差VBEQ1は、下記する式3により、第2のトランジスタ2のベース・エミッタ間の電位差VBEQ2は、下記する式4により、それぞれ表される。
【0085】
VBEQ1=Vtln(ICQ1/Is)=Vtln[{hfeQ3×IBQ3−ICS3/(hfeQ5+1)}/Is]・・・式3
【0086】
VBEQ2=Vtln(ICQ2/Is)=Vtln[{(hfeQ4+1)×IBQ4+IBQ3+IBQ7−IBQ6−ICQ10}/Is]・・・式4
【0087】
上記の式中、Vtは熱電圧、Isはバイポーラトランジスタの逆方向飽和電流である。
ここで、条件を合わせるため、hfeQ3=hfeQ4=100、hfeQ5=hfeQ6=100、IBQ3=IBQ4=IBQ7=0.1μA、ICS1=20μA、ICS3=10μA、ICS2=ICS3+(ICS1/2)=20μとすると、第1のトランジスタ1のベース・エミッタ間の電位差VBEQ1は式5により、第2のトランジスタ2のベース・エミッタ間の電位差VBEQ2は式6により、それぞれ表される。
【0088】
VBEQ1=Vtln(9.901μA/Is)・・・式5
【0089】
VBEQ2=Vtln{(10.3μA−IBQ6−ICQ10)/Is)}・・・式6
【0090】
トランジスタが活性領域で動作するためには、式7に示すようにトランジスタのエミッタとコレクタ間の電位差VCEを、トランジスタのベース・エミッタ間の電位差VBEより大きくする必要がある。
【0091】
VCE≧VBE・・・式7
【0092】
差動増幅段51の構成要素である第3及び第4のトランジスタ3,4は、同等の活性領域で動作しているものとし、ベース電流補償回路52を構成する第8のトランジスタ8のコレクタ・エミッタ間電圧VCEを導出するため、第8のトランジスタ8のコレクタ電位VCQ8とエミッタ電位VEQ8を、下記する式8、式9により求める。
【0093】
VCQ8=VBEQ4+VBEQ6+VD1・・・式8
【0094】
VEQ8=VBEQ4+VBEQ6+VD1−VBEQ9−VBEQ8・・・式9
【0095】
第8のトランジスタ8のコレクタ・エミッタ間の電位差VCEQ8は、式8から式9を差し引くことで導かれ、下記する式10のように表される。
【0096】
VCEQ8=VBEQ8+VBEQ9・・・式10
【0097】
先に述べた通り、トランジスタが活性領域で動作するためには、式7に示されたように、トランジスタのエミッタ・コレクタ間の電位差VCEを、ベース・エミッタ間の電位差VBE以上とする必要がある。式10に示されたように、第8のトランジスタ8は、その条件を満たしており、活性領域での動作となるため、従来と異なり、第8のトランジスタ8の電流増幅率(hfeQ8)の低下は生じない。
【0098】
このことを踏まえ、第10のトランジスタ10のコレクタ電流ICQ10を導出するために、第8のトランジスタ8のベース電流IBQ8と、第9のトランジスタ9のベース電流IBQ9を求めると、次の式11、式12により表されるものとなる。
【0099】
IBQ8=(hfeQ7×IBQ7)/(hfeQ8+1)=0.099μA・・・式11
【0100】
IBQ9=IBQ8/(hfeQ9+4)・・・式12
【0101】
なお、hfeQ7とhfeQ8は、第7及び第8のトランジスタ7,8の電流増幅率であり、それぞれの大きさをhfeQ7=hfeQ8=100とする。
第10のトランジスタ10のコレクタ電流ICQ10は、第9のトランジスタ9のベース電流IBQ9をhfe倍した値を3倍(第9及び第10のトランジスタ9,10によるカレントミレー回路のカレントミラー比)した値となるので、第8のトランジスタ8のベース電流IBQ8を用いて、下記する式13により表される。
【0102】
ICQ10=(3×hfeQ10×IBQ8)/(hfeQ9+4)=0.286μA・・・式13
【0103】
ここで、hfeQ9とhfeQ10は、第9及び第10のトランジスタ9,10の電流増幅率であり、それぞれの大きさをhfeQ9=hfeQ10=100とした。
次に、第6のトランジスタ6のベース電流IBQ6を求める。ベース電流IBQ6は、第9及び第10のトランジスタ9,10のエミッタ電流IEQ9 ,IEQ10を用いて、下記する式14、式15で表される。
【0104】
IBQ6=(ICS2−ICQ8−IEQ9−IBQ10)/(hfeQ6+1)・・・式14
【0105】
ICQ8=IBQ8×hfeQ8=9.90μA・・・式15
【0106】
なお、式15においては、第8のトランジスタ8の電流増幅率hfeQ8は、hfeQ8=100と仮定した。
【0107】
次に、第9及び第10のトランジスタ9,10のエミッタ電流IEQ9、IEQ10は、先の式11、式13を用いて下記する式16により表される。
【0108】
IEQ9+IEQ10=IBQ8+ICQ10=0.099μA+0.286μA=0.385μA・・・式16
【0109】
したがって、第6のトランジスタ6のベース電流IBQ6は、式14に式15及び式16の値を代入して、下記する式17で表される。
なお、ICS2=20μA、hfeQ6=hfeQ6=100と仮定する。
【0110】
IBQ6=(ICS2−ICQ8−IEQ9−IEQ10)/(hfeQ6+1)=(20μA−9.9μA−0.385μA)/(100+1)=0.0962μA・・・式17
【0111】
したがって、第2のトランジスタ2のベース・エミッタ間の電位差VBEQ2は、式6に式13、式17を代入し、下記する式18で与えられる。
【0112】
VBEQ2=Vtln(9.918μA/Is)・・・式18
【0113】
しかして、式3のVBEQ1と式4のVBEQ2の差が入力オフセット電圧Vioであり、下記する式19で表される。なお、熱電圧VtはVt=26mVと仮定する。
【0114】
Vio=VBEQ2−VBEQ1=Vtln(9.918μA/9.901μA)=0.044mV=44μV・・・式19
【0115】
先に、図3に示された従来回路において、システマチックな入力オフセット電圧Vioは、式23Aに示されたようにVio=−129μAであったのに対して、上述のように本発明の実施の形態における第1の回路構成例においては、従来回路に比して少ない部品点数で、式19で求められたように、入力オフセット電圧が確実に低減されるものとなっている。
【0116】
また、本発明の演算増幅器においては、上述のように入力オフセット電圧低減を図った結果、入力オフセット電圧の低減効果だけでなく、第1の定電流源15から出力される電流の電圧依存性を抑圧、低減するという副次的な効果をもたらすものとなっている。
【0117】
すなわち、上述した第1の回路構成例においては、差動増幅段51におけるアクティブ負荷を構成する第3及び第4のトランジスタ3,4のベース電流が補償される構成が採られている。そのため、第1の定電流源15の電流が変化しても、このベース電流能力に影響を与えることがないため、電圧依存性が抑圧、低減されるものとなってる。
【0118】
図5には、入力オフセット電圧の電源電圧依存性の特性例が、従来回路のものと共に示されており、以下、同図について説明する。
同図において、実線で表された特性線は従来回路(図4参照)の電源電圧の変動に対する入力オフセット電圧の変化特性例を示しており、電源電圧の増加と共に入力オフセット電圧が増加していることが確認できる。
【0119】
一方、第1の回路構成例と、後述する第2の回路構成例における電源電圧の変動に対する入力オフセット電圧の変化特性例は、殆ど一致する変化を示すものとなっており、図5においては、いずれも点線の特性線で表されている。
同図によれば、いずれの回路構成例も、電源電圧が増大しても入力オフセット電圧は殆ど変化することなくフラットであり、本発明を適用することで入力オフセット電圧の変動を抑制可能であることが理解できる。
【0120】
さらに、本発明の演算増幅器においては、上述のように入力オフセット電圧低減を図った結果、入力オフセット電圧の低減効果だけでなく、差動増幅段51において、その入力電圧が変化することによる第1の定電流源15の出力電流への影響が低くなり、出力電流の変動が低減、抑圧されるものとなっている。
【0121】
またさらに、本発明に係る差動増幅器にあっては、従来回路(図3参照)と異なり、第8のトランジスタ8(従来回路においてはトランジスタQ8A)が不活性領域での動作状態とならないため、入力オフセット電圧特性の高精度化を図ることができ、部品点数の削減によるチップ面積の縮小が可能となる。
【0122】
次に、第2の回路構成例について、図2を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、図1に示された第1の回路構成例に、さらに、抵抗器(図2においては「R1」と表記)31が追加された構成を有するものである。
【0123】
すなわち、抵抗器31は、第8のトランジスタ8のコレクタと第9のトランジスタ9のエミッタとの間に直列接続されて設けられている。
この第2の回路構成例においては、抵抗器31によって第8のトランジスタ8のコレクタ・エミッタ間の電圧調整が可能となっている。
【0124】
以下に、第8のトランジスタ8のコレクタ・エミッタ間の電圧調整について説明する。
まず、アクティブ負荷を構成する第3及び第4のトランジスタ3,4は、同等の活性領域で動作しているものとし、ベース電流補償回路52を構成する第7及び第8のトランジスタ7,8のコレクタ・エミッタ間電圧VCEを導出するため、第8のトランジスタ8のコレクタ電位VCQ8とエミッタ電位VEQ8を、下記する式20、式21により求める。
【0125】
VCQ8=VBEQ4+VBEQ6+VD1−R1・ICQ8・・・式20
【0126】
VEQ8=VBEQ4+VBEQ6+VD1−VBEQ9−VBEQ8・・・式21
【0127】
なお、式20において、R1は抵抗器31の抵抗値である。
第8のトランジスタ8のコレクタ・エミッタ間の電位差VCEQ8は、式20から式21を差し引くことで導かれ、下記する式22のように表される。
但し、VBEQ4=VBEQ6=VBEQ8=VD1≒VBEと近似する。
【0128】
VCEQ8=1・VBE+VBEQ9−R1・ICQ8・・・式22
【0129】
式22に示されたように、第8のトランジスタ8のコレクタ・エミッタ間電圧VCEQ8は、抵抗器31により所望の大きさに調整可能である。
したがって、第8のトランジスタ8のアーリー効果による第8のトランジスタ8のベース電流の変化を抑制することができ、システマティクな入力オフセット電圧の悪化を抑制することができる。
【0130】
なお、上述の抵抗器31による第8のトランジスタ8のコレクタ・エミッタ間電圧VCEQ8を調整可能とし、それによって、アーリー効果による第8のトランジスタ8のベース電流の変化を抑制し、システマティクな入力オフセット電圧の悪化を抑制可能とした点を除けば、この第2の回路構成における回路動作、機能、入力オフセット電圧低減による他の効果等については、先に第1の回路構成例において説明したものと同様であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0131】
入力電圧範囲を狭くすることなく、システマチックに発生する入力オフセット電圧の確実な抑圧、低減が所望される演算増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0132】
11…電圧増幅器
12…バッファ増幅器
51…差動増幅段
52…ベース電流補償回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6