【文献】
Dan Knierim,“Ultra-Wide-Bandwidth Oscilloscope Architectures and Circuits”,2014 IEEE BIPOLAR/BICMOS CIRCUITS AND TECHNOLOGY MEETING (BCTM),2014年 9月28日,pp. 136-142,DOI: 10.1109/BCTM.2014.6981300
【文献】
Shahrzad Jalali Mazlouman, Samad Sheikhaei, Shahriar Mirabbasi,“Digital Compensation Techniques for Frequency-Translating Hybrid Analog-to-Digital Converters”,IEEE TRANSACTIONS ON INSTRUMENTATION AND MEASUREMENT,2010年12月20日,Vol. 60, No. 3,pp. 758-767,DOI: 10.1109/TIM.2010.2045254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面において、開示されるシステムの類似又は対応する要素は、同じ参照番号で示される。これら図面は、必ずしも縮尺が同じではない。
【0014】
図1は、高調波混合処理(harmonic mixing:ミキシング)を用いた従来のADCシステムのブロック図である。このシステムでは、試験測定装置100には、特定の周波数スペクトラムを有する入力信号104を複数の分割信号106及び108に分割(Split:スプリット)するスプリッタ102があり、各分割信号は、入力信号104の全スペクトラムを実質的には含んでいる。スプリッタ102は、入力信号104を複数の信号に分割できる種々の回路として良い。例えば、スプリッタ104は、抵抗分割器(resistive divider)であっても良い。よって、入力信号104の実質的に全ての周波数成分が各分割信号106及び108中に存在し得る。しかし、パスの個数、使用される高調波信号、などに応じて、スプリッタ102の多様な分割信号に関する周波数応答は、異なることがある。
【0015】
分割信号106及び108は、高調波ミキサ110及び112にそれぞれ入力される。高調波ミキサ110は、分割信号106を高調波信号114と混合し、混合信号116を生成する。同様に、高調波ミキサ112は、分割信号108を高調波信号118と混合し、混合信号120を生成する。
【0016】
本願で使用されているように、高調波ミキサは、信号を複数の高調波と混合(mix)するよう構成されるデバイスである。乗算や混合処理(mixing)を、高調波混合処理と関連して説明してきたが、更に詳細には後述のように、信号を複数の高調波と乗算処理する作用を有するデバイスは、高調波ミキサとして使用できる。
【0017】
高調波信号114は、数式1+2cos(2πft)で表される信号として良く、高調波信号118は、数式1−2cos(2πft)で表される信号として良い。ここで、fは、1次高調波を表し、tは時間を表す。よって、高調波信号114は、DCと周波数fの高調波とを有する。
【0018】
高調波信号114と同様に、高調波信号118は、DCと周波数fの高調波とを有する。しかし、周波数fにおける1次高調波は、高調波信号114における同様の1次高調波に比較して、180度位相がずれている。高調波信号114及び118は、局部発振器(LO)で生成される。
【0019】
混合信号116及び120は、ローパス・フィルタ122及び124にそれぞれ送られる。ローパス・フィルタ122及び124の出力信号126及び128は、それぞれデジタイザ130及び132へそれぞれ送られる。デジタイザ130は、混合信号126をデジタル化するよう構成される。同様に、デジタイザ132は、混合信号128をデジタル化するよう構成される。デジタイザ130及び132は、種々のデジタイザとすることができる。図示しないが、デジタイザ130及び132のそれぞれが、必要に応じて、プリアンプ(前置増幅器)、フィルタ、アッテネータや他のアナログ回路を有していても良い。よって、デジタイザ130に入力される混合信号126は、デジタル化処理の前に、増幅、減衰、その他のフィルタ処理がされても良い。
【0020】
デジタイザ130及び132は、実効(effective)サンプル・レートで動作するよう構成される。いくつかの実施形態では、デジタイザ130が、単一のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を含むとしても良い。しかし、別の実施形態では、デジタイザ130が、より低いサンプル・レートで動作する複数のインタリーブされたADCを含み、より高い1つの実効サンプル・レートを実現するようにしても良い。
【0021】
高調波信号114及び118の少なくとも1つの1次高調波は、デジタイザ130及び132の少なくとも1つの実効サンプル・レートと異なっている。例えば、高調波信号114の1次高調波fを75GHzとしても良い。デジタイザ130のサンプル・レートは、100GS/sとしても良い。このように、1次高調波fは、実効サンプル・レートと異なっている。
【0022】
同期ローパス・フィルタ138及び140は、デジタイザ130からのデジタル化混合信号134と、デジタイザ132からのデジタル化混合信号136とをぞれぞれフィルタ処理するよう構成される。フィルタ処理信号142及び144は、補間部146及び148によってそれぞれ補間される。続いて、高調波ミキサ154及び156は、補間混合信号150及び152を高調波信号158及び160とそれぞれ混合するよう構成される。高調波信号114及び118はアナログ信号であり、高調波信号158及び160はデジタル信号であるが、これら高調波信号に関する拡大縮小係数(scaling factor)は、互いに同じか又は同様として良い。合算部又は合成部166は、再混合信号162及び164を1つの信号168に合成するよう構成される。信号168は、続いて、16×16多重入力多重出力(Multiple Input Multiple Output:MIMO)多相フィルタ配列170によって処理される。その波形は、帯域幅拡大(Bandwidth Enhance:BWE)フィルタ172によって処理され、再構成出力波形が出力される。
【0023】
図1のシステムは、デジタイザ130及び132の両方についてのエイリアスされた高帯域
が重なる低帯域を直接通過
させるという結果になる。デジタイザ130及び132のそれぞれは、標準的な8重インタリーブを利用し、最終的な再構成信号において、仮想的に16重インタリーブのように見える共に振る舞う。よって、16×16MIMO170は、16個の仮想パイプに作用して、位相及びマグニュチュードを補正し、最終的な出力信号における疑似信号を最小化するのに使用される。
【0024】
しかし、θ度で表されるLOのハードウェアの温度が原因の位相の何らかの変化があると、ミキサ出力信号中のエイリアスされた高帯域が全ての周波数においてθ度シフトする一方で、非エイリアスの帯域はシフトしないという結果を生じる。これは、例えば、
図2で見ることができる。LO位相がドリフトすると、高帯域の位相は、一定角度だけ全ての周波数においてドリフトする。例えば、LOの5度のドリフトは、帯域の各周波数において、5度に等しいΔφを生じさせるであろう。
【0025】
図3は、2つの8重デジタイザ130及び132のクロックにおけるドリフトから生じる一定の時間遅延Δtを示す。一定時間遅延Δtは、
図3に示すように、位相応答に影響する。
【0026】
LOの位相がシフトした場合、この位相は、複数の仮想パイプの高帯域の位相だけをシフトし、よって、MIMO170は、もはや適切には調整されていない。これは、最終出力波形に疑似信号が現れるという結果を生じる。
【0027】
図4は、本発明の実施形態による帯域重複分離アーキテクチャを有する非同期時間(Asynchronous Time Interleave)インタリーブ・システム190を示す。本発明の実施形態によれば、低帯域に影響を与えることなく、高帯域信号について、位相を補正できる。加えて、このシステムは、MIMO200、202を、信号の再構成より前の位置であって、個々のデジタイザ130、132に由来する疑似信号が既に補正されている位置へと動かしている。よって、この処理は、補間する前の、より低いサンプル・レートで、位相とマニュチュードを補正する。この配置は、信号再構成のための演算能力の要件が大幅に低くなるという結果を生じる。
【0028】
加えて、帯域分離フィルタ204、206、208及び210の出力信号は、詳細は後述するが、帯域幅拡大(BWE)フィルタの前で、既に位相及びマグニチュードが補正されている。よって、200GS/s及び4kサンプル長のBWEフィルタ216は、大幅に縮小でき、高及び低帯域間のクロスオーバー(crossover:横断、またがる)領域において信号を補正することだけに焦点を合わせることができる。即ち、BWEフィルタは、4,000サンプル長から約11サンプル長へと低減できる。更に、MIMOフィルタ200、202の長さは、これも詳細は後述するが、256から128へと低減される。この低減(reduction:縮小)は、
図4のシステムにおいて、以下で掘り下げて説明述するが、
図1のシステムの速度の約0.78で動作するという結果となる。
【0029】
図4のATIシステム190には、
図1で上述したのと同じ構成要素もあるが、異なる配置がなされている。即ち、入力信号104は、信号スプリッタ102が受けて、2つのパス106及び108へと分割される。パス106及び108それぞれにおける各信号は、ミキサ110及び112にそれぞれ供給される。ミキサ110は、局部発振器(図示せず)からの1+2cos(ωt)信号も受け、ミキサ112は、局部発振器からの1−2cos(ωt)信号を受ける。混合信号(mixed signal)116及び120のそれぞれは、ローパス・フィルタ122及び124へそれぞれ送られ、そして、デジタイザ130及び132へそれぞれ送られる。
【0030】
しかし、
図4では、各デジタイザからの出力信号は、
図1に示すように、これら信号を再度一緒に加算し、16×16MIMO170に入力するのではなくて、8×8MIMO200及び202に供給される。8×8MIMO200及び202のそれぞれは、そのパイプのマグニチュード応答も補正しても良い。
【0031】
図5は、8×8MIMOフィルタ・ブロックで補正された後の、デジタイザ130及び132からのy1及びy2出力信号スペクトラムを示す。デジタイザ出力信号は、デジタイザ130及び132について、低帯域500及び502をそれぞれ含んでいる。エイリアスされた高帯域504がデジタイザ130に関して示されており、そして、デジタイザ132に関しては、エイリアスされた高帯域506が、エイリアスされた高帯域504に対して、位相が180度ずれている。37.5GHzクロスオーバー領域が508において示され、75GHzのLO信号が510において示されている。512は、帯域幅リミットを示す。
【0032】
デジタイザ130、132の両方は、オリジナルの入力信号が重複されて全帯域を含むので、これら信号を分離する解決策が必要である。これは、更に詳しくは後述のように、本発明の実施形態を用いて行うことができる。
【0033】
8×8MIMO200、202は、正弦波発生装置(図示せず)を用いて校正される。正弦波発生装置は、一方の側にオシロスコープのATI入力端子があり、他方の側にパワー・メータがある2つの抵抗性スプリッタに接続される。必要に応じて、高調波の位置について測定値が収集される。続いて、複数フィルタからなる配列を、既知の方法を用いて算出できる。
【0034】
8×8MIMO200及び204それぞれの出力信号y1及びy2は、2組のフィルタ、h1フィルタ204、h2フィルタ206と、h3フィルタ208、h4フィルタ210に送られる。これは、以下で更に詳しく説明する。校正ブロック212は、h1、h2、h3及びh4帯域分離及び等化フィルタ204、206、208及び210を算出するのに必要なH11、H12、H21及びH22伝達関数パラメータを記憶している。これら伝達関数パラメータは、製造時に測定され、校正ブロック212に記憶される。これは、製造時に行われる。H11、H12、H21及びH22の校正及び測定は、
図8を参照して、以下で更に詳しく説明する。
【0035】
帯域分離フィルタ204、206、208及び210のためのフィルタ算出アルゴリズム・ブロック・ブロック214は、伝達関数H11、H12、H21及びH22の校正ブロック212から測定値を受け、そして、LOドリフトである測定された位相φ、2つのデジタイザ130及び132間の時間遅延Δtと、クロスオーバー帯域整形フィルタ(図示せず)とを受ける。続いて、このフィルタ算出アルゴリズム・ブロック・ブロック214は、帯域分離フィルタ204、206、208及び210に関するフィルタ係数h1、h2、h3及びh4を算出する。H11、H12、H21及びH22伝達関数パラメータを用いてh1、h2、h3及びh4を計算するため、入力信号104は、xL+xhとして表されるが、ここで、xLは低周波数帯域であり、xhは高周波数帯域である。この例では、システムのクロスオーバー周波数は、37.5GHzである。ミキサ110及び112が、高帯域を低帯域周波数レンジのエイリアスにダウン・コンバートする場合、システムは、高帯域に関して、低帯域と比較すると全面的に異なる伝達関数を有している。
【0036】
そこで、2つのATIチャンネル・パスの成分を表すために、4つの異なる伝達関数HT1、HT2、HT3及びHT4が定義される。
【0037】
HT1は、
図4におけるATIチャンネルの入力部からミキサ110までの周波数領域の伝達関数であって、0度の局部発振器位相を有する。HT1は、2つの成分、HT1L及びHT1hへと分割されるが、これらはそれぞれ低帯域及び高帯域成分である。HT2は、ATIチャンネルの入力部からミキサ112までの周波数領域の伝達関数であって、180度の局部発振器位相を有する。HT2も、2つの成分、HT2L及びHT2hへと分割されるが、これらはそれぞれ低帯域及び高帯域成分である。HT3は、ミキサ110の出力部から8×8MIMO200の出力部までの周波数領域の伝達関数である。HT4は、ミキサ112の出力部から8×8MIMO202の出力部までの周波数領域の伝達関数である。
【0038】
次に、4つの追加の伝達関数H11、H12、H21及びH22が定義され、これらは入力信号104、xL及びxhによって考えられる4つの異なる伝達関数を表す。
【0043】
ω
0は、LOの周波数を表し、ω
0−ωは、逆の周波数の高帯域のエイリアシングを表し、ミキサのIF出力信号をそのまま残している。位相補正値は、
図2及び3で説明したように、ΔtとΔφである。
【0044】
ハードウェアのデジタイザのクロックは、互いに対してドリフトすることがあるし、LOは、サンプル・クロックに対してドリフトすることがある。2つのミキサ110及び112は、同じ集積チップ上にあり、固く1つに結合しているので、そのクロックは一緒にドリフトすると考えられる。よって、HT3(ω)で表されるデジタイザのクロックに対して、エイリアスされた高帯域応答、HT1h(ω0−ω)及びHT2h(ω0−ω)の位相を調整するのに、Δφを利用してもよい。Δtの値は、HT4(ω)応答とHT3(ω)応答の間の一定の時間差を表す。よって、2つの位相エラーの値、ΔφとΔtは、動作時にオシロスコープによって測定するか、又は、これら値を求めるために、動作時に温度又は湿度の関数として特性を求めなければならない。
【0045】
先の伝達関数(1)から(4)は、HT3及びHT4のパスにおいて、2つの重複する伝達関数があるという事実を考慮に入れている。即ち、エイリアスされて逆になった高周波数帯域は、低帯域と同じ周波数レンジに位置している。
【0046】
入力信号の低帯域及び高帯域 スペクトラムは、次のように定義できる。
【0049】
以下の数式(7)のため、オシロスコープの処理では、基準位相が既知となるように、デジタイザのパイプのクロックのタイミングとLOを校正する。デジタイザ130及び132の12.5GHzサンプル・クロックのいずれかに6×周波数乗算器を適用することによってLO信号を得た場合、LOとデジタイザのサンプル・クロックが同期する。よって、ラインタイム動作中に、Δφの位相変化は、測定が可能であり、遅延補正係数として利用できる。数式(7)において、t
dは、LOが基準位置からドリフトした時間の量であり、T
LOは、LOの周期である。
【0051】
今や、高帯域パス補正を実行するための複素指数関数(exponential)項を加えることができる。これは、主に温度の変化が原因で生じるハードウェアのLOのドリフトを補正する。
【0057】
XLと(XH)
〜信号に関して解くための解法は、数式(12)で示すように書くことができる。
【0059】
数式(12)における行列の逆行列は、次のように算出されて記述される。
【0061】
続いて、数式(13)における行列の解は、周波数領域で示され、行列で4つの異なるフィルタとして表すことができ、これらは、2つのデジタイザの出力134及び136において、2つの8×8MIMO200及び202からのy1及びy2出力信号に適用される必要がある。
【0062】
これら4つフィルタ204、206、208及び210は、時間領域ではh1、h2、h3及びh4として表され、次のように算出される。
【0067】
追加のBWフィルタ(図示せず)が、数式(14)、(15)、(16)及び(17)中の伝達関数に適用される。このBWフィルタは、クロスオーバー整形(Shaping)フィルタとして利用される。加えて、そのストップ帯域は、クロスオーバー領域より上の過剰な利得及びイメージを抑制する。
【0068】
よって、出力信号xoutは、リカバリされた低帯域及びリカバリされた高帯域の合算(Sum:和)として表される。φ
0の値は、ユーザの要求により、オシロスコープ内の信号パス補正(signal path compensation :SPC)測定で求めたハードウェア・ミキサのLOの校正値である。更に詳細に説明するように、モード・ブロック230は、ランタイム(実行)モードか又はSPCモードかのどちらでオシロスコープ200を動作させるかを選択する。ω
0の値は、LOの周波数である。この例では、LO周波数は、75GHzである。
【0069】
図6A〜Bは、上述のハードウェアに関するシミュレーションによる4つの非理想的な伝達関数の例を示し、HT1、HT2、HT3及びHT4として表されている。
図7は、更に詳しくは後述のように、デジタル化信号y1及びy2にフィルタh1、h2、h3及びh4を適用した後であって、リカバリされ、分離された高帯域及び低帯域を表す。分離された帯域を得る処理は、2×の補間処理も含む。これは、更に、フィルタh3及びh4から出力を合算してリカバリされたエイリアスされた高帯域に適用されるミキサ224も含む。これによって、システムのマグニチュードは、理想的なフラットな応答へと補正される。システムの非理想的な応答も補正されて、最終的なシステム応答が線形になるとともに、LOのドライブが原因の位相の狂いも補正される。加えて、デジタイザ130及び132間の時間遅延Δtも補正される。
【0070】
図8に示す設定を用いて測定されたH11、H12、H21及びH22伝達パラメータは、続いて、校正ブロック212に記憶される。この設定には、光スプリッタ802に接続された光インパルス発生装置800がある。光スプリッタ802の2つの出力信号804及び806は、それぞれ光電(O/E)コンバータ808及び810へ送られる。O/Eコンバータ808の出力信号は、オシロスコープ200へ直接送られる一方で、O/Eコンバータ810の出力信号は、オシロスコープ190へ送られる前に、37.5GHzローパス・フィルタ812を通して送られる。
【0071】
以下のようにする。
YL1は、37.5GHzフィルタ812を用いたオシロスコープによるデジタイザ130由来の取り込んだものの応答を表す。
YL2は、37.5GHzフィルタ812を用いたオシロスコープによるデジタイザ132由来の取り込んだものの応答を表す。
YFは、全帯域幅インパルスを用いたデジタイザ130由来の取り込んだものを表す。
YF2は、全帯域幅インパルスを用いたデジタイザ132由来の取り込んだものを表す。
XL
impは、帯域幅制限インパルスを表す。
XF
impは、全帯域幅入力インパルスを表す。
XFh
impは、オシロスコープ200のATI入力端子への高帯域インパルスを表す。
XFL
impは、オシロスコープ200のATI入力端子への低帯域インパルスを表す。
HL
impは、光インパルス発生装置800のローパス・インパルスの周波数応答を表す。
HF
impは、光インパルス発生装置800の全帯域の全周波数応答を表す。
【0072】
最初に、帯域幅制限インパルスXL
impが、入力に加えられ、YL1及びYL2が取り込まれる。これは、制限された帯域幅制限インパルスであるから、高帯域信号はゼロである。そのため、上記数式(10)は、次のように書くことができる。
【0077】
第2のステップは、全帯域幅 インパルスXF
impを入力に加えて、YF及びYF2を得ることである。数式(10)中の要素に関し、校正のこの部分について位相補正がゼロに設定され、位相基準のSPC値が校正時に使用されるであろうと仮定される。こうなると、数式(10)は、下記になる。
【0079】
すると、H11及びH21が測定され、そして、YF及びYF2が取り込まれる。XFL
imp及びXFh
〜impが、ローパス・フィルタをXF
impに加えるとともに、ハイパス・フィルタをXF
impに加えることによって求められ、それによって、
【0081】
2つ未知なものが、H12及びH22である。これらは、次の数式を用いて解くことができる。
【0084】
数式(23)は、H12について次のように解くことができる。
【0086】
数式(24)は、H22について次のように解くことができる。
【0088】
よって、H11は、数式(19)によって定義され、H21は数式(20)で定義される一方、H12は数式(25)によって定義され、H22は数式(26)によって定義される。最初、YL1、YL2及びXL
impが取り込まれて(acquire)、数式(19)及び(20)に入力されてH11及びH21を得る。続いて、測定されて算出された全ての値は、数式(25)及び(26)に、H12及びH22を得るためにそれぞれ代入できる。上述のように、これら値は、続いて、帯域分離フィルタ204、206、208及び210に関するフィルタ係数を算出するために、
図4のフィルタ算出アルゴリズム・ブロック214に送られる。
【0089】
しかし、本願発明は、H11、H12、H21及びH22に関して上述した校正処理手順に限定されない。校正の数式は、光インパルス発生装置800とオシロスコープ200の入力部間の反射損失(return loss)を考慮して導出してもよい。これは、ベクトル・ネットワーク分析測定を実行して反射係数に関するSパラメータを取得することと、そうした測定を含むように上述の数式を拡張することを含む。
【0090】
帯域分離及び位相マグニチュード補正フィルタ204、206、208及び210に戻ると、これら4つのフィルタは、
図4に示すように、2つのデジタル化出力波形y1及びy2を処理する。フィルタ204、206、208及び210は、200GS/sの最終波形再構成の前に、100GS/sのベース・サンプル・レートで、エイリアスされた高帯域から低帯域を分離する。しかし、リカバリされた高帯域は、未だにエイリアスされている。低及び高帯域の両方は、ミキサ110及び112と、デジタイザ130及び132のそれぞれに関するパスのミスマッチが原因の位相及びマグニチュード・エラーに関して補正されている。即ち、帯域分離は、信号がデジタル化された後に実行される。
【0091】
この時点で、4つのフィルタ204、206、208、210が適用され、高帯域をアップ・コンバートでき、xL及びxhの値をリカバリできる。
【0092】
出力信号y1は、フィルタh1及びh3によってフィルタ処理される一方で、出力信号y2は、フィルタh2及びh4によってフィルタ処理される。フィルタ204及び206からの出力信号は、次に、合算部218によって1つに合算されて低帯域xLが得られる。フィルタ208及び210からの出力信号は、次に、合算部220によって1つに合算されてエイリアスされた高帯域(xh)
〜が得られる。フィルタ204、206、208及び210は、2つ別々のサンプル・パイプについて作用する代わりに、これらは重複した帯域を有する2つの信号に作用し、これら2つの帯域を2つの異なる信号出力に分離することを除けば、2×2MIMOと類似する。よって、フィルタ204、206、208及び210は、異なる機能を有するものの、MIMOと類似する構造を有する。
【0093】
変数(xh)
〜は、入力信号のエイリアスされた高帯域を表す。(xh)
〜からxhを得るには、別途、補間及び混合処理ステップが必要である。
【0096】
エイリアスされた高帯域(xh)
〜及び低帯域xLは、上述のように、そのサンプル・レートを100GS/sから200GS/sへと増加させるために、2×補間部222及び223によって補間される。補間部222及び223は、エイリアスされた高帯域を、そのオリジナルの位置へ戻すように周波数シフトすることを可能にする。
【0097】
変数xl及び(xh)
〜は、サンプル・レートを増加させるために2×の係数で補間され、高及び低帯域をエイリアスなしに一緒に加算するのを可能にする。
【0100】
エイリアスされた高帯域(xh)
〜が補間部223によって補間された後、高帯域は、乗算部224によってcos(ω+φ)で掛け算される。ここで、ωはLO周波数であり、φは、高帯域xhを求めるためにωをハードウェア・ミキサ110及び112と一致させるのに必要となる位相である。
【0101】
補間された高帯域(xH)
〜及び補間された低帯域xLは、次に、合算部226で一緒に合算される。この時点で、帯域分離フィルタ204、206、208及び210は、位相マグニチュード補正出力信号を供給している。しかし、クロスオーバー領域は、未だエラーがあることがある。
【0102】
最終的な信号再構成は、次のように演算される。
【0104】
ここでh
lpは、望ましくないイメージを除去する70GHzのローパス・フィルタ232である。
【0105】
クロスオーバー領域のエラーを補正するため、BWE拡大フィルタ216が使用される。再構成波形の補正すべき領域は、33から40GHzまでのクロスオーバー領域中に丁度あるので、BWEは、長さにして11サンプルほどの小さいものでよい。上述のように、
図1に示す従来のシステムは、再構成波形の全周波数レンジを補正する必要があり、BWEフィルタ172は、200GS/sで4,000サンプルという長いものである必要があった。最終再構成出力波形236は、BWEフィルタ216から出力され、これは、次のように算出される。
【0107】
図4に示すように、システムには、LO位相測定ブロック228もある。LO位相測定ブロックからの出力信号は、モード選択ブロック230に入力され、これは、オシロスコープをSPCモードで実行するか、又は、ランタイム・モードで実行するかを選択する。ランタイム・モード中に、フィルタ204、206、208及び210が計算される。SPCは、ユーザが要求したときにオシロスコープが実行する動作である。オシロスコープは、通常のランタイム・アクイジション(信号取り込み)を停止し、オシロスコープの信号パスを校正するアルゴリズムを内部で実行する。即ち、新しい位相測定値φが、SPC動作中に算出できる。
【0108】
LO位相測定ブロック228は、デジタイザのサンプル・クロックに対するLOの位相を求める。これは、オシロスコープ内の温度センサを読み、その温度に基づいて位相を割り当てることによって実行してもよい。それは、クロスオーバー領域で取り込んだものに信号を導入し、この導入に由来する位相変化を求める追加のハードウェアによって実行してもよい。SPC動作は、位相を既知のポイントに設定する能力を有する。従って、SPCで決められ、メモリ234に記憶された基準位相を利用するか、又は、ランタイム中に測定された位相値の変化を利用するかのどちらかとしてもよい。
【0109】
上述のフィルタ、ミキサ、高調波信号、合成部/合算部や、他の関連する要素は、デジタル的に実現できる。例えば、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、マイクロプロセッサ、プログラマブル・ロジック・デバイス、汎用プロセッサ、又は他の処理システムは、必要に応じた適切な周辺デバイスとともに、デジタル化信号を処理する機能を実現するのに利用できる。機能を実現するのに、完全に集積したものから完全にディスクリートなコンポーネントまでの間の任意のバリエーションを利用できる。
【0110】
デジタル化信号を実質的に直ぐに処理できる複数の実施形態を説明してきたが、デジタル化後のそうした処理は、必要に応じて遅らせることもできる。例えば、デジタイザ130及び132からのデジタル化データは、後に続く処理のために、メモリに記憶することもできる。
【0111】
いくつかの実施形態では、2つのパスが実現される。しかし、任意の個数のパスを用いてもよい。もし2より多いパスが実現されるなら、スプリッタ102は、入ってくる信号104を必要個数のパスに分割することになろう。よって、必要な帯域分離フィルタ用に、上述の数式を用いて、式が導かれる。
【0112】
更には、デジタル・フィルタ処理、混合処理(mixing)及び合成処理(combining)は、別々の処理として説明してきたが、こうした複数の処理を組み合わせたり、他の機能に組み込むなどしてもよい。加えて、先の説明は理想的なコンポーネントを仮定していたので、追加の補正では、非理想的なコンポーネントを補正するのに適したような処理を導入してもよい。更には、デジタル化信号を処理する場合、周波数レンジの変更、混合処理などは、そうした変化を表すのに、もっと高いサンプル・レートの結果となるようにできる。デジタル化信号は、必要に応じて、アップ・サンプルしたり、補間したり、などができる。
【0113】
もう1つの実施形態としては、コンピュータ読み出し可能な媒体上に記録されたコンピュータ読み出し可能なコードがあり、これは、実行されたときに、コンピュータに、任意の上述の処理を実施させる。本願で用いるように、コンピュータは、コードを実行できる任意のデバイスである。マイクロプロセッサ、プログラマブル・ロジック・デバイス、マルチプロセッサ・システム、デジタル・シグナル・プロセッサ、などは、全てそうしたコンピュータの例である。いくつかの実施形態では、コンピュータ読み出し可能な媒体は、有体のコンピュータ読み出し可能な媒体としてもよく、これは、コンピュータ読み出し可能なコードを非一時的な手法で記録するよう構成される。
【0114】
その好ましい実施形態で、本発明の原理を説明し図示してきたが、本発明は、そうした原理から離れることなく、構成や細部を変更できることは明らかである。例えば、本発明の概念は、次のように記述してもよい。
【0115】
本発明の概念1は、試験測定装置であって、
入力信号の全帯域幅をそれぞれ実質的に含む
第1及び第2分割信号に上記入力信号を分割するスプリッタと、
第1高調波信号と、該第1高調波信号と180度位相が異なる第2高調波信号とを生成する局部発振器と、
それぞれ
上記第1及び第2分割信号を
上記第1及び第2高調波信号と混合
して第1及び第2混合信号を生成する
第1及び第2高調波ミキサと、
それぞれ
上記第1及び第2混合信号をデジタル化
して第1及び第2デジタル化混合信号を生成するよう構成される
第1及び第2デジタイザと、
それぞれ
上記第1及び第2デジタル化混合信号をフィルタ処理するよう構成される
第1及び第2多重入力多重出力(MIMO)多相フィルタ配列と、
それぞれ上記
第1及び第2多重入力多重出力多相フィルタ配列
から上記第1及び第2デジタル化混合信号を受けて、
上記第1及び第2デジタイザ間の時間差及び
上記局部発
振器の位相ドリフトに基
づいて、上記入力信号の低帯域と上記入力信号の高帯域に分離して出力するよう構成される
低帯域及び高帯域分離フィルタ
部と、
上記入力信号の上記低帯域と上記入力信号の上記高帯域とを合成して再構成入力信号を形成するよう構成される合成部と
を具えている。
【0116】
本発明の概念2は、上記概念1の試験測定装置であって、このとき、上記MIMO多相フィルタのそれぞれは、8×8MIMO多相フィルタ配列である。
【0117】
本発明の概念3は、上記概念1の試験測定装置であって、上記再構成入力信号をフィルタ処理するよう構成される帯域幅拡大フィルタを更に具えている。
【0118】
本発明の概念4は、上記概念1の試験測定装置であって、
上記低帯域分離フィルタ
部が、
上記第1及び第2多重入力多重出力多相フィルタ配列から上記第1及び第2デジタル化混合信号をそれぞれ受ける第1及び第2低帯域分離フィルタと、
上記第1及び第2低帯域分離フィルタそれぞれの出力信号を合成して上記入力信号の上記低帯域を形成し、上記入力信号の上記低帯域を出力するよう構成される第1合算部と
を有し、
上記高帯域分離フィルタ
部が、
上記第1及び第2多重入力多重出力多相フィルタ配列から上記第1及び第2デジタル化混合信号をそれぞれ受ける第1及び第2高帯域分離フィルタと、
上記第1及び第2高帯域分離フィルタそれぞれの出力信号を合成して上記入力信号の上記高帯域を形成し、上記入力信号の上記高帯域を出力するよう構成される第2合算部とを
有している。
【0119】
本発明の概念5は、上記概念4の試験測定装置であって、このとき、
上記第1及び第2高帯域分離フィルタから出力される上記高帯域は、エイリアスされた高帯域であって、上記
高帯域分離フィルタ部が、上記エイリアスされた高帯域を非エイリアスの高帯域に変換するための信号を上記エイリアスされた高帯域に乗算するよう構成される高帯域乗算部を更に
有し、上記合成部が上記低帯域と上記非エイリアスの高帯域を合成して上記再構成入力信号を形成する。
【0120】
本発明の概念6は、上記概念5の試験測定装置であって、上記エイリアスされた高帯域を上記非エイリアスの高帯域に変換するための上記信号を上記エイリアスされた高帯域に乗算する前に、上記低帯域と上記エイリアスされた高帯域のそれぞれを補間するよう構成される補間部を更に具えている。
【0121】
本発明の概念7は、上記概念1の試験測定装置であって、
上記低帯域及び高帯域分離フィルタ
部それぞれに関するフィルタ係数を算出するよう構成されるフィルタ算出ユニットを更に具えている。
【0122】
本発明の概念8は、方法であって、
入力信号を、それぞれ上記入力信号の全帯域幅を実質的に含む
第1及び第2分割信号に分割する処理と、
第1高調波信号と、該第1高調波信号と180度位相が異なる第2高調波信号とを局部発振器によって生成する処理と、
上記
第1及び第2分割信号
を上記第1及び第2高調波信号と
それぞれ混合して
第1及び第2混合信号を生成する混合処理と、
上記第1及び第2混合信号
を第1及び第2デジタイザによってそれぞ
れデジタル化
して第1及び第2デジタル化混合信号を生成する処理と、
上記第1及び第2デジタル化混合信号
をそれぞれ上記第1及び第2多重入力多重出力(MIMO)多相フィルタ配列によってフィルタ処理する処理と、
上記第1及び第2デジタイザ間の時間差及び
上記局部発
振器の位相ドリフトに基
づいて、上記
第1及び第2MIMO多相フィルタ配列それぞれからの上記
第1及び第2デジタル化混合信号を、
低帯域及び高帯域分離フィルタ
部によって
それぞれフィルタ処理する処理と、
上記低帯域及び高帯域分離フィルタ
部から、上記入力信号の低帯域と上記入力信号の高帯域を
それぞれ出力する処理と、
上記入力信号の上記低帯域と上記入力信号の上記高帯域とを合成して再構成入力信号を形成する処理と
を具えている。
【0123】
本発明の概念9は、上記概念8の方法であって、このとき、上記MIMO多相フィルタのそれぞれが、8×8MIMO多相フィルタ配列である。
【0124】
本発明の概念10は、上記概念8の方法であって、帯域幅拡大フィルタによって上記再構成入力信号をフィルタ処理する処理を更に具えている。
【0125】
本発明の概念11は、上記概念8の方法であって、
上記低帯域分離フィルタ部の第1及び第2低帯域分離フィルタによって、上記第1及び第2多重入力多重出力多相フィルタ配列からの上記第1及び第2デジタル化混合信号をそれぞれ受ける処理と、
上記入力信号の上記低帯域を出力するよう構成される
上記第1及び第2低帯域分離フィル
タそれぞれの出力信号を合成して上記入力信号の再構成された低帯域を形成する処理と、
上記高帯域分離フィルタ部の第1及び第2高帯域分離フィルタによって、上記第1及び第2多重入力多重出力多相フィルタ配列からの上記第1及び第2デジタル化混合信号をそれぞれ受ける処理と、
上記入力信号の上記高帯域を出力するよう構成される
上記第1及び第2高帯域分離フィル
タそれぞれの出力信号を合成して上記入力信号の再構成された高帯域を形成する処理と
を更に具えている。
【0126】
本発明の概念12は、上記概念11の方法であって、このとき、
上記第1及び第2高帯域分離フィルタそれぞれの出力信号を合成
して出力された上記再構成された高帯域は、エイリアスされた高帯域であって、上記方法は、エイリアスされ、再構成された高帯域に、上記エイリアスされ、再構成された高帯域を非エイリアスの再構成された高帯域に変換するための信号を乗算する処理を更に具え、このとき、上記入力信号の上記低帯域と上記入力信号の上記高帯域とを合成して再構成入力信号を形成する処理が、
上記再構成された低帯域と
上記非エイリアスの再構成された高帯域とを合成して上記再構成入力信号を形成する処理を含んでいる。
【0127】
本発明の概念13は、上記概念12の方法であって、エイリアスされ、再構成された高帯域に、上記エイリアスされ、再構成された高帯域を非エイリアスの再構成された高帯域に変換するための信号を乗算する処理の前に、再構成された低帯域及びエイリアスされ、再構成された高帯域のそれぞれを補間する処理を更に具えている。
【0128】
本発明の概念14は、上記概念8の方法であって、
上記低帯域及び高帯域分離フィルタ
部それぞれのフィルタ係数を算出する処理を更に具えている。