(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
吸収性コアと、前記吸収性コアに接触するシート部材を備えた吸収体を有し、前記シート部材が、長繊維を含む長繊維不織布層と、短繊維を含む短繊維層を備えることを特徴とする吸収性物品
【0010】
このような吸収性物品によれば、吸収体の表面が受けた排泄物を、短繊維の繊維同士の隙間に設けられた空間を通って、より広い範囲に拡散させて、吸収性コアのより広い範囲で吸収させやすくなる。
【0011】
かかる吸収性物品であって、前記吸収体より肌側に肌側シートを有し、前記シート部材が少なくとも前記吸収性コアと前記肌側シートとの間に設けられ、前記短繊維が前記肌側シートに接触可能な位置に配置され、前記長繊維が前記吸収性コアに接触可能な位置に配置されていることが望ましい。
【0012】
このような吸収性物品によれば、肌側シートから移行した排泄物が、短繊維層の繊維の隙間に設けられた空間を通ることで、吸収体の肌側から吸収した排泄物を吸収性コアまで拡散させやすくなる。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記シート部材は、前記吸収性コアの肌側面、非肌側面、及び一対の側面を覆っており、前記シート部材が、前記肌側シートと接触する部分において、前記シート部材同士が重なる部分を有することが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、シート部材同士が接触する部分について、短繊維層の繊維の隙間に設けられた空間を嵩高に設けることができるため、肌側シートから吸収性コア側に排泄物を引き込みやすくなる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、厚さ方向に前記吸収体と前記肌側シートが圧搾された圧搾部を有し、前記長繊維の融点より前記短繊維の融点の方が低いことが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、圧搾部において、肌側シートと当接する短繊維層はより低い温度で圧搾することができ、圧搾された形状を維持しやすくなる。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記吸収体より肌側に肌側シートを有し、前記シート部材が少なくとも前記吸収性コアと前記肌側シートとの間に設けられ、前記長繊維が前記肌側シートに接触可能な位置に配置され、前記短繊維が前記吸収性コアに接触可能な位置に配置されていることが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、短繊維層の繊維の隙間に、吸収性コアの繊維や物質が入り込みやすくなり、吸収性コアの形状を維持しやすくなる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性コアは、パルプ繊維と高分子吸収剤を備えることが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、短繊維層の繊維の隙間に、親水性繊維(パルプ繊維)や高分子吸収剤が入り込みやすくなり、吸収性コアの形状を維持しやすくなる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、隣接する前記短繊維同士の間隔の平均値が、高分子吸収剤の直径より大きいことが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、短繊維層の繊維の隙間に高分子吸収剤が入り込みやすくなるため、高分子吸収剤が吸収性コアから脱落してしまう恐れを軽減させることができる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前記シート部材は、前記吸収性コアの肌側面、非肌側面、及び一対の側面を覆っており、前記吸収体は、前記吸収体を厚さ方向に見て、前記吸収性コアが設けられていない部分を有し、前記吸収体は、前記吸収性コアが設けられていない部分に、前記厚さ方向に前記シート部材同士が圧搾された圧搾部を有することが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、圧搾部においてシート部材の短繊維同士が接合されることで、吸収性コアに含まれる物質によって、圧搾による接合が阻害されてしまう恐れを軽減させることができる。
【0025】
かかる吸収性物品であって、前記短繊維層は、不織布ではないことが望ましい。
【0026】
このような吸収性物品によれば、短繊維層の繊維同士の隙間を設けやすくなり、排泄物をより拡散させやすくなる。
【0027】
かかる吸収性物品であって、前記シート部材と前記吸収性コアとが接着剤で接合されたコア接合部を有し、前記シート部材は、前記長繊維不織布層と前記短繊維とが接着剤で接合された繊維接合部を備え、前記吸収体を厚さ方向に見た場合に、前記コア接合部と前記繊維接合部とが重ならない部分を有することが望ましい。
【0028】
このような吸収性物品によれば、接着剤によって排泄物の吸収が阻害されてしまう恐れを軽減させることができる。
【0029】
かかる吸収性物品であって、前記長繊維不織布層は、親水性繊維を含まないことが望ましい。
【0030】
このような吸収性物品によれば、親水性繊維を含む場合より排泄物をより拡散させやすくなる。
【0031】
かかる吸収性物品であって、単位体積当たりの前記短繊維の重量が、単位体積当たりの前記長繊維の重量より小さいことが望ましい。
【0032】
このような吸収性物品によれば、単位体積当たりにおいて、短繊維の重量を長繊維より小さくすることで、短繊維層を繊維間の隙間が広く、柔らかい感触にさせやすくなる。
【0033】
かかる吸収性物品であって、前記シート部材は、一方側の面に前記長繊維不織布層を備え、他方側の面に前記短繊維層を備えることが望ましい。
【0034】
このような吸収性物品によれば、シート部材が過度に嵩高くなってしまう恐れを軽減させることができる。
【0035】
かかる吸収性物品であって、前記吸収性物品が軽失禁パッドであることが望ましい。
【0036】
このような吸収性物品によれば、軽失禁パッドの場合でも、吸収体が吸収した排泄物としての尿を、短繊維の繊維同士の隙間に設けられた空間を通って、吸収体のより広い範囲に拡散させやすくなる。
【0037】
===第1実施形態===
以下、本発明に係る吸収性物品として、大人用のパンツ型使い捨ておむつ1(以下、単に「おむつ1」とも呼ぶ)を例に挙げて実施形態を説明する。但し、本発明に係るおむつ1は、乳幼児用のパンツ型使い捨ておむつや、生理用ショーツ、軽失禁パッド、吸収パッド等としても利用可能である。
【0038】
<パンツ型使い捨ておむつ1の構成>
図1は、第1実施形態のパンツ型使い捨ておむつ1(おむつ1)の正面図である。
図2は、展開且つ伸長状態のおむつ1の概略平面図である。
図3は、
図2のC−Cにおける概略断面図である。「展開状態」とは、パンツ型状態のおむつ1の両側部の、腹側胴回り部20の両側側端部と背側胴回り部30の両側側端部の接合をそれぞれ分離し、開いておむつ1全体を平面的に展開した状態である。「伸長状態」とは、おむつ1を構成する各部材を皺なく伸長させた状態である。具体的には、おむつ1を構成する部材(例えば、吸収性本体10等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長させた状態である。
図2等のC−C線は左右方向における中心線である。
【0039】
おむつ1は、
図1のパンツ型状態において、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、胴回り開口部BHと一対の脚回り開口部LHとが形成されている。また、前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。
図2に示す展開状態において、おむつ1は、互いに交差する長手方向と、幅方向と、厚さ方向とを有する。なお、展開状態における上記の幅方向は、パンツ型状態における上記の左右方向と同じ方向である。展開状態の長手方向は、パンツ型状態の上下方向に沿った方向である。また、厚さ方向は、
図3A及び
図3Bに示すように、おむつ1を構成する資材が積層された方向である。厚さ方向において着用者に接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0040】
おむつ1は、吸収性本体10と、腹側胴回り部20と、背側胴回り部30とを有する。パンツ型状態のおむつ1において、吸収性本体10は上下方向に沿って配置されており、上下方向の下端部にて前後に折り曲げられている。前後方向の前側の吸収性本体10の上端部に、非肌側から腹側胴回り部20が接合され、前後方向の後側の吸収性本体10の上端部に、非肌側から背側胴回り部30が接合されている。
【0041】
図2の展開状態のおむつ1において、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、それらの長辺方向がおむつ1の左右方向に沿うように配置されている。そして、左右方向における腹側胴回り部20の中央部に、吸収性本体10の長手方向の一方側(前側)の端部が配置され、左右方向における背側胴回り部30の中央部に、吸収性本体10の長手方向の他方側(後側)の端部が配置されている。
図2の展開状態から、吸収性本体10が長手方向の略中央で二つ折りされ、左右方向における腹側胴回り部20の両側部と、左右方向における背側胴回り部30の両側部とが、溶着等で接合されることにより、パンツ型状態のおむつ1となる。
【0042】
腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、それぞれ、内層シート21,31と、内層シート21,31よりも非肌側に配置された外層シート22,32と、胴回り弾性部材23,33とを有する。胴回り弾性部材23,33は、内層シート21,31と外層シート22,32の間において、上下方向に並んで配置されるとともに、左右方向に伸長状態で固定されている。よって、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、着用者の胴回りにフィットする。
【0043】
吸収性本体10は、左右方向の両側部において、その長手方向(おむつ1の上下方向)に伸縮する側部弾性部材41を備えている。また、吸収性本体10は、左右方向の両側部において、その長手方向に沿う一対の防漏壁部40を備えている。防漏壁部40は、側部弾性部材41によって肌側に起立可能である。
【0044】
また、吸収性本体10は、排泄液を吸収する吸収体11と、吸収体11よりも着用者の肌側に配置された液透過性の肌側シート14と、吸収体11よりも非肌側に配置された液不透過性の非肌側シート15と、防漏壁部シート16とを有する。肌側シート14は、吸収体11を巻き込むように、左右方向の両側部が非肌側に折り返されている。防漏壁部シート16は、非肌側シート15よりも非肌側に配置されるとともに、肌側シート14よりも肌側において防漏壁部40を形成している。
【0045】
吸収体11は、吸収性コア12と、吸収性コア12に接触する、シート部材としてのコアラップシート13を備える。本実施形態では、略矩形状のコアラップシート13の幅方向の略中央部に吸収性コア12を配置し、吸収性コア12の形状を維持するために、幅方向の両端部からコアラップシート13をそれぞれ折り畳むことで吸収体11が設けられる。具体的には、吸収体11は、コアラップシート13の一方の面にホットメルト接着剤等の接着剤を塗布し、接着剤が塗布された面に吸収性コア12を配置し、吸収性コア12とコアラップシート13とを接着剤で接合したコア接合部を形成しつつ、コアラップシート13を折り畳むことで形成される。接着剤は、スパイラルパターン、オメガパターン、波状パターン等の所定のパターンで塗布することができる。なお、幅方向の中央部では、コアラップシート13が厚さ方向に重ねられた重なり部Dを備える。
【0046】
吸収性コア12は、親水性繊維であるパルプ繊維12Pと高分子吸収剤12S(所謂SAPであり、「高吸収性ポリマー」ともいう。)を備え、所定形状に成形したものである。本実施形態において、高分子吸収剤12Sは、直径約350μmの粒子を備える。本実施形態の吸収性コア12は平面視略砂時計形状であるが、これに限らず、例えば平面視矩形状等であっても良い。
【0047】
吸収性コア12は、液透過性のコアラップシート13で被覆されている。コアラップシート13は、短繊維13Sを含む短繊維層SLと、長繊維13Lを含む長繊維不織布層LLを備えた嵩高かつ柔軟なシートである。
図4は、コアラップシート13の模式断面図である。本実施形態では、コアラップシート13は、短繊維層SLと長繊維不織布層LLをそれぞれ1層ずつ有している。短繊維13Sとは、切断加工が施された繊維であり、平均繊維長が15mm以上で、100mm以下の繊維をいう。長繊維13Lとは、平均繊維長が100mmを超える繊維、又はコアラップシート13の長手方向の一端から他端まで連続している繊維をいう。本実施形態では、短繊維13Sとして、ポリプロピレン(PP)繊維を用いて、長繊維13Lとして、ポリエチレン(PE)繊維を用いており、短繊維13S及び長繊維13Lは、いずれも親水性が低い。
【0048】
コアラップシート13の形成について説明する。
まず、繊維状の長繊維13L同士をウォータージェット法により水流で交絡させて長繊維不織布層LLを形成する。長繊維13L同士の交絡方法としては、他にも、スパンレース法やエアスルー法を挙げることができる。交絡後は、長繊維不織布層LLとなる。不織布とは、編み、織りなどの方法によらないで、繊維のままで布状にしたものをいう。
【0049】
続いて、布状の長繊維不織布層LLの表面にホットメルト接着剤等の接着剤を塗布する。この接着剤は、単位面積当たりの塗布量をできるだけ少なくしつつ、全域に亘って塗布することが好ましい。接着剤によって、コアラップシート13が硬くなってしまう恐れを軽減しつつ、続く長繊維不織布層LLと短繊維13Sとをより確実に接合させるためである。
【0050】
接着剤の塗布後に、接着剤が塗布された表面の上から短繊維13Sを配置して、長繊維不織布層LLと短繊維13Sとが接着剤で接合された繊維接合部を設けることで、長繊維不織布層LLと短繊維層SLを備えたシート部材となる。なお、短繊維13Sは、不織布のように布状ではないため、接着剤の上から、パラパラと降らせるように配置する。その後、シート部材を所定の大きさに切断することで、コアラップシート13となる。
【0051】
なお、吸収体11を厚さ方向に見た場合に、長繊維不織布層LLと短繊維13Sとを接着剤で接合した繊維接合部と、吸収性コア12とコアラップシート13とを接着剤で接合したコア接合部とが重ならない部分を有することが好ましい。一般的に、ホットメルト接着剤等の接着剤は、排泄物の吸収を阻害することが多い。そこで、厚さ方向に見た場合に、繊維接合部とコア接合部とを重ならない部分を有することで、厚さ方向に排泄物の移行が可能な部分を設けやすくなり、接着剤によって排泄物の吸収が妨げされてしまう恐れを軽減させることができる。
【0052】
また、コアラップシート13の短繊維層SLは、不織布ではなく、繊維の状態で長繊維不織布層LLに繊維接合部で接合している。そのため、仮に、不織布(布)状の短繊維13Sを長繊維不織布層LLに接合した場合には、短繊維13S全体が長繊維不織布層LLに固定されてしまう一方で、コアラップシート13は、短繊維13Sが繊維の状態で長繊維不織布層LLに接合されるため、短繊維13Sが長繊維不織布層LLに接合された部分と接合されていない部分とを設けやすくなり、短繊維13Sを不織布にした場合よりも繊維同士の間隔を広くすることができ、短繊維13Sのうちの接合されていない部分によって単位体積当たりの短繊維13Sの重量が少なくなり、柔らかい状態となる。コアラップシート13のうち、短繊維層SLが設けられた面は、反対側の長繊維不織布層LLが設けられた面より、隣接する繊維同士の隙間が広い。
【0053】
おむつ1の着用中において、排泄された排泄物は、コアラップシート13を速やかに通過して、吸収性コア12で保持されることが望まれている。そのために、吸収体11に、長繊維不織布層LLと短繊維層SLを備えるコアラップシート13を用いることで、繊維の長さが長繊維13Lより短い短繊維層SLにおいて、短繊維13S同士の間に空間が生じやすいため、その空間を通して、排泄物が幅方向及び長手方向に拡散しやすくなる。これによって、排泄物を吸収性コア12に移行させやすくなり、コアラップシート13で排泄物を保持し続ける恐れを軽減させることができる。
【0054】
本実施形態では、長繊維不織布層LLの両側の面に短繊維層SLを設けるのではなく、コアラップシート13の一方側の面に長繊維不織布層LLを備え、他方側の面に短繊維層SLを備える。短繊維層SLは、短繊維13Sが単位体積当たりの短繊維13Sの重量が少ないことから、コアラップシート13の嵩が高くなってしまう。そのため、コアラップシート13の一方側に短繊維層SLを設ける構成とすることで、コアラップシート13が過度に嵩高くなってしまう恐れを軽減させ、吸収体11が厚くなってしまう恐れを軽減させることができる。
【0055】
また、単位面積当たりの短繊維13Sの重量を、単位面積当たりの長繊維13Lの重量より小さくすることが好ましい。例えば、単位面積当たりの短繊維13Sの重量を15〜30g/m
2とし、単位面積当たりの長繊維13Lの重量を15〜35g/m
2とする。単位面積当たりの短繊維13Sの重量を小さくするほど、短繊維層SLにおける短繊維13S同士の間隔を広げやすくなることから、単位面積当たりの短繊維13Sの重量が単位面積当たりの長繊維13Lの重量より大きい場合より短繊維13S同士の隙間が広がり、短繊維13Sを単位面積当たりの短繊維13Sの重量が少ない、柔らかい状態とさせやすくなる。
【0056】
さらに、長繊維不織布層LLには、例えば、パルプ繊維のような親水性繊維を含まないことがより好ましい。本実施形態では、疎水性繊維のポリプロピレン繊維のみからなる長繊維13Lによる長繊維不織布層LLとしている。長繊維不織布層LLに親水性繊維を含む場合には、コアラップシート13の親水性繊維が液体を保持しやすくなるため、コアラップシート13で排泄物を貯留して、吸収性コア12に排泄物が移行しづらくなり、着用者の肌に排泄物が触れる状態を維持しやすくなってしまう。そのため、長繊維不織布層LLが親水性繊維を含まないことで、長繊維不織布層LLが親水性繊維を含む場合より、排泄物をより拡散させやすくし、吸収性コア12への吸収を促しやすくなる。
【0057】
図3に示すように、コアラップシート13は、長繊維不織布層LLが内側に設けられ、短繊維層SLが外側に設けられている。特に、コアラップシート13のうち、吸収性コア12と肌側シート14との間に設けられた部分において、短繊維13Sを肌側シート14に接触可能な位置に配置し、長繊維13Lを吸収性コア12に接触可能な位置に配置することで、排泄物を吸収性コア12に移行させやすくし、コアラップシート13で排泄物を保持し続ける恐れを軽減させている。
【0058】
仮に、コアラップシート13が短繊維層SLを備えなかった場合には、長繊維不織布層LLが一度に多くの排泄物を局所的に受けると、長繊維不織布層LLでは、排泄物を吸収性コア12に移行させるのに時間がかかってしまい、吸収体11の肌側面(コアラップシート13の肌側面)に、排泄物が長時間滞留してしまう恐れがある。
【0059】
この点、コアラップシート13が長繊維不織布層LLと短繊維層SLを備え、且つ、短繊維13Sを肌側シート14に接触可能な位置に配置し、長繊維13Lを吸収性コア12に接触可能な位置に配置することで、局所的に排泄され、肌側シート14から移行してきた排泄物が、まず短繊維層SLにおいて、短繊維13S同士の空間を通して幅方向及び長手方向に拡散されやすくなる。幅方向及び長手方向に拡散された状態の排泄物は、長繊維不織布層LLで排泄物が滞留してしまう恐れを軽減させて、より速やかにコアラップシート13から吸収性コア12へ排泄物を移行させやすくなる。これによって、着用者に排泄物が滞留しているような不快感を生じさせたり、おむつ1を短時間で交換させなければならないような感覚を与えたりしてしまう恐れを軽減させることができる。
【0060】
特に、短繊維層SLが不織布ではなく、繊維の状態のまま長繊維13Lに接合されていることで、隣接する繊維間の間隔がより広くなり、短繊維13S同士の間に空間が生じやすく、短繊維層SLにおける幅方向及び長手方向への排泄物の拡散を促しやすくなる。
【0061】
図3に示すように、コアラップシート13は、吸収性コア12の肌側面、非肌側面及び一対の側面を覆っている。このとき、コアラップシート13が、肌側シート14と接触する部分において、コアラップシート13同士が重なる重なり部Dを有することが好ましい。つまり、コアラップシート13は、吸収性コア12の肌側にコアラップシート13の両端部が位置するように吸収性コア12の周囲を全域に亘って包み、吸収性コア12の肌側面が露出しないように、コアラップシート13同士が重なり部Dで重なっている。重なり部Dによって、短繊維13S同士が厚さ方向に重ねられることになり、短繊維13Sの繊維の隙間によって設けられる空間を嵩高に設けることができる。そのため、肌側シート14から吸収性コア12側に向かって排泄物を引き込みやすくなり、排泄物を吸収性コア12に速やかに移行させやすくなることで、肌側シート14に排泄物が滞留することによって生じる着用者の不快感を減少させやすくなる。
【0062】
また、短繊維13Sを肌側シート14に接触可能な位置に配置した場合において、厚さ方向に吸収体11と肌側シート14とが圧搾された圧搾部(不図示)を有するような場合には、長繊維13Lの融点より短繊維13Sの融点の方が低くすることが好ましい。例えば、本実施形態のように、長繊維13Lとしてポリプロピレン、短繊維13Sとしてポリエチレンを用いることができる。ポリプロピレンの融点は、160〜170℃であり、ポリエチレンの融点は、115〜135℃である。吸収体11と肌側シート14との圧搾について、短繊維13Sを肌側シート14に接触可能な位置に配置した場合には、圧搾部とは、肌側シート14と短繊維13Sとを、熱及び圧力で押し固めた部分である。そのため、吸収体11と肌側シート14とを圧搾する場合には、肌側シート14と接触する短繊維13Sは、長繊維13Lより低い温度での圧搾が可能となる。また、融点の低い短繊維13Sの方が、長繊維13Lより溶融されやすいため、肌側シート14と短繊維13Sとの圧搾形状を維持しやすくなる。
【0063】
===第2実施形態===
第1実施形態では、長繊維不織布層LLを内側に、短繊維層SLを外側に設けて、吸収性コア12と肌側シート14との間に設けられた部分について、短繊維13Sを肌側シート14に接触可能な位置に配置し、長繊維13Lを吸収性コア12に接触可能な位置に配置したが、これに限られない。第2実施形態では、長繊維不織布層LLを外側に設け、短繊維層SLを内側に設けるものであってもよい。つまり、コアラップシート13のうち、吸収性コア12と肌側シート14との間に設けられた部分において、長繊維13Lを肌側シート14に接触可能な位置に配置し、短繊維13Sを吸収性コア12に接触可能な位置に配置する構成について説明する。なお、第1実施形態の構成と共通する部分は、符号等を同じとし、おむつ1の基本構成の詳細な説明は省略する。
【0064】
第2実施形態は、第1実施形態とは吸収体11の構成が異なっている。
図5は、パンツ型使い捨ておむつ1の概略断面図である。
図5に示すように、吸収体11は、吸収性コア12とコアラップシート13を備え、吸収性コア12をコアラップシート13で包んでいる。つまり、コアラップシート13は、吸収性コア12の肌側面、非肌側面及び一対の側面を覆っている。また、第1実施形態と同様に、コアラップシート13が、肌側シート14と接触する部分において、コアラップシート13同士が重なる重なり部Dを有することが好ましい。重なる部Dを備えることで、短繊維13Sの繊維間の隙間における空間で排泄物を拡散しやすくなると同時に、着用者の肌と接触する可能性がある部分を嵩高にすることができるため、着用者の肌との密着性を向上させやすくなる。吸収性コア12は、親水性繊維であるパルプ繊維12Pと高分子吸収剤12Sを備え、所定形状に成形したものが好ましい。
【0065】
コアラップシート13は、長繊維不織布層LLと短繊維層SLを備える。長繊維不織布層LLは、ポリプロピレン繊維からなる長繊維13Lを備えた不織布層であり、短繊維層SLは、ポリエチレン繊維からなる短繊維13Sを備えた層である。上述のように、不織布層である長繊維不織布層LLは、繊維状の短繊維層SLより繊維密度が高い。そのため、コアラップシート13のうち、吸収性コア12と肌側シート14との間に設けられた部分において、長繊維13Lを肌側シート14に接触可能な位置に配置し、短繊維13Sを吸収性コア12に接触可能な位置に配置すると、長繊維不織布層LLは、肌側から受けた排泄物を長繊維不織布層LL内に引き込みやすくなる。そして、長繊維不織布層LLに引き込まれた排泄物は、長繊維不織布層LLより吸収性コア12側に位置する短繊維層SLにおいて、排泄物が幅方向及び長手方向に拡散しやすくなる。短繊維層SLでは、短繊維13S同士の間に空間が生じやすいため、その空間を通して、排泄物が幅方向及び長手方向に拡散しやすくなるためである。これによって、排泄物を吸収性コア12のより広い範囲に移行させやすくなる。
【0066】
また、コアラップシート13のうち、短繊維13Sを吸収性コア12に接触可能な位置に配置することで、
図5に示すように、短繊維13Sを吸収性コア12に接触可能な位置に配置することで、短繊維層SLの短繊維13Sの隙間に、吸収性コア12のパルプ繊維12Pや高分子吸収剤12Sを入れやすくなる。つまり、短繊維13S同士の隙間にパルプ繊維Pや高分子吸収剤12Sを絡ませやすいため、コアラップシート13で包まれた吸収性コア12は、コアラップシート13によって、その形状を維持しやすくなる。
【0067】
また、隣接する短繊維13S同士の間隔の平均値が、高分子吸収剤12Sの直径より大きいことが好ましい。例えば、本実施形態では、隣接する短繊維13S同士の間隔の平均値が、高分子吸収剤12Sの直径(350μm)の2〜3倍の長さとしている。隣接する短繊維13S同士の間隔の平均値及び高分子吸収剤12Sの直径は、それぞれ顕微鏡等を用いて拡大した状態での目視によって計測することができる。例えば、30ヶ所の隣接する短繊維13S同士の間隔を測定し、その平均値を求めることで、隣接する短繊維13S同士の間隔の平均値とすることができる。なお、高分子吸収剤12Sの直径にバラつきがある場合には、高分子吸収剤12Sの直径の平均値を求めて、隣接する短繊維13S同士の間隔の平均値と比較してもよい。これによって、短繊維13Sの繊維の隙間に高分子吸収剤12Sが入り込みやすくなり、特に、肌側シート14と吸収性コア12との間において、短繊維13Sの繊維同士の間に高分子吸収剤12Sが入り込んだ状態を維持しやすくなるため、吸収性コア12から高分子吸収剤12Sが下方(非肌側)に脱落してしまう恐れを軽減させることができる。
【0068】
なお、本実施形態では、吸収体11は、吸収体11を厚さ方向に見て、吸収性コア12が設けられていない部分Fを有している。また、本実施形態では、吸収体11を厚さ方向に圧搾した圧搾部Eを備えることで、吸収性コア12がコアラップシート13内に収められた状態の吸収体11の形状を維持しやすくしている。
図5に示すように、吸収体11は、吸収体11を厚さ方向に見て、吸収性コア12が設けられていない部分Fに、圧搾部Eを有することが好ましい。このとき、部分Fで圧搾をするため、吸収性コア12のパルプ繊維12Pや高分子吸収剤12Sが圧搾による接合を阻害してしまう恐れを軽減させることができる。また、部分Fに圧搾部Eを形成すると、コアラップシート13同士を圧搾するため、内側に配置された短繊維13S同士を対向させた状態で圧搾することができるため、より強固に接合させやすくなる。
【0069】
なお、本実施形態では、吸収体11を厚さ方向に圧搾した圧搾部Eとしたが、これに限られない。圧搾部は、吸収体11の厚さ方向に重ねられたものについて、吸収体11と併せて圧搾するものであってもよく、例えば、吸収性本体10を厚さ方向に圧搾するものであってもよい。
【0070】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0071】
上述の実施形態では、ポリプロピレンのみからなる長繊維13Lで構成された長繊維不織布層LLと、ポリエチレンのみからなる短繊維13Sで構成された短繊維層SLとしたが、これに限られない。例えば、長繊維不織布層LLがポリエステルやポリエチレン等の疎水性繊維を含むものであってもよく、短繊維層SLがポリステルやポリプロピレン等の疎水性繊維を含むものであってもよい。
【0072】
上記の実施形態では、長繊維不織布層LLに対して一方側の面に短繊維層SLを設けたが、これに限られない。例えば、長繊維不織布層LLの両側の面に短繊維層SLを設けてもよく、短繊維層SLの両側の面に長繊維不織布層LLを設ける構成であってもよい。
【0073】
また、上述の通り、コアラップシート13は、短繊維13Sを含む短繊維層SLと、長繊維13Lを含む長繊維不織布層LLを備えた嵩高かつ柔軟なシートであるため、その保管等の形態にも留意が必要である。連続状態のコアラップシート13を、一般的なシート部材のように幅方向の位置を揃えながらロールに巻き付ける場合には、嵩高な部分(短繊維層SL)を厚み方向に潰さないように、コアラップシート13をロールに緩く巻き付ける必要がある。しかし、ロールに対してコアラップシート13を緩く巻くと、1つのロールに対して巻くことができるコアラップシート13の長さが短くなり、製造過程において、ロールを頻繁に交換する必要が生じて、おむつ1の製造の生産性が著しく低下してしまう恐れがある。
【0074】
連続状態のコアラップシート13について、コアラップシート13を幅方向に位置をずらしながら順次ロールに巻き付けていくスプール巻きで巻かれた形態や、コアラップシート13をロールに巻き付けず、所定の間隔で折り畳まれた折り込み形態で、運搬、保管、及び吸収性物品の製造に用いることが好ましい。スプール巻き形態のコアラップシート13を用いることで、ロールの交換を減少させることができる。折り込み形態のコアラップシート13を用いることで、ロールの交換の必要がなくなる。そのため、おむつ1の製造の生産性の低下を防ぐことができる。
【解決手段】吸収性コア(12)と、前記吸収性コア(12)に接触するシート部材を備えた吸収体(11)を有し、前記シート部材(13)が、長繊維(13L)を含む長繊維不織布層と、短繊維(13S)を含む短繊維層を備えることを特徴とする吸収性物品である。