【実施例】
【0024】
以下、本発明の一実施例に係る研削装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0025】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0026】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。なお、本実施例において、「上」、「下」の語は、鉛直方向における上方、下方に対応するものとする。
【0027】
図1は、研削装置1の基本的構成を示す斜視図である。
図2は、ドレスユニット5の斜視図である。
【0028】
研削装置1は、研削手段2でウェハWを裏面研削して薄膜に形成する。ウェハWは、例えば、シリコン基板等である。研削手段2は、研削砥石21と、スピンドル22と、を備えている。
【0029】
研削砥石21は、スピンドル22の先端に水平に取り付けられたカップ型砥石である。研削砥石21がウェハWに押し当てられることにより、ウェハWが研削される。研削砥石21は、例えば#8000を用いて、厚み5mmに形成される。
【0030】
スピンドル22は、図示しないモータによって回転軸を中心として回転方向C1に沿って研削砥石21を回転させる。スピンドル22は、図示しないスピンドル送り機構によって鉛直(Z軸)方向に送られる。スピンドル送り機構は、公知の構成であり、例えば、2本のリニアガイドとボールネジスライダ機構とで構成されている。
【0031】
研削手段2の下方には、保持手段としてのウェハチャック3が配置されている。なお、複数のウェハWを連続して研削加工するために、インデックステーブル4上に複数のウェハチャック3を配置しても構わない。複数のウェハチャック3は、インデックステーブル4の回転軸を中心に円周上で所定の間隔を空けて配置されている。
【0032】
ウェハチャック3は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。ウェハチャック3は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、ウェハチャック3に載置されたウェハWがウェハチャック3に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ウェハWとウェハチャック3との吸着が解除される。
【0033】
ウェハチャック3は、図示しないモータによって回転方向C2に沿って回転可能に構成されている。
【0034】
ウェハチャック3は、研削砥石21の回転軸に対してウェハチャック3の回転軸を傾斜させる図示しないチャック傾斜機構を備えたものであっても構わない。チャック傾斜機構は、例えば、ウェハチャック3を載置するチルトテーブルと、チルトテーブルをZ軸方向に固定する固定支持部と、Z軸方向に伸縮してチルトテーブルを固定支持部まわりに傾斜させる可動支持部と、を備えた構成が考えられるが、この構成に限定されるものではない。
【0035】
研削装置1は、研削砥石21をドレスするドレスユニット5を備えている。ドレスユニット5は、ドレスボード51と、ドレスベース機構52と、を備えている。
【0036】
ドレスボード51は、研削砥石21に対向するように配置されて研削砥石21をドレスするドレス材51aと、ドレス材51aを支持するドレス台51bと、を備えている。ドレス材51aは、研削砥石21よりも高度の小さい材料であり、例えばホワイトアルミナ及び結合剤で形成されている。ドレス材51aは、例えば直径60mmに設定される。
【0037】
ドレスベース機構52は、ドレスボード51を回転可能に支持している。ドレスベース機構52は、ドレスボード51をボルトで固着したり、またはドレスボード51を吸着保持するように構成されている。これにより、ドレスボード51が摩耗した場合には、ドレスボード51を交換することができる。
【0038】
ドレスベース機構52は、スライドボード53の先端側に載置されている。スライドボード53は、X軸方向に延伸されている。スライドボード53は、第1の移動機構6と、第2の移動機構7と、を介してベース54に連結されている。
【0039】
第1の移動機構6は、ボールネジ61と、スライダ62と、ボールネジナット63と、モータ64と、を備えている。ボールネジ61は、上部ベース54aに設けられ、Z軸方向に延伸されている。スライダ62は、ボールネジ61に螺合されてスライドボード53の基端に連結されている。ボールネジナット63は、ボールネジ61の後端に設けられている。モータ64は、ボールネジ61の上端に連結されており、モータ64が駆動すると、ボールネジ61が回転し、ボールネジ61の回転方向に応じてスライダ62が上下に移動してスライドボード53が上部ベース54aに対して相対的に昇降移動する。
【0040】
ボールネジ61のY軸方向の両側には、2本の第1のリニアガイド65が配置されている。第1のリニアガイド65は、上部ベース54aとスライドボード53との間に介装されている。第1のリニアガイド65は、スライドボード53の基端に連結されてスライドボード53を支持するスライダ65aを備えている。
【0041】
第2の移動機構7は、ボールネジ71と、図示しないスライダと、ボールネジナット72と、図示しないモータと、を備えている。ボールネジ71は、X軸方向に延伸され、上部ベース54aと下部ベース54bとの間に介装されている。スライダは、ボールネジ71に螺合されて上部ベース54aの裏面に連結されている。ボールネジナット72は、ボールネジ71の先端に設けられている。モータは、ボールネジ71の基端に連結されており、モータが駆動すると、ボールネジ72が回転し、ボールネジ71の回転方向に応じてスライダが前後に移動して上部ベース54aが下部ベース54bに対して相対的に進退移動する。
【0042】
ボールネジ71のY軸方向の両側には、2本の第2のリニアガイド73が配置されている。第2のリニアガイド73は、下部ベース54bに設けられている。第2のリニアガイド73は、上部ベース54aの裏面に連結されて上部ベース54aを支持するスライダ73aを備えている。
【0043】
ドレスユニット5には、ドレスボード51の高さ(厚み)を測定する第1の測定手段8と、研削砥石21の高さ(厚み)を測定する第2の測定手段9と、が設けられている。
【0044】
第1の測定手段8は、第1のタッチセンサ81と、第1の演算部82と、を備えている。第1のタッチセンサ81は、スライドボード53を跨ぐように形成された門型のコラム55に設けられている。
【0045】
第2の測定手段9は、第2のタッチセンサ91と、第2の演算部92と、を備えている。第2のタッチセンサ91は、スライドボード53の先端に設けられている。なお、第1の測定手段8、第2の測定手段9は、非接触式のセンサを有するものであっても構わないが、タッチセンサを採用することにより、低コストで第1の測定手段8、第2の測定手段9を構成することができる。
【0046】
ドレスユニット5は、研削砥石21の回転軸に対してドレスボード51の回転軸を傾斜させる図示しないドレス傾斜機構を備えたものであっても構わない。ドレス傾斜機構は、例えば、ドレスボード51を載置するチルトテーブルと、チルトテーブルをZ軸方向に固定する固定支持部と、Z軸方向に伸縮してチルトテーブルを固定支持部まわりに傾斜させる可動支持部と、を備えるように構成することが、この構成に限定されるものではない。
【0047】
研削装置1の動作は、制御装置10によって制御される。制御装置10は、研削装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置10は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置10の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0048】
制御装置10は、第1の演算部82が計測したドレスボード51の高さ及び第2の演算部92が計測した研削砥石21の高さに基づいて、研削砥石21とドレスボード51との距離を調整する。なお、研削砥石21の高さ及びドレスボード51の高さを測定する測定手段は、上述した構成に限定されず、非接触式のものであっても構わない。また、制御装置10には、研削加工開始前のドレスボード51と研削砥石21との距離、いわゆるエアカット距離が予め記憶されている。なお、制御装置10は、第1の演算部82、第2の演算部92として機能するものであっても構わない。
【0049】
次に、ドレスユニット5の作用について、図面に基づいて説明する。
図3は、ドレスボード51と研削砥石21の位置合わせを行う手順を示す模式図である。
図4は、ドレスユニット5の待機位置を示す斜視図である。
図5は、ドレスボード51の高さを測定している様子を示す斜視図である。
図6は、研削砥石21の高さを測定している様子を示す斜視図である。
図7は、研削砥石21をドレスする様子を示す斜視図である。
図8は、第2のタッチセンサ91を省略した、研削砥石21、ウェハチャック3及びドレスユニット5の配置関係を示す模式図である。
図9は、ドレスボード51の傾きに応じて研削砥石21の研削面角度を調整する様子を示す模式図である。
【0050】
図3(a)に示すように、第2の移動機構7を駆動させて、ドレスボード51を第1のタッチセンサ81の直下に位置する第1の初期位置まで、待機位置のドレスユニット5をX軸方向の前方に移動させる。なお、
図4に示すように、待機位置のドレスユニット5は、ドレス材51aが第1のタッチセンサ81の直下に設定しても構わない。なお、第1の初期位置とは、ドレスボード51を第1のタッチセンサ81に接近させる(Z軸方向に上昇させる)前の位置をいう。
【0051】
次に、
図3(b)及び
図5に示すように、第1の移動機構6を駆動させて、ドレスボード51を第1のタッチセンサ81に接触するまで、ドレスボード51をZ軸方向の上方に上昇させる。第1のタッチセンサ81がドレスボード51に接触すると、モータ64が逆回転して、スライドボード53が下降する。第1の演算部82は、第1の初期位置からドレスボード51が第1のタッチセンサ81に接触する第1の接触位置までのモータ64の回転数を記憶する。
【0052】
第1の演算部82は、第1の初期位置から第1の接触位置までのモータ64の回転数に基づいて第1の移動機構6のZ軸方向の上昇量を演算する。また、第1の演算部82は、スライドボード53をZ軸方向に上昇する前のドレスボード51を支持するスライドボード53と第1のタッチセンサ81との間の既知の初期距離から上述した第1の移動機構6のZ軸方向の上昇量を減じることにより、ドレスボード51の高さ(厚み)を演算する。なお、第1の演算部82は、スライドボード53と第1のタッチセンサ81までの初期距離が予め記憶されている。
【0053】
次に、第2の移動機構7を駆動させて、第2のタッチセンサ91が研削砥石21の直下に位置する第2の初期位置まで、ドレスユニット5をX軸方向の前方に移動させる。なお、第2の初期位置とは、スライドボード53を第2のタッチセンサ91に接近させる(Z軸方向に上昇させる)前の位置をいう。
【0054】
次に、
図3(c)及び
図6に示すように、第1の移動機構6を駆動させて、研削砥石21が第2のタッチセンサ91に接触するまで、スライドボード53をZ軸方向の上方に上昇させる。第2のタッチセンサ91が研削砥石21に接触すると、モータ64が逆回転して、スライドボード53が下降する。第2の演算部92は、第2の初期位置から研削砥石21が第2のタッチセンサ91に接触する第2の接触位置までのモータ64の回転数を記憶する。
【0055】
第2の演算部92は、第2の初期位置から第2の接触位置までのモータ64の回転数に基づいて第1の移動機構6のZ軸方向の上昇量を演算する。また、第2の演算部92は、スライドボード53をZ軸方向に上昇する前の第2のタッチセンサ91と研削砥石21を支持するスピンドル22との間の既知の初期距離から上述した第1の移動機構6のZ軸方向の上昇量を減じることにより、研削砥石21の高さ(厚み)を演算する。なお、第2の演算部92には、スピンドル22と第2のタッチセンサ91までの初期距離が予め記憶されている。
【0056】
次に、
図3(d)及び
図7に示すように、制御装置10は、第1の演算部82が演算したドレスボード51の高さ及び第2の演算部92が演算したドレスボード51の高さに基づいて、ドレスボード51と研削砥石21とをエアカット距離まで接近させる。その後、所定の手順に従って、研削砥石21及びドレスボード51をそれぞれ回転させながら研削砥石21をドレスボード51に押し当てることにより、研削砥石21がドレッシングされる。
【0057】
研削砥石21のドレッシング後に、研削砥石21の高さを第2のタッチセンサ91で再測定する。その後、研削砥石21をウェハWにエアカット距離まで接近させて、研削砥石21及びウェハWをそれぞれ回転させながら研削砥石21をウェハWに押し当てることにより、ウェハWの研削加工を行う。例えば、研削砥石21の回転数は1800rpm、ウェハWの回転数は301rpmに設定される。研削砥石21の下降速度は、例えば0.5μm/secに設定される。研削後には、ウェハWのスパークアウトを15秒行う。
【0058】
なお、
図8に示すように、ドレス材51aの頂面をウェハWの裏面と面一に位置決めすることにより、ウェハWの裏面研削と研削砥石21のドレッシングを同時に行うことができる。
【0059】
また、ドレスボード51をドレス傾斜機構で傾斜させることにより、研削砥石21の砥石面21aに任意の傾斜角を形成することができる。これにより、研削後のウェハWと研削砥石21との接触状態をドレスボード51の傾きに応じて間接的に規定することができる。
【0060】
例えば、研削砥石21を外周端部が内周端部より厚い中央凸状に形成する場合には、
図9(a)に示すように、ドレスボード51のX軸方向の先端側を基端側より上昇させる。なお、ドレスボード51の傾斜角と研削面21aの傾斜角とは略一致する。
【0061】
また、研削砥石21を外周端部が内周端部より薄い中央凹状に形成する場合には、
図9(b)に示すように、ドレスボード51のX軸方向の基端側を先端側より上昇させる。
【0062】
このようにして、上述した研削装置1は、研削砥石21とドレスボード51との距離を予め測定し、研削砥石21とドレスボード51とをエアカット距離まで接近させることができるため、ドレスボード51の交換後等に研削砥石21とドレスボード51とを事前に接触させて研削砥石21とドレスボード51との接触点を起点にしてエアカット距離だけ研削砥石21を退避させることなく、研削砥石21のドレッシングをスムーズに行うことができる。
【0063】
また、スライドボード53の先端に第2のタッチセンサ91が設けられていることにより、ドレスユニット5を省スペースで設けることができる。
【0064】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。