特許第6890883号(P6890883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890883
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】光反応性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/30 20060101AFI20210607BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   C08F220/30
   C08F220/34
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-54433(P2017-54433)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2017-186536(P2017-186536A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2020年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-72994(P2016-72994)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茉由加
(72)【発明者】
【氏名】東郷 英一
(72)【発明者】
【氏名】常藤 透朗
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋
(72)【発明者】
【氏名】井上 宗宣
(72)【発明者】
【氏名】潮崎 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】貴志 礼文
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103408692(CN,A)
【文献】 特開2010−059346(JP,A)
【文献】 特開2005−280076(JP,A)
【文献】 特開2006−213861(JP,A)
【文献】 特開2017−177754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00− 20/70
C08F220/00−220/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される構造を有し、数平均分子量が1,000〜1,000,000である光反応性ポリマー。
【化1】
(式中、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表し、Xは置換基を有しても良いフェニレン基、又は、エステル結合若しくはアミド結合で示される基を表し、Yはベタイン性基、アルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基から選ばれた親水性基を表し、Zは−O−又は−N(R)−で示される基を表し、Aは−O−又は−CH−で示される基を表し、R、R及びRは互いに独立して水素原子又はC〜Cの炭化水素基を表し、RはC〜Cの2価の炭化水素基を表し、Rはフッ素原子を表し、pは0〜4の整数を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される構造を有する請求項1に記載の光反応性ポリマー。
【化2】
(式中、m、n、Z、A、R、R、R、R及びpは前記と同じ意味を表す。rの値は2〜90の整数を表す。)
【請求項3】
下記一般式(3)で示される構造を有する請求項1に記載の光反応性ポリマー。
【化3】
(式中、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表し、rの値は2〜90の整数を表し、RはC〜Cの2価の炭化水素基を表す。)
【請求項4】
m/(m+n)の値が0.02〜0.7である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光反応性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性基材の表面を親水化する光反応性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
表面へ防曇性又は防汚性、帯電防止性、生体適合性といった機能を付与するために、疎水性基材の表面親水化が広く用いられている。その手法として、プラズマ処理、グロー放電処理、イオンエッチング等のような、疎水性ポリマー基材の表面に親水性の官能基を発生させる方法や、基材表面への界面活性剤の塗布もしくは基材への直接混練といった方法が用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、それらの方法は、厳しい条件で処理を行うため基材へダメージを与える点や、恒久的に親水性表面を保持することが難しい点といった問題点があった。
【0003】
一方、光反応性ポリマーを用いて疎水性ポリマー基材表面を親水化する方法も提案されている(特許文献1、2参照。)。これらの方法は効率的かつ簡便であるが、用いている光反応性基の反応性が低く、高強度かつ比較的長時間紫外線を照射しないと均一な親水化が達成できないため、基材が紫外線に弱い場合、紫外線照射により基材がダメージを受けるといった問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平3−505979号公報
【特許文献2】特開2010−59346号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】越智 光一、表面解析・改質の化学(日本接着学会編)、日刊工業新聞社、2003年、97〜145頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、効率的かつ簡便であり、基材へのダメージが少ない、疎水性(基材の)表面を親水化することが可能な光反応性ポリマーおよびこれを含む表面改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、親水性を有する官能基と、光反応性が高い官能基とを側鎖に有する、光反応性ポリマーを見出し、また該光反応性ポリマーを用いることで、疎水性ポリマー基材の表面を親水化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)で示される構造を有し、数平均分子量が1,000〜1,000,000である光反応性ポリマー。
【0009】
【化1】
(式中、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表し、Xは置換基を有しても良いフェニレン基、又は、エステル結合若しくはアミド結合で示される基を表し、Yはベタイン性基、アルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基から選ばれた親水性基を表し、Zは−O−又は−N(R)−で示される基を表し、Aは−O−又は−CH−で示される基を表し、R、R及びRは互いに独立して水素原子又はC〜Cの炭化水素基を表し、RはC〜Cの2価の炭化水素基を表し、Rはフッ素原子を表し、pは0〜4の整数を表す。)
[2]下記一般式(2)で示される構造を有する[1]に記載の光反応性ポリマー。
【0010】
【化2】
(式中、m、n、Z、A、R、R、R、R及びpは前記と同じ意味を表す。rの値は2〜90の整数を表す。)
[3]下記一般式(3)で示される構造を有する[1]に記載の光反応性ポリマー。
【0011】
【化3】
(式中、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表し、rの値は2〜90の整数を表し、RはC〜Cの2価の炭化水素基を表す。)
[4]m/(m+n)の値が0.02〜0.7である[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光反応性ポリマー。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
Xで表される置換基を有しても良いフェニレン基の置換基として、特に限定されないが、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基等が例示される。Xとしては、エステル結合が好ましい。
【0013】
Yで示される親水性基としては、ベタイン性基、アルコキシアルキル基、アルコキシポリオキシエチレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン基を挙げることができる。なお、本発明において「ベタイン性」とは、電離状態で正電荷を持つ部分と負電荷を持つ部分を同一基内の隣り合わない位置に有し、正電荷を有する原子には解離し得る水素原子が結合しておらず、全体としては中性である(電荷を持たない)ことをいうものとする。ベタイン性基としては特に限定されないが、カルボベタイン性基、スルホベタイン性基、ホスホベタイン性基、アミドベタイン性基等が例示される。アルコキシアルキル基としては特に限定されないが、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、4−メトキシブチル基が例示される。アルコキシポリオキシエチレン基としては特に限定されないが、例えば、メトキシポリオキシエチレン基、エトキシポリオキシエチレン基、ノルマルプロポキシポリオキシエチレン基、イソプロポキシポリオキシエチレン基が挙げられ、親水性の点でメトキシポリオキシエチレン基が好ましい。
【0014】
、R及びRで表されるC〜Cの炭化水素基としては特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が例示される。
【0015】
で表されるC〜Cの2価の炭化水素基としては特に限定されないが、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、フェニレン基等が例示される。Rで示される2価の炭化水素基の炭素数が2以下であると、光反応性ポリマーのガラス転移温度が上昇し側鎖の分子運動性が低下するためか、アジド基から生成するニトレンが基材との反応より光反応性ポリマー間の架橋反応に消費され、基材表面への光反応性ポリマー固定化率が低下してしまうため好ましくない。一方、Rで示される2価の炭化水素基の炭素数が6を越えると、光反応性ポリマー中のアジド基濃度が低下し、架橋点が減少して基材表面への光反応性ポリマー固定化率が低下してしまうため好ましくない。
【0016】
上記一般式(1)で示される構造を有する光反応性ポリマーにおいて、m及びnは互いに独立して1以上の整数を表す。ここで、m/(m+n)の値は、0.02〜0.7であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.5である。この範囲であれば、基材への接着性とタンパク質の吸着抑制効果の両立という点で優れる。
【0017】
一般式(1)中に含まれる、下記一般式(4)
【0018】
【化4】
(式中、R、X、Y及びnは前記と同じ意味を表す。)で表される構造単位としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等のモノマーに由来する構造単位が例示され、タンパク質吸着抑制効果の点から、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートや2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインに由来する構造単位が好ましい。
【0019】
一般式(1)中に含まれる、下記一般式(5)
【0020】
【化5】
(式中、R、R、R、A、Z、m及びpは前記と同じ意味を表す。)で表される構造単位としては、特に限定されないが、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート、4−(4−アジドフェノキシ)ブチルメタクリレート、5−(4−アジドフェノキシ)ペンチルメタクリレート、6−(4−アジドフェノキシ)ヘキシルメタクリレート、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリレート、4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリレート、4−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ブチルメタクリレート、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルアクリレート、4−(4−アジドフェニル)ブチルアクリレート、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリルアミド、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリルアミド、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルアクリルアミド、4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリルアミド、4−(4−アジドフェニル)ブチルアクリルアミド等のモノマーに由来する構造単位が例示され、アジドの光分解速度の点から、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートに由来する構造単位が好ましい。
【0021】
一般式(4)で表される構造単位と一般式(5)で表される構造単位との配列は特に限定されず、ランダム、ブロック、交互のいずれの順序であっても良い。
【0022】
一般式(1)で示される構造を有する光反応性ポリマーの数平均分子量は1,000〜1,000,000の範囲で選択できるが、コーティング時の粘度や溶解性、ポリマー層の機械的強度の観点から10,000〜500,000の範囲が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される多分散度(Mw/Mn)は、特に限定されるものではないが、例えば疎水性基材への接着性や塗膜の安定性の観点から1〜5程度が好ましい。
【0023】
上記一般式(1)で示される構造を有する光反応性ポリマーは、本発明の効果を逸脱しない範囲において、他のモノマー由来の構造単位を有してもかまわない。他のモノマー由来の構造単位としては、特に限定されないが、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルアニリン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニル安息香酸、ポリビニルリン酸、ポリビニルピリジン、ポリジメチルアミノメチルスチレン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソプレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン);ポリ酢酸ビニル、ポリプロピオン酸ビニル等のポリビニルエステルやそのケン化物であるポリビニルアルコール;ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリメタクリル酸、ポリパーフルオロアルキルメタクリレート、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリジメチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、等の(メタ)アクリルアミド系ポリマー等が例示される。
【0024】
本発明の光反応性ポリマーは、例えば、一般式(6)で示される構造を有する光反応性ポリマーであるものが挙げられる。
【0025】
【化6】
(式中、m、n、r及びRは前記と同じ意味を表す。)
rの値は、重合の進行しやすさから、2〜20の範囲の整数が好ましい。Rは、−(CH−または−(CH−であることが好ましく、更に好ましくは−(CH−である。
【0026】
上記一般式(1)で示される構造を有する光反応性ポリマーは、モノマー化合物の調製及びそれらの重合を含め、基本的には当業者の技術水準に基づき、常法により製造することができる。例えば、使用するモノマーとしては特に限定されないが、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等の親水性基を有するモノマーと、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート、4−(4−アジドフェノキシ)ブチルメタクリレート、5−(4−アジドフェノキシ)ペンチルメタクリレート、6−(4−アジドフェノキシ)ヘキシルメタクリレート、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリレート、4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリレート、4−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ブチルメタクリレート、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルアクリレート、4−(4−アジドフェニル)ブチルアクリレート、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリルアミド、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリルアミド、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルアクリルアミド、4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリルアミド、4−(4−アジドフェニル)ブチルアクリルアミド等の光反応性基を有するモノマーを用いる。
【0027】
重合については特に制約はなく、例えば、ラジカル重合、イオン重合、配位重合例示され、操作の簡便性の点から、ラジカル重合、特にフリーラジカル重合または、リビングラジカル重合が好ましく用いられる。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシジイソブチレート、過硫酸塩または過硫酸−亜硫酸水素塩等の公知のラジカル開始剤を用いることができる。重合溶媒としては、例えば、水、THF、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ベンゼン、トルエン、DMF、DMSO、メタノール、エタノール、イソプロパノールやその混合物等の公知のラジカル重合溶媒を使用すればよく、例えば、モノマー濃度が0.01〜5mol/L、重合開始剤濃度が1〜100mmol/Lになるように希釈し、0〜80℃で1〜72時間反応を行うことにより製造できる。また、重合形態としては特に制約はなく、例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合が例示され、操作の簡便性から溶液重合が好ましく用いられる。
【0028】
本発明の光反応性ポリマーは、表面親水化およびタンパク質吸着抑制等の各種表面改質に使用することができる。本発明の光反応性ポリマーの使用方法の詳細については後述する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、効率的且つ簡便であり、耐久性に優れた、疎水性基材表面の親水化およびタンパク質吸着抑制できる光反応性ポリマーを提供することができる。
【0030】
本発明の光反応性ポリマーは、各種疎水性ポリマー基材の表面を効率的且つ簡便に親水化することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を更に詳細に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
以下の実施例において、各物性の測定及び評価は次の方法で行った。
(1)光反応性ポリマー組成比
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、JNM−ECZ400S)を用いたプロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)スペクトル分析により求めた。重溶媒としてd−クロロホルムを用いて測定した。
【0033】
(2)光反応性ポリマーの物性
光反応性ポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)と多分散度(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー製 HLC−8320GPCを用い、カラムとしては、東ソー製 TSKgel GMHHR−Lを用い、カラム温度を40℃に設定し、溶離液としてTHFを用いて測定した。標準サンプルとして東ソー製単分散ポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算にて分子量換算を行った。
【0034】
(3)光反応性ポリマーの固定化量分析
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(Perkin Elmer社製、SPECTRUM ONE)を用いて測定した。光反応性ポリマー由来のエステルカルボニルピーク(1730cm−1前後)強度÷PVDF由来の870cm−1前後のピーク強度で算出した相対強度を求めた。
【0035】
(4)親水性
光反応性ポリマーを固定化することによる、基材の親水性に及ぼす影響を、水中接触角測定により評価した。この接触角測定は、水中でフィルム表面に気泡を接触させるcaptive bubble法を用いて測定した接触角θから求めた対水接触角(180−θ)にて評価した。実際の測定は、測定サンプルを一晩純水中に浸漬したのち、接触角計を用い、室温、常圧のもとで気泡を水中で表面に接触させ、接触角を測定した。
【0036】
参考例1 [3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートの合成]
500mLナス型フラスコに4−ブロモフェノール(51.9g,0.30mol)と炭酸カリウム(97.6g,0.75mol)を入れアルゴン置換した。脱水DMF(300mL)を加え、80℃で30分間加熱撹拌した。そこに3−ブロモ−1−プロパノール(50.0g,0.36mol)を加え80℃で20時間加熱撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で4−ブロモフェノールの消費を確認後、室温まで冷却した。水(400mL)を加え、有機相を酢酸エチルで抽出した(300mLx3)。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去することで3−(4−ブロモフェニル)−1−プロパノールを茶色オイルとして得た(66.4g,0.29mol,96%)。
H NMR(400MHz, CDCl,r.t.): δ 1.72(s,1H),2.00−2.07(m,2H), 3.83−3.89(m,2H),4.09(t,2H,J=6.0Hz),6.75−6.81(m,2H),7.35−7.39(m,2H)。
【0037】
500mLナス型フラスコに3−(4−ブロモフェニル)−1−プロパノール(68.6g,0.30mol)、ヨウ化銅(5.64g,29.6mmol)、L−アスコルビン酸ナトリウム(2.95g 14.9mmol)、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(4.80mL,44.7mmol)を加え、エタノール(210mL)、水(90mL)に溶解させた。反応容器をAr置換後、アジ化ナトリウム(34.6g,0.54mol)を加え5時間加熱還流した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で3−(4−ブロモフェニル)−1−プロパノールの消費を確認後、室温まで冷却した。飽和食塩水(200mL)加えた後にエバポレーターで有機溶媒を留去した。有機相を酢酸エチルで抽出した(200mLx3)。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた黒色オイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで3−(4−アジドフェニル)−1−プロパノールを茶色オイルとして得た(42.3g,0.22mol,73%)。H NMR(400MHz,CDCl,r.t.):δ 1.67−1.72(br,1H),2.05(quint like tt,2H,J=6.0,6.0Hz),3.83−−3.91(m,2H),4.11(t,2H,J=6.0Hz),6.87−6.92(m,2H),6.93−6.98(m,2H)。
500mLナス型フラスコに3−(4−アジドフェニル)−1−プロパノール(42.3g,0.22mol)、メタクリル酸(22.7g,0.26mol)、4−ジメチルアミノピリジン(26.8g,0.22mol)を加え、アルゴン置換後に塩化メチレン(400mL)に溶解させた。反応容器を氷浴中0℃で30分間撹拌した後に、DCC(56.2g,0.27mol)を加え、そのまま0℃で30分間撹拌した。氷浴を取り除き、室温で21時間撹拌した。TLC(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で3−(4−アジドフェニル)−1−プロパノールの消費を確認後、セライトろ過によって、析出したジシクロヘキシル尿素を取り除き、固体を酢酸エチル(500mL)で洗浄した。ろ液を濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することで3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートを茶色オイルとして得た(29.9g,0.11mol,52%)。H NMR(400MHz,CDCl,r.t.): δ 1.94(s,3H),2.16(quint like tt,2H,J=6.0,6.0 Hz),4.04(t,2H,J=6.0Hz),4.34(t,2H, J=6.0 Hz),5.57(t,1H,J=1.6Hz),6.09−6.12(br,1H),6.85−6.91(m,2H),6.9
2−6.97(m,2H)。
【0038】
参考例2 [3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリレートの合成]
4−ブロモフェノールに代えてペンタフルオロフェノール(55.2g、0.3mol)を用いたことを除いて、参考例1と同様に反応を行い、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリレートを黄色オイルとして得た(30.1g,0.09mol,Total収率30%)。H−NMR(400MHz,CDCl,r.t.): δ 1.94(s,3H),2.16(quint like tt,2H,J=6.0,6.0 Hz),4.04(t,2H,J=6.0Hz),4.34(t,2H, J=6.0 Hz),5.57(t,1H,J=1.6Hz),6.09−6.12(br,1H)。
【0039】
参考例3 [4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリレートの合成]
4−ブロモベンジルマグネシウムブロミドの0.25Mジエチルエーテル溶液(300ml、0.075mol)を500mlナス型フラスコに窒素下で注入し、−30℃に冷却後オキセタン(13.1g、0.225mol)とヨウ化銅(I)(1.5g、0.008mol)を加えた。その後徐々に昇温し、室温にて20時間反応させた。反応終了後水を加え、有機層を酢酸エチルで抽出し、抽出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機層を留去して茶色オイル状の目的物を得た(8.9g、0.039mol、52%)。H−NMR(400MHz, CDCl,r.t.): δ 1.56−1.68(m,5H),2.62(m,2H), 3.62(m,2H),6.75−6.81(m,2H),7.35−7.39(m,2H)。
【0040】
3−(4−ブロモフェニル)−1−プロパノールに代えて4−(4−ブロモフェニル)−1−ブタノールを用いたことを除いて、参考例1と同様に反応を行い、茶色オイル状の目的物を得た(5.5g、0.029mol、75%)。H−NMR(400MHz,CDCl,r.t.):δ 1.56−1.68(m,5H),2.62(m,2H),3.62(m,2H),6.87−6.92(m,2H),6.93−6.98(m,2H)。
【0041】
3−(4−アジドフェノキシ)−1−プロパノールに代えて4−(4−アジドフェニル)−1−ブタノールを用いたことを除いて、参考例1と同様に反応を行い、茶色オイル状の目的物を得た(4.1g、0.016mol、55%)。H−NMR(400MHz,CDCl,r.t.): δ1.2−1.85(m,4H), 1.94(s,3H),2.62(m,2H),4.14(m,2H),5.57(t,1H,J=1.6Hz),6.09−6.12(br,1H),6.85−6.91(m,2H),6.92−6.97(m,2H)。
【0042】
実施例1 [光反応性ポリマーの合成]
ガラス製のシュレンクフラスコにポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)(5.4g)および参考例1で製造した3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート(0.52g)、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(15mg)を秤量した。THFを用いてモノマー濃度0.8mol/L、開始剤濃度3.75mmol/Lとなるように希釈した。十分に溶液中の酸素を窒素で除去後、反応はウォーターバスを用いて60度で8時間行った。反応終了後、ヘキサンを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により、褐色の粘性体の光反応性ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mn=72,000、Mw/Mn=3.5であった。組成比は、H NMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート由来の芳香環ピーク(6.86−6.71,br,4H)の積分比によって決定し、下記構造式(7)において、m/(m+n)の値が0.09であった。
【0043】
光反応性ポリマーの構造式(7)
【0044】
【化7】
(rは、前記と同じ意味を表す。)
実施例2 [疎水性ポリマーフィルム表面への固定化]
4cm×4cmに切り出したポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム(GLサイエンス製、スマートバッグ2F)に、実施例1で合成した光反応性ポリマーの2質量%含有溶液(溶媒:THF)を調製することにより作製した表面改質剤を、2000rpmで一分間スピンコートした後、高圧水銀灯(東芝ライテック製H400P)により、2秒間UV照射(21mJ/cm)を行った。その後、THFを用いて掛け洗いし、表面が改質されたフィルム基材を得た。掛け洗い前後でのフィルム表面におけるエステルカルボニルピークの相対強度を比較し、光反応性ポリマーの固定化率を算出したところ、95%であった。
【0045】
実施例3 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例2で調製した光反応性ポリマーが固定化されたフィルム基材の接触角は約43°であり、親水性が高かった。これは、光反応性ポリマーに含まれるPEGMAユニットの親水性に由来するものであると考えられた。
【0046】
実施例4 [PVDF製多孔質膜への固定化]
PVDF製多孔質膜(マイクロダイン・ナディア社製MV020)を実施例1で合成した光反応性ポリマーの2質量%含有溶液(溶媒:メタノール)に5分間浸漬させた後、室温下、窒素雰囲気下で2時間放置し乾燥させた。次いで、高圧水銀灯(東芝ライテック製H400P)により、2秒間UV照射(21mJ/cm)を行った。その後、室温下、超純水、メタノール中で各2秒間超音波を照射することにより洗浄した。これにより、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0047】
実施例5 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
インスリン(和光純薬製)をサンプルタンパク質として使用した。実施例4で調製した表面改質した多孔質膜を1cm×1cmに切り出した。インスリン溶液(0.1mg/mL、PBSで希釈、5mL)中、室温下で2時間振とう(80rpm)させた後、PBSで洗浄した。φ12×105の試験管に試料を入れ、Thermo scientific製のBCA試薬を1mL、ドデシル硫酸ナトリウムの4重量%PBS溶液を1mL加え、1時間60℃で加熱した。その後、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、UH5300)を用いて波長562nmにおける抽出液の吸光度を測定することにより、膜へ吸着したインスリンの量を定量したところ、0.6μg/cmだった。表面改質した多孔質膜表面では、PEGMAユニットのタンパク質吸着抑制能が効果的に機能していることが示された。
【0048】
実施例6 [ポリエチレンへの固定化]
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムをポリエチレン(東ソー製、ペトロセンをフィルム状に成形したもの)に変えた以外は、実施例2と同様にしてフィルムの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は92%だった。
【0049】
実施例7 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例6で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は46°であった。
【0050】
実施例8 [多孔質膜への固定化]
PVDF製多孔質膜をポリエチレン製多孔質膜に変えた以外は実施例4と同様の操作により、表面が改質されたポリエチレン製多孔質膜を得た。
【0051】
実施例9 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例8で表面を改質したポリエチレン製多孔質膜を用いた以外は実施例6と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.8μg/cmだった。
【0052】
実施例10 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムをポリアミドフィルム(東レ製、ミクトロン)に変えた以外は、実施例2と同様にしてフィルムの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は90%だった。
【0053】
実施例11 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例10で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例4と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は54°であった。
【0054】
実施例12 [多孔質膜への固定化]
PVDF製多孔質膜をポリアミド製多孔質膜に変えた以外は実施例4と同様の操作により、表面が改質されたポリアミド製多孔質膜を得た。
【0055】
実施例13 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例12で調製したポリアミド製多孔質膜を用いた以外は実施例6と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、1.0μg/cmだった。
【0056】
実施例14 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
UV照射時間を2秒(21mJ/cm)から5秒(52.5mJ/cm)に変えた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は100%だった。
【0057】
実施例15 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例14で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例4と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は43°であった。
【0058】
実施例16 [多孔質膜への固定化]
UV照射時間を2秒(21mJ/cm)から5秒(52.5mJ/cm)に変えた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0059】
実施例17 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例16で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.4μg/cmだった。
【0060】
実施例18 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
UV照射時間を2秒(21mJ/cm)から30秒(315mJ/cm)に変えた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は100%だった。
【0061】
実施例19 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例18で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は42°であった。
【0062】
実施例20 [多孔質膜への固定化]
UV照射時間2秒(21mJ/cm)から30秒(315mJ/cm)に変えた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0063】
実施例21 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例20で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.4μg/cmだった。
【0064】
実施例22 [光反応性ポリマーの合成]
用いたAIBNの重量を15mgから30mgに変えた以外は実施例1と同様にして光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=33,000、Mw/Mn=2.1であり、m/(m+n)の値が0.09であった。
【0065】
実施例23 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例23で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は92%だった。
【0066】
実施例24 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例23で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は40°であった。
【0067】
実施例25 [多孔質膜への固定化]
実施例22で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0068】
実施例26 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例25で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.8μg/cmだった。
【0069】
実施例27 [光反応性ポリマーの合成]
ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートの数平均分子量を300から950に変えた以外は実施例1と同様にして光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=93,000、Mw/Mn=3.0であり、m/(m+n)の値が0.09であった。
【0070】
実施例28 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例27で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は95%だった。
【0071】
実施例29 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例28で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は45°であった。
【0072】
実施例30 [多孔質膜への固定化]
実施例27で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0073】
実施例31 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例30で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.5μg/cmだった。
【0074】
実施例32 [光反応性ポリマーの合成]
用いたポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)の重量を5.4gから4.2gに変え、光反応性モノマーの重量を0.52gから0.16gに変えた以外は実施例1と同様にして光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=44,000、Mw/Mn=2.6であり、m/(m+n)の値が0.3であった。
【0075】
実施例33 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例32で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は97%だった。
【0076】
実施例34 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例33で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は45°であった。
【0077】
実施例35 [多孔質膜への固定化]
実施例32で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0078】
実施例36 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例34で調製した光反応性ポリマーを固定化したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、15μg/cmだった。
【0079】
実施例37 [光反応性ポリマーの合成]
用いたポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)の重量を5.4gから3.0gに変え、光反応性モノマーの重量を0.52gから2.6gに変えた以外は実施例1と同様にして光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=30,000、Mw/Mn=3.0であり、m/(m+n)の値が0.5であった。
【0080】
実施例38 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例37で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は98%だった。
【0081】
実施例39 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例38で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は47°であった。
【0082】
実施例40 [多孔質膜への固定化]
実施例37で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0083】
実施例41 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例40で調製した光反応性ポリマーを固定化したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、22μg/cmだった。
【0084】
実施例42 [光反応性ポリマーの合成]
用いたポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)の重量を5.4gから5.94gに変え、光反応性モノマーの重量を0.52gから0.052gに変えた以外は実施例1と同様にして光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=70,000、Mw/Mn=2.7であり、m/(m+n)の値が0.01であった。
【0085】
実施例43 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例42で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は20%だった。
【0086】
実施例44 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例43で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は62°であった。
【0087】
実施例45 [多孔質膜への固定化]
実施例42で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0088】
実施例46 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例45で調製した光反応性ポリマーを固定化したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、45μg/cmだった。
【0089】
実施例47 [光反応性ポリマーの合成]
用いたポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)の重量を5.4gから0.6gに変え、光反応性モノマーの重量を0.52gから4.7gに変えた以外は実施例1と同様にして光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=68,000、Mw/Mn=3.7であり、m/(m+n)の値が0.9であった。
【0090】
実施例48 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例47で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は100%だった。
【0091】
実施例49 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例48で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は58°であった。
【0092】
実施例50 [多孔質膜への固定化]
実施例47で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0093】
実施例51 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例50で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、55μg/cmだった。
【0094】
実施例52 [光反応性ポリマーの合成]
ガラス製のシュレンクフラスコに、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量=300)(5.4g)および参考例1で製造した3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート(0.52g)、臭化銅(I)(14.4mg)、臭化銅(II)(5.7mg)、2,2‘−ビピリジン(39.1mg)を秤量した。3mLのアセトンを用いて希釈し、十分に溶液中の酸素を窒素で除去後、ウォーターバスを用いて50度に昇温した後、重合開始剤として2−ブチルイソ酪酸エチル(19.5mg)を加え、反応は50度で6時間行った。反応終了後、ヘキサンを用いて再沈殿法により未反応のモノマーを除去した。減圧乾燥により、褐色の粘性体の光反応性ポリマーを得た。得られたポリマーは、Mn=33,000、Mw/Mn=1.6であり、組成比はm/(m+n)の値が0.07であった。
【0095】
実施例53 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例52で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は96%だった。
【0096】
実施例54 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例53で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は44°であった。
【0097】
実施例55 [多孔質膜への固定化]
実施例52で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0098】
実施例56 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例55で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.4μg/cmだった。
【0099】
実施例57 [光反応性ポリマーの合成]
参考例1で製造した3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートの代わりに参考例2で製造した3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリレートを用いた以外は実施例1と同様にして下記構造式(7)に示す光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=109,000、Mw/Mn=5.2だった。組成比は、H NMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、3−(4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)プロピルメタクリレート由来のメチレンピーク(2.00−2.17,br,2H)の積分比によって決定し、下記構造式(8)において、m/(m+n)の値が0.05であった。
【0100】
光反応性ポリマーの構造式(8)
【0101】
【化8】
(rは、前記と同じ意味を表す。)
実施例58 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例57で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は92%だった。
【0102】
実施例59 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例58で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は47°であった。
【0103】
実施例60 [多孔質膜への固定化]
実施例57で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0104】
実施例61 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例60で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.4μg/cmだった。
【0105】
実施例62 [光反応性ポリマーの合成]
参考例1で製造した3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートの代わりに参考例3で製造した4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリレートを用いた以外は実施例1と同様にして下記構造式(8)に示す光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=61,000、Mw/Mn=2.5だった。組成比は、H NMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、4−(4−アジドフェニル)ブチルメタクリレート由来の芳香環ピーク(6.86−6.71,br,4H)の積分比によって決定し、下記構造式(8)において、m/(m+n)の値が0.09であった。
【0106】
光反応性ポリマーの構造式(9)
【0107】
【化9】
(rは、前記と同じ意味を表す。)
実施例63 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例62で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は94%だった。
【0108】
実施例64 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例63で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は44°であった。
【0109】
実施例65 [多孔質膜への固定化]
実施例62で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0110】
実施例66 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例65で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.4μg/cmだった。
【0111】
実施例67 [光反応性ポリマーの合成]
ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(数平均分子量=300)の代わりに2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を用いたこと以外は実施例1と同様にして下記構造式(9)に示す光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=44,000、Mw/Mn=2.6だった。組成比は、H NMRにて、MPC由来の−N(CHピーク(3.20−3.45,br,9H)と、3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレート由来の芳香環ピーク(6.86−6.71,br,4H)の積分比によって決定し、下記構造式(9)において、m/(m+n)の値が0.08であった。
【0112】
光反応性ポリマーの構造式(10)
【0113】
【化10】
実施例68 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例67で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は95%だった。
【0114】
実施例69 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例68で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は32°であった。
【0115】
実施例70 [多孔質膜への固定化]
実施例67で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0116】
実施例71 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例70で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.4μg/cmだった。
【0117】
実施例72 [光反応性ポリマーの合成]
ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートの数平均分子量を300から4000に換え、仕込み量を72gとしたこと、重合時間を24時間にしたこと以外は実施例1と同様にして光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=11,000、Mw/Mn=1.3であり、m/(m+n)の値が0.10であった。
【0118】
実施例73 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
実施例72で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は93%だった。
【0119】
実施例74 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
実施例73で調製した表面改質フィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は42°であった。
【0120】
実施例75 [多孔質膜への固定化]
実施例72で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0121】
実施例76 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
実施例75で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、0.4μg/cmだった。
【0122】
比較例1 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
未処理のPVDFフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は82°であった。
【0123】
比較例2 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
未処理のPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、63μg/cmだった。
【0124】
比較例3 [光反応性ポリマーの合成]
3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートの代わりに3−(4−アジドフェニルカルボキシ)エチルメタクリレートを用いた以外は実施例1と同様にして下記構造式(9)に示す光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=72,000、Mw/Mn=3.5だった。組成比は、H NMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、3−(4−アジドフェニルカルボキシ)エチルメタクリレート由来の芳香環ピーク(8.00−8.11,7.09−7.17,br,2H)の積分比によって決定し、下記構造式(10)において、m/(m+n)の値が0.09であった。光反応性ポリマーの構造式(11)
【0125】
【化11】
(rは、前記と同じ意味を表す。)
比較例4 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
比較例3で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例3と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は11%だった。
【0126】
比較例5 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例3で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は62°であった。
【0127】
比較例6 [多孔質膜への固定化]
比較例3で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0128】
比較例7 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
比較例6で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、47μg/cmだった。
【0129】
比較例8 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
UVの照射時間を2秒(21mJ/cm)から5秒(52.5mJ/cm)に変えた以外は、比較例4と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は23%だった。
【0130】
比較例9 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例8で表面を改質したフィルムを用いた以外は比較例5と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は59°であった。
【0131】
比較例10 [多孔質膜への固定化]
UVの照射時間を2秒(21mJ/cm)から5秒(52.5mJ/cm)に変えた以外は、比較例6と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0132】
比較例11 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
比較例10で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は比較例7と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、38μg/cmだった。
【0133】
比較例12 [疎水性ポリマー基材表面への固定化]
UVの照射時間を2秒(21mJ/cm)から30秒(315mJ/cm)に変えた以外は、比較例4と同様にしてフィルムへの光反応性ポリマーの固定化を行ったところ、固定化率は42%だった。
【0134】
比較例13 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例12で表面を改質したフィルムを用いた以外は比較例5と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は57°であった。
【0135】
比較例14 [多孔質膜への固定化]
UVの照射時間を2秒(21mJ/cm)から30秒(315mJ/cm)に変えた以外は、比較例6と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0136】
比較例15 [タンパク質吸着量抑制効果の確認]
比較例14で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は比較例7と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、29μg/cmだった。
【0137】
比較例16 [光反応性ポリマーの合成]
3−(4−アジドフェノキシ)プロピルメタクリレートの代わりに2−(4−アジドフェノキシ)エチルメタクリレート(参考例1において3−ブロモ−1−プロパノールに代えて2−ブロモ−1−エタノールを用い、同様の方法で製造)を用いた以外は実施例1と同様にして下記構造式(12)に示す光反応性ポリマーを合成した。得られたポリマーは、Mn=60,000、Mw/Mn=2.7だった。組成比は、H NMRにて、PEGMA由来の−OCHピーク(3.36−3.40,br,3H)と、2−(4−アジドフェノキシ)エチルメタクリレート由来の芳香環ピーク(6.86−6.71,br,4H)の積分比によって決定し、m/(m+n)の値が0.08であった。
【0138】
光反応性ポリマーの構造式(12)
【0139】
【化12】
比較例17 [疎水性ポリマーフィルム表面への固定化]
比較例16で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例2と同様にしてフィルムへの表面改質を行ったところ、光反応性ポリマーの固定化率は55%だった。
【0140】
比較例18 [水中接触角測定による表面の親水性(ぬれ性)評価]
比較例17で表面を改質したフィルムを用いた以外は実施例3と同様にして接触角の測定を行ったところ、対水接触角は57°であった。
【0141】
比較例19 [多孔質膜への固定化]
比較例16で合成した光反応性ポリマーを用いた以外は、実施例4と同様の操作により、表面が改質されたPVDF製多孔質膜を得た。
【0142】
比較例20 [タンパク質吸着量の測定]
比較例19で調製したPVDF製多孔質膜を用いた以外は実施例5と同様の操作によりインスリン吸着量を測定したところ、27μg/cmだった。
【0143】
【表1】