(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、
前記吸収体が、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子を含む、吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
吸水性樹脂粒子の液透過比率Aは、下記式によって算出される。一実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、0%を超えて60%以下の液透過比率Aを示す。
液透過比率A[%]=(吸水量B[g/g]/吸水量C[g/g])×100
吸水量Bは、無加圧下のDW法によって、スパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を1.00gの吸水性樹脂粒子に吸収させたときに、吸水性樹脂粒子が、吸収を開始してから5分後まで吸収する、当該吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である。
【0014】
吸水量Bを測定するために用いられるスパンボンド不織布は、単位面積当たりの質量が、11〜15g/m
2である。より詳細には、吸水量Bを測定するために用いられるスパンボンド不織布は、親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成された不織布であって、スパンボンド層、メルトブロー層、メルトブロー層及びスパンボンド層の4層構成を有し、これらがこの順で積層された積層体である。
【0015】
図1は、吸水量Bを測定する方法を示す模式図である。
図1に示される測定装置は、無加圧DW値を測定するための装置と同様の構成を有しており、ビュレット部2、導管5、測定台13、スパンボンド不織布15、架台11、及びクランプ3を有する。ビュレット部2は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部2はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部2のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0016】
吸水量Bは、温度25℃、湿度50±10%の環境下で以下の工程を含む方法によって測定される。
(1)ビュレット部2のコック22とコック24を閉め、25℃の生理食塩水50(濃度0.9質量%の食塩水)をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れる。生理食塩水の濃度0.9質量%は、生理食塩水の質量を基準とする濃度である。
(2)ゴム栓23でビュレット管21の開口を密栓した後、コック22及びコック24を開ける。気泡が入らないように、導管5内部を生理食塩水50で満たす。
(3)貫通孔13a内に到達した生理食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整する。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とする。
(4)測定台13上の貫通孔13aの近傍にてスパンボンド不織布15を敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置く。このシリンダー内に、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを投入する。
(5)シリンダーを注意深く取り除き、スパンボンド不織布15の中央部の円状の領域に、吸水性樹脂粒子10aを配置する。次いで、吸水性樹脂粒子10aが配置されたスパンボンド不織布15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始する。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とみなす。
(6)ビュレット管21内の生理食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸収した生理食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取る。吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して5分後の生理食塩水50の減量分Wc(g)を読み取る。Wcと生理食塩水の密度(1.0028g/mL)から、下記式により吸水量Bを求める。吸水量Bは、吸収された生理食塩水の吸水性樹脂粒子1.00g当たりの質量である。
吸水量B[g/g]=Wc×1.0028/1.00
【0017】
吸水量Cは、2.0gの吸水性樹脂粒子が500gの生理食塩水中で60分間かけて膨潤したときに吸収する、吸水性樹脂粒子1g当たりの生理食塩水の質量である。吸水量Cは、温度25℃、湿度50±10%の環境下で以下の工程を含む方法によって測定される。
(1)内容積500mLのビーカー中で生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)500gを600rpmで攪拌し、そこに吸水性樹脂粒子2.0gを分散させる。
(2)生理食塩水を攪拌した状態で60分間放置し、それにより吸水性樹脂粒子を膨潤させる。
(3)目開き75μm標準篩を用いたろ過により膨潤ゲルを取り出す。
(4)取り出された膨潤ゲルが載った篩いを、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾け、その状態で、30分間放置することにより余剰の水分を除去する。
(5)膨潤ゲルが載った篩いの質量Wb(g)を測定する。Wbと予め測定した篩の質量Wa(g)から、下の式により、吸水量Cを求める。
吸水量C=(Wb−Wa)/2.0
【0018】
液透過比率Aが適度に小さいことは、吸水性樹脂粒子が過剰量の生理食塩水との接触によって十分に生理食塩水を吸収したときの吸水量Cと比較して、吸水性樹脂粒子がスパンボンド不織布を介して供給される生理食塩水を吸収したときの吸水量Bが小さいことを意味する。吸水量Bの測定において、比較的早い段階で生理食塩水の吸水様態が大幅に減速傾向となり、その結果、5分経過後の吸水量Bが小さい値にとどまることがある。この理由は明確ではないが、本発明者は、スパンボンド不織布と特定の吸水性樹脂粒子との組み合わせにおいて、予期せず液体の吸収が適度に局所的な吸収様態になるのではないかと推察している。したがって、液透過比率Aが60%以下のように小さいことは、スパンボンド不織布を介して生理食塩水を吸収するときの、吸水性樹脂粒子の初期の吸水速度がある程度以上に大きいことを意味すると考えられ、そのことが、スパンボンド不織布を含む液体透過シートの内側に吸水性樹脂粒子が配置された吸収性物品からの液漏れ抑制に寄与するものと考えられる。
【0019】
液漏れ抑制の観点から、液透過比率Aは、50%以下であってもよい。液透過比率Aは、1%以上、5%以上、又は8%以上であってもよい。吸水量Cは、40〜65g/gであってもよい。
【0020】
吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量(以下「荷重下吸水量」ということがある。)が、20mL/g以上であってもよい。荷重下吸水量が大きいと、吸収性物品の装着者の荷重を受けた状態でも、高い吸水能力を維持することができる。同様の観点から、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量が、25mL/g以上、又は30mL/g以上であってもよく、50mL/g以下、又は45mL/g以下であってもよい。
【0021】
吸水性樹脂粒子の形状は、例えば略球状、破砕状、又は顆粒状であってもよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、各々が単一の粒子からなる形態のほかに、微細な粒子(一次粒子)が凝集した形態(二次粒子)であってもよい。本吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250〜850μm、300〜700μm、又は、300〜600μmであってよい。吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0022】
吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。
【0023】
吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法を適用してもよい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0024】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であってもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸及びその塩、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋の工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0025】
工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N−ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0026】
エチレン性不飽和単量体は、水溶液として重合反応に用いることができる。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下、25〜70質量%、又は30〜55質量%であってもよい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0027】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体として、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様。)に対して70〜100モル%であってよく、80〜100モル%、90〜100モル%、95〜100モル%、又は100モル%であってもよい。(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であってよく、80〜100モル%、90〜100モル%、95〜100モル%、又は100モル%であってもよい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0028】
エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和してから、単量体溶液を重合反応に用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性(吸水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10〜100モル%、50〜90モル%、又は60〜80モル%であってもよい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0029】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0030】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0031】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでもよい。得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル(例えばショ糖ステアリン酸エステル)を含んでもよい。
【0032】
界面活性剤の量は、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部、0.08〜5質量部、又は0.1〜3質量部であってもよい。
【0033】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤は、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び、酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0034】
高分子系分散剤の量は、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部、0.08〜5質量部、又は0.1〜3質量部であってもよい。
【0035】
炭化水素分散媒は、炭素数6〜8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6〜8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、n−オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、trans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0036】
工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、炭化水素分散媒は、n−ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n−ヘプタン及び異性体の炭化水素75〜85%含有)を用いてもよい。
【0037】
炭化水素分散媒の量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30〜1000質量部、40〜500質量部、又は50〜300質量部であってもよい。炭化水素分散媒の量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0038】
ラジカル重合開始剤は水溶性であってもよい。水溶性ラジカル重合開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0039】
ラジカル重合開始剤の量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005〜0.01モルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.00005モル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の量が0.01モル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0040】
例示されたラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0041】
重合反応の際、単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0042】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。重合時の攪拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0043】
重合の際に自己架橋による架橋が生じ得るが、更に内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”−トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の,重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物であってもよく、ジグリシジルエーテル化合物であってもよい。内部架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0044】
内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0ミリモル以上、0.02ミリモル以上、0.03ミリモル以上、0.04ミリモル以上、又は0.05ミリモル以上であってもよく、0.1モル以下であってもよい。
【0045】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤等を含む水相と、炭化水素系分散剤と必要に応じて界面活性剤、高分子系分散剤等を含む油相を混合した状態において攪拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0046】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に、高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0047】
得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行ってもよい。
【0048】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2段又は3段で行ってもよい。
【0049】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行ってもよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行ってもよい。
【0050】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めると共に、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20〜150℃、又は40〜120℃であってもよい。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲル状重合体の状態で得られる。
【0051】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に架橋剤を添加して加熱することで、重合後架橋を施してもよい。重合後架橋を行なうことで含水ゲル状重合体の架橋度を高め、それにより吸水性樹脂粒子の吸水特性を更に向上させることができる。
【0052】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。重合後後架橋のための架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物であってもよい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
重合後架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより好適な吸水特性を示すようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0〜0.03モル、0〜0.01モル、又は0.00001〜0.005モルであってもよい。
【0054】
重合後架橋のための架橋剤は、エチレン性不飽和単量体の重合反応後に反応液に添加される。多段重合の場合、多段重合後に重合後架橋のための架橋剤を添加してもよい。重合時および重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋のための架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加してもよい。
【0055】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分が除去される。水分の除去する乾燥により、エチレン性不飽和単量体の重合体を含む重合体粒子が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で共沸蒸留により水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。
【0056】
重合反応時の攪拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤が、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0057】
逆相懸濁重合において、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に凝集剤を予め分散させてから、これを、攪拌下で、含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合してもよい。
【0058】
凝集剤の量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001〜1質量部、0.005〜0.5質量部、又は0.01〜0.2質量部であってもよい。凝集剤の量がこれら範囲内であることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0059】
重合反応は、攪拌翼を有する各種攪拌機を用いて行うことができる。攪拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。平板翼は、軸(攪拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(攪拌部)とを有している。さらに、平板部は、スリット等を有していてもよい。攪拌翼として平板翼を用いると、形成される重合体粒子における重合体の架橋の均一性が高くなる傾向がある。架橋の均一性が高い重合体粒子を含む吸水性樹脂粒子は、適度に低い液透過比率Aを示す傾向がある。
【0060】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われてもよい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。表面架橋される含水ゲル状重合体の含水率が、5〜50質量%、10〜40質量%、又は15〜35質量%であってもよい。含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えることで算出される含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0061】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。表面架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。表面架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤は、ポリグリシジル化合物であってもよく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0062】
表面架橋剤の量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001〜0.02モル、0.00005〜0.01モル、又は0.0001〜0.005モルであってもよい。表面架橋剤の量が0.00001モル以上であると、吸水性樹脂粒子の表面部分における架橋密度が充分に高められ、吸水性樹脂粒子のゲル強度を高めやすい。表面架橋剤の量が0.02モル以下であると、吸水性樹脂粒子の吸水量を高めやすい。
【0063】
表面架橋後、水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子の乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0064】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分は、流動性向上剤(滑剤)であってもよい。流動性向上剤は無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0065】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の量の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。無機粒子を多く含む吸水性樹脂粒子は、より小さな液透過比率Aを示す傾向がある。ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径が、0.1〜50μm、0.5〜30μm、又は1〜20μmであってもよい。ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。
【0066】
一実施形態に係る吸収体は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子を含有する。本実施形態に係る吸収体は、繊維状物を含有することが可能であり、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を含む混合物である。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された構成であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた構成であってもよい。
【0067】
繊維状物としては、微粉砕された木材パルプ;コットン;コットンリンター;レーヨン;セルロースアセテート等のセルロース系繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維;これらの繊維の混合物などが挙げられる。繊維状物の平均繊維長は、通常、0.1〜10mmであり、0.5〜5mmであってよい。繊維状物は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。繊維状物としては、親水性繊維を用いることができる。
【0068】
吸収体における吸水性樹脂粒子の質量割合は、吸水性樹脂粒子及び繊維状物の合計に対して、2〜100質量%、10〜90質量%又は20〜80質量%であってよい。
【0069】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。接着性バインダーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0070】
熱融着性合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の全融型バインダー;ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイドや芯鞘構造からなる非全融型バインダーなどが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着することができる。
【0071】
ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との混合物が挙げられる。
【0072】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2ーエチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び、酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体の重合物が挙げられる。
【0073】
吸収体は、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、抗菌剤、香料等を含有してもよい。吸水性樹脂粒子が無機粒子を含む場合、吸収体は吸水性樹脂粒子中の無機粒子とは別に無機粉末を含んでいてもよい。
【0074】
吸収体の形状は、特に限定されず、例えばシート状であってよい。吸収体の厚さ(例えば、シート状の吸収体の厚さ)は、例えば0.1〜20mm、0.3〜15mmであってよい。
【0075】
一実施形態に係る吸収性物品は、本実施形態に係る吸収体を備える。本実施形態に係る吸収性物品は、吸収体を保形するコアラップ;吸液対象の液が浸入する側の最外部に配置される液体透過性シート;吸液対象の液が浸入する側とは反対側の最外部に配置される液体不透過性シート等が挙げられる。吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生材料(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0076】
図2は、吸収性物品の一例を示す断面図である。
図2に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性シート30と、液体不透過性シート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性シート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び、液体透過性シート30がこの順に積層されている。
図2において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。
【0077】
吸収体10は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子10aと、繊維状物を含む繊維層10bと、を有する。吸水性樹脂粒子10aは、繊維層10b内に分散している。
【0078】
コアラップ20aは、吸収体10に接した状態で吸収体10の一方面側(
図2中、吸収体10の上側)に配置されている。コアラップ20bは、吸収体10に接した状態で吸収体10の他方面側(
図2中、吸収体10の下側)に配置されている。吸収体10は、コアラップ20aとコアラップ20bとの間に配置されている。コアラップ20a,20bとしては、ティッシュペーパー、不織布等が挙げられる。コアラップ20a及びコアラップ20bは、例えば、吸収体10と同等の大きさの主面を有している。
【0079】
液体透過性シート30は、吸収対象の液が浸入する側の最外部に配置されている。液体透過性シート30は、コアラップ20aに接した状態でコアラップ20a上に配置されている。液体不透過性シート40は、吸収性物品100において液体透過性シート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性シート40は、コアラップ20bに接した状態でコアラップ20bの下側に配置されている。液体透過性シート30及び液体不透過性シート40は、例えば、吸収体10の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性シート30及び液体不透過性シート40の外縁部は、吸収体10及びコアラップ20a,20bの周囲に延在している。
【0080】
吸収体10、コアラップ20a,20b、液体透過性シート30、及び、液体不透過性シート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。
図2に示される吸収体10は、2枚のコアラップ20a,20bの間に挟むことにより、保形されている。吸収体を保形するコアラップによって保形する方法はこれに限られず、例えば、折り畳まれた1枚のコアラップで吸収体を挟んでもよい。コアラップが袋体を形成し、その内部に吸収体が配置されてもよい。
【0081】
液体透過性シート30は、当該技術分野で通常用いられる樹脂又は繊維から形成されたシートであってよい。液体透過性シート30は、吸収性物品に用いられる際の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、並びにレーヨンのような合成樹脂、又はこれら合成樹脂を含む合成繊維を含んでいてもよいし、綿、絹、麻、又はパルプ(セルロース)を含む天然繊維であってもよい。液体透過性シート30の強度を高める等の観点から、液体透過性シート30が合成繊維を含んでいてもよい。合成繊維が特に、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維又はこれらの組み合わせであってよい。これらの素材は、単独で用いられてもよく、2種以上の素材を組み合わせて用いられてもよい。
【0082】
液体透過性シート30は、不織布、多孔質シート、又はこれらの組み合わせであってよい。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたシートである。不織布は、短繊維(すなわちステープル)で構成される不織布(短繊維不織布)であってもよく、長繊維(すなわちフィラメント)で構成される不織布(長繊維不織布)であってもよい。ステープルは、これに限定されないが、一般的には数百mm以下の繊維長を有していてよい。
【0083】
液体透過性シート30は、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又はこれらから選ばれる2種以上の不織布の積層体であってよい。液体透過性シート30が、スパンボンド不織布を含んでいてもよい。
【0084】
液体透過性シート30は、スパンボンド不織布であることが好ましい。スパンボンド不織布は、単層のスパンボンド不織布であってもよいし、少なくとも単層のスパンボンド不織布をスパンボンド層として有する複層の積層体不織布であってもよい。積層体のスパンボンド不織布の場合、通常、その片方又は両方の最表層がスパンボンド層である。積層体のスパンボンド不織布の積層構成の例としては、スパンボンド層/スパンボンド層(SS不織布)、スパンボンド層/メルトブロー層/スパンボンド層(SMS不織布)、及びスパンボンド層/メルトブロー層/メルトブロー層/スパンボンド層(SMMS不織布)が挙げられる。これら積層構成では、各層が記載順に積層される。
【0085】
液体透過性シート30として用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能の観点から、適度な親水性を有していてもよい。その観点から、液体透過性シート30は、紙パルプ技術協会による紙パルプ試験方法No.68(2000)の測定方法に従って測定される親水度が5〜200の不織布であってもよい。不織布の上記親水度は、10〜150であってもよい。紙パルプ試験方法No.68の詳細については、例えばWO2011/086843号を参照することができる。
【0086】
親水性を有する不織布は、例えば、レーヨン繊維のように適度な親水度を示す繊維を含んで形成されたものでもよいし、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維を親水化処理して得た繊維によって形成されたものであってもよい。親水化処理された疎水性の化学繊維を含む不織布を得る方法としては、例えば、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものを用いてスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、疎水性の化学繊維を用いて得たスパンボンド不織布に親水化剤を含浸させる方法が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等が用いられる。
【0087】
液体透過性シート30は、吸収性物品に、良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与できる観点、及び吸収性物品の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きい不織布であってもよい。液体透過性シート30の目付量(単位面積当たりの質量)は、5〜200g/m
2、8〜150g/m
2、又は10〜100g/m
2であってもよい。液体透過性シート30の厚さは、20〜1400μm、50〜1200μm、又は80〜1000μmであってもよい。
【0088】
液体不透過性シート40は、吸収性物品100において液体透過性シート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性シート40は、コアラップ20bに接した状態でコアラップ20bの下側に配置されている。液体不透過性シート40は、例えば、吸収体10の主面よりも広い主面を有しており、液体不透過性シート40の外縁部は、吸収体10及びコアラップ20a,20bの周囲に延在している。液体不透過性シート40は、吸収体10に吸収された液体が液体不透過性シート40側から外部へ漏れ出すのを防止する。
【0089】
液体不透過性シート40としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるシート、耐水性のメルトブロー不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布等の不織布からなるシート、これらの合成樹脂と不織布(例えば、スパンボンド不織布、スパンレース不織布)との複合材料からなるシートなどが挙げられる。液体不透過性シート40は、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することができる等の観点から、通気性を有していてもよい。液体不透過性シート40として、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とする合成樹脂からなるシートを用いることができる。吸収性物品の着用感を損なわないよう、柔軟性を確保する観点から、液体不透過性シート40は、例えば、目付量が10〜50g/m
2の合成樹脂からなるシートであってよい。
【0090】
吸収性物品100は、例えば、吸収体10をコアラップ20a,20bの間に配置し、これらを液体透過性シート30及び液体不透過性シート40の間に配置することを含む方法により、製造することができる。液体不透過性シート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び液体透過性シート30の順に積層された積層体が、必要により加圧される。
【0091】
吸収体10は、吸水性樹脂粒子10aを繊維状物と混合することにより形成される。上記液透過比率Aが0%を超えて60%以下である吸水性樹脂粒子を選別し、これを選択的に用いて吸収体10を形成してもよい。
【0092】
本実施形態によれば、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子、吸収体又は吸収性物品を用いた吸液方法を提供することができる。本実施形態に係る吸液方法は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子、吸収体又は吸収性物品に吸液対象の液を接触させる工程を備える。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0094】
1.吸水性樹脂粒子の作製
実施例1
<第1段目の重合反応>
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、攪拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。攪拌機に
図3に概形を示す攪拌翼200を取り付けた。攪拌翼200は、軸200a及び平板部200bを備えている。平板部200bは、軸200aに溶接されると共に、湾曲した先端を有している。平板部200bには、軸200aの軸方向に沿って延びる4つのスリットSが形成されている。4つのスリットSは平板部200bの幅方向に配列されている。内側の二つのスリットSの幅は1cmである。外側二つのスリットSの幅は0.5cmである。平板部200bの長さは約10cmであり、平板部200bの幅は約6cmである。
【0095】
準備したセパラブルフラスコ内でn−ヘプタン293g、及び分散剤(無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を、攪拌機で攪拌しつつ、80℃まで昇温することにより、分散剤をn−ヘプタンに溶解させた。形成された反応液を50℃まで冷却した。
【0096】
内容積300mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れた。ビーカーを外部から冷却しつつ、アクリル酸水溶液に20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。中和後のアクリル酸水溶液に、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HECAW−15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、及び過硫酸ナトリウム0.0162g(0.068ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えてこれらを溶解させて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0097】
第1段目の単量体水溶液を、上述のセパラブルフラスコ内の反応液に添加し、反応液を10分間攪拌した。次いで、n−ヘプタン6.62g及びショ糖ステアリン酸エステル(HLB:3、三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS−370)0.736gを含む界面活性剤溶液を反応液に添加し、攪拌翼の回転数を425rpmとして反応液を攪拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分間かけて重合反応を進行させた。この重合反応により、含水ゲル状重合体を含む第1段目の重合スラリー液を得た。
【0098】
<第2段目の重合反応>
内容積500mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.44モル)を入れた。ビーカーを外部より冷却しつつ、アクリル酸水溶液に対して濃度27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、アクリル酸水溶液に、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸ナトリウム0.0226g(0.095ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えてこれらを溶解し、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0099】
セパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を、攪拌翼の回転数を650rpmとして攪拌しながら25℃に冷却した。そこに、第2段目の単量体水溶液の全量を添加し、続いて系内を窒素で30分間かけて置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分かけて第2段目の重合反応を進行させた。
【0100】
第2段目の重合反応後の反応液に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを攪拌下で添加した。その後、125℃の油浴にセパラブルフラスコを浸漬し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、239.6gの水を系外へ抜き出した。その後、反応液に表面架橋剤として濃度2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、反応液を83℃で2時間保持することにより、表面架橋剤による架橋反応を進行させた。
【0101】
表面架橋剤による架橋反応後の反応液から、125℃での加熱によりn−ヘプタンを留去して、重合体粒子の乾燥品を得た。得られた重合体粒子に目開き850μmの篩を通過させた。その後、重合体粒子の質量に対して2.0質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子と混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子230.5gを得た。得られた吸水性樹脂粒子の中位粒子径は367μmであった。
【0102】
実施例2
第1段目の水性液の調製において使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0648g(0.272ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.0156g(0.090ミリモル)に変更したこと、第1段目重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機回転数を350rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0907g(0.381ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.0129g(0.074ミリモル)に変更したこと、並びに、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を254.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、235.3gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は365μmであった。
【0103】
実施例3
実施例1と同様の還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、攪拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。準備したセパラブルフラスコ内でn−ヘプタン536.3g、及び分散剤(ソルビタンモノラウレート、日油株式会社製、ノニオンLP−20R、HLB値8.6)1.237gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を、攪拌機で攪拌しつつ、50℃まで昇温することにより、分散剤をn−ヘプタンに溶解させた。形成された反応液を40℃まで冷却した。
【0104】
内容積500mLの三角フラスコに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液103.1g(1.15モル)を入れた。三角フラスコを外部から氷冷しつつ、アクリル酸水溶液に濃度20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液165.3gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。中和後のアクリル酸水溶液に、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.10g(0.420ミリモル)を加え、単量体水溶液を得た。
【0105】
準備した単量体水溶液を、セパラブルフラスコ内の上述の反応液に添加し、フラスコ内を窒素で十分に置換した。その後、攪拌翼の回転数を300rpmとして反応液を攪拌しながら、セパラブルフラスコを70℃の水浴中に60分間保持し、それにより重合反応を進行させた。
【0106】
重合反応後の反応液を攪拌翼の回転数を650rpmとして攪拌しながら、反応液に、非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)0.103g及びn−ヘプタン100gを含む分散液を添加し、攪拌を更に10分間継続した。その後、反応液を含むフラスコを125℃の油浴に浸漬し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、116.5gの水を系外へ抜き出した。続いて、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液9.28g(1.07ミリモル)を反応液に添加し、反応液を内温83±2℃で2時間保持することにより、表面架橋剤による架橋反応を進行させた。
【0107】
表面架橋剤による架橋反応後の反応液からn−ヘプタンを留去して、0.1質量%
の非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子の乾燥品を得た。吸水性樹脂粒子の乾燥品に目開き850μmの篩を通過させて、吸水性樹脂粒子96.5gを得た。得られた吸水性樹脂粒子の中位粒子径は420μmであった。
【0108】
比較例1
攪拌翼を翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有するものに変更したこと、第1段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に変更したこと、第1段目の重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機回転数を550rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液の調製後に、セパラブルフラスコ系内を25℃に冷却する際の攪拌機回転数を1000rpmに変更したこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を239.2gに変更したこと、並びに、重合体粒子と混合する非晶質シリカの量を重合体粒子質量に対して0.2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、228.1gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は374μmであった。
【0109】
比較例2
攪拌翼を翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有するものに変更したこと、第1段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)に変更したこと、第1段目の重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機回転数を550rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を過硫酸カリウム0.103g(0.381ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液の調製後に、セパラブルフラスコ系内を25℃に冷却する際の攪拌機回転数を1000rpmに変更したこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を257.7gに変更したこと、並びに、重合体粒子と混合する非晶質シリカの量を重合体粒子質量に対して0.2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、228.0gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は352μmであった。
【0110】
比較例3
攪拌翼を翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有するものに変更したこと、第1段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル添加量を0.0046g(0.026ミリモル)に変更したこと、第1段目の重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機回転数を550rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液の調製後に、セパラブルフラスコ系内を25℃に冷却する際の攪拌機回転数を1000rpmに変更したこと、並びに、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を216.7gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、223.3gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は345μmであった。
【0111】
比較例4
重合体粒子と混合する非晶質シリカの量を重合体粒子質量に対して0.2質量%に変更したこと以外は比較例3と同様にして、229.0gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は348μmであった。
【0112】
2.評価
2−1.中位粒子径
吸水性樹脂粒子50gを中位粒子径測定用に用いた。測定は温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で行なわれた。JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。最上部の篩に、吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に、篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0113】
2−2.荷重下吸水量
吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量を、温度25℃±2℃、湿度50±10%の環境下で、
図4に示す測定装置Yを用いて測定した。測定装置Yは、ビュレット部71、導管72、測定台73、及び、測定台73上に置かれた測定部74から構成される。ビュレット部71は、鉛直方向に伸びるビュレット71aと、ビュレット71aの上端に配置されたゴム栓71bと、ビュレット71aの下端に配置されたコック71cと、コック71cの近傍において一端がビュレット71a内に伸びる空気導入管71dと、空気導入管71dの他端側に配置されたコック71eとを有している。導管72は、ビュレット部71と測定台73との間に取り付けられている。導管72の内径は6mmである。測定台73の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管72が連結されている。測定部74は、円筒74a(アクリル樹脂(プレキシグラス)製)と、円筒74aの底部に接着されたナイロンメッシュ74bと、重り74cとを有している。円筒74aの内径は20mmである。ナイロンメッシュ74bの目開きは75μm(200メッシュ)である。測定時にはナイロンメッシュ74b上に測定対象の吸水性樹脂粒子75が均一に撒布される。重り74cの直径は19mmであり、重り74cの質量は59.8gである。重り74cは、吸水性樹脂粒子75上に置かれ、吸水性樹脂粒子75に対して2.07kPaの荷重を加えることができる。
【0114】
測定装置Yの円筒74aの中に0.100gの吸水性樹脂粒子75を入れた後、重り74cを載せて測定を開始した。吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水と同容積の空気が、空気導入管より、速やかにかつスムーズにビュレット71aの内部に供給されるため、ビュレット71aの内部の生理食塩水の水位の減量が、吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水量となる。ビュレット71aの目盛は、上から下方向に0mLから0.5mL刻みで刻印されている。生理食塩水の水位として、吸水開始前のビュレット71aの目盛りVaと、吸水開始から60分後のビュレット71aの目盛りVbとを読み取り、下記式より荷重下吸水量(2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量)を算出した。
荷重下吸水量[mL/g]=(Vb−Va)/0.1
【0115】
2−3.吸水量C
吸水量Cは、温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で測定した。まず、内容積500mLのビーカーに、生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)500gを量り取った。600rpmで攪拌しながら、吸水性樹脂粒子2.0gを、ママコが発生しないように生理食塩中に分散させた。攪拌した状態で60分間放置し、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。ビーカーの内容物を目開き75μm標準篩を用いてろ過した。取り出された膨潤ゲルが載った篩いを、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾け、その状態で30分間放置することにより余剰の水分を除去した。膨潤ゲルが載った篩いの質量Wb(g)を測定した。Wbと、予め測定した篩の質量Wa(g)から、下の式により、吸水量Cを求めた。
吸水量C[g/g]=(Wb−Wa)/2.0
【0116】
2−4.吸水量B
図1に示す測定装置を用いて、温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で吸水量Bを測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。まずビュレット部2のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された生理食塩水50(濃度0.9質量%の食塩水)をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。ゴム栓23でビュレット管21の開口を密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を生理食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した生理食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0117】
親水化処理されたポリプロピレン繊維によって形成されたスパンボンド不織布(SMMS不織布、目付量13g/m
2、Toray Polytech(Nantong)Co.,Ltd.製、LIVSEN(商品名)、1.6Dtex)を準備した。100mm×100mmのサイズのスパンボンド不織布15を、測定台13上の貫通孔13aの近傍に敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置いた。このシリンダー内に、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを均一に散布した。その後、シリンダーを注意深く取り除き、スパンボンド不織布15の中央部の円形の領域に吸水性樹脂粒子10aを均一に載置した。次いで、吸水性樹脂粒子10aが載置されたスパンボンド不織布15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0118】
ビュレット管21内の生理食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した生理食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して5分後の生理食塩水50の減量分Wc(mL)を読み取った。Wcと生理食塩水の密度(1.0028g/mL)から、下記式により吸水量Bを求めた。吸水量Bは、吸収された生理食塩水の吸水性樹脂粒子1.00g当たりの質量である。
吸水量B[g/g]=Wc×1.0028/1.00
【0119】
2−5.液透過比率A
吸水量B、及び吸水量Cから、下記式により液透過比率Aを求めた。
液透過比率A[%]=(吸水量B/吸水量C)×100
【0120】
2−6.吸収性物品の作製とその評価
気流型混合装置(有限会社オーテック社製、パッドフォーマー)を用いて、吸水性樹脂粒子10.0g及び粉砕パルプ9.5gを空気抄造によって均一混合することにより、32cm×12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。吸収体の上下を、吸収体と同じ大きさの2枚のスパンボンド不織布で挟んだ。スパンボンド不織布として、吸水量Bの測定に用いたスパンボンド不織布と同様のものを用いた。その状態で、全体に588kPaの荷重を30秒間加えることにより、試験用のコアラップ付吸収体を吸収性物品として得た。
【0121】
図5は、吸収性物品の漏れ性を評価する方法を示す模式図である。平坦な傾斜面S
1を有する長さ45cmの支持板1(ここではアクリル樹脂板)を、水平面S
0に対して30±2度に傾斜した状態で架台41によって固定した。支持板1の表面は滑らかであり、支持板1に液体が滞留したり吸収されたりすることはなかった。温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で、固定された支持板1の傾斜面S
1上に、試験用の吸収性物品100の上端を、吸収性物品100の長手方向が支持板1の長手方向に沿う向きとなるように粘着テープで貼り付けた。吸収性物品100の下端は支持板1に貼り付けなかった。次いで、吸収性物品100中の吸収体の中央から8cm上方の位置に目印をマークした。滴下ロート42は内径3.4mmの投入口を有していた。滴下ロート42を、その投入口の先端が目印から鉛直上方で距離10±1mmになる位置で架台41に対して固定した。滴下ロート42のコックの絞りを、3mL/秒の速度で液が投入されるように調整した。支持板1の下方に天秤43を配置し、天秤43に金属製トレイ44を載せた。
【0122】
天秤43を起動させ、表示をゼロに補正した後、滴下ロート42に、25±1℃に調整した試験液55(人工尿)80mLを一度に投入した。滴下ロート42から滴下され、吸収性物品100に吸収されずに流れ落ちて金属製トレイ44に入った試験液の重量を、1回目の漏れ量[g]として記録した。1回目の試験液投入開始から10分間隔で、1回目と同様に2回目、及び3回目の試験液を投入し、それぞれの漏れ量[g]を記録した。漏れ量の数値が小さいほど、吸収性物品の着用時における液体漏れ量が少ないと判断される。試験液として用いられた人工尿は以下の成分を混合して調製した。
・イオン交換水:5919.6g
・NaCl:60.0g
・CaCl2・H2O:1.8g
・MgCl2・6H2O:3.6g
・食用青色1号(着色用):0.15g
・トリトン X−100(1%)(オクチルフェノールエトキシレート水溶液):15.0g
【0123】
【表1】
【0124】
表1に評価結果を示す。液透過比率Aが特定の数値を示す実施例の吸水性樹脂粒子を用いて作製された吸収性物品は、漏れ性の評価試験において3回目の試験液投入まで少量の液漏れしか発生させなかった。