(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのバインダーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の正の温度係数組成物。
前記組成物は、少なくとも2つのバインダーを含んでなり、第1バインダーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、第2バインダーは、エチレンビニルアセテートポリマー、ポリビニルアルコール、エチレンアルキルアクリレートコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の正の温度係数組成物。
前記導電性材料は、銀、ニッケル、炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、錫合金及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
【背景技術】
【0002】
「正の温度係数」又は「PTC」材料は、スイッチング温度(Ts)に達すると抵抗率が急激に上昇することを特徴とする導電性材料である。温度による電気抵抗率の関数/曲線は正の傾きを有し、この温度範囲内で、導電性ポリマーPTC組成物は、正の温度抵抗係数(PTCR)を有するといわれている。抵抗率の急上昇が十分に高い場合、抵抗率は効果的に電流を遮断し、材料の過熱等のさらなる材料の加熱が防止される。PTC材料の主な利点の1つは、PTC材料自体が電子回路と同様の特性を有するため、PTC材料を含んでなる物品に追加の電子回路が必要でないことである。さらに、冷却時に、PTC材料はそれ自体をリセットする。この抵抗率の急激な上昇は、PTC振幅と称される場合が多く、室温(約23℃)での体積抵抗率に対する最大体積抵抗率の比として定義することができる。
【0003】
近年、PTCポリマー材料は、例えば自己制限加熱ケーブル及び過電流保護デバイスに広く使用されている。さらに、PTC材料は自己制御型ヒーターに利用されている。電源に接続すると、PTC材料はトリップ温度まで加熱され、追加の電子コントローラを使用せずにこの温度を維持する。さらに、コンピュータ、スマートフォン等の電子製品の広範な開発、適用及び普及により、過電流保護デバイスの必要性が高まっている。PTC挙動を示す組成物は、電源及び追加の電気部品を直列に含んでなる電気回路における過電流保護として、電気デバイスにも使用されている。電気回路では、通常の動作条件下で、負荷(load)及びPTCデバイスの抵抗は、比較的ほとんどPTCデバイスを介して電流が流れないようなものである。従って、デバイスの温度は、臨界温度又はトリップ温度以下に維持される。負荷が短絡したり、回路に電力サージが発生すると、PTCデバイスを流れる電流が大幅に増大する。この時点で、PTCデバイスでは大量の電力が消費される。この電力消費は、短時間(1秒の何分の1)だけ発生する。しかしながら、PTCデバイスの温度は、PTCデバイスの抵抗が非常に高くなり、電流が無視できる値に制限される値まで上昇する。このデバイスは、「トリップ状態」にあると言われている。回路を流れる無視可能な又は細流の電流は、PTCデバイスと直列に接続された電気部品を損傷することはない。従って、PTCデバイスは、PTCデバイスがその臨界温度範囲に加熱されたとき、短絡負荷(short circuit load)を通る電流が安全な低い値に減少するヒューズの形態として機能する。回路内の電流を遮断するか、又は短絡(又は電力サージ)の原因となる状態を除くと、PTCデバイスはその臨界温度よりも低い温度で通常動作、低抵抗状態に冷却される。その効果は、リセット可能な電気回路保護デバイスである。
【0004】
従って、PTCインクは、自己制御及び速い加熱特性のために有用である。導電性の低いPTCインクは、常により高いPTC倍率を与え、安全性をより向上させるが、初期電力(Power(W)=V
2/R、Rが高いほど消費電力が少ないことを意味する)の低下ももたらす。典型的には、PTC材料の抵抗は、温度が上昇すると少し増加し始める。
【0005】
これらの特性を示す種々の材料が開発されている。それらの中には、セラミックス及びポリマー系のPTC材料がある。入手可能なPTC技術があるが、特にPTCインクは未だ容易に入手できない。
【0006】
従来、業界では、炭素及び/又はグラファイト材料の異なる比率を使用することによってPTC倍率を増加させることを試みてきた。これは物理的性質及び安全性に若干の改善をもたらしたが、改良は十分ではなかった。
【0007】
PTC技術を改良する1つの試みは、高いPTC倍率を有する合成半結晶性ポリマーをPTC組成物に添加することであった。半結晶性ポリマーは、既存の材料よりも改良をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の節において、本発明をより詳細に記載する。このように記載された各態様は、明確に、反対の支持がない限り、任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせてよい。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0014】
本発明の文脈において、使用される用語は、文脈がそうでないと指示しない限り、以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0015】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数及び複数の指示対象の両方を含む。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprise of)」は、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含む(containing)」、「含む(contains)」と同義語であり、包括的又は無制限であり、追加の、記載されていない成分、要素又は方法工程を除外しない。
【0017】
数値的終点の記載は、それぞれの範囲内に包含されるすべての数及び分数並びに記載された終点を含む。
【0018】
量、濃度又は他の数値又はパラメーターを、範囲、好ましい範囲又は好ましい上限値、及び好ましい下限値の形態で表現する場合には、得られた範囲が文脈上明確に言及されているか否かを考慮することなく、任意の下限値又は好ましい値と任意の上限値又は好ましい値とを組み合わせることにより得られた任意の範囲が具体的に開示されると理解すべきである。
【0019】
本明細書に引用される全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
他に定義されない限り、技術的及び科学的用語を含む本発明の開示に使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針により、本発明の教示をより良く理解するために用語の定義が含まれる。
【0021】
本発明は、半結晶性材料、少なくとも1つのバインダー、0.5〜9.5重量%の導電性材料及び溶媒を含んでなる正の温度係数組成物を提供する。
【0022】
本発明は、上述の欠点を排除又は改善する。本発明のPTC組成物は、電圧印加時に大きな加熱力を提供する室温で比較的良好な伝導性(1〜2kOhm/sq/25μm)を有する。これは、発熱体が非常に速い応答時間を有し、非常に速く加熱することを意味する。温度が上昇しても抵抗は低く維持され、従って加熱は非常に迅速に起こる。本発明の組成物は高いPTC倍率を有するので、依然として高出力を抑制することができ、非常に迅速な自己制御を行うことができる。
【0023】
本発明の正の温度係数組成物は、自己制御温度(発熱体の急速な加熱を意味する)まで、低く、安定した抵抗を示す。組成物中の高いPTC倍率は安全性を高め、同様の状況下、高いPTC倍率を有するPTCインクは、より低いPTC倍率を有するPTCインクよりも安全である。電圧スパイクは、発熱体の過熱及び/又は燃焼を生じない。さらにより多くの電力を、印刷された発熱体に印加することができ、これにより用途の数が増える。
【0024】
本発明のPTC組成物は、開始点に達するまで、温度が上昇するにつれてほとんど増加しない抵抗を有する。セットポイントに達すると、抵抗が急激に増加する。初期の低い抵抗はより高い熱電力発生を可能にする。電圧は通常一定の値であり、生成された電力は式W=V
2/Rから算出される。ある時点で、材料は非常に急激な抵抗増加をもたらし、ヒーター電力のこの点で自己制御が始まり、この点から自己制御が抑制される。
【0025】
いわゆるPTC倍率は、最大抵抗値を室温での抵抗で割ったものである。低いPTC倍率を有する組成物は、非常に高い入力電力に耐えることができない。また、多くの電圧が印加されると、多くの熱が発生し、次いでインク組成物が融解し、安全性が損なわれる。PTC倍率が高いということは、多くの入力電力では、自己制御温度での抵抗が依然として電力を抑えて平衡を作り出すのに十分高いことを意味する。従って、システムは安全なままであり、過熱することはない。
【0026】
図1は、本発明の組成物のPTC曲線と、使用された活性材料がエチレン酢酸ビニルコポリマーである、先行技術に記載された初期開発の材料のPTC曲線との比較を示す。初期開発のPTC曲線は、抵抗が40℃で増加し始め、最大約110℃に達することを示す。本発明の組成物のPTC曲線は、抵抗が約60℃上昇し始め、最大約80℃に達することを示す。
【0027】
本発明の正の温度係数組成物は、いずれのハロゲン含有材料を含まない。ハロゲン含有材料を含まないという用語は、組成物が、該組成物の総重量に対して0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満のハロゲンイオンを含んでなることを意味する。
【0028】
以下に、本発明の正の温度係数組成物の各必須成分について詳細に説明する。
【0029】
半結晶性材料
本発明の正の温度係数組成物は、半結晶性材料を含んでなる。半結晶性材料は、PTC組成物中の活性材料と称することもできる。
【0030】
半結晶性ポリマーは、特定の温度で相転移によって著しい体積増加を示し、これにより、これらのポリマーは、「オフ−オン」制御、すなわち、「温度スイッチ」という独自の能力を有することが可能になる。これらの半結晶性ポリマーは、「温度スイッチ」の下で結晶性であり、その上非晶質である。
【0031】
本発明に使用するために適する半結晶性材料は、当業者に公知の従来の手段によって調製される。
【0032】
本発明に用いられる半結晶性材料は、高いエンタルピー及び狭い融解ピークを有することが好ましい。これらの特徴は、高いPTC倍率を有する所望のPTCインクを配合するために必要とされる。例えば、高いエンタルピーを有するが、同時に広い融解ピークを有する材料は、抵抗が「初期に」ゆっくりと増加し、急速加熱はなく、システムの急速なシャットダウンはなく、PTC倍率は低い。
【0033】
本発明で使用される好適かつ好ましい半結晶性材料は、ASTM E793に準拠して150J/gを超える融解エンタルピーを有する。
【0034】
例えば、実験セクションの実施例4は、非常に良好な半結晶性材料を示す。実施例4の組成物は、狭い融解ピークとともに高い融解エンタルピーを有する。これは、最初は抵抗が増加することなく、急速加熱になる。非常に迅速に融解し、抵抗が非常に急激に増加し、PTC倍率が高くなる。これは、半結晶性材料の高融解エンタルピー及び狭い融解ピークのために可能である。
【0035】
本発明で使用される適当な半結晶性材料は、好ましくは、DSCによって決定されるような狭い融解ピークを有する。融解のためのオンセット温度及びオフセット温度は、融点と最大20℃の差があることが好ましい。
【0036】
さらに、本発明で使用される適当な半結晶性材料は好ましくは、低分子量及び狭い融点範囲を有する。低分子量であるため、半結晶性材料は温度変化に対してより迅速に応答可能である。
【0037】
好ましい一実施形態では、半結晶性材料は、少なくとも5%の結晶化度を有する。別の好ましい実施形態において、半結晶性熱可塑性材料は、少なくとも10%の結晶化度を有する。さらに別の好ましい実施形態において、半結晶性熱可塑性材料は、少なくとも15%の結晶化度を有する。
【0038】
半結晶性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、天然ポリマー、炭化水素ワックス、変性アルキルアクリレートポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、炭化水素ワックスは、95%を超えるアルカン、主として直鎖を有するノルマルパラフィンを含んでなり、完全に飽和している。好ましくは、半結晶性材料は、天然ポリマー及び炭化水素ワックスからなる群から選択される。
【0039】
本発明で使用される適当な市販の半結晶性材料は、例えば、Paramelt製のDilavest P86である。
【0040】
本発明の正の温度係数組成物は、全組成物に対して、0.5〜70重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは25〜45重量%、さらに好ましくは23〜35重量%の半結晶性材料を含んでなる。
【0041】
バインダー
本発明の正の温度係数組成物は、少なくとも1つのバインダーを含んでなる。PTC組成物に使用されるバインダーは、現在業界で使用されている任意のバインダーから選択することができる。
【0042】
一般に、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのバインダーは、熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される。
【0043】
熱可塑性ポリウレタンは、良好な接着性及び可撓性を提供し、フィルムの機械的健全性を妨げないため、好ましいバインダーである。
【0044】
一実施形態では、本発明の正の温度係数組成物は、少なくとも2つのバインダーを含んでなる。この実施形態では、第1バインダーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、第2バインダーは、エチレンビニルアセテートポリマー、ポリビニルアルコール、エチレンアルキルアクリレートコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
好ましい実施形態において、第1バインダーは熱可塑性ポリウレタンであり、第2バインダーはエチレンビニルアセテートである。この実施形態において、第2バインダーは、組成物の印刷適性を改善するために使用される。
【0046】
本発明で使用される好適な市販のバインダー材料は、例えばLubrizol製のEstane 5715及びDu Pont製のElwax 40Wである。
【0047】
本発明の正の温度係数組成物は、該組成物の総重量に対して0.5〜8.5重量%、好ましくは2.5〜7.5重量%、より好ましくは4〜6重量%の少なくとも1つのバインダーを含んでなる。
【0048】
本発明の正の温度係数組成物は、該組成物の総重量に対して、1〜10重量%、好ましくは3.5〜10重量%、より好ましくは5.75〜8.25重量%の少なくとも2つのバインダーを含んでなる。
【0049】
本発明の組成中における最新のバインダー量が理想的である。より多くのバインダー量はPTC倍率に悪影響を与えるからである。さらに、該組成物の総重量に対して、0.5重量%より低い水準は、接着特性及びPTC倍率を低下させるであろう。
【0050】
導電性材料
本発明の正の温度係数組成物は、導電性材料を含んでなる。適当な導電性材料は、例えば金属粉末及びカーボンブラックである。カーボンブラックは、PTC材料に使用される材料の1つである。カーボンブラックは、ポリマー系のPTC材料のための最もよく使用される導電性フィラーの1つである。導電性金属材料と比較してカーボンブラックを使用するいくつかの利点は、低価格及び低密度を含む。
【0051】
導電性材料の選択は、用途に依存する。例えば、特定の抵抗水準が必要な場合、カーボンブラックとグラファイトとの組み合わせが好ましい導電性材料である。一方、より多くの導電性を必要とする材料では、銀又は金属合金のようなより多くの伝導性を有する導電性材料を使用することができ、好ましい。
【0052】
一般に、導電性材料は、銀、ニッケル、炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、錫合金及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、導電性材料は、グラファイト、カーボンブラック及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明で使用される適当な市販の導電性材料は、例えば、Timcal製のEnsaco 250G及びCabot Corporation製のVulcan XC72Rである。
【0054】
特に好ましい一実施形態では、本発明の組成物は、カーボンブラックと組み合わせたグラファイト粒子を含んでなる。グラファイト粒子は、作動時、すなわち電源に接続されたときのホットスポットの形成を防止することができる改善された熱伝導率を示す。さらに、この特定のブレンドは所望の抵抗水準をもたらすため、カーボンブラックとグラファイトとの組み合わせが好ましい。さらに、この特定の組合せは、所望の高いPTC倍率をも提供する。
【0055】
好ましくは、前記導電性材料は、5μm〜6.5μm、より好ましくは約5.9μmのd50粒度を有する。好ましくは、前記導電性材料は、11.5μm〜13μm、より好ましくは約12μmのd90粒度を有する。
【0056】
好ましくは、前記導電性材料は、60〜70m
2/g、より好ましくは約68m
2/gの粒子の表面積を有する。
【0057】
本発明の正の温度係数組成物は、該組成物の総重量に対して0.5〜9.5重量%、より好ましくは4.5〜8重量%、さらに好ましくは6〜8重量%の導電性材料を含んでなる。
【0058】
本発明の組成物中における最新の導電性材料の量が理想的である。その量が多すぎると導電性が高くなりすぎて、PTC倍率の低下をもたらすからである。一方、0.5%未満の量では、高いPTC倍率が得られるが、材料の導電性は十分でない。
【0059】
溶媒
本発明の正の温度係数組成物は溶媒を含んでなる。本発明では、広範囲の公知の有機溶媒を使用することができる。本発明で使用される適当な溶媒は、好ましくは、スクリーン上でインクが乾燥することなく、インクスクリーンの印刷を可能にする十分に高い引火点を有する。好ましくは、溶媒の引火点は70〜120℃である。
【0060】
また、本発明で使用される溶媒は好ましくは、追加のバインダー及び相溶化剤も溶解することが好ましい。
【0061】
本発明で使用される適当なは、アルコール、ケトン、エステル、グリコールエステル、グリコールエーテル、エーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、溶媒はブチルグリコールアセテート、カルビトールアセテート及びそれらの混合物から選択される。
【0062】
本発明で使用される適当な市販の溶媒は、例えば、Eastman製のブチルグリコールアセテート及びカルビトールアセテートである。
【0063】
本発明の正の温度係数組成物は、該組成物の総重量に対して、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは13〜63重量%の溶媒を含んでなる。
【0064】
本発明のPTC組成物中の溶媒の理想的な量は用途に依存する。例えば、インクがスクリーン印刷で使用される場合、スクリーン印刷のための理想的な粘度を得るために溶媒水準はより高い。
【0065】
任意の成分
上記の成分に加えて、本発明の正の温度係数組成物は、分散剤、湿潤剤、相溶化剤、レベリング剤及びそれらの混合物からなる群から選択される追加の成分をさらに含むことができる。
【0066】
好ましくは、本発明の正の温度係数組成物は、40未満のヘグマン値を有する。ヘグマン値は、処方中における最大粒度を示す。ヘグマン値は、正の温度係数組成物がどのように調製されるかに依存する。
【0067】
好ましくは、本発明の正の温度係数組成物は、20mmのプレート−プレート構成(0.2mmギャップ、60秒、25℃)を有する一定剪断速度で、レオメーターAR1000で測定した粘度が5〜45Pas(15s
−1)、好ましくは7.5〜35Pas(15s
−1)、より好ましくは10〜30Pas(15
−1)である。
【0068】
好ましくは、本発明の正の温度係数組成物は、2〜15、好ましくは3〜15、より好ましくは4〜9のチキソトロピック指数(thixotropic index)を有する。チキソトロピック指数は、1.5s
−1における粘度を15s
−1における粘度で割ることにより算出される。
【0069】
好ましくは、本発明の正の温度係数組成物は、以下の方法に従って測定された1〜2kΩ/sq/25μmの抵抗値を有する。
図2に示す設計はスクリーン印刷され、次いで乾燥される。トラックの平均抵抗と厚みが測定される。抵抗は(R×厚み)/(#二乗×25)により算出され、ここで、Rは平均トラック抵抗(kOhm)であり、乾燥厚み(μm)であり、#二乗は5であり(トラック長/トラック幅)、25は25μmに標準化される。
【0070】
好ましくは、本発明の正の温度係数組成物は、6を超えるPTC倍率を有する。好ましい実施形態において、PTC倍率は可能な限り高い。PTC倍率は最大抵抗を室温での抵抗で割った値である。より高いPTC倍率はより向上された安全性を提供する。
【0071】
好ましくは、本発明の正の温度係数組成物は、30%〜60%、好ましくは35%〜55%、より好ましくは40%〜50%の固形分を有する。
【0072】
本発明の正の温度係数組成物は、インク、接着剤、フィルム、ラミネート、テープ又はホットメルトの形態であってもよく、好ましくは、インクの形態であり、より好ましくは、スクリーン印刷可能なインクの形態である。
【0073】
本発明の正の温度係数組成物は、すべての成分を一緒に混合するいくつかの方法で調製することができる。
【0074】
一実施形態では、本発明の正の温度係数組成物の調製は、以下の工程を含んでなる:
1)少なくとも1つのバインダーを溶媒に予め溶解する工程;
2)微粉化された半結晶性材料を工程1)の溶液に添加し、均一な混合物が形成されるまでスピードミキサーで混合する工程;
3)導電性材料を添加し、均一な混合物が形成されるまで混合する工程;及び
4)3本ロールミルで圧延する工程
【0075】
本発明の正の温度係数組成物は、様々な技術によって基板上に塗布することができる。本明細書の使用に適する技術は、例えば、スクリーン印刷、ロール印刷、ローラーコーティング、ロータリースクリーン印刷及びロータリースクリーンディスペンシング(rotary screen dispensing)である。乾燥の間に溶媒が蒸発するため、別の硬化工程は必要とされず、ゆえに任意である。
【0076】
本明細書で使用される好適な基材の限定されない例は、PET、紙、厚紙及びFSR板である。
【0077】
本発明の正の温度係数組成物は、発熱体及びセンサーに使用することができる。
【0078】
本発明はまた、本発明の正の温度係数組成物を含んでなる物品も包含する。該物品は、自己制御型ヒーター;過電流保護デバイス;空調ユニット;除氷用途;防曇用途;防曇デバイス;凍結除去デバイス;除氷又は除雪デバイス;ヒーテッドシート、ヒーテッドミラー、ヒーテッドウィンドウ、ヒーテッドハンドルからなる群から選択される自動車用途;回路保護デバイス;香水ディスペンサー;センサーからなる群から選択することができる。
【実施例】
【0079】
【表1】
【0080】
Honeywell International Inc.製のA-C(R)597P;Lubrizol製のEstane 5715;Du Pont製のElwax 40W;Timcal製のEnsaco 250P;Eastman製のブチルグリコールアセテート;Eastman製のカルビトールアセテート。Honeywell International Inc.製のAcumist C3;AirProducts製のIntelimer IPA 13-6;Paramelt製のDilavest P86。
【0081】
すべての実施例の組成物は、以下に記載するように調製した。
【0082】
2つの予め溶解したバインダー溶液を使用した:Estane 5715は、機械的特性を与えるバインダーであり、まず、ブチルグリコールアセテートに溶解され、第2バインダーElvax 40Wもブチルグリコールアセテートに溶解され、インクに改善された印刷適性を与えるために使用される。2つのバインダー溶液を溶媒及び半結晶性材料とともに高速ミキサーで混合した。混合物を均一になるまで混合し、次いで導電性材料を添加し、形成された混合物を均一になるまで混合した。最後に、組成物を3本ロールミルで圧延した。粘度が高すぎる場合は、追加の溶媒を加えることにより調整した。所望の粘度はPTC組成物がどのように適用されるかに依存する。例えば、スクリーン印刷用途について、所望の粘度は10〜30Pas(15
−1)である。
【0083】
正の温度係数組成物がインク形態で準備されると、テストパターン(
図2)が印刷された。テストパターンは、本発明によれば、銀インクとPTCインクを使用することにより印刷された。両方のインクは250メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、スクリーン印刷された。まず伝導性銀インクを印刷し、乾燥させた。PTCインクトラックを銀インク上に印刷し、乾燥させた。
【0084】
このテストパターンを用いてインクのシート抵抗を測定した。それ以外に、異なる温度での抵抗を測定するために使用して、PTC曲線及び最大PTC倍率を決定した。
【0085】
発熱体(
図3)を使用して、素子、すなわち、1−PTCインク;2−Agインク;3−PET基材に電圧を印加した。
【0086】
電圧の印加は、どの温度でPTCインクが自己制御を行うかを示した。
【0087】
実施例1では、半結晶性材料が159J/gの融解エンタルピーを有し、また非常に広い融解ピークも有する。
図4は、実施例1の組成物に使用された半結晶性材料のDSC曲線を示す。これは、非常に浅い曲線であり、
図5に見られるPTC効果はほとんどない。
【0088】
実施例2では、融解エンタルピーが非常に高い(259J/g)。融解曲線は非常に広く、半結晶性材料が融解するまでにしばらく時間がかかる。
図6は、実施例2の組成物に使用された半結晶性材料のDSC曲線を示す。
図5において、これは非常に広いPTC曲線をもたらし、これは、明確な遮断温度がないことを意味する。電圧の上昇はまた、温度上昇をもたらす。PTC曲線は、温度上昇を防ぐために十分な急勾配でない。
【0089】
実施例3では、半結晶性材料の融解ピークが非常に狭く、これにより、融点直前に、急に抵抗が増加する。抵抗は約47℃から上昇し初め、60℃を少し上回ると最大値に達する。融解エンタルピーは143J/gである。
図7は、実施例3の組成物に使用された半結晶性材料のDSC曲線を示す。この場合、急なPTC曲線が達成される。
図5に見られるように、PTC倍率はあまり高くない。
【0090】
実施例4では、双方においてプラスの効果が見られる。半結晶性材料は、高い融解エンタルピー(217J/g)及び比較的狭い融解ピークを有する。
図8は、実施例4の組成物に使用された半結晶性材料のDSC曲線を示す。これは自己制御の直前まで、平坦なPTC曲線になり、次に、急激な増加及び30を少し上回る高いPTC倍率をもたらす。PTC曲線は
図5に示される。
【0091】
この例は、抵抗に対する温度の影響を挙げている。実施例の組成物のグラフは、本発明のPTC組成物により達成可能な効果を示す:1つの曲線は、従来技術によるほとんどのPTCインクの温度及び抵抗の関係:温度上昇時の抵抗の緩やかな増加を示す。
図1での本発明の組成物の曲線は、本発明の組成物の第一の利点を示す:抵抗が非常に迅速に増加する特定の点までではなく、最初ほとんど抵抗は増加しない。これは、急速加熱と自己制御温度の非常に迅速な確立を意味し及び示す。グラフは第2の利点も示す。先行技術の典型的なPTC組成物は、10の範囲内のPTC倍率を有するが、本発明の組成物は、非常に高いPTC倍率を有する。これは、安全性を無くすことなく、より多くの電圧を印加できることを意味し及び示す。
【0092】
実施例5
標的の抵抗は25μmで約250kΩ/sqである。
【表2】
【0093】
Lubrizol製のEstane 5715;Du Pont製のElwax 40W;Timcal製のSpecial Black 4及びBlack Pearl 280; Eastman製のブチルグリコールアセテート;Air Products製のIntelimer 13-6、及びInChemRez製のPKHJ。
【0094】
実施例5の組成物を以下に記載の通り、調製した。
【0095】
3つの予め溶解したバインダー溶液を使用した:まず、Estane 5715 and PKHJ(インクに機械的特性を与えるバインダー)をブチルグリコールアセテートに溶解し、(インクに改善された印刷適性を与える)バインダーElvax 40Wをブチルグリコールアセテートに溶解した。これらの2つのバインダー溶液を溶媒及び半結晶性材料とともに、高速ミキサーで混合した。混合物を均一になるまで混合し、次いで導電性材料を添加し、形成された混合物を均一になるまで混合した。最後に、組成物を3本のロールミルで圧延した。粘度が高すぎる場合は、追加の溶媒を添加することにより調整した。所望の粘度はPTC組成物がどのように適用されるかに依存する。例えば、スクリーン印刷用途について、所望の粘度は10〜30Pas(15
−1)である。
本発明には、以下の好適な態様が含まれる。
[1]a)半結晶性材料;
b)少なくとも1つのバインダー;
c)0.5〜9.5重量%の導電性材料;及び
d)溶媒
を含んでなる正の温度係数組成物。
[2]前記半結晶性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、天然ポリマー、精製炭化水素ワックス及びそれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の正の温度係数組成物。
[3]前記半結晶性材料は、ASTM E793に準拠して測定された150J/gを超える融解エンタルピーを有する、[1]又は[2]に記載の正の温度係数組成物。
[4]前記組成物は、全組成物に対して、0.5〜70重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは25〜45重量%、さらに好ましくは23〜35重量%の半結晶性材料を含んでなる、[1]〜[3]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[5]前記少なくとも1つのバインダーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、[1]〜[4]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[6]前記組成物は、少なくとも2つのバインダーを含んでなり、第1バインダーは、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、フェノキシ樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、第2バインダーは、エチレンビニルアセテートポリマー、ポリビニルアルコール、エチレンアルキルアクリレートコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される、[1]〜[4]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[7]前記組成物は、該組成物の総重量に対して、0.5〜8.5重量%、好ましくは2.5〜7.5重量%、より好ましくは4〜6重量%の少なくとも1つのバインダーを含んでなる、[1]〜[5]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[8]前記組成物は、該組成物の総重量に対して、1〜10重量%、好ましくは3.5〜10重量%、より好ましくは5.75〜8.25重量%の少なくとも2つのバインダーを含んでなる、[1]〜[6]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[9]前記導電性材料は、銀、ニッケル、炭素、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、銅、銀被覆銅、銀被覆グラファイト、金、白金、アルミニウム、鉄、亜鉛、コバルト、鉛、錫合金及びそれらの混合物からなる群から選択される、[1]〜[8]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[10]前記組成物は、該組成物の総重量に対して、好ましくは2〜9重量%、より好ましくは4.5〜8重量%、さらに好ましくは6〜8重量%の導電性材料を含んでなる、[1]〜[9]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[11]前記溶媒は、ケトン、エステル、グリコールエステル、グリコールエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、溶媒はブチルグリコールアセテート、カルビトールアセテート及びそれらの混合物から選択される、[1]〜[10]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[12]前記組成物は、該組成物の総重量に対して、5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは13〜63重量%の溶媒を含んでなる、[1]〜[11]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[13]前記組成物は、インク、接着剤、フィルム、テープ又はホットメルトとして、配合される、[1]〜[12]のいずれかに記載の正の温度係数組成物。
[14]発熱体及びセンサーにおける、[1]〜[12]のいずれかに記載の正の温度係数組成物の使用。
[15][1]〜[12]のいずれかに記載の正の温度係数組成物を含んでなる物品であって、自己制御型ヒーター;過電流保護デバイス;空調ユニット;防曇デバイス;凍結除去デバイス;除氷又は除雪デバイス;ヒーテッドシート、ヒーテッドミラー、ヒーテッドウィンドウ、ヒーテッドハンドルからなる群から選択される自動車用途;回路保護デバイス;香水ディスペンサー;センサーからなる群から選択される、物品。