(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1処理液供給部、前記第2処理液供給部、前記基板加熱部及び前記リンス液供給部のうちの少なくとも2つが同じチャンバ内に収容されている、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の基板処理装置。
基板処理装置の動作を制御するためのコンピュータにより実行されたときに、前記コンピュータが前記基板処理装置を制御して請求項7から12のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法を実行させるプログラムが記録された記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<基板処理装置の構成>
本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す概略図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1は、基板処理ユニット2と、基板処理ユニット2の動作を制御する制御ユニット3とを備える。
【0015】
基板処理ユニット2は、基板に対する各種処理を行う。基板処理ユニット2が行う各種処理については後述する。
【0016】
制御ユニット3は、例えばコンピュータであり、制御部と記憶部とを備える。制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより基板処理ユニット2の動作を制御する。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等の記憶デバイスで構成されており、基板処理ユニット2において実行される各種処理を制御するプログラムを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に記録されたものであってもよいし、その記憶媒体から記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカード等が挙げられる。記録媒体には、例えば、基板処理装置1の動作を制御するためのコンピュータにより実行されたときに、コンピュータが基板処理装置1を制御して後述する基板処理方法を実行させるプログラムが記録される。
【0017】
<基板処理ユニットの構成>
次に、基板処理ユニット2の構成について
図2を参照して説明する。
図2は、基板処理ユニット2の構成を示す概略平面図である。なお、
図2中の点線は基板を表す。
【0018】
基板処理ユニット2は、基板に対する各種処理を行う。本実施形態において、基板処理ユニット2は、ドライエッチング処理後の基板から、該基板上のハードマスク膜を除去する除去処理を行う。基板処理ユニット2が行う処理は、基板から該基板上のハードマスク膜を除去する処理を含む限り特に限定されない。基板処理ユニット2が行う処理には、その他の処理が含まれていてもよい。本実施形態では、ドライエッチング後の基板上のハードマスク膜が除去対象であるが、ハードマスク膜は、基板上の付着物の一例である。基板上の付着物のその他の具体例としては、ドライエッチング後の基板上に残存する不要な有機膜、無機膜、有機−無機複合膜(例えば、レジスト膜、反射防止膜等)、エッチングの際に生じた副生物(例えば、エッチングガス、レジスト膜、ハードマスク膜等に由来するポリマー)、レジスト膜のアッシングの際に生じたレジスト残渣等が挙げられる。また、本発明において除去対象となる基板上の付着物は、ドライエッチング後の基板上の付着物に限定されず、例えば、イオンインプラント後のレジスト硬化層等であってもよい。
【0019】
基板処理ユニット2は、搬入出ステーション21と、搬入出ステーション21に隣接して設けられた処理ステーション22とを備える。
【0020】
搬入出ステーション21は、載置部211と、載置部211に隣接して設けられた搬送部212とを備える。
【0021】
載置部211には、複数枚の基板を水平状態で収容する複数の搬送容器(以下「キャリアC」という。)が載置される。
【0022】
搬送部212は、搬送機構213と受渡部214とを備える。搬送機構213は、基板を保持する保持機構を備え、水平方向及び鉛直方向への移動並びに鉛直軸を中心とする旋回が可能となるように構成されている。
【0023】
処理ステーション22は、基板に対して処理液の供給を行う第1処理部4と、第1処理部4で処理液が供給された基板に対して加熱を行う第2処理部5と、第2処理部5で加熱された基板に対してリンス液の供給を行う第3処理部6とを備える。本実施形態において、処理ステーション22が有する第1処理部4の数は2以上であるが、1であってもよい。第2処理部5及び第3処理部6についても同様である。第1処理部4は、所定方向に延在する搬送路221の一方側に配列されており、第2処理部5は、搬送路221の他方側に配列されている。また、第3処理部6は、搬送路221の両側に配列されている。本実施形態の配列は一例であり、第1〜第3処理部の配列は、設計上、運用上の理由等に応じて任意に決めてよい。
【0024】
搬送路221には、搬送機構222が設けられている。搬送機構222は、基板を保持する保持機構を備え、水平方向及び鉛直方向への移動並びに鉛直軸を中心とする旋回が可能となるように構成されている。
【0025】
以下、第1処理部4で第1処理液L1及び第2処理液L1Aが供給される前の基板を「基板W1」、第1処理部4で第1処理液L1及び第2処理液L1Aが供給された後であって第2処理部5で加熱される前の基板を「基板W2」、第2処理部5で加熱された後であって第3処理部6でリンス液L2が供給される前の基板を「基板W3」、第3処理部6でリンス液L2が供給された後の基板を「基板W4」という。
【0026】
基板処理ユニット2において、搬入出ステーション21の搬送機構213は、キャリアCと受渡部214との間で基板W1,W4の搬送を行う。具体的には、搬送機構213は、載置部211に載置されたキャリアCから基板W1を取り出し、取り出した基板W1を受渡部214に載置する。また、搬送機構213は、処理ステーション22の搬送機構222により受渡部214に載置された基板W4を取り出し、載置部211のキャリアCへ収容する。
【0027】
基板処理ユニット2において、処理ステーション22の搬送機構222は、受渡部214と第1処理部4との間、第1処理部4と第2処理部5との間、第2処理部5と第3処理部6との間及び第3処理部6と受渡部214との間で基板W1〜W4の搬送を行う。具体的には、搬送機構222は、受渡部214に載置された基板W1を取り出し、取り出した基板W1を第1処理部4へ搬入する。また、搬送機構222は、第1処理部4から基板W2を取り出し、取り出した基板W2を第2処理部5へ搬入する。また、搬送機構222は、第2処理部5から基板W3を取り出し、取り出した基板W3を第3処理部6へ搬入する。また、搬送機構222は、第3処理部6から基板W4を取り出し、取り出した基板W4を受渡部214に載置する。
【0028】
<第1処理部の構成>
次に、第1処理部4の構成について
図3を参照して説明する。
図3は、第1処理部4の構成を示す概略断面図である。
【0029】
第1処理部4は、基板W1に対する処理液の供給を含む処理を行う。第1処理部4が行う処理には、その他の処理が含まれていてもよい。
【0030】
本実施形態において、基板W1は、ドライエッチング処理後の基板であり、表面に凹凸パターンを有する。
基板W1の構造の一例を
図6(D)に示す。
図6(D)に示すように、基板W1は、例えば、半導体ウエハ91と、被エッチング膜92と、ハードマスク膜93とを順に有する。被エッチング膜92及びハードマスク膜93は、ドライエッチング処理により所定のパターンにパターニングされており、基板W1の表面の凹凸パターンを形成している。半導体ウエハ91は、例えば、シリコンウエハである。被エッチング膜92は、例えば、絶縁膜、導電体膜等である。絶縁膜は、例えば、SiO
2膜、Low−k膜と呼ばれる低誘電率膜等のシリコン系絶縁膜である。Low−k膜は、例えば、比誘電率が二酸化シリコンの比誘電率よりも低い膜、例えば、SiOC膜、SiCOH膜等である。導電体膜は、例えば、Cu膜、Al膜等の金属膜である。ハードマスク膜93は、例えば、無機ハードマスク膜、有機ハードマスク膜、有機−無機複合ハードマスク膜等である。
【0031】
無機ハードマスク膜を構成する無機材料としては、例えば、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、シリコン酸化物(SiO
2)、シリコン窒化物(Si
3N
4)、シリコン酸窒化物(SiON)、窒化ケイ素(SiN)、炭化ケイ素(SiC)、炭化窒化ケイ素(SiCN)等が挙げられる。
【0032】
有機ハードマスク膜を構成する有機材料としては、例えば、アモルファスカーボン、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0033】
有機−無機ハードマスク膜を構成する有機−無機複合材料としては、例えば、ポリカルボシラン、オルガノポリシラザン、オルガノポリシラン、ポリシロキサンと金属酸化物(酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化タングステン)との共重合体等が挙げられる。
【0034】
基板W1は、例えば、
図6(A)に示す原料基板W0のドライエッチング処理により得られる。原料基板W0は、半導体ウエハ91と、被エッチング膜92’と、ハードマスク膜93’と、フォトリソグラフィ工程により所定のパターンにパターニングされたフォトレジスト膜94とを順に有する。被エッチング膜92’及びハードマスク膜93’は、未だ所定のパターンにパターニングされていない。
【0035】
原料基板W0のドライエッチング処理は、例えば、次のようにして実施される。まず、
図6(B)に示すように、フォトレジスト膜94をマスク材として使用してハードマスク膜93’をドライエッチングする。これにより、フォトレジスト膜94のパターンがハードマスク膜93’に転写され、所定のパターンにパターニングされたハードマスク膜93が形成される。
【0036】
次いで、
図6(C)に示すように、フォトレジスト膜94をアッシング処理により除去する。
【0037】
次いで、
図6(D)に示すように、ハードマスク膜93をマスク材として使用して被エッチング膜92’をドライエッチングする。これにより、所定のパターンにパターニングされた被エッチング膜92が形成される。
【0038】
ドライエッチング処理は、異方性エッチングであってもよいし、等方性エッチングであってもよい。ドライエッチング処理で使用されるエッチング方法としては、例えば、ECRエッチング法、ICPエッチング法、CCPエッチング法、Heliconエッチング法、TCPエッチング法、UHFプラズマ法、SWPエッチング法等が挙げられる。
【0039】
図6(D)に示すように、基板W1には、エッチングの際に生じた副生物(例えば、エッチングガス、レジスト膜、ハードマスク膜等に由来するポリマー)、レジスト膜のアッシングの際に生じたレジスト残渣等の物質Pが付着している場合がある。
【0040】
第1処理部4は、チャンバ41を備え、チャンバ41内で処理液の供給を含む基板処理を行う。
【0041】
第1処理部4は、基板保持部42を備える。基板保持部42は、チャンバ41内において鉛直方向に延在する回転軸421と、回転軸421の上端部に取り付けられたターンテーブル422と、ターンテーブル422の上面外周部に設けられ、基板W1の外縁部を支持するチャック423と、回転軸421を回転駆動する駆動部424とを備え、基板W1を保持して回転可能となっている。
【0042】
基板W1は、チャック423に支持され、ターンテーブル422の上面からわずかに離間した状態で、ターンテーブル422に水平に保持される。本実施形態において、基板保持部42による基板W1の保持方式は、可動のチャック423によって基板W1の外縁部を把持するいわゆるメカニカルチャックタイプのものであるが、基板W1の裏面を真空吸着するいわゆるバキュームチャックタイプのものであってもよい。
【0043】
回転軸421の基端部は、駆動部424により回転可能に支持され、回転軸421の先端部は、ターンテーブル422を水平に支持する。回転軸421が回転すると、回転軸421の上端部に取り付けられたターンテーブル422が回転し、これにより、チャック423に支持された状態でターンテーブル422に保持された基板W1が回転する。制御ユニット3は、駆動部424の動作を制御し、基板W1の回転タイミング、回転速度等を制御する。
【0044】
第1処理部4は、基板保持部42に保持された基板W1に対して第1処理液L1を供給する第1処理液供給部43を備える。
【0045】
第1処理液供給部43は、基板保持部42に保持された基板W1に対して、第1処理液L1を吐出するノズル431と、ノズル431に第1処理液L1を供給する処理液供給源432とを備える。処理液供給源432が有するタンクには、第1処理液L1が貯留されており、ノズル431には、処理液供給源432から、バルブ433等の流量調整器が介設された供給管路434を通じて、第1処理液L1が供給される。第1処理部4は、それぞれ異なる処理液を供給する複数の処理液供給部を備えていてもよい。追加の処理液供給部は、第1処理液供給部43と同様に構成することができる。
【0046】
第1処理液L1は、ハードマスク膜93の除去剤(以下単に「除去剤」という場合がある)と、該除去剤の沸点よりも低い沸点を有する溶媒と、増粘剤とを含有する。なお、本実施形態では、ハードマスク膜93が除去対象であるので、ハードマスク膜93の除去剤について説明するが、ハードマスク膜93の除去剤に関する説明は、ハードマスク膜93の除去剤を、その他の基板上の付着物の除去剤、例えば、ドライエッチング後の基板上に残存する不要な有機膜、無機膜、有機−無機複合膜(例えば、レジスト膜、反射防止膜等)の除去剤、エッチングの際に生じた副生物(例えば、エッチングガス、レジスト膜、ハードマスク膜等に由来するポリマー)の除去剤、レジスト膜のアッシングの際に生じたレジスト残渣の除去剤、イオンインプラント後のレジスト硬化層の除去剤等と読み替えて、その他の基板上の付着物の除去剤に適用することができる。第1処理液L1に含有される溶媒に関する説明も同様に、その他の付着物を除去するための処理液に含有される溶媒に適用することができる。
【0047】
除去剤は、除去対象である付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)の材料の種類等に応じて、公知の除去剤の中から適宜選択することができる。フォトリソグラフィ分野において、ドライエッチング後の基板上に残存する不要な有機膜、無機膜、有機−無機複合膜(例えば、レジスト膜、反射防止膜、ハードマスク膜等)、エッチングの際に生じた副生物(例えば、エッチングガス、レジスト膜、ハードマスク膜等に由来するポリマー)、レジスト膜のアッシングの際に生じたレジスト残渣、イオンインプラント後のレジスト硬化層等を除去するための様々な除去剤が知られている(例えば、特開平7−28254号公報、特開平8−301911号公報、特開平10−239865号公報、特開2001−324823号公報、特開2004−103771号公報、特開2004−133153号公報、特開2004−177669号公報、特開2016−27186号公報、WO2007/020979号パンフレット、WO2009/096480号パンフレット)。公知の除去剤では、通常、好適な除去対象が限定されているが、本発明において公知の除去剤を使用する場合、本発明の除去対象はそれらに限定されない。すなわち、本発明において公知の除去剤を使用する場合、公知の除去剤と同様の除去対象を効果的に(例えば迅速に)除去することができるだけでなく、公知の除去剤とは異なる除去対象を除去することが可能となる。
【0048】
除去剤の作用機序は特に限定されるものではない。除去剤の作用機序としては、例えば、除去対象である付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)の溶解、除去対象である付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)の付着力の低減、除去対象である付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)の低分子化、リンス液L2に対して親和性を有する官能基の付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)への導入等が挙げられる。したがって、除去剤は、剥離剤、溶解剤等も包含する概念である。
【0049】
ハードマスク膜93が無機材料で構成される場合、除去剤としては、例えば、過酸化水素、塩酸等が挙げられる。
【0050】
ハードマスク膜93が有機材料及び/又は有機−無機複合材料で構成される場合、除去剤としては、例えば、第4級アンモニウム水酸化物、水溶性アミン、過酸化水素、硫酸、フッ化水素等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、除去性能が発揮される限り2種以上を組み合わせて使用してもよい。除去性能が発揮可能な2種以上の組み合わせとしては、例えば、第4級アンモニウム塩と水溶性アミンとの組み合わせ、過酸化水素と硫酸との組み合わせ等が挙げられる。
【0051】
第4級アンモニウム水酸化物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が挙げられる。
【0052】
水溶性アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0053】
第1処理液L1に含有される溶媒は、除去剤の沸点よりも低い沸点を有する限り特に限定されるものではなく、公知の溶媒の中から適宜選択することができる。
【0054】
2種以上の除去剤が第1処理液L1に含有される場合、第1処理液L1に含有される全ての除去剤のうち最も沸点が低い除去剤の沸点よりも低い沸点を有する溶媒が選択される。
【0055】
2種以上の溶媒が第1処理液L1に含有される場合、溶媒の混合液の沸点が、除去剤の沸点よりも低くなるように、2種以上の溶媒が選択される。
【0056】
第1処理液L1に含有される溶媒としては、水、水溶性有機溶媒等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
水溶性有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類が挙げられる。
【0058】
第1処理液L1の具体例としては、第4級アンモニウム塩と水との混合物、第4級アンモニウム塩とジメチルスルホキシド等の水溶性有機溶媒と水との混合物、第4級アンモニウム水酸化物とアルカノールアミンとジメチルスルホキシド等の水溶性有機溶媒と水との混合物等が挙げられる。
【0059】
増粘剤は、第1処理液L1の粘度を増加させることができる限り特に限定されるものではなく、公知の増粘剤の中から適宜選択することができる。増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本実施形態では、第1処理液L1に含有される溶媒の沸点を超え、かつ、第1処理液L1に含有される除去剤の沸点以下又は沸点未満のガラス転移点を有する増粘剤が使用される。本実施形態において、2種以上の除去剤が第1処理液L1に含有される場合、第1処理液L1に含有される全ての除去剤のうち最も沸点が低い除去剤の沸点以下のガラス転移点を有する増粘剤が選択される。また、本実施形態において、2種以上の溶媒が第1処理液L1に含有される場合、溶媒の混合液の沸点を超えるガラス転移点を有する増粘剤が選択される。ただし、増粘剤のガラス転移点と、第1処理液L1に含有される溶媒及び除去剤の沸点との関係は、本実施形態に特に限定されるものではない。除去剤の沸点以上の高温に加熱してさらに処理を促進させる場合には、増粘剤は、第1処理液L1に含有される除去剤の沸点以上のガラス転移点を有していることが好ましい。
【0061】
第1処理液L1に増粘剤を含有させて第1処理液L1の粘度を高めることにより、
図7に示すように、基板W1の凹凸パターンに沿った第1処理液L1の膜でハードマスク膜93を覆うことができる(すなわち、第1処理液L1によるconformal coatingが可能となる)。したがって、第1処理液L1に増粘剤を含有させることにより、ハードマスク膜93を覆う第1処理液L1の膜を形成するために必要な第1処理液L1の使用量を低減することができる。
【0062】
第1処理部4は、さらに、ガス拡散防止膜を形成するための液体(以下、「第2処理液L1A」と呼ぶ)を供給する第2処理液供給部43Aを有している。第2処理液供給部43Aの構成は、第1処理液供給部43の構成と実質的に同一であり、供給する液のみが異なる。すなわち、第2処理液供給部43Aは、第1処理液供給部43と同様に、ノズル431A、処理液供給源432A、バルブ433A及び供給管路434Aを有する。
【0063】
第2処理液L1Aは、当該第2処理液L1Aにより形成される膜(ガス拡散防止膜)が、前述した第1処理液L1と基板W1上の付着物(除去対象物)例えばカーボンハードマスクとの反応により生じるガスまたはガス状の物質を捕捉して、当該膜を通って基板Wの周囲への拡散を防止することができるものであれば任意の液であってよい。
【0064】
第2処理液L1Aは、上記の要件を満たすポリマーを溶剤に溶解させたものを用いることができる。具体的な第2処理液L1Aとしては、ArFレジストに含まれるアクリルポリマーであるメタクリル酸を有機溶媒(具体的にはPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル), PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート),CHN(シクロヘキサノン),EL(エチルラクトン),γブチロラクトン等)に溶解したもの、KrFレジストに含まれるフェノールポリマーであるポリヒドロキシスチレンを有機溶媒(具体的にはPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル),PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート),CHN(シクロヘキサノン),EL(エチルラクトン),γブチロラクトン等)に溶解したものが例示される。
【0065】
第1処理部4は、ノズル431,431A(後者は第2処理液供給部43Aのノズルである)を駆動するノズル移動機構44を備える。ノズル移動機構44は、アーム441と、アーム441に沿って移動可能な駆動機構内蔵型の移動体442と、アーム441を旋回及び昇降させる旋回昇降機構443とを有する。ノズル431,431Aは、移動体442に取り付けられている。ノズル移動機構44は、ノズル431,431Aを、基板保持部42に保持された基板W1の中心の上方の位置と基板W1の周縁の上方の位置との間で移動させることができ、さらには、平面視で後述するカップ45の外側にある待機位置まで移動させることができる。
【0066】
第1処理部4は、排出口451を有するカップ45を備える。カップ45は、基板保持部42の周囲に設けられており、基板W1から飛散した各種処理液(例えば、洗浄液等)を受け止める。カップ45には、カップ45を上下方向に駆動させる昇降機構46と、基板W1から飛散した各種処理液を排出口451に集めて排出する液排出機構47とが設けられている。
【0067】
<第2処理部の構成>
次に、第2処理部5の構成について
図4を参照して説明する。
図4は、第2処理部5の構成を示す概略断面図である。
【0068】
第2処理部5は、第1処理液L1が供給された基板W2の加熱を含む処理を行う。第2処理部5が行う処理には、その他の処理が含まれていてもよい。
【0069】
第2処理部5は、チャンバ51を備え、チャンバ51内で基板W2の加熱を含む基板処理を行う。
【0070】
第2処理部5は、チャンバ51内に設けられた基板載置部(載置台)52を備える。基板載置部52には、抵抗加熱部、ランプヒーター(例えばLEDランプヒーター)等のヒーターが内蔵されていてもよい。基板載置部52の上面からは、複数の基板保持部材53が突出している。基板保持部材53が基板W2の下面周縁部を支持することにより、基板W2の下面と基板載置部52の上面との間には小さな隙間が形成される。
【0071】
第2処理部5は、チャンバ51内の基板載置部52の上方に設けられた基板加熱部54を備える。基板加熱部54は、抵抗加熱部、ランプヒーター(例えばLEDランプヒーター)等のヒーターを備える。基板加熱部54は、例えば、熱板である。基板加熱部54は、基板保持部材53によって基板載置部52上に保持された基板W2を、第1処理液L1中の溶媒の沸点以上かつ除去剤の沸点未満の所定温度で加熱することができる。基板W2の初期温度(加熱前温度)は、例えば、室温である。基板加熱部54は、設定された温度及び時間で加熱を実施することができる。基板加熱部54は、加熱温度を段階的に変化させながら基板W2を加熱することもできるし、加熱温度を一定に維持しながら基板W2を加熱することもできる。また、基板加熱部54は、基板W2上の処理液L中の溶媒の蒸発及び基板上の付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)と除去剤との反応が促進するのに十分な時間、基板W2を加熱することができる。
【0072】
チャンバ51には、チャンバ51内の雰囲気を排気する排気部55が設けられている。
排気部55は、チャンバ51の上部に設けられた1つ又は2つ以上の排気口551と、排気ダクト(排気ライン)552を介して排気口551に接続されたコールドトラップ553と、排気ダクト(排気ライン)552を介してコールドトラップ553に接続された真空ポンプ554とを有する。チャンバ51内の雰囲気が、真空ポンプ554により吸引されている排気口551及び排気ダクト552を介してチャンバ51から排出されることにより、基板W2から蒸発した溶媒もチャンバ51から排出され、蒸発した溶媒の基板W2への再付着が防止される。
【0073】
<第3処理部の構成>
次に、第3処理部6の構成について
図5を参照して説明する。
図5は、第3処理部6の構成を示す概略断面図である。
【0074】
第3処理部6は、第1処理液L1の供給後に加熱された基板W3に対するリンス液の供給を含む処理を行う。第3処理部6が行う処理には、その他の処理が含まれていてもよい。
【0075】
第3処理部6は、チャンバ61を備え、チャンバ61内でリンス液の供給を含む基板処理を行う。
【0076】
第3処理部6は、基板保持部62を備える。基板保持部62は、チャンバ61内において鉛直方向に延在する回転軸621と、回転軸621の上端部に取り付けられたターンテーブル622と、ターンテーブル622の上面外周部に設けられ、基板W3の外縁部を支持するチャック623と、回転軸621を回転駆動する駆動部624とを備え、基板W3を保持して回転可能となっている。
【0077】
基板W3は、チャック623に支持され、ターンテーブル622の上面からわずかに離間した状態で、ターンテーブル622に水平保持される。本実施形態において、基板保持部62による基板W3の保持方式は、可動のチャック623によって基板W3の外縁部を把持するいわゆるメカニカルチャックタイプのものであるが、基板W3の裏面を真空吸着するいわゆるバキュームチャックタイプのものであってもよい。
【0078】
回転軸621の基端部は、駆動部624により回転可能に支持され、回転軸621の先端部は、ターンテーブル622を水平に支持する。回転軸621が回転すると、回転軸621の上端部に取り付けられたターンテーブル622が回転し、これにより、チャック623に支持された状態でターンテーブル622に保持された基板W3が回転する。制御ユニット3は、駆動部624の動作を制御し、基板W3の回転タイミング、回転速度等を制御する。
【0079】
第3処理部6は、基板保持部62に保持された基板W3に対してリンス液L2を供給するリンス液供給部63を備える。
【0080】
リンス液供給部63は、基板保持部62に保持された基板W3に対して、リンス液L2を吐出するノズル631と、ノズル631にリンス液L2を供給するリンス液供給源632とを備える。リンス液供給源632が有するタンクには、リンス液L2が貯留されており、ノズル631には、リンス液供給源632から、バルブ633等の流量調整器が介設された供給管路634を通じて、リンス液L2が供給される。第3処理部6は、それぞれ異なるリンス液を供給する複数のリンス液供給部を備えていてもよい。追加のリンス液供給部は、リンス液供給部63と同様に構成することができる。
【0081】
リンス液L2は、基板W3上に残存する物質を基板W3から除去できる能力を持つ液体から選択可能である。基板W3上に残存する物質は、例えば、第1処理液L1中に含まれていた除去剤、除去剤と反応した付着物、増粘剤、第2処理液L1A中に含まれていたポリマー等である。なお、加熱後の増粘剤及びポリマーは、これらの分解物、変性物等である場合がある。また、除去剤と反応した付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)は、付着物の溶解物、分解物、変性物等である場合がある。
【0082】
リンス液L2は、第1処理液L1由来の物質を除去するのに適した第1リンス液及び第2処理液L1A由来の物質を除去するのに適した第2リンス液の2種類のリンス液であってもよい。この場合、まず第2リンス液を基板W3に供給し、その後、第1リンスを基板W3に供給することが好ましい。第1リンス液としては、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)、N−メチルピロリドン(NMP)等を使用することができる。増粘剤がメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等である場合のリンス液は、水が好ましい。増粘剤がポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム等である場合のリンス液は、NMPが好ましい。基板W3に対して供給されるリンス液L2は、常温であってもよいし、常温よりも高温に加熱されていてもよい。リンス液L2を常温よりも高温に加熱して供給することにより、リンス液L2によるリンス効率を上げることができる。また、第2リンス液としては、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル),PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート),CHN(シクロヘキサノン),EL(エチルラクトン)等を用いることができる。
【0083】
リンス液L2は、第1処理液L1由来の物質を除去することができ、かつ第2処理液L1A由来の物質を除去することができる一種類のリンス液であってもよい。このようなリンス液としてTMAH、APM(SC1)、シクロペンタン等が例示され、このようなリンス液が用いられる場合の除去対象として、カーボンハードマスク,ポリイミド等が例示される。
【0084】
なお、リンス液に関する説明は、除去対象がハードマスク膜93以外の付着物である場合、例えば、除去対象が、ドライエッチング後の基板上に残存するその他の不要な有機膜、無機膜、有機−無機複合膜(例えば、レジスト膜、反射防止膜等)、エッチングの際に生じた副生物(例えば、エッチングガス、レジスト膜、ハードマスク膜等に由来するポリマー)、レジスト膜のアッシングの際に生じたレジスト残渣、イオンインプラント後のレジスト硬化層等である場合にも適用することができる。
【0085】
第3処理部6は、ノズル631及び631を駆動するノズル移動機構64を備える。ノズル移動機構64は、アーム641と、アーム641に沿って移動可能な駆動機構内蔵型の移動体642と、アーム641を旋回及び昇降させる旋回昇降機構643とを有する。ノズル631は、移動体642に取り付けられている。ノズル移動機構64は、ノズル631を、基板保持部62に保持された基板W3の中心の上方の位置と基板W3の周縁の上方の位置との間で移動させることができ、さらには、平面視で後述するカップ65の外側にある待機位置まで移動させることができる。
【0086】
第3処理部6は、排出口651を有するカップ65を備える。カップ65は、基板保持部62の周囲に設けられており、基板W3から飛散した各種処理液(例えば、リンス液等)を受け止める。カップ65には、カップ65を上下方向に駆動させる昇降機構66と、基板W3から飛散した各種処理液を排出口651に集めて排出する液排出機構67とが設けられている。
【0087】
第3処理部6は、基板保持部62に保持された基板W3に対して、イソプロピルアルコール(IPA)等の乾燥用溶媒を吐出するノズルと、該ノズルに乾燥用溶媒を供給する乾燥用溶媒供給源とを有する乾燥用溶媒供給部を備えていてもよい。また、第3処理部6は、基板保持部62に保持された基板W3に対して、窒素ガス、ドライエア等の乾燥用ガスを吐出するノズルと、該ノズルに乾燥用ガスを供給する乾燥用ガス供給源とを有する乾燥用ガス供給部を備えていてもよい。
【0088】
<基板処理方法>
以下、基板処理装置1により実施される基板処理方法について説明する。基板処理装置1によって実施される基板処理方法は、ドライエッチング処理後の基板から、該基板上のハードマスク(例えばカーボンハードマスク)膜を除去する方法である。本実施形態では、ドライエッチング後の基板上のハードマスク膜が除去対象であるが、ハードマスク膜は、基板上の付着物の一例である。
【0089】
基板上の付着物のその他の具体例としては、ドライエッチング後の基板上に残存する不要な有機膜、無機膜、有機−無機複合膜(例えば、レジスト膜、反射防止膜等)、エッチングの際に生じた副生物(例えば、エッチングガス、レジスト膜、ハードマスク膜等に由来するポリマー)、レジスト膜のアッシングの際に生じたレジスト残渣、イオンインプラント後のレジスト硬化層等が挙げられる。
【0090】
基板処理装置1によって実施される基板処理方法は、
(A)基板W1に、ハードマスク膜93の除去剤と、該除去剤の沸点よりも低い沸点を有する溶媒と、増粘剤とを含有する第1処理液L1を供給する工程と、
(B)工程(A)の後、ガス拡散防止膜となる有機ポリマーを含有する第2処理液L1Aを供給する工程と、
(C)工程(B)の後、基板W2を、第1処理液L1中の溶媒の沸点以上かつ除去剤の沸点未満の所定温度で加熱し、基板W2上の第1処理液L1中の溶媒の蒸発及びハードマスク膜93と除去剤との反応を促進させる工程と、
(D)工程(C)の後、基板W3にリンス液L2を供給して、基板W3からハードマスク膜93を除去する工程と
を含む。
【0091】
まず、ドライエッチング処理後の基板W1が、第1処理部4へ搬入される。この際、搬送機構213は、載置部211に載置されたキャリアCから基板W1を取り出し、取り出した基板W1を受渡部214に載置する。搬送機構222は、受渡部214に載置された基板W1を取り出し、取り出した基板W1を第1処理部4へ搬入する。
【0092】
第1処理部4へ搬入された基板W1は、基板保持部42により保持される。この際、基板保持部42は、基板W1の外縁部をチャック423により支持した状態で、ターンテーブル422に水平に保持する。駆動部424は、基板保持部42に保持された基板W1を所定速度で回転させる。制御ユニット3は、駆動部424の動作を制御し、基板W1の回転タイミング、回転速度等を制御する。
【0093】
工程(A)は、基板保持部42に保持された基板W1に対して行われる。工程(A)では、基板保持部42に保持された基板W1を所定速度で回転させたまま、処理液供給部43のノズル431を基板W1の中央上方に位置させ、ノズル431から基板W1に対して第1処理液L1を供給する。この際、制御ユニット3は、処理液供給部43の動作を制御し、第1処理液L1の供給タイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W1に供給された第1処理液L1は、基板W1の回転に伴う遠心力によって基板W1の表面に広がる。これにより、
図7に示すように、基板W1の凹凸パターンに沿った第1処理液L1の膜でハードマスク膜93が覆われる。基板W1から飛散した第1処理液L1は、カップ45の排出口451及び液排出機構47を介して排出される。第1処理液L1の供給を停止した後に基板W1を引き続き所定時間回転させておくことにより、次工程(B)を実行するに支障(例えば第1処理液L1の膜が第2処理液L1Aにより除去されてしまうこと等)が無い程度に第1処理液L1の膜が硬化する(少なくとも流動性が低下する)。
【0094】
次に、基板保持部42に保持された基板W1を所定速度で回転させたまま、第2処理液供給部43Aのノズル431Aを基板W1の中央上方に位置させ、ノズル431Aから基板W1に対して第2処理液L1Aを供給する。この際、制御ユニット3は、処理液供給部43の動作を制御し、第2処理液L1Aの供給タイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W1に供給された第2処理液L1Aは、基板W1の回転に伴う遠心力によって、第1処理液L1の膜の表面に広がる。これにより、
図8に示すように、第2処理液L1Aの膜で第1処理液L1の膜が覆われる。第2処理液L1Aの供給を停止した後に基板W1を引き続き所定時間回転させておくことにより、次工程(C)を実施する第2処理部に搬送するに支障が無い程度に第2処理液L1Aの膜が硬化する(少なくとも流動性が低下する)。
【0095】
第1処理部4において上記の処理が施された基板W2は、第2処理部5へ搬送される。この際、搬送機構222は、第1処理部4から基板W2を取り出し、取り出した基板W2を第2処理部5へ搬入する。
【0096】
第2処理部5に搬入された基板W2は、基板保持部材53によって基板載置部52上に保持される。
【0097】
工程(C)は、基板載置部52上に保持された基板W2に対して行われる。工程(C)では、ハードマスク膜93を第1処理液L1及び第2処理液L1Aの膜で覆ったまま、基板加熱部54により、基板W2を、第1処理液L1中の溶媒の沸点以上かつ除去剤の沸点未満の所定温度で加熱し、基板W2上の第1処理液L1中の溶媒の蒸発及びハードマスク膜93と除去剤との反応を促進させる。加熱によりハードマスク膜93と除去剤との反応が促進する。また、加熱により基板W2上の第1処理液L1中の溶媒が蒸発すると、ハードマスク膜93の界面に存在する除去剤の濃度が増加するともに、除去剤がハードマスク膜93内に拡散しやすくなり、ハードマスク膜93と除去剤との反応が促進する。このような反応促進により、公知の除去剤と同様の除去対象を効果的に(例えば迅速に)除去することができるだけでなく、公知の除去剤とは異なる除去対象を除去することが可能となる。
【0098】
上述した「第1処理液L1中の溶媒の沸点以上かつ除去剤の沸点未満の所定温度」には、(1)第1処理液L1中の溶媒の沸点以上かつ増粘剤のガラス転移点未満の温度、(2)第1処理液L1中の増粘剤のガラス転移点以上かつ除去剤の沸点未満の温度、の2つがある。温度(1)は、温度(2)よりも、工程(C)でのリンス効率が向上する点で好ましい。温度(2)は、温度(1)よりも、除去剤の反応性を活かすことができ、ハードマスク膜93と除去剤との反応が促進する点で好ましい。
【0099】
基板加熱部54は、加熱温度を段階的に変化させながら基板W2を加熱してもよいし、加熱温度を一定に維持しながら基板W2を加熱してもよい。基板加熱部54による加熱時間は、基板W2上の第1処理液L1中の溶媒の蒸発及びハードマスク膜93と除去剤との反応を促進させるのに十分な時間に適宜調節される。加熱時間は、通常60〜300秒間、好ましくは140〜160秒間である。
【0100】
ハードマスク膜93と除去剤とが反応すると、除去剤由来の酸性のガス(除去剤が例えば塩酸の場合)またはアルカリ性のガス(除去剤が例えばTMAHの場合)が発生する。このガスの殆どは、第2処理液L1Aにより形成された塗布膜により捕捉され、チャンバ51の内部空間には拡散しない。また、第1処理液L1中の溶媒の蒸気の多くも、第2処理液L1Aにより形成された塗布膜により捕捉される。従って、チャンバ51内に拡散するものは、主に第2処理液L1Aに含まれている溶媒の蒸気である。
【0101】
チャンバ51の内部空間に酸性またはアルカリ性の除去剤由来のガスが拡散すると、このようなガスによりチャンバ51内の構成要素が腐食するおそれがあり、またガス由来の生成物によりチャンバ51内の構成要素に汚染物質が付着し、パーティクルの原因となるおそれがある。本実施形態では、第2処理液L1Aにより形成された塗布膜が、このような有害なガスの拡散を防止するため、チャンバ51内の構成要素の腐食及び汚染を防止することができる。
【0102】
基板W2の加熱は、排気部55によりチャンバ51内の雰囲気を排出しながら行われる。チャンバ51内の雰囲気中に存在する溶媒の蒸気は、排気部55により、チャンバ51から排出される。溶媒の蒸気は、チャンバ51内の雰囲気中、上方に流れやすいので、チャンバ51の上部に設けられた排気部55は、チャンバ51内の雰囲気中に存在する溶媒の蒸気を、効果的に排出することができる。このような効果的な排出は、蒸発した溶媒の基板W2への再付着を防止する上で有利である。チャンバ51から排出されたガスは、コールドトラップ553を通過するときに冷却され、ガスに含まれる溶媒は、コールドトラップ553内で、例えばコールドトラップ553の内壁面上で、液化する。このため、真空ポンプ554に流入するガス中に含まれる溶媒の濃度は低い。
【0103】
第2処理部5で上記の処理が施された基板W3は、第3処理部6へ搬送される。この際、搬送機構222は、第2処理部5から基板W3を取り出し、取り出した基板W3を第3処理部6へ搬入する。
【0104】
第3処理部6に搬入された基板W3は、基板保持部62により保持される。この際、基板保持部62は、基板W3の外縁部をチャック623により支持した状態で、ターンテーブル622に水平に保持する。駆動部624は、基板保持部62に保持された基板W3を所定速度で回転させる。制御ユニット3は、駆動部624の動作を制御し、基板W3の回転タイミング、回転速度等を制御する。
【0105】
工程(D)は、基板保持部62に保持された基板W3に対して行われる。工程(C)では、基板保持部62に保持された基板W3を所定速度で回転させたまま、リンス液供給部63のノズル631を基板W3の中央上方に位置させ、ノズル631から基板W3に対してリンス液L2を供給する。前述したように、リンス液L2として、第2処理液L1A由来の物質を除去するのに適した第2リンス液と、第1処理液L1由来の物質を除去するのに適した第1リンス液とを順次基板W3に供給してもよいし、第1処理液L1由来の物質を除去することができ、かつ第2処理液L1A由来の物質を除去することができる一種類のリンス液を基板W3に供給してもよい。この際、制御ユニット3は、リンス液供給部63の動作を制御し、リンス液L2の供給タイミング、供給時間、供給量等を制御する。基板W3に供給されたリンス液L2は、基板W3の回転に伴う遠心力によって基板W3の表面に広がる。これにより、基板W3から、除去剤と反応したハードマスク膜93が除去される。基板W3から飛散したリンス液L2は、カップ65の排出口651及び液排出機構67を介して排出される。なお、除去剤と反応した付着物(本実施形態ではハードマスク膜)93以外の物質、例えば、第1処理液L1に含まれていた除去剤、増粘剤、第2処理液L1Aに含まれていたポリマー等が、基板W3上に残存する場合、該物質もリンス液L2により除去される。なお、加熱後の増粘剤及びポリマーは、これらの分解物、変性物等である場合がある。また、除去剤と反応した付着物(本実施形態ではハードマスク膜93)は、付着物の溶解物、分解物、変性物等である場合がある。なお、リンス液L2の供給後、基板W3に対してIPA等の乾燥用溶媒を供給してもよい。
【0106】
第3処理部6において上記の処理が施された基板W4は、第3処理部6から取り出される。この際、搬送機構222は、第3処理部6から基板W4を取り出し、取り出した基板W4を受渡部214に載置する。搬送機構213は、搬送機構222により受渡部214に載置された基板W4を取り出し、載置部211のキャリアCへ収容する。
【0107】
上記実施形態には、様々な変更を加えることができる。以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の変更例のうち、2種以上を組み合わせることもできる。
【0108】
上記実施形態において、基板Wに第1処理部4で工程(A)及び(B)(液膜形成)が行われた後に基板Wが第1処理部4から第2処理部5へ搬送され、第2処理部5で工程(C)(加熱)が行われるようになっているが、これには限定されない。工程(A)〜(C)(リンス)を全て第1処理部4で行ってもよい。この場合、処理ステーション22は、第2処理部5を備える必要はなく、第1処理部4と第3処理部6とで構成することができる。この場合、工程(A)〜(C)は、基板を基板保持部42に保持した状態で実施される。またこの場合、第1処理部4は基板加熱部を備えることになるが、この基板加熱部は、基板保持部42に保持された基板の上方に設けてもよいし、基板保持部42に保持された基板の下方に設けてもよい。例えば、基板加熱部は、ターンテーブル422に内蔵してもよい。第1処理部4の基板加熱部は、例えば、抵抗加熱部、ランプヒーター(例えばLEDランプヒーター)等のヒーターで構成することができる。
【0109】
上記実施形態において、第2処理部5で工程(C)(加熱)が施された基板Wが第3処理部6に搬送されてそこで工程(D)(リンス)を施されるが、これには限定されない。第2処理部5で工程(C)が施された基板Wを第1処理部4に戻してそこで工程(D)を行ってもよい。この場合、第1処理部4は、リンス液供給部を備える。第1処理部4のリンス液供給部は、第3処理部6のリンス液供給部63と同様に構成することができる。またこの場合、処理ステーション22は第3処理部6を備える必要はなく、第1処理部4と第2処理部5とで構成することができる。第1処理部4における工程(C)は、基板を基板保持部42に保持した状態で実施される。
【0110】
上記実施形態において、工程(A)〜(D)の全て第1処理部4で行わせてもよい。この場合、第1処理部4は、上述した変形例と同様に、基板加熱部及びリンス液供給部を備える。工程(A)〜(D)は、基板を基板保持部42に保持した状態で実施される。この場合、処理ステーション22は、第1処理部4のみで構成することができる。
【0111】
上記実施形態では、
図6を用いて説明したドライエッチング処理は、基板処理装置1とは別の装置において実行され、
図6(D)に示すドライエッチング処理後の基板W1が載置部211に載置されるが、これに限定されるものではない。例えば、処理ステーション22に含まれるユニットの少なくとも1つがドライエッチング処理を行う機能を有し、そのユニットから搬送機構222が直接的に第1処理部4へと基板W1を搬入するように構成されていてもよい。
【実施例】
【0112】
シリコンウエハ上に形成したカーボンハードマスク膜に対して、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とポリヒドロキシスチレンの混合物を塗布した。なお、TMAHとPGMEとポリヒドロキシスチレンの混合比は3:6:1(重量比)とした。その後、ポリヒドロキシスチレンとシクロヘキサノン(CHN)等の有機溶剤の混合物を塗布した。なお、ポリヒドロスチレンと有機溶剤の混合比は2:8(重量比)とした。塗布後、シリコンウエハを110℃で15秒間、30秒間又は60秒間加熱した。加熱後、いずれの加熱時間でもガス発生が減少し、水や有機溶剤で洗浄したところ、カーボンハードマスク膜を剥離できた。
【0113】
[他の実施形態]
他の実施形態として、
図9(A)に示すように表面の全体に膜として例えばカーボンハードマスクHMが形成された基板Wから、周縁部にある膜のみを除去するベベルカットの実施手順について説明する。
【0114】
まず、
図9(B)に示すように、公知のベベルコーター(図示せず)を用いて先に説明した第1処理液L1の膜を基板Wの周縁部のみに形成する。ここでは、第1処理液L1として、上述した除去剤として酸化性の薬液例えば塩酸を含有するものを用いる。ベベルコーターは、スピンチャック(図示せず)により基板Wを水平姿勢で保持して鉛直軸線回りに回転させ、この回転する基板Wの周縁部にノズルN1により第1処理液L1を供給することにより、第1処理液L1の膜を基板Wの周縁部のみに形成する。
【0115】
次に、
図9(C)に示すように、基板Wを、上記第2処理部5と同様の構成を有するベークモジュール(図示せず)に搬入し、基板Wを加熱する。これにより、上述した工程(C)と同様に、基板W上の第1処理液L1中の溶媒を蒸発させ、かつ、ハードマスクと除去剤との反応を促進させる。
【0116】
次に、
図9(D)に示すように、公知のベベル洗浄装置(図示せず)を用いて、基板Wに先に説明したリンス液L2を基板Wの周縁部に供給し、第1処理液由来の膜の残渣及び除去剤との反応により除去されやすくなったハードマスクHMを除去する。ここでは、リンス液L2として、アルカリ性薬液を用いる。このとき、ベベル洗浄装置は、スピンチャック(図示せず)が基板Wを水平姿勢で保持して鉛直軸線回りに回転させ、この回転する基板Wの周縁部にノズルからリンス液L2を供給することにより、第1処理液由来の膜の残渣及び除去剤との反応により除去されやすくなったハードマスクHMの除去を行う。その後、ベベル洗浄装置において、基板Wの表面に例えば純水及びIPA等が供給され、基板の表面に残留しているリンス液L2等の除去及び基板の乾燥を行う。