特許第6887912号(P6887912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6887912基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887912
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20210603BHJP
【FI】
   H01L21/304 651L
   H01L21/304 644C
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-152612(P2017-152612)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-33153(P2019-33153A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】宮 原 理
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−135703(JP,A)
【文献】 特開2005−011947(JP,A)
【文献】 特開平11−176795(JP,A)
【文献】 特開2016−149470(JP,A)
【文献】 特開2015−231030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材が設けられたプレートを有し、前記プレートを回転させることで前記基板を回転させる回転部と、
前記回転部の中央に配置され、前記基板保持部材に保持された前記基板の下面に対して処理液及び不活性ガスを供給する流体供給部と、
前記基板を回転させながら前記基板の下面に対して処理液を供給して液処理を行い、前記液処理の後、前記基板の下面に対して前記不活性ガスを供給しながら前記基板の乾燥処理を行うよう制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記乾燥処理を開始した後であって前記基板の下面中央部に液膜が存在する状態において、第1の供給流量で前記不活性ガスを供給し、前記下面中央部に液膜が存在しなくなった後、前記第1の供給流量よりも少ない第2の供給流量で前記不活性ガスを供給するように制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記乾燥処理における前記第1の供給流量は、前記基板保持部材に付着した処理液を跳ね飛ばすだけの流量であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記液処理において、前記流体供給部から第3の供給流量で不活性ガスを供給するよう制御し、
前記乾燥処理における前記第2の供給流量は、前記第3の供給流量よりも小さい流量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板保持部材に保持された前記基板の上面にスクラブ洗浄を施すためのブラシをさらに備え、
前記制御部は、前記基板の下面に対して前記液処理を行っているときに前記基板の上面に対して前記ブラシを用いたスクラブ洗浄を行うように制御することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板の周縁部を保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材が設けられたプレートを有し、前記プレートを回転させることで前記基板を回転させる回転部と、
前記回転部の中央に配置され、前記基板保持部材に保持された前記基板の下面に対して処理液及び不活性ガスを供給する流体供給部と、
を備えた基板処理装置を用いて、前記基板を処理する基板処理方法において、
前記基板を回転させながら前記基板の下面に対して処理液を供給して液処理を行う液処理工程と、
前記液処理工程の後、前記基板の下面に対して前記不活性ガスを供給しながら前記基板の乾燥処理を行う乾燥工程と、
を備え、
前記乾燥処理を開始した後であって前記基板の下面中央部に液膜が存在する状態において、第1の供給流量で前記不活性ガスを供給し、前記下面中央部に液膜が存在しなくなった後、前記第1の供給流量よりも少ない第2の供給流量で前記不活性ガスを供給することを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
前記乾燥工程における前記第1の供給流量は、前記基板保持部材に付着した処理液を跳ね飛ばすだけの流量であることを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記液処理工程において、前記流体供給部から第3の供給流量で不活性ガスを供給し、前記第2の供給流量は、前記第3の供給流量よりも小さい流量であることを特徴とする請求項5又は6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板の下面に対して前記液処理工程を行っているときに前記基板の上面に対してブラシを用いたスクラブ洗浄を行うことを特徴とする請求項5から7のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板処理装置の動作を制御するための制御部をなすコンピュータにより実行されたときに、前記コンピュータが前記基板処理装置を制御して請求項5から8のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の下面に処理液を供給して液処理を行った後に基板の下面を乾燥させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造に用いられる基板処理装置において、半導体ウエハ等の基板を水平姿勢で鉛直軸線周りに回転させながら当該基板の下面にリンス液例えば純水を供給して、当該下面にリンス処理を行うことがある。このような液処理を行う場合、円盤状のベース部材と、ベース部材の周縁部に設けられた基板の周縁部をチャックする複数のチャック部材を備えたスピンチャック(基板回転保持機構)により基板が保持される。なお、「基板の下面」とは処理時に下方を向いている面であり、それがデバイス形成面である表面である場合、デバイス非形成面である裏面である場合の両方の場合がありうる。
【0003】
下面のリンス処理が終了した後に、基板を高速回転させることにより振り切り乾燥が行われる。基板を良好に乾燥させるには、まず、基板の中心部に小さな円形の乾燥領域(乾燥コア)を形成し、この乾燥領域の外周縁を同心円状に徐々に拡げてゆくことが好ましい。そうすることにより、仮に液中にパーティクルが存在していたとしても、パーティクルが液と一緒に基板の外方に追いやられるため、乾燥した基板上にパーティクルが残留することを防止することができる。
【0004】
振り切り乾燥が行われるとき、乾燥促進及びウオーターマーク発生防止のために、基板の下面側に低湿度であって好ましくは低酸素濃度のガス、例えば窒素ガスが供給される(例えば特許文献1を参照)。窒素ガスの供給量は乾燥コアの形成及び拡張に影響を及ぼすため、好適な範囲内に制御しなければならない。窒素ガスの供給量が過大の場合、乾燥コアの広がる速度が過大となり、乾燥コアの外側にある液膜の千切れ(液膜から分離した液滴が生じること)が生じるおそれがある。千切れた液滴中にパーティクルが存在していると、そのパーティクルは当該液滴の乾燥後、基板に再付着する。
【0005】
また、上述した基板下面に対する液処理と並行して、基板の上面に液処理、例えばスクラブ洗浄処理あるいはAS(アトマイズスプレー)洗浄処理を行う場合がある。この場合、洗浄処理により基板表面から除去された物質からなるパーティクルが処理液と一緒に基板の周縁部に向かって流れ、最終的に基板の外方に飛散する。このパーティクルを含む処理液が基板の下面に回り込み、チャック部材及びその周辺の基板の下面に付着するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−231030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基板の下面を乾燥させる際に、乾燥領域の外側にある液膜が千切れて液滴が生じることを防止すること、かつ、チャック部材及びその周辺の基板の下面にパーティクルが付着することを防止することを両立できる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、基板の周縁部を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材が設けられたプレートを有し、前記プレートを回転させることで前記基板を回転させる回転部と、前記回転部の中央に配置され、前記基板保持部に保持された前記基板の下面に対して処理液及び不活性ガスを供給する流体供給部と、前記基板を回転させながら前記基板の下面に対して処理液を供給して液処理を行い、前記液処理の後、前記基板の下面に対して前記不活性ガスを供給しながら前記基板の乾燥処理を行うよう制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記乾燥処理を開始した後であって前記基板の下面中央部に液膜が存在する状態において、第1の供給流量で前記不活性ガスを供給し、前記下面中央部に液膜が存在しなくなった後、前記第1の供給流量よりも少ない第2の供給流量で前記不活性ガスを供給するように制御する基板処理装置が提供される
【0009】
本発明の他の実施形態によれば、基板の周縁部を保持する基板保持部材と、前記基板保持部材が設けられたプレートを有し、前記プレートを回転させることで前記基板を回転させる回転部と、前記回転部の中央に配置され、前記基板保持部材に保持された前記基板の下面に対して処理液及び不活性ガスを供給する流体供給部と、を備えた基板処理装置を用いて、前記基板を処理する基板処理方法において、前記基板を回転させながら前記基板の下面に対して処理液を供給して液処理を行う液処理工程と、前記液処理工程の後、前記基板の下面に対して前記不活性ガスを供給しながら前記基板の乾燥処理を行う乾燥工程と、を備え、前記乾燥処理を開始した後であって前記基板の下面中央部に液膜が存在する状態において、第1の供給流量で前記不活性ガスを供給し、前記下面中央部に液膜が存在しなくなった後、前記第1の供給流量よりも少ない第2の供給流量で前記不活性ガスを供給する基板処理方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態によれば、基板処理装置の動作を制御するための制御部をなすコンピュータにより実行されたときに、前記コンピュータが前記基板処理装置を制御して上記の基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の実施形態によれば、比較的厚い液膜が基板の下面の全面を覆っているうちに比較的大流量で不活性ガスを供給することにより基板保持部材に付着しているパーティクルを吹き飛ばすことができる。また、基板の下面中央に液膜が存在しなくなった後においては比較的小流量で不活性ガスを供給することにより、乾燥領域が広がる速度が過大にならないようにすることができ、これにより液千切れに起因するパーティクルの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の基板処理装置の一実施形態に係る基板処理システムの全体構成を示す概略平面図である。
図2図1の基板液処理システムに含まれる処理ユニットの概略縦断面図である。
図3図2の処理ユニットの処理液の吐出口及び乾燥用ガスの吐出口の付近を拡大して示す断面図である。
図4】ウエハ下面の乾燥の進行について説明するための図である。
図5】ウエハ下面の乾燥時に生じる欠陥について説明するための図である。
図6】窒素ガスの供給量の推移について説明するグラフである。
図7】改良された基板保持部材について説明する図であり、(A)は改良後のものを示す側面図、(B)は改良前のものを示す側面図である。
図8図7の(A)に示す改良後の基板保持部材の斜視図である。
図9図7の(A)に示す改良後の基板保持部材、これに保持されたウエハ、及びブラシの位置関係を示す図である。
図10】可動の仕切プレートを備えた基板保持回転機構の実施形態を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0015】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0016】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚のウエハWを水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0017】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0018】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0019】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0020】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0021】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0022】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0023】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0024】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。
そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0025】
次に、処理ユニット16の概略構成について図2及び図3を参照して説明する。なお、特に説明の無い限り、図3に現れている全ての部材は、幾何学的用語としての回転体に実質的に該当する。
【0026】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、ウエハWを保持して回転させる基板保持回転機構30と、処理液供給ノズルを構成する液体吐出部40と、ウエハWに供給された後の処理液を回収する回収カップ50とを備える。
【0027】
チャンバ20は、基板保持回転機構30、液体吐出部40及び回収カップ50を収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0028】
基板保持回転機構30は、機械的なクランプ機構によりウエハWを保持するメカニカルチャックとして構成されている。基板保持回転機構30は、基板保持部31、回転軸32及び回転モータ(回転駆動部)33を有している。回転モータ33の回転速度は、制御装置4の制御の下で、任意の値に連続的に変化させることができる。回転モータ33は回転軸32を回転駆動し、これにより、基板保持部31により水平姿勢で保持されたウエハWが鉛直軸線周りに回転する。
【0029】
基板保持部31は、円板形のベースプレート(板状体)31aと、ベースプレート31aの周縁部に設けられた複数の保持部材31b(チャック)を有している。保持部材31bは、ウエハWの周縁を保持する。一実施形態においては、複数の保持部材31bのいくつかはウエハWの周縁に対して進退してウエハWの把持及び解放の切り換えを行う可動の支持部材であり、残りの保持部材31bは不動の保持部材(例えば支持ピン)である。回転軸32は鉛直方向に延びる中空の管状体からなる。
【0030】
回転軸32とベースプレート31aとは連結部34により連結されている。連結部34は、回転軸32及びベースプレート31aと別体部品であってもよく、あるいは、回転軸32またはベースプレート31aと一体の部品であってもよい。
【0031】
液体吐出部40は、全体として鉛直方向に延びる細長い軸状の部材として形成されている。液体吐出部40は、鉛直方向に延びる中空円筒形の軸部41と、頭部42とを有している。軸部41は、基板保持回転機構30の回転軸32の内部の円柱形の空洞32a内に挿入されている。軸部41と回転軸32とは同心である。軸部41の外周面と回転軸32の内周面との間に円環状の断面を有する気体通路80としての空間が形成されている。
【0032】
気体通路80には、乾燥用ガス供給機構74から乾燥用ガスが供給される。乾燥用ガスは、乾燥が促進されるように低湿度であることが好ましく、ウオーターマークの発生を防止するために低酸素濃度であることがより好ましい。本実施形態では、乾燥用ガスとして、低湿度かつ低酸素濃度のガスである窒素ガスが用いられる。乾燥用ガス供給機構74の構成の図示及び詳細な説明は省略するが、例えば、ガス供給源に接続された供給ラインと、この供給ラインに介設された開閉弁及び流量制御弁などから構成される。
【0033】
液体吐出部40の内部には、鉛直方向に延びる円柱形の空洞がある。この空洞の内部には処理液供給管43(図3にのみ示した)が設けられている。処理液供給管43の上端は、液体吐出部40の頭部42の上面の中央部で開口し、基板保持回転機構30に保持されたウエハWの下面の中央部に向けて処理液を吐出する(図3の黒塗り矢印を参照)液体吐出口43aとなる。
【0034】
処理液供給管43には、ウエハWの下面を洗浄するためのリンス液例えば純水(DIW)が、処理液供給機構72(図2参照)から供給される。処理液供給機構72の構成の図示及び詳細な説明は省略するが、例えば、処理液供給源に接続された供給ラインと、この供給ラインに介設された開閉弁及び流量制御弁などから構成される。処理液供給機構72は、リンス液と、リンス液以外の処理液例えばDHF等の薬液とを切り換えて供給することができるように構成されていてもよい。
【0035】
連結部34の上面中央部には、気体通路80と連通する円柱形の凹部34bが形成されている。頭部42の下側の大部分は凹部34b内に収容されている。頭部42は、凹部34bの外周端よりも半径方向外側に張り出すフランジ部42aを有している。気体通路80内を上向きに流れてきたガスは、凹部34の内表面とこれと対向する頭部42の表面との間に形成された空間81を通って流れ、さらに、フランジ部42aの下面と連結部34の上面34aとの間の隙間82を通って流れ、半径方向外側に向けて概ね水平方向に、ウエハW下面とベースプレート31aとの間の空間83に噴射される(図3の白抜き矢印を参照)。つまり、隙間82の出口から噴射されるガスは、ウエハWの下面に向けて直接吹き付けられることはない。隙間82の出口はガス噴射部を構成する。
【0036】
また、液体吐出口43aからウエハWの下面に供給された処理液が落下してきたとしても、この処理液が空間81を介して気体通路80に侵入することをフランジ部42aにより防止することができる。
【0037】
図2に示すように、回収カップ50は、基板保持回転機構30の基板保持部31を取り囲むように配置され、回転するウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50は、不動の下カップ体51と、上昇位置(図2に示す位置)と下降位置との間で昇降可能な上カップ体52とを有している。上カップ体52は、昇降機構53により昇降する。上カップ体52が下降位置にあるときには、上カップ体52の上端は、基板保持回転機構30により保持されたウエハWよりも低い位置に位置する。このため、上カップ体52が下降位置にあるときに、チャンバ20内に進入した図1に示した基板搬送装置17の基板保持機構(アーム)と基板保持回転機構30との間で、ウエハWの受け渡しが可能となる。
【0038】
下カップ体51の底部には、排出口54が形成されている。この排出口54を介して、捕集された処理液及び回収カップ50内の雰囲気が回収カップ50から排出される。排出口54には排出管55が接続され、排出管55は減圧雰囲気の工場排気系(図示せず)に接続されている。
【0039】
FFU21からの清浄空気のダウンフローは、回収カップ50(上カップ体52)の上部開口を介して回収カップ50内に引き込まれ、排出口54から排気される。このため、回収カップ50内には、矢印Fで示す気流が生じる。
【0040】
処理ユニット16は、基板保持回転機構30により保持されたウエハWの上面に、処理流体を供給する処理流体ノズル61を備えていてもよい。処理流体ノズル61は、図示ないノズルアームにより、ウエハWの中心の真上の位置とウエハWの周縁の真上の位置との間の任意の位置、並びにウエハWの外方の待機位置(ホームポジション)に位置させることができる。処理流体ノズル61は、薬液、リンス液または二流体(詳細後述)を供給するものとすることができる。
【0041】
処理ユニット16は、基板保持回転機構30により保持されたウエハWの上面をスクラブ洗浄するブラシ62を備えていてもよい。ブラシ62は、図示ないノズルアームにより、ウエハWの中心部とウエハWの周縁部との間の任意の位置、並びにウエハWの外方の待機位置(ホームポジション)に位置させることができる。
【0042】
次に、処理ユニット16にて行われる処理の一例について図6も参照して説明する。ここでは、ウエハWの上面(本例ではパターンが形成されていない裏面)にスクラブ洗浄を施しつつ、下面(本例ではパターンが形成されている表面)に純水リンス処理を施すものとする。この処理は、例えば、ウエハWの露光時のデフォーカス防止のためにウエハWの裏面からパーティクルを十分に除去することを目的として行われる。この処理においては、処理液として純水(DIW)のみが用いられ、薬液は使用されない。また、図1において12台設けられている処理ユニット16の一つが、ウエハを裏返すリバーサー(図示せず)に置換される。
【0043】
処理ユニット16に搬入される前に、図示しないリバーサーにより裏面が上面となるように裏返されたウエハWを保持した基板搬送装置17がチャンバ20内に進入し、ウエハWを基板保持回転機構30の基板保持部31に渡す。その後、基板保持機構(アーム)がチャンバ20から退出し、上カップ体52が上昇位置に上昇する。
【0044】
次に、基板保持回転機構30が、ウエハWを回転させる。ウエハWに対する一連の処理が終了するまでウエハWは回転し続ける。この状態で、ウエハWの上面に純水を供給しつつ、回転するブラシ62をウエハの上面の中央部に接触させ、ブラシ62をウエハWの周縁部まで移動させてゆくことにより、ウエハWの上面の全体にスクラブ洗浄処理が施される(図6の時点T0〜T1)。
【0045】
なお、ブラシ62はブラシ回転機構を内蔵した図示しないアームにより保持され、ウエハWの中心部と周縁部との間を移動することができる。ウエハWの上面への純水の供給は、ブラシ62に内蔵されるか一体化された純水吐出部により行ってもよいし、ブラシ62とは別個に設けられた処理流体ノズル61により行っても良い。
【0046】
スクラブ洗浄処理の終了後、ブラシ62はウエハWの上面から離れ、ウエハWの外方の待機位置に移動する。ウエハWの上面の中央部に処理流体ノズル61から純水が供給され、ウエハWの上面にリンス処理が施される(図6の時点T1〜T2)。このリンス処理の終了後、ウエハWの上面への純水の供給が停止され、ウエハWの振り切り乾燥が行われる(図6の時点T2〜T4)。
【0047】
上記のウエハWの上面に対するスクラブ洗浄処理及びリンス処理の実行中に、ウエハWの下面(デバイス形成面)の汚染を防止するために、ウエハWのリンス処理が行われる(図6の時点T0〜T2)。
【0048】
リンス処理は、液体吐出部40の液体吐出口43aから、回転しているウエハWの下面中央部にリンス液としての純水を供給することにより行われる。ウエハWの下面中央部に供給された純水は遠心力により半径方向外側に広がりながら流れ、ウエハWの周縁から外方に飛散する。このとき、ウエハWの下面全域が純水の液膜により覆われる。この純水の液膜は、ウエハWの上面から下面に周り込もうとするパーティクルを含む純水をブロックする。
【0049】
ウエハWの上面から下面へ、あるいは下面から上面へのリンス液の回り込みを防止するため、ウエハWの上面のリンス処理と、ウエハの下面のリンス処理は同時またはほぼ同時に終了させることが好ましい。つまり、ウエハWの上面のリンス液の供給停止と、ウエハWの下面のリンス液の供給停止はほぼ同時に行うことが好ましい(図6の時点T2)。
【0050】
以上が液処理工程である。次に、乾燥工程、つまり、図6の時点T2以降の操作について説明する。乾燥工程は、リンス液の供給を停止したときに始まる。
【0051】
乾燥工程においては、ウエハWの下面にウオーターマーク(これはパーティクルの原因となり得る)が生じないように、ウエハWと基板保持部31のベースプレート31aとの間の空間の酸素濃度を下げておくことが好ましい。このため、当該空間に、頭部42のフランジ部42aの下面と連結部34の上面34aとの間の隙間82の出口から窒素ガスを噴射する。
【0052】
なお、図6の例では、時点T2以前から流量FR1(例えば20L/min)で隙間82の出口(ガス噴射部)からずっと窒素ガスが噴射されているが、これに限定されるものではなく、時点T2以前には窒素ガスを噴射しなくてもよい。
【0053】
ウエハWの下面へのリンス液(純水)の供給が停止されたら直ちに(つまり時点T2になったら直ちに)、大流量FR2(例えば60L/min)で窒素ガスを噴射する。窒素ガスの噴射開始のタイミングは、リンス液の供給停止と完全に同時である必要はなく、やや前後してもよい。
【0054】
大流量で噴射された窒素ガスはウエハWの周方向に関して概ね均等にウエハWの周縁部に向けて流れ、保持部材31bに付着しているパーティクルを含有する純水を吹き飛ばす。この純水中に含まれるパーティクルは、スクラブ洗浄によりウエハWの上面から除去された物質に主に由来するものである。
【0055】
時点T2及びそのやや後の時点(例えば図6の時点T3)においては、ウエハWの下面に十分な厚さの液膜が存在しており、隙間82の出口(ガス噴射部)から大流量で窒素ガスを噴射したとしても、噴射されたガスの影響によりウエハW下面の液膜が壊れることはない。
【0056】
ウエハWの下面へのリンス液の供給を停止してしばらくすると、ウエハWの下面上に存在している純水は遠心力によりウエハWの周縁に向かって流れているため、まず最初に、ウエハWの中心部において、純水の液膜LFが消失しウエハWの表面(下面)が露出する。すなわち、ウエハW中心部に小さな円形の乾燥領域DA(乾燥コアとも呼ぶ)が形成される(図4も参照)。
【0057】
その後、時間経過とともに乾燥領域DAが広がってゆき、最終的にウエハWの下面の全体が乾燥する。このとき、液膜LFと乾燥領域DAとの境界Bがほぼ円形を維持しながら、半径方向外側に滑らかに移動してゆくことが好ましい。
【0058】
境界Bの移動速度が不適切だと、液膜LFが千切れて液膜LFから液滴LDが分離する可能性がある。この現象が生じたときの状況を図5に模式的に示した。液滴の千切れは、ウエハの表面が疎水性である場合、及びウエハの表面に疎水性領域と親水性領域が混在している場合に生じやすく、特に後者の場合に生じやすい。具体的な例としては、マトリックス状に四角形の回路パターンがウエハWの表面に多数形成されている状況下で、回路パターンの表面に疎水性部分が多く存在し、かつ、四角形の間の領域が親水性である場合がある。この場合、回路パターン上に液滴が残り、その後液滴が乾燥するという事象が生じる。
【0059】
リンス液(純水)の液膜中にはパーティクルが存在しうる。パーティクルは、元々ウエハWに付着していたものかもしれないし、あるいは隙間82の出口から噴射された窒素ガスにより巻き上げられた後に液膜LF中に取り込まれたものであるかもしれない。パーティクルを含有する液滴が乾燥すると、そのパーティクルはウエハWの表面に付着する。回路パターンの部分にパーティクル入りの液滴が残り、これが乾燥すると、歩留まりに悪影響を及ぼす。
【0060】
一方、液膜中にパーティクルが存在していたとしても、上述したように、液膜LFと乾燥領域DAとの境界Bがほぼ円形を維持しながら、半径方向外側に滑らかに移動してゆくのであれば、そのような問題は生じない。つまりこの場合、液膜中のパーティクルは液膜と一緒に半径方向外側に移動し、液膜と一緒にウエハWの外側に排出され、ウエハWの表面には残留しない。
【0061】
窒素ガスは低湿度ガスであるので(Arガス等の不活性ガスも同様である)、窒素ガスがウエハWの下面とベースプレート31aとの間の空間(ウエハ下方空間)を流れていると、ウエハ下方空間が低湿度に維持され、ウエハWの下面の乾燥が促進されることになる。このため、隙間82の出口(ガス噴射部)から大流量で窒素ガスを噴射し続けると、図5のような状況が生じやすくなる。
【0062】
本実施形態では、時点T2の後の時点T3において、隙間82の出口から噴射される窒素ガスの流量をFR3(例えば10L/min)に減少させている。これにより、ウエハの下面の乾燥が抑制され、図4に示したような好適な形態で乾燥が進行するようにんなる。
【0063】
窒素ガスの流量を減少させる時点T3は、好ましくは、ウエハWの下面中央部に液膜が存在しなくなった時点、つまり、ウエハWの下面中央部に乾燥コアDAが形成された時点とすることができる。時点T3は、大流量FR2の流量や基板の接触角等に依存するものであり、実験により求められる数値である。なお、図5に示したような事象が生じるのは境界Bがある程度半径方向外側に移動した後であるため、時点T3は、ウエハWの下面中央部に乾燥コアDAが形成されたわずかに後の時点でもよい。また、時点T3はウエハWの下面中央部に乾燥コアDAが形成されるやや前の時点でもよい。
【0064】
乾燥工程の全体においてウエハWの回転速度は一定とすることができる。但し、液膜LFの千切れは、境界BがウエハWの周縁WEに近い位置にある場合に生じやすい。境界Bが周縁WEに近づくに従って液膜LFが薄くなり、かつ液膜LFを拡げようとする力が大きくなるからである。境界Bが周縁WEに近づいたら、ウエハWの回転速度を低めに抑えて液膜LFを拡げようとする力を抑制してもよい。
【0065】
ウエハWの上面の乾燥については本明細書では詳細には説明しない。例えば、回転するウエハWに処理流体ノズル61からリンス液を供給しながら乾燥用ガスノズル(図示せず)から窒素ガス等の乾燥用ガスを供給し、窒素ガスがウエハWに衝突する半径方向位置(半径方向位置PNと呼ぶ)をリンス液がウエハWに衝突する半径方向位置(半径方向位置PRと呼ぶ)よりも半径方向内側に維持しつつ、半径方向位置PN及び半径方向位置PRの両方を半径方向外側に移動させてゆくといった公知の手法を用いることにより、乾燥領域と液膜との境界の移動速度を制御しながら、良好な乾燥を行うことができる。つまり、ウエハWの上面については、公知の方法により、液膜の千切れを防止し、パーティクルの残留が生じない乾燥を行うことができる。
【0066】
上記実施形態によれば、乾燥工程の初期にウエハ下方空間に相対的に大流量で窒素ガスを供給することにより、ウエハWの下面の乾燥に悪影響を及ぼすことなく保持部材31b(及びその周辺のウエハWの面)に付着したパーティクルを除去することができ、その後相対的に小流量で窒素ガスを供給することにより、液膜LFと乾燥領域DAとの境界Bをほぼ円形に維持しながら、半径方向外側に滑らかに移動させてゆくことができる。
【0067】
上記の実施形態では、ウエハWの裏面(デバイス非形成面)を上向きとし、ウエハWの表面(デバイス形成面)を下向きとした状態で洗浄処理を行ったが、これに限定されるものではなくウエハWの表面を上向きとし、ウエハWの裏面を下向きとした状態で洗浄処理を行ってもよい。また、ウエハWの上向きの面に対しては洗浄処理を行わず、ウエハWの下向きの面のみに対して洗浄処理を行ってもよい。
【0068】
ウエハWの上面にスクラブ洗浄処理を施すことに代えて、二流体洗浄処理を行っても良い。二流体洗浄とは、二流体ノズルとして構成された処理流体ノズル61内において、ガス(例えば窒素ガス)によりミスト化された処理液(ここでは純水)の液滴とガスとの混合流体からなる二流体をウエハWに吹き付けることにより行われる洗浄である。このとき、処理流体ノズル61は、二流体を噴射しながら、図示しないノズルアームによりウエハWの中心部と周縁部との間を往復移動する。これにより、二流体のエネルギーによってウエハW上面に付着しているパーティクルが除去される。この場合、処理流体ノズル61への純水の供給を継続したままで窒素ガスの供給を停止し、処理流体ノズル61からウエハWの上面中央部にミスト化されていない純水を供給することにより、ウエハWの上面のリンス処理を行うことができる。
【0069】
処理対象の基板は半導体ウエハ(ウエハW)に限定されるものではなく、回転状態で処理が施される円形の基板であるならば、ガラス基板、セラミック基板等の他の種類の基板であってもよい。
【0070】
次に、図7図9を参照して、スクラブ洗浄を行う際に好適に用いることができる保持部材について説明する。図2に概略的に記載された保持部材31bは、例えば図7図9に記載された形状を有している。すなわち、保持部材31bは、一側にウエハWの周縁に接触する保持部(ウエハ保持爪)311を有し、他側に被加圧部312を有する。保持部311は、穴313に挿入されたピン(図示せず)によりベースプレート31a(図7図9には図示せず)に枢着されている。被加圧部312を図示しない加圧部材により下から押し上げると、保持部311が旋回してウエハWから離れた解放位置に移動する。加圧部材が重い被加圧部312に作用する重力により、保持部311が旋回してウエハWの周縁を保持する保持位置に移動する。上記機構の詳細については、特開平10−0209254号(これは本件出願人による先願に係る公開公報である)とりわけその図5及び図8を参照されたい。
【0071】
図7(A)、図8及び図9に示す保持部材は特開平10−0209254号の図5及び図8に記載された保持部材の一部を改良したものである。図7(B)は従来技術、図7(A)は実施形態に係るものである。図7(A)では、保持部(ウエハ保持爪)311の高さが低くなっている。なお、図7(A)、(B)を横切って延びる2本の破線は、ウエハWの厚さを示している。
【0072】
このように保持部311の高さを低くすることにより、図9に示すように、ブラシ62をウエハWの上面の平坦部の最も半径方向外側の部分まで(すなわち、ベベル部よりも半径方向内側の全領域に)接触させることができるようになる。つまり、ウエハWの上面の平坦部全域から確実にパーティクルを除去することができる。
【0073】
また、保持部311の高さを低くすることにより、保持部311にウエハW中央部から周縁部に向けて流れてきた処理液が生じることに起因して生じる液跳ねを減少させることができる。
【0074】
また、図8に示すように、保持部311は、第1部分311a及び第2部分311bを有し、両者の間に隙間311cが形成されている。さらに、第1部分311a及び第2部分311bは、ウエハWの半径方向外側にゆくに従って細くなっている。このようにすることにより、処理液が保持部311を通過し易くなるため、液跳ねを一層減少させることができる。
【0075】
また、図7(A)に示すように保持部311の上面311dをウエハWの半径方向外側にゆくに従って低くなるように(保持位置にあるときに)傾斜させている。これにより、処理液が保持部311を乗り越え易くなるため、液跳ねを一層減少させることができる。
【0076】
次に、図10を参照して、 基板保持部及びウエハ下方領域に窒素ガスを供給する機構の他の実施形態について説明する。図10において、図2に示した部材と同一部材には同一符号を付す。
【0077】
図10の実施形態では、基板保持部のベースプレート31aに複数例えば3本の支柱104が設けられている。支柱104には、ウエハWの下面とベースプレート31aの上面との間の空間を上下方向に分割する仕切プレート105が取り付けられている。仕切プレート105は、仕切プレート105の上方の空間と下方の空間との圧力差に応じて、支柱104に沿って、下限位置(図10の(A)〜(C)に示す位置)と上限位置(図10の(D)に示す位置)との間で滑らかに昇降することができる。各支柱104の上部にはウエハ支持部材106が設けられている。
【0078】
中空の回転軸32の内側には2つの管状体107、108が回転軸32と同軸に配置されている。中空の管状体108の内部は、リンス液通路となっており、リンス液通路の上端の出口はリンス液吐出口101となっている。リンス液吐出口101から真上に向けてリンス液が吐出される。
【0079】
管状体107と管状体108の間に第1ガス通路が形成され、この第1ガス通路の上端の出口は第1ガス吐出口102となっている。第1ガス吐出口102からは半径方向外側(ウエハWの半径方向外側)に向けて、不活性ガス例えば窒素ガスが供給される。
【0080】
回転軸32と管状体107の間に第2ガス通路が形成され、この第2ガス通路の上端の出口は第2ガス吐出口103となっている。第2ガス吐出口103からは半径方向外側に向けて、不活性ガス例えば窒素ガスが供給される。
【0081】
次に図10の基板処理装置を用いてウエハWの上面にスクラブ洗浄処理、ウエハWの下面に対してリンス処理を施す手順について説明する。なお、以下の一連の処理工程を行う間、ウエハWはずっと回転させられている。
【0082】
図10(A)は洗浄工程を示す。洗浄工程では、ウエハWの上面に純水を供給しつつブラシ62によりスクラブ洗浄を行いながら、リンス液吐出口101からウエハWの下面中央部にリンス液(純水)を供給することによりリンス処理を行っている。ウエハWの下面はリンス液の液膜により覆われている。このとき、第1ガス吐出口102から窒素ガスが供給される一方で、第2ガス吐出口103から窒素ガスは供給されていない。このため、仕切プレート105の上側の空間の圧力が高くなるため、仕切プレート105は下限位置に位置する。
【0083】
図10(B)は洗浄工程に続いて行われるリンス工程を示す。リンス工程では、ウエハWの上面の中央部にリンス液(純水)を供給することによりリンス処理を行うと同時に、リンス液吐出口101からウエハWの下面中央部にリンス液(純水)を供給することによりリンス処理を行っている。ウエハWの下面はリンス液の液膜により覆われている。このときも、第1ガス吐出口102から窒素ガスが供給される一方で、第2ガス吐出口103から窒素ガスは供給されていない。このため、仕切プレート105の上側の空間の圧力が高くなるため、仕切プレート105は下限位置に位置する。
【0084】
図10(C)、(D)はリンス工程に続いて行われる乾燥工程を示す。リンス工程から乾燥工程に移行するときに、ウエハWの上面及び下面へのリンス液の供給が停止される。
【0085】
図10(C)は乾燥工程の初期の状態を示す。このときも第1ガス吐出口102から窒素ガスが供給される一方で、第2ガス吐出口103から窒素ガスは供給されていない。このため、仕切プレート105の上側の空間の圧力が高くなるため、仕切プレート105は下限位置に位置する。
【0086】
図10(D)は乾燥工程の後期の状態を示す。乾燥工程の後期とは、少なくともウエハWの下面の一部からリンス液が除去されて当該下面の一部が露出し始めた後の時期を意味する。このとき、第1ガス吐出口102からの窒素ガスの供給を停止し、第2ガス吐出口103から窒素ガスの供給を行う。このため、仕切プレート105の下側の空間の圧力が高くなるため、仕切プレート105は上限位置に位置する。これにより、ウエハWの下面が、当該下面に近接する仕切プレート105により覆われることになる。このため、ウエハWの下方空間を漂う汚染されたミストがウエハWの下面に付着することを防止することができる。
【符号の説明】
【0087】
W 基板(半導体ウエハ)
4 制御部(制御装置)
31a プレート(ベースプレート)
31b 基板保持部材(保持部材)
31a,32,33 回転部(ベースプレート、回転軸、モータ)
43a,72,74,82, 流体供給部
62 ブラシ
FR1 第3の供給流量
FR2 第1の供給流量
FR3 第2の供給流量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10