特許第6890968号(P6890968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6890968
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/48 20060101AFI20210607BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20210607BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20210607BHJP
   B65D 90/54 20060101ALN20210607BHJP
【FI】
   F16J15/48
   F16J12/00 D
   F16J15/10 C
   F16J15/10 T
   F16J15/10 Y
   !B65D90/54 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-251333(P2016-251333)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-105389(P2018-105389A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 悌二
(72)【発明者】
【氏名】菅原 由季
(72)【発明者】
【氏名】風間 良秋
(72)【発明者】
【氏名】三澤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】七五三木 浩一
【審査官】 的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−260891(JP,A)
【文献】 特開2011−202744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
F16J 12/00−15/32
15/324−15/3296
15/46−15/53
H01L 21/67−21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空状態になる圧力容器本体と、前記圧力容器本体内に配された搬送用ロボットと、前記搬送用ロボットが設けられ前記圧力容器本体の下部の開口を閉塞する底板体と、前記圧力容器本体と前記底板体との間をシールするシール部材と、を備えた圧力容器において
前記圧力容器本体の剛性は前記底板体の剛性より低く、
前記シール部材は、前記開口の周囲に取り付けられる第1のシール部と、前記底板体の外周面に取り付けられる第2のシール部と、前記第1のシール部と前記第2のシール部とを連結し可撓性を有する連結部と、を備えることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記第1のシール部は第1のOリングであり、前記第2のシール部は第2のOリングであることを特徴とする請求項1に記載の圧力容器
【請求項3】
前記第1のOリングの周長と前記第2のOリングの周長とは異なることを特徴とする請求項2に記載の圧力容器
【請求項4】
前記連結部の硬度は前記第1のOリング及び前記第2のOリングの硬度より低く、前記連結部の伸び率は前記第1のOリング及び前記第2のOリングの伸び率より高いことを特徴とする請求項2または3に記載の圧力容器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空チャンバ等の圧力容器の開閉部、例えば特許文献1の図2に開示されるような圧力容器の開口部と該開口部を閉塞する蓋体との間には、両者の隙間を密閉するOリング(オーリング)が設けられる。
【0003】
また、通常、Oリングに予圧を与えてシール性を高めるため、蓋体(Oリングの押え部材)は圧力容器にOリングを介して締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Oリングの押え部材が、圧力容器の所望の取付面にOリングを介して締結されることで、押え部材は圧力容器とほぼ一体的な構造になってしまう。
【0006】
従って、圧力容器内部が大気状態から高真空状態に至る際に、差圧によって圧力容器に変形が生じると、Oリングの押え部材など、圧力容器に取り付けた部品や、その取付面にも変形や変位が生じるおそれがあった。
【0007】
そのため、上記の変形を考慮して圧力容器の板厚を厚くしたり、補強のためのリブを追加するなどして、圧力容器に必要以上の剛性を付加する必要が生じ、圧力容器の重量が増大するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決したもので、構造体間の間隙を、構造体間で変形の影響が伝わり難い構成で閉塞可能な圧力容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
内部が真空状態になる圧力容器本体と、前記圧力容器本体内に配された搬送用ロボットと、前記搬送用ロボットが設けられ前記圧力容器本体の下部の開口を閉塞する底板体と、前記圧力容器本体と前記底板体との間をシールするシール部材と、を備えた圧力容器において、前記圧力容器本体の剛性は前記底板体の剛性より低く、前記シール部材は、前記開口の周囲に取り付けられる第1のシール部と、前記底板体の外周面に取り付けられる第2のシール部と、前記第1のシール部と前記第2のシール部とを連結し可撓性を有する連結部と、を備えることを特徴とする圧力容器に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成したから、構造体間の間隙を、構造体間で変形の影響が伝わり難い構成で閉塞可能な圧力容器となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例の概略説明断面図である。
図2】本実施例の要部の拡大概略説明断面図である。
図3】本実施例の要部の拡大概略説明断面図である。
図4】本実施例のシール部材の概略説明斜視図である。
図5】別例1の概略説明断面図である。
図6】別例2の概略説明斜視図である。
図7】別例3の概略説明断面図である。
図8】別例3の要部の拡大概略説明図である。
図9】別例4の概略説明図である。
図10】シール部の断面形状例を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0013】
一方の構造体に一端側シール部2を取り付け、他方の構造体に他端側シール部3を取り付けて構造体間の間隙を閉塞する。この際、圧力容器内が高真空状態に至り、いずれか一方の構造体が変形しても、この一方の構造体の変形に追従して連結部4が可動変形することで、一方の構造体の変形の影響が他方の構造体に伝わり難くなり(構造体同士が縁切りされ)、一方の構造体の変形に伴う他方の構造体の変形が抑制される。
【0014】
従って、例えば、変形しても他の部材への影響が少ない変形を許容できる構造体には、板厚を厚くする等して必要以上の剛性を付与する必要がなくなり、剛性が必要な構造体にのみ変形しない程度の剛性を付与すればよく、よって、装置重量の増加を抑制可能となる。
【実施例】
【0015】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0016】
本実施例は、対を成す構造体と、前記構造体同士の間隙を密封状態で閉塞するシール部材1とを備える圧力容器であって、前記シール部材1は、一方の前記構造体に取り付けられる一端側シール部2と、他方の前記構造体に取り付けられる他端側シール部3と、前記一端側シール部2と前記他端側シール部3とを連結し表面が平坦な可撓性を有する連結部4とから成る構成である。
【0017】
具体的には本実施例は、例えば真空成膜装置の各真空室を構成する圧力容器であり、図1に図示したような圧力容器本体11と、圧力容器本体11に設けた円形状の上部開口部を閉塞する円板状の蓋体12、同じく圧力容器本体11に設けた矩形状の下部開口部を閉塞する矩形板状の底板体13との間の間隙を夫々別々のシール部材1により密閉状態で閉塞するものである。図1中、符号30は圧力容器本体11及び底板体13を支持する支持脚、31は支持脚31が設置される架台である。
【0018】
また、対を成す構造体(圧力容器本体11と蓋体12及び圧力容器本体11と底板体13)は、一方を大気圧によって変形し難い構成とし、他方を大気圧によって変形し易い構成としている。
【0019】
本実施例の蓋体12及び底板体13は、内部機構系、例えば基板を保持するための基板保持部14や蒸発源を基板に対して移動させるための移動機構15等が取り付けられる部材であり、圧力容器内部を大気状態とした場合と真空状態とした場合とで、変形や変位が可及的に生じないものである必要がある。
【0020】
一方、圧力容器本体11は、内部を高真空状態とした場合に大気圧との差圧により多少変形しても、この変形が蓋体12及び底板体13に伝わらないのであれば、内部機構系には特に影響はない。
【0021】
従って、本実施例においては、圧力容器内部を高真空状態とした際に変形しない程度に蓋体12及び底板体13の剛性を高くして大気圧によって変形し難い構成とする一方、圧力容器本体11には必要以上の剛性を付与せず、圧力容器内部が高真空状態に至った際に差圧により変形し易い構成としている。
【0022】
1つ目のシール部材1は、図2に図示したように、一方の構造体である圧力容器本体11の上部開口の周囲に取り付けられる一端側シール部2と、圧力容器本体11の上部開口の内周面16aと対向する他方の構造体である蓋体12の外周面17に沿って取り付けられる他端側シール部3と、前記一端側シール部2と前記他端側シール部3とを連結し表面が平坦な可撓性を有する帯状の連結部4とから成る構成である。1つ目のシール部材1(上側のシール部材1)は全体として円環状である。
【0023】
2つ目のシール部材1は、図2に図示したように、一方の構造体である圧力容器本体11の下部開口の周囲に取り付けられる一端側シール部2と、圧力容器本体11の下部開口の内周面16bと対向する他方の構造体である底板体13の外周面18に沿って取り付けられる他端側シール部3と、前記一端側シール部2と前記他端側シール部3とを連結し表面が平坦な可撓性を有する帯状の連結部4とから成る構成である。2つ目のシール部材1(下側のシール部材1)は全体として角環状である。
【0024】
図4に図示したように、シール部材1の一端側シール部2及び他端側シール部3は夫々断面円形のOリング2,3である(第一のOリング2及び第二のOリング3)。即ち、本実施例のシール部材1は、第一及び第二のOリング2,3の双方を当該Oリング2,3の全周に渡って連結する連結部4を有し、前記第一及び第二のOリング2,3の周長が異なる二重型のシール部材である。このシール部材1により構造体間の間隙の全体が覆われて密閉状態で閉塞される。また、Oリング2,3の厚さは連結部4より厚く設定されている。
【0025】
連結部4は前記対を成す構造体の相対的な可動を所望の範囲内で許容するように構成されている。具体的には、図3に図示したように、圧力容器内部を真空状態とした際に、構造体間にズレが生じても良好に弾性変形し、構造体が変形しても断裂しない程度の所定の可撓性を有する構成としている。
【0026】
本実施例のシール部材1はゴム製の一体成型品である。
【0027】
なお、第一及び第二のOリング2,3と連結部4とで硬度や伸び率を異ならせても良い。例えば連結部4の硬度を第一及び第二のOリング2,3より低く、連結部4の伸び率を第一及び第二のOリング2,3より高くした場合には、連結部4の弾性変形が一層良好に行われる。
【0028】
シール部材1は第一及び第二のOリング2,3を夫々押しつぶすようにして夫々構造体に取り付けられる環状の取付部材5a,5b,6a,6bにより押圧固定される。上側のシール部材1の取付部材5a,5bは円環状、下側のシール部材1の取付部材6a,6bは角環状である。図中符号7は、取付部材5a,5b,6a,6bを締結するためのネジである。
【0029】
本実施例においては、圧力容器本体11と蓋体12との間隙を閉塞する上側のシール部材1の第一のOリング2及び第二のOリング3は圧力容器の外側に取り付けられ、圧力容器本体11と底板体13との間隙を閉塞する下側のシール部材1の第一のOリング2及び第二のOリング3は圧力容器の内側に取り付けられている。
【0030】
従って、蓋体12を取り外すことで、圧力容器本体11の上部開口を通じて下側のシール部材1の交換を行うことが可能となり、支持脚31により圧力容器本体11及び底板体13が支持される構成であっても下側のシール部材1の交換を容易に行えることになる。
【0031】
取付部材5a,5b,6a,6bの内面全周にはOリング2,3を押圧する傾斜面20a,20b,21a,21bを有する溝部22a,22b,23a,23bが設けられている。また、圧力容器本体11、蓋体12及び底板体13の取付部材5a,5b,6a,6bとの対向面には取付部材の傾斜面20a,20b,21a,21bと対向する傾斜面24a,24b,25a,25bを有する溝部26a,26b,27a,27bが設けられている。各溝部は対向して略アリ溝状を呈するように、各傾斜面が先端側ほど、対向する構造体若しくは取付部材に近接するように傾斜するように設定されており、この傾斜面で挟まれたOリング2,3がより確実に圧縮されるように構成されている。
【0032】
また、取付部材5a,5b,6a,6bと圧力容器本体11、蓋体12及び底板体13との間には夫々間隙28が設けられ、この間隙28を通過する大気により対向する前記傾斜面同士に挟まれるOリング2,3が該傾斜面に押し付けられるように構成されている。従って、Oリング2,3による構造体同士の間隙の密閉閉塞が一層良好に行われる。
【0033】
なお、本実施例は上述のように圧力容器に2つのシール部材を設けた構成としているが、1つのシール部材を設ける構成でも、3つ以上のシール部材を設ける構成としても良い。
【0034】
例えば図5に図示した別例1のように、圧力容器本体11の下部にのみ円形状の開口を設け、この開口を閉塞する円板状の底板体13と圧力容器本体11との隙間をシール部材1により閉塞する構成としても良い。別例1では、底板体13に搬送用ロボット29を設け、底板体13を支持台32で支持する構成としている。
【0035】
この場合、底板体13及び支持体32が圧力容器内部を真空状態とした際に変形しない程度の剛性を付与しておけば、圧力容器本体11が変形してもこの変形や振動は底板体13及び搬送用ロボット29に影響しない構成とすることができ、圧力容器内部の大気状態・真空状態を問わず搬送用ロボット29のロボットハンドの搬送高さを維持できる。
【0036】
また、図6に図示した別例2のように、シール部材1として、第一のOリング2と、第二のOリング3と、前記第一及び第二のOリング2,3の双方を当該Oリング2,3の全周に渡って連結する連結部4とを有し、前記第一及び第二のOリング2,3の周長が同一である並列型のシール部材1を用いても良い(その余の構成は二重型のシール部材1と同様。)。
【0037】
この場合、例えば、図7に図示した別例3のように、一方が開口した箱状部材41,42の開口端部同士を突き合せ状態で連結することができる。具体的には、一方の構造体である箱状部材41の開口の周囲に第一のOリング2を取付部材43により押圧固定し、他方の構造体である箱状部材42の開口の周囲に第二のOリング3を取付部材44により押圧固定する。図7中、符号45は取付部材43,44を締結するためのネジである。
【0038】
別例3の並列型のシール部材1のOリング2,3は角部をR形状とした角環状である。このOリング2,3の取付部材43,44は、角部においても良好にOリング2,3を押圧するため、複数の分割体を組み合わせて構成されている。具体的には、図8に図示したように角部の分割体Aとその両側の分割体B,Cとの連結構造を、角部の分割体Aの両端部の下向き傾斜面Dにより、両側の分割体B,Cの端部の上向き傾斜面Eを押さえ込む構造としている。従って、分割体Aをネジ45で箱状部材41,42に締結することで、分割体B,Cが良好に押さえ込まれ、Oリング2,3による密閉閉塞が開口の全周で確実に行われる。
【0039】
また、並列型のシール部材1は、連結部4の可撓性を(連結部4が伸長することを)利用して、図9に図示した別例4のように、圧力容器同士を連結する際に溶接ベローズと同様に用いることも可能である。図9中、符号X,Yは真空室、46は仕切弁、47は真空室X側の連結部、48は真空室Y側の連結部である。
【0040】
なお、本実施例のシール部材1のシール部は断面円形のOリングとしているが、図10に図示したように他の形状としても良い。(a)は断面矩形状、(b)は断面台形状、(c)及び(d)は端部を膨出させた形状である。
【0041】
本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0042】
1 シール部材
2 一端側シール部材(第一のOリング)
3 他端側シール部材(第二のOリング)
4 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10