特許第6888660号(P6888660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6888660ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物、硬化膜の製造方法及び電子部品
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  • 特許6888660-ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物、硬化膜の製造方法及び電子部品 図000034
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6888660
(24)【登録日】2021年5月24日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物、硬化膜の製造方法及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20210603BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20210603BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20210603BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20210603BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20210603BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   C08F290/14
   C08G73/12
   C08F2/50
   G03F7/027 514
   G03F7/027 502
   G03F7/031
   G03F7/20 521
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-201268(P2019-201268)
(22)【出願日】2019年11月6日
(62)【分割の表示】特願2015-561208(P2015-561208)の分割
【原出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2020-37699(P2020-37699A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-23519(P2014-23519)
(32)【優先日】2014年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬司
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大江 匡之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ケイ子
(72)【発明者】
【氏名】副島 和也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 越晴
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/008991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/14
C08F 2/50
C08G 73/12
G03F 7/027
G03F 7/031
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含む樹脂組成物。
(a)下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、
【化1】
(式中、Rは4価の有機基であり、Rは2価の有機基である。R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
(b)エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物
(c)下記式(9)で表される化合物
【化2】
(式(9)中、Rは、フェニル基又はトリル基を示す。Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基を示す。
は、H、OH、又はCOOHを示す。)
【請求項2】
前記式(1)のRが、下記式(2)で表わされる2価の有機基である請求項1に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式中、R〜R12は各々独立に水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基であり、R〜R12の少なくとも1つはフッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【請求項3】
前記式(1)のRが、下記式(3)で表わされる2価の有機基である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式中、R13及びR14は各々独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。)
【請求項4】
前記光重合性化合物が、下記式(4)で表される構造を含む請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化5】
(式中、R24は、水素原子又はメチル基であり、Xはアルキレン基であり、nは1〜25の整数である。)
【請求項5】
前記光重合性化合物が、下記式(5)で表される化合物である請求項4に記載の樹脂組成物。
【化6】
(式中、R21〜R23は各々独立に1価の有機基であり、少なくとも1つは前記式(4)で表される基である。)
【請求項6】
前記(b)成分が前記(a)成分100質量部に対して0.01〜50質量部含まれる請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(c)成分が下記式(9−1)で表される化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化7】
【請求項8】
(e)成分として、(b)成分以外の光重合性化合物をさらに含む請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記(e)成分が、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、1,3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びN−メチロールアクリルアミドからなる群から選択される1以上である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を加熱処理する工程とを含む、硬化膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程とを含む、パターン硬化膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて作製した硬化膜。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて作製したパターン硬化膜。
【請求項14】
請求項12に記載の硬化膜又は請求項13に記載のパターン硬化膜を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体を含む樹脂組成物、それを用いた硬化膜の製造方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化に伴い、誘電率を低減するためのlow−k層と呼ばれる層間絶縁膜が必要とされている。low−k層は空孔構造を有するため、機械的強度が低下するという課題がある。この様な機械的強度の弱い層間絶縁膜を保護するために、ポリイミド樹脂から形成される硬化膜が用いられる。この硬化膜には、厚膜形成性(例えば5μm以上)や高弾性率化(例えば4GPa以上)といった特性が求められている。しかし、厚膜化及び高弾性率化に伴い、硬化後の応力が増大し、半導体ウエハの反りが大きくなって、搬送やウエハ固定の際に不具合が生じる場合があった。
【0003】
ポリイミド樹脂から形成される硬化膜を低応力化する方法として、例えば、酸成分に特定の官能基を有するフタル酸化合物を共重縮合させたポリアミドを用いる方法(例えば特許文献1)が挙げられる。しかしながら、近年は低温での硬化が求められており、前記ポリアミドを低温硬化させた場合には、充分な性能を有する硬化膜を得る点では改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2006/008991号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
また、低応力化するために、i線透過率が高いフッ素を含有するポリイミド前駆体が検討されている。しかしながら、本発明者らの検討の結果、これらのポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を加熱硬化後に得られる硬化膜は、レジストプロセス中に用いられる有機溶剤を吸収しやすく、膨潤してしまうことが判明した。ここでいう膨潤とは、ポリイミド硬化膜を一定温度(例えば70℃)のN−メチルピロリドンに一定時間(例えば20分間)浸漬したときに、硬化膜が溶媒を吸収し、体積が膨張する現象である。
本発明の目的は、300℃以下の低温で硬化した場合であっても低応力及び低膨潤な硬化膜が得られる樹脂組成物を提供することである。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によれば、以下の樹脂組成物が提供される。
1.下記(a)成分及び(b)成分を含む樹脂組成物。
(a)下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、
【化1】
(式中、Rは4価の有機基であり、Rは2価の有機基である。R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
(b)エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物
2.前記式(1)のRが、下記式(2)で表わされる2価の有機基である1に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中、R〜R12は各々独立に水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基であり、R〜R12の少なくとも1つはフッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)3.前記式(1)のRが、下記式(3)で表わされる2価の有機基である1又は2に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式中、R13及びR14は各々独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。)
4.前記光重合性化合物が、下記式(4)で表される構造を含む1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化4】
(式中、R24は、水素原子又はメチル基であり、Xはアルキレン基であり、nは1〜25の整数である。)
5.前記光重合性化合物が、下記式(5)で表される化合物である4に記載の樹脂組成物。
【化5】
(式中、R21〜R23は各々独立に1価の有機基であり、少なくとも1つは前記式(4)で表される基である。)
6.前記(b)成分が前記(a)成分100質量部に対して0.01〜50質量部含まれる1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.(c)成分として、活性光線照射によりラジカルを発生する化合物をさらに含む1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.前記活性光線照射によりラジカルを発生する化合物が、オキシムエステル化合物である7に記載の樹脂組成物。
9.(e)成分として、(b)成分以外の光重合性化合物をさらに含む1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.前記光重合性化合物が、(メタ)アクリル化合物である9に記載の樹脂組成物。
11.1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を加熱処理する工程とを含む、硬化膜の製造方法。
12.1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程とを含む、パターン硬化膜の製造方法。
13.11に記載の硬化膜の製造方法から得られる硬化膜。
14.12に記載のパターン硬化膜の製造方法から得られるパターン硬化膜。
15.13に記載の硬化膜又は14に記載のパターン硬化膜をを有する電子部品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、300℃以下の低温で硬化した場合であっても低応力及び低膨潤な硬化膜が得られる樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の樹脂組成物を用いて製造した電子部品(半導体装置)の一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いた硬化膜の製造方法について説明する。尚、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、下記(a)成分及び(b)成分を含む。
[(a)成分]
下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体
【化6】
(式(1)中、Rは4価の有機基であり、Rは2価の有機基である。R及びRは各々独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。)
[(b)成分]
エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物
【0011】
従来は、370℃程度の高温でポリイミド前駆体の加熱硬化が行われていたが、本発明の樹脂組成物は、(a)成分と(b)成分の両方を含むことで、300℃以下の低温で硬化した場合であっても、応力が低くかつ膨潤が発生しにくい硬化膜が得られる。(a)成分を用いなかった場合、例えばポリベンゾオキサゾール前駆体を用いた場合は、(b)成分を併用しても、応力及び膨潤に対する効果が低い。
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について説明する。
【0012】
(a)成分:下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体
式(1)中のRは、原料として用いられるテトラカルボン酸又はその二無水物に由来する構造である。硬化膜の応力、i線透過率の観点からは、Rは、下記式(2a)〜(2e)で表される基のいずれかであることが好ましい。
【化7】
(式(2d)中、X及びYは、各々独立に結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合を示す。式(2e)中、Zはエーテル結合(−O−)又はスルフィド結合(−S−)である。)
【0013】
式(2d)のX及びYの「結合するベンゼン環と共役しない2価の基」は、例えば、−O−、−S−、又は下記式で表わされる2価の基である。
【化8】
(式中、R12は炭素原子又は珪素原子である。
13は、各々独立に水素原子、又は、フッ素原子等のハロゲン原子である。)
これらの中でも、Rはピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来する構造がより好ましい。これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
硬化膜の応力、i線透過率を低下させない範囲において、Rの原料は3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス{4’−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス{4’−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス{4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物等と組み合わせて用いてもよい。
【0015】
式(1)中のRは原料として用いるジアミンに由来する構造である。(a)成分において、式(1)中のRが、下記式(2)で表わされる2価の有機基であることが好ましい。
【化9】
(式(2)中、R〜R12は各々独立に水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基であり、R〜R12の少なくとも1つはフッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【0016】
〜R12の1価の有機基としては、例えば炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜6)のフルオロアルキル基が挙げられる。
【0017】
(a)成分において、式(1)中のRが、下記式(3)で表わされる2価の有機基であることがより好ましい。低温硬化時における膨潤現象は、i線透過率が高いフッ素を含有するポリイミド前駆体を用いた際に生じやすい傾向がある。
【化10】
(式(3)中、R13及びR14は各々独立にフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。)
【0018】
(a)成分中、式(1)中のRが式(3)で表される構造単位である割合は、1〜100mol%であることが好ましく、10〜100mol%であることがより好ましく、30〜100mol%であることがさらに好ましい。
【0019】
式(2)又は(3)で表される構造としては、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(フルオロ)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニルが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、式(2)、(3)以外の構造を与えるジアミン化合物を用いることもできる。例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、ベンジジン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルフィド、o−トリジン、o−トリジンスルホン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4−ジアミノメシチレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、ビス−{4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス{4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス{4−(3’−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ジアミノポリシロキサン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
式(1)中のR及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基、炭素数3〜20(好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数6〜12)のシクロアルキル基、又は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である。
【0022】
炭素数1〜20のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。炭素数3〜20のシクロアルキル基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基としては、例えば、(メタ)アクリル基を有する有機基が挙げられる。具体的には、アルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリロキシアルキル基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは「メタクリル」又は「アクリル」を表し、「(メタ)アクリロキシ」とは「メタクリロキシ」又は「アクリロキシ」を表し、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」又は「アクリレート」を表す。
アルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリロキシアルキル基としては、(メタ)アクリロキシエチル基、(メタ)アクリロキシプロピル基、(メタ)アクリロキシブチル基等が挙げられる。
【0023】
及びRの少なくとも一方が、炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基の場合は、活性光線照射によってラジカルを発生する化合物と組み合わせることで、ラジカル重合による分子鎖間の架橋が可能となる感光性樹脂組成物となる。
【0024】
本発明の(a)成分は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを付加重合させて合成することができる。また、式(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物をジエステル誘導体にした後、式(6)で表される酸塩化物に変換し、式(7)で表されるジアミンと反応させることによって合成することができる。合成方法は公知の手法から選択できる。
【化11】
(式(5)、(6)及び(7)中、R〜Rは式(1)と同じである。)
【0025】
(a)成分であるポリイミド前駆体の分子量は、ポリスチレン換算での重量平均分子量が10000〜100000であることが好ましく、15000〜100000であることがより好ましく、20000〜85000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が10000より大きいと、硬化後の応力を充分に低下することができる。また、100000より小さいと、溶剤への溶解性を向上よりでき、溶液の粘度が減少して取り扱い性が向上する。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができ、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求めることができる。
【0026】
(a)成分を合成する際のテトラカルボン酸二無水物とジアミンのモル比は通常1.0であるが、分子量や末端残基を制御する目的で、0.7〜1.3の範囲のモル比であってもよい。モル比が0.7以下もしくは1.3以上の場合、得られるポリイミド前駆体の分子量が小さくなり、硬化後の低応力性が充分に発現しない恐れがある。
【0027】
本発明の(a)成分であるポリイミド前駆体を加熱処理してイミド化を進行させてポリイミドに変換する加熱温度としては、80〜300℃が好ましく、100〜300℃がより好ましく、200〜300℃であることがさらに好ましい。80℃未満ではイミド化が充分進行せず、耐熱性が低下する恐れがあり、300℃より高い温度で行うと、半導体素子へダメージを与えてしまう恐れがある。
【0028】
式(1)で表されるポリイミド前駆体を基材に塗布し、加熱硬化して得られる硬化膜の残留応力は、硬化膜の膜厚が10μmの場合において、30MPa以下であることが好ましく、27MPa以下であることがより好ましく、25MPa以下であることがさらに好ましい。残留応力が30MPa以下であれば、硬化後の膜厚が10μmとなるように膜を形成した場合に、ウエハの反りをより充分抑制することができ、ウエハの搬送や吸着固定において生じる不具合をより抑制することができる。
【0029】
尚、残留応力は薄膜ストレス測定装置FLX−2320(KLA Tencor社製)を用いて、ウエハの反り量を測定後、応力に換算する方法により測定することができる。
【0030】
本発明において得られる硬化膜を、硬化後の膜厚が10μmとなるように形成するためには、上述の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程後に、塗膜の厚さが20μm程度である必要がある。よって、活性光線照射によってラジカルを発生する化合物と組み合わせて感光性樹脂組成物とする場合には、樹脂組成物のi線透過率が高いほど好ましい。
【0031】
具体的には、膜厚20μmにおいて、i線透過率が5%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。5%未満であると、i線が深部まで到達せず、ラジカルが充分に発生しないために、現像時に膜の基板側から樹脂が染み出てくる等、感光特性が低下する恐れがある。
【0032】
尚、i線透過率はU−3310spctrophotometer(HITACHI社製)を用いて、透過UVスペクトルから測定することができる。
【0033】
(b)成分:エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物
本発明の樹脂組成物は、(b)成分としてエチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物を含む。前記光重合性化合物は架橋剤として機能し、硬化後も膜中に残存することで、ポリイミド硬化膜中に架橋構造を形成し、膨潤を抑制することができると考えられる。また、光重合性化合物は、ポリイミド硬化膜の配向性を向上する機能を有し、硬化後の残膜率を向上することもできる。
尚、ポリイミド硬化膜の膨潤を抑制する添加剤としてアルミキレート化合物があるが、例えば300℃以下の低温硬化においては、アルミキレート化合物の添加では充分な効果が得られない。上記(b)成分を用いることにより、300℃以下の低温硬化であっても充分な膨潤抑制効果が得られる。
【0034】
上記光重合性化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートプレポリマー、及び下記式(4)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【化12】
(式(4)中、R24は、水素原子又はメチル基であり、Xはアルキレン基であり、nは1〜25の整数である。)
【0035】
式(4)で表される構造を有する化合物は、好ましくは下記式(5)で表される化合物である。
【化13】
(式(5)中、R21〜R23は各々独立に1価の有機基であり、少なくとも1つは前記式(4)で表される基である。)
【0036】
式(4)で表される構造を有する化合物として、下記式(6)で表される化合物も使用できる。
【化14】
(式(6)中、R21〜R23は各々独立に1価の有機基であり、少なくとも1つは下記式(9)で表される基である。)
【化15】
(式(9)中、R24は、水素原子又はメチル基であり、Xは、アルキレン基であり、Yは、アルキレン基であり、nは、1〜25の整数であり、mは、1〜14の整数である。)
【0037】
式(5)及び(6)の1価の有機基としては、炭素数1〜15のアルキル基、グリシジル基、ビニル基等が挙げられる。炭素数1〜15のアルキル基は、例えば2,3‐ジブロモプロピル基のようにハロゲン原子を有していてもよい。
【0038】
式(4)及び(9)のX及びYのアルキレン基の炭素数としては特に制限はないが、炭素数2〜7のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基又はプロピレン基であることがさらに好ましい。
【0039】
式(4)及び式(9)のnは、1〜25の整数であり、1〜20の整数であることが好ましく1〜15の整数がより好ましい。
式(9)中のmは、1〜14の整数であり、1〜6の整数であることが好ましく6の整数であることがより好ましい。
【0040】
(b)成分である光重合性化合物の具体例としては下記式(10)で表される化合物が挙げられ、前記化合物は、A−9300(新中村化学工業株式会社製)として商業的に入手可能である。
【化16】
【0041】
本発明の樹脂組成物の(b)成分の含有量は、膨潤抑制性及び膜物性の観点から、(a)成分100重量部に対して1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、5〜20質量部がさらに好ましい。
(b)成分の含有量を(a)成分100重量部に対して1質量部以上とすることにより硬化膜の有機溶剤による膨潤を抑制することができ、(a)成分100重量部に対して50質量部以下とすることにより硬化膜の伸びの低下を抑えることができる。
【0042】
(c)成分:活性光線によりラジカルを発生する化合物
本発明の樹脂組成物は、(c)成分として活性光線によりラジカルを発生する化合物を含有することが好ましい。
(a)成分のポリイミド前駆体の式(1)中のR及び又はRの少なくとも一部が、炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基である場合に、樹脂組成物が(c)成分を含むことによって、本発明の樹脂組成物を感光性樹脂組成物とすることができる。
【0043】
(c)成分としては、例えば、後述するオキシムエステル化合物、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン;
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;
アルキルアントラキノン等の芳香環と縮環したキノン類;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、感度に優れ、良好なパターンを与えるため、オキシムエステル化合物が好ましい。
【0044】
オキシムエステル化合物は、下記式(9)で表される化合物、下記式(10)で表される化合物又は下記式(11)で表される化合物であることが好ましい。
【0045】
【化17】
(式(9)中、R及びRは、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基を示し、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基、フェニル基又はトリル基であることがより好ましく、メチル基、シクロペンチル基、フェニル基又はトリル基であることがさらに好ましい。
は、H、OH、COOH、O(CH)OH、O(CHOH、COO(CH)OH又はCOO(CHOHを示し、H、O(CH)OH、O(CHOH、COO(CH)OH又はCOO(CHOHであることが好ましく、H、O(CHOH又はCOO(CHOHであることがより好ましい。)
【0046】
【化18】
(式(10)中、Rは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基を示し、プロピル基であることが好ましい。
は、NO又はArCO(ここで、Arは置換もしくは無置換のアリール基を示す。)を示し、Arとしては、トリル基が好ましい。
及びRは、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、又はトリル基を示し、メチル基、フェニル基又はトリル基であることが好ましい。)
【0047】
【化19】
(式(11)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示し、エチル基であることが好ましい。
はアセタール結合を有する有機基であり、後述する式(11−1)に示す化合物が有するRに対応する置換基であることが好ましい。また、Rが置換してるベンゼン環は、さらに置換基を有してもよい。
及びR10は、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基又はトリル基を示し、メチル基、フェニル基又はトリル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。)
【0048】
上記式(9)で表される化合物としては、例えば、下記式(9−1)で表される化合物及び下記式(9−2)で表される化合物が挙げられる。これらのうち、下記式(9−1)で表される化合物はIRGACURE OXE−01(BASF株式会社製、商品名)として入手可能である。
【化20】
【0049】
上記式(10)で表される化合物としては、例えば、下記式(10−1)で表される化合物が挙げられる。この化合物は、DFI−091(ダイトーケミックス株式会社製、商品名)として入手可能である。
【化21】
【0050】
上記式(11)で表される化合物としては、例えば、下記式(11−1)で表される化合物が挙げられる。アデカオプトマーN−1919(株式会社ADEKA製、商品名)として入手可能である。
【化22】
【0051】
その他のオキシムエステル化合物としては、下記化合物を用いることが好ましい。
【化23】
【0052】
また、(c)成分として、以下の化合物を用いることもできる。
【化24】
【0053】
(c)成分を含有する場合の含有量としては、(a)成分100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが好ましく、0.05〜15質量部であることがより好ましく、0.1〜10質量部であることがさらに好ましい。配合量が0.01質量部以上であれば、露光部の架橋が充分し、より感光特性が良好となり、30質量部以下であることより硬化膜の耐熱性が向上する傾向がある。
【0054】
(d)成分:溶剤
本発明の樹脂組成物は、(d)成分として溶剤を含んでもよい。
(d)成分である溶剤としては、ポリイミド前駆体を完全に溶解する極性溶剤が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレンカーボネート、乳酸エチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
これら溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の樹脂組成物の(d)成分の含有量は、(a)成分100重量部に対して50〜500質量部が好ましく、80〜400質量部がより好ましく、100〜300質量部がさらに好ましい。
【0056】
(e)成分:(b)成分以外の光重合性化合物
本発明の樹脂組成物は、(e)成分として(b)成分以外の光重合性化合物を含んでもよい。前記光重合性化合物としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、1,3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
光重合性化合物を含有する場合の配合量は、(a)成分100質量部に対して、1〜100質量部とすることが好ましく、10〜75質量部とすることがより好ましく、30〜50質量部とすることがさらに好ましい。配合量が1質量部以上であれば、より良好な感光特性を付与することができ、100質量部以下であれば、より硬化膜の耐熱性を向上することができる。
【0058】
上記(a)〜(e)成分の他に、本発明の樹脂組成物は、良好な保存安定性を確保するために、ラジカル重合禁止剤又はラジカル重合抑制剤を含んでもよい。
具体的には、p−メトキシフェノール、ジフェニル−p−ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、クペロン、2,5−トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
樹脂組成物がラジカル重合禁止剤又はラジカル重合抑制剤を含有する場合の含有量としては、(a)成分100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましく、0.05〜5質量部であることがさらに好ましい。配合量が0.01質量部以上であればより保存安定性が良好となり、30質量部以下であれば、より硬化膜の耐熱性を向上することができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物は、硬化後のシリコン基板等への密着性をより向上させるために、有機シラン化合物をさらに含んでいてもよい。
上記有機シラン化合物としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N―フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
有機シラン化合物の含有量は、所望の効果が得られるように適宜調整すればよい。
【0061】
<硬化膜及びパターン硬化膜の製造方法>
本発明の組成物を基材に塗布し、加熱硬化して得られる硬化膜の残留応力は、硬化膜の膜厚が10μmの場合において、30MPa以下であることが好ましく、27MPa以下であることがより好ましく、25MPa以下であることがさらに好ましい。残留応力が30MPa以下であれば、硬化後の膜厚が10μmとなるように膜を形成した場合に、ウエハの反りをより充分抑制することができ、ウエハの搬送や吸着固定において生じる不具合をより抑制することができる。
【0062】
尚、残留応力は薄膜ストレス測定装置FLX−2320(KLA Tencor社製)を用いて、ウエハの反り量を測定後、応力に換算する方法により測定することができる。
【0063】
本発明のパターン硬化膜は、上述の樹脂組成物から形成されるパターン硬化膜である。本発明のパターン硬化膜は上述の樹脂組成物が(c)成分を含有するときに形成される。
【0064】
また、本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程とを含む。
【0065】
以下、まずパターン硬化膜の製造方法の各工程について説明する。
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述の樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を形成する工程を含む。樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法等が挙げられる。基材としては、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板等が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、低応力の硬化膜を形成可能であるので、12インチ以上の大口径のシリコンウエハに好適に用いることができる。
【0066】
乾燥工程では、溶剤を加熱除去することによって、粘着性の無い塗膜を形成することができる。乾燥工程は、DATAPLATE(Digital Hotplate、PMC社製)等の装置を用いることができ、乾燥温度としては90〜130℃が好ましく、乾燥時間としては100〜400秒が好ましい。
【0067】
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、前記工程で形成した塗膜に活性光線を照射後、現像してパターン樹脂膜を得る工程を含む。これにより所望のパターンが形成された樹脂膜を得ることができる。本発明の樹脂組成物はi線露光用に好適であるが、照射する活性光線としては、紫外線、遠紫外線、可視光線、電子線、X線等を用いることができる。
【0068】
現像液としては、特に制限はないが、1,1,1−トリクロロエタン等の難燃性溶媒、炭酸ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液等のアルカリ水溶液、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、酢酸エステル類等の良溶媒、これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒等が用いられる。現像後は必要に応じて貧溶媒等でリンス洗浄を行う。
【0069】
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、パターン樹脂膜を加熱処理する工程を含む。
この加熱処理は縦型拡散炉(光洋リンドバーク製)等の装置を用いることができ、加熱温度80〜300℃で行なうことが好ましく、加熱時間は5〜300分間であることが好ましい。この工程によって、樹脂組成物中のポリイミド前駆体のイミド化を進行させてポリイミド樹脂を含有するパターン硬化膜を得ることができる。
【0070】
また、本発明の硬化膜は、上述の樹脂組成物から形成される硬化膜である。つまり、本発明の硬化膜はパターン形成されていない硬化膜であってもよい。
このようにして得られた本発明の硬化膜又はパターン硬化膜は、半導体装置の表面保護層、層間絶縁層、再配線層等として用いることができる。
【0071】
図1は、本発明の一実施形態である再配線構造を有する半導体装置の概略断面図である。
本実施形態の半導体装置は、多層配線構造を有している。層間絶縁層(層間絶縁膜)1の上にはA1配線層2が形成され、その上部にはさらに絶縁層(絶縁膜)3(例えばP−SiN層)が形成され、さらに素子の表面保護層(表面保護膜)4が形成されている。配線層2のパット部5からは再配線層6が形成され、外部接続端子であるハンダ、金等で形成された導電性ボール7との接続部分である、コア8の上部まで伸びている。さらに表面保護層4の上には、カバーコート層9が形成されている。再配線層6は、バリアメタル10を介して導電性ボール7に接続されているが、この導電性ボール7を保持するためには、カラー11が設けられている。このような構造のパッケージを実装する際には、さらに応力を緩和するために、アンダーフィル12を介することもある。
【0072】
本発明の硬化膜又はパターン硬化膜は、上記実施形態のカバーコート材、再配線用コア材、半田等のボール用カラー材、アンダーフィル材等に使用することができる。
【0073】
本発明の電子部品は、本発明の硬化膜又はパターン硬化膜を用いたカバーコート、再配線用コア、半田等のボール用カラー、フリップチップ等で用いられるアンダーフィル等を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0075】
合成例1(ピロメリット酸−ヒドロキシエチルメタクリレートジエステルの合成)
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させたピロメリット酸二無水物43.624g(200mmol)とメタクリル酸2−ヒドロキシエチル54.919g(401mmol)とハイドロキノン0.220gをN−メチルピロリドン394gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加後、室温下(25℃)で24時間撹拌し、エステル化を行うことで、ピロメリット酸−ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をPMDA(HEMA)溶液とする。
【0076】
合成例2(4,4’−オキシジフタル酸ジエステルの合成)
0.5リットルのポリ瓶中に、160℃の乾燥機で24時間乾燥させた4,4’−オキシジフタル酸49.634g(160mmol)とメタクリル酸2−ヒドロキシエチル44.976g(328mmol)とハイドロキノン0.176gをN−メチルピロリドン378gに溶解し、1,8−ジアザビシクロウンデセンを触媒量添加後、室温下(25℃)で48時間撹拌し、エステル化を行い、4,4’−オキシジフタル酸−ヒドロキシエチルメタクリレートジエステル溶液を得た。この溶液をODPA(HEMA)溶液とする。
【0077】
合成例3(ポリマー1の合成)
撹拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に合成例1で得られたPMDA(HEMA)溶液195.564gと合成例2で得られたODPA(HEMA)溶液58.652gを入れ、その後、氷冷下で塩化チオニル25.9g(217.8mmol)を反応溶液温度が10度以下を保つように滴下漏斗を用いて滴下した。塩化チオニルの滴下が終了した後、氷冷下で2時間反応を行いPMDA(HEMA)とODPA(HEMA)の酸クロリドの溶液を得た。次いで、滴下漏斗を用いて、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン31.696g(99.0mmol)、ピリジン34.457g(435.6mmol)、ハイドロキノン0.076g(0.693mmol)のN−メチルピロリドン90.211g溶液を氷冷化で反応溶液の温度が10℃を超えないように注意しながら滴下した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリアミド酸エステルを得た。標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は34,000であった。これをポリマー1とする。1gのポリマー1をN−メチルピロリドン1.5gに溶解させ、ガラス基板上にスピンコートで塗布し、100℃のホットプレート上で180秒加熱し溶剤を揮発させて厚さ20μmの塗膜を形成した。この時、得られた塗膜のi線透過率は30%であった。
【0078】
ポリマー1のGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量の測定条件は以下の通りであり、ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。
【0079】
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラムGelpack GL−S300MDT−5x2本
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/L)、H3PO4(0.06mol/L)
流速:1.0mL/min、検出器:UV270nm
ポリマー1のi線透過率はU−3310 Spectrophotometer(HITACHI社製)を用いて測定した。
【0080】
実施例1−6及び比較例1−4
(a)、(b)、(c)、(e)の各成分を、表1に示す配合でN−メチルピロリドンに溶解して、樹脂組成物を調製し、下記の方法で解像度、残留応力及び膨潤率を評価した。結果を表1に示す。
尚、表1において、(b)及び(c)成分の各欄における括弧内の数字は、(a)成分100質量部に対する添加量(質量部)を示す。また、溶剤はN−メチルピロリドンを用い、使用量は、いずれも(a)成分100質量部に対して1.5倍(150質量部)で用いた。
【0081】
(感光特性(解像度)の評価)
6インチシリコンウエハ上に調製した前記樹脂組成物をスピンコート法によって塗布し、100℃のホットプレート上で3分間加熱し、溶剤を揮発させ、膜厚10μmの塗膜を得た。この塗膜をγ‐ブチロラクトン:酢酸ブチル=7:3の混合溶媒に浸漬して完全に溶解するまでの時間の2倍を現像時間として設定した。同様の方法で得られた塗膜にフォトマスクを介して、i線ステッパーFPA−3000iW(キヤノン株式会社製)を用いて、i線換算で300mJ/cm露光を行い、ウエハをγ‐ブチロラクトン:酢酸ブチル=7:3に浸漬してパドル現像した後、シクロペンタノンでリンス洗浄を行った。解像できたラインアンドスペースパターンのマスク寸法の最小値を解像度として評価した。
【0082】
(残留応力の測定)
得られた樹脂組成物を、6インチシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、100℃のホットプレート上で3分間加熱し、溶剤を揮発させ硬化後膜厚が10μmとなる塗膜を得た。これを、縦型拡散炉(光洋リンドバーク製)を用いて、窒素雰囲気下、270℃で4時間加熱硬化して、ポリイミド膜を得た。硬化後のポリイミド膜の残留応力は薄膜ストレス測定装置FLX−2320(KLATencor社製)を用いて室温において測定した。
【0083】
(膨潤率の測定)
得られた樹脂組成物を、6インチシリコンウエハ上にスピンコート法によって塗布し、100℃のホットプレート上で3分間加熱し、溶剤を揮発させ硬化後膜厚が10μmとなる塗膜を得た。これを、縦型拡散炉(光洋リンドバーク製)を用いて、窒素雰囲気下、270℃で4時間加熱硬化して、ポリイミド膜を得た。基板上に作製されたポリイミド膜を70℃のN−メチルピロリドンに浸漬し、20分加熱を行った。N−メチルピロリドンに浸漬したサンプルを蒸留水ですすいだ後、膜厚を測定した。N−メチルピロリドン浸漬前後の膜厚変化から、膨潤率(%)を算出した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1において(b)成分は以下のとおりである。
A9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、新中村化学株式会社製、商品名)
【0086】
表1において(c)成分は下記の化合物である。
C1:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル−,2−(o−ベンゾイルオキシム)](BASF株式会社製、商品名「IRGACURE OXE−01」)
C2:アデカクルーズNCI−930(株式会社ADEKA製、商品名)
【0087】
表1において(e)成分は、テトラエチレングリコールジメタクリレートである。
また、アルミキレートA(w)は、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(川研ファインケミカル社製)である。
【0088】
実施例では、フッ素を含有する剛直なポリイミドにイソシアヌル骨格を有する化合物を添加することで、30MPa以下の低い応力を保ったまま、膨潤率が10%以下となっている。一方、比較例では、組成物がイソシアヌル骨格を有する化合物を含まない場合、フッ素含有ポリイミドは20%以上の大きな膨潤率となっている。また、比較例3及び4では、アルミキレート化合物を添加したが、硬化温度が低いため、薬液耐性改善効果は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の樹脂組成物は、半導体装置等の電子部品を形成する、カバーコート材、再配線用コア材、ハンダ等のボール用カラー材、アンダーフィル材等、いわゆるパッケージ用途に使用することができる。
【0090】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献及び本願のパリ優先の基礎となる日本出願明細書の内容を全てここに援用する。
図1