(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係る加工方法は、金属を含む積層体が裏面側に形成された板状の被加工物を加工するための加工方法であって、第1シート貼着ステップ(第1保護部材配設ステップ)(
図1(B)参照)、第1保持ステップ(
図2(A)参照)、レーザ加工ステップ(
図2(B)参照)、第2シート貼着ステップ(第2保護部材配設ステップ)(
図3(A)参照)、第2保持ステップ(
図3(B)参照)、及び切削ステップ(
図4参照)を含む。
【0014】
第1シート貼着ステップでは、裏面側に積層体を有する被加工物の裏面にシート(保護部材)を貼る(配設する)。第1保持ステップでは、被加工物の裏面側をレーザ加工装置のチャックテーブル(第1保持テーブル)で保持する。レーザ加工ステップでは、被加工物に吸収される波長(被加工物に対して吸収性を有する波長)のレーザビームを表面側に照射し、積層体に達しない深さのレーザ加工溝を切断予定ラインに沿って形成する。
【0015】
第2シート貼着ステップでは、被加工物の表面にシート(保護部材)を貼る(配設する)。第2保持ステップでは、被加工物の表面側を切削装置のチャックテーブル(第2保持テーブル)で保持する。切削ステップでは、有機酸と酸化剤とを含む切削液を供給しながらレーザ加工溝の底部を切削し、被加工物を積層体とともに切断予定ラインに沿って切断する。以下、本実施形態に係る加工方法について詳述する。
【0016】
図1(A)は、本実施形態に係る加工方法で加工される被加工物11の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1(A)に示すように、本実施形態の被加工物11は、シリコン(Si)等の半導体材料を用いて円盤状に形成されたウェーハであり、その表面11a側は、中央のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられる。
【0017】
デバイス領域は、格子状に配列された切断予定ライン(ストリート)13で更に複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。また、被加工物11の裏面11b側には、金属を含む積層体17が設けられている。この積層体17は、例えば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)等でなる厚みが数μm程度の多層金属膜であり、電極等として機能する。この積層体17は、切断予定ライン13と重なる領域にも形成されている。
【0018】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。同様に、デバイス15や積層体17の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。例えば、電極として機能する積層体17が切断予定ライン13に沿って形成されたパッケージ基板等を被加工物11として用いることもできる。
【0019】
本実施形態の加工方法では、まず、上述した被加工物11の裏面11bにシート(保護部材)を貼る(配設する)第1シート貼着ステップ(第1保護部材配設ステップ)を行う。
図1(B)は、第1シート貼着ステップを説明するための斜視図である。
図1(B)に示すように、第1シート貼着ステップでは、被加工物11よりも径の大きい樹脂製のシート(保護部材)21を被加工物11の裏面側11bに貼る。また、シート21の外周部分に環状のフレーム23を固定する。
【0020】
これにより、被加工物11は、シート21を介して環状のフレーム23に支持される。なお、本実施形態では、シート21を介して環状のフレーム23に支持された状態の被加工物11を加工する例について説明するが、シート21やフレーム23を用いずに被加工物11を加工することもできる。この場合には、第1シート貼着ステップが省略される。また、樹脂製のシート21の代わりに、被加工物11と同等のウェーハやその他の基板等を保護部材として被加工物11に貼っても良い。
【0021】
第1シート貼着ステップの後には、被加工物11をレーザ加工装置のチャックテーブル(第1保持テーブル)で保持する第1保持ステップを行う。
図2(A)は、第1保持ステップを説明するための一部断面側面図である。第1保持ステップは、例えば、
図2(A)に示すレーザ加工装置2を用いて行われる。レーザ加工装置2は、被加工物11を吸引、保持するためのチャックテーブル(第1保持テーブル)4を備えている。
【0022】
チャックテーブル4は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル4の下方には、移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル4は、この移動機構によって加工送り方向(第1水平方向)及び割り出し送り方向(第2水平方向)に移動する。
【0023】
チャックテーブル4の上面の一部は、被加工物11(シート21)を吸引、保持するための保持面4aになっている。保持面4aは、チャックテーブル4の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面4aに作用させることで、被加工物11は、チャックテーブル4に吸引、保持される。このチャックテーブル4の周囲には、環状のフレーム23を固定するための複数のクランプ6が設けられている。
【0024】
第1保持ステップでは、まず、被加工物11の裏面11b側に貼られているシート21をチャックテーブル4の保持面4aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、クランプ6でフレーム23を固定する。これにより、被加工物11は、表面11a側が上方に露出した状態で保持される。
【0025】
第1保持ステップの後には、被加工物11の表面11a側からレーザビームを照射して、積層体17に達しない深さのレーザ加工溝を切断予定ラインに沿って形成するレーザ加工ステップを行う。レーザ加工ステップは、引き続きレーザ加工装置2を用いて行われる。
図2(B)は、レーザ加工ステップを説明するための一部断面側面図である。
図2(B)に示すように、レーザ加工装置2は、チャックテーブル4の上方に配置されたレーザ照射ユニット8を更に備えている。
【0026】
レーザ照射ユニット8は、レーザ発振器(不図示)でパルス発振されたレーザビーム8aを所定の位置に照射、集光する。レーザ発振器は、被加工物11に吸収される波長(被加工物11に対して吸収性を有する波長、吸収され易い波長)のレーザビーム8aをパルス発振できるように構成されている。
【0027】
レーザ加工ステップでは、まず、チャックテーブル4を回転させて、対象となる切断予定ライン13の伸長する方向をレーザ加工装置2の加工送り方向に合わせる。また、チャックテーブル4を移動させて、対象となる切断予定ライン13の延長線上にレーザ照射ユニット8の位置を合わせる。
【0028】
そして、
図2(B)に示すように、レーザ照射ユニット8から、被加工物11の露出した表面11aに向けてレーザビーム8aを照射しながら、チャックテーブル4を加工送り方向に移動させる。ここでは、例えば、被加工物11の表面11aや内部等にレーザビーム8aを集光させる。また、レーザビーム8aのエネルギー(パワー、繰り返し周波数等)は、被加工物11を切断しない範囲で調整される。
【0029】
これにより、対象となる切断予定ライン13に沿ってレーザビーム8aを照射し、積層体17に達しない深さのレーザ加工溝19aを切断予定ライン13に沿って形成できる。上述の動作を繰り返し、例えば、全ての切断予定ライン13に沿ってレーザ加工溝19aが形成されると、レーザ加工ステップは終了する。
【0030】
レーザ加工ステップの後には、被加工物11の表面11aにシート(保護部材)を貼る(配設する)第2シート貼着ステップ(第2保護部材配設ステップ)を行う。
図3(A)は、第2シート貼着ステップを説明するための斜視図である。
図3(A)に示すように、第2シート貼着ステップでは、被加工物11よりも径の大きい樹脂製のシート(保護部材)25を被加工物11の表面11aに貼る。また、シート25の外周部分に環状のフレーム27を固定する。
【0031】
これにより、被加工物11は、シート25を介して環状のフレーム27に支持される。なお、本実施形態では、シート25を介して環状のフレーム27に支持された状態の被加工物11を加工する例について説明するが、シート25やフレーム27を用いずに被加工物11を加工することもできる。この場合には、第2シート貼着ステップが省略される。また、樹脂製のシート25の代わりに、被加工物11と同等のウェーハやその他の基板等を保護部材として被加工物11に貼っても良い。
【0032】
第2シート貼着ステップの後には、被加工物11を切削装置のチャックテーブル(第2保持テーブル)で保持する第2保持ステップを行う。
図3(B)は、第2保持ステップを説明するための一部断面側面図である。なお、第2保持ステップの前には、表面11a側のシート21及びフレーム23が除去される。第2保持ステップは、例えば、
図3(B)に示す切削装置12を用いて行われる。切削装置12は、被加工物11を吸引、保持するためのチャックテーブル(第2保持テーブル)14を備えている。
【0033】
チャックテーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14の下方には、加工送り機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル14は、この加工送り機構によって加工送り方向(第1水平方向)に移動する。
【0034】
チャックテーブル14の上面の一部は、被加工物11(シート25)を吸引、保持するための保持面14aになっている。保持面14aは、チャックテーブル14の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面14aに作用させることで、被加工物11は、チャックテーブル14に吸引、保持される。このチャックテーブル14の周囲には、環状のフレーム27を固定するための複数のクランプ16が設けられている。
【0035】
第2保持ステップでは、まず、被加工物11の表面11a側に貼られているシート25をチャックテーブル14の保持面14aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、クランプ16でフレーム27を固定する。これにより、被加工物11は、裏面11b側の積層体17が上方に露出した状態で保持される。
【0036】
第2保持ステップの後には、レーザ加工溝19aの底部を切削し、被加工物11を積層体17とともに切断予定ライン13に沿って切断する切削ステップを行う。
図4は、切削ステップを説明するための一部断面側面図である。切削ステップは、引き続き切削装置12を用いて行われる。
図4に示すように、切削装置12は、チャックテーブル14の上方に配置された切削ユニット18を更に備えている。
【0037】
切削ユニット18は、加工送り方向に対して概ね垂直な回転軸となるスピンドル(不図示)を備えている。スピンドルの一端側には、結合材に砥粒が分散されてなる環状の切削ブレード20が装着されている。スピンドルの他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドルの一端側に装着された切削ブレード20は、この回転駆動源から伝わる力によって回転する。
【0038】
また、スピンドルは、移動機構(不図示)に支持されている。切削ブレード20は、この移動機構によって、加工送り方向に垂直な割り出し送り方向(第2水平方向)、及び鉛直方向に移動する。切削ブレード20の側方には、一対のノズル22が切削ブレード20を挟むように配置されている。ノズル22は、切削ブレード20や被加工物11に対して切削液24を供給できるように構成される。
【0039】
切削ステップでは、まず、チャックテーブル14を回転させて、対象となるレーザ加工溝19a(すなわち、切断予定ライン13)の伸長する方向を切削装置2の加工送り方向に合わせる。また、チャックテーブル14及び切削ユニット18を相対的に移動させて、対象となるレーザ加工溝19aの延長線上に切削ブレード20の位置を合わせる。そして、切削ブレード20の下端を積層体17の下面より低い位置まで移動させる。なお、例えば、赤外線に感度のあるカメラ等を用いることで、レーザ加工溝19aの位置を裏面11b側から確認できる。
【0040】
その後、切削ブレード20を回転させながら加工送り方向にチャックテーブル14を移動させる。併せて、ノズル22から、切削ブレード20及び被加工物11に対し、有機酸と酸化剤とを含む切削液24を供給する。これにより、対象のレーザ加工溝19aに沿って切削ブレード20を切り込ませ、レーザ加工溝19aの底部を切削して、積層体17とともに被加工物11を厚み方向に切断するようなカーフ(切り口)19bを形成できる。
【0041】
本実施形態のように、切削液24に有機酸を含ませることで、積層体17中の金属を改質して、その延性を抑えることができる。また、切削液24に酸化剤を含ませることで、積層体17中の金属の表面が酸化し易くなる。その結果、積層体17中の金属の延性を十分に下げて加工性を高められる。
【0042】
切削液24に含まれる有機酸としては、例えば、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基と少なくとも1つのアミノ基とを有する化合物を用いることができる。この場合、アミノ基のうち少なくとも1つは、2級又は3級のアミノ基であると好ましい。また、有機酸として用いる化合物は、置換基を有していてもよい。
【0043】
有機酸として用いることのできるアミノ酸としては、グリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、グリシルグリシン、ヒドロキシエチルグリシン、N−メチルグリシン、β−アラニン、L−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−アロイソロイシン、L−イソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロキシン、L−チロシン、3,5−ジヨード−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−カナバニン、L−シトルリン、L−アルギニン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、エルゴチオネイン、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等が挙げられる。中でも、グリシン、L−アラニン、L−プロリン、L−ヒスチジン、L−リシン、ジヒドロキシエチルグリシンが好ましい。
【0044】
また、有機酸として用いることのできるアミノポリ酸としては、イミノジ酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラメチレンスルホン酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、β−アラニンジ酢酸、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸等が挙げられる。
【0045】
更に、有機酸として用いることのできるカルボン酸としては、ギ酸、グリコール酸、プロピオン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、コハク酸、ピメリン酸、メルカプト酢酸、グリオキシル酸、クロロ酢酸、ピルビン酸、アセト酢酸、グルタル酸等の飽和カルボン酸や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和カルボン酸、安息香酸類、トルイル酸、フタル酸類、ナフトエ酸類、ピロメット酸、ナフタル酸等の環状不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0046】
切削液24に含まれる酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化物、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、セリウム酸塩、バナジン酸塩、オゾン水および銀(II)塩、鉄(III)塩や、その有機錯塩等を用いることができる。
【0047】
また、切削液24には、防食剤が混合されても良い。防食剤を混合することで、被加工物11に含まれる金属の腐食(溶出)を防止できる。防食剤としては、例えば、分子内に3つ以上の窒素原子を有し、且つ、縮環構造を有する複素芳香環化合物、又は、分子内に4つ以上の窒素原子を有する複素芳香環化合物を用いることが好ましい。更に、芳香環化合物は、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基を含むことが好ましい。具体的には、テトラゾール誘導体、1,2,3−トリアゾール誘導体、及び1,2,4−トリアゾール誘導体であることが好ましい。
【0048】
防食剤として用いることのできるテトラゾール誘導体としては、テトラゾール環を形成する窒素原子上に置換基を有さず、且つ、テトラゾールの5位に、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された置換基、又は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル基が導入されたものが挙げられる。
【0049】
また、防食剤として用いることのできる1,2,3−トリアゾール誘導体としては、1,2,3−トリアゾール環を形成する窒素原子上に置換基を有さず、且つ、1,2,3−トリアゾールの4位及び/又は5位に、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された置換基、或いは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル基又はアリール基が導入されたものが挙げられる。
【0050】
また、防食剤として用いることのできる1,2,4−トリアゾール誘導体としては、1,2,4−トリアゾール環を形成する窒素原子上に置換基を有さず、且つ、1,2,4−トリアゾールの2位及び/又は5位に、スルホ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された置換基、或いは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アミノ基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、及びスルホンアミド基からなる群より選択された少なくとも1つの置換基で置換されたアルキル基又はアリール基が導入されたものが挙げられる。
【0051】
上述の手順を繰り返し、全ての切断予定ライン13に沿って被加工物11が切断されると、切削ステップは終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る加工方法では、有機酸と酸化剤とを含む切削液24を被加工物11に供給しながら切削を遂行するので、積層体17に含まれる金属を有機酸と酸化剤とで改質してその延性を低下させながら切削を遂行できる。これにより、加工の速度を高めてもバリの発生を抑制できる。すなわち、加工の品質を維持しながら加工の速度を高められる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施できる。例えば、レーザ加工ステップで形成されるレーザ加工溝の幅を、切削ステップで使用される切削ブレードの厚みより広くしても良い。つまり、切削ステップで使用される切削ブレードの厚みを、レーザ加工ステップで形成されるレーザ加工溝の幅より薄くしても良い。
【0054】
図5(A)は、変形例に係るレーザ加工ステップを説明するための一部断面側面図であり、
図5(B)は、変形例に係る切削ステップを説明するための一部断面側面図である。
図5(A)に示すように、変形例に係るレーザ加工ステップは、上記実施形態と同様のレーザ加工装置2を用いて行われる。
【0055】
変形例に係るレーザ加工ステップでは、まず、チャックテーブル4を回転させて、対象となる切断予定ライン13の伸長する方向をレーザ加工装置2の加工送り方向に合わせる。また、チャックテーブル4を移動させて、対象となる切断予定ライン13の延長線上にレーザ照射ユニット8の位置を合わせる。
【0056】
そして、
図5(A)に示すように、レーザ照射ユニット8から、被加工物11の露出した裏面11bに向けてレーザビーム8bを照射しながら、チャックテーブル4を加工送り方向に移動させる。ここでは、例えば、被加工物11の表面11aや内部等にレーザビーム8bを集光させる。また、レーザビーム8bのエネルギー(パワー、繰り返し周波数等)は、被加工物11を切断しない範囲で調整される。
【0057】
これにより、対象となる切断予定ライン13に沿ってレーザビーム8bを照射し、積層体17に達しない深さのレーザ加工溝19cを切断予定ライン13に沿って形成できる。なお、このレーザ加工ステップでは、後の切削ステップで使用される切削ブレードの厚みよりも幅の広いレーザ加工溝19cを形成できるように、レーザビーム8bの照射条件を調整すると良い。上述の動作を繰り返し、例えば、全ての切断予定ライン13に沿ってレーザ加工溝19cが形成されると、変形例に係るレーザ加工ステップは終了する。
【0058】
レーザ加工ステップの後には、第2シート貼着ステップを行わずに、第2保持ステップを行う。変形例に係る第2保持ステップは、上記実施形態と同様の切削装置12を用いて行われる。第2保持ステップでは、まず、被加工物11の裏面11b側に貼られているシート21をチャックテーブル14の保持面14aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。併せて、クランプ16でフレーム23を固定する。これにより、被加工物11は、表面11a側が上方に露出した状態で保持される。
【0059】
第2保持ステップの後には、切削ステップを行う。変形例に係る切削ステップは、引き続き切削装置12を用いて行われる。ただし、この変形例に係る切削ステップでは、レーザ加工溝19cの幅より厚みの薄い切削ブレード20が使用される。
【0060】
まず、チャックテーブル14を回転させて、対象となるレーザ加工溝19c(すなわち、切断予定ライン13)の伸長する方向を切削装置2の加工送り方向に合わせる。また、チャックテーブル14及び切削ユニット18を相対的に移動させて、対象となるレーザ加工溝19cの延長線上に切削ブレード20の位置を合わせる。そして、切削ブレード20の下端を積層体17の下面より低い位置まで移動させる。
【0061】
その後、切削ブレード20を回転させながら加工送り方向にチャックテーブル14を移動させる。併せて、ノズル22から、切削ブレード20及び被加工物11に対し、有機酸と酸化剤とを含む切削液24を供給する。これにより、対象のレーザ加工溝19cに沿って切削ブレード20を切り込ませ、レーザ加工溝19cの底部を切削して、積層体17とともに被加工物11を厚み方向に切断するようなカーフ(切り口)19dを形成できる。
【0062】
このように、切削液24に有機酸を含ませることで、積層体17中の金属を改質して、その延性を抑えることができる。また、切削液24に酸化剤を含ませることで、積層体17中の金属の表面が酸化し易くなる。その結果、積層体17中の金属の延性を十分に下げて加工性を高められる。
【0063】
また、変形例に係る切削ステップでは、レーザ加工溝19cの幅より厚みの薄い切削ブレード20を使用しているので、レーザ加工溝19cと切削ブレード20との間に切削液24が溜まりやすい。その結果、積層体17に十分な量の切削液24を供給できるようになり、被加工物11の加工性を更に高めることができる。
【0064】
なお、上述した変形例では、第2シート貼着ステップを行わずに第2保持ステップ及び切削ステップを行っているが、第2シート貼着ステップを行った上で、第2保持ステップや切削ステップを行っても良い。この場合には、被加工物11の表面11a側をチャックテーブル14で保持し、裏面11b側に切削ブレード20を切り込ませる。また、上述した実施形態において、第2シート貼着ステップを行わずに第2保持ステップ及び切削ステップを行うこともできる。
【0065】
また、上述した切削ステップでは、切削ブレード20を挟む一対のノズル22から切削液24を供給しているが、切削液24を供給するためのノズルの態様に特段の制限はない。
図6は、切削液24を供給するための別の態様のノズルを示す側面図である。
図6に示すように、変形例に係る切削ユニット18は、切削ブレード20及び一対のノズル22に加え、切削ブレード20の前方(又は後方)に配置されるノズル(シャワーノズル)26を有している。
【0066】
このノズル26から切削液24を供給することで、カーフ(切り口)19b,19dに切削液24が供給され易くなって、積層体17中の金属をより効果的に改質できるようになる。特に、
図6に示すように、ノズル26の噴射口を斜め下方(例えば、切削ブレード20の加工点付近)に向けると、カーフ19b,19dに多くの切削液24を供給、充填して、積層体17中の金属を更に効果的に改質できるので好ましい。なお、
図6では、一対のノズル22とともにノズル26を用いているが、ノズル26のみを単独で用いても良い。
【0067】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。