(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリカーボネートジオール(A1)における前記アルカンジオール(a1)に由来する構造単位と前記アルカンジオール(a2)に由来する構造単位の合計モル数に対する前記アルカンジオール(a1)に由来する構造単位のモル比率が50〜95モル%である請求項1記載のポリウレタン樹脂。
前記ポリカーボネートジオール(A1)の融点(T1)と、前記ポリカーボネートジオール(A1)と前記ポリカーボネートジオール(A2)及び/又はポリエステルジオール(A3)とを前記ポリウレタン樹脂(D)における構成単量体の比率と同じ比率で混合した混合物(AM)の融点(Tm)との差(T1−Tm)が1.5℃以下である請求項1〜3のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
前記ポリカーボネートジオール(A2)及びポリエステルジオール(A3)のJIS K7121−1987に規定される方法により求められる融解熱量(ΔH)が0J/gである請求項1〜5のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
前記ポリカーボネートジオール(A1)、前記ポリカーボネートジオール(A2)及び前記ポリエステルジオール(A3)の合計重量に対する前記ポリカーボネートジオール(A1)の重量比率が30〜80重量%である請求項1〜6のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリウレタン樹脂(D)>
本発明のポリウレタン樹脂は、炭素数8以上のアルカンジオール(a1)に由来する構造単位を有するポリカーボネートジオール(A1)と、炭素数4〜6のアルカンジオール(a3)に由来する構造単位を有する上記(A1)以外のポリカーボネートジオール(A2)及び/又はポリエステルジオール(A3)と、有機ジイソシアネート(B)と、鎖伸長剤(C)とを必須構成単量体とする。本発明のポリウレタン樹脂は、合成皮革用ポリウレタン樹脂である。
【0011】
ポリカーボネートジオール(A1)と、(A1)以外のポリカーボネートジオール(A2)及び/又はポリエステルジオール(A3)とを併用することにより、柔軟な風合い、優れた機械強度及び耐久性を併せ持った合成皮革が得られる。
【0012】
ポリカーボネートジオール(A1)は、炭素数8以上のアルカンジオール(a1)に由来する構造単位を有することにより、結晶性となる。
【0013】
アルカンジオール(a1)の炭素数は8以上であり、炭素数が7以下の場合は、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の耐久性や機械強度が劣る。
アルカンジオール(a1)の炭素数は、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合いの観点から、12以下であることが好ましい。アルカンジオール(a1)の炭素数は上記風合い、耐久性、機械強度及びアルカンジオールの(a1)の入手の容易さの観点から、8〜12が好ましく、更に好ましくは9〜12、特に好ましくは10である。
【0014】
アルカンジオール(a1)としては、5−メチル−2,4−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
これらの内で、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、耐久性、機械強度及びアルカンジオールの(a1)の入手の容易さの観点から好ましいのは、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール及び1,12−ドデカンジオール、更に好ましいのは1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール及び1,12−ドデカンジオール、特に好ましいのは1,10−デカンジオールである。
アルカンジオール(a1)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
ポリカーボネートジオール(A1)は、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、機械強度及び耐久性の観点から、更に炭素数3〜5のアルカンジオール(a2)に由来する構造単位を有することが好ましい。
アルカンジオール(a2)の炭素数は、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の機械強度の観点から、3〜5であり、好ましくは3又は4である。
【0016】
アルカンジオール(a2)としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール及び1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。これらの内で、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の機械強度の観点から好ましいのは、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールであり、更に好ましいのは、1,4−ブタンジオールである。アルカンジオール(a2)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
ポリカーボネートジオール(A1)におけるアルカンジオール(a1)に由来する構造単位とアルカンジオール(a2)に由来する構造単位の合計モル数に対するアルカンジオール(a1)に由来する構造単位のモル比率は、50〜95モル%であることが好ましく、更に好ましくは55〜90モル%、特に好ましくは60〜85モル%である。アルカンジオール(a1)に由来する構造単位のモル比率が95モル%より大きいとポリウレタン樹脂の結晶性が強くなりすぎる場合があり、ポリウレタン合成皮革とした場合、風合いが悪くなる場合がある。また、アルカンジオール(a1)に由来する構造単位のモル比率が50モル%より小さいとポリウレタン樹脂の結晶性が失われる傾向にあり、ポリウレタン樹脂をポリウレタン合成皮革とした場合、機械強度及び耐久性が低下する場合がある。
【0018】
アルカンジオール(a1)及び(a2)は、直鎖アルカンジオールであっても、分岐を有するアルカンジオールであってもよいが、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の耐薬品性、低温特性及び耐久性の観点から、直鎖アルカンジオールが好ましい。アルカンジオール(a1)及び(a2)が分岐鎖アルカンジオールである場合、上記耐薬品性、低温特性及び耐久性の観点から、炭素鎖の分岐点の数が1であることが好ましい。分岐鎖がある場合、分岐鎖の炭素数は小さい方が耐薬品性、低温特性及び耐熱性が良好であり、分岐鎖の炭素数は2以下が好ましく、1が更に好ましい。
【0019】
ポリカーボネートジオール(A1)の具体例としては、1,8−オクタンジオール/1,3−プロパンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,8−オクタンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,8−オクタンジオール/1,5−ペンタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオール/1,3−プロパンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオール/1,5−ペンタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,10−デカンジオール/1,3−プロパンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,10−デカンジオール/1,5−ペンタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,12−ドデカンジオール/1,3−プロパンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,12−ドデカンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオール及び1,12−ドデカンジオール/1,5−ペンタンジオール共重合ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0020】
これらの内、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、機械強度及び耐久性の観点から好ましいのは1,8−オクタンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオール及び1,12−ドデカンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオールであり、特に好ましいのは1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール共重合ポリカーボネートジオールである。
ポリカーボネートジオール(A1)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリカーボネートジオール(A1)は、結晶性である。ポリカーボネートジオール(A1)の結晶性は、その融解熱量(ΔH)で表すことができ、ポリカーボネートジオール(A1)の融解熱量は40〜100J/gであることが必要であり、好ましくは45〜90J/g、更に好ましくは50〜75J/gである。ポリカーボネートジオール(A1)の融解熱量(ΔH)が40J/g未満であると、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革が耐久性や機械強度に劣り、100J/gを超えると風合いが損なわれる。
尚、本発明における融解熱量はJIS K7121−1987に規定される示差走査熱量計による融点測定方法により求められる融解ピークにおける融解熱量(ΔH)であり、本発明における融点はJIS K7121−1987に規定された融点測定方法により求められる融点である。
【0022】
ポリカーボネートジオール(A1)及び後述のポリカーボネートジオール(A2)の製造方法としては、例えばジフェニルカーボネートやジメチルカーボネート等の炭酸エステルとジオールのトランスエステル化方法が挙げられる。詳細は例えば米国特許第4013702号明細書や米国特許第4105641号明細書及びシネエル(Schnell)著、ポリマー・レビューズ(Polymer Reviews)第9巻、第9〜20頁(1964)等に記載された種々の方法が挙げられる。米国特許第4013702号明細書及び米国特許第4105641号明細書には、1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールの共重合ポリカーボネートジオールの合成の記載がある。これらは、何れも共重合ポリカーボネートジオールの製造方法を開示するものである。
【0023】
本発明のポリウレタン樹脂(D)には、上記ポリカーボネートジオール(A1)と共に、(A1)以外のポリカーボネートジオール(A2)及び/又はポリエステルジオール(A3)が用いられる。
【0024】
ポリカーボネートジオール(A1)以外のポリカーボネートジオール(A2)は、炭素数4〜6のアルカンジオール(a3)に由来する構造単位を有する。
ポリカーボネートジオール(A2)は炭素数4〜6のアルカンジオール(a3)に由来する構造単位を必須の構造単位として有している限り、共重合体であっても、共重合体でなくてもよいが、共重合体であるほうが好ましい。
アルカンジオール(a3)の炭素数は、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合いの観点から4〜6であり、好ましくは5〜6、更に好ましくは6である。
【0025】
炭素数が4〜6のアルカンジオール(a3)としては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合いの観点から好ましいのは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールであり、特に好ましいのは、1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールである。
炭素数が4〜6のアルカンジオール(a3)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリカーボネートジオール(A2)が単独重合体の場合、該単独重合体の例としては、2−メチル−1,3−プロパンジオールポリカーボネートジオール、ネオペンチルグリコールポリカーボネートジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオールポリカーボネートジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0027】
ポリカーボネートジオール(A2)が共重合体の場合、該共重合体の例としては、1,4−ブタンジオール/1,5−ペンタンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール、1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオ−ル、ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール及び2−エチル−1,3−プロパンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0028】
これらの内、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、機械強度及び耐久性の観点から好ましいのは1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール、ネオペンチルグリコール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオールであり、特に好ましいのは3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール共重合ポリカーボネートジオールである。
ポリカーボネートジオール(A2)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリカーボネートジオール(A2)は、低結晶性又は非晶性である。ポリカーボネートジオール(A2)の融解熱量は、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、機械強度及び耐久性の観点から、35J/g以下であることが必要である。ポリカーボネートジオール(A2)は非晶性であること、即ちJIS K7121−1987規定の示差走査熱量計による融点測定方法で融解ピークが観察されず、融解熱量(ΔH)が0J/gであることが好ましい。
【0030】
ポリエステルジオール(A3)は、融解熱量(ΔH)が35J/g以下のポリエステルジオールであれば特に限定されず、例えば低分子ジオール及び/又は後述のポリエーテルジオールで数平均分子量(以下Mnと略記)が1000以下のものとジカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルジオールや、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンジオールが挙げられる。
【0031】
低分子ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、脂環式ジオール[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等]及び芳香環を有するジオール[1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等]等が挙げられる。
低分子ジオールは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、ジカルボン酸としては脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバチン酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、これらのジカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物及び低級アルキル(炭素数1〜4)エステル等]等が挙げられ、ラクトンとしてはε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンが挙げられる。
ジカルボン酸及びラクトンはそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
ポリエステル化は、一般的な方法、例えば低分子ジオールとジカルボン酸とを縮合重合させるか、低分子ジオールにラクトンを付加させることにより製造することができる。
【0034】
ポリエステルジオール(A3)は、低結晶性又は非晶性である。ポリエステルジオール(A3)の融解熱量は、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、機械強度及び耐久性の観点から35J/g以下であることが必要である。ポリエステルジオール(A3)は非晶性であること、即ちJIS K7121−1987規定の示差走査熱量計による融点測定方法で融解ピークが観察されず、融解熱量(ΔH)が0J/gであることが好ましい。
【0035】
非晶性のポリエステルジオールを得る方法としては、分岐の低分子ジオールを用いる方法や2種以上の低分子ジオールを用いる方法等が挙げられる。
非結晶性のポリエステルジオールの具体例としては、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンアジペート)ジオール及びポリエチレン・ブチレンアジペートジオール等が挙げられる。
ポリエステルジオール(A3)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
ポリカーボネートジオール(A1)、ポリカーボネートジオール(A2)及びポリエステルポリオール(A3)のMnは、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い及び機械強度の観点から、好ましくは500〜5000、更に好ましくは700〜4500、特に好ましくは1000〜4000である。本発明におけるジオールのMnは水酸基価から求める。尚、水酸基価はJIS K0070−1992(電位差滴定方法)に規定された方法で測定する。
【0037】
ポリカーボネートジオール(A1)と、ポリカーボネートジオール(A2)及びポリエステルポリオール(A3)との比率は、ポリカーボネートジオール(A1)の結晶化が阻害されない範囲で決定されることが好ましい。
具体的には、ポリカーボネートジオール(A1)の融点(T1)と、ポリカーボネートジオール(A1)と、ポリカーボネートジオール(A2)及び/又はポリエステルジオール(A3)とをポリウレタン樹脂(D)における構成単量体の比率と同じ比率で混合した混合物(AM)の融点(Tm)との差(T1−Tm)が1.5℃以下となる範囲が、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、耐久性及び機械強度の観点から好ましく、1.0℃以下となる範囲が更に好ましく、0.8℃以下となる範囲が特に好ましい。上記のポリカーボネートジオール(A1)の融点(T1)と、上記の混合物(AM)の融点(Tm)との差(T1−Tm)は、好ましくは0℃以上である。ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、耐久性及び機械強度の観点から、上記T1とTmとの差(T1−Tm)は、より好ましくは0〜1.5℃、さらに好ましくは0〜1.0℃、特に好ましくは0〜0.8℃である。
【0038】
また、上記混合物(AM)の融解熱量(ΔH)が10〜55J/gとなる範囲が、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、耐久性及び機械強度の観点から好ましく、20〜50J/gとなる範囲が更に好ましく、25〜45J/gとなる範囲が特に好ましい。
【0039】
ポリカーボネートジオール(A1)、ポリカーボネートジオール(A2)及びポリエステルジオール(A3)の合計重量に対するポリカーボネートジオール(A1)の重量比率は、好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。ポリカーボネートジオール(A1)の重量比率が30重量%以上であれば、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の耐久性が良好であり、80重量%以下であれば、合成皮革の風合いが良好である。上記重量比率は、本発明のポリウレタン樹脂(D)の構成単量体における重量比率である。
【0040】
本発明の合成皮革用ポリウレタン樹脂のジオール成分として、ポリカーボネートジオール(A1)、ポリカーボネートジオール(A2)及びポリエステルジオール(A3)に加えて、その他の高分子ジオール(A4)を性能に悪影響しない範囲で併用することができる。高分子ジオール(A4)は上記の(A1)〜(A3)の合計重量に対して、好ましくは0〜40重量%、更に好ましくは5〜35重量%併用することができる。高分子ジオール(A4)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
高分子ジオール(A4)としてはMnが500〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のポリエーテルジオール及びポリエステルジオールが挙げられる。
【0042】
ポリエーテルジオールとしては、例えば上述の低分子ジオールにアルキレンオキサイド(以下AOと略記)を付加させた化合物等が挙げられる。
AOとしては、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、テトラハイドロフラン(以下THFと略記)、3−メチル−テトラヒドロフラン(以下3−M−THFと略記)等が挙げられる。
AOは単独でも2種以上併用してもよく、後者の場合はブロック付加でもランダム付加でも両者の混合系でもよい。
これらのAOの内で好ましいのはEO単独、PO単独、THF単独、3−M−THF単独、PO及びEOの併用、PO及び/又はEOとTHFの併用及びTHFと3−M−THFの併用(併用の場合、ランダム、ブロック及び両者の混合系)である。
これらのポリエーテルジオールの具体例としてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ−3−メチル−テトラメチレンエーテルグリコール、THF/EO共重合ジオール、THF/3−M−THF共重合ジオール等が挙げられる。これらの内好ましいのはポリテトラメチレンエーテルグリコールである。
【0043】
高分子ジオール(A4)としてのポリエステルジオールとしては、ポリエステルジオール(A3)の説明で例示した原料及び製造方法で得られるポリエステルジオールであって、その融解熱量が35J/gを超えるもの等が挙げられる。
【0044】
低分子ジオールへのAOの付加は、一般的な方法で行うことができ、無触媒で又は触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒及び酸性触媒)の存在下(特にAO付加の後半の段階で)に常圧又は加圧下に1段階又は多段階で行われる。
【0045】
本発明における有機ジイソシアネート(B)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートの変性体(カーボジイミド変性体、ウレタン変性体及びウレトジオン変性体等)等が挙げられる。
【0046】
炭素数6〜20の芳香族ジイソシアネートの具体例としては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと略記)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び1,5−ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアネトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサエート等が挙げられる。
【0048】
炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0049】
炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα、α、α’、α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
これらの内で、ポリウレタン樹脂から得られる合成皮革の風合い、耐久性、機械強度の観点から好ましいのは炭素数6〜20の芳香族ジイソシアネート、特に好ましいのはMDIである。
【0051】
鎖伸長剤(C)としては、水、上述の低分子ジオール、脂肪族ジアミン(エチレンジアミン等)、脂環式ジアミン(イソホロンジアミン等)、芳香族ジアミン(4,4−ジアミノジフェニルメタン等)、芳香脂肪族ジアミン(キシレンジアミン等)、アルカノールアミン(エタノールアミン等)、ヒドラジン及びジヒドラジド(アジピン酸ジヒドラジド等)等が挙げられる。これらの内で好ましいもは、水、低分子ジオール及び芳香族ジアミンであり、更に好ましいのは水、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンである。鎖伸長剤(C)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。鎖伸長剤(C)のMn又は化学式量は250以下が好ましい。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂(D)における活性水素成分[ポリカーボネートジオール(A1)、ポリカーボネートジオール(A2)、ポリエステルジオール(A3)、その他の高分子ジオール(A4)及び鎖伸長剤(C)等]の活性水素含有基の合計の当量に対する有機ジイソシアネート(B)のイソシアネート基の当量の比率は、ポリウレタン樹脂(D)の高分子量化の観点から、0.95〜1.1であることが好ましく、更に好ましくは0.97〜1.05である。
【0053】
鎖伸長剤(C)の使用量は、ポリカーボネートジオール(A1)、ポリカーボネートジオール(A2)、ポリエステルジオール(A3)及びその他の高分子ジオール(A4)の水酸基の当量の合計量に対する鎖伸長剤(C)の活性水素含有基の当量の比率が、0.2〜10となる範囲が好ましく、更に好ましくは0.5〜5となる範囲である。
【0054】
本発明のポリウレタン樹脂(D)の製造方法としては、例えば、上記活性水素成分[(A1)〜(A4)及び(C)]と有機ジイソシアネート(B)とを同時に反応させるワンショット法や、(A1)〜(A4)及び(B)を先に反応させてウレタンプレポリマーを得た後、更に(C)を反応させるプレポリマー法等が挙げられる。
ウレタン化反応の反応温度は好ましくは20〜160℃、更に好ましくは40〜80℃である。必要であれば、重合停止剤、例えばモノアルコール(メタノール、エタノール、ブタノール及びシクロヘキサノール等)、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン及びシクロヘキシルアミン等)等を使用することができる。反応を促進させるために、必要によりポリウレタン反応に好ましく使用される触媒[例えばアミン系触媒〔トリエチルアミン、トリエチレンジアミン及び米国特許第4524104号明細書に記載のシクロアミジン類{1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ(株)製「DBU」)等}等〕、錫系触媒(ジブチルチンジラウレート及びジオクチルチンジラウレート等)等]を使用することができる。触媒の使用量はポリウレタン樹脂に対して1重量%以下が好ましい。
【0055】
本発明のポリウレタン樹脂(D)の製造は、有機溶媒の存在下又は非存在下で行われ、非存在下で行った場合には後から有機溶媒を加えるか又は一度固形の樹脂を製造した後、溶剤に溶解する方法等を行うことができる。
【0056】
ポリウレタン樹脂(D)の製造に用いられる有機溶媒(E)としては、例えばアミド系溶媒[N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略記)、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等];スルホキシド系溶媒[ジメチルスルホキシド(以下DMSOと略記)等];ケトン系溶媒(メチルエチルケトン及びアセトン等);エーテル系溶媒(ジオキサン及びテトラヒドロフラン(THF)等);エステル系溶媒(酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等);芳香族系溶媒(トルエン及びキシレン等);アセトニトリル等が挙げられる。これらの内で好ましいのはアミド系溶媒であり、特に好ましいものはDMFである。有機溶媒(E)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記ポリウレタン樹脂(D)のMnは樹脂強度の観点から20,000以上が好ましく、粘度安定性、作業性の観点から500,000以下が好ましい。更に好ましくは30,000〜150,000である。
本発明のポリウレタン樹脂(D)のMnはゲルパーミェーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn α」+「TSKgel α−M」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.125重量%のDMF溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
【0058】
<多孔質シート材料>
本発明のポリウレタン樹脂(D)から製造される多孔質シート材料は、ポリウレタン樹脂(D)の溶液(F)を基体に適用し湿式処理することにより得られる。
【0059】
ポリウレタン樹脂(D)の溶液(F)は、ポリウレタン樹脂(D)を有機溶媒(E)に溶解させたものであり、溶液(F)の樹脂分濃度は、多孔質シート材料の強度の観点から10重量%以上が好ましく、粘度安定性及び作業性の観点から50重量%以下が好ましい。溶液(F)の樹脂分濃度は、更に好ましくは12〜35重量%である。
【0060】
ポリウレタン樹脂(D)及びその溶液(F)には必要により酸化チタン等の着色剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等)や酸化防止剤[4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−1−ブチルフェノール)等のヒンダードフェノール;トリフェニルホスファイト及びトリクロルエチルホスファイト等の有機ホスファイト等]等の各種安定剤、無機充填剤(炭酸カルシウム等)及び公知の凝固調整剤[高級アルコール;セチルアルコール、ステアリルアルコール等(特公昭42−22719号公報)、結晶性有機化合物;精製されたオクタデシルアルコール、精製されたステアリルアルコール等(特公昭56−41652号公報)及び疎水性ノニオン系界面活性剤;ソルビタンモノステアレート及びソルビタンパルミテート等(特公昭45−39634号公報及び特公昭45−39635号公報)]等を添加することができる。これらの各添加剤の合計添加量(含有量)はポリウレタン樹脂(D)に対して10重量%以下が好ましく、0.5〜5重量%が更に好ましい。添加剤はそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明のポリウレタン樹脂(D)の凝固価は、凝固速度の観点から好ましくは2〜5、更に好ましくは2.3〜4.7、特に好ましくは2.5〜4.5である。
凝固価とは、ポリウレタン樹脂の1重量%DMF溶液を作製し、この溶液100gを25℃に温度調整しながら、スターラーで撹拌しつつ、25℃の水を滴下して、溶液(透明な溶液)が白濁するのに要した滴下水量(ml)を意味する。凝固価はポリウレタン樹脂の親水性の度合いを表し、ポリウレタン樹脂の溶液を基体に付与し湿式製膜法により多孔質シートを製造する際のポリウレタン樹脂の凝固速度の指標となる。例えば、疎水性の大きい高分子ジオールを使用するとポリウレタン樹脂の凝固価は小さくなり、親水性の大きい高分子ジオールを使用するとポリウレタン樹脂の凝固価は大きくなる。
【0062】
多孔質シート材料の製造において使用される基体は、特に限定はなく種々のものが使用でき、例えば天然又は合成繊維(ウール、コットン、ポリアミド、ポリエステル、レーヨン等及びこれらの2種以上の混合繊維)からなる織布、編布、不織布、フェルト、起毛布や紙、プラスチック、フイルム、金属板及びガラス板等が挙げられる。本発明では、これら基体より剥がしてシート材料にすることも、また基体と一体になったシート材料にすることもできる。
【0063】
ポリウレタン樹脂(D)の溶液(F)を基体に適用し湿式処理するにあたり、溶液(F)の適用(塗布及び/又は含浸)及び湿式処理は、一般的な湿式処理の方法、例えば米国特許第3284274号明細書10〜11欄記載の(a)、(b)、(c)、(d)の方法で行うことができる。
湿式処理の凝固浴には、本発明のポリウレタン樹脂(D)を溶解しない溶媒(貧溶媒)、例えば水、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノエチルエーテル及びこれらの混合物が用いられ、好ましいのは水である。
凝固浴として上記貧溶媒のみを用いてもよいが、これと上記有機溶媒(E)(DMF及びDMSO等)との混合溶媒であって本発明のポリウレタン樹脂(D)を溶解しない混合溶媒からなる混合浴を用いてもよい。
また、水と水蒸気により凝固させる方法、水蒸気により部分凝固させて次いで凝固浴中へ浸漬する方法でもよい。更に、ポリウレタン樹脂(D)の溶液(F)に上記貧溶媒を加えてコロイド状分散液として基体に適用し、凝固浴中へ浸漬してもよい。凝固浴の温度は20〜60℃が好ましい。
【0064】
湿式処理後は一般的な方法で脱溶剤、洗浄(水及びメタノール等により実施)、乾燥される。脱溶剤促進にアニオン、ノニオン、カチオン又は両性の界面活性剤を使用することもできる。また、英国特許第1168872号明細書記載の方法により架橋処理を行うこともできる。
【0065】
得られた多孔質シート材料はこのまま使用することも可能であるが、更に各種特性を付与する意味から、積層体として用いることもできる。即ち、多孔質シート材料の上にポリウレタン樹脂溶液や他のポリマー(例えば塩化ビニル及びセルロース系樹脂等)溶液やエマルションを塗工し乾燥して得られる積層体として、或いは、多孔質シート材料を、別途離型紙の上に塗工した上記ポリマー溶液やエマルションを乾燥して得た塗膜と張り合わせた後で、離型紙を剥がして得られる積層体として用いたりすることも可能である。
【0066】
本発明のポリウレタン樹脂(D)から得られる多孔質シート材料は、均一な微細孔を有しているため、柔軟な風合いと優れた耐久性、機械強度、耐加水分解性及び耐候性とを有する。従って、本発明のポリウレタン樹脂から得られる多孔質シート材料は天然皮革を代替する合成皮革として靴、鞄、家具及び車両シート等広範な用途に極めて有用である。
【0067】
<ポリウレタン樹脂水性分散体(P)>
本発明のポリウレタン樹脂(D)は、更に親水性基と活性水素含有基とを有する化合物(G)を必須構成単量体とするポリウレタン樹脂とすることができる。更に上記化合物(G)を必須構成単量体とするポリウレタン樹脂(D)を、ポリウレタン樹脂(D1)ともいう。ポリウレタン樹脂(D)は、ポリウレタン樹脂(D1)とすることにより、ポリウレタン樹脂(D1)と水を含有するポリウレタン樹脂水性分散体(P)として好適に使用される。ポリウレタン樹脂水性分散体(P)を乾燥して製膜してなる無孔膜シート材料は、柔軟な風合いと優れた耐久性、機械強度、耐加水分解性及び耐候性とを有することから、天然皮革を代替する合成皮革として、靴、鞄、家具及び車両シート等広範な用途に極めて有用である。
親水性基と活性水素含有基とを有する化合物(G)の重量割合は、ポリウレタン樹脂水性分散体の安定性並びに得られる皮膜の耐熱性及び耐候性の観点から、上記の(A1)〜(A4)及び(G)の合計重量に対して、好ましくは0.5〜14重量%であり、更に好ましくは0.8〜10重量%であり、特に好ましくは1〜7重量%である。
【0068】
本発明において、親水性基と活性水素含有基とを有する化合物(G)の親水性基とは、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホ基及びスホナト基を意味する。化合物(G)は、これらの親水性基のいずれか1種を有するものであればよく、2種以上を有していてもよい。また、活性水素含有基とはカルボキシル基及びスルホ基以外の活性水素含有基を意味する。活性水素含有基として、水酸基、アミノ基及びチオール基等が挙げられ、好ましいのは水酸基である。
【0069】
親水性基と活性水素含有基とを有する化合物(G)としては、例えばカルボキシル基を有する炭素数が2〜10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸及び2,2−ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン)等]、スルホ基を有する炭素数が2〜16の化合物[3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等]、スルファミン酸基を有する炭素数が2〜10の化合物[N,N−ビス(2−ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等]等並びにこれらの化合物を後述の中和剤で中和した塩が挙げられる。これらの内で好ましいのはカルボキシル基及び/又はカルボキシレート基を有する化合物であり、特に好ましいのは2,2−ジメチロールプロピオン酸及び2,2−ジメチロールブタン酸である。親水性基と活性水素含有基とを有する化合物(G)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0070】
ポリウレタン樹脂(D1)中のカルボキシル基及びカルボキシレート基の合計含有量は、ポリウレタン樹脂水性分散体(P)の安定性並びに得られる皮膜の耐熱性及び耐候性の観点から、ポリウレタン樹脂(D1)の重量に基づいて、0.09〜0.27mmol/gであることが好ましく、更に好ましくは0.14〜0.25mmol/gである。
【0071】
本発明におけるポリウレタン樹脂中のカルボキシル基及びカルボキシレート基の合計含有量は、3〜10gのポリウレタン樹脂水性分散体(P)を130℃で45分間加熱乾燥して得られる残渣を水洗後、再度130℃で45分間加熱乾燥し、ジメチルホルムアミドに溶解して、JIS K0070−1992記載の方法(電位差滴定法)で測定される酸価から算出できる。
【0072】
上記化合物(G)の中和に用いられる中和剤としては、例えばアンモニア、炭素数1〜20のアミン化合物及びアルカリ金属(ナトリウム、カリウム及びリチウム等)の水酸化物が挙げられる。
炭素数1〜20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びN−メチルジエタノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
これらの内、ポリウレタン樹脂水性分散体(P)の臭気及び得られる皮膜の耐水性の観点から好ましいものは、25℃における蒸気圧が低いアミン化合物であり、更に好ましいのはトリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びN−メチルジエタノールアミンである。
【0073】
ポリウレタン樹脂水性分散体(P)はポリウレタン樹脂(D1)及び水を必須成分として含有するが、必要により界面活性剤、架橋剤及び耐候安定化剤を含有することができる。界面活性剤、架橋剤及び耐候安定化剤は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びその他の乳化分散剤が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、乾燥皮膜の耐水性の観点からポリウレタン樹脂(D1)の重量に基づいて、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.2〜5重量%である。
【0074】
架橋剤としては、ポリウレタン骨格中のカルボキシル基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する水溶性又は水分散性の化合物が挙げられ、カルボキシル基と反応しうる官能基としては、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、シクロカーボネート基及びアジリジン基等が挙げられる。架橋剤の使用量は、ポリウレタン樹脂(D1)の重量に基づいて1.0〜20重量%、更に好ましくは1.5〜10重量%である。
耐候安定化剤としては、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、硫黄系及びリン系等)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系及びベンゾエート系等)及びヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。耐候安定化剤の使用量は、ポリウレタン樹脂(D1)の重量に基づいて好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.2〜5重量%である。
【0075】
ポリウレタン樹脂水性分散体(P)の体積平均粒子径は、貯蔵安定性及び粘度の観点から、好ましくは0.01〜1μm、更に好ましくは0.02〜0.7μm、特に好ましくは0.03〜0.5μmである。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体(P)の固形分濃度は、好ましくは20〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%である。
【0076】
ポリウレタン樹脂水性分散体(P)を製造する方法としては、例えば、以下の[1]及び[2]の方法が挙げられる。
【0077】
[1] ポリカーボネートジオール(A1)と、ポリカーボネートジオール(A2)及び/又はポリエステルジオール(A3)と、鎖伸長剤(C)と、親水性基と活性水素含有基とを有する化合物(G)と、有機ジイソシアネート(B)と、必要により有機溶剤とを反応容器に仕込み、一段又は多段で反応させてポリウレタン樹脂(D1)を形成させ、(G)により導入された親水基部分を中和剤により中和した後、有機溶剤の存在下又は非存在下で水性媒体に分散させ、必要により有機溶剤を留去する方法。
【0078】
[2] ポリカーボネートジオール(A1)と、ポリカーボネートジオール(A2)及び/又はポリエステルジオール(A3)と、親水性基と活性水素含有基とを有する化合物(G)と、有機ジイソシアネート(B)と、必要により有機溶剤とを反応容器に仕込み、一段又は多段でウレタンプレポリマーを形成させ、次いで(G)により導入された親水基部分を中和剤で中和した後、水性媒体に分散させて、鎖伸長剤(C)及び必要により反応停止剤とイソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させた後、有機溶剤を留去する方法。
【0079】
[2]の製造方法において、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤(C)及び必要により反応停止剤とを反応させる際、(C)と必要により使用する反応停止剤は水性分散体に溶解させておいてもよいが、水性分散体の安定性の観点から、ウレタンプレポリマーを水性媒体に分散させた後に、(C)及び必要により反応停止剤を加えることが好ましい。本発明における水性媒体としては、水及び水と上記有機溶媒(E)との混合物が挙げられる。
【0080】
上記ウレタンプレポリマーの形成においては、イソシアネート基/活性水素含有基の当量比が1.01〜2.0となる割合で活性水素成分と有機ジイソシアネート(B)を反応させることが好ましい。プレポリマーの形成は、好ましくは20℃〜150℃、更に好ましくは60℃〜110℃の反応で行われ、反応時間は好ましくは2〜15時間である。プレポリマーの形成は、イソシアネート基と実質的に非反応性の有機溶剤の存在下又は非存在下で行うことができる。反応後のプレポリマーは0.5〜5%の遊離イソシアネート基含量を有することが好ましい。上記の反応の際に用いる有機溶剤としては、上記有機溶媒(E)が挙げられ、沸点が100℃未満で、かつイソシアネート基と実質的に非反応性のもの(例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトニトリル及びテトラヒドロフラン等)が好ましい。沸点が100℃未満の有機溶剤を使用することにより、有機溶剤のみを完全に除去することが容易になり、水性分散体中に残存して、加工時に有機溶剤が発生することもない。また有機溶剤が得られた皮膜中に残存にくくなり、皮膜物性が経時的に変化することもなくなる。
【0081】
上記プレポリマー化反応においては反応を促進させるため、必要により上述のウレタン化反応に使用される触媒を使用してもよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下において部は重量部を表す。
【0083】
実施例1
攪拌機及び温度計を備えた四つ口フラスコに、Mnが1,979(水酸基価=56.7mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:91/9)共重合ポリカーボネートジオール(A1−1)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2090DB」]100部、Mnが2,000(水酸基価=56.1mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:50/50)共重合ポリカーボネートジオール(A2−1)100部、エチレングリコール(C−1)7.6部、MDI(B−1)61.6部及びDMF628部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度80,000mPa・s/20℃、凝固価3.8のポリウレタン樹脂(D−1)の溶液を得た。
尚、粘度は、ポリウレタン樹脂(D−1)の溶液を20℃の恒温水槽で5時間温調した後、B型粘度計[東機産業(株)製BH型粘度計]、No.7号ローター、回転数20rpmで測定した。以下も同様である。
【0084】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に、Mnが2,018(水酸基価=55.6mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:81/19)共重合ポリカーボネートジオール(A1−2)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2080DB」]140部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)60部、エチレングリコール(C−1)9.6部、MDI(B−1)73.1部及びDMF660部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で65℃で20時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度95,000mPa・s/20℃、凝固価3.4のポリウレタン樹脂(D−2)の溶液を得た。
【0085】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、Mnが2,018(水酸基価=55.6mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:81/19)共重合ポリカーボネートジオール(A1−2)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2080DB」]120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、1,4−ブタンジオール(C−2)10.9部、MDI(B−1)60.8部及びDMF634部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で65℃で20時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度91,000mPa・s/20℃、凝固価3.5のポリウレタン樹脂(D−3)の溶液を得た。
【0086】
実施例4
実施例1と同様の反応容器に、Mnが1,989(水酸基価=56.4mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:71/29)共重合ポリカーボネートジオール(A1−3)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2070DB」]120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、エチレングリコール(C−1)8.9部、MDI(B−1)67.5部及びDMF645部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で65℃で20時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度80,000mPa・s/20℃、凝固価3.7のポリウレタン樹脂(D−4)の溶液を得た。
【0087】
実施例5
実施例1と同様の反応容器に、Mnが1,989(水酸基価=56.4mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:71/29)共重合ポリカーボネートジオール(A1−3)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2070DB」]120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、1,4−ブタンジオール(C−2)11.5部、MDI(B−1)60.1部及びDMF634部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で65℃で20時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度95,000mPa・s/20℃、凝固価3.6のポリウレタン樹脂(D−5)の溶液を得た。
【0088】
実施例6
実施例1と同様の反応容器に、Mnが1,989(水酸基価=56.4mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:71/29)共重合ポリカーボネートジオール(A1−3)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2070DB」]120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、MDI(B−1)59.3部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で80℃で3時間反応させ、NCO末端ウレタンプレポリマー(NCO%=5.43重量%)を得た。ウレタンプレポリマーを室温まで冷却した後、DMF610部を仕込み均一に溶解し、NCO%=1.29重量%のウレタンプレポリマー溶液とした。次に水2.3部を加え55℃で6時間反応させた後メタノール10部加え反応を停止して、樹脂濃度25重量%、粘度20,000mPa・s/20℃、凝固価3.6のポリウレタン樹脂(D−6)の溶液を得た。
【0089】
実施例7
攪拌機及び温度計を備えた加圧可能な容器に、Mnが1,989(水酸基価=56.4mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:71/29)共重合ポリカーボネートジオール(A1−3)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2070DB」]120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、エチレングリコール(C−1)0.01部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)(G−1)5.02部、HDI(B−2)56.0部及びアセトン112部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で12時間反応させ、末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。得られたアセトン溶液を室温まで冷却して、耐候安定化剤としてのIrganox245(BASF社製)2.1部、Tinuvin144(BASF社製)3.5部、Tinuvin900(BASF社製)7.0部、希釈溶剤としてのアセトン742.9部、中和剤としてのトリエチルアミン7.1部を加えた。水583.3部をこのアセトン溶液に加えホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、減圧下でアセトンを留去し、室温まで冷却した後に水を加えて固形分40重量%に調整し、ポリウレタン樹脂水性分散体(P−1)を得た。
【0090】
実施例8
攪拌機及び温度計を備えた四つ口フラスコに、Mnが2,003(水酸基価=56.0mgKOH/g)の1,10−デカンジオールポリカーボネートジオール(A1−4)120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、エチレングリコール(C−1)8.0部、MDI(B−1)57.3部及びDMF619部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度73,000mPa・s/20℃、凝固価3.4のポリウレタン樹脂(D−7)の溶液を得た。
【0091】
実施例9
攪拌機及び温度計を備えた四つ口フラスコに、Mnが2,017(水酸基価=55.6mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:55/45)共重合ポリカーボネートジオール(A1−5)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2055DB」]120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、エチレングリコール(C−1)8.6部、MDI(B−1)59.5部及びDMF626部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度99,000mPa・s/20℃、凝固価5.1のポリウレタン樹脂(D−8)の溶液を得た。
【0092】
実施例10
攪拌機及び温度計を備えた四つ口フラスコに、Mnが2,003(水酸基価=56.0mgKOH/g)の1,10−デカンジオールポリカーボネートジオール(A1−4)120部、Mnが2,485(水酸基価=45.2mgKOH/g)のポリエチレン・ブチレンアジペートジオール[三洋化成工業(株)製「サンエスター 24625−Y」](A3−1)80部、エチレングリコール(C−1)8.9部、MDI(B−1)58.9部及びDMF625部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度76,000mPa・s/20℃、凝固価3.3のポリウレタン樹脂(D−9)の溶液を得た。
【0093】
実施例11
攪拌機及び温度計を備えた四つ口フラスコに、Mnが2,003(水酸基価=56.3mgKOH/g)の1,9−ノナンジオールポリカーボネートジオール(A1−6)120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、エチレングリコール(C−1)8.4部、MDI(B−1)58.9部及びDMF624部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度101,000mPa・s/20℃、凝固価3.4のポリウレタン樹脂(D−10)の溶液を得た。
【0094】
比較例1
実施例1と同様の反応容器に、Mnが2,018(水酸基価=55.6mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:81/19)共重合ポリカーボネートジオール(A1−2)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2080DB」]200部、1,4−ブタンジオール(C−2)12.5部、MDI(B−1)65.4部及びDMF648部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度90,000mPa・s/20℃、凝固価2.6のポリウレタン樹脂(D’−1)の溶液を得た。
【0095】
比較例2
実施例1と同様の反応容器に、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)200部、1,4−ブタンジオール(C−2)12.8部、MDI(B−1)67.1部及びDMF653部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度82,000mPa・s/20℃、凝固価6.0のポリウレタン樹脂(D’−2)の溶液を得た。
【0096】
比較例3
実施例1と同様の反応容器に、Mnが2,018(水酸基価=55.6mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:81/19)共重合ポリカーボネートジオール(A1−2)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2080DB」]120部、Mnが2,000(水酸基価=56.1mgKOH/g)の1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートジオール(A2’−1)80部、1,4−ブタンジオール(C−2)12.6部、MDI(B−1)66.0部及びDMF650部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度82,000mPa・s/20℃、凝固価3.3のポリウレタン樹脂(D’−3)の溶液を得た。
【0097】
比較例4
実施例1と同様の反応容器に、Mnが2,000(水酸基価=56.1mgKOH/g)の1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートジオール(A2’−1)120部、Mnが1,979(水酸基価=57.5mgKOH/g)の3−メチル−1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール(モル比:85/15)共重合ポリカーボネートジオール(A2−2)80部、1,4−ブタンジオール(C−2)12.7部、MDI(B−1)66.5部及びDMF652部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で15時間反応させ、樹脂濃度30重量%、粘度86,000mPa・s/20℃、凝固価5.4のポリウレタン樹脂(D’−4)の溶液を得た。
【0098】
比較例5
実施例7と同様の反応容器に、Mnが1,989(水酸基価=56.4mgKOH/g)の1,10−デカンジオール/1,4−ブタンジオール(モル比:71/29)共重合ポリカーボネートジオール(A1−3)[三菱ケミカル(株)製「BENEBiOL NL2070DB」]120部、Mnが2,000(水酸基価=56.1mgKOH/g)の1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートジオール(A2’−1)80部、エチレングリコール(C−1)8.9部、DMPA(G−1)5.02部、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(B−2)56.0部及びアセトン112部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換したのち、攪拌下80℃で12時間反応させ、末端イソシアネート基ウレタンプレポリマーのアセトン溶液を得た。得られた該アセトン溶液を室温まで冷却して、耐候安定化剤としてのIrganox245 2.1部、Tinuvin144 3.5部、Tinuvin900 7.0部、希釈溶剤としてのアセトン742.9部、中和剤としてのトリエチルアミン7.1部を加えた。水583.3部を該アセトン溶液に加えホモミキサーで1分間攪拌して乳化した後、減圧下でアセトンを留去し、室温まで冷却した後に水を加えて固形分40重量%に調整し、ポリウレタン樹脂水性分散体(P’−1)を得た。
【0099】
各実施例で使用したポリカーボネートジオール(A1)、ポリカーボネートジオール(A2)及びポリエステルジオール(A3)の融点及び融解熱量を、下記方法でそれぞれ測定した。また、各実施例で使用したポリカーボネートジオール(A1)、ポリカーボネートジオール(A2)及びポリエステルジオール(A3)を、ポリウレタン樹脂における構成単量体の比率と同じ比率で混合した混合物(AM)を調製し、その融点(Tm)及び融解熱量(ΔH)を測定した。各実施例において、使用したポリカーボネートジオール(A1)の融点(T1)と、混合物(AM)の融点(Tm)との差を求めた。
【0100】
実施例1〜11及び比較例1〜5で得られたポリウレタン樹脂の組成及び物性を表1及び表2にまとめて示した。また、実施例1〜11及び比較例1〜5で得られた各ポリウレタン樹脂を使用して多孔質シート及び無孔膜シートを、以下の方法で作製して、その断面のセル状態、風合い、耐久性及び機械強度を下記評価方法により評価した結果を表1及び表2に示した。
尚、表1及び表2中のジオール及びポリエステルの略号の内容は以下の通りである。
1,10−DD:1,10−デカンジオール[アルカンジオール(a1−1)]
1,9−ND:1,9−ノナンジオール[アルカンジオール(a1−2)]
1,4−BD:1,4−ブタンジオール[アルカンジオール(a2−1)又は鎖伸長剤(C)]
3−MPD:3−メチル−1,5−ペンタンジオール[アルカンジオール(a3−1)]
1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール[アルカンジオール(a3−2)]
EG:エチレングリコール[鎖伸長剤(C)]
24625−Y:ポリエチレン・ブチレンアジペートジオール[三洋化成工業(株)製「サンエスター 24625−Y」][ポリエステルジオール(A3−1)]
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート[有機ジイソシアネート(B)]
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート[有機ジイソシアネート(B)]
【0101】
[評価方法]
[1]融点(T1及びTm)並びに融解熱量(ΔH)の測定方法
JIS K7121−1987規定の方法に準じて、示査走査熱量計[メーカー:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)、型番:Q20]を用いて、試料を20℃から10℃/分の速度で80℃まで昇温し、80℃で10分間保持した後、20℃まで10℃/分の速度で冷却し、20℃で10分間保持した後、再び80℃まで10℃/分の速度で昇温する操作を行い、2回目の昇温時の融解ピークから融点と融解ピークの熱収支から融解熱量を求めた。
【0102】
[2]多孔質シートの評価
(1)多孔質シートの作製
ポリウレタン樹脂溶液を固形分濃度15重量%となるようDMFで希釈調製した後、ポリエステルフイルム上に1mm(ウエット厚さ)コーティングし、35℃に調整した30重量%DMF水溶液に30分浸漬して凝固させた。次いで60℃の温水で30分間及び25℃の水で20分間洗浄した。次いで80℃で熱風乾燥して、ポリエステルフイルムからシートを剥がし、多孔質シートを得た。
【0103】
(2)多孔質シートの評価方法
シートの評価は以下のように行った。
断面のセル状態:シート断面を電子顕微鏡[メーカー:(株)キーエンス、型番:VHX−D500/510]で観察した。
風合い:判定は手の触感による官能試験で行った。
耐久性:得られたシートを10cm×10cmに切り取り、30回折り曲げて折れ皺ができたかどうかを目視にて判定した。30回で折れ皺が発生しない場合は、追加で折り曲げて折れ皺が発生した回数を記録して優劣評価を行った。
尚、実施例7及び比較例5のポリウレタン樹脂水性分散体については、以下の方法で得られた無孔膜シートについて、断面のセル状態、風合い及び耐久性について評価した結果を表1及び表2に記載した。
【0104】
[3]無孔膜シートの評価
(1)無孔膜シートの作製
ポリウレタン樹脂溶液を固形分濃度25重量%となるようDMFで希釈調製した後、ポリエステルフイルム上に1mm(ウエット厚さ)コーティングし、60℃の熱風乾燥機で3時間、次いで60℃の減圧乾燥機で3時間乾燥させて、ポリエステルフイルムからシートを剥がし、無孔膜シートを得た。
ポリウレタン樹脂水性分散体(P)から得られる無孔膜シートの作製方法は以下の通りである。実施例7及び比較例5の水性分散体の場合は、ポリウレタン樹脂水性分散体(P)を10cm×20cm×0.1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量のポリウレタン樹脂水性分散体を流し込み、室温で12時間、循風乾燥機で105℃で3時間加熱乾燥することによって無孔膜シートを得た。
【0105】
(2)100%ひずみ応力、破断強度及び弾性回復率の評価方法
上記で得られた無孔膜シートについて、JIS K7161−1:2014に従って引っ張り試験を行い、100%ひずみ応力及び破断強度を測定した。100%応力が低いほど風合いが柔軟な多孔質シートが得られる。弾性回復率は作製したフィルムを縦80mm×横10mmの短冊状の試験片を切り出して標線間距離が50mmとなるように標線をつけ、この試験片を100%ひずみ応力、破断強度を測定した際に使用した引張り試験機のチャックにセットして、25℃の雰囲気下、200mm/分の一定速度で標線間の距離が150mmになるまで伸長後、2分保持し、続いて、伸長前のチャック間の距離まで戻す操作を行い、応力がゼロになったときの標線間の距離(M
1:単位=mm)を求めて、次式から弾性回復率を算出した。
弾性回復率(%)=100×(150−M
1)/(150−50)
この値が大きい程、折れ皺が付きにくく、耐久性に優れる多孔質シートが得られる。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】