特許第6887927号(P6887927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887927
(24)【登録日】2021年5月21日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】生体磁気計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20210101AFI20210603BHJP
【FI】
   A61B5/05 A
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-181050(P2017-181050)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-55011(P2019-55011A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 公一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 豪
(72)【発明者】
【氏名】坂詰 卓
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/049781(WO,A1)
【文献】 特開平06−285057(JP,A)
【文献】 特表2015−527111(JP,A)
【文献】 特開2004−177363(JP,A)
【文献】 米国特許第06628978(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05−5/053,5/24−5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体が発する磁気を測定する生体磁気計測装置であって、
測定センサに対し被検者の測定部位を所定の位置に保持するための身体保持具と、
制御部とを備え、
前記身体保持具は、被検者の体軸を固定した状態で、前後左右上下動作、被検者の体軸中心に回転動作、及び被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作し、
前記制御部は、前記身体保持具を被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作させることにより、角度を変えながら、前記被検者の測定部位を前記測定センサに近接させて磁場データを複数回にわたって計測し、
前記複数回の計測ごとに、前記測定センサにより計測される磁場データと前記身体保持具の位置情報とを紐付けで記憶部に格納することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体磁気計測装置において、
前記制御部は、前記身体保持具の前後左右上下動作、被検者の体軸中心に回転動作、及び被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作の動作量を制御することにより、前記被検者の測定部位を前記測定センサに近接させて磁場データを計測することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生体磁気計測装置において、
円筒形状をなし、前記測定センサを鉛直方向下向きに複数整列し底面付近に収容するデュワーと、
前記デュワーを固定し保持するガントリーと、を備え、
前記身体保持具は、少なくとも、円筒形状をなし被検者が横たわった状態にて固定し得る身体保持部と、前記身体保持部へ被検者が乗り込み可能とする開閉可能な蓋を有することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項4】
請求項2に記載の生体磁気計測装置において、
円筒形状をなし、前記測定センサを水平方向に複数整列し収容するデュワーと、
前記デュワーの側面であって、前記身体保持具と対向する側に設けられた測定部と、
前記デュワーを固定し保持するガントリーと、を備え、
前記身体保持具は、少なくとも、被検者を座位状態にて固定し得る椅子状の身体保持部を有することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項5】
請求項3に記載の生体磁気計測装置において、
前記身体保持具の前後左右上下動作、被検者の体軸中心に回転動作、及び被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作する動作量を計測するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサにより計測される動作量に基づき前記身体保持具の位置情報を求め、求めた前記身体保持具の位置情報と前記測定センサにより計測される磁場データとを紐付けで記憶部に格納することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項6】
請求項4に記載の生体磁気計測装置において、
前記身体保持具の前後左右上下動作、被検者の体軸中心に回転動作、及び被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作する動作量を計測するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサにより計測される動作量に基づき前記身体保持具の位置情報を求め、求めた前記身体保持具の位置情報と前記測定センサにより計測される磁場データとを紐付けで記憶部に格納することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項7】
請求項5に記載の生体磁気計測装置において、
前記制御部は、前記記憶部に予め複数の指定角度を格納し、格納された指定角度毎に前記身体保持具を被検者の体軸中心に回転動作させ、前記測定センサにより磁場データを計測させることを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項8】
請求項6に記載の生体磁気計測装置において、
前記制御部は、前記記憶部に予め複数の指定角度を格納し、格納された指定角度毎に前記身体保持具を被検者の体軸中心に回転動作させ、前記測定センサにより磁場データを計測させることを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項9】
請求項7に記載の生体磁気計測装置において、
前記デュワーを挟むよう対向配置される対をなす安全センサを備え、
前記安全センサは、前記被検者の測定部位が前記デュワーの底面に接触することを防止するよう、前記身体保持具の動作を停止させることを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項10】
請求項8に記載の生体磁気計測装置において、
前記デュワーの鉛直方向上面及び鉛直方向下面に前記測定部を挟むよう対向配置される対をなす安全センサを備え、
前記安全センサは、前記被検者の測定部位が前記デュワーの測定部に接触することを防止するよう、前記身体保持具の動作を停止させることを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の生体磁気計測装置において、
前記制御部は、前記測定センサにより計測される磁場データに基づき電気軸を算出し、前記電気軸と前記被検者の体軸とが一致又は平行となる状態で、被検者の測定部位を前記測定センサにて磁場データを計測することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項12】
請求項9又は請求項10に記載の生体磁気計測装置において、
前記制御部は、前記記憶部に予め設定された指定回数に応じて、被検者の測定部位を前記測定センサにて磁場データを計測することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項13】
請求項11に記載の生体磁気計測装置において、
油圧駆動部を備え、
前記油圧駆動部より供給される油圧により、前記身体保持具が、前後左右上下動作、被検者の体軸中心に回転動作、及び被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項14】
請求項12に記載の生体磁気計測装置において、
油圧駆動部を備え、
前記油圧駆動部より供給される油圧により、前記身体保持具が、前後左右上下動作、被検者の体軸中心に回転動作、及び被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載の生体磁気計測装置において、
前記身体保持具は、非磁性体にて形成されていることを特徴とする生体磁気計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓磁気計測装置(以下、心磁計と称する)は他の医療機器に比べ臨床利用開始からまだ日は浅いものの、これまでの臨床研究の結果、心磁計の有効性が確認されつつある。例えば心磁計を使用した心磁図検査では、従来の心電計を利用した心電図では判別不能であった不整脈をはじめとした心臓の病気の発生場所や重症度などについて診断が可能であることが明らかとなってきている。
一方で、発生場所をより正確に位置特定するためには、これまで以上に空間分解能を上げたデータ解析が必要であるなどいくつかの課題がある。
従来の心磁計に測定センサとして用いられている超伝導量子干渉素子(Supercondcuting Quantum Interference Device:以下、SQUIDセンサと称する)は、超伝導状態で利用するため液体Heに浸漬させた状態で使用する必要がある。そのため心磁計は液体Heを貯蔵するデュワーを備え、デュワー内にSQUIDセンサを配置した構造となっている。また、SQUIDセンサ自体が高価なため、測定対象物の周囲を覆うように多数のSQUIDセンサを配置することは、機器価格を大きく上昇させる要因となる。そのため、測定対象物の1方向の投影面積を覆うだけの必要最小数のSQUIDセンサを配置する構成としている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載される心磁計が知られている。特許文献1に記載される心磁計では、デュワーが固定されているため、測定センサと被検者の相対位置調整は、デュワーの下方に配置されたベッドで行っている。予め被検者の身体に3点の目印を付しておき、ベッドに被検者が横たわった後、被検者の3点の目印が投光される十字ビームパターン上に乗るように、検査技師により前後送りハンドル及び左右送りハンドルを操作してベッドを前後左右上下に位置調整する旨記載されている。またベッド上で、被検者の体勢(仰向け、うつ伏せ、斜位、横向きなど)を変えることにより、複数方向から測定することが可能である。
また、生体が発する磁気を計測対象とする生体磁気計測装置ではないものの、例えば、特許文献2には、ベッドの横断面を円形とし、円周方向に自動的に回転させることにより、寝ている状態で自然に近い寝返りを可能とする介護ベッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO1999/049781号公報
【特許文献2】特開2001−258956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
心磁計において複数方向から磁場計測を行おうとすると、被検者は測定方向を変えるために複数回体勢を変える必要があり、また測定中はその体勢を一定時間維持する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載される構成では、仮に、被検者の体勢を変え、各体勢におけるデータを複数取得したとしても、各データを取得した際の被検者と測定センサの相対位置情報を関連付ける点については考慮されておらず、複数データを組み合わせて解析をすることが困難であり、更なる改善の余地がある。
また、特許文献2に記載される構成では、そもそも生体が発する磁気を計測する測定センサを有しておらず、当然、各データを取得した際の被検者と測定センサの相対位置情報を関連付ける点については何ら考慮されていない。
そこで、本発明は、被検者の各測定部位と計測されるデータを組み合わせた解析を被検者に負担を強いることなく可能とする生体磁気計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る生体磁気計測装置は、生体が発する磁気を測定する生体磁気計測装置であって、測定センサに対し被検者の測定部位を所定の位置に保持するための身体保持具と、制御部とを備え、前記身体保持具は、被検者の体軸を固定した状態で、前後左右上下動作、被検者の体軸中心に回転動作、及び被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作し、前記制御部は、前記身体保持具を被検者の体軸に垂直な軸周りに回転動作させることにより、角度を変えながら、前記被検者の測定部位を前記測定センサに近接させて磁場データを複数回にわたって計測し、前記複数回の計測ごとに、前記測定センサにより計測される磁場データと前記身体保持具の位置情報とを紐付けで記憶部に格納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検者の各測定部位と計測されるデータを組み合わせた解析を被検者に負担を強いることなく可能とする生体磁気計測装置を提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】生体磁気計測装置の外観斜視図。
図2図1に示す生体磁気計測装置の三面図。
図3図1に示す生体磁気計測装置を構成する身体保持具の外観斜視図。
図4図3に示す身体保持具の三面図である。
図5図3に示す身体保持具の動作機構の概略構成を示す三面図。
図6図2に示す生体磁気計測装置における準備動作のフロー図。
図7図2に示す生体磁気計測装置における測定動作のフロー図。
図8図2に示す生体磁気計測装置における事後動作のフロー図。
図9】実施例2の生体磁気計測装置の外観斜視図。
図10図9に示す生体磁気計測装置の三面図である。
図11図9に示す生体磁気計測装置を構成する身体保持具の外観斜視図。
図12図11に示す身体保持具の三面図。
図13図11に示す身体保持具の動作機構の概略構成を示す三面図。
図14図10に示す生体磁気計測装置における準備動作のフロー図。
図15図10に示す生体磁気計測装置における測定動作のフロー図。
図16図10に示す生体磁気計測装置における事後動作のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、生体磁気計測装置とは、心臓磁気計測装置(心磁計)及び脳磁気計測装置(脳磁計)を含むものである。また、体軸とは、被検者が横たわった状態では頭頂部より足先までの軸を指し、被検者が座位の状態では頭頂部より腰部までの軸を指す。
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。なお、以下では、本発明の生体磁気計測装置を心臓磁気計測装置(心磁計)に適用した場合を一例として説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は実施例1の生体磁気計測装置の外観斜視図であり、図2図1に示す生体磁気計測装置の三面図である。図1及び図2に示すように、生体磁気計測装置100は、液体ヘリウム(He)を貯蔵しSQUIDセンサが内装されるデュワー1、デュワー1を固定し保持するガントリー2、身体保持具3、安全センサ4、油圧駆動部5、及び制御部6より構成される。
デュワー1に内装される複数のSQUIDセンサは、鉛直方向下向きに整列し配置され、デュワー1の底面側に位置する測定対象物が発する微弱磁場(微弱磁気)を測定する。なお、測定対象物としての被検者の測定部位に対向するデュワー1の底面は略平坦な面にて形成されている。身体保持具3はデュワー1の底面の下方に配置される。被検者は、身体保持具3がデュワー1の底面直下ではなく、身体保持具3がデュワー1の底面よりも手前に位置付けられた状態(身体保持具3の初期位置)で身体保持具3に乗り込む。検査技師は被検者の身体を身体保持具3に固定した後、身体保持具3の蓋8を閉める。なお、被検者の身体が身体保持具3に固定された時点で、体軸が定まる。その後検査技師は制御部6よりスタート信号を入力することで身体保持具3は移動動作を開始し、その後測定へと動作が遷移する。ここで、制御部6は、例えば、CPU等のプロセッサ、プログラムを格納するROM、ROMより読み出されたプログラムをプロセッサが実行する過程のデータ等を一時的に格納するRAM等の記憶装置にて実現される。また、制御部6は、詳細後述する、デュワー1に内装される複数のSQUIDセンサである測定センサにより計測される計測データ(磁場データ)と、身体保持具3の位置情報とを紐付けで格納する記憶部(図示せず)を備える。
【0011】
また、油圧駆動部5は、詳細後述する油圧モータ10及び油圧シリンダ12と油圧配管を介して接続されると共に、信号線を介して制御部6に電気的に接続されている。
図2の上面図及び側面図に示すように、安全センサ4は、対をなしデュワー1を挟むよう対向配置されている。対をなす安全センサ4のうち、一方の安全センサ4はガントリー2のデュワー1側に設置され、他方の安全センサ4はデュワー1を挟むよう上記一方の安全センサ4と所定の距離だけ離間する位置に設置されている。安全センサ4は、例えば赤外線センサにて実現され、図2の側面図に示すように、デュワー1の底面から下方に所定の距離にて投光ラインに沿って赤外線を照射し、仮に、赤外線が遮られた場合、被検者の測定部位が当該位置(投光ライン)に達していることを検知する。安全センサ4は、被検者の測定部位がデュワー1の底面に接触することを防止するため設置されるものであり、その検知範囲の設定は、例えば、次のように設定される。一般的に磁場は磁場源からの距離の二乗に反比例して減衰する。被検者の測定部位より発せられる磁場、すなわち、生体磁場は微弱磁場であることから、S―N比の良いデータを計測するためには、デュワー1の底面、すなわち、デュワー1に内装される測定センサに被検者の測定部位を近接させる必要がある。従って、検知範囲は、S―N比及び被検者の測定部位のデュワー1の底面への接触回避を考慮して、適宜設定される。
【0012】
以下に身体保持具3の詳細について説明する。図3図1に示す生体磁気計測装置100を構成する身体保持具3の外観斜視図であり、図4図3に示す身体保持具3の三面図、図5図3に示す身体保持具の動作機構の概略構成を示す三面図である。
図3において左図は身体保持具3の蓋閉状態を示し、右図は身体保持具3の蓋開状態を示している。図3に示すように、身体保持具3は、身体保持部7、蓋8、及び身体保持具3の長手方向両端部に設けられるカバー17を備える。また、身体保持具3は、図4及び図5に示すように、更に、身体保持具回転台座9a、身体保持具台座9b、油圧モータ10、上下動可能なリンク機構11、油圧シリンダ12、歯車13、車輪14、ポテンショメータ15、ラック&ピニオン機構16、台座保持具18、及び小径の歯車19を有する。各動作は油圧駆動であり、油圧駆動部5(図2)より供給された油圧で動作する。なお、油圧駆動部5は身体保持具3の近傍に設置する必要は無く、生体磁気計測装置100を外部の磁気雑音から遮蔽する磁気シールドルーム(以下、MSRと称する)内に設置し使用する場合は、油圧配管の長さを変えることによりMSRの外部に設置しても良い。油圧駆動部5より供給された油圧にて、各動作軸に配置された複数の油圧モータ10及び油圧シリンダ12が動作する。なお、上述の身体保持具3を構成する各構成部材は非磁性体にて形成されている。
【0013】
図5の側面図に示すように、身体保持具3は、車輪14とそれに取り付けた油圧モータ10(図示せず)を駆動することで、レールに沿って左右動作を行う。このとき、左右方向の移動量は、随時ポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた左右方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6(図2)へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3の左右方向の位置を常時監視することができる。
また、図5の側面図に示すように、被検者が乗り込む身体保持部7は身体保持具回転台座9aの上に小径の歯車19を介して位置する。身体保持具回転台座9a及び身体保持具台座9bは、油圧シリンダ12及び上下動可能なリンク機構11により上下動作を行う。このとき、上下方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6(図2)へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3の上下方向の位置を常時監視することができる。上下動可能なリンク機構11の下端部は台座保持具18の上面に、また、上下動可能なリンク機構11の上端部は身体保持具台座9bの下面に摺動可能に取り付けられている。
【0014】
図5の上面図に示すように、身体保持具3を構成する身体保持具回転台座9aは、水平に設置される油圧シリンダ12(図示せず)にてYaw方向の回転動作も行う。具体的には、図5の上面図及び正面図に示すように、身体保持具台座9bの上面には、所定の円弧状のラック&ピニオン機構16を構成するラックが配されており(図5の上面図では説明の便宜上、透過し点線で示している)、当該ラックと対向する身体保持具回転台座9aの下面に配されるラック&ピニオン機構16を構成するピニオンギアとが噛み合い、水平に配置した油圧シリンダ12(図示せず)により駆動され、身体保持部7は、当該身体保持部7を保持する身体保持具回転台座9aと共にYaw方向に回転動作可能に構成されている。Yaw方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされたYaw方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6(図2)へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3を構成する身体保持部7のYaw方向の位置を常時監視することができる。また、ラック&ピニオン機構16とそれに取り付けた油圧モータ10を駆動することで、図5の正面図に示すように、身体保持具3を構成する身体保持部7は前後動作を行う。前後方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされた前後方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6(図2)へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3を構成する身体保持部7の前後方向の位置を常時監視することができる。
【0015】
図5の側面図に示すように、身体保持部7は油圧モータ10から歯車13を介し回転動作が伝達され、Roll方向の回転動作を行う。具体的には、図4の上面図及び正面図に示すように、円筒状の身体保持部7の長手方向の両端部に外周面を覆うようそれぞれ歯車13が設けられている。また、図5の側面図に示すように、身体保持具回転台座9aの上面に、歯車13と噛み合う小径の歯車19が設けられている。油圧モータ10により小径の歯車19が回転駆動され、小径の歯車19と噛み合う歯車13に回転力が伝達されることにより、身体保持部7が、Roll方向の回転動作を行う。Roll方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされたRoll方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6(図2)へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3を構成する身体保持部7のRoll方向の位置を常時監視することができる。
なお、ポテンショメータ15として、例えばエンコーダなどが用いられる。
【0016】
上述の安全センサ4は、検知範囲内に被検者の測定部位が侵入した(達した)ことを検知すると、制御部6とは独立して油圧駆動部5の動作を停止する。これにより、被検者の測定部位がデュワー1の底面に接触することを防止することが可能となる。
【0017】
身体保持具3はデュワー1の直下に移動後、制御部6及び油圧駆動部5は身体保持具3を上昇させ、身体保持具3の頂点とデュワー1の底面との間隙が所定の距離又は所望の距離(計測可能な距離)となる高さまで上昇する。その後、身体保持具3の動作を停止させ、磁場計測を開始する。制御部6は計測した結果を解析し、磁場の電気軸を算出する。電気軸とは、心臓の同結節から右下方向に向かって心室方向へ伝わる刺激の傾きを指し、この電気軸は正常範囲があるが、疾患の無い健常者間でもある程度のばらつきがあることが知られている。磁場の電気軸の算出は、測定センサにて計測される磁場データ(生体磁気データ)により電流のベクトルが得られ、得られた電流のベクトルに基づき制御部6が各被検者特有の電気軸を求める。続いて制御部6は、算出した電気軸に基づき、体軸と電気軸が一致または平行となるよう身体保持具3をYaw方向に回転させる。その後、再度磁場計測を行い、測定センサより磁場データを取得する。取得した磁場データは制御部6に備えられる図示しないメモリなどの記憶部に格納される。なお、制御部6は、測定時における身体保持具3の各動作軸に取り付けられたポテンショメータ15の値、若しくは、その値から算出された空間座標データの情報と、測定センサより取得した磁場データ(生体磁気データ)とを紐付けて、記憶部の所定の記憶領域に格納する。換言すれば、制御部6は、デュワー1に内装される測定センサにより計測される磁場データ(生体磁気データ)と身体保持具3の位置情報とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。これにより測定データと身体保持具3の位置情報は1対1に紐付けられて保存されることとなる。
【0018】
本実施例の生体磁気計測装置100の動作フローの詳細につき以下説明する。
図6図2に示す生体磁気計測装置100における準備動作のフロー図であり、図7図2に示す生体磁気計測装置100における測定動作のフロー図、図8図2に示す生体磁気計測装置100における事後動作のフロー図である。
【0019】
<準備動作>
先ず準備動作につき説明する。図6に示すように、ステップS101では、生体磁気計測装置100を構成する身体保持具3がデュワー1の底面よりも手前に位置付けられた状態(身体保持具3の初期位置)で、被検者が、蓋8が開かれた状態の身体保持具3の身体保持部7へ乗り込み、身体保持部7上に仰向けに横たわる。ステップS102では、検査技師が被検者の身体を身体保持具3に固定する。ステップS103では被検者の身体が身体保持具3に確実に固定されたか否かを確認する。確認の結果、身体保持具3への固定が不完全な場合にはステップS102へ戻り、身体保持具3への固定が確認できた場合はステップS104へ進む。なお、この時点で体軸が定まる。
【0020】
ステップS104では、検査技師は身体保持具3を構成する蓋8を閉じる。ステップS105では、蓋8が確実に閉じられたか否かを確認する。確認の結果、蓋8の閉じ方が不完全な場合はステップS104へ戻り、確実に蓋8が閉状態であることが確認できた場合はステップS106へ進む。
ステップS106では、検査技師が制御部6よりスタート信号を入力することで身体保持具3は動作を開始する。なお、後述する身体保持具3の各種動作に関する位置の設定は、予め制御部6に設定され、当該設定された情報は、制御部6の図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納されている。
【0021】
ステップS107では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の車輪14に取り付けた油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧モータ10を駆動し車輪14がレールに沿って左右方向に移動する(身体保持具3の左右動作)。このとき、左右方向の移動量が、随時ポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた左右方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS108では、制御部6は受信した左右方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された位置情報とを比較し、身体保持具3がデュワー1の底面の直下に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3がデュワー1の底面の直下に到達していない場合にはステップS107へ戻り身体保持具3の左右動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3がデュワー1の底面の直下に到達した場合にはステップS109へ進む。
【0022】
ステップS109では、制御部6からの指令に応じてラック&ピニオン機構16とそれに取り付けた油圧モータ10を駆動することで、身体保持具3を構成する身体保持部7が前後方向に移動する(身体保持具3の前後動作)。このとき、前後方向の移動量がポテンショメータ15でカウントされ、カウントされた前後方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS110では、制御部6は受信した前後方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された位置情報とを比較し、身体保持具3がデュワー1の底面の直下に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3がデュワー1の底面の直下に到達していない場合にはステップS109へ戻り身体保持具3の前後動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3がデュワー1の底面の直下に到達した場合にはステップS111へ進む。
【0023】
ステップS111では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3を上昇動作させる(身体保持具3の上昇動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS112では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3が指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達していない場合にはステップS111へ戻り身体保持具3の上昇動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達した場合にはステップS113へ進む。
【0024】
ステップS113では、制御部6からの指令に応じてデュワー1に内装される測定センサによる測定(プレ測定)が実行される。
ステップS114では、測定センサにより計測された計測データ(磁場データ)を、信号線を介して制御部6が取得する。制御部6は、取得した計測データ(磁場データ)と身体保持具3の位置情報(身体保持具3の左右、前後、及び高さ情報含む)とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。
ステップS115では、制御部6はデータ解析を実行する。具体的には、制御部6は、データ解析の一つとして、電気軸を算出する。電気軸の算出は、上述のように、測定センサにて計測される計測データ(磁場データ)により電流のベクトルが得られ、得られた電流のベクトルに基づき被検者特有の電気軸を求める。
【0025】
ステップS116では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3を下降動作させる(身体保持具3の下降動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS117では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3が指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達していない場合にはステップS116へ戻り身体保持具3の下降動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達した場合にはステップS118へ進む。
【0026】
ステップS118では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の水平に設置される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、水平に設置される油圧シリンダ12を駆動し、ラック&ピニオン機構16により身体保持具回転台座9a及び身体保持部7がYaw方向の回転動作を行う(体軸に垂直な軸周りに回転動作)。このとき、Yaw方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされたYaw方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップ119では、制御部6は、上述のステップS115にて算出された電気軸と体軸とが一致又は平行状態にあるか否かを判定する。判定の結果、電気軸と体軸とが一致又は平行状態にない場合にはステップS118へ戻り身体保持具回転台座9a及び身体保持部7がYaw方向の回転動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、電気軸と体軸とが一致又は平行状態にある場合には準備動作を終了する。
【0027】
<測定動作>
図7に示すように、ステップS121では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3を上昇動作させる(身体保持具3の上昇動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS122では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3が指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達していない場合にはステップS121へ戻り身体保持具3の上昇動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達した場合にはステップS123へ進む。
【0028】
ステップS123では、制御部6からの指令に応じてデュワー1に内装される測定センサによる測定(通常測定)が実行される。
ステップS124では、測定センサにより計測された計測データ(磁場データ)を、信号線を介して制御部6が取得する。制御部6は、取得した計測データ(磁場データ)と身体保持具3の位置情報とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。
【0029】
ステップS125では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3を下降動作させる(身体保持具3の下降動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS126では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3が指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達していない場合にはステップS125へ戻り身体保持具3の下降動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達した場合にはステップS127へ進む。
【0030】
ステップS127では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の小径の歯車19に接続される油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、小径の歯車19が回転駆動し小径の歯車19と噛み合う歯車13に回転力が伝達されることにより、身体保持部7がRoll方向に回転動作を行う(体軸中心に回転動作)。このとき、Roll方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされたRoll方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS128では、制御部6は受信したRoll方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定角度とを比較し、身体保持具3が指定角度に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が指定角度に到達していない場合にはステップS127へ戻り身体保持具3(身体保持部7)のRoll動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が指定角度に到達した場合にはステップS129へ進む。
【0031】
ステップS129では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3を上昇動作させる(身体保持具3の上昇動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS130では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3が指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達していない場合にはステップS129へ戻り身体保持具3の上昇動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が指定高さに到達した場合にはステップS131へ進む。
【0032】
ステップS131では、制御部6からの指令に応じてデュワー1に内装される測定センサによる測定(通常測定)が実行される。
ステップS132では、測定センサにより計測された計測データ(磁場データ)を、信号線を介して制御部6が取得する。制御部6は、取得した計測データ(磁場データ)と身体保持具3の位置情報とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。
【0033】
ステップS133では、制御部6は、図示しない記憶部に予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施されたか否かを判定する。判定の結果、予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施されていない場合にはステップS125へ戻り以降の動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施され場合には測定動作を終了する。
なお、上述のステップS127における身体保持具3のRoll動作、ステップS129における身体保持具3の上昇動作及びステップS133における予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施されたか否かを判定は、被検者の体勢毎の磁場データ(生体磁場)を測定するため、身体保持具3のRoll動作及び上昇動作を行っている。
【0034】
このように、生体磁気計測装置100を心磁計に適用し、心磁計が上述の測定動作を実行すること、すなわち、被検者の測定部位(胸部)に、微弱な生体磁気を計測するための計測センサを近接させ、その状態を維持しつつ身体保持具3を回転動作(Roll動作)することにより、被検者に負担を強いることなく、被検者の体勢毎の磁場データを取得することが可能となる。換言すれば、被検者の各測定部位と計測されるデータを組み合わせた解析を被検者に負担を強いることなく実行することが可能となる。
【0035】
<事後動作>
上述の測定動作終了後に実行される事後動作につき説明する。図8に示すように、ステップS141では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3を下降動作させる(身体保持具3の下降動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS142では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3が初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達していない場合にはステップS141へ戻り身体保持具3の下降動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達した場合にはステップS143へ進む。
【0036】
ステップS143では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の小径の歯車19に接続される油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、小径の歯車19が回転駆動し小径の歯車19と噛み合う歯車13に回転力が伝達されることにより、身体保持部7がRoll方向に回転動作を行う(体軸中心に回転動作)。このとき、Roll方向の移動量はポテンショメータ15でカウントカウントされ、カウントされたRoll方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS144では、制御部6は受信したRoll方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3が初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達していない場合にはステップS143へ戻り身体保持具3(身体保持部7)のRoll動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達した場合にはステップS145へ進む。
【0037】
ステップS145では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の水平に設置される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、水平に設置される油圧シリンダ12を駆動し、ラック&ピニオン機構16により身体保持具回転台座9a及び身体保持部7がYaw方向の回転動作を行う(体軸に垂直な軸周りに回転動作)。このとき、Yaw方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされたYaw方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS146では、制御部6は、受信したYaw方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3が初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達していない場合にはステップS145へ戻り身体保持具3(身体保持部7)のYaw動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達した場合にはステップS147へ進む。
【0038】
ステップS147では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の車輪14に取り付けた油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧モータ10を駆動し車輪14がレールに沿って左右方向に移動する(身体保持具3の左右動作)。このとき、左右方向の移動量が、随時ポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた左右方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS148では、制御部6は受信した左右方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3が初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達していない場合にはステップS147へ戻り身体保持具3の左右動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達した場合にはステップS149へ進む。
【0039】
ステップS149では、検査技師は身体保持具3を構成する蓋8を開ける。ステップS149では、蓋8が確実に開けられたか否かを確認する。確認の結果、蓋8の開け方が不完全な場合はステップS149へ戻り、確実に蓋8が開状態であることが確認できた場合はステップS151へ進む。
ステップS151では、検査技師が被検者の身体の身体保持具3への固定を解除する。ステップS152では、被検者の身体の身体保持具3への固定の解除が確実に実行されたか否かを確認する。確認の結果、身体保持具3への固定の解除が不完全な場合にはステップS151へ戻り、身体保持具3への固定の解除が確認できた場合はステップS153へ進む。ステップS153では、被検者が、蓋8が開かれた状態の身体保持具3の身体保持部7より降りる。
【0040】
なお、本実施例では、駆動アクチュエータとして油圧モータ10及び油圧シリンダ12を用いる場合を示したが、駆動アクチュエータはこれらに限られるものではない。例えば、モータや、サーボ、スプリングなど同様の動作が可能であれば他の駆動アクチュエータを用いる構成としても良い。
【0041】
以上の通り本実施例によれば、被検者の各測定部位と計測されるデータを組み合わせた解析を被検者に負担を強いることなく可能とする生体磁気計測装置を提供することが可能となる。
また、本実施例によれば、被検者の体軸に対し複数角度から生体磁場を計測でき、また測定センサと被検者の距離を所定の距離で保持(測定センサに対し被検者の測定部位を所定の位置に保持)できるため、各角度における測定センサと被検者を最接近した状態でデータ測定が可能となる。磁場は磁場源からの距離の二乗に反比例して減衰することから、被検者の体表面に近接してデータ測定できれば磁場強度がより大きい状態で計測できることとなり、S―N比の良いデータが安定して取得することが可能となる。
また、複数の方向(複数の角度)から計測した計測データ(磁場データ)には、それぞれ計測の際の身体保持具の位置情報が紐付けられているため、複数データを利用したデータ解析が容易且つ正確となる。これにより磁場分布データの空間分解能の向上に繋がり、心臓等の疾患部位特定の精度向上にも寄与できる。
【0042】
更には、被検者は身体保持具に固定後は、被検者自身が向きを変える必要が無く、被検者が体勢を維持する必要もないため、被検者に対する身体的負担を軽減することが可能となる。
また、測定方向を変えるための位置調整を検査技師が行うことが不要となり、検査技師の体力的負担の軽減、また検査時間の短縮化が図られる。
また、被検者毎に異なる電気軸のばらつきを排除した磁場データ測定が可能となることから、被検者間のデータ比較が可能となり、疾患心磁図データのデータベース化などができるようになる可能性が広がる。
【0043】
なお、本実施例では、生体磁気計測装置100を心磁計に適用した場合を例に説明したが、生体磁気計測装置100を脳磁計に適用することも可能である。この場合、被検者の測定部位は、頭蓋或いは頭部の一部となり、被検者の測定部位に対向するデュワー1の底面は湾曲形状(球体を近似した凹部)となる。そして身体保持具3を回転動作(Roll動作)することにより頭部の周囲を測定することが可能となる。
【実施例2】
【0044】
図9は実施例2の生体磁気計測装置の外観斜視図であり、図10図9に示す生体磁気計測装置の三面図である。本実施例の生体磁気計測装置は、身体保持具の形状及び対をなす安全センサの設置位置並びにデュワーに設けられる測定部の形状が、上述の実施例1と異なる。実施例1と同様の構成要素に同一符号付し、以下本実施例の生体磁気計測装置について説明する。
【0045】
図9及び図10に示すように、生体磁気計測装置200は、液体ヘリウム(He)を貯蔵しSQUIDセンサが内装されるデュワー1、デュワー1を固定し保持するガントリー2、身体保持具3a、安全センサ4、油圧駆動部5、及び制御部6より構成される。
デュワー1に内装されるSQUIDセンサは水平に整列し配置され、デュワー1の正面側に位置する測定対象物が発する微弱磁場(微弱磁気)を測定する。すなわち、円筒形状のデュワー1の側面であって、身体保持具3aと対向する側(正面側)に設けられた測定部1a内にSQUIDセンサが水平に整列し配置されている。なお、測定対象物としての被検者の測定部位に対向するデュワー1に設けられた測定部1aの表面は円形状をなし略平坦な面にて形成されている。身体保持具3aはデュワー1の正面の手前側に配置される。被検者は、身体保持具3aが手前に配置された状態(身体保持具3aの初期位置)で身体保持具3aに乗り込む。検査技師は被検者の身体をベルト(図示せず)で身体保持具3aに固定する。なお、被検者の身体がベルトにて身体保持具3aに座位状態にて固定された時点で、体軸が定まる。その後検査技師は制御部6よりスタート信号を入力することで身体保持具3aは移動動作を開始し、その後測定へと動作が遷移する。ここで、制御部6は、例えば、CPU等のプロセッサ、プログラムを格納するROM、ROMより読み出されたプログラムをプロセッサが実行する過程のデータ等を一時的に格納するRAM等の記憶装置にて実現される。また、制御部6は、詳細後述する、デュワー1に水平に整列し内装される複数のSQUIDセンサである測定センサ(測定部1a)により計測される計測データ(磁場データ)と、身体保持具3aの位置情報とを紐付けで格納する記憶部(図示せず)を備える。
【0046】
図10の正面図及び側面図に示すように、安全センサ4は、対をなしデュワー1の鉛直方向上面及び鉛直方向下面に測定部1aを挟むよう対向配置されている。安全センサ4は、例えば赤外線センサにて実現され、図10の側面図に示すように、対をなす安全センサ4間を投光ラインに沿って赤外線を照射し、仮に、赤外線が遮られた場合、被検者の測定部位が当該位置(投光ライン)に達していることを検知する。安全センサ4は、被検者の測定部位がデュワー1の側面に設けられる測定部1aの表面に接触することを防止するため設置されるものであり、その検知範囲の設定は、例えば、次のように設定される。一般的に磁場は磁場源からの距離の二乗に反比例して減衰する。被検者の測定部位より発せられる磁場、すなわち、生体磁場は微弱磁場であることから、S―N比の良いデータを計測するためには、デュワー1の側面に設けられる測定部1aの表面、すなわち、デュワー1に水平に整列し内装される測定センサに被検者の測定部位を近接させる必要がある。従って、検知範囲は、S―N比及び被検者の測定部位のデュワー1の側面に設けられる測定部1aの表面への接触回避を考慮して、適宜設定される。
【0047】
以下に身体保持具3aの詳細について説明する。図11図9に示す生体磁気計測装置200を構成する身体保持具3aの外観斜視図であり、図12図11に示す身体保持具3aの三面図、図13図11に示す身体保持具3aの動作機構の概略構成を示す三面図である。
図11に示すように、身体保持具3aは、ステップ(足置き)及び座面並びに背もたれよりなる椅子状の身体保持部7a、及び身体保持具回転台座9cを備える。また、身体保持具3aは、図12及び図13に示すように、更に、台座保持具18、油圧モータ10、上下動可能なリンク機構11、油圧シリンダ12、歯車13a、ポテンショメータ15、ラック&ピニオン機構16、及び台座保持具18を備える。身体保持部7aは、被検者が座した場合に身体を固定するためのベルト(図示せず)を備える。図12に示すように、身体保持具3aは、身体保持部7aが、前後動作、左右動作、上下動作、Roll回転動作(体軸に垂直な軸周りに回転動作)、及びYaw回転動作(体軸中心に回転動作)が可能な構造を有する。各動作は油圧駆動であり、油圧駆動部5(図10)より供給された油圧で動作する。なお、油圧駆動部5は身体保持具3aの近傍に設置する必要は無く、生体磁気計測装置200を外部の磁気雑音から遮蔽する磁気シールドルーム(以下、MSRと称する)内に設置し使用する場合は、油圧配管の長さを変えることでMSRの外部に設置しても良い。油圧駆動部5より供給された油圧にて、各動作軸に配置された複数の油圧モータ10及び油圧シリンダ12を動作する。なお、上述の身体保持具3aを構成する各構成部材は非磁性体にて形成されている。また、身体保持部7aを構成する背もたれは、被検者の背面を測定可能とするため、背もたれの高さを可能な限り低くすることが望ましく、背もたれの高さを可変とし得る構成としても良い。
【0048】
図13の側面図に示すように、身体保持具3aは、台座保持具18に内蔵される油圧モータ10を駆動することで前後動作を行う。このとき、前後方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた前後方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6(図10)へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3aの前後方向の位置を常時監視することができる。
また、図13の側面図に示すように、被検者の乗る身体保持部7aは身体保持具回転台座9cの上に位置し、身体保持具回転台座9cは台座保持具18に内蔵される油圧シリンダ12及び上下動可能なリンク機構11により上下動作を行う。このとき、上下方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3aの上下方向の位置を常時監視することができる。
【0049】
図13の上面図に示すように、身体保持具3aを構成する身体保持具回転台座9cは、水平に設置される油圧モータ10にてYaw方向の回転動作も行う。これにより、身体保持具回転台座9cの上に位置する身体保持部7aは、身体保持具回転台座9cと共にYaw方向に回転動作する。このとき、Yaw方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされたYaw方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3aを構成する身体保持部7aのYaw方向の位置を常時監視することができる。また、ラック&ピニオン機構16とそれに取り付けた油圧モータ10を駆動することで、身体保持具3aを構成する身体保持部7aは左右動作を行う。左右方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた左右方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3aを構成する身体保持部7aの左右方向の位置を常時監視することができる。
【0050】
図13の正面図に示すように、身体保持部7aは油圧モータ10から歯車13aを介し回転動作が伝達され、Roll方向の回転動作を行う。このとき、Roll方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされたRoll方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。これにより、制御部6は、身体保持具3aを構成する身体保持部7aのRoll方向の位置を常時監視することができる。
なお、ポテンショメータ15として、例えばエンコーダなどが用いられる。
【0051】
上述の安全センサ4は、検知範囲内に被検者の測定部位が侵入した(達した)ことを検知すると、制御部6とは独立して油圧駆動部5の動作を停止する。これにより、被検者の測定部位がデュワー1の測定部1aに接触することを防止することが可能となる。
【0052】
身体保持具3aを上昇させ、測定対象をデュワー1の測定部1aと一致する所定の高さまで上昇する。その後、身体保持具3aをデュワー1の手前に移動し、被検者の体表面(測定部位)がデュワー1の測定部1aと近接する所定の距離又は所望の距離(計測可能な距離)で停止し、磁場計測を開始する。制御部6は計測した結果を解析し、磁場の電気軸を算出する。電気軸とは、心臓の同結節から右下方向に向かって心室方向へ伝わる刺激の傾きを指し、この電気軸は正常範囲があるが、疾患の無い健常者間でもある程度のばらつきがあることが知られている。磁場の電気軸の算出は、測定センサにて計測される磁場データ(生体磁気データ)により電流のベクトルが得られ、得られた電流のベクトルに基づき制御部6が各被検者特有の電気軸を求める。続いて制御部6は、算出した電気軸に基づき、体軸と電気軸が一致または平行となるよう身体保持具3aをRoll方向に回転させる。その後、再度磁場計測を行い、測定センサより磁場データを取得する。取得した磁場データは制御部6に備えられる図示しないメモリなどの記憶部に格納される。なお、制御部6は、測定時における身体保持具3aの各動作軸に取り付けられたポテンショメータ15の値、若しくは、その値から算出された空間座標データの情報と、測定センサより取得した磁場データ(生体磁気データ)とを紐付けて、記憶部の所定の記憶領域に格納する。換言すれば、制御部6は、デュワー1に内装される測定センサにより計測される磁場データ(生体磁気データ)と身体保持具3の位置情報とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。これにより測定データと身体保持具3aの位置情報は1対1に紐付けられて保存されることとなる。
【0053】
本実施例の生体磁気計測装置200の動作フローの詳細につき以下説明する。
図14図10に示す生体磁気計測装置200における準備動作のフロー図であり、図15図10に示す生体磁気計測装置200における測定動作のフロー図、図16図10に示す生体磁気計測装置200における事後動作のフロー図である。
【0054】
<準備動作>
先ず準備動作につき説明する。図14に示すように、ステップS201では、生体磁気計測装置200を構成する身体保持具3aがデュワー1の測定部1aよりも手前に位置付けられた状態(身体保持具3aの初期位置)で、被検者が、身体保持具3aの身体保持部7aへ乗り込み、身体保持部7aに座る。ステップS202では、検査技師が被検者の身体を身体保持部7aにベルトにて固定する。ステップS203では被検者の身体が身体保持部7aに確実に固定されたか否かを確認する。確認の結果、身体保持部7aへの固定が不完全な場合にはステップS202へ戻り、身体保持部7aへの固定が確認できた場合はステップS204へ進む。なお、この時点で体軸が定まる。
【0055】
ステップS204では、検査技師が制御部6よりスタート信号を入力する。
ステップS204では、制御部6よりスタート信号が入力されたか否かを確認する。確認の結果、スタート信号が入力されていない場合にはステップS204へ戻り、スタート信号が入力されている場合にはステップS206へ進む。
【0056】
ステップS206では、身体保持具3aは動作を開始する。なお、後述する身体保持具3aの各種動作に関する位置の設定は、予め制御部6に設定され、当該設定された情報は、制御部6の図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納されている。
ステップS207では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の台座保持具18に内蔵される油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧モータ10を駆動し、身体保持具3aが前後方向に移動する(身体保持具3aの前後動作)。このとき、前後方向の移動量が、随時ポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた前後方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
【0057】
ステップS208では、制御部6は受信した前後向の移動量と、図示しない記憶部に設定された位置情報とを比較し、身体保持具3aがデュワー1の測定部1aの直前に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aがデュワー1の測定部1aの直前に到達していない場合にはステップS207へ戻り身体保持具3aの前後動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aがデュワー1の測定部1aの直前に到達した場合にはステップS209へ進む。
【0058】
ステップS209では、制御部6からの指令に応じてラック&ピニオン機構16とそれに取り付けた油圧モータ10を駆動することで、身体保持具3aを構成する身体保持部7aは左右動作を行う(身体保持具3aの左右動作)。このとき、左右方向の移動量がポテンショメータ15でカウントされ、カウントされた前後方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS210では、制御部6は受信した左右方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された位置情報とを比較し、身体保持具3aがデュワー1の測定部1aの直前に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aがデュワー1の測定部1aの直前に到達していない場合にはステップS209へ戻り身体保持具3aの左右動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aがデュワー1の測定部1aの直前に到達した場合にはステップS211へ進む。
【0059】
ステップS211では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の台座保持具18に内蔵される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3aを上昇動作させる(身体保持具3aの上昇動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS212では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3aが指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達していない場合にはステップS211へ戻り身体保持具3aの上昇動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達した場合にはステップS213へ進む。
【0060】
ステップS213では、制御部6からの指令に応じてデュワー1に水平に整列し内装される測定センサによる測定(プレ測定)が実行される。
ステップS214では、測定センサにより計測された計測データ(磁場データ)を、信号線を介して制御部6が取得する。制御部6は、取得した計測データ(磁場データ)と身体保持具3aの位置情報(身体保持具3aを構成する身体保持部7aの前後、左右、及び高さ情報含む)とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。
ステップS215では、制御部6はデータ解析を実行する。具体的には、制御部6は、データ解析の一つとして、電気軸を算出する。電気軸の算出は、上述のように、測定センサにて計測される計測データ(磁場データ)により電流のベクトルが得られ、得られた電流のベクトルに基づき被検者特有の電気軸を求める。
【0061】
ステップS216では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が台座保持具18に内蔵される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3aを下降動作させる(身体保持具3aの下降動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS217では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3aが指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達していない場合にはステップS216へ戻り身体保持具3aの下降動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達した場合にはステップS218へ進む。
【0062】
ステップS218では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで油圧モータ10を駆動し、油圧モータ10から歯車13aを介し回転動作が伝達され、身体保持部7aがRoll方向の回転動作を行う(体軸に垂直な軸周りに回転動作)。このとき、Roll方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされたRoll方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS219では、制御部6は、上述のステップS215にて算出された電気軸と体軸とが一致又は平行状態にあるか否かを判定する。判定の結果、電気軸と体軸とが一致又は平行状態にない場合にはステップS218へ戻り身体保持部7aがRoll方向の回転動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、電気軸と体軸とが一致又は平行状態にある場合には準備動作を終了する。
【0063】
<測定動作>
図15に示すように、ステップS221では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の台座保持具18に内蔵される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3aを上昇動作させる(身体保持具3aの上昇動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS222では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3aが指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達していない場合にはステップS221へ戻り身体保持具3aの上昇動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達した場合にはステップS223へ進む。
【0064】
ステップS223では、制御部6からの指令に応じてデュワー1に水平に整列し内装される測定センサによる測定(通常測定)が実行される。
ステップS224では、測定センサにより計測された計測データ(磁場データ)を、信号線を介して制御部6が取得する。制御部6は、取得した計測データ(磁場データ)と身体保持具3aの位置情報とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。
【0065】
ステップS225では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が台座保持具18に内蔵される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3aを下降動作させる(身体保持具3aの下降動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
【0066】
ステップS226では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3aが指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達していない場合にはステップS225へ戻り身体保持具3aの下降動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達した場合にはステップS227へ進む。
ステップS227では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の水平に設置される油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、水平に設置される油圧モータ10を駆動し、身体保持具3aを構成する身体保持具回転台座9c及び身体保持部7aがYaw方向の回転動作を行う(体軸中心に回転動作)。このとき、Yaw方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされたYaw方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS228では、制御部6は受信したYaw方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定角度とを比較し、身体保持具3aが指定角度に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが指定角度に到達していない場合にはステップS227へ戻り身体保持具3a(身体保持部7a)のYaw動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが指定角度に到達した場合にはステップS229へ進む。
【0067】
ステップS229では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の台座保持具18に内蔵される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3aを上昇動作させる(身体保持具3aの上昇動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS230では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された指定高さとを比較し、身体保持具3aが指定高さに到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達していない場合にはステップS229へ戻り身体保持具3aの上昇動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが指定高さに到達した場合にはステップS231へ進む。
【0068】
ステップS231では、制御部6からの指令に応じてデュワー1に水平に整列し内装される測定センサによる測定(通常測定)が実行される。
ステップS232では、測定センサにより計測された計測データ(磁場データ)を、信号線を介して制御部6が取得する。制御部6は、取得した計測データ(磁場データ)と身体保持具3aの位置情報とを紐付けて、図示しない記憶部の所定の記憶領域に格納する。
【0069】
ステップS233では、制御部6は、図示しない記憶部に予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施されたか否かを判定する。判定の結果、予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施されていない場合にはステップS225へ戻り以降の動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施され場合には測定動作を終了する。
なお、上述のステップS227における身体保持具3aのYaw動作、ステップS229における身体保持具3aの上昇動作及びステップS233における予め設定された指定回数又は指定角度での通常測定が実施されたか否かを判定は、被検者の体勢毎の磁場データ(生体磁場)を測定するため、身体保持具3aのYaw動作及び上昇動作を行っている。
【0070】
このように、生体磁気計測装置200を心磁計に適用し、心磁計が上述の測定動作を実行すること、すなわち、被検者の測定部位(胸部)に、微弱な生体磁気を計測するための計測センサを近接させ、その状態を維持しつつ身体保持具3aを回転動作(Yaw動作)することにより、被検者に負担を強いることなく、被検者の体勢毎の磁場データを取得することが可能となる。換言すれば、被検者の各測定部位と計測されるデータを組み合わせた解析を被検者に負担を強いることなく実行することが可能となる。
また、例えば被検者が高齢者である場合においては、特に、身体保持具3aを構成する身体保持部7aに座した状態にて測定センサによる計測が可能であることから被検者である高齢者に身体的負担を強いることを防止できる。
【0071】
<事後動作>
上述の測定動作終了後に実行される事後動作につき説明する。図16に示すように、ステップS241では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が台座保持具18に内蔵される油圧シリンダ12へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧シリンダ12を駆動し上下動可能なリンク機構11により身体保持具3aを下降動作させる(身体保持具3aの下降動作)。このとき、上下方向の移動量がポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた上下方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
【0072】
ステップS242では、制御部6は受信した上下方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3aが初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが初期位置に到達していない場合にはステップS241へ戻り身体保持具3aの下降動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達した場合にはステップS243へ進む。
ステップS243では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで油圧モータ10を駆動し、油圧モータ10から歯車13aを介し回転動作が伝達され、身体保持部7aがRoll方向の回転動作を行う(体軸に垂直な軸周りに回転動作)。このとき、Roll方向の移動量はポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされたRoll方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS244では、制御部6は受信したRoll方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3aが初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが初期位置に到達していない場合にはステップS243へ戻り身体保持具3aのRoll動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3が初期位置に到達した場合にはステップS245へ進む。
【0073】
ステップS245では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の水平に設置される油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、水平に設置される油圧モータ10を駆動し、身体保持具3aを構成する身体保持具回転台座9c及び身体保持部7aがYaw方向の回転動作を行う(体軸中心に回転動作)。このとき、Yaw方向の移動量はポテンショメータ15でカウントされ、カウントされたYaw方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS246では、制御部6は受信したYaw方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3aが初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが初期位置に到達していない場合にはステップS245へ戻り身体保持具3aのYaw動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが初期位置に到達した場合にはステップS247へ進む。
【0074】
ステップS247では、制御部6からの指令に応じて油圧駆動部5が上述の台座保持具18に内蔵される油圧モータ10へ油圧配管を介して油圧を供給することで、油圧モータ10を駆動し、身体保持具3aが前後方向に移動する(身体保持具3aの前後動作)。このとき、前後方向の移動量が、随時ポテンショメータ15にてカウントされ、カウントされた前後方向の移動量は図示しない信号線を介して制御部6へ送信される。
ステップS248では、制御部6は受信した前後方向の移動量と、図示しない記憶部に設定された初期位置とを比較し、身体保持具3aが初期位置に到達したか否かを判定する。判定の結果、身体保持具3aが初期位置に到達していない場合にはステップS247へ戻り身体保持具3aの前後動作を繰り返し実行する。他方、判定の結果、身体保持具3aが初期位置に到達した場合にはステップS249へ進む。
【0075】
ステップS249では、検査技師が被検者の身体のベルトによる身体保持部7aへの固定を解除する。ステップS250では、被検者の身体のベルトによる身体保持部7aへの固定の解除が確実に実行されたか否かを確認する。確認の結果、身体保持部7aへの固定の解除が不完全な場合にはステップS249へ戻り、身体保持部7aへの固定の解除が確認できた場合はステップS251へ進む。ステップS251では、被検者が、身体保持具3aの身体保持部7aより降りる。
【0076】
なお、本実施例では、駆動アクチュエータとして油圧モータ10及び油圧シリンダ12を用いる場合を示したが、駆動アクチュエータはこれらに限られるものではない。例えば、モータや、サーボ、スプリングなど同様の動作が可能であれば他の駆動アクチュエータを用いる構成としても良い。
【0077】
以上の通り本実施例によれば、上述の実施例1の効果に加え、例えば被検者が高齢者である場合においては、特に、身体保持具3aを構成する身体保持部7aに座した状態にて測定センサによる計測が可能であることから被検者である高齢者に身体的負担を強いることを防止できる。
なお、本実施例では、生体磁気計測装置200を心磁計に適用した場合を例に説明したが、生体磁気計測装置200を脳磁計に適用することも可能である。この場合、被検者の測定部位は、頭蓋或いは頭部の一部となり、被検者の測定部位に対向するデュワー1に設けられた測定部1aの表面は円形状をなし、且つ、湾曲形状(球体を近似した凹部)となる。そして身体保持具3aを回転動作(Yaw動作)することにより頭部の周囲を測定することが可能となる。
【0078】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…デュワー
1a…測定部
2…ガントリー
3,3a…身体保持具
4…安全センサ
5…油圧駆動部
6…制御部
7,7a…身体保持部
8…蓋
9a,9c…身体保持具回転台座
9b…身体保持具台座
10…油圧モータ
11…上下動可能なリンク機構
12…油圧シリンダ
13,13a…歯車
14…車輪
15…ポテンショメータ
16…ラック&ピニオン機構
17…カバー
18…台座保持具
19…小径の歯車19
100,200…生体磁気計測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16