(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンテナは、縦長の八角形の形状を有し、前記両端に該八角形のうち各四角が設けられた全体としては長方形に近似した形状である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
前記アンテナの下方には、プラズマガスを前記基板載置領域に供給するためのプラズマガス供給手段が設けられた請求項1乃至9のいずれか一項に記載されたプラズマ処理装置。
前記アンテナは、縦長の八角形の形状を有し、前記両端に該八角形のうち各四角が設けられた全体としては長方形に近似した形状である請求項12乃至15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
前記アンテナの下方には、プラズマガスを前記基板載置領域に供給するためのプラズマガス供給手段が設けられた請求項12乃至19のいずれか一項に記載されたプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
[プラズマ処理装置の構成]
図1に、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の一例の概略縦断面図を示す。また、
図2に、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の一例の概略平面図を示す。なお、
図2では、説明の便宜上、天板11の描画を省略している。
【0012】
図1に示すように、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置は、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有すると共にウェハーWを公転させるためのサセプタ2と、を備えている。
【0013】
真空容器1は、ウェハーWを収容してウェハーWの表面上に形成された膜等にプラズマ処理を行うための処理室である。真空容器1は、サセプタ2の後述する凹部24に対向する位置に設けられた天板(天井部)11と、容器本体12とを備えている。また、容器本体12の上面の周縁部には、リング状に設けられたシール部材13が設けられている。そして、天板11は、容器本体12から着脱可能に構成されている。平面視における真空容器1の直径寸法(内径寸法)は、限定されないが、例えば1100mm程度とすることができる。
【0014】
真空容器1内の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために分離ガスを供給する、分離ガス供給管51が接続されている。
【0015】
サセプタ2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22に対して、鉛直軸周り、
図2に示す例では時計回りに、駆動部23によって回転自在に構成されている。サセプタ2の直径寸法は、限定されないが、例えば1000mm程度とすることができる。
【0016】
回転軸22及び駆動部23は、ケース体20に収納されており、このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、サセプタ2の下方領域にアルゴンガス等をパージガス(分離ガス)として供給するためのパージガス供給管72が接続されている。
【0017】
真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、サセプタ2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0018】
サセプタ2の表面部には、直径寸法が例えば300mmのウェハーWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として形成されている。この凹部24は、サセプタ2の回転方向に沿って、複数個所、例えば5箇所に設けられている。凹部24は、ウェハーWの直径よりも僅かに、具体的には1mm乃至4mm程度大きい内径を有する。また、凹部24の深さは、ウェハーWの厚さにほぼ等しいか、又はウェハーWの厚さよりも大きく構成される。したがって、ウェハーWが凹部24に収容されると、ウェハーWの表面と、サセプタ2のウェハーWが載置されない領域の表面とが同じ高さになるか、ウェハーWの表面がサセプタ2の表面よりも低くなる。なお、凹部24の深さは、ウェハーWの厚さよりも深い場合であっても、あまり深くすると成膜に影響が出ることがあるので、ウェハーWの厚さの3倍程度の深さまでとすることが好ましい。また、凹部24の底面には、ウェハーWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する、図示しない貫通孔が形成されている。
【0019】
図2に示すように、サセプタ2の回転方向に沿って、第1の処理領域P1と、第2の処理領域P2と、第3の処理領域P3とが互いに離間して設けられる。第3の処理領域P3は、プラズマ処理領域であるので、以後、プラズマ処理領域P3と表してもよいこととする。また、サセプタ2における凹部24の通過領域と対向する位置には、例えば石英からなる複数本、例えば7本のガスノズル31、32、33、34、35、41、42が真空容器1の周方向に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各々のガスノズル31〜35、41、42は、サセプタ2と天板11との間に配置される。また、これら各々のガスノズル31〜34、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウェハーWに対向して水平に伸びるように取り付けられている。一方、ガスノズル35は、真空容器1の外周壁から中心領域Cに向かって延びた後、屈曲して直線的に中心部領域Cに沿うように反時計回り(サセプタ2の回転方向の反対方向)に延びている。
図2に示す例では、後述する搬送口15から時計回り(サセプタ2の回転方向)に、プラズマ処理用ガスノズル33、34、プラズマ処理用ガスノズル35、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42、第2の処理ガスノズル32がこの順番で配列されている。なお、第2の処理ガスノズル32で供給されるガスは、プラズマ処理用ガスノズル33〜35で供給されるガスと同質のガスが供給される場合が多いが、プラズマ処理用ガスノズル33〜35で当該ガスの供給が十分な場合には、必ずしも設けられなくてもよい。
【0020】
また、プラズマ処理用ガスノズル33〜35は、1本のプラズマ処理用ガスノズルで代用してもよい。この場合、例えば、第2の処理ガスノズル32と同様に、真空容器1の外周壁から中心領域Cに向かって延びたプラズマ処理用ガスノズルを設けるようにしてもよい。
【0021】
第1の処理ガスノズル31は、第1の処理ガス供給部をなしている。また、第2の処理ガスノズル32は、第2の処理ガス供給部をなしている。更に、プラズマ処理用ガスノズル33〜35は、各々プラズマ処理用ガス供給部をなしている。また、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。
【0022】
各ノズル31〜35、41、42は、流量調整バルブを介して、図示しない各々のガス供給源に接続されている。
【0023】
これらのノズル31〜35、41、42の下面側(サセプタ2に対向する側)には、前述の各ガスを吐出するためのガス吐出孔36がサセプタ2の半径方向に沿って複数箇所に例えば等間隔に形成されている。各ノズル31〜35、41、42の各々の下端縁とサセプタ2の上面との離間距離が例えば1〜5mm程度となるように配置されている。
【0024】
第1の処理ガスノズル31の下方領域は、第1の処理ガスをウェハーWに吸着させるための第1の処理領域P1であり、第2の処理ガスノズル32の下方領域は、第1の処理ガスと反応して反応生成物を生成可能な第2の処理ガスをウェハーWに供給する第2の処理領域P2である。また、プラズマ処理用ガスノズル33〜35の下方領域は、ウェハーW上の膜の改質処理を行うための第3の処理領域P3となる。分離ガスノズル41、42は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2及び第3の処理領域P3と第1の処理領域P1とを分離する分離領域Dを形成するために設けられる。なお、第2の処理領域P2と第3の処理領域P3との間には分離領域Dは設けられていない。第2の処理領域P2で供給する第2の処理ガスと、第3処理領域P3で供給する混合ガスは、混合ガスに含まれている成分の一部が第2の処理ガスと共通する場合が多いので、特に分離ガスを用いて第2の処理領域P2と第3の処理領域P3とを分離する必要が無いからである。
【0025】
詳細は後述するが、第1の処理ガスノズル31からは、成膜しようとする膜の主成分をなす原料ガスが第1の処理ガスとして供給される。例えば、成膜しようとする膜がシリコン酸化膜(SiO
2)の場合には、有機アミノシランガス等のシリコン含有ガスが供給される。第2の処理ガスノズル32からは、原料ガスと反応して反応生成物を生成可能な反応ガスが第2の処理ガスとして供給される。例えば、成膜しようとする膜がシリコン酸化膜(SiO
2)の場合には、酸素ガス、オゾンガス等の酸化ガスが供給される。プラズマ処理用ガスノズル33〜35からは、成膜された膜の改質処理を行うため、第2の処理ガスと同様のガスと希ガスとを含む混合ガスが供給される。ここで、プラズマ処理用ガスノズル33〜35は、サセプタ2上の異なる領域にガスを供給する構造となっているので、領域毎に、希ガスの流量比を異ならせ、改質処理が全体で均一に行われるように供給してもよい。
【0026】
図3に、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置のサセプタの同心円に沿った断面図を示す。なお、
図3は、分離領域Dから第1の処理領域P1を経て分離領域Dまでの断面図である。
【0027】
分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、概略扇形の凸状部4が設けられている。凸状部4は、天板11の裏面に取り付けられており、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが形成される。
【0028】
天井面44を形成する凸状部4は、
図2に示すように、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、凸状部4には、周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル41、42がこの溝部43内に収容されている。なお、凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、サセプタ2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0029】
第1の処理ガスノズル31の上方側には、第1の処理ガスをウェハーWに沿って通流させるために、且つ分離ガスがウェハーWの近傍を避けて真空容器1の天板11側を通流するように、ノズルカバー230が設けられている。ノズルカバー230は、
図3に示すように、第1の処理ガスノズル31を収納するために下面側が開口する概略箱形のカバー体231と、このカバー体231の下面側開口端におけるサセプタ2の回転方向上流側及び下流側に各々接続された板状体である整流板232とを備えている。なお、サセプタ2の回転中心側におけるカバー体231の側壁面は、第1の処理ガスノズル31の先端部に対向するようにサセプタ2に向かって伸び出している。また、サセプタ2の外縁側におけるカバー体231の側壁面は、第1の処理ガスノズル31に干渉しないように切り欠かれている。
【0030】
図2に示されるように、プラズマ処理用ガスノズル33〜35の上方側には、真空容器1内に吐出されるプラズマ処理用ガスをプラズマ化するために、プラズマ源80が設けられている。
【0031】
図4に、第1の実施形態に係るプラズマ源の一例の縦断面図を示す。また、
図5に、第1の実施形態に係るプラズマ源の一例の分解斜視図を示す。さらに、
図6に、第1の実施形態に係るプラズマ源に設けられる筐体の一例の斜視図を示す。
【0032】
プラズマ源80は、金属線等から形成されるアンテナ83をコイル状に例えば鉛直軸回りに3重に巻回して構成されている。また、プラズマ源80は、平面視でサセプタ2の径方向に伸びる帯状体領域を囲むように、且つサセプタ2上のウェハーWの直径部分を跨ぐように配置されている。
【0033】
アンテナ83は、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に接続されている。そして、アンテナ83は、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように設けられている。なお、
図1及び
図3において、アンテナ83と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極86が設けられている。
【0034】
なお、アンテナ83は、
図2に示されるように、縦長の形状を有し、長手方向において、ウェハー径、つまり基板載置領域である凹部24の直径よりも長い長さを有し、少なくとも両端は凹部24よりも外側に位置するように配置される。
図2においては、アンテナ83は簡略的に示されているので、アンテナ83の具体的な構成の詳細については後述する。
【0035】
図4及び
図5に示すように、プラズマ処理用ガスノズル33〜35の上方側における天板11には、平面視で概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。
【0036】
開口部11aには、
図4に示すように、開口部11aの開口縁部に沿って、この開口部11aに気密に設けられる環状部材82を有する。後述する筐体90は、この環状部材82の内周面側に気密に設けられる。即ち、環状部材82は、外周側が天板11の開口部11aに臨む内周面11bに対向すると共に、内周側が後述する筐体90のフランジ部90aに対向する位置に、気密に設けられる。そして、この環状部材82を介して、開口部11aには、アンテナ83を天板11よりも下方側に位置させるために、例えば石英等の誘導体により構成された筐体90が設けられる。筐体90の底面は、プラズマ発生領域P2の天井面46を構成する。
【0037】
筐体90は、
図6に示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、平面視において、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成されている。
【0038】
筐体90は、この筐体90の下方にウェハーWが位置した場合に、サセプタ2の径方向におけるウェハーWの直径部分を跨ぐように配置されている。なお、環状部材82と天板11との間には、O−リング等のシール部材11cが設けられる。
【0039】
真空容器1の内部雰囲気は、環状部材82及び筐体90を介して気密に設定されている。具体的には、環状部材82及び筐体90を開口部11a内に落とし込み、次いで環状部材82及び筐体90の上面であって、環状部材82及び筐体90の接触部に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって筐体90を下方側に向かって周方向に亘って押圧する。さらに、この押圧部材91を図示しないボルト等により天板11に固定する。これにより、真空容器1の内部雰囲気は気密に設定される。なお、
図5においては、簡単のため、環状部材82を省略して示している。
【0040】
図6に示すように、筐体90の下面には、当該筐体90の下方側の処理領域P2を周方向に沿って囲むように、サセプタ2に向かって垂直に伸び出す突起部92が形成されている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及びサセプタ2の上面により囲まれた領域には、前述したプラズマ処理用ガスノズル33〜35が収納されている。なお、プラズマ処理用ガスノズル33〜35の基端部(真空容器1の内壁側)における突起部92は、プラズマ処理用ガスノズル33〜35の外形に沿うように概略円弧状に切り欠かれている。
【0041】
筐体90の下方(第2の処理領域P2)側には、
図4に示すように、突起部92が周方向に亘って形成されている。シール部材11cは、この突起部92によって、プラズマに直接曝されず、即ち、第2の処理領域P2から隔離されている。そのため、第2の処理領域P2からプラズマが例えばシール部材11c側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、シール部材11cに到達する前にプラズマが失活することとなる。
【0042】
また、
図4に示すように、筐体90の下方の第3の処理領域P3内には、プラズマ処理用ガスノズル33〜35が設けられ、アルゴンガス供給源120、ヘリウムガス供給源121及び酸素ガス供給源122に接続されている。また、プラズマ処理用ガスノズル33〜35とアルゴンガス供給源120、ヘリウムガス供給源121及び酸素ガス供給源122との間には、各々に対応する流量制御器130、131、132が設けられている。アルゴンガス供給源120、ヘリウムガス供給源121及び酸素ガス供給源122から各々流量制御器130、131、132を介してArガス、Heガス及びO
2ガスが所定の流量比(混合比)で各プラズマ処理用ガスノズル33〜35に供給され、供給される領域に応じてArガス、Heガス及びO
2ガスが定められる。
【0043】
なお、プラズマ処理用ガスノズルが1本の場合には、例えば、上述のArガス、Heガス及びO
2ガスの混合ガスを1本のプラズマ処理用ガスノズルに供給するようにする。
【0044】
図7は、サセプタ2の回転方向に沿って真空容器1を切断した縦断面図を示した図である。
図7に示されるように、プラズマ処理中にはサセプタ2が時計周りに回転するので、Arガスがこのサセプタ2の回転に連れられてサセプタ2と突起部92との間の隙間から筐体90の下方側に侵入しようとする。そのため、隙間を介して筐体90の下方側へのArガスの侵入を阻止するために、隙間に対して筐体90の下方側からガスを吐出させている。具体的には、プラズマ発生用ガスノズル33のガス吐出孔36について、
図4及び
図7に示すように、この隙間を向くように、即ちサセプタ2の回転方向上流側且つ下方を向くように配置している。鉛直軸に対するプラズマ発生用ガスノズル33のガス吐出孔36の向く角度θは、
図7に示すように例えば45°程度であってもよいし、突起部92の内側面に対向するように、90°程度であってもよい。つまり、ガス吐出孔36の向く角度θは、Arガスの侵入を適切に防ぐことができる45°〜90°程度の範囲内で用途に応じて設定することができる。
【0045】
図8は、プラズマ処理領域P3に設けられたプラズマ処理用ガスノズル33〜35を拡大して示した斜視図である。
図8に示されるように、プラズマ処理用ガスノズル33は、ウェハーWが配置される凹部24の全体をカバーでき、ウェハーWの全面にプラズマ処理用ガスを供給可能なノズルである。一方、プラズマ処理用ガスノズル34は、プラズマ処理用ガスノズル33よりもやや上方に、プラズマ処理用ガスノズル33と略重なるように設けられた、プラズマ処理用ガスノズル33の半分程度の長さを有するノズルである。また、プラズマ処理用ガスノズル35は、真空容器1の外周壁から扇型のプラズマ処理領域P3のサセプタ2の回転方向下流側の半径に沿うように延び、中心領域C付近に到達したら中心領域Cに沿うように直線的に屈曲した形状を有している。以後、区別の容易のため、全体をカバーするプラズマ処理用ガスノズル33をベースノズル33、外側のみカバーするプラズマ処理用ガスノズル34を外側ノズル34、内側まで延びたプラズマ処理用ガスノズル35を軸側ノズル35と呼んでもよいこととする。
【0046】
ベースノズル33は、プラズマ処理用ガスをウェハーWの全面に供給するためのガスノズルであり、
図7で説明したように、プラズマ処理領域P3を区画する側面を構成する突起部92の方に向かってプラズマ処理用ガスを吐出する。
【0047】
一方、外側ノズル34は、ウェハーWの外側領域に重点的にプラズマ処理用ガスを供給するためのノズルである。
【0048】
軸側ノズル35は、ウェハーWのサセプタ2の軸側に近い中心領域にプラズマ処理用ガスを重点的に供給するためのノズルである。
【0049】
なお、プラズマ処理用ガスノズルを1本とする場合には、ベースノズル33のみを設けるようにすればよい。
【0050】
次に、プラズマ源80のファラデーシールド95について、より詳細に説明する。
図4及び
図5に示すように、筐体90の上方側には、当該筐体90の内部形状に概略沿うように形成された導電性の板状体である金属板例えば銅などからなる、接地されたファラデーシールド95が収納されている。このファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に係止された水平面95aと、この水平面95aの外終端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、平面視で例えば概略六角形となるように構成されていても良い。
【0051】
図9は、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ装置のアンテナ83の構造の一例を示した平面図である。
図10は、プラズマ源80に設けられるファラデーシールド95の一部を示す斜視図を示す。
【0052】
詳細は後述するが、
図9に示されるように、本実施形態においては、アンテナ83は、凹部24よりも両端が余裕を持って大きく、凹部24のエッジから余裕を持ってはみ出す程度の長さを有する。なお、かかるアンテナ83の構成及び寸法の詳細については後述することとする。
【0053】
サセプタ2の回転中心からファラデーシールド95を見た場合の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、各々、右側及び左側に水平に伸び出して支持部96を為している。そして、ファラデーシールド95と筐体90との間には、支持部96を下方側から支持すると共に筐体90の中心部領域C側及びサセプタ2の外縁部側のフランジ部90aに各々支持される枠状体99が設けられている。
【0054】
電界がウェハーWに到達する場合、ウェハーWの内部に形成されている電気配線等が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。そのため、
図10に示すように、水平面95aには、アンテナ83において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウェハーWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウェハーWに到達させるために、多数のスリット97が形成されている。
【0055】
スリット97は、
図9及び
図10に示すように、アンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83の下方位置に形成されている。ここで、スリット97は、アンテナ83に供給される高周波に対応する波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように形成されている。また、各々のスリット97の長さ方向における一端側及び他端側には、これらスリット97の開口端を塞ぐように、接地された導電体等から形成される導電路97aが周方向に亘って配置されている。ファラデーシールド95においてこれらスリット97の形成領域から外れた領域、即ち、アンテナ83の巻回された領域の中央側には、当該領域を介してプラズマの発光状態を確認するための開口部98が形成されている。なお、
図2においては、簡単のために、スリット97を省略しており、スリット97の形成領域例を、一点鎖線で示している。
【0056】
また、スリット97は、長いアンテナ83に対応し、アンテナ83よりも広い領域を有して形成され、長いアンテナ83の端部にもスリット97が形成されている。
【0057】
図5に示すように、ファラデーシールド95の水平面95a上には、ファラデーシールド95の上方に載置されるプラズマ源80との間の絶縁性を確保するために、厚み寸法が例えば2mm程度の石英等から形成される絶縁板94が積層されている。即ち、プラズマ源80は、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(サセプタ2上のウェハーW)を覆うように配置されている。
【0058】
次に、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ源80のアンテナ83及びファラデーシールド95の構成について、より詳細に説明する。
【0059】
図11は、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ源80のアンテナ83及びファラデーシールド95の一例を示した図である。
図11(a)は、比較例に係る従来のプラズマ源のアンテナ183及びファラデーシールド195を示した図であり、
図11(b)は、本発明の第1の実施形態に係るプラズマ源80のアンテナ183及びファラデーシールド195の一例を示した平面図である。
【0060】
図11(a)に示されるように、従来のアンテナ183は、基板載置領域である凹部24の直径よりは大きく構成されているが、凹部24より僅かに大きい長さであり、両端が少し凹部24からはみ出す程度の大きさであった。また、ファラデーシールド195も、アンテナ183の長さに合わせて形成されており、スリット197はアンテナ183よりも広い領域に設けられているが、アンテナ183よりも若干大きい程度の大きさに構成されていた。
【0061】
一方、
図11(b)に示されるように、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置においては、アンテナ83の長さを長くし、アンテナ83の両端が余裕を持って基板載置領域である凹部24の直径全体をカバーし、凹部24から余裕を持ってはみ出すような長さに構成されている。また、ファラデーシールド95は、アンテナ83の長さに合わせて延伸され、アンテナ83よりも広い領域を有するとともに、アンテナ83よりも広い領域にスリット97が形成されている。
【0062】
アンテナ83を延伸したのは、アンテナ83の長手方向の両端付近で磁界の大きさが局所的に大きくなる点が存在する。つまり、アンテナ83に高周波電力が供給されることにより磁界が発生するが、アンテナ83は縦長の形状を有し、両端に最も曲率が高い、円形の弧に近くなる部分が存在するため、その円形に近似した箇所の中心に磁界の中心が存在する。その箇所は、円形コイルの中心とみなすことができ、当然に磁界が高くなるので、その箇所のプラズマ処理が局所的に高くなり、面内均一性が低下するおそれがある。よって、そのような両端の磁界が局所的に高くなる箇所を、基板載置領域である凹部24よりも外側に位置するようにアンテナ83を構成することにより、局所的なプラズマ処理の不均衡の発生を防止することができ、面内均一性を高めることができる。
【0063】
なお、ビオ・サバールの法則から、小さな電流素片Idlから距離r[m]だけ離れた点における磁界の強さdH[A/m]は、(1)式で与えられ、距離の二乗に反比例するので、上の説明と符号する。
【0064】
dH=Idlsinθ/4πr
2 [A/m](又は[N/Wb]) (1)
なお、アンペールの法則から、直線電流による磁界は(2)式、円形電流が円の中心に作る磁界は(3)式で与えられ、やはり距離に反比例するので、やはり上の説明と合致する。
【0065】
H=I/2πr [A/m] (2)
H=I/2r [A/m] (3)
図12は、アンテナ83、183によりプラズマ処理された膜厚の一例を示した図である。なお、プラズマ処理の度合いが高い場合には、膜は凝縮されて密度が高くなるので、膜厚は小さくなる。よって、プラズマ処理が十分になされた箇所は、膜厚が小さくなっている。
【0066】
図12において、比較例に係るアンテナ183を用いてプラズマ改質した膜Faの縦断面形状と、第1の実施形態に係るアンテナ83を用いてプラズマ改質した膜Fbの縦断面形状が示されている。膜Fa、Fbは両方ともW型の断面形状を有し、膜厚の極小点Fma、Fmbが両端に存在する。比較例に係るアンテナ183の膜厚極小点Fmaよりも、第1の実施形態に係るアンテナ83の膜厚極小点Fmbは外側に位置している。これは、アンテナ83をアンテナ183よりも延伸させたため、アンテナ83の両端の磁界の中心が外側に移動したためである。即ち、膜厚極小点Fmbは、アンテナ83の長手方向における両端の磁界中心の位置に相当し、この位置が凹部24の両端よりも外側に来るようにアンテナ83を構成し、配置することにより、膜厚極小点FmbをウェハーWの外側にすることができ、ウェハーW内での膜厚均一性を向上させることができる。
【0067】
図13は、
図12で説明した膜厚極小点Fma、Fmbの発生する位置と凹部24との関係を説明するための図である。
【0068】
図13(a)は、アンテナ83により形成される磁界を説明するための図である。
図13(a)に示されるように、アンテナ83で形成される磁界は、中央の大きな全体の磁界の他、両端に形成される2つの小さな磁界も存在する。全体の大きな磁界は、アンテナ83全体を1つの大きな円形コイルとみなした時に発生する磁界であり、全体で最も大きな範囲に発生する磁界である。この大きな磁界中心の強さは、アンテナ83全体で近似される円形が大きな円であり、(3)式における距離rが大きくなるため、磁界は小さくなる。一方、この大きな磁界の他、アンテナ83が長手方向に延びた縦長の形状を有するため、両端にも小さな円形コイルに類似した曲線部分が存在する。この小さな円形コイルには、範囲の小さな磁界が発生するが、その中心磁界は、距離rが小さくなるため、上述の大きな磁界よりも大きくなる。よって、アンテナ83の両端に強い磁界が発生し、
図12で説明したような膜厚極小点Fma、Fmbを発生させる。よって、この両端の小さな磁界の中心が、ウェハーWの両端のエッジ、つまり凹部24のエッジよりも外側に位置するようにアンテナ83を配置すれば、
図12に示した、中央領域の膜厚極小点Fma、Fmbの存在しない範囲内でプラズマ処理を行うことができ、面内均一性の高いプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0069】
図13(b)は、
図11(b)に示した縦長の八角形の形状を有するアンテナ83の両端の小さな磁界を示した図である。
図11、
図13(b)に示されるアンテナ83は、縦長の八角形であり、八角形のうちの各四角がアンテナ83の両端付近に各々形成され、両端部が円形に近似できる形状を有する。よって、両端の多角形状の部分を円に近似することにより、概略的な両端の磁界の中心を求めることができ、その中心よりも凹部24のエッジが内側に配置されるような構成とすれば、膜厚極小点Fma、FmbがウェハーW上に来ることを回避でき、面内均一性の高いプラズマ処理を行うことができる。
【0070】
図13(c)は、全体として縦長の楕円形状にアンテナ83を構成した例であり、アンテナ83をこのような大きな縦長の楕円形状に構成してもよい。このような形状の場合にも、膜厚極小点Fma、Fmbが凹部24よりも外側に位置するようにアンテナ83を配置することができ、面内均一性の高いプラズマ処理を行うことができる。
【0071】
このように、アンテナ83の両端に形成される小さな磁界中心が凹部24よりも外側に位置するようにアンテナ83を構成し、配置することにより、プラズマ処理の均一性を高め、膜厚及び膜質の面内均一性を向上させることができる。
【0072】
なお、
図14は、
図11(a)に示した比較例に係るアンテナ183を用いてプラズマ改質を行った場合の膜厚を示した比較例の実施結果である。
図14において、横軸は、300mmのウェハーWに対し、サセプタ2の半径方向、つまりY軸方向において、中心側をゼロ、外側を300mmとして設定した座標を示し、縦軸は、プラズマ改質後の膜厚を示している。
【0073】
図14に示されるように、300mmのウェハーWに対し、これよりも僅かに大きいアンテナ183を用いてプラズマ改質を行った場合、50mm付近と250mm付近で膜厚が小さくなっており、膜厚極小点Fmaが存在することが示された、よって、この膜厚極小点Fmaが凹部24よりも外側に位置するようにアンテナ83を構成及び配置すれば、膜厚の均一化を図ることができる。その際、ファラデーシールド95の大きさ及びスリット97の形成範囲もアンテナ83に合わせて大きくし、均一な磁界が凹部24に到達するように構成する。
【0074】
なお、ファラデーシールド95の形状により凹部24に到達する磁界をコントロールすることも可能であり、ファラデーシールド95のスリット97の形成範囲、形状により、磁界を制御してもよい。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。なお、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置は、アンテナ以外の構成は第1の実施形態に係るプラズマ処理装置と同様であるので、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0076】
図15は、本発明の第2の実施形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ源80のアンテナ83aを示した図である。第2の実施形態に係るプラズマ処理装置においては、アンテナ83aの角度を、筐体90の中心の位置ではなく、筐体90内のサセプタ2の回転方向の上流側の位置に配置する。つまり、メインノズル33に沿うような角度に配置する。なお、第2の実施形態に係るアンテナ83aは、第1の実施形態におけるアンテナ83を、そのまま角度を変えて適用することができる。第1の実施形態のアンテナ83と、第2の実施形態のアンテナ83aは、別個独立に実施することは当然可能であるが、第1の実施形態のアンテナ83を用いて、第2の実施形態のアンテナ83の配置を行うことが面内均一性の向上の観点からはより好ましい。よって、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置のアンテナ83aは、第1の実施形態に係るアンテナ83と異なる符号を付すが、両者は同一のアンテナ83、83aとして構成することが可能である。
【0077】
図16は、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置のアンテナ83aの配置の理由を説明するための図である。
【0078】
図16に示されるように、従来は、プラズマ源80又は筐体90の中心にアンテナ183が配置されていたが、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置では、メインノズル33に近い位置にアンテナ83aを配置する。Ar等のプラズマ処理用ガスは、メインノズル33から最初に供給されるが、従来のアンテナ183では、プラズマ源80又は筐体90の中心に配置されていたため、メインノズル33と角度θの角度差があった。メインノズル33から供給されたプラズマ処理用ガスは、アンテナ183に到達するまでには活性化されず、プラズマ化されない。そのため、プラズマの領域が非対称となり、また、
図16のラインAで示されるように、サセプタ2の回転により、ウェハーWの11時付近の位置から先にプラズマ源80の下方に入り、2時付近の位置から最後に出るので、ラインA上の11時付近から2時付近の領域が最も長くプラズマ源80の下にいる。そうすると、ウェハーWの11時から2時の位置だけ凹むような膜となってしまい、膜厚の不均衡が生じてしまう。そこで、プラズマ源80のアンテナ83aを、メインノズル33と略平行な位置に移動させることにより、プラズマ源80は装置軸に対して対称となり、ウェハーWがプラズマ源80の下にいる時間が角速度に寄らず一定とすることができる。つまり、Y軸方向における膜厚を均一化することができる。
【0079】
しかしながら、アンテナ83aを右側に移動させても、2時の位置からプラズマ源80に入る位置関係は変わっていないので、このままでは均一化が不十分な場合も考えられる。
【0080】
図17は、上面視において、ウェハーWの11時(又は10時)の位置からアンテナ83aに接触する状態を示した図である。このように、ウェハーWの11時(又は10時)の位置からアンテナ83aに接触し、2時の位置を最後にしてプラズマ源80から出ていくので、ウェハーWの中心よりもややサセプタ2の中心寄りの位置が最もプラズマ処理される配置となっている。
【0081】
図18は、そのような点を更に改善し、ウェハーWの9時の位置からアンテナ83aに接触し、3時の位置を最後にしてプラズマ源80から出ていく状態を示した図である。
図18に示すように、ウェハーWの中心とサセプタ2の中心を結び、その線に垂直に左右、又は周方向に沿って直線を引き、この直線と凹部24(又はウェハーW)の交点である9時、3時の位置でその直線と垂直、又は凹部24(又はウェハーW)と接するようにアンテナ83aを配置すると、ウェハーWの中心を通るラインBが最も長くプラズマ源80の下にいる配置となり、最も均一にプラズマ処理を行うことができる。例えば、このような配置でアンテナ83aを配置すれば、プラズマ処理の最大限の均一化を図ることができる。
【0082】
なお、このような配置は、アンテナ83aを固定してもよいし、アンテナ83aに角度調整機構を導入して、アンテナ83aの角度及び位置の微調整を行えるような構成としてもよい。これにより、均一性の高いプラズマ処理を行うことができる。
【0083】
なお、上述の移動により、Y軸方向における面内均一性を向上させることはできるが、X軸方向における面内均一性の向上は、必ずしも達成できない場合がある。
【0084】
図19は、
図16のようなアンテナ83aの位置で、膜のプラズマ改質処理を行った結果の一例を示した図である。X軸は、サセプタ2の周方向に沿ったX軸方向のウェハーW上の座標、Y軸は膜厚を示している。
図19に示されるように、X軸の右側の方では膜厚が大きくなり、ウェハーWの左側では十分なプラズマ処理が行われているが、ウェハーWの右側ではプラズマ処理が必ずしも十分でないことが示されている。
【0085】
図20及び21は、そのようなX軸方向のプラズマ処理の不均衡の原因を説明するための図である。
【0086】
図20は、サセプタ2を回転させない状態での基板酸化のプラズマ処理を模式的に示した図である。
図20に示されるように、サセプタ2が回転していない場合には、活性化された酸化ガスは均一にウェハーW上に供給され、全体としてプラズマ処理の不均衡は生じない。
【0087】
図21は、サセプタ2を回転させたときの基板酸化のプラズマ処理を模式的に示した図である。
【0088】
図21(a)に示されるように、サセプタ2の回転により、ウェハーは左側からプラズマ源80に到達し、左側から活性化された酸化ガスが供給される。
【0089】
図21(b)に示されるように、回転が進むにつれて、活性化されたガスが中央に移動するとともに、ウェハーWの左側から基板酸化が進行する。
【0090】
図21(c)に示されるように、左側の方から酸化が進み、左側の厚さが右側よりも薄くなる。また、活性化された酸化ガスがウェハーWの右側にも供給され、左側の酸化から、右側の酸化にシフトしてゆく。
【0091】
図21(d)に示されるように、活性化された酸化ガスがウェハーWの右端の方に供給される。酸化は、ウェハーの右側でも進行する。一方。左側の方は、既に酸化によりSiO
2の再配列がある程度済んでおり、それ以上反応は進行しない。右側はまだ酸化反応の余地があるので、右側の方で酸化が進行する。
【0092】
図21(e)に示されるように、ウェハーWの右側で酸化反応が進行したが、左側で十分に酸化が行われたのに対し、右側は不十分な状態に留まってしまう。
【0093】
このように、ウェハーの左側から酸化が開始さえ、原子のマイグレーションによって再配列がなされるため、左側は隙間なく高密度、高品質の膜となるが、右側に行くほど密度が低く、粗い膜となってしまう。よって、基板酸化が十分に行われた左側は膜厚が薄くなるが、基板酸化が不十分な右側は、膜厚が厚くなってしまう。これを解消するためには、サセプタ2を適宜逆回転することにより、解消することができる。
【0094】
また、上述のように、
図18で示したアンテナ83aの配置を採用すれば、全体のプラズマ源80を通過する時間を相当に均一化できるので、X軸方向におけるプラズマ処理も大幅に均一化を図ることが可能である。
【0095】
再び、本実施形態に係るプラズマ処理装置の他の構成要素について、説明する。
【0096】
サセプタ2の外周側において、サセプタ2よりも僅かに下位置には、
図2に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように例えば2箇所に排気口61、62が形成されている。別の言い方をすると、真空容器1の床面には、2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100には、排気口61、62が形成されている。
【0097】
本実施形態においては、排気口61、62のうち一方及び他方を、各々、第1の排気口61、第2の排気口62と呼ぶ。ここでは、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、この第1の処理ガスノズル31に対して、サセプタ2の回転方向下流側に位置する分離領域Dとの間において、分離領域D側に寄った位置に形成されている。また、第2の排気口62は、プラズマ源80と、このプラズマ源80よりもサセプタ2の回転方向下流側の分離領域Dとの間において、分離領域D側に寄った位置に形成されている。
【0098】
第1の排気口61は、第1の処理ガスや分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、プラズマ処理用ガスや分離ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、各々、バタフライバルブ等の圧力調整部65が介設された排気管63により、真空廃棄機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0099】
前述したように、中心部領域C側から外縁側に亘って筐体90を配置しているため、処理領域P2に対してサセプタ2の回転方向上流側から通流してくるガスは、この筐体90によって排気口62に向かおうとするガス流が規制されてしまうことがある。そのため、筐体90よりも外周側におけるサイドリング100の上面には、ガスが流れるための溝状のガス流路101が形成されている。
【0100】
天板11の下面における中央部には、
図1に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりもサセプタ2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて各種ガスが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。
【0101】
前述したように筐体90は中心部領域C側に寄った位置まで形成されているので、サセプタ2の中央部を支持するコア部21は、サセプタ2の上方側の部位が筐体90を避けるように回転中心側に形成されている。そのため、中心部領域C側では、外縁部側よりも、各種ガス同士が混ざりやすい状態となっている。そのため、コア部21の上方側にラビリンス構造を形成することにより、ガスの流路を稼ぎ、ガス同士が混ざり合うことを防止することができる。
【0102】
サセプタ2と真空容器1の底面部14との間の空間には、
図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられている。ヒータユニット7は、サセプタ2を介してサセプタ2上のウェハーWを例えば室温〜300℃程度に加熱することができる構成となっている。なお、
図1に、ヒータユニット7の側方側にカバー部材71aが設けられるとともに、ヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材7aが設けられる。また、真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が、周方向に亘って複数個所に設けられている。
【0103】
真空容器1の側壁には、
図2に示すように、搬送アーム10とサセプタ2との間においてウェハーWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は、ゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。
【0104】
サセプタ2の凹部24は、この搬送口15に対向する位置にて搬送アーム10との間でウェハーWの受け渡しが行われる。そのため、サセプタ2の下方側の受け渡し位置に対応する箇所には、凹部24を貫通してウェハーWを裏面から持ち上げるための図示しない昇降ピン及び昇降機構が設けられている。
【0105】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置には、装置全体の動作を制御するためのコンピュータからなる制御部120が設けられている。この制御部120のメモリ内には、後述の基板処理を行うためのプログラが格納されている。このプログラムは、装置の各種動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0106】
なお、本実施形態においては、プラズマ処理装置を成膜装置に適用した例について説明したが、エッチング装置等、成膜以外の基板処理を行う基板処理装置に本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置を適用することができる。また、サセプタ2は、回転可能な回転テーブルとして構成された例について説明したが、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置は、プラズマ強度の調整が好ましい種々の基板処理装置に適用できるので、サセプタ2の回転は必ずしも必須ではない。
【0107】
[プラズマ処理方法]
以下、このような本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法について説明する。なお、以下の実施形態では、第1及び第2の実施形態に係るプラズマ処理装置を組み合わせた場合におけるプラズマ処理方法について説明する。アンテナは、両者を含めてアンテナ83、83aと表記する。
【0108】
まず、アンテナ83、83aを所定の位置に配置する。アンテナ83の位置は、最初から設定されてもよいし、角度調整機構により調整されて配置されてもよい。なお、アンテナ83、83aの長さは、凹部24よりも十分大きく、両端部の磁界中心が凹部24の外側に位置するように構成及び配置される。
【0109】
まず、ウェハーWを真空容器1内に搬入する。ウェハーW等の基板の搬入に際しては、先ず、ゲートバルブGを開放する。そして、サセプタ2を間欠的に回転させながら、搬送アーム10により搬送口15を介してサセプタ2上に載置する。
【0110】
次いで、ゲートバルブGを閉じて、真空ポンプ64及び圧力調整部65により真空容器1内を所定の圧力にした状態で、サセプタ2を回転させながら、ヒータユニット7によりウェハーWを所定の温度に加熱する。この時、分離ガスノズル41、42からは、分離ガス、例えば、Arガスが供給される。
【0111】
続いて、第1の処理ガスノズル31からは第1の処理ガスを供給し、第2の処理ガスノズル32からは第2の処理ガスを供給する。また、プラズマ処理用ガスノズル33〜35から、所定の流量でプラズマ処理用ガスを供給する。
【0112】
ここで、第1の処理ガス、第2の処理ガス及びプラズマ処理用ガスは、用途に応じて種々のガスを用いてよいが、第1の処理ガスノズル31からは原料ガス、第2の処理ガスノズル32からは酸化ガス又は窒化ガスを供給する。また、プラズマ処理用ガスノズル33〜35からは、第2の処理ガスノズルから供給された酸化ガス又は窒化ガスと類似した酸化ガス又は窒化ガスと、希ガスを含む混合ガスからなるプラズマ処理用ガスを供給する。希ガスは、イオン化エネルギー又はラジカルエネルギーの異なる複数種類の希ガスを用い、プラズマ処理用ガスノズル33〜35の供給領域に応じて、異なる種類又は異なる混合比で混合した希ガスを用いるようにする。
【0113】
ここでは、成膜しようとする膜がシリコン酸化膜であり、第1の処理ガスが有機アミノシランガス、第2の処理ガスが酸素ガス、プラズマ処理用ガスがHe、Ar、O
2の混合ガスからなる場合を例に挙げて説明する。
【0114】
ウェハーWの表面では、サセプタ2の回転によって第1の処理領域P1においてSi含有ガス又は金属含有ガスが吸着し、次いで、第2の処理領域P2においてウェハーW上に吸着したSi含有ガスが、酸素ガスによって酸化される。これにより、薄膜成分であるシリコン酸化膜の分子層が1層又は複数層形成されて反応生成物が形成される。
【0115】
更にサセプタ2が回転すると、ウェハーWはプラズマ処理領域P3に到達し、プラズマ処理によるシリコン酸化膜の改質処理が行われる。プラズマ処理領域P3で供給されるプラズマ処理用ガスについては、例えば、ベースガスノズル33からはAr及びHeを1:1の割合で含むAr、He、O
2の混合ガス、外側ガスノズル34からはHe及びO
2を含み、Arを含まない混合ガス、軸側ガスノズル35からはAr及びO
2を含み、Heを含まない混合ガスを供給する。これにより、ArとHeが1:1に含まれる混合ガスを供給するベースノズル33からの供給を基準とし、角速度が遅くプラズマ処理量が多くなり易い中心軸側の領域では、ベースノズル33から供給される混合ガスよりも改質力の弱い混合ガスを供給する。また、角速度が速く、プラズマ処理量が不足する傾向がある害種側の領域では、ベースノズル33から供給される混合ガスよりも改質力の強い混合ガスを供給する。これにより、サセプタ2の角速度の影響を低減することができ、サセプタ2の半径方向において、均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0116】
また、上述のように、プラズマ源80のアンテナ83、83aは、面内均一性の高いプラズマ処理を行うように変形されているので、面内均一性の高いプラズマ処理を行うことができる。上述のノズル33〜35と相俟って、非常に面内均一性の高い成膜を行うことができる。すなわち、アンテナ83の変形による面内均一性の向上と、プラズマガスの領域毎の供給量の設定による面内均一性を組み合わせることができ、より適切な調整を行うことができる。
【0117】
また、ノズルが1本の場合であっても、アンテナ83、83aの変形により、面内均一性を高めるようなアンテナ83、83aの変形が行われているので、やはり面内均一性の高いプラズマ処理を行うことができる。
【0118】
なお、プラズマ処理領域P3にてプラズマ処理を行う際には、プラズマ源80では、アンテナ83、83aに対して、所定の出力の高周波電力を供給する。
【0119】
筐体90では、アンテナ83、83aにより発生する電界及び磁界のうち電界は、ファラデーシールド95により反射、吸収又は減衰されて、真空容器1内への到達が阻害される。
【0120】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置は、スリット97の長さ方向における一端側及び他端側に導電路97aが設けられると共に、アンテナ83の側方側に垂直面95bを有する。そのため、スリット97の長さ方向における一端側及び他端側から回り込んでウェハーW側に向かおうとする電界についても遮断される。
【0121】
一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内に到達する。こうして筐体90の下方側において、磁界によりプラズマ処理用ガスがプラズマ化される。これにより、ウェハーWに対して電気的ダメージを引き起こしにくい活性種を多く含むプラズマを形成することができる。
【0122】
本実施形態においては、サセプタ2の回転を続けることにより、ウェハーW表面への原料ガスの吸着、ウェハーW表面に吸着した原料ガス成分の酸化、及び反応生成物のプラズマ改質この順番で多数回に亘って行われる。即ち、ALD法による成膜処理と、形成された膜の改質処理とが、サセプタ2の回転よって、多数回に亘って行われる。
【0123】
なお、本実施形態に係るプラズマ処理装置における第1及び第2の処理領域P1、P2の間と、第3及び第1の処理領域P3、P1の間には、サセプタ2の周方向に沿って分離領域Dを配置している。そのため、分離領域Dにおいて、処理ガスとプラズマ処理用ガスとの混合が阻止されながら、各ガスが排気口61、62に向かって排気されていく。
【0124】
本実施形態における第1の処理ガスの一例としては、DIPAS[ジイソプロピルアミノシラン]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]ガス、BTBAS[ビスターシャルブチルアミノシラン]、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]等のシリコン含有ガスが挙げられる。
【0125】
また、TiN膜の成膜に本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法を適用する場合には、第1の処理ガスには、TiCl
4[四塩化チタン]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、TMA[トリメチルアルミニウム]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)
2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]等の金属含有ガスを使用しても良い。
【0126】
プラズマ処理用ガスとしては、本実施形態では、希ガスとしてはArガスとHeガスを用い、これを改質用の酸素ガスと組み合わせた例を挙げて説明したが、他の希ガスを用いてもよいし、酸素ガスの代わりに、オゾンガスや、水を用いることも可能である。
【0127】
また、窒化膜を成膜するプロセスでは、改質用にNH
3ガス又はN
2ガスを用いるようにしてもよい。更に、必要に応じて、水素含有ガス(H
2ガス、NH
3ガス)との混合ガスを用いてもよい。
【0128】
また、分離ガスとしては、例えばArガスの他、N
2ガス等も挙げられる。
【0129】
成膜工程における第1の処理ガスの流量は、限定されないが、例えば50sccm〜1000sccmとすることができる。
【0130】
プラズマ処理用ガスに含まれる酸素含有ガスの流量は、限定されないが、例えば500sccm〜5000sccm(一例として500sccm)程度とすることができる。
【0131】
真空容器1内の圧力は、限定されないが、例えば0.5Torr〜4Torr(一例として1.8Torr)程度とすることができる。
【0132】
ウェハーWの温度は、限定されないが、例えば40℃〜650℃程度とすることができる。
【0133】
サセプタ2の回転速度は、限定されないが、例えば60rpm〜300rpm程度とすることができる。
【0134】
このように、本実施形態に係るプラズマ処理方法によれば、プラズマ処理の面内均一性を高めるようにアンテナ83が変形されているので、面内均一性の高いプラズマ処理を行うことができる。
【0135】
更に、プロセスが変化する場合であっても、次のプロセスに応じた形状にアンテナ83を変形することが自動的に行われるため、容易かつ迅速に次のプロセスに入ることができる。
【0136】
次に、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。
【0137】
図22は、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置の一例のアンテナ83bの平面形状を示した図である。
図22において、左側がサセプタ2の中心側であり、右側がサセプタ2の外周側を示している。なお、第3の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、アンテナ83bがサセプタ2の半径方向に沿って配置された例を挙げて説明する。即ち、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置のように、サセプタ2の中心とエッジとを結んだ線に対して傾斜角を有するのではなく、サセプタ2の中心とエッジとを結んだ線に沿ってアンテナ83bの長手方向が配置された例について説明する。
【0138】
図22(a)は、アンテナ83bにより形成された磁界の強さHのY軸方向における分布を示した図であり、
図22(b)は、アンテナ83bの平面形状を示した図である。
【0139】
図22(b)に示される通り、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置のアンテナ83bは、サセプタ2の外周側に配置される右側の幅が、サセプタ2の中心側に配置される左側の幅よりも小さい幅を有する。ここで、「幅」というのは、サセプタ2の周方向におけるアンテナ83bの大きさを意味し、アンテナ83bの短手方向におけるアンテナ83bの大きさを意味する。
【0140】
アンテナ83bの平面形状について更に詳細に述べると、
図22(b)において、3個の円C1〜C3が示されているが、アンテナ83bの両端は円弧に類似した曲線的な外形を有し、右側の外周側の円C3の半径R3は、左側の中心側の円C2の半径R2よりも小さく構成されている。更に、アンテナ83bの両端部の円弧に沿った円C2、C3の半径R2、R3は、アンテナ83bの全体を円C1に近似させた時の半径r1よりも小さい。つまり、r3<r2<r1となっている。
【0141】
第1の実施形態の(1)式で説明したように、磁界dhの強さは電流素片Idlからの距離rの二乗に反比例するため、各円C1〜C3の内部においては、半径R1〜R3の二乗に反比例する磁界dHが得られる。なお、理解の容易のため、(1)式において磁極mが形成する磁界を考えると、磁界の強さHは(4)式のようになる。
【0142】
H=m/4πμ
0r
2 [A/m](又は[N/Wb]) (4)
(1)式及び(4)式のいずれにおいても、磁界の強さdH、Hは、距離rの二乗に反比例することが分かる。よって、円の半径を小さくすれば、円の内部に発生する磁界を小さくすることができる。
【0143】
図22(a)は、アンテナ83bにより得られるY軸上(サセプタ2の半径方向の中心からエッジまでの座標)の磁界Hの強さの分布を示しており、外周側において磁界Hが強くなり、中心側において磁界Hが弱くなった磁界分布となっていることが分かる。このように、アンテナ83bの外周側の端部の幅(≒R3×2)又は円弧の半径R3を中心側の端部の幅(≒R2バル2)又は円弧の半径R2よりも小さくすることにより、外周側の磁界Hの強さを中心側よりも強くすることができる。これにより、サセプタ2の外周側における移動速度が中心側よりも速くても、外周側の磁界Hを大きくし、プラズマの強度を強くすることにより、中心側と外周側のプラズマ処理量を均一化することができる。
【0144】
なお、
図22(a)、(b)において、円C2、C3の外側にあり、かつ円C1の内側にある円C1の中心付近の領域は、円C1のみの磁界Hの影響を受けるため、磁界Hの強さが弱くなっている。
【0145】
図22(c)は、アンテナ83bを搭載したプラズマ源80に搭載してSiO
2膜をプラズマ処理した場合の膜厚分布を模式的に示した図であり、
図22(d)は、Si基板をプラズマ酸化した状態を模式的に示した図である。
【0146】
図22(c)、(d)に示される通り、シリコン基板をプラズマ酸化して生成したシリコン酸化膜は、中心側と外周側の差が無く、均一な酸化状態となる。このように、サセプタ2の外周側と中心側の速度差により生じるプラズマ処理量の差を、外周側の磁界を強くすることで是正することができる。
【0147】
図23は、比較例に係るアンテナ283を示した図である。
図23(b)に示される通り、比較例に係るアンテナ283は、アンテナ283の中心側と外周側の端部で同じ円C6に沿った円弧を有し、円C6の半径R6は両端部で同じ大きさである。また、アンテナ283の全体を近似させた円C1の半径R1は、
図22と同様である。
【0148】
かかる構成の場合、
図23(a)に示される通り、アンテナ283により生成される磁界Hの分布は、半径方向において中心側と外周側で対称となる。しかしながら、サセプタ2の回転速度は中心側と外周側で異なり、外周側の方が高速であるので、
図23(c)、(d)に示される通り、シリコン基板をプラズマ酸化すると、中心側(図中左側)が外周側(図中右側)よりも多く酸化されてしまう。
【0149】
このように、サセプタ回転式の成膜装置では、中心側と外周側のプラズマ処理の差が出る場合が多いので、これを是正する手段が必要となる。
図22で説明したように、アンテナ83bの両端部の幅又は円弧状の両端部の半径R2、R3を、外周部R3の方が中心部R2よりも小さくなるように構成することにより、このようなプラズマ処理の差を是正することができる。なお、
図22(b)に示した中心側の円C2の半径R2は、
図23(b)の円C6の半径R6よりも大きく、
図22(b)の外周側の円C3の半径R3は、
図23(b)の円C6の半径R6よりも小さくなっている。このように、従来のアンテナ283よりも、中心側の円弧に沿った円C2の半径R2を大きくし、外周側の円弧に沿った円C3の半径R3を小さくするという両端における形状の変形により、大幅に磁界を変化させることができる。
【0150】
図24は、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置の第2の態様のアンテナ83cの平面構成を示した図である。
図24(a)は、アンテナ83cにより形成された磁界の強さHのY軸方向における分布を示した図であり、
図24(b)は、アンテナ83cの平面形状を示した図である。
【0151】
図24(b)に示される通り、アンテナ83cの中心側の端部の円弧形状に沿った円C4の半径R4が、外周側の端部の円弧形状に沿った円C5の半径R5よりも大きくなるように構成されている点は
図22(b)と同様であるが、中心側及び外周側の円C4、C5の半径R4、R5が、
図22(b)における中心側及び外周側の円C2、C3の半径R2、R3よりもそれぞれ小さく構成されている点で、
図22のアンテナ83bと異なっている。
【0152】
図24(a)に示される通り、アンテナ83cの両端部の円弧の半径R4、R5をより小さく構成することにより、両端部の磁界Hの強さを強くすることができる。即ち、
図22(a)と比較して、
図224(a)は磁界Hの強さが強くなっており、特に外周側では高くなっている。
【0153】
図24(c)は、アンテナ83cを搭載したプラズマ源80に搭載してSiO
2膜をプラズマ処理した場合の膜厚分布を模式的に示した図であり、
図24(d)は、Si基板をプラズマ酸化した状態を模式的に示した図である。
【0154】
図24(c)、(d)に示される通り、アンテナ83cの両端の円弧の半径R4、R5を
図22のアンテナ83bよりも小さくしたことにおより、酸化力が増大し、シリコン基板の酸化領域が増加していることが分かる。
【0155】
このように、本実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、アンテナ83b、83cの外周側の端部の幅又は円弧の半径R3、R5を中心側の端部の幅又は円弧の半径R2、R4よりも小さく構成することにより、外周側の磁界Hの強さを中心側よりも強くし、中心側と外周側のプラズマ処理量を均一化することができる。また、
図22、24に示された通り、アンテナ83b、83cの端部の幅又は円弧の半径の大きさを調整することにより、磁界の強度を調整することができ、所望の磁界分布を得ることができる。
【0156】
また、
図22(a)、(c)及び
図24(a)、(c)において、アンテナ83b、83cの両端部の円弧C2〜C5の中心に極大値が存在するので、アンテナ83b、83cの両端部の円弧C2〜C5の中心内に凹部24が収まる大きさにアンテナ83b、83cの大きさを設定することにより、線形的な変化部分でウェハーWをプラズマ処理することができ、所望の磁界分布内でウェハーWのプラズマ処理を行うことができる。即ち、第1の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせることにより、より均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0157】
次に、ファラデーシールド95の効果について説明する。
【0158】
第3の実施形態に係るプラズマ処理装置のアンテナ83b、83cに適合したファラデーシールドの形状を調べるため、発明者等は以下に述べる実験を行った。
【0159】
図25は、第1の実験例に係るファラデーシールドの変形例である。第1の実験例においては、第1の実施形態で説明した
図11(a)に示したファラデーシールド195において、
図25のように、アンテナ183の両端の円弧の中心に近い部分のスリット197を、部分的に隠す変形を行い、変形ファラデーシールド295を作製した。
【0160】
図26は、第2の実験例に係るファラデーシールドの変形例である。第1の実験例においては、
図11(a)に示したファラデーシールド195において、
図26のように、アンテナ183の両端の円弧の中心に近い部分のスリット197を、全面的に隠す変形を行い、変形ファラデーシールド395を作製した。
【0161】
図27は、
図11(a)に示すファラデーシールド195と、
図25及び
図26に示す変形ファラデーシールド295、395を用いて行った成膜結果である。
【0162】
図27において、膜厚分布Faが
図11(a)に示すファラデーシールド195を用いた膜厚分布であり、膜厚分布Fcが
図25、26に示す変形ファラデーシールド295、395の膜厚分布である。
図27に示される通り、ファラデーシールド195の磁界が最も強い両端の円弧の中心に近い部分を隠すことにより、磁界が強くなって膜厚が極端に薄くなる箇所の膜厚を厚くすることができる。即ち、ファラデーシールド195のスリット197を部分的に覆うことにより、磁束のウェハーWへの到達量を低減させ、プラズマを弱めることができる。
【0163】
このことから、ファラデーシールド95は、アンテナ83b、83cの形状に合わせた形で変形することが好ましく、アンテナ83b、83cの変形で得られた磁界の是正結果を、そのまま反映させるような変形が好ましい。よって、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置においては、アンテナ83b、83cにおいて、外周部が中心部よりも幅又は円弧の半径が小さくなるような形状としたときには、それに合わせてファラデーシールド95の形状も、中心側が大きな径を有し、外周側が小さな径を有する形状とすることが好ましい。
【0164】
第3の実施形態に係るプラズマ処理装置においては、必要に応じて、ファラデーシールド95についても、そのような変形を行うようにしてよい。
【0165】
図28は、基板酸化力を定める要素を説明するための図である。
図28(a)は、基板酸化力の要素を模式的に示した図である。
図28(a)において、基板酸化力を定める要素が、特性A〜Dにより記載されている。横軸はY軸上の座標であり、左側がサセプタ2の中心側、右側がサセプタ2の外周側を示す。また、縦軸は、各要素の強度又は大きさを酸化膜の膜厚(Å)に換算した値を示している。基板酸化力が特性A,プラズマ照射時間が特性B、プラズマ強さが特性C、ウェハーサイズが特性D、ファラデーシールドが特性Eで示されている。
【0166】
基板酸化力を示す特性Aは、外周側のサセプタ2の移動速度が中心側より速いため、外周側の酸化力が相対的に弱くなり、外側の膜厚が高い特性となっている。
【0167】
一方、プラズマ照射時間は、外周側の方が短くなるので、特性Bに示されるように、外周側の方が中心側よりも低い直線となる。
【0168】
プラズマ強さは、今まで説明したように、両端の円弧の中心において強くなるので、特性Cに示されるように、両側に極置を有する特性となる。
【0169】
ウェハーサイズは、本来的には一定の筈であるが、中央の方がやや低くなるので、特性Dのような、中央が両側よりも低い特性となる。
【0170】
ファラデーシールドは、中央が高くなり、両側が低くなる傾向を示し、特性Eのようになる。
【0171】
これらの要素のうち、プラズマ照射時間とウェハーサイズは、変更できない要素である。一方。プラズマ強さとファラデーシールドは変更可能な要素である。
【0172】
図28(a)の模式的なグラフを、実際の計測値で示すと、
図28(b)のようになる。
図28(b)の特性は、概略的には
図28(a)に示した特性と類似している。
【0173】
図29は、
図28で説明した基板酸化力の要素を用いて、高周波電源85の出力を4000Wとしたときのサセプタ2上のウェハーWを均一に酸化するための条件を算出したシミュレーション結果を示した図である。なお、ファラデーシールドの特性Eは除外し、酸化量の特性Fを加えた。
【0174】
図29(a)は、
図23で説明したように、アンテナ283の両端の円弧の半径が等しい場合の特性を示した図である。この場合、特性Cに示されるように、プラズマ強さは中心側から外周側にかけて略一定となる。その結果、特性A、Fに示されるように、基板酸化力は外周側が低下し、外周側の膜厚が大きくなる。
【0175】
この
図29(a)のY軸上の50mm、250mmの位置のプラズマ強さ、即ち磁界の強さを100%とし、基板酸化力が一定となる各要素の分布を算出した。
【0176】
図29(b)は、算出結果を示した図である。
図29(b)に示される通り、Y軸上の250mmにおけるプラズマ強さ(磁界の強さ)を380%にすると、特性Fに示される通り、基板酸化力はY軸上で均一となる。なお、特性Aは、実測値であり、それ以外は算出値である。
【0177】
このように、プラズマ出力が4000Wの場合には、Y軸上の250mmの地点におけるプラズマ強さを380%にすれば、均一な基板酸化力が得られる。
【0178】
図30は、
図29と同様のシミュレーションを、プラズマ出力が3000Wの場合について行った結果である。
【0179】
図30(a)に示されるように、基板酸化力の特性Aと基板酸化量の特性Fは重なっているが、
図30(b)に示されるように、Y軸上の250mmのプラズマ強さを
図30(a)のプラズマ強さの300%に設定すると、Y軸上で均一な基板酸化量(特性F)を得ることができる。なお、この図においても、基板酸化力の特性Aは実測値であり、その他の値は算出値である。
【0180】
図31は、
図29、30と同様のシミュレーションを、プラズマ出力が2000Wの場合について行った結果である。
【0181】
図31(a)に示されるように、基板酸化力の特性Aと基板酸化量の特性Fは重なっているが、
図31(b)に示されるように、Y軸上の250mmのプラズマ強さを
図31(a)のプラズマ強さの230%に設定すると、Y軸上で均一な基板酸化量(特性F)を得ることができる。なお、この図においても、基板酸化力の特性Aは実測値であり、その他の値は算出値である。
【0182】
このように、プラズマ出力(高周波電源85の出力)が変化すると、アンテナ83b、83cが発生する外周側の磁界を調整する必要があるが、プラズマ出力を種々変化させた場合でもm、アンテナ83b、83cの両端の円弧の半径又は幅を変化させることにより、均一な基板酸化が可能であることが分かる。
【0183】
このように、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置によれば、サセプタ2の半径方向における酸化力を均一にし、均一なプラズマ処理を行うことができる。
【0184】
なお、第3の実施形態に係るプラズマ処理装置は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置及び/又は第2の実施形態に係るプラズマ処理装置と組み合わせることが可能である。
【0185】
具他的には、アンテナ83b、83cの長手方向の寸法を大きくし、両端の円弧の円の中心が凹部24よりも外側に配置されるように構成するとともに、外周側端部の円弧の円の半径が中心側端部の円弧の円の半径よりも小さくなるように構成すればよい。
【0186】
また、第2の実施形態で述べたように、アンテナ83b、83cの角度を調整しつつ、配置すればよい。
【0187】
また、アンテナ83b、83cの長手方向の寸法及び角度の双方を調整してもよい。
【0188】
このように、第1乃至第3の実施形態を適宜組み合わせてプラズマ処理装置を構成することができる。これにより、均一で高効率のプラズマ処理を行うことができ、高品質の成膜処理を行うことができる。
【0189】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。