特許第6889634号(P6889634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6889634超電導ケーブル及び液化天然ガス輸送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6889634
(24)【登録日】2021年5月25日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】超電導ケーブル及び液化天然ガス輸送システム
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/14 20060101AFI20210607BHJP
   H01L 39/04 20060101ALI20210607BHJP
   F16L 59/147 20060101ALN20210607BHJP
   H02G 15/34 20060101ALN20210607BHJP
【FI】
   H01B12/14ZAA
   H01L39/04
   !F16L59/147
   !H02G15/34
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-154901(P2017-154901)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-33056(P2019-33056A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】仲村 直子
(72)【発明者】
【氏名】山本 惠一
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−066382(JP,A)
【文献】 特開2015−216735(JP,A)
【文献】 特開2014−146585(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0051582(US,A1)
【文献】 特開2005−122991(JP,A)
【文献】 特開平03−263710(JP,A)
【文献】 特開2017−084524(JP,A)
【文献】 特開2006−140123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 12/14
H01L 39/04
F16L 59/147
H02G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、
前記外管の内部に設けられる内管と、
前記内管の内部に設けられ、フォーマと該フォーマの外周に設けられる超電導材とを含むコア部と、
前記外管の外周に設けられる第1断熱層と、
を備え、
前記内管の内部に冷媒が充填され、前記外管と前記内管との間に形成される空間に液化天然ガスが充填されることを特徴とする超電導ケーブル。
【請求項2】
前記コア部は、前記超電導材の外周に設けられる電気絶縁層を含むことを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
【請求項3】
前記内管の外周に設けられる第2断熱層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブル。
【請求項4】
前記内管は1個の内管で構成されると共に、前記外管の内部で前記外管と同心状に配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の超電導ケーブル。
【請求項5】
前記コア部は、前記超電導材の外周に設けられる電気絶縁層を含み、
前記フォーマの外周に複数の前記超電導材と複数の前記電気絶縁層とが前記フォーマの径方向に沿って交互に設けられることを特徴とする請求項4に記載の超電導ケーブル。
【請求項6】
前記内管の内部に複数のコア部が設けられると共に、
前記複数のコア部は前記内管の軸方向に沿って配置されることを特徴とする請求項4に記載の超電導ケーブル。
【請求項7】
複数の前記内管が前記外管の内部に設けられると共に、前記複数の内管は前記外管の軸方向に沿って配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の超電導ケーブル。
【請求項8】
前記複数の内管の各々の内部に前記コア部が設けられることを特徴とする請求項7に記載の超電導ケーブル。
【請求項9】
前記冷媒が液体窒素であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の超電導ケーブル。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の超電導ケーブルと、
前記超電導ケーブルの一端側に設けられた液化天然ガス供給源と、
前記液化天然ガス供給源と前記超電導ケーブルの前記外管と前記内管との間に形成される空間との間に設けられる第1配管と、
前記超電導ケーブルの他端側に設けられた需要先と、
前記空間と前記需要先との間に設けられる第2配管と、
を備え、
前記液化天然ガス供給源から液化天然ガスを前記超電導ケーブルを介して前記需要先に輸送するように構成されることを特徴とする液化天然ガス輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超電導ケーブル及び液化天然ガス輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
極低温で超電導となる超電導線材を導体として用いた超電導ケーブルは、大電流を低損失で送電可能なケーブルとして実用化が進められている。超電導材の超電導性を保つために、超電導材を極低温に保つ必要がある。
特許文献1及び2には、超電導材の周囲に液体窒素などの冷媒を流して超電導材を冷却し、かつ超電導材の周囲に断熱層を充填した真空空間(真空層)を形成することで、外部からの侵入熱を低減するようにした超電導ケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−066382号公報
【特許文献2】特開2015−153590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超電導ケーブルの熱負荷は、超電導材の交流損失と外部からの熱侵入との和となる。交流損失は通電時にのみ発生するが、熱侵入は常に発生しており、真空層の真空度を上げるほど熱侵入を低減できる。予め真空ポンプで超電導ケーブルの真空層を真空引きしておき、超電導ケーブルの設置時には真空ポンプは切り離される。
しかし、超電導ケーブルを長時間使用すると、超電導ケーブルの断熱配管からアウトガスが放出されて真空度は低下してしまう。真空度が低下すると熱侵入量が大きく増加するため、定期的に真空引きするなどの煩雑なメンテナンスが必要となるという問題がある。
【0005】
一実施形態に係る目的は、上記課題に鑑み、超電導ケーブルへの熱侵入を抑制するために、真空引きなどの煩雑なメンテナンスを不要とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)一実施形態に係る超電導ケーブルは、
外管と、
前記外管の内部に設けられる内管と、
前記内管の内部に設けられ、フォーマと該フォーマの外周に設けられる超電導材とを含むコア部と、
前記外管の外周に設けられる第1断熱層と、
を備え、
前記内管の内部に冷媒が充填され、前記外管と前記内管との間に形成される空間に液化天然ガスが充填される。
【0007】
上記(1)の構成によれば、内管の内部に充填された冷媒によってコア部を冷却し、かつ外管と内管との間に形成される空間に極低温の液化天然ガスが充填されることで、コア部への熱侵入量を大幅に低減できる。従って、真空層の形成による断熱構造が不要となり、定期的な真空引きなどのメンテナンスが不要になる。
また、エネルギ源として広く用いられる既存の液化天然ガスを用いるので、天然ガスを冷却するための冷凍機は不要であり、また、外管の外周に設けられる第1断熱層は、液化天然ガスの保冷に用いられる断熱材をそのまま用いればよいため低コスト化できる。
また、熱侵入量を低減することで、低減された熱侵入量に相当する分だけ超電導ケーブルに循環される冷媒を冷却するための冷凍機能力を低減でき、超電導ケーブルに循環する冷媒量も低減できる。
さらに、冷媒循環量を低減できれば、冷媒循環ポンプなどを含む冷却システムを低コスト化できる。
【0008】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記コア部は、前記超電導材の外周に設けられる電気絶縁層を含む。
上記(2)の構成によれば、超電導材の外周に電気絶縁層を設けることで、超電導材からの部分放電の発生を抑制でき、これによって、エネルギ消費効率の低下を抑制できる。
【0009】
(3)一実施形態では、前記(1)又は(2)の構成において、
前記内管の外周に設けられる第2断熱層を備える。
上記(3)の構成によれば、内管の外周に第2断熱層を設けることで、内管内側への熱侵入をさらに抑制できる。
【0010】
(4)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
前記内管は1個の内管で構成されると共に、前記内管は前記外管の内部で前記外管と同心状に配置される。
上記(4)の構成によれば、内管を1個とし、かつ内管を外管の内部で外管と同心状に配置することで、内管の構成を簡素化できる。
【0011】
(5)一実施形態では、前記(4)の構成において、
前記コア部は、前記超電導材の外周に設けられる電気絶縁層を含み、
前記フォーマの外周に複数の前記超電導材と複数の前記電気絶縁層とが前記フォーマの径方向に沿って交互に設けられる。
上記(5)の構成によれば、比較的小容量の直流送電(双極送電)や3相交流送電に適用でき、かつコア部をコンパクト化できる。これによって、超電導ケーブルの直径を縮小できる。
【0012】
(6)一実施形態では、前記(4)の構成において、
前記内管の内部に複数のコア部が設けられると共に、
前記複数のコア部は前記内管の軸方向に沿って配置される。
上記(6)の構成によれば、1個の内管の中に複数のコア部を設けることで、超電導ケーブルの構成を簡素化しつつ、直流送電(双極送電)や3相交流送電に適用可能な超電導ケーブルとすることができる。
【0013】
(7)一実施形態では、前記(1)〜(3)の何れかの構成において、
複数の前記内管が前記外管の内部に設けられると共に、前記複数の内管は前記外管の軸方向に沿って配置される。
上記(7)の構成によれば、外管の内部に複数の内管を備えることで、大容量の直流送電(双極送電)や3相交流送電に適用可能な超電導ケーブルとすることができる。
【0014】
(8)一実施形態では、前記(7)の構成において、
前記複数の内管の各々の内部に前記コア部が設けられる。
上記(8)の構成によれば、複数の内管の内部に夫々コア部を設けることで、大容量の直流送電(双極送電)や3相交流送電可能な超電導ケーブルとすることができる。
【0015】
(9)一実施形態では、前記(1)〜(8)の何れかの構成において、
前記冷媒が液体窒素である。
液化天然ガスの温度は常圧下で−160℃程度であり、液体窒素の温度は常圧下で−196℃である。従って、液体窒素の外側に液化天然ガスを充填することで、液体窒素より外気との温度差を縮めることができ、これによって、外部からの侵入熱を低減できる。さらに、液化天然ガスが気化することで、液体窒素が超電導材から受ける熱を液化天然ガスが吸収でき、これによって、液体窒素の温度上昇を抑制できる。
【0016】
(10)一実施形態に係る液化天然ガス輸送システムは、
前記(1)〜(9)の何れかの構成を有する超電導ケーブルと、
前記超電導ケーブルの一端側に設けられた液化天然ガス供給源と、
前記液化天然ガス供給源と前記超電導ケーブルの前記外管と前記内管との間に形成される空間との間に設けられる第1配管と、
前記超電導ケーブルの他端側に設けられた需要先と、
前記空間と前記需要先との間に設けられる第2配管と、
を備え、
前記液化天然ガス供給源から液化天然ガスを前記超電導ケーブルを介して前記需要先に輸送するように構成される。
【0017】
上記(10)の構成によれば、コア部を冷却する冷媒の外側に極低温の液化天然ガスが充填されることで、コア部への熱侵入量を大幅に低減できる。従って、真空層による断熱構造が不要となり、定期的な真空引きなどのメンテナンスが不要になる。
また、外部の侵入熱を吸収して気化した液化天然ガスは、輸送終端側の需要先に送り、需要先でそのままエネルギ源として利用できるので、エネルギ消費効率を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
一実施形態によれば、超電導ケーブルへの熱侵入を抑制するために、真空引きなどの煩雑なメンテナンスが不要になる。また、既存の冷熱源である液化天然ガスを利用することで、エネルギ消費効率を向上できると共に、液化天然ガスの輸送も同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る超電導ケーブルを含む液化天然ガス輸送システムを示す一部断面を含む系統図である。
図2】一実施形態に係る超電導ケーブルの横断面図である。
図3】一実施形態に係る超電導ケーブルの横断面図である。
図4】一実施形態に係る超電導ケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0021】
図1図4は、幾つかの実施形態に係る超電導ケーブル10(10A、10B、10C、10D)を示す。
図1図4において、超電導ケーブル10は外管12と外管12の内部に設けられる内管14と、を備える2重管構造を有する。内管14の内部には、フォーマ(巻芯)16とフォーマ16の外周に設けられる超電導材18とを含むコア部20(20a、20b、20c)が設けられる。外管12の外周に断熱層22(第1断熱層)が設けられ、内管14の内部に冷媒rが充填され、外管12と内管14との間に形成される空間に液化天然ガスLNGが充填される。
【0022】
上記構成によれば、内管14の内部に冷媒rが充填され、外管12と内管14との間に形成される空間に極低温の液化天然ガスLNGが充填されることで、コア部20への熱侵入量を大幅に低減できる。従って、真空層の形成による断熱構造が不要となり、定期的な真空引きなどのメンテナンスが不要になる。
また、エネルギ源として広く用いられる既存の液化天然ガスを用いるので、天然ガスを冷却するための冷凍機は不要であり、また、外管12の外周に設けられる断熱層22は、液化天然ガスの保冷に用いられる断熱材(例えば、発泡硬質ウレタンフォーム、グラスウール等)をそのまま用いればよいため低コスト化できる。
【0023】
また、熱侵入量を低減することで、低減された熱侵入量に相当する分だけ超電導ケーブル10に循環される冷媒rを冷却するための冷凍機能力を低減でき、超電導ケーブル10に循環する冷媒量も低減できる。
さらに、冷媒循環量を低減できれば、冷媒循環ポンプなどを含む冷媒rの冷却システムを低コスト化できる。
【0024】
一実施形態では、図1図4に示すように、コア部20は超電導材18の外周に設けられる電気絶縁層24を含む。
この実施形態によれば、超電導材18の外周に電気絶縁層24を設けることで、超電導材18からの部分放電の発生を抑制でき、これによって、超電導ケーブル10のエネルギ消費効率の低下を抑制できる。
なお、通常、フォーマ16と超電導材18との間にも電気絶縁層が設けられる。この電気絶縁層は、図1図4において、その図示は省略されている。
【0025】
一実施形態では、図1図4に示すように、内管14(14a、14b、14c)の外周に断熱層26(26a、26b、26c)(第2断熱層)を備える。断熱層26として、例えばポリエチレンフィルムの積層体などを用いることができる。
この実施形態によれば、内管14(14a〜14c)の外周に断熱層26(26a〜26c)を設けることで、内管内側への熱侵入をさらに抑制できる。
【0026】
一実施形態では、図1に示すように、フォーマ16は中実体を用いることができる。あるいは、2点鎖線で示すように内部に中空部28を形成したパイプ状のフォーマとしてもよい。パイプ状のフォーマは中空部28を冷媒の流路としても利用できる。
一実施形態では、フォーマ16を単に超電導材18の支持体として用いるのであれば、樹脂などの非導電性材料で構成してもよいし、フォーマ16に異常時の電流の分流路としての機能も持たせるのであれば、銅やアルミニウムなどの常電導性の金属材料で構成してもよい。
また、中実体のフォーマ16として、エナメルなどの絶縁被膜を備える複数の金属線を撚り合わせたものも用いることができる。
【0027】
一実施形態では、図1及び図2に示す超電導ケーブル10(10A、10B)のように、内管14は1個の内管で構成されると共に、1個の内管14は外管12の内部で外管12と同心状に配置される。
図1に示す超電導ケーブル10(10A)は、1個の内管14の内部に1個のフォーマ16と1個の超電導材18とを有する1個のコア部20を備える。
図2に示す超電導ケーブル10(10B)は、1個の内管14の内部に1個のフォーマ16と複数の超電導材18とを有する1個のコア部20を備える。
【0028】
これらの実施形態によれば、内管14を1個とし、かつ内管14を外管12の内部で外管12と同心状に配置することで、内管14の構成を簡素化できる。この実施形態では、図1に示す超電導ケーブル10(10A)は、コア部20が1層の超電導材18を有し、直流送電(単極送電)に用いることができる。
図2に示す超電導ケーブル10(10B)は、コア部20が3層の超電導材18(18a、18b、18c)を有し、3相交流送電に用いることができる。
また、コア部20が2層の超電導材18を有するときは、直流送電(双極送電)に用いることができる。
【0029】
一実施形態では、図2に示す超電導ケーブル10(10B)のように、コア部20は、フォーマ16の外周に複数の超電導材18(18a、18b、18c)と複数の電気絶縁層24とがフォーマ16の径方向に沿って交互に設けられる。
この実施形態によれば、比較的小容量の直流送電(双極送電)や3相交流送電に適用でき、かつコア部20をコンパクト化できる。これによって、超電導ケーブル10の直径を縮小できる。
図2に示す超電導ケーブル10(10B)は、コア部20が3層の超電導材18(18a、18b、18c)を有するため、3相交流送電に用いることができる。
【0030】
一実施形態では、図3及び図4に示す超電導ケーブル10(10C、10D)のように、内管14の内部に複数のコア部20(20a、20b、20c)が設けられると共に、複数のコア部20(20a〜20c)は内管14の軸方向に沿って配置される。これらの実施形態では、フォーマ16と超電導材18とを含む複数のコア部20(20a〜20c)が互いに独立して設けられる。
図3に示す超電導ケーブル10(10C)は、1個の内管14の内部に、夫々フォーマ16と超電導材18とを有する3個の独立したコア部20(20a〜20c)が設けられる。
【0031】
この実施形態によれば、1個の内管14の中に複数のコア部20(20a〜20c)を設けることで、超電導ケーブル10の構成を簡素化しつつ、直流送電(双極送電)や3相交流送電に適用可能な超電導ケーブルとすることができる。
【0032】
一実施形態では、図4に示す超電導ケーブル10(10D)のように、複数の内管14(14a〜14c)が外管12の内部に設けられると共に、複数の内管14は外管12の軸方向に沿って配置される。
この実施形態によれば、外管12の内部に複数の内管14(14a〜14c)を備えることで、大容量の直流送電(双極送電)や3相交流送電に適用可能な超電導ケーブルとすることができる。
【0033】
一実施形態では、図4に示す超電導ケーブル10(10D)のように、複数の内管14(14a〜14c)の内部に夫々独立したコア部20(20a〜20c)が設けられる。
図4に示す超電導ケーブル10(10D)は、3個の内管14(14a〜14c)の内部に、夫々フォーマ16と超電導材18とを有する独立したコア部20が夫々1個ずつ設けられる。
この実施形態によれば、複数の内管14の内部に夫々独立した1個のコア部20(20a〜20c)を設けることで、大容量の直流送電(双極送電)や3相交流送電に適用可能な超電導ケーブルとすることができる。
【0034】
一実施形態では、図4に示す超電導ケーブル10(10D)のように、複数の内管14(14a〜14c)の外周に夫々断熱層26(26a〜26c)が設けられる。これによって、各内管の内側への熱侵入をさらに抑制できる。
【0035】
一実施形態では、図1図4に示す超電導ケーブル10(10A〜10D)のように、冷媒rとして液体窒素を内管14の内部に充填する。
液化天然ガスLNGの温度は常圧下で−160℃程度であり、液体窒素の温度は常圧下で−196℃である。従って、液体窒素の外側に液化天然ガスLNGを充填することで、液体窒素より外気との温度差を縮めることができ、これによって、外部からの侵入熱を低減できる。さらに、液化天然ガスが気化することで、液体窒素が超電導材18から受ける熱を液化天然ガスが吸収でき、これによって、液体窒素の温度上昇を抑制できる。
【0036】
一実施形態に係る液化天然ガス輸送システム30は、図1に示すように、超電導ケーブル10(10A〜10D)を利用して液化天然ガスを輸送する輸送システムである。
図1において、超電導ケーブル10の一端側に液化天然ガス供給源32を備え、液化天然ガス供給源32と超電導ケーブル10の外管12と内管14との間に形成される空間とに接続する配管34(第1配管)が設けられる。
また、超電導ケーブル10の他端側に需要先36を備え、超電導ケーブル10の外管12と内管14との間に形成される空間と接続する需要先36の配管38(第2配管)が設けられる。
【0037】
上記構成において、液化天然ガス供給源32から液化天然ガスLNGを超電導ケーブル10を介して需要先36に輸送するように構成される。
液化天然ガスLNGが超電導ケーブル10の内部を輸送される間、内部からの侵入熱を吸収するため、内管14の内側を極低温に保持できる。
【0038】
上記構成によれば、コア部20を冷却する冷媒rの外側に極低温の液化天然ガスLNGが充填されることで、コア部20への熱侵入量を大幅に低減できる。従って、真空層の形成による断熱が不要となり、定期的な真空引きなどのメンテナンスが不要になる。
冷熱源として既存の液化天然ガスを用いるので、天然ガスを冷却する冷凍機は不要であり、また、外管12の外周に設けられる断熱層22は、液化天然ガスの保冷に用いられる既存の断熱材を用いればよく低コスト化できる。
また、外部の侵入熱を吸収して気化した液化天然ガスは、輸送終端側の需要先に送り、需要先でそのままエネルギ源として利用できるので、エネルギ消費効率を向上できる。
【0039】
一実施形態では、液化天然ガス供給源32及び需要先36は液化天然ガスの貯留タンクを含む。
一実施形態では、図1に示すように、配管34にポンプ40が設けられ、液化天然ガス供給源32の貯留タンクに貯留された液化天然ガスLNGは、ポンプ40によって超電導ケーブル10を介して需要先36貯留タンクに輸送される。外部からの侵入熱又は冷媒rから受け取った熱で気化した天然ガスは需要先36で上記貯留タンクに放出され、そのままエネルギ源として利用できる。
【0040】
一実施形態では、冷媒rとして液体窒素以外に、液体ヘリウム、液体水素、液体酸素等の極低温冷媒を使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
一実施形態によれば、液化天然ガスによって超電導ケーブルへの熱侵入を抑制でき、真空引きなどの煩雑なメンテナンスを不要にできる。また、既存の冷熱源である液化天然ガスを利用することで、エネルギ消費効率を向上できると共に、液化天然ガスの輸送も同時に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
10(10A、10B、10C、10D) 超電導ケーブル
12 外管
14(14a、14b、14c) 内管
16 フォーマ
18(18a、18b、18c) 超電導材
20(20a、20b、20c) コア部
22 断熱層(第1断熱層)
24 電気絶縁層
26(26a、26b、26c) 断熱層(第2断熱層)
28 中空部
30 液化天然ガス輸送システム
32 液化天然ガス供給源
34 配管(第1配管)
36 需要先
38 配管(第2配管)
40 ポンプ
LNG 液化天然ガス
r 冷媒
図1
図2
図3
図4