特許第6891137号(P6891137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891137
(24)【登録日】2021年5月28日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】焼き菓子用ミックス
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20210607BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20210607BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20210607BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   A21D2/18
   A21D2/16
   A21D13/80
   A23G3/34 102
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-19165(P2018-19165)
(22)【出願日】2018年2月6日
(65)【公開番号】特開2019-135919(P2019-135919A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 真人
(72)【発明者】
【氏名】桑原 明香
(72)【発明者】
【氏名】榊原 通宏
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−169161(JP,A)
【文献】 特開2009−82108(JP,A)
【文献】 特開2017−93299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23G 3/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉60〜75質量%、加工澱粉1〜10質量%及び乳化剤0.1〜2質量%を含有する焼き菓子用ミックスであって、前記加工澱粉がヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉及びα化澱粉を含むものであるミックス。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉及びα化澱粉の質量比が1〜5:0.5〜2:1〜6である請求項1に記載のミックス。
【請求項3】
乳化剤がグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンを含むものである請求項1又は2に記載のミックス。
【請求項4】
グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンの質量比が2〜10:0.5〜5:0.2〜4である請求項3に記載のミックス。
【請求項5】
加工澱粉の原料澱粉がキャッサバ澱粉、ワキシーコーンスターチ及びタピオカ澱粉から選択される1種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のミックス。
【請求項6】
小麦粉が日本産小麦に由来する小麦粉を含むものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のミックス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のミックスから生地を調製し、該生地を焼成する工程を有する、焼き菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼き菓子用ミックスに関し、詳細には、モチモチとした食感を有しながらもしっとりとした口当たりを有し、しかも口溶けが良い焼き菓子を製造することができる焼き菓子用ミックス、及びそれを用いた焼き菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き菓子は、小麦粉、砂糖、卵などを原料にして生地を調製し、調製した生地を焼成することにより製造されるベーカリー食品の一種であり、スポンジケーキのように多孔質の内相を有していてふんわりとした食感を楽しむものと、クッキーのようにカリカリサクサクとした食感を持つものがある。特に前者では、ふんわりとしていながらも口に含むとしっとりとした口当たりを有し、さらに咀嚼すると溶けるように崩壊する(所謂口溶け)食感を有するものが上質とされている。
【0003】
このような焼き菓子は古くから小麦粉を主体とした原料で作られており、予め、小麦粉に砂糖や香料その他の粉末原料を配合し、水や牛乳と混ぜて焼成するだけで焼き菓子を製造できるミックスも市販されている。小麦粉は一般的に蛋白質含量を基準に、強力系、準強力系、中力系、薄力系に分類されているが、焼き菓子には蛋白質含量が少ない中力系や薄力系の小麦粉が適している。小麦粉の蛋白質は網目状の構造を形成するため、蛋白質量が多いと膨らみにくくなり、重たい、硬い食感となるためである。
【0004】
一方で近年はモチモチとした食感の焼き菓子も作られるようになり、従来の焼き菓子とは異なる食感が好まれる場合も少なくない。このようなモチモチとした食感を焼き菓子に付与するため、原料に米粉を配合することが行われている。特許文献1には、澱粉損傷度が10%以上である米粉を含有する洋菓子用米粉組成物が記載されている。特許文献2には、0.05N酢酸水溶液に可溶性の蛋白質の含有量が1kg当たり5〜35mgである熱処理米粉を含有する菓子類用組成物が記載されている。特許文献3には、α化米粉とコーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉及び馬鈴薯澱粉から選択される1種以上のα化澱粉とを含有するパン又は菓子用添加剤が記載されている。しかしながら米粉を用いると、粘調となり口溶けが悪くなる上、水分を失いやすく、得られる焼き菓子がパサつきやすいという欠点がある。
【0005】
また、特許文献4には、もち種タピオカ澱粉又は加工もち種タピオカ澱粉を用いてベーカリー食品を製造することが記載されている。しかしもち種タピオカ澱粉は流通量が少なく、供給に不安があるという問題がある。特許文献5には、セルロース及び水溶性多糖類と加工澱粉とを含むセルロース組成物が記載され、この組成物はベーカリー食品に適用できること、2種以上の加工澱粉を併用してもよいことも記載されている。しかしながらこの技術は、サクサクとした軽い食感を得るためのものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−233143号公報
【特許文献2】特開2014−18136号公報
【特許文献3】特開2010−263869号公報
【特許文献4】特開2015−165777号公報
【特許文献5】国際公開第2013/122127号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、モチモチとした食感を有しながらも、しっとりとした口当たりを有し、しかも口溶けが良い焼き菓子を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、小麦粉60〜75質量%、加工澱粉1〜10質量%及び乳化剤0.1〜2質量%を含有する焼き菓子用ミックスであって、前記加工澱粉がヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉及びα化澱粉を含むものであるミックスである。
また本発明は、前記ミックスから生地を調製し、該生地を焼成する工程を有する、焼き菓子の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モチモチとした食感を有しながらも、しっとりとした口当たりを有し、しかも口溶けが良い焼き菓子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の焼き菓子用ミックスは、小麦粉60〜75質量%、加工澱粉1〜10質量%及び乳化剤0.1〜2質量%を配合する焼き菓子用ミックスであって、前記加工澱粉がヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉及びα化澱粉を含むものである。
【0011】
本発明で用いる小麦粉は、焼き菓子に用いることができる小麦粉であれば種類は問わず、主として菓子用に用いられる薄力粉の他、パン用に主に用いられる強力粉や準強力粉、麺用に主に用いられる中力粉、マカロニ用に主に用いられるデュラム粉、小麦粉や澱粉の改質等に利用されている超強力粉も用いることができ、これらを単独で又は複数種類組み合わせて用いることができる。これら小麦粉の原料となる小麦の種類や産地も特に限定されず、米国産のウェスタンホワイト、ダークノーザンスプリング、ハードレッドウィンター、オーストラリア産のオーストラリアスタンダードホワイト、日本産の普通系小麦、強力系小麦等を利用できる。
【0012】
本発明の焼き菓子用ミックスにおいては、モチモチとした食感をさらに向上させる観点から、小麦粉が日本産小麦に由来する小麦粉(以下、日本産小麦粉ともいう)を含むことが好ましく、外国産小麦に由来する小麦粉(以下、外国産小麦粉ともいう)及び日本産小麦粉を、前者:後者で30:70から0:100の範囲、特に22:78から0:100の範囲の質量比(両者の合計で100)で使用することが好ましい。日本産小麦粉が多いほど好ましく、使用する小麦粉が全て日本産小麦粉であることが最も好ましい。
【0013】
小麦粉は一般的には、蛋白質含量が多いものから、強力粉、中力粉、薄力粉のように分類されているが、これは主として外国産小麦に由来する小麦粉を、適した用途別に分類する基準として用いられている。日本産小麦は、蛋白質含量としては普通系(中力系)小麦が多く、一部に強力系小麦が知られている。しかし、日本産小麦に由来する小麦粉は、高温多湿環境での栽培などが影響し、蛋白質の麩質は軟弱で、逆に澱粉は強靭な粘弾性を有しており、外国産小麦に由来する小麦粉とは性質が大きく異なっている。そのため、日本産小麦に由来する小麦粉は、うどんを代表とする麺用に用いられるのが専らであり、パンや焼き菓子などにはほとんど用いられていない。
【0014】
本発明の焼き菓子用ミックスにおいては、日本産小麦粉を使用すると、従来焼き菓子用ミックスにおいて多用されている外国産小麦粉を使用した場合に比して、得られる焼き菓子のモチモチとした食感、しっとりとした口当たり及び良好な口溶けのバランスが好ましいものとなる。一方で外国産小麦粉を用いると、ややバランスが低下する場合がある。そのため、本発明においては、前述した外国産小麦粉と日本産小麦粉との質量比を満たす小麦粉を使用することが好ましい。
【0015】
日本産小麦は、品種の特性や製粉性等の観点から、「普通系(中力系)」と「強力系」とに大別される。本発明で日本産小麦粉を用いる場合は、普通系に由来するものが特に好ましい。尚、一般に、普通系の日本産小麦は、グルテンの水和性が極めて鋭敏な上に、澱粉は強じんで粘弾性に富むことから、これを由来とする小麦粉は保水性に優れた食感が要望される小麦粉食品に適した性質を有しており、そのため、普通系の日本産小麦由来の小麦粉は従来、麺類特にうどんが主たる用途であり、「うどん粉」などとも呼ばれている。
【0016】
日本産小麦粉の原料たる日本産小麦としては、普通系小麦が良好であり、特に、軟質、あるいは中間質の小麦が好ましい。また、日本産小麦の蛋白質含量は、7.5〜12.0質量%の範囲がより好ましい。また、日本産小麦として、下記の品種名を例示できる。本発明では、下記の品種名の日本産小麦に由来する小麦粉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、下記に示す日本産小麦は、農林水産省の農林認定品種データベース等を用いて調べることができる。
【0017】
(日本産小麦の具体例)
あおばの恋、あきたっこ、アブクマワセ、あやひかり、イワイノダイチ、キタカミコムギ、きたさちほ、キタノカオリ、きたほなみ、きたもえ、キタ力ミコムギ、きぬあかり、きぬあずま、きぬいろは、きぬの波、キヌヒメ、コユキコムギ、さとのそら、さぬきの夢2000、さぬきの夢2009、しゅんよう、シラサギコムギ、シラネコムギ、シロガネコムギ、せときらら、タイセツコムギ、タクネコムギ、ダブル8号、タマイズミ、チクゴイズミ、ちくしW2号、チホクコムギ、つるきち、つるぴかり、ナンブコムギ、ニシノカオリ、ニシホナミ、ネノリゴシ、ネバリゴシ、ハナマンテ、ハルイブ、はるきらり、はるひので、ハルユタカ、ハレイブキ、ハレユタカ、バンドウワセ、フウセツ、ふくあかり、ふくさやか、ふくはるか、ふくほのか、ホクシン、ホロシリコムギ、もち姫、ゆきちから、ゆきはるか、ゆめあかり、ユメアサヒ、ゆめかおり、ゆめきらり、ユメシホウ、ユメセイキ、ゆめちから、銀河のちから、香育21号、春のかがやき、春よ恋、長崎W2号、東海103号、東海104号、東山42号、農林61号、福井県大3号、利根3号、ダブレ8号、ミナミノカオリ。
【0018】
また、本発明で用いる小麦粉は、水分含量が11質量%以下、特に10.5質量%以下であるものが好ましい。小麦粉の通常の水分含量(乾燥処理を施さない場合の水分含量)は約12〜15質量%であるが、水分含量を前記特定範囲として通常よりも低くすることで、特にモチモチした食感をより効果的に付与することができる。前記の水分含量は、本発明で用いる小麦粉に乾燥処理を施すことにより達成でき、前記乾燥処理としては、例えば、原料小麦粉を乾式加熱する方法、凍結乾燥する方法、減圧乾燥する方法が挙げられる。尚、本発明における小麦粉の水分含量は、水分計(ケット科学社製、商品名「赤外線水分計(FD−720)」)を用いて測定した値である。
【0019】
本発明の焼き菓子用ミックスにおいて、小麦粉の含有量は、該ミックスの全質量に対して60〜75質量%であり、好ましくは63〜72質量%である。ミックスにおける小麦粉の含有量が60質量%未満であると、該ミックスを用いて得られた焼き菓子の口溶けが低下し、小麦粉の含有量が75質量%を超えると、焼き菓子のしっとりとした食感が低下する。
【0020】
さらに本発明では加工澱粉を用いる。加工澱粉は性質が異なる2種以上を組み合わせると、それぞれの加工澱粉が有する性質が作用し合い、特有の効果を発揮する場合がある。本発明では加工澱粉として、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉及びα化澱粉の3種を組み合わせて用いる。これにより、焼き菓子のボリュームが低下せず、口溶けのよさが高められる。
【0021】
これら3種の加工澱粉は、それらの含有量が、(α化澱粉の含有量)≧(ヒドロキシプロピル澱粉の含有量)>(ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉の含有量)の関係を満たすことが好ましく、より好ましくは、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉及びα化澱粉の質量比(ヒドロキシプロピル澱粉:ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉:α化澱粉)が1〜5:0.5〜2:1〜6の範囲である。ヒドロキシプロピル澱粉の量が多すぎると、重い食感となり火通りが悪くなる場合がある。ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉の量が多すぎると、モチモチ感が強すぎる場合がある。α化澱粉の量が多すぎると、しっとり感が強すぎて口溶けが悪くなる場合がある。
【0022】
本発明で用いる加工澱粉の原料澱粉は、食品に用いることができるものであれば種類を問わない。澱粉原料としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、キャッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉等が挙げられる。これらの中でも、原料澱粉として、キャッサバ澱粉、ワキシーコーンスターチ及びタピオカ澱粉から選択される1種以上を用いると、モチモチしながらもしっとりとした口当たりを付与する上で有利である。
【0023】
加工澱粉の含有量は、該ミックスの全質量に対して1〜10質量%であり、好ましくは2〜8質量%である。ミックスにおける加工澱粉の含有量が1質量%未満であると、該ミックスを用いて得られた焼き菓子のボリュームが低下して固い食感が強くなり、10質量%を超えると、焼き菓子の口溶けの良さが低下する。
また、本発明の焼き菓子用ミックスの全質量に対して、ヒドロキシプロピル澱粉の含有量は0.4〜3質量%が好ましく、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉の含有量は0.2〜1.2質量%が好ましく、α化澱粉の含有量は0.4〜3.6質量%が好ましい。
【0024】
さらに本発明では乳化剤を用いる。本発明で用いる乳化剤は、食品に用いることができるものであれば種類は問わず、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド、レシチン、サポニン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の含有量は、該ミックスの全質量に対して0.1〜2質量%であり、好ましくは0.3〜1.2質量%である。ミックスにおける乳化剤の含有量が0.1質量%未満であると、該ミックスを用いて得られた焼き菓子の口溶けが低下し、2質量%を超えると、焼き菓子の風味が低下する。
【0025】
乳化剤は性質が異なる2種以上を組み合わせると、それぞれの乳化剤が有する性質が作用し合い、特有の効果を発揮する場合がある。本発明では乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンの3種を組み合わせて用いると、焼き菓子のボリュームが増し、口溶けのよさがさらに高められるため好ましい。
【0026】
これら3種の乳化剤を組み合わせる場合、それらの含有量が、(グリセリン脂肪酸エステルの含有量)>(ショ糖脂肪酸エステルの含有量)≧(レシチンの含有量)の関係を満たすことが好ましく、より好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンの質量比(グリセリン脂肪酸エステル:ショ糖脂肪酸エステル:レシチン)が2〜10:0.5〜5:0.2〜4の範囲である。グリセリン脂肪酸エステルが多すぎると、口溶けが損なわれる場合がある。ショ糖脂肪酸エステルが多すぎると、ふんわり感が損なわれる場合がある。レシチンが多すぎると、さっくり感が増してモチモチ感が損なわれる場合がある。本発明の焼き菓子用ミックスの全質量に対して、グリセリン脂肪酸エステルの含有量は0.2〜1質量%が好ましく、ショ糖脂肪酸エステルの含有量は0.05〜0.5質量%が好ましく、レシチンの含有量は0.02〜0.4質量%が好ましい。
【0027】
本発明の焼き菓子用ミックスには、前記成分(小麦粉、加工澱粉、乳化剤)に加えて、必要に応じて、焼き菓子用ミックスの製造に通常用いられ得るその他の原料、例えば、小麦粉以外の穀粉、未加工澱粉、前述の3種類の加工澱粉以外の加工澱粉(アセチル化澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉、酸化澱粉等)、卵粉、食塩、増粘剤、膨張剤等を配合することができる。これらその他の原料の含有量は、本発明の焼き菓子用ミックスの全質量に対して、0〜40質量%程度とすることが好ましい。
【0028】
本発明の焼き菓子用ミックスは、各種の焼き菓子の製造に使用することができ、その使用方法はこの種のミックスと基本的に同じである。本発明の焼き菓子用ミックスを用いた焼き菓子の製造方法は、典型的には、該ミックスから生地を調製し、該生地を焼成する工程を有する。前記生地は、粘土状生地(ドウ)と液状生地(バッター)とに大別でき、いずれの生地も焼き菓子用ミックスに液体を添加・混合することで調製することができ、該液体としては例えば、水、牛乳、卵、生クリーム又はそれら2種以上の混合物を利用できる。生地調製の際の前記液体の添加量は、焼き菓子の種類等に応じて適宜選択すれば良く特に制限されないが、例えば前記液体が水の場合において、ドウを調製する場合は、ミックス100質量部に対して50〜160質量部程度、バッターを調製する場合は、ミックス100質量部に対して150〜300質量部程度である。本発明の焼き菓子用ミックスは、特に、バッターを調製する焼き菓子の製造方法に好適である。
【0029】
本発明の焼き菓子用ミックスは、各種焼き菓子の製造に使用することができ、膨張剤を用いたケーキ焼き菓子及びイーストを用いたイースト焼き菓子の何れにも適用できる。本発明の焼き菓子用ミックスは、特に、水分含量が比較的多く(例えば水分含量20質量%以上)、ふんわりとした食感を楽しむ焼き菓子に好適であり、そのような焼き菓子の例としては具体的には、パンケーキ、スポンジケーキ、ホットケーキ、ドーナツ、クレープ、スコーン、パウンドケーキ、マフィン、ワッフルなどが挙げられる。本発明の焼き菓子用ミックスは、特にホットケーキに適している。尚、ホットケーキは、パンケーキより砂糖などの糖類の含有量が多く(例えば糖類含量10〜20質量%)ボリューム感に富む。また、焼き菓子の水分含量は、水分計(ケット科学社製、商品名「赤外線水分計(FD−720)」)を用いて常法に従って測定することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〜31及び比較例1〜16〕
下記表1〜6に示す原料を適宜混合・攪拌して、各実施例及び比較例の焼き菓子用ミックスを製造した。尚、小麦粉としては、日本産小麦粉(品種名「ホクシン」由来の小麦粉、水分含量14質量%)又は外国産小麦粉(日清製粉製、商品名「フラワー」、水分含量14質量%)を使用した。また、使用した加工澱粉について、ヒドロキシプロピル澱粉は原料澱粉がタピオカ澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉は原料澱粉がワキシーコーンスターチ、α化澱粉は原料澱粉がタピオカ澱粉であった。
【0032】
〔試験例〕
各実施例及び比較例の焼き菓子用ミックスを用いてホットケーキを製造した。具体的には、焼き菓子用ミックス180質量部に対して、卵50質量部、牛乳170質量部を加えてよく攪拌し、液状生地(バッター)を得た。得られた生地を、170℃に熱したホットプレート上に垂らして広げ、3分間焼成した後、該生地を上下反転させて未焼成の面側を2分間焼成し、ホットケーキを製造した。
製造したホットケーキを10名の専門パネラーが食し、その際の食感(モチモチ感、しっとり感、口溶け)を下記評価基準で評価した。その結果を10名の評価点の平均値として下記表1〜6に示す。
【0033】
<モチモチ感の評価基準>
5点:非常にモチモチ感を感じ、極めて良好。
4点:モチモチ感を感じ、良好。
3点:普通。
2点:モチモチ感が悪く、ふわふわしているか粘りがあり、不良。
1点:非常にモチモチ感が悪く、ふわふわしすぎているか粘りが強すぎ、極めて不良。
<しっとり感の評価基準>
5点:非常にしっとり感を感じ、極めて良好。
4点:しっとり感を感じ、良好。
3点:普通。
2点:しっとり感が悪くパサつき、不良。
1点:非常にしっとり感が悪くパサつき、極めて不良。
<口溶けの評価基準>
5点:非常に口溶けが良く、極めて良好。
4点:口溶けが良く、良好。
3点:普通。
2点:口溶けが悪く団子様になり、不良。
1点:非常に口溶けが悪く団子様になり、極めて不良。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
〔実施例32〜34〕
小麦粉として、水分含量14質量%の日本産小麦粉及び外国産小麦粉に代えて水分含量10.3質量%の日本産小麦粉及び外国産小麦粉を使用した以外は、実施例2〜4と同様にして、実施例32〜34の焼き菓子用ミックスをそれぞれ製造した。この低水分含量の小麦粉は、実施例2〜4で用いた水分含量14質量%の日本産小麦粉及び外国産小麦粉をそれぞれ乾式加熱することで調製した。具体的には、水分含量14質量%の小麦粉を鉄板上に薄く敷き詰め、該鉄板の温度を140℃にすることで該小麦粉を間接的に加熱し、該小麦粉の水分含量を10.3質量%まで低減させた。
前記試験例と同様にして、得られた焼き菓子用ミックスからホットケーキを製造し、評価した。その結果を表7に示す。なお表7には実施例2〜4の結果を再掲する。
【0041】
【表7】