(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態に係る旋回装置を説明する。なお、この第1実施形態は、本発明の基本的な概念を説明するための例であって、より具体的な構成例については別の実施形態として説明する。以下においては、まず、この旋回装置のために用いられる走行体及び天井面(走行面)の第1〜第3構成例について、
図1〜
図13を参照しながら説明する。
【0018】
(走行体及び天井面の構成)
第1構成例の走行体2は、フレーム21と、無限軌道22とを備えており、天井面(走行面)1に沿って移動可能とされている。
【0019】
(天井面)
天井面1は、走行体2の移動方向に沿って所定のピッチで形成された複数の穴11を備えている。したがって、例えば、走行体2をX−Y平面の二次元方向で移動させたい場合は、2次元方向においてそれぞれ所定のピッチで穴11を形成することが望ましい。
【0020】
(フレーム)
フレーム21は、天井面1に沿う方向に延長されたスライド面2111を有するスライド板211を備えている。また、フレーム21は、重量物3を支持するための重量物支持部215を備えている。なお、本実施形態において重量物3は、人であってもよい。
【0021】
(無限軌道)
無限軌道22は、履帯221と、複数の係合部222と、スライド部223とを備えている。
【0022】
履帯221は、フレーム21に対して、少なくとも一方向に(図示例では反時計方向に)回転可能となるように取り付けられている。また、履帯221には、複数の係合部222とスライド部223とがそれぞれ取り付けられている。
【0023】
スライド部223は、履帯221と共に回転する通過軌跡のうち、スライド面2111と対向する位置において、スライド面2111を下方から支持する構成となっている。
【0024】
複数の係合部222は、履帯221と共に回転する通過軌跡のうち、天井面1と対向する位置において、天井面1に対して拘束される構成となっている。すなわち、本構成例における複数の係合部222は、その回転軌跡のうちで、天井面1に近接した時点で、天井面1の穴11に拘束され、天井面1から離れる時点で天井面1の穴11から解放される構成となっている。
【0025】
複数の係合部222どうしは、天井面1の穴11における所定のピッチと同じ間隔で離間されている。これにより、複数の係合部222は、履帯221の回転に伴って対向することになる複数の穴11に係合される構成となっている。
【0026】
本例のフレーム21における荷重(すなわち、走行体2の自重、又は、重量物支持部215により支持された重量物3の重量)は、スライド板211(つまりスライド面2111)、スライド部223及び係合部222を順次介して、天井面1により支持される構成となっている(
図2参照)。
【0027】
(走行体の動作)
次に、前記した装置を用いた重量物の移動方法を説明する。まず、
図1に示されるように、複数の係合部222を、対応する天井面1の穴11に挿入する。この状態では、本構成例の係合部222の先端は、天井面1の穴11に係合しており、係合部222が落下しないようになっている(
図2参照)。なお、係合部222の詳しい構成例については後述する。
【0028】
ついで、フレーム21の重量物支持部215により、重量物3を支持させる。この状態では、重量物3の重量は、フレーム21の重量物支持部215、スライド板211のスライド面2111、無限軌道22のスライド部223、係合部222を順次介して、天井面1により支持される。
図2には、理解の容易のため、各部材に作用する荷重の流れを概略的に破線で示した。
【0029】
したがって、この走行体2によれば、重量物3の重量を、フレーム21を介して天井面1により支持することができる。
【0030】
ついで、重量物3を移動させるためには、無限軌道22の履帯221を、フレーム21に対して回転(
図1においては図中反時計方向に回転)させる。履帯221は、係合部222を介して天井面1に拘束されているので、履帯221の回転に伴い、フレーム21、すなわち走行体2全体は、天井面1に沿って移動することができる。
図1の例では、図中右方向に移動することができる。
【0031】
ここで、この構成例では、天井面1の穴11に係合した係合部222が、履帯221の回転に伴って、履帯221の進行方向における後端部(
図1において左端部)の近傍に達すると、当該係合部222は、天井面1の穴11から離脱するようになっている。
【0032】
一方、天井面1とは反対側の位置にある履帯221に取り付けられた係合部222は、履帯221の回転に伴って、履帯221の進行方向における前端部(
図1において右端部)の近傍に達する。すると、当該係合部222は、天井面1の穴11に接近して、この穴11に係合する。このようにして、本構成例では、履帯221の回転を続けて、走行し続けることができる。
【0033】
また、本構成例では、無限軌道22のスライド部223は、履帯221の回転に従って、スライド面2111を支持しながら移動することができる。
【0034】
本構成例では、複数の係合部を用いたので、履帯221の回転に伴って順次天井面1から係合部222を解放しつつ、後続の係合部を天井面1に拘束することによって、フレーム21への荷重を支持することができる。したがって、履帯221を回転させることにより、荷重を支持しながら走行体2を天井面1に沿って移動させることができる。
【0035】
さらに、本構成例では、重量物3の荷重を、フレーム21のスライド面2111と無限軌道22のスライド部223と係合部222とを介して支持する構成とした。ここで、仮に、スライド面2111及びスライド部223を省略して、荷重が履帯221を介して天井面1に作用する構成とした場合には、荷重の大小に応じて、履帯221の通過軌跡が大きく変形する可能性がある。履帯221自体の回転のために、履帯221が変形可能であるためである。これに対して、本構成例のように、重量物3の荷重を、フレーム21のスライド面2111と無限軌道22のスライド部223と係合部222とを介して支持した場合には、履帯221に多少の荷重が作用しても、その変形量を小さく抑えることができる。このため、本構成例の走行体によれば、重量物3の重量が変動しても、履帯221の通過軌跡が変形しにくくなり、その結果、天井面1に対する係合部222の拘束及び解放を安定して行うことができ、安定した走行が可能になるという利点がある。
【0036】
また、本構成例では、フレーム21の荷重を、スライド面2111及びスライド部223を介して係合部222により支持しているので、ある係合部222と接続しているスライド部223がスライド面2111から外れている状態では、その係合部222には走行体2及び重量物3の荷重による負荷がない。係合部222に荷重をかけたままの状態で、天井1への係合部222の拘束あるいは解放動作を行うと、その動作に時間を要する傾向があった。これに対して、本構成例の走行体によれば、係合部222に走行体2の荷重による負荷がない状態で、係合部222の拘束あるいは解放動作を迅速に行うことができ、その結果、走行体2の移動速度を向上できるという利点がある。
【0037】
(走行体の第2構成例)
つぎに、
図3をさらに参照して、より具体的な走行体の構成例を説明する。なお、この第2構成例の説明においては、前記した第1構成例の走行体と基本的に共通する構成要素については、同一符号を用いることで、記載の煩雑を避ける。この第2構成例は、前記した第1構成例よりも詳しい実装例を説明するためのものである。
【0038】
本構成例の走行体2における無限軌道22は、フレーム21に対して履帯221を回転させるための駆動部224を備えている。本例の駆動部224は、図示しない適宜な駆動手段(例えばモータ)により駆動されるスプロケットにより構成されている。なお、以下の説明においては、駆動部224は、履帯221を反時計方向に回転させるものとするが、逆回転させることも可能である。
【0039】
また、本構成例のフレーム21は、押圧部212と引張部213とを備えている。
【0040】
押圧部212は、係合部222を天井面1の方向に押し込むことにより、天井面1に拘束させる構成とされている。
【0041】
引張部213は、係合部222を下方に引っ張ることにより、天井面1から解放させる構成とされている。
【0042】
さらに、本構成例のフレーム21は、履帯221の通過軌跡を規制するための二つの案内部214を備えている。
【0043】
本構成例における一方の(
図3において右端側の)案内部214は、押圧部212が係合部222を天井面1の方向に押し込む位置の近傍において、係合部222が天井面1に拘束しやすい姿勢になるように履帯221の通過軌跡を規制する構成となっている。
【0044】
(第2構成例の動作)
次に、
図4をさらに参照して、第2構成例に係る走行体における、係合部222の拘束及び解放の動作を説明する。
【0045】
(
図4(a)…挿入)
駆動部224が履帯221を回転させると、履帯221の回転に伴い、係合部222が天井面1に接近する。このとき、履帯221の通過軌跡は、案内部214により、傾斜方向に(
図4(a)において左上方向に)移動する。これにより、本構成例では、係合部222の姿勢を、天井面1の穴11に挿入しやすい状態(穴11の下面に干渉しにくい状態)に保持することができる。
【0046】
係合部222が天井面1の穴11の下方に(つまり押圧部212の上方に)達すると、押圧部212は、係合部222を上方に押し上げて、係合部222の先端を穴11の内部に挿入する。
【0047】
(
図4(b)…拘束)
押圧部212により係合部222が上昇すると、係合部222の先端が穴11の上面に係合する。つまり、係合部222が天井面1に拘束される。なお、係合部222のさらに詳しい構成例については後述する。
【0048】
(
図4(c)…荷重支持)
ついで、穴11に係合している係合部222の近傍に配置されたスライド部223がフレーム21のスライド面2111の下面に接しながら走行する。この状態では、スライド部223は、それ自身がフレーム21に対して移動しながら、フレーム21の荷重を支持することができる。第1構成例において説明した通り、スライド部223の荷重は天井面1により支持される。
【0049】
(
図4(d)…解放)
スライド部223がさらに移動して、スライド面2111を通過すると、当該スライド部223の近傍にある係合部222は、フレーム21からの荷重を受けなくなる。この係合部222への負荷がなくなった状態で、係合部222は天井面1の穴11を解放し、天井面1との機械的な拘束関係を解消する。
【0050】
(
図4(e)…引抜)
係合部222がさらに移動して、引張部213の上方に達すると、本構成例の引張部213は、係合部222を天井面1の穴11から引き抜く。引張部213の詳しい動作例も後述する。
【0051】
第2構成例の走行体では、駆動部224を設けているので、駆動部224の駆動力によって自走することができる。駆動部224の回転時期や速度を適宜に制御することにより、走行体を所望の速度で移動させることができる。
【0052】
また、第2構成例の走行体では、押圧部212により、係合部222を天井面1の穴11に挿入し、引張部213により、係合部222を穴11から引き抜くことができるので、走行体2の連続的な走行が容易となるという利点がある。
【0053】
第2構成例の装置における他の構成及び利点は、前記した第1構成例と基本的に同様なので、これ以上詳しい説明は省略する。
【0054】
(第3構成例)
つぎに、
図5〜
図13をさらに参照して、本発明の第3構成例に係る走行体を説明する。なお、この第3構成例の説明においては、前記した第1及び第2構成例の走行体と基本的に共通する構成要素については、同一符号を用いることで、記載の煩雑を避ける。この第3構成例は、前記した各構成例よりもさらに詳しい実装例を説明するためのものである。
【0055】
本構成例の無限軌道22の履帯221(
図5参照)は、複数の履板2211と、これらの履板2211どうしを回動可能なように連結するピン2212とを備えている。
【0056】
本構成例の係合部222は、履帯221の履板2211に固定されている(
図5参照)。
【0057】
また、本構成例の履帯221は、履帯221の進行方向における前端部(
図6において右端部)において、フレーム21に固定された板状の案内部214に沿って移動するようになっている。また、図示していないが、本構成例の履帯221は、履帯221の進行方向における後端部においても、フレーム21に固定された同様の案内部に沿って移動するようになっている。
【0058】
本構成例の押圧部212は、適宜なステーを介して、フレーム21に固定されている(
図6参照)。押圧部212については後述する。
【0059】
本構成例のスライド部223は、履帯221のピン2212に同軸で取り付けられており、ピン2212に対して回転可能となっている。
【0060】
(係合部)
ついで、係合部222の具体的な構成例を
図7〜
図9により説明する。
【0061】
この係合部222は、二つの回動部2221と、2枚のリンク板2222と、ばね2223と、操作部2224と、接続部2225と、ベースプレート2226とを備えている。
【0062】
回動部2221は、
図8に示すように、
正面から見て略台形状となっており、下方が広がった形状とされている。回動部2221の上部は、ベースプレート2226に回動可能な状態で取り付けられている。
【0063】
リンク板2222の一端は、回動部2221の下端に、回動可能な状態で取り付けられている。また、2枚のリンク板2222の他端どうしは、互いに回動可能な状態で連結されている。
【0064】
ばね2223は、回動部2221の下端どうしがたがいに離間する方向に向けて、回動部2221を付勢している。
【0065】
操作部2224は、前記したリンク板2222の他端に、接続部2225を介して取り付けられている。操作部2224の下端は、横方向に広がった形状とされている。
【0066】
(係合部の挿入動作)
次に、
図8を参照しながら、本例の係合部222を天井面1に拘束するときの動作を説明する。
【0067】
(
図8(a)…押し込み開始)
係合部222が履帯221の回転に伴って移動し、押圧部212の上方に到達すると、押圧部212は、係合部222のベースプレート2226を上方に押し込む。すると、係合部222の回動部2221の上部は、天井面1の穴11の下面に当接する。
【0068】
(
図8(b)…押し込み中)
押圧部212がベースプレート2226をさらに上方に押し込むと、回動部2221は、ばね2223の付勢力に抗して回動する。これにより、二つの回動部2221の形状は、天井面1の穴11を通過可能なものとなる。
【0069】
(
図8(c)…拘束)
押圧部212がベースプレート2226をさらに上方に押し込むと、回動部2221は、天井面1の穴11を通過し、穴11の上方において、ばね2223の付勢力によって初期状態に復帰する。これにより、二つの回動部2221の形状は、穴11を通過できない大きさとなる。また、この状態では、回動部2221の下端が穴11の上部に当接した状態(拘束状態)となる。この拘束状態においては、係合部222に作用する下向きの荷重を、天井面1により支持することができ、走行体2および重量物3の荷重によって、係合部222が自然に解除されることはない。
【0070】
本構成例の係合部222によれば、係合部222を穴11に向けて押し込むだけで、係合部222を穴11に拘束することができるので、この拘束作業を迅速に行うことができるという利点がある。
【0071】
(係合部の引抜動作)
次に、
図9を参照しながら、係合部の引抜時における動作を説明する。
【0072】
(
図9(a)…引抜開始)
履帯221の回転に伴って、係合部222が引張部213の上方に到達すると、引張部213は、係合部222の操作部2224を下方に引っ張る。なお、
図6では、引張部213を図示していないが、第3構成例においても、
図3と同様の位置に引張部213が配置されているものとする。すると、接続部2225及びリンク板2222を介して、回動部2221が、ばね2223の付勢力に抗して、たがいに接近する方向に回動する。
【0073】
(
図9(b)…解放)
操作部2224をさらに下方に向けて引っ張ると、回動部2221は、ばね2223の付勢力に抗してさらに回動する。これにより、回動部2221は、天井面1の穴11を通過可能な径となる。
【0074】
(
図9(c)…引抜終了)
操作部2224をさらに下方に引っ張ると、回動部2221は、天井面1の穴11を通過し、穴11の下方において、ばね2223の付勢力によって初期状態に復帰する。このようにして、本構成例では、係合部222を天井面1の穴11から解放することができる。解放された係合部222は、履帯221の回転に従って移動することができる。
【0075】
(押圧部及び引張部)
次に、
図10〜
図13を参照して、本構成例における押圧部212の具体的な実装例を説明する。この押圧部212は、直動部2121と、保持部2122とを備えている。
【0076】
直動部2121は、保持部2122を直線方向に沿って(
図10の例では図中上下方向に)往復動させることができるようになっている(
図11及び
図12参照)。
【0077】
保持部2122は、内向きに延長されたフランジ部を有する略U字状とされている。保持部2122の両端部(
図11においては紙面の厚さ方向における両端部)は解放されており、その内部を係合部222の操作部2224が通過できるようになっている。つまり、本構成例では、
図6に示されるように、履帯221の回転に従って移動する係合部222の操作部2224が、保持部2122の内部に収納されるようになっている(
図13(a)参照)。
【0078】
また、本構成例の引張部213としては、押圧部212と同じ構成のものが用いられている。したがって、引張部213は、押圧部212と同様に、直動部2131と保持部2132とを備えている。
【0079】
(押圧部の動作)
次に、
図13(a)及び(b)を参照して、本構成例に係る押圧部212の動作を説明する。
【0080】
(
図13(a))
履帯221の回転に従って、係合部222の操作部2224が押圧部212の保持部2122の内部に到達する(
図6参照)。
【0081】
(
図13(b))
すると、本構成例では、例えばセンサによってこの状態を検出し、押圧部212の保持部2122を上方に移動させる。すると、本例では、保持部2122の上部がベースプレート2226の下端に当接し、係合部222を上方に押し上げることができる。係合部222の押し上げタイミングあるいは押し上げストロークは、履帯221の通過軌道や係合部222の形状に応じて決定することができる。
【0082】
(引張部の動作)
次に、
図13(a)及び(c)を参照して、本構成例に係る引張部213の動作を説明する。
【0083】
(
図13(a))
履帯221の回転に従って、係合部222の操作部2224が引張部213の保持部2132の内部に到達する。
【0084】
(
図13(c))
すると、本構成例では、例えばセンサによってこの状態を検出し、引張部213の保持部2132を下方に移動させる。すると、本例では、保持部2132上端のフランジ部が係合部222の操作部2224の上面に当接し、操作部2224を下方に引き下げることができる。操作部2224の引き下げタイミングあるいは引き下げストロークは、履帯221の通過軌道や係合部222の形状に応じて決定することができる。
【0085】
この構成例の走行体においては、押圧部212及び引張部213を基本的に同様の構成としているので、履帯221を逆回転させた場合には、押圧部を引張部として、引張部を押圧部としてそれぞれ使用することができる。したがって、本構成例では、走行体を逆方向に移動させるための機械的構成が簡易になるという利点がある。
【0086】
また、本構成例の走行体では、スライド部223を、履帯221のピン2212と同軸としているので、フレーム21のスライド面2111からスライド部223に作用する荷重は、履板2211を介して係合部222に作用することになる。しかしながら、履板2211は一般に剛体であり、その機械的強度を高めることは可能である。したがって、通常の実装においては、履板2211に荷重が作用しても、履帯221の通過軌跡への影響は小さいと考えられる。なお、本発明は、このように、履板2211の一部によって荷重を支持する構成も含むものである。
【0087】
第3構成例の装置における他の構成及び利点は、前記した第1及び第2構成例と基本的に同様なので、これ以上詳しい説明は省略する。
【0088】
(第1実施形態の旋回装置)
走行体の具体例についての前記説明を前提として、
図14〜
図15をさらに参照しながら、本発明の第1実施形態に係る旋回装置の構成を説明する。
【0089】
本実施形態の旋回装置4は、走行面としての天井面1に沿って、この天井面1上を走行する走行体2を旋回させるためものである。すでに述べたように、走行体2は、天井面1に拘束されながら、所定の走行軌跡(穴11の配列方向)に沿って移動する構成となっている。
【0090】
本実施形態の旋回装置4は、走行体2に取り付けられたアーム部41と、アーム部41を走行体2に対して相対的に回転駆動するアクチュエータ42と、走行体2の走行軌跡上に配設されたターンテーブル43と、天井面1に対するターンテーブル43の位置を一時的に保持するためのロック機構45と、四つの永久磁石46を備えている。
【0091】
(アーム部)
アーム部41は、アーム本体411と、走行面1に取り外し可能なように固定される固定部412とを備えている(
図14参照)。
【0092】
固定部412は、走行体2がターンテーブル43上にあるときに、ターンテーブル43の外側における天井面1に到達可能な位置に配置されている。
【0093】
より具体的には、本例の固定部412は、天井面に備えられた永久磁石46(後述)に吸着して、その位置が一時的に固定されるようになっている。
【0094】
(ターンテーブル)
ターンテーブル43は、走行面1に交差する方向と略平行な仮想回転軸431を中心に回転可能とされている。さらに、ターンテーブル43は、ターンテーブル43に到達した走行体2に、少なくとも一時的に拘束されて、走行体2に対して相対回転しない構成とされている。
【0095】
より具体的には、本実施形態のターンテーブル43は、テーブル本体432と、このテーブル本体432に形成された穴433とを備えている。テーブル本体432は、円形の板状に形成されており、天井面1に形成された円形の嵌合穴12にはめ込まれて、この嵌合穴12の内部において、仮想回転軸431を中心として自転できるようになっている。
【0096】
(アクチュエータ)
アクチュエータ42は、この実施形態では、走行体2のフレーム21に固定されており、このフレーム21に対してアーム部41のアーム本体411を回転させるようになっている。より具体的には、本実施形態のアクチュエータ42は、図示しないコンピュータにより制御される制御モータにより構成されており、アーム本体411の回転時期及び回転角を制御できるようになっている。
【0097】
(ロック機構)
ロック機構45は、天井面1に対するターンテーブル43の位置を保持し、かつ、走行体2がターンテーブル43に到達して旋回可能となったときに保持を解除する構成となっている。ロック機構45の詳しい構成例は第2実施形態として説明する。
【0098】
(永久磁石)
永久磁石46は、仮想回転軸431を中心として、約90°の位相差を持つように離間して、天井面1の背面側(上面側)に配置されている。
【0099】
前記以外の天井面1及び走行体2の基本的な構成は、前記した構成例と同様である。ただし、
図14及び
図15では、走行体2を簡略化して記載している。また、この旋回装置の動作については、第2実施形態において説明する。
【0100】
(第2実施形態)
以下、
図16〜
図28をさらに参照して、本発明の第2実施形態に係る旋回装置について説明する。なお、この第2実施形態は、前記した第1実施形態をより具体化した例である。また、この第2実施形態の説明においては、前記した第1実施形態と基本的に共通する構成要素については、同一符号を用いることにより、説明の煩雑を避ける。
【0101】
(走行体)
第2実施形態の走行体2は、四つの支持輪23を備えている(
図16参照)。これらの支持輪23は、天井面1と接触することで受動的に回転可能となるように、適宜の取付部材を介してフレーム21に取り付けられている。支持輪23の回転軸の方向は、走行体2の走行方向に直交し、かつ、天井面1に平行な方向とされている。また、支持輪23は、走行体2が天井面1に取り付けられて、天井面1上を走行する場合(例えば
図3参照)において、天井面1に接触しながら回転して、走行体2の姿勢を安定させることができるようになっている。
【0102】
(アーム部)
本実施形態のアーム部41の固定部412は、アーム本体411における二つの端部にそれぞれ取り付けられたベース部413と、このベース部413に対してスライド可能なように取り付けられたスライド部414とから構成されている(
図17及び
図18参照)。
【0103】
スライド部414は、天井面1に設置された永久磁石に吸着する材質、例えば炭素鋼を用いることができるが、これには制約されない。
【0104】
(ターンテーブル)
本実施形態のターンテーブル43は、4枚のリブ434(
図25参照)とガイドローラ435(
図25参照)とをさらに有している。リブ434は、ターンテーブル43の表面に、互いに交差するように取り付けられて、その強度を向上させる。ガイドローラ435は、テーブル本体432の外周に、受動的に回転可能な状態で取り付けられている。ガイドローラ435の回転軸は、テーブル本体432の半径方向に向けられており、これによって、ガイドローラ435は、テーブル本体432に大きな荷重が加わった場合にも仮想回転軸431を中心として円滑に回転できるように、テーブル本体432を支持している。
【0105】
(ロック機構)
本実施形態のロック機構45は、第1実施形態の例とは異なり、2箇所に配置されている(
図19参照)。それぞれのロック機構45は、回動部451と、回動軸452と、フック部453と、嵌入穴454(
図21参照)と、ピン455とを有している(
図23及び
図24参照)。
【0106】
回動部451は、走行面1の裏面側(上面側)に、回動軸452を介して、回動可能なように取り付けられている。フック部453は、回動部451に、回動部451から下方に延びるように形成されている。嵌入穴454は、ターンテーブル本体432の外周近傍に形成されて、フック部453を内部に受け入れることができるようになっている。常時には、フック部453を嵌入穴454に係合することで、ターンテーブル43をロックする。ピン455の一端は、回動部451の両端部にそれぞれ取り付けられている。2本のピン455の他端は、天井面1を貫通して、天井面1の表面側(下面側)に露出されている。
【0107】
(位置決め機構)
本実施形態の旋回装置は、位置決め機構44をさらに備えている(
図19参照)。位置決め機構44は、四つのインデックス部441と、二つのプランジャ442とを有している(
図25及び
図26参照)。インデックス部441は、テーブル本体432の外周部に、90°の位相差で等間隔に取り付けられており、その外側端部には凹部が形成されている。プランジャ442は、天井面1の背面側(上面側)において、嵌合穴12の周縁近傍に、180°の位相差で取り付けられている。プランジャ442の突出部は、仮想回転軸431(あるいはターンテーブル本体432の中心)の方向を向くように配置されており、ばね力によって先端方向に付勢されている。これによって、プランジャ442の突出部は、インデックス部441の凹部に一時的に保持されるようになっている。このようなプランジャの構成としては、従来から用いられているものと同様でよいので、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0108】
(テーブル支持部)
本実施形態の旋回装置は、テーブル支持部47をさらに備えている。テーブル支持部47は、支持梁471と、回転軸472とを備えている(
図20参照)。支持梁471は、天井面1の背面側(上面側)において、嵌合穴12を横切るように配置されて、天井面1に固定されている。回転軸472は、支持梁471のほぼ中央において、ターンテーブル43の仮想回転軸431とほぼ同軸となる位置に配置され、かつ、支持梁471によって回転可能なように支持されている。また、回転軸472の端部は、テーブル本体432の背面側に固定されており、これによって、テーブル本体432は、仮想回転軸431を中心として正逆方向に回転できるようになっている。
【0109】
(第2実施形態の旋回装置の動作)
次に、
図27及び
図28をさらに参照して、前記した第2実施形態に係る旋回装置の動作を説明する。
【0110】
(
図27(a))
この説明では、走行体2が、天井面1に沿って、図中左上方向から右下方向に移動しているものとする。その際の移動の手順は、すでに説明した通りである。ここで、本実施形態では、アーム部41のアーム本体411が、走行体2の移動方向に対して直交する向きに保持されている。この角度の保持は、この実施形態では、アクチュエータ42の制御により行われる。また、この段階では、ロック機構45のピン
455は、天井面1を貫通しており、フック部453は、嵌入穴454に係合している(後述の
図28(a)及び(b)参照)。
【0111】
(
図27(b)〜(c))
走行体2の移動により、走行体2はターンテーブル43に到達する。さらに走行体2が移動して、走行体2の中心が、ターンテーブル本体432のほぼ中心に到達したときに、走行体2を停止させる。この停止は、例えば適宜なセンサの使用により、自動的に行うことができる。また、この状態では、走行体2の係合部222は、ターンテーブル本体432の穴433に係合しており、天井面1の穴11には係合しない状態となる。
【0112】
(
図27(d))
ついで、アクチュエータ42は、アーム部41のアーム本体411を、走行体2に対して、約45°だけ回転させる。すると、アーム部41の固定部412が永久磁石46の位置に到達した時に、スライド部414が永久磁石46に引き付けられて上昇し、スライド部414が永久磁石46に(したがって天井面1に)一時的に固定される。スライド部414が永久磁石46に吸着するまでの間は、ロック機構45によって、ターンテーブル43のテーブル本体432は、天井面1に保持されており、両者が相対移動することはない。
【0113】
しかしながら、本実施形態では、スライド部414が永久磁石46に吸着すると、スライド部414がロック機構45の一方のピン455を押し上げ(
図29(a)参照)、回動部451を上方に回動させて、フック部453と嵌入穴454との係合を解消する(
図29(b)参照)。つまり、本実施形態では、スライド部414と永久磁石46との間の吸着力を利用して、ターンテーブル本体432を、回転可能な状態とすることができる。
【0114】
(
図27(e))
ついで、アクチュエータ42を駆動し、アーム部41に対して走行体2を相対的に回転させる。このとき、アーム部41は天井面1に固定されているので、走行体2がアーム部41及び天井面1に対して回転する。ここで、走行体2は、ターンテーブル43に拘束されているので、ターンテーブル43は、走行体2と一緒に回転する。また、本実施形態では、位置決め機構44のプランジャ442がインデックス部441に係合しているが、ターンテーブル43の回転に伴い、プランジャ442の突出部がばね力に抗して後退して、両者の係合を解消することができる。
【0115】
(
図27(f))
ターンテーブル本体432(すなわち走行体2)が、初期の進行方向に対して90°回転した時点で、アクチュエータ42の回転を停止する。ここで、本実施形態では、位置決め機構44のプランジャ442を90°の位相差で配置しているので、ターンテーブル本体432がちょうど90°回転した時に、インデックス部441をプランジャ442の突出部に再び係合させることができる。このとき、アクチュエータ42の回転抵抗が増大するので、この抵抗増大をトリガとしてアクチュエータ42を停止させることができる。このようにすると、ターンテーブル43の回転角度を正確に設定することができるという利点がある。特に、本実施形態では、走行体2の安定走行のためには、ターンテーブルの穴433が、天井面1に形成された穴11に正確に整列されていることが望ましい。したがって、本実施形態では、ターンテーブル43の回転角度を正確に設定することによって、走行体2を安定して走行させることができる。
【0116】
本実施形態では、ターンテーブル本体432の回転により、走行体2を旋回させて、その進行方向を二次元面内で変更することができる。
【0117】
(
図27(g))
ついで、方向転換された走行体2を走行させる。このとき、アーム部41のスライド部414と永久磁石46とは磁力により吸着しているが、本実施形態では、走行体2の駆動力により、両者を離間させることができる。すなわち、本実施形態では、スライド部414と永久磁石46との吸着力と、走行体2の駆動力とを適切に設定することにより、永久磁石46を用いた場合であっても、走行体2の走行を再開することができる。また、本実施形態では、位置決め機構44を設けているので、走行体2の走行開始時におけるターンテーブル本体432の回転を阻止することもできる。
【0118】
また、走行体2の移動により、アーム部41のスライド部414による、ロック機構45のピン455の押し上げが解消される。このため、本実施形態では、ロック機構45により、ターンテーブル43の位置が再び保持される。
【0119】
(
図27(h))
ついで、走行体2がさらに走行すると、走行体2は、初期の向きとは90°位相差のある方向に進行することができる。したがって、本実施形態によれば、走行体2を旋回させて、2次元方向での方向転換を行うことができる。もちろん、アクチュエータ42の回転方向を制御することにより、走行体2を90°逆向きに方向転換させることもできる。また、前記したターンテーブル43を適宜の箇所に分散配置すれば、走行体2を複数の位置において旋回させることもできる。もちろん、複数の走行体2を一つの天井面1上で同時に走行させてもよい。
【0120】
本実施形態では、アクチュエータを環境側(走行面側)に配置せずに、走行体側だけに配置する構成を用いて、走行体の方向転換を行うことができる。このため、旋回装置の保守コストを低く抑えることができるという利点がある。
【0121】
また、本実施形態では、走行面を構成する天井面パネルと、ターンテーブルを構成するパネルとをモジュール化して組み合わせることにより、設置及び保守作業を効率化することもできる。
【0122】
なお、本発明の内容は、前記各実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、具体的な構成に対して種々の変更を加えうるものである。
【0123】
例えば、前記した実施形態では、走行面を天井面としたが、例えば壁面や床面であってもよい。
【0124】
また、前記実施形態では、永久磁石46を用いたが、これに代えて、適宜の制御機構により制御される電磁石を用いることもできる。このようにすると、走行体2の移動状況に応じて電磁石の動作をオン/オフすることができるので、走行体2に大きな力が加わりにくいという利点がある。また、電磁石を用いた場合は、磁力を常時はオフにしておくことができるので、磁石に粉塵が固着しにくいという利点もある。
【0125】
また、永久磁石46をアーム部41の固定部412側に配置することも可能であるが、この場合は、適切な位置において天井面に磁石46が吸着するように、固定部自体を昇降させる等の適宜の手段が必要となる。ここで、永久磁石46に代えて電磁石を用いた場合は、電磁石のオン/オフ制御により、吸着時期の制御が容易となる。
【0126】
さらに、前記実施形態では、天井面に係合部が係合しながら走行する走行体を例にとって説明したが、これに代えて、例えばレールを天井面や壁面に配置し、このレールに沿って移送する走行体を用いることも可能である。この場合は、ターンテーブル上にレールを配置し、走行体がターンテーブルに到達したときに、レールごと走行体を旋回させればよい。